説明

メソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料

【課題】 アルミニウム含有量が高いメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料およびその調整方法を提供する。
【解決手段】 メソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料が記載されており、これは、少なくとも2つの球状基本粒子によって構成され、該球状粒子のそれぞれは、酸化ケイ素および酸化アルミニウムをベースとするマトリクスによって構成され、該マトリクスは、1.5〜30nmの細孔サイズを有し、Si/Alモル比が少なくとも1であり、1〜20nmの厚さを有する非晶質壁を有し、該球状基本粒子は、最大で10μmの直径を有する。前記材料を調製する方法および改質および石油化学分野におけるその用途も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム含有量が高いメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料の分野に関する。本発明はまた、「エアゾール」合成技術を用いて得られる前記材料の製造に関する。本発明の材料の構造上および表面組織上の特性およびそれらの酸−塩基特性が、それらを、改質および石油化学分野における用途に特に適したものにする。
【背景技術】
【0002】
ミクロ細孔材料からマクロ細孔材料まで階層的な多孔度を有する材料を用いて非常に広範囲にわたって明確に規定された多孔度を有する材料、すなわち、種々のサイズの細孔を有する材料を生成するための新規な合成戦略が、1990年代半ば以来科学界において開発中である(非特許文献1)。細孔サイズが制御された材料が得られる。特に、「緩和な科学」方法を用いる合成の開発により、水溶液または高極性溶液中に無機前駆物質をテンプレート(概して、イオン性または非荷電の分子または超分子の界面活性剤)と共存させることによって低温でメソ構造化された材料が生成されるようになった。無機前駆物質の加水分解/縮合反応と共に無機前駆物質とテンプレートとの間の静電相互作用または水素結合を制御することにより、無機マトリクス中に制御された均一なサイズの界面活性剤のミセル凝集物を生じて有機および無機相が共同的に組織化される。とりわけテンプレートの濃度によって支配されるこの共同的自己組織化現象は、テンプレートの濃度が臨界ミセル濃度より低い試薬溶液の連続的な蒸発によって誘発され得、このことは、基板上に堆積する場合にはメソ構造化された薄膜を形成するか(浸漬被覆)または溶液が霧化される場合にはメソ構造化された粉体を形成するか(エアゾール技術)のいずれかにつながる。例えば、特許文献1は、浸漬被覆技術を用いるメソ構造化された有機−無機混成薄膜の形成を開示し、同一の著者はまた、エアゾール技術を用いて純粋なシリカのメソ構造化された材料を生成している(非特許文献2)。次いで、細孔は、界面活性剤を除去することによって解放され、これは、通常、化学抽出または熱処理によって行われる。いくつかのクラスのメソ構造化された材料が、異なる性質の採用される無機前駆物質およびテンプレート、並びに、課される操作条件を用いて開発された。例えば、Mobilによって最初に開発されたM41Sクラス(非特許文献3)は、第4級アンモニウム塩等のイオン性界面活性剤を用いて得られたメソ細孔材料によって構成され、概して、六方晶系、立方晶系またはラメラ構造、1.5〜10nmの均一サイズの細孔、1〜2nm程度の厚さの非晶質壁を有し、広く研究されている。続いて、前記材料に比較した酸−塩基特性を向上させつつ水熱安定性を高めるために、直接合成または合成後処理による非晶質シリカ骨格へのアルミニウム元素の導入は特に重要とされ、得られたアルミノケイ酸塩材料のSi/Alモル比は1〜1000である(非特許文献4〜6)。このようなアルミノケイ酸塩によって向上された水熱安定性および酸−塩基特性は、それらが精製処理または石油化学において工業スケールで使用されることを許容していないが、しかしながら、着実に、ブロック共重合体タイプの両親媒性の高分子等の新規なテンプレートの使用につながっており、ここ最近になって生成したメソ構造化された材料は、これら後者によりメソ構造化された材料を生成すると、メソ構造化された材料は、概して、六方晶系構造、立方晶系構造またはラメラ構造を有し、4〜50nmの均一のサイズに細孔が形成され、非晶質壁の厚さは3〜7nmである。上記浸漬被覆またはエアゾール技術とは対照的に、このようにして規定された材料は、無機前駆物質およびテンプレートを、それらが存在する水溶液中で連続的に濃縮することによって得られず、従来は、テンプレートの臨界ミセル濃度の値を調節することによる水溶液中または高極性溶媒中での直接的な沈降によって得られていた。さらには、沈降によって得られるこのような材料の合成は、オートクレーブで熟成する工程を必要とし、上澄みに見出され得るので、試薬のうちの全てが化学当論量で生成物に組み込まれるわけではない。最終のメソ構造化された材料の構造および組織化の望みの度合いに応じて、このような合成方法は、酸性媒体(pH約1)中(特許文献2)または中性媒体中(特許文献3)で行われることがあり、用いられるテンプレートの性質も重要な役目を果たす。得られる基本粒子は、規則的な形状を有しておらず、一般的に、500nmを超える直径によって特徴付けられる。得られたメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料は、他のテンプレートを用いて合成されたそれらの同族体と比較して水熱安定性が高まるが、それらの酸−塩基特性は、全く同程度のままである(1<Si/Al<1000)。しかしながら、分子比Si/Alの低い値は得られ難い。このような特殊な操作手順を用いて大量のアルミニウムを材料に組み込むことが難しいからである(非特許文献7〜8)。
