説明

メタルハライドランプ

【課題】凸状ジオメトリを有し、特にニュートラルホワイトを発色するメタルハライドランプでの色散乱を低減する。
【解決手段】第2のグループはMgハロゲン化物およびYbハロゲン化物の少なくとも一方を少なくとも第2のグループの成分に対して15mol%の比で含み、選択的にCaハロゲン化物が第2のグループの添加成分となり、その場合に金属ハロゲン化物に対する第2のグループ全体の比は多くとも55mol%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内部輪郭が凸状でありかつ丸い端部を有するセラミック放電管を有しており、この放電管は始動ガス、有利には希ガスとして水銀および金属ハロゲン化物を含む充填物を含んでおり、金属ハロゲン化物は2つのグループ、すなわちエミッタ(emitter)から成る第1のグループとウェッタ(wetter)から成る第2のグループとを有している、メタルハライドランプに関する。本発明は特にニュートラルホワイトを発色するセラミック放電管を有する高圧放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6218789号明細書にはメタルハライドランプが記載されている。この文献ではYbハロゲン化物が分子放射を発生させるために用いられている。放電管はクォーツガラスから成る。
【0003】
独国特許第19857585号明細書には、Mgヨウ化物をセラミクス放電管の充填物として用いたHgフリーのメタルハライドランプが記載されている。
【特許文献1】米国特許第6218789号明細書
【特許文献2】独国特許第19857585号明細書
【特許文献3】欧州出願第841687号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、凸状ジオメトリを有し、特にニュートラルホワイトを発色するメタルハライドランプでの色散乱を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、第2のグループはMgハロゲン化物およびYbハロゲン化物の少なくとも一方を少なくとも第2のグループの成分に対して15mol%の比で含み、選択的にCaハロゲン化物が第2のグループの添加成分となり、その場合に金属ハロゲン化物に対する第2のグループ全体の比は多くとも55mol%である構成により解決される。
【0006】
本発明の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
メタルハライドランプの色散乱は以前から品質を向上させる試みの焦点であった。この問題そのものは円筒状ジオメトリの放電管については相応の充填物の組成が既知となっているので、既に解決されているように見える。この場合、表面積に対する所定の比も考慮に入れなければならない。
【0008】
ただし驚くべきことに、解決手段を見いだすべく打ち立てられたこのような手法は、放電管が円筒状ジオメトリではなく等温性のための凸状ジオメトリを有する場合には有効ではないと判明した。凸状ジオメトリとは、中央部はまっすぐであっても楕円状にふくらんだ形状をしていてもかまわないが、端部は丸いということを意味する。丸い端部とは円形、楕円形またはこれらに類似の形状である。この問題は特にニュートラルホワイトを発色する充填物、つまり色温度が約4000K〜4900Kの充填物を使用する際に顕著となる。
【0009】
有利には、Ybハロゲン化物が10mol%〜60mol%、特に有利には15mol%〜45mol%の比で添加される。Ybハロゲン化物の一部、有利には50%までの成分をMgハロゲン化物によって置換することができる。ここで適切なハロゲンはヨウ素としているが、臭素も特に30%までの範囲でヨウ素を置換することができる。
【0010】
ランプ動作は電子安定化回路または従来のバラストによって行ってもよい。
【0011】
セラミックの凸状放電管を備え、特にニュートラルホワイトNDL(典型的には4000K〜4900K)を発色するメタルハライドランプは、溶融した金属ハロゲン化物に対して比較的高い希土類ヨウ化物の比を必要とする。希土類はREとも称する。放電管はバーナーとも称する。
【0012】
ゆえにランプの照明時間および耐用期間が進行していくうちに、再始動ピーク電圧UIおよび波高率UI/UIrmsが増大し、ランプの限界条件に達しやすくなり、ランプの消弧による早期エラーが生じる。
【0013】
円筒状放電管の場合、この問題は通常、周知のようにCaIを添加することにより解消される。ただし、使用されていくうちにランプコンポーネント上の溶融物の濡れ角または接触角が増大するので、典型的に少なくとも20mol%、特に25mol%のCaI濃度を超えると、溶融した金属ハロゲン化物の濡れ性は大幅に変化することがわかっている。
