説明

メタン発酵槽

【課題】発酵部内に貯留された有機性廃棄物からスカムを分離して外部へ容易に除去することができるメタン発酵槽を提供する。
【解決手段】廃棄物Aからなる発酵液Bをメタン発酵させてメタンガスを発生させる発酵部17と、その発酵部17の中央部に設けられ、発酵部17で生成された処理液Dをスカムと分離した状態で貯留するための上部室18とを備える。発酵部17の高液位部に、スカムを収集するための受け止め壁27と、スカムを外部に排出するための排出路28を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、家庭から廃棄される生ごみ等の有機性廃棄物や、農業、畜産業、水産業等で廃棄される残渣、糞尿等の有機性廃棄物を発酵処理するための発酵処理システムに関するものであって、その処理システムに使用されるメタン発酵槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、家庭から廃棄される生ごみ等の有機性廃棄物には、プラスチック類や布、紙類のスカム発生原因物質である異物が混入されていることが多い。このような有機性廃棄物がメタン発酵槽に投入されてしまうと、異物がスカムとなって発酵槽内で浮上して、発酵効率の低下を招く。すなわち、生物分解による発酵処理が行われても、プラスチック類は生物分解されず、また、布、紙類は生物分解に時間がかかるため、有機性廃棄物全体の発酵処理が円滑に行われなくなる。このため、バイオガスであるメタンガスの発生量が減少する。従って、従来ではメタン発酵槽への有機性廃棄物の投入に先立って、その有機性廃棄物からプラスチック類や布、紙類の異物を分別して除去していた。
【0003】
しかしながら、このように異物の分別除去の前処理を行った場合でも、その異物を適切に除去することは困難であった。そして、発酵槽内においてスカムの層が厚くなると、発酵槽内の有機性廃棄物が流動しにくくなり、場合によってはメタン発酵槽の運転に障害となるおそれもあった。
【0004】
このような問題に対応するため、例えば特許文献1に開示されるような構成のメタン発酵槽も従来から提案されている。この従来構成においては、有機性廃棄物を貯留してメタンガスを発生させる発酵部の頂壁に、発酵部内で生成された生成ガス、処理液及びスカムを噴出するための噴出管が貫設されている。発酵部の上部には、噴出管から噴出された生成ガス、処理液及びスカムを分離するための分離部が設けられている。
【0005】
そして、発酵部内の有機性廃棄物の生物分解による発酵にともない、生成されたメタンガスが発酵部内の上部に貯留される。この発酵部内の生成ガスの圧力が高くなると、間欠泉現象により生成ガス、処理液及びスカムが一体となって、噴出管から分離部内に噴出される。そして、分離部内において、生成ガス、処理液及びスカムが比重差によって分離され、上部の生成ガスは比重が小さいためにガス収集管を介して分離部外に排出されるとともに、比重の高い下部の処理液は還流管を介して発酵部に還送される。また、スカムは分離部内で処理液の液面に浮上状態で堆積され、分離部の上面に設けられた取出口の開閉蓋を開放した状態で、その取出口を介して外部に取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−197696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、この従来構成においては、スカム、処理液及び生成ガスが噴出される噴出管の開口径を小さく設定しないと、固体状のスカムを生成ガスの圧力によって、処理液及び生成ガスとともに噴出管から効果的に噴出させることができない。ところが、噴出管の開口径を小さく設定した場合には、噴出管からのスカムや処理液の噴出量が減少して、処理能力の低下を招くだけではなく、スカムが噴出管内に詰まってしまうという問題があった。
【0008】
また、この従来構成においては、分離部の上面にスカムを取り出すための開放可能な取出口が設けられている。従って、取出口を気密状態に保持することが困難で、分離部内に大気が混入しやすくなり、このため、発酵部内の嫌気性環境が悪化して、発酵に悪影響が与えられるという問題もあった。