【特許文献1】米国特許第6,387,453号明細書
【特許文献2】国際公開第99/37705号パンフレット
【特許文献3】国際公開第96/39357号パンフレット
【非特許文献1】シー・サンチェス(C Sanchez),ビー・レビュー(B Lebeau),ジェイ・パタリン(J Patarin)「ジー・ジェイ・デ・エー・エー・ソラー−イリア(G J de A A Soler-Illia)」,ケミカル・レビュー(Chem Rev),2002年,第102巻,p4093
【非特許文献2】シー・ジェイ・ブリンカ(C J Brinker),ワイ・リュ(Y Lu),エイ・セリンジャー(A Sellinger),エイチ・ファン(H Fan)「アドゥブ・マター(Adv Mater)」,1999年,第11巻,第7号
【非特許文献3】ジェイ・エス・ベック(J S Beck),ジェイ・シー・ヴァルツリ(J C Vartuli),ダブリュー・ジェイ・ロート(W J Roth),エム・イー・レオノビッツ(M E Leonowicz),シー・ティー・クレスゲ(C T Kresge),ケイ・ディー・シュミット(K D Schmitt),シー・ティー−ダブリュー・チュ(C T-W Chu),ディー・エイチ・オルソン(D H Olson),イー・ダブリュー・シェパード(E W Sheppard),エス・ビー・マッククレン(S B McCullen),ジェイ・ビー・ヒギンズ(J B Higgins),ジェイ・エル・シュレンカー(J L Schlenker),「ジャーナル・オフ・アメリカン・ケミストリ(J Am Chem Soc)」,1992年,第114巻,第27号,p10834
【非特許文献4】エス・カウィ(S Kawi),エス・シー・チェン(S C Chen),「スタド・サーフ・サイ・キャタル(Stud Surf Sci Catal),2000年,第129巻、p227
【非特許文献5】エス・カウィ(S Kawi),エス・シー・チェン(S C Chen),「スタド・サーフ・サイ・キャタル(Stud Surf Sci Catal),2000年,第129巻,p219
【非特許文献6】アール・モカヤ(R Mokaya),ダブリュー・ジョーンズ(W Jones),「ケミカル・コミュニケーション(Chem Commun)」,1997年,p2185
【非特許文献7】ディー・ザホ(D Zaho)、ジェイ・フェング(J Feng)、エヌ・メロシュ(N Melosh)、ジー・エイチ・フレドリクソン(G H Fredrickson)、ビー・エフ・クメルケ(B F Chmelke)、ジー・ディー・ストッキー(G D Stucky)、「サイエンス(Science)」,1998年,第279間,p548
【非特許文献8】ワイ−エイチ・ユ(Y-H Yue)、エイ・ゲデオン(A Gedeon)、ジェイ−エル・ボナルト(J-L Bonardet)、ジェイ・ビー・エスピノセ(J B d’Espinose)、エヌ・メロシュ(N Melosh),ジェイ・ファイサード(J Faissard),「スタド・サーフ・ソサイ・キャタル(Stud Surf Sci Catal)」,2000年,第129巻,p209
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、アルミニウム含有量が高いメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料およびその調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、メソ構造化され、かつ、少なくとも2つの球状基本粒子によって構成されたアルミノケイ酸塩材料であって、該球状粒子のそれぞれは、ケイ素酸化物およびアルミニウム酸化物をベースとするマトリクスによって構成され、該マトリクスは、1.5〜30nmの細孔サイズおよび少なくとも1のSi/Alモル比を有し、厚さが1〜20nmの非晶質の壁(amorphous walls)を有し、該球状基本粒子が10μmの最大直径を有するものに関する。本発明の材料は、高いアルミニウム含有量を有し、Si/Alモル比は好ましくは1〜10である。本発明はまた、本発明の材料を製造する方法に関する。すなわち、本発明の材料は、少なくとも1種のイオン性または非イオン性の界面活性剤を少なくとも1種のアルミナ前駆体および少なくとも1種のシリカ前駆体と、好ましくは酸性媒体中で、相互作用させることによって得られ、エアゾール技術によって誘発された蒸発によるミセル化または自己組織化に続いて材料の構造が秩序化される。
【0005】
本発明のアルミノケイ酸塩材料は、球状基本(elementary)粒子によって構成されたメソ構造化された材料であり、該粒子のそれぞれは、ケイ素酸化物およびアルミニウム酸化物をベースとするマトリクスによって構成される。前記マトリクスは、メソ構造化されており、1〜20nmの厚さの非晶質壁、1.5〜30nmの均一な細孔サイズおよび少なくとも1のSi/Alのモル比を有している。前記球状基本粒子は、有利には50nm〜10μm、好ましくは50〜300nmの直径を有し、制限された前記粒子サイズおよびそれらの完全な球形状によって、精製および石油化学の分野での適用のための触媒または吸着剤として本発明の材料を用いた場合に、既知従来技術の非均一形状の基本粒子、すなわち不規則な粒子の形態を有し、かつ、一般に500nmを超える寸法を有する材料と比較してより良好な化合物の拡散が可能になる。本発明の材料の前記粒子のそれぞれを構成するマトリクスは、有利には1〜10、より有利には1〜5のSi/Alモル比を有する。すなわち、本発明の材料は、高いアルミニウム含有量を有し、このことが、本発明の材料に触媒用途に有利な酸−塩基特性をもたらしている。本発明の材料はまた、メソ細孔スケールを示すように組織化された多孔度に特に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、メソ構造化され、かつ、少なくとも2つの球状基本粒子によって構成されたアルミノケイ酸塩材料であって、該球状材料のそれぞれがケイ素酸化物およびアルミニウム酸化物をベースとするマトリクスによって構成され、該マトリクスは、1.5〜30nmの細孔サイズと、少なくとも1のSi/Alモル比とを有し、1〜20nmの厚さの非晶質壁を有し、該球状基本粒子は10μmの最大直径を有するものを提供する。