【0014】
パワー密度の高いランプの場合、経時劣化した充填物の濡れにより、所望の色温度での比較的高い個別の散乱が放電管の内壁に広がった充填物の濡れの変動の結果として発生する。ここでは、半球形の端部の凸状放電管を有するランプにおいて、パワー密度pは単位面積S[mm]当たりのランプ出力P[W]を意味するが、内部パワー密度pin=P/Sinと外部パワー密度pout=P/Soutとが区別され、また電極後方の空間での内面積および外面積と放電管の全表面積とのあいだの典型的な表面積比Sinter_deo/Si_tot;So,back_deo/Si_totとが区別される。ここでここでSin,Soutはそれぞれ放電管の内面積または外面積を表し、eo_backは管首と見なされるキャピラリを含めた電極後方の内部および外部の全空間を表す。
【0015】
2つのジオメトリでの典型的な比を次の表1に則して説明する。
【0016】
【表1】

【0017】
放電管の内壁内および放電管の外壁から周囲への放射伝搬および熱伝導としての輸送パワーの分割に大きく関わる種々の表面積比により、凸状放電管にきわめて均一な温度分布が形成される。
【0018】
例えば、円筒状ジオメトリを使用した場合、外面積と内面積との比は典型的には1.6〜2.0(表1では1.8)であり、凸状ジオメトリを使用した場合、この比は典型的には1.0〜1.35(表1では1.16)である。比較可能な出力段での差は典型的には50%(表1では55%)である。さらに、電極端部の後方の内面積と電極間の内面積との比は、円筒状ジオメトリでは0.95、凸状ジオメトリでは0.7であり、したがって円筒状ジオメトリのほうが35%も大きい。また電極端部の後方の外面積と電極間の外面積との比は、円筒状ジオメトリでは1.78、凸状ジオメトリでは0.77であり、したがって円筒状ジオメトリのほうが131%も大きくなる。
【0019】
これにより、所定の状況のもとでは、金属ハロゲン化物の充填物の定義された濡れ角が超過された場合、バーナー内部での充填物の分散が促進される。これにより個々の色温度の散乱が増大し、電気特性の変数にも相応の擾乱が起こる。
【0020】
色温度の個々の散乱は変更された充填物の組成により低減され、電極の後方空間の放電管の内壁上に定義された度合いの充填物濡れが形成される。同時に、ランプデータ、例えば再始動ピーク電圧および波高率は高いCaI成分を含む充填物に比較可能な結果となっている(REヨウ化物の活性が低い)。
【0021】
典型的な色温度の目標値は例えば4000K〜4400Kである。新しい充填物はCIEグラフにおけるプランクの軌跡からの小さい偏差かつ低い波高率で色温度における散乱を低減する。
【0022】
色温度Tnおよび波高率Crに対して照明時間100h後の許容可能な偏差範囲δは
δTn≦±75K,Cr=UI/UIrms<1.9
である。NDL色温度を設定するため、金属ハロゲン化物の溶融物へCaIが典型的には40mol%〜50mol%添加される。これによりREヨウ化物の活性が低下し、照明時間および耐用期間が進行していくうちにREハロゲン化物とランプ成分との反応速度が低下し、自由なヨウ素の生成が制限される。これは再始動ピーク電圧および波高率の増大を制限してしまう。
【0023】
本発明によれば、凸状放電管で比較可能な効果を達成するために、金属ハロゲン化物の添加物が充填物に対して所定の比をなすCaIに代えて用いられる。その際にREハロゲン化物の濃度の主たる部分、ひいてはその化学的活性は変化しない。これは濡れ角の変化としてあらわれ、色温度を設定する際に個々の散乱が小さく、定義された充填物分布がランプの電極後方空間に形成される。
【0024】
二価の金属ハロゲン化物成分YbまたはMg、有利にはYbIまたはMgIは完全にまたは部分的に、全充填物中少なくとも20mol%程度まで、したがってCaIのモル量の20/45までCaIの役割を果たすのに適切であることがわかっている。
【0025】
有利には、20mol%〜25mol%までの量のYbIを使用し、CaIを20mol%〜25mol%の量に維持するか、またはMgハロゲン化物およびYbハロゲン化物、特にヨウ化物MgIおよびYbIを同時に使用し、YbI+MgIの全量が金属ハロゲン化物に対して少なくとも20mol%、有利には20mol%〜35mol%の比をなし、CaIとともに金属ハロゲン化物の全充填物に対して40mol%〜50mol%の比をなすようにする。
【実施例】
【0026】
以下に本発明を図示の実施例に則して詳細に説明する。
【0027】
図1には硬質ガラスまたはクォーツガラスから成る外管1を備えたメタルハライドランプが示されている。この外管は長手軸線Aを有しており、フューズドインプレート2により一方側が閉鎖されている。フューズドインプレート2には外部へ通じる図示されていない2つの給電リードが設けられている。2つの給電リードはキャップ5で終端している。凸状のセラミクス放電管10は両側の封止されたAlから成り、金属ハロゲン化物の充填物を含む。この放電管は外管の軸線に合わせて配置されている。