【0009】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、発酵部内に貯留された廃棄物からスカムを分離して外部へ容易に排出除去することができるメタン発酵槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明は、廃棄物からなる発酵液を貯留してメタンガスを発生させる発酵部と、その発酵部の中央部に設けられ、前記発酵部で生成された処理液をスカムと分離した状態で貯留するための上部室とを備えたメタン発酵槽において、前記発酵部の高液位部に、スカムを外部に排出するためのスカム排出手段を設けたことを特徴としている。
【0011】
従って、この発明のメタン発酵槽においては、発酵部内に貯留された廃棄物よりなる発酵液が生物分解によって発酵されると、メタンガス及び処理液が生成される。このとき、発酵部内の発酵液にプラスチック類や布、紙類のスカム発生原因物質である異物が混入している場合には、その異物がスカムとなって発酵液の液面に浮上する。そして、発酵液の発酵によりメタンガス及び処理液の生成が進行すると、処理液が発酵部の中央部の上部室内に送り込まれて貯留される。その後、廃棄物の投入により、上部室の処理液が槽外へ排出される。その後開閉弁を開放して、発酵部内の発酵液の液面が高液位部まで上昇したとき、発酵液の液面に浮上しているスカムが排出手段により少量の発酵液とともに外部に排出される。よって、発酵液内の廃棄物からスカムを効果的に分離して外部へ容易に排出除去することができる。
【0012】
前記の構成において、前記発酵部内の発酵液を水平面内で旋回させる旋回手段を設け、発酵部の高液位部には旋回されるスカムを受け止める受け止め手段を設け、その受け止め手段の上流部に前記スカム排出手段を設けるとよい。
【0013】
前記の構成において、前記受け止め手段を受け止め壁によって構成するとよい。
前記の構成において、前記スカム排出手段には、スカムと発酵液とを分離するための分離手段を接続するとよい。
【0014】
前記の構成において、前記分離手段には、分離された発酵液を前記発酵部に戻すための戻し管路を接続するとよい。
前記の構成において、前記戻し管路には発酵液を加温するための加温手段を設けるとよい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明によれば、発酵部内に貯留された廃棄物よりなる発酵液からスカムを分離して外部へ容易に排出することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態のメタン発酵槽を備えた発酵処理システムを示す構成図。
【図2】図1の2−2線における拡大断面図。
【図3】図1の3−3線における部分拡大断面図。
【図4】図1のメタン発酵槽の動作状態を示す断面図。
【図5】図4に続くメタン発酵槽の動作状態を示す断面図。
【図6】図5に続くメタン発酵槽の動作状態を示す断面図。
【図7】第2実施形態のメタン発酵槽を示す部分断面図。
【図8】図7の8−8線における部分拡大断面図。
【図9】第3実施形態のメタン発酵槽を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化した第1実施形態を図1〜図6に従って説明する。
図1及び図2に示すように、この実施形態のメタン発酵槽11は、上下両端を密閉した円筒状の槽本体12を備えている。槽本体12の内部の上端寄り部分には、漏斗状の区画壁13が固定されている。区画壁13の下面中央部には、下部センタチューブ14が下方へ向かって突設されている。区画壁13の上面中央部には、側壁に複数の透孔15aを形成した上部センタチューブ15が上方へ向かって突設されている。区画壁13の上面外周部には、槽本体12の内周面及び上部センタチューブ15からそれぞれ間隔を隔てて低い円筒状の堤壁16が突設されている。そして、区画壁13によって槽本体12の内部が、有機性の廃棄物Aを原料とした発酵液Bを貯留してメタンガスを発生させる下側の発酵部17と、その発酵部17で生成された処理液Dを下部センタチューブ14から導入することにより、スカムSと分離して貯留するための上側の上部室18とに区画されている。
【0018】
前記槽本体12の上部において、発酵部17と上部室18との間にはガス流路19が設けられ、そのガス流路19中には開閉弁20が接続されている。堤壁16の外側において区画壁13には、発酵部17と上部室18とを連通するための複数のミキシングシャフト21が等間隔おきに配置され、下方へ向かって突設されている。各ミキシングシャフト21の下端開口部21aは、槽本体12の円周方向の同一方向へ向かって開口されている。
【0019】