【0007】
本発明によると、ケイ素酸化物およびアルミニウム酸化物をベースとし、本発明のアルミノケイ酸塩材料の前記球状粒子のそれぞれを構成するマトリクスは、有利には、高いアルミニウム含有量を有し、Si/Alモル比は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
【0008】
本発明において用いられるような用語「メソ構造化された材料」は、前記球状粒子のそれぞれにおいてメソ細孔スケールで組織化された多孔度、すなわち、細孔のスケールで組織化され、1.5〜30nm、好ましくは1.5〜10nmの均一な寸法を有し、前記粒子のそれぞれにおいて均等に、かつ、規則的な方法で寄与された多孔度を有する材料を意味する(材料のメソ構造)。
【0009】
本発明の材料の前記球状粒子のそれぞれのメソ細孔の間にある材料は、非晶質であり、1〜20nmの厚さの壁の形態である。壁の厚さは、1つの細孔を他の細孔から分離する距離に対応する。上記のメソ多孔度を組織化することは、ケイ素酸化物およびアルミニウム酸化物をベースとするマトリクスを構造化することに帰着し、この構造化は、六方晶系、二次元の六方晶系、虫食い(vermicular)形または立方晶系であってよく、好ましくは虫食い形である。
【0010】
本発明によると、本発明の材料を構成する前記球状基本粒子の直径は最大で10μm、好ましくは50nm〜10μm、より有利には50〜300nmである。より精密には、前記粒子は本発明の材料中に凝集体の形態で存在する。
【0011】
本発明の材料は、有利には、100〜1200m/g、より有利には300〜1000m/gの比表面積を有する。
【0012】
本発明はまた、本発明の材料の製造に関する。前記方法は、a)溶液中で、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種のアルミナ前駆体および少なくとも1種のシリカ前駆体を混合する工程と、b)エアゾールによって工程a)で得られた溶液を霧化して、200μm未満の直径を有する球状の液滴を生成する工程と、c)該液滴を乾燥する工程と、d)該界面活性剤を除去してメソ構造化された多孔度を有する材料を得る工程とを包含する。
【0013】
本発明の方法の工程a)において用いられるシリカ前駆体およびアルミナ前駆体は、当業者に公知の無機酸化物前駆体である。シリカ前駆体は、ケイ素の任意の供給源、有利には式SiO,NaOHを有するケイ酸ナトリウム前駆体、式SiClを有する塩素含有前駆体、式Si(OR)(式中R=H、メチルまたはエチル)を有する有機金属前駆体または式Si(OR)4−xCl(式中R=H、メチル、エチルであり、xは0〜4である)を有するクロロアルコキシド前駆体から得られる。シリカ前駆体は、有利には、式Si(OR)4−xR’(式中R=H、メチルまたはエチルであり、R’はアルキル鎖または官能基(例えば、チオール、アミノ、β−ジケトンまたはスルホン酸基)によって置換されたアルキル鎖であり、xは0〜4である)を有する有機金属前駆体であってもよい。アルミナ前駆体は、有利には、式AlX(式中XはハロゲンまたはNO基である)を有する無機アルミニウム塩である。好ましくは、Xは塩素である。アルミナ前駆体は、式Al(OR’’)(式中R’’=エチル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチルまたはt−ブチルである)を有する有機金属前駆体またはアルミニウムアセチルアセトネート(Al(CH))等のキレート化された前駆体であってもよい。アルミナ前駆体はアルミニウムの酸化物または水酸化物であってもよい。
【0014】
本発明の製造方法の工程b)の混合物を製造するために用いられる界面活性剤は、イオン性または非イオン性の界面活性剤またはその2つの混合物である。好ましくは、イオン性界面活性剤は、ホスホニウムまたはアンモニウムイオンから、より好ましくは臭化セチルトリメチルアンモニウム(cetyltrimethyl ammonium bromide:CTAB)等の第4級アンモニウム塩から選択される。好ましくは、非イオン性界面活性剤は、両親媒性高分子特性を付与する異なる極性を有する少なくとも2つの部分を有する任意の共重合体であってもよい。前記共重合体は、共重合体分類のリスト:フッ素化共重合体(−[CH2−CH2−CH2−CH2O−R1]−(式中、R1=C4F9、C8F17等))、生物学的共重合体、例えば、ポリアミノ酸(ポリリジン、アルギナート等)、デンドリマー、ポリ(アルキレンオキシド)の鎖によって構成されたブロック共重合体および当業者に公知の両親媒性を有する任意の他の共重合体(S Forster,M Antinnetti,「Adv Mater」,1998,10,195~217,S Forster,T Plantenberg,「Angew Chem Int Ed」,2002,41,688~714,H Colfen,「Macromol Rapid Commun」,2001,22,219~252)に含まれてもよいが、共重合体の例は無尽蔵である。好ましくは、本発明との関連では、ポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成されたブロック共重合体が用いられる。前記ブロック共重合体は、好ましくは、2、3または4ブロックを有し、各ブロックが1つのポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成されるブロック共重合体である。