【0028】
放電管10は特に内部が球状または楕円状であるか、または球状ジオメトリから幾分異なる、半球シェルのあいだに短い円筒状の中央ピースを備えたジオメトリを有する。特に放電管は図2および欧州出願第841687号明細書に示されているような寸法を有する。内壁の輪郭はここでは
・長さLおよび内径Rのほぼまっすぐな円筒状の中央ピース6と、同じ径Rの2つの半球状の端部ピース7とが設けられており、
・円筒状の中央ピースの長さLは内径R以下、つまりL≦Rであり、
・放電管の内部の長さ2R+Lは電極ギャップEAよりも少なくとも10%大きく、つまり2R+L≧1.1EAであり、
・放電管の径2Rは電極ギャップEAの少なくとも80%から多くとも150%まで、つまり1.5EA≧2R≧0.8EA
となっている。この実施例では特にLcyl=1mm,L=15mm,R=7mmである。
【0029】
外径と内径との比Ra/Ri=7.8/7=1.11である。内径とシリンダ長さとの比Ri/Lcyl=7/1=7である。電極ギャップは9.2mmである。
【0030】
電極3は放電管内へ突出している。電極ギャップEAと放電管の長さLとの比EA/L=9.2/15=0.61である。
【0031】
希ガスグループから選択された可燃性ガスは放電管内に冷間充填圧300mbarで配置される。放電管はさらに水銀および下記の表2のモル成分[mol%]の金属ハロゲン化物の混合物を含む。
【0032】
【表2】

【0033】
消費されるパワーは140W〜150Wの範囲である。このパワーと放電管の外面積との比を考慮すると、壁負荷は典型的には17.2W/cm〜18.45W/cmの比となる。
【0034】
またこのパワーと放電管の内面積との比を考慮すると、壁負荷は典型的には21.2W/cm〜22.75W/cmの比となる。
【0035】
このランプの色温度はいずれの場合にも約4200Kである。
【0036】
この実施例では所定の色温度および波高率で散乱がかなり低減された。照明時間100h後の評価を次の表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
表3は波高率Crおよび色温度Trに対する平均値および標準偏差を表している。
【0039】
所定の色温度での最小散乱および許容可能な波高率が、CaIのモル成分の66%をYbIで置換し、YbIを混合物全体の31.2mol%とした第2の実施例から得られる。
【0040】
所定の色温度での散乱の低減と同様の特性はCaIを部分的にMgIによって置換した場合にも達成される。所定の色温度での散乱の低減に対する混合の効果はアルミニウム酸化物のセラミック上に溶融した金属ハロゲン化物の濡れ角の低減から生じる。所定の色温度での散乱低減の効果は、YbIおよびMgIともに、溶融した金属ハロゲン化物中に少なくとも15mol%、有利には20mol%〜35mol%が添加されたのちに顕著となる。ただしその比は55mol%を超えてはならない。
【0041】
このことはCaIの置換に関連しており、これによりリードフラクション(read fraction)が高められ、色温度4000Kの金属ハロゲン化物の充填物の成分として約40mol%〜45mol%の範囲で用いられる。
【0042】
CaIは完全にまたは部分的にYbIまたはMgIによって個々にまたは一緒に、有利にはカルシウムヨウ化物の約50%〜70%の比で置換される。これは、最適な条件が金属ハロゲン化物DyI,HoI,TmIのうち少なくとも1つから成る典型的な含量15mol%〜25mol%の充填物で達成されること、MgI,YbIから成り、付加的に15%〜35%の範囲のCaIを含むウェッタのグループの比が混合物全体の15mol%〜55mol%の範囲になければならないことを意味する。
【0043】
図3,図4には、凸状放電管11および円筒状放電管12の内面積および外面積に関する特性が示されており、これらが比較される。実線は外表面を表しており、破線は内表面を表している。内面積および外面積の特性はランプの中央部すなわちx位置0の点からキャピラリ端部すなわちx位置23の点までの対称な積分に基づいており、図の上方に示されている。図の下方には放電管の凸状ジオメトリおよび円筒状ジオメトリでの内部輪郭および外部輪郭の例が示されている。
【0044】
凸状放電管では、積分された内面積iと外面積aとのあいだに平滑かつ密接な関係が存在する。円筒状放電管ではこの関係は変化しやすく、また突然の跳躍的変化を含むためにつねに微分できるわけではない。特に内面積が一時的に外面積よりも大きくなってしまうことがある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】高圧ランプの放電管の概略図である。