2ブロックの共重合体について、ブロックの一方は親水性のポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成され、他方のブロックは疎水性のポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成される。3ブロックの共重合体について、ブロックの2つは親水性のポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成される一方で、他方のブロックは、親水性の2つのブロックの間に位置し、疎水性のポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成される。好ましくは、3ブロックの共重合体の場合に、親水性のポリ(アルキレンオキシド)の鎖はポリ(エチレンオキシド)((PEO)および(PEO))鎖であり、疎水性のポリ(アルキレンオキシド)鎖は、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)鎖、ポリ(ブチレンオキシド)鎖または各鎖がいくつかのアルキレンオキシドモノマーの混合物である混合鎖である。より好ましくは、3ブロック共重合体の場合に、式(PEO)(PPO)(PEO)(式中、xは5〜106であり、yは33〜70であり、zは5〜106である)の化合物が用いられる。好ましくは、xおよびzの値は同一である。より有利には、x=20、y=70およびz=20の化合物(P123)が用いられ、x=106、y=70およびz=106の化合物(F127)が用いられる。プルロニック(BASF)、テトロニック(BASF)、トリトン(Sigma)、Tergitol(UnionCarbide)、Brij(Aldrich)として知られる市販の非イオン性界面活性剤が本発明の製造方法の工程a)における非イオン性界面活性剤として用いられ得る。4ブロックの共重合体について、ブロックの2つは親水性のポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成され、2つの他のブロックは疎水性のポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成される。
【0015】
本発明の製造方法の工程a)に従って少なくとも1種のシリカ前駆体、少なくとも1種のアルミナ前駆体および少なくとも1種の界面活性剤が混合される溶液は酸性、中性、または塩基性であってもよい。好ましくは、前記溶液は酸性であり、pHは最大で2であり、好ましくは0〜2である。最大pHが2の酸性溶液を得るために用いられる酸の例として、塩酸、硫酸および硝酸が挙げられるが、その例は無制限である。前記溶液は水性であってもよく、または、前記溶液は水−有機系の溶媒の混合物であってもよく、有機溶媒は、好ましくは極性溶媒、特に、アルコール、好ましくはエタノールである。前記溶液はまた、事実上有機性、好ましくは事実上アルコール性であればよく、水の量は、無機前駆体の加水分解が確実に行われるようにされる(化学当論量)。より好ましくは、少なくとも1種のシリカ前駆体、少なくとも1種のアルミナ前駆体および少なくとも1種の界面活性剤が混合される前記溶液は、水−有機系の酸混合物、より好ましくは酸性の水−アルコール混合物である。
【0016】
シリカ前駆体およびアルミナ前駆体の濃度は、モル比Si/Alによって規定され、このモル比Si/Alは少なくとも1であり、好ましくは1〜1000であり、より好ましくは1〜10であり、より一層好ましくは1〜5である。本発明の製造方法の工程a)の混合物に導入される界面活性剤の最初の濃度は、cによって規定される。このcは、当業者に公知である臨界ミセル濃度(Cmc)に対して規定される。cmcは、これを超えると溶液中の界面活性剤分子の自己配列(self-arrangement)が起こる限界濃度である。濃度cは、cmc未満であっても、cmcと等しくても、またはcmcを超えていてもよいが、好ましくはcmc未満である。本発明の方法の好ましい実施では、濃度cはcmc未満であり、本発明の製造方法の工程a)における前記溶液は酸性の水−アルコール酸性混合物である。
【0017】
本発明の製造方法の工程b)における混合物を霧化する工程は、好ましくは2〜200μmの直径を有する球状液滴を生成する。前記液滴のサイズ分布は、対数正規分布型である。用いられるエアゾール発生器は、TSIによって供給される市販モデル3078装置である。溶液はチャンバ内で霧化される。このチャンバ中には、1.5バールの圧力Pでベクトルガス(vector gas)であるO/N混合物(乾燥空気)が送られる。本発明の製造方法の工程c)では、前記液滴が乾燥される。乾燥は前記液滴をベクトルガスであるO/N混合物を媒介としてガラス管中に移動させることによって行われ、この結果、溶液、例えば、水−有機系の酸溶液が連続的に蒸発し、球状基本粒子が生成される。乾燥は、前記粒子をオーブンに通すことによって完了される。このオーブンの温度は、通常は50〜600℃、好ましくは80〜400℃の温度に調整され得、前記粒子のオーブン内での滞留時間は、3〜4秒程度である。次いで、粒子はフィルタに採取され、本発明の材料を構成する。回路の終点にポンプが置かれ、このポンプは、粒子(species)を試験用エアゾールデバイスに経路を定める。
【0018】
本発明の製造方法の工程a)における溶液が水−有機系溶媒混合物(好ましくは酸性)である場合、本発明の製造方法の工程a)の間、マトリクスのメソ構造化を開始する時の界面活性剤の濃度が臨界ミセル濃度未満であり、その結果、エアゾール技術を用いる本発明の製造方法の工程b)の間の前記水−有機系の溶液(好ましくは酸性)の蒸発がミセル化すなわち自己配列の現象を誘発し、これにより、本発明の材料のマトリクスがメソ構造化されることが好ましい。c<cmcの場合、水−有機系溶媒(好ましくは酸性)の蒸発によって界面活性剤の濃度cがcmcを超える結果となるまで各液滴中のシリカ前駆体、アルミナ前駆体および界面活性剤が連続的に濃縮されると、続いて上記方法を用いて製造された本発明の材料のマトリクスのメソ構造化が生じる。