【図2】本発明に特に適する凸状放電管を示す図である。
【図3】凸状放電管の内面積および外面積に関する特性を示す図である。
【図4】円筒状放電管の内面積および外面積に関する特性を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 外管、 2 フューズドインプレート、 3 電極、 5 キャップ、 6 中央部、 7 端部、 10 セラミック放電管、 A 軸線、 L 長さ、 R 内径、 EA 電極ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部輪郭が凸状であり丸い端部を有するセラミック放電管を有しており、
該放電管は始動ガス、有利には希ガスとして水銀および金属ハロゲン化物を含む充填物を含んでおり、
前記金属ハロゲン化物は2つのグループ、すなわちエミッタから成る第1のグループとウェッタから成る第2のグループとを有している、
メタルハライドランプにおいて、
第2のグループはMgハロゲン化物およびYbハロゲン化物の少なくとも一方を少なくとも第2のグループの成分に対して15mol%の比で含み、
選択的にCaハロゲン化物が第2のグループの添加成分となり、その場合に金属ハロゲン化物に対する第2のグループ全体の比は多くとも55mol%である
ことを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項2】
第1のグループは少なくとも希土類ハロゲン化物を含む、請求項1記載のランプ。
【請求項3】
第1のグループはNaハロゲン化物および/またはタリウムハロゲン化物を添加物として含む、請求項2記載のランプ。
【請求項4】
色温度は4000K〜4900Kの範囲である、請求項1記載のランプ。
【請求項5】
希土類としてDy,Ho,Tmのうち少なくとも1つの元素を用いる、請求項2記載のランプ。
【請求項6】
金属ハロゲン化物に対する希土類の比は多くとも25mol%、例えば少なくとも15mol%である、請求項1記載のランプ。
【請求項7】
例えばNおよびTlの1:2〜2:1の混合物中、金属ハロゲン化物に対する添加物の比は多くとも34mol%である、請求項1記載のランプ。
【請求項8】
YbはYbIとして導入され、有利にはその比は金属ハロゲン化物の15mol%〜45mol%である、請求項1記載のランプ。
【請求項9】
CaはCaIとして導入され、有利にはその比は金属ハロゲン化物の0.1mol%〜30mol%である、請求項1記載のランプ。
【請求項10】
MgはMgIとして導入され、有利にはその比は金属ハロゲン化物の0.1mol%〜15mol%である、請求項1記載のランプ。
【請求項11】
前記放電管は長さL、内径Rのほぼまっすぐな円筒状の中央部およびこれと同じ径Rのほぼ半球状の2つの端部を有しており、
円筒状の中央部の長さLは内径R以下、つまりL≦Rであり、
放電管の内部長さ2R+Lは電極ギャップEAより少なくとも10%大きく、つまり2R+L≧1.1EAであり、
放電管の直径2Rは電極ギャップEAの少なくとも80%から多くとも150%まで、つまり1.5EA≧2R≧0.8EAである、
請求項1記載のランプ。
【請求項12】
ランプパワー対表面積の比は外面積で16W/cm〜19Wcm,内面積で20W/cm〜23W/cmの値にしたがう、請求項11記載のランプ。
【請求項13】
Sin/Sout<1.3の関係が当てはまる、請求項11記載のランプ。
【請求項14】
Sin,back_eod/Sin,inter_eod≦0.85の関係が当てはまる、請求項11記載のランプ。
【請求項15】
Sin,back_eod/Sout,inter_eod≦1.4の関係が当てはまる、請求項11記載のランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−269430(P2006−269430A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78628(P2006−78628)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(390009472)パテント−トロイハント−ゲゼルシヤフト フユール エレクトリツシエ グリユーラムペン ミツト ベシユレンクテル ハフツング (152)
【氏名又は名称原語表記】Patent−Treuhand−Gesellschaft fuer elektrische Gluehlampen mbH
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】