【0019】
一般に、シリカ前駆体およびアルミナ前駆体および界面活性剤を合わせた濃度が高くなることにより、自己組織化された界面活性剤周囲のシリカおよびアルミナ前駆体の析出が惹起され、その結果、本発明の材料のマトリクスが構造化される。無機/無機相、有機/有機相および有機/無機相の相互作用により、界面活性剤周囲のシリカおよびアルミナ前駆体の加水分解/凝集と共同的な自己組織化機構が生じる。この自己組織化機構の結果、界面活性剤周囲のシリカおよびアルミナ前駆体の加水分解/凝集が生じる。最初の溶液中に存在する試薬が互いに相互作用することを強制し、溶媒以外の材料の損失が生じる恐れがなく、最初に存在するアルミニウムおよびケイ素元素の全体が本発明の方法を通して完全に維持されるので、本発明の製造方法の工程b)を行うのにエアゾール技術は特に有利であり、これは、当業者に知られる従来の合成方法で行われるろ過工程および洗浄の間に除去されるのとは異なっている。
【0020】
メソ構造化された多孔度を有する本発明の材料を得るための本発明の製造方法の工程d)における界面活性剤の排除は、有利には、化学抽出または熱処理、好ましくは300〜1000℃、より好ましくは500〜600℃の温度で、1〜24時間、好ましくは2〜6時間の期間空気中で焼成することによって行われる。
【0021】
本発明の高いアルミニウム含有率を有するメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料は、粉体、ビーズ、ペレット、顆粒または押出物の形態で得られてもよく、その形成操作は、当業者に知られる従来の技術を用いて行われる。好ましくは、本発明のメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料は、直径が最大で10μm、好ましくは50〜300nmの球状基本粒子によって構成された粉体の形態で得られ、このアルミノケイ酸塩材料は、精製または石油化学用途における触媒または吸着剤として本発明の材料を使用する場合に化合物の任意の拡散を促進する。
【0022】
本発明のメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料は、いくつかの分析技術を用いて、特に、小角X線回折(小角XRD)、窒素吸着等温線、透過型電子顕微鏡(TEM)および蛍光X線元素分析によって特徴付けられる。小角X線回折(2θの値が0.5〜3°)は、本発明の材料のメソ構造化されたマトリクスの組織化されたメソ多孔度によって発生されるナノメートルスケールでの周期性を特徴付けるために用いられ得る。以下の記載において、X線分析は、粉末について、銅放射線(波長1.5406Å)を用いるバックモノクロメータを備えた反射で操作する回折計を用いて行われる。角2θの所与の値に対応する回折図上に通常観察されるピークは、ブラッグの関係式:2dhkl・sin(θ)=n・λによって、材料の構造上の対称性の特徴である面間隔dhklに結び付けられる(hklは逆格子(reciprocal lattice)のミラー指数である)。この指数化方式により骨格の格子パラメータ(a,b,c)が直接的に決定され得、格子パラメータは、得られる六方晶系、立法晶系または虫食い形(vermicular)構造の写像(function)である。例として、特定のブロック共重合体であるポリ(エチレンオキシド)20−ポリ(プロピレンオキシド)70−ポリ(エチレンオキシド)20(PEO20−PPO70−PEO20すなわちプルロニック123)による本発明の方法を用いて得られたメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料の小角X線回折図は、虫食い構造の特徴である細孔間の相関距離dにどれが対応するのかが完全に解明され、ブラッグの関係式:2d・sin(θ)=n・λを用いて規定された相関ピークを有する。
【0023】
一定の温度で圧力を連続的に増大させる際の材料の細孔内の窒素分子の物理的吸着に対応する窒素吸着等温線分析は、本発明の材料に特有の表面組織の特徴に関する情報を提供する。特に、窒素吸着等温線分析は、材料の比表面積およびメソ細孔分布への接近方法を提供する。用語「比表面積」は、定期刊行の「The Journal of the American Society」,60,309(1938)において記載されたBRUNAUER−EMMETT−TELLER法を用いて確立された米国標準ASTM D 3663−78に従う窒素吸着によって決定されるBET比表面積SBET(m/g)を意味する。1.5〜50nmを中心とするメソ細孔の占有率(population)を表す細孔分布は、バレット−ジョイナー−ハレンダ(Barrett-Joyner-Halenda:BJH)モデルを用いて決定される。BJHモデルを用いる窒素吸着−脱着等温線は、E P Barrett、L G JoynerおよびP P Halendaにより著された定期刊行の「The Journal of American Society」,73,373(1951)において記載される。以下の記載の中で、所与のメソ構造化されたマトリクス中のメソ細孔直径φは、該当する直径未満の全細孔が窒素等温線の脱着曲線(desorption arm)上で測定された細孔容積(Vp)の50%を構成するような直径として定義された窒素脱着に対する平均直径に対応する。さらに、窒素吸着等温線およびヒステリシスループの形状は、ミクロ多孔度の性質に関する情報を提供する。例として、特定のブロック共重合体であるポリ(エチレンオキシド)20−ポリ(プロピレンオキシド)70−ポリ(エチレンオキシド)20(PEO20−PPO70−PEO20すなわちプルロニック123,P123)を用いる本発明のメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料の窒素吸着等温線は、タイプIVの等温線およびタイプH1のヒステリシスループを有し、関連する細孔分布曲線は、1.5〜30nmを中心とする均一なサイズを有するメソ細孔の占有率を表している。細孔直径φに対する値と上記に記載されたような小角XRDによって規定される細孔間の相関距離dとの間の差は、寸法e(ここで、e=d−φであり、eは、本発明のメソ構造化されたマトリクスの非晶質壁の厚さの特徴である)への接近方法を提供する。
【0024】
透過型電子顕微鏡分析(TEM)も、これら材料の構造を特徴付けるために広く用いられる技術である。この技術により、研究されている固体の画像の形成が可能となり、コントラストを観察すれば、観察している粒子の構造組織、表面組織または形態の特徴が分かり、分解能は最大0.2nmに達する。以下の記載の中で、TEM画像は、本発明の材料の球状基本粒子の部分を視覚化するためにサンプルの顕微鏡用に薄片化された部分から生成される。例として、上記に記載されたような共重合体、すなわち、特定のブロック共重合体であるプルロニック123による本発明の方法を用いて得られた本発明のメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料に対して得られたTEM画像は、虫食い形状のメソ構造を有する球状基本粒子を有し、材料は陰影区域によって規定される。画像の分析は、上記に規定されたメソ構造化されたマトリクスの特徴であるパラメータd、φおよびeへの接近方法も提供する。
【0025】
基本粒子の形態および寸法分布は、SEM(scanning electron microscopy:走査型電子顕微鏡)によって得られた画像の分析から確立される。
【0026】
本発明の材料の粒子のそれぞれを構成するメソ構造化されたマトリクスの構造は、テンプレートとして選択される担体の性質に応じて立方晶系、虫食い状または六方晶系であってよい。例として、特定のブロック共重合体であるポリ(エチレンオキシド)20−ポリ(プロピレンオキシド)70−ポリ(エチレンオキシド)20(PEO20−PPO70−PEO20すなわちプルロニック123、P123)を用いて上記のように得られたメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料は虫食い構造を有している。
【0027】
本発明は、本発明のメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料の汚染を制御するための吸着剤または分離用の分子ふるいとしての使用に関する。このため、本発明は、本発明のメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料を含む吸着剤を提供する。本発明はまた、反応、例えば、精製および石油化学分野において起こる反応を触媒するための酸性固体として有利に使用される。
【0028】
本発明のメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料が触媒として用いられた場合、当該材料は、無機マトリクス(この無機マトリクスは触媒的に不活性でも活性でもよい)および金属相と結合されてもよい。無機マトリクスは、触媒の種々の知られた形態(押出物、ペレット、ビーズ、粉体)で前記材料の粒子が共にあることを維持するためのバインダとして単に存在すればよく、あるいは、無機マトリクスは、他の方法では急激に進み、あまりに大量のコークスの形成に起因して触媒を妨げることにつながるであろうプロセスの際に転換の程度を付与する希釈剤として加えられてもよい。典型的な無機マトリクスは、触媒のための担体材料、例えば、種々の形態のシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、マグネシア、ジルコニア、チタンおよびホウ素酸化物、アルミニウム、チタンまたはジルコニウムリン酸塩、粘土(カオリン(kaolin)、ベントナイト(bentonite)、モンモリロナイト(montmorillonite)、セビオライト(sepiolite)、アタバルジャイト(attapulgite)、フーリー砂(Fuller’s earth)等)、合成細孔材料(SiO−Al、SiO−ZrO、SiO−ThO、SiO−BeO、SiO−TiO等)またはこれら化合物の任意の組合せである。無機マトリクスは、異なる化合物の混合物、特に不活性相および活性相の混合物であってもよい。本発明の前記材料は、少なくとも1種のゼオライトと結合されてもよく、主活性相または添加剤として作用してもよい。金属相は、本発明の前記材料上に一体的に導入されてもよい。金属相はまた、無機マトリクス中または無機マトリクス上に一体的に導入されてもよく、これは、Cu、Ag、Ga、Mg、Ca、Sr、Zn、Cd、B、Al、Sn、Pb、V、P、Sb、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Pt、Pd、Ru、Rh、Os、Irおよび任意の他の周期表元素の元素から選択されたカチオンまたは酸化物を用いたイオン交換または含浸によりメソ構造化された固体の集合体である。
【0029】
本発明の材料を含む触媒組成物は、一般に、炭化水素変換および有機化合物合成反応のための主要な処理を行うのに適している。
【0030】
本発明の材料を含む触媒組成物は、有利には、異性化、トランスアルキル化および不均化、アルキル化および脱アルキル化、水和および脱水和、オリゴマー化およびポリマー化、環化、芳香族化、分解、改質、水素化および脱水素化、酸化、ハロゲン化、水素化分解、水素化転化、水素化処理、水素化脱硫化および水素化脱窒化、窒素酸化物の触媒的排除の反応において用途を有し、該反応は、仕込原料油を含み、該仕込原料油は、飽和または不飽和脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、酸素含有有機化合物および窒素および/または硫黄を含有する有機化合物並びに他の官能基を含有する有機化合物を含む。
【0031】
次に、本発明は、以下の実施例において例示される。
【0032】
(実施例)
下記実施例では、用いられたエアゾール技術は、本発明の上記記載の中で記載されたものである。
【0033】
(実施例1(本発明:Si/Al比が5であるアルミノケイ酸塩材料の製造)
1.03gの三塩化アルミニウムを、30gのエタノール、14.5gの水、0.036mlのHClおよび1.4gの界面活性剤CTABを含む溶液に加えた。この集合物をアルミナ前駆体が完全に溶解するまで周囲温度で攪拌を続けた。次いで、3.59gのオルトケイ酸テトラエチル(tetraethyl orthosilicate:TEOS)を加えた。周囲温度で10分間攪拌した後、集合物を上記に記載されたようなエアゾール発生器の霧化チャンバに送り、上記のような圧力(P=1.5バール)の下に導入されたベクトルガス(乾燥空気)の作用の下で、溶液を微細な液滴の形態に霧化した。上記に記載された本発明において記載されたプロトコルを用いて液滴を乾燥した。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。次いで、粉体を採取し、これを、空気中5時間T=550℃で焼成した。固体は、小角XRD(図1)、窒素吸着等温線(図2:横座標に沿って示される表示P0は飽和蒸気圧である)、TEM(図3)および蛍光X線によって特徴付けられた。TEM分析は、虫食い構造によって特徴付けられる最終材料が組織化されたメソ細孔度を有することを示した。窒素吸着等温線分析によって、最終材料における比表面積SBET=800m/g、メソ細孔直径φ=2.4mmが得られた。小角XRDは角2θ=2.4に相関ピークを示した。ブラッグの関係式、2d・sin(1.2)=1.546により、メソ構造化されたマトリクスの細孔間の相関距離dを算出することができ、すなわち、d=3.7mmであった。これにより、e=d−φによって規定されるメソ構造化された材料の壁の厚さは、e=1.3nmであった。得られた球状基本粒子のSEM画像は、粒子サイズが50〜700nmの直径によって特徴付けられ、粒子サイズの分布の中心は300nm前後であることを示した。
【0034】
(実施例2(本発明):Si/Al比が10であるアルミノケイ酸塩材料の製造)
0.52gの三塩化アルミニウムを、30gのエタノール、14.7gの水、0.036mlのHClおよび1.49gの界面活性剤P123を含む溶液に加えた。この集合物を周囲温度でアルミナ前駆体が完全に溶解するまで攪拌を続けた。次いで、4.09gのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を加えた。周囲温度で18時間攪拌した後、集合物を、エアゾール発生器の霧化チャンバに送り、圧力(P=1.5バール)下に導入されたベクトルガス(乾燥空気)の作用の下で微細な液滴の形態に溶液を霧化した。上記本発明に記載されたプロトコルを用いて液滴を乾燥した。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。粉体を採取し、これを空気中5時間T=550℃で焼成した。固体は小角XRD(図4)、窒素吸着等温線(図5:横座標に沿って示される表示P0は飽和蒸気圧である)、TEM(図6)および蛍光X線によって特徴付けられた。TEM分析は、最終材料が虫食い構造によって特徴付けられる組織化されたメソ多孔度を有することを示した。窒素吸着等温線分析によって、最終材料の比表面積SBET=320m/g、メソ細孔直径φ=5.3nmが得られた。小角XRDは、角2θ=0.72に相関ピーク示した。ブラッグの関係式2d・sin(0.36)=1.5406により、メソ構造化されたマトリクスの細孔間の相関距離dを算出することが可能であり、すなわち、d=12.2nmであった。これにより、e=d−φによって規定されるメソ構造化された材料の壁の厚さはe=6.9nmであった。得られた球状基本粒子のSEM画像は、粒子サイズは50〜700nmの直径によって特徴付けられ、粒子サイズの分布の中心は300nm前後であることを示した。
【0035】
(実施例3(本発明):Si/Al比が3であるアルミノケイ酸塩材料の製造)
1.56gの三塩化アルミニウムを、30gのエタノール、14.2gの水、0.036mlのHClおよび1.4gの界面活性剤P123を含む溶液に加えた。この集合物を、アルミナ前駆体が完全に溶解するまで周囲温度で攪拌を続けた。次いで、3.14gのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を加えた。周囲温度で18時間攪拌した後、集合物を、上記に記載されたようなエアゾール発生器の霧化チャンバに送り、圧力(P=1.5バール)下に導入されたベクトルガス(乾燥空気)の作用の下で微細な液滴の形態に溶液を霧化した。上記に記載された本発明において記載されたプロトコルを用いて液滴を乾燥した。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。次いで、粉体を採取し、この粉体を空気中で5時間T=550℃で焼成した。固体は、小角XRD(図7)、窒素吸着等温線(図8:横座標に沿って示される表示P0は飽和蒸気圧である)、TEMおよび蛍光X線によって特徴付けられた。TEM分析は、最終材料が虫食い構造によって特徴付けられる組織化されたメソ多孔度を有することを示した。窒素吸着等温線分析により、最終材料の比表面積SBET=220m/gおよびメソ細孔直径φ=5.9nmが得られた。小角XRDは角2θ=0.72に相関ピークを示した。ブラッグの関係式2d・sin(0.36)=1.546により、メソ構造化されたマトリクスの細孔間の相関距離dを算出することができ、すなわち、d=12.2mmであった。これにより、e=d−φによって規定されるメソ構造化された材料の壁の厚さe=6.3nmであった。得られた球状基本粒子のSEM画像は、粒子サイズが50〜700nmの直径によって特徴付けられ、粒子サイズの分布の中心は300nm前後であることを示した。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1の固体を特徴付ける小角XRDのグラフである。
【図2】実施例1の固体を特徴付ける窒素吸着等温線のグラフである。
【図3】実施例1の固体を特徴付けるTEM写真である。
【図4】実施例2の固体を特徴付ける小角XRDのグラフである。
【図5】実施例2の固体を特徴付ける窒素吸着等温線のグラフである。
【図6】実施例2の固体を特徴付けるTEM写真である。
【図7】実施例3の固体を特徴付ける小角XRDのグラフである。
【図8】実施例3の固体を特徴付ける窒素吸着等温線のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソ構造化され、かつ、少なくとも2つの球状基本粒子によって構成されたアルミノケイ酸塩材料であって、該球状粒子のそれぞれは、メソ構造化されたマトリクスによって構成され、該マトリクスは、ケイ素酸化物およびアルミニウム酸化物をベースとし、1.5〜30nmの細孔サイズと、少なくとも1のSi/Alモル比とを有し、厚さ1〜20nmの非晶質壁を有し、該球状基本粒子は、10μmの最大直径を有している、アルミノケイ酸塩材料。
【請求項2】
Si/Alモル比が1〜10である、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
Si/Alモル比が1〜5である、請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
前記マトリクスの細孔サイズが1.5〜10nmである、請求項1〜3のいずれか1つに記載の材料。
【請求項5】
前記球状基本粒子の直径が50〜300nmである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の材料。
【請求項6】
比表面積が100〜1200m/gである、請求項1〜5のいずれか1つに記載の材料。
【請求項7】
比表面積が300〜1000m/gである、請求項1〜6のいずれか1つに記載の材料。
【請求項8】
ケイ素酸化物およびアルミニウム酸化物をベースとする前記マトリクスは、六方晶系、虫食いまたは立方晶系構造を有する、請求項1〜7のいずれか1つに記載の材料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載されたメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料を製造する方法であって、
a)溶液中で、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種のアルミナ前駆体および少なくとも1種のシリカ前駆体を混合する工程と、
b)工程a)で得られた溶液をエアゾールにより霧化し、200μm未満の直径を有する球状液滴を生成する工程と、
c)該液滴を乾燥する工程と、
e)該界面活性剤を除去して、メソ構造化された多孔度を有する材料を得る工程と
を包含する方法。
【請求項10】
シリカ前駆体が式Si(OR)(式中、R=H、メチルまたはエチル)を有する有機金属前駆体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アルミナ前駆体が式AlX(式中、XはハロゲンまたはNO基である)を有する無機アルミニウム塩である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
界面活性剤がホスホニウムイオンおよびアンモニウムイオンから選択されたイオン界面活性剤である、請求項9〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
界面活性剤は極性が異なる少なくとも2つの部分を有する共重合体の形態の非イオン界面活性剤である、請求項9〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記共重合体はブロック共重合体であり、該ブロック共重合体は、2、3または4ブロックを含み、各ブロックはポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
非イオン界面活性剤がポリ(エチレンオキシド)20−ポリ(プロピレンオキシド)70−ポリ(エチレンオキシド)20である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶液が水−アルコール混合物である、請求項9〜15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記溶液が酸性である、請求項9〜16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜8のいずれか1つによるか、または請求項9〜17のいずれか1つにより製造されたメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料を含む吸着剤。
【請求項19】
請求項1〜8のいずれか1つによるか、または請求項9〜17のいずれか1つにより製造されたメソ構造化されたアルミノケイ酸塩材料を含む触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−8509(P2006−8509A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185054(P2005−185054)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(591007826)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (261)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT FRANCAIS DU PETROL
【Fターム(参考)】