前記下部センタチューブ14の下端部には、出入口23が形成されている。この出入口23は、発酵部17の放射方向に対して傾斜し、かつミキシングシャフト21の下端開口部21aと同方向を指向している。この出入口23は、発酵部17内の発酵液Bを水平面内及び鉛直面内で旋回させるための旋回手段としての旋回装置22を構成している。
【0020】
前記槽本体12及び下部センタチューブ14の周壁には、その下部センタチューブ14の出入口23を介して槽本体12の発酵部17内に廃棄物Aを供給するための廃棄物供給パイプ24が貫設されている。槽本体12の頂壁には、上部室18内から生成ガスを例えば図示しないガス貯留ホルダーに向かって排出するためのガス排出パイプ25が貫設されている。堤壁16の外側における区画壁13及び槽本体12の周壁には、上部室18内において堤壁16からオーバーフローする処理液Dを外部に排出するための処理液排出パイプ26が貫設されている。
【0021】
図1及び図2に示すように、前記槽本体12の発酵部17内における発酵液Bの最高液位部L1を含む高液位部には、スカムSを受け止める受け止め手段としての受け止め壁27が下部センタチューブ14の外周面と槽本体12の内周面との間において立設状態で半径方向に延長されている。なお、最高液位部L1の区画壁13の下面上端によって規定される。そして、図6に示すように、前記上部室18内の処理液Dが下部センタチューブ14を介して、旋回装置22の旋回流出入口23から発酵部17内に流れ込むことにより、発酵部17内の発酵液Bが水平方向及び鉛直方向に旋回される。その旋回により、発酵液Bが攪拌されるとともに、その発酵液Bの液面上に浮上しているスカムSが発酵液Bとともに旋回されて、受け止め壁27により受け止められて収集される。
【0022】
図2及び図3に示すように、前記発酵部17内の発酵液Bの高液位部において受け止め壁27よりも水平旋回流の上流部には、スカムSを外部に排出するためのスカム排出手段を構成する排出パイプよりなる排出路28が設けられている。この排出路28は、受け止め壁27と平行に延長されている。また、この排出路28の先端の入口部28aは、発酵部17内の発酵液Bの最高液位部L1と受け止め壁27の下端との間の前記高液位部において、発酵部17の中心側に向かって開口されている。そして、発酵部17内の発酵液Bの液面が高液位部まで上昇したときにおいて、水平方向の旋回流により、受け止め壁27によって収集されたスカムSが発酵液Bとともに、入口部28aから排出路28内に進入して外部に排出される。
【0023】
図1に示すように、前記メタン発酵槽11の外側において排出路28の外端には、スカム処理管路29が接続されている。スカム処理管路29には、メタンガスが槽外に漏出しないようにトラップした水封部29aが形成されるとともに、排出路28から排出されるスカムS及び発酵液BからスカムSを分離して捕捉するための分離手段としてのフィルタ30が接続されている。スカム処理管路29におけるフィルタ30の下流側には、前記発酵部17に至る戻り管路36が接続されている。その戻り管路36には、スカムSの除去後の発酵液Bを温水等により加温するための加温手段としての熱交換器31が接続されている。熱交換器31の下流側には、ポンプ32及び切換バルブ33が接続されている。
【0024】
そして、切換バルブ33が一方側に切り換えられた場合には、ポンプ32によって圧送される発酵液Bが分岐管路36aを介して槽本体12の発酵部17内に戻され、切換バルブ33が他方側に切り換えられた場合には、発酵液Bが戻り管路36の途中の供給槽34内に送られる。供給槽34内には家庭から廃棄される生ごみ等の廃棄物Aが投入され、その廃棄物Aとスカム処理管路29からの発酵液Bとが混合されて、供給ポンプ35の作動により前記廃棄物供給パイプ24を介して発酵部17内に供給される。
【0025】
次に、前記のように構成されたメタン発酵槽の作用を説明する。
さて、このメタン発酵槽11の運転時には、図1に示すように、槽本体12の発酵部17内に所定量の発酵液Bが貯留され、発酵部17内の発酵液Bが生物分解によって発酵されて、メタンガス及び処理液Dが生成される。このとき、ガス流路19の開閉弁20が開放されると、発酵部17及び上部室18の内部圧力が等しくなって、発酵部17内の発酵液Bの液面と上部室18内の処理液Dの液面とが均等になる。
【0026】
そして、開閉弁20が閉じられると、図4に示すように、発酵液Bの発酵にともなう生成メタンガスにより、発酵部17内の圧力が高くなって、発酵部17内の発酵液Bの液面が押し下げられる。このため、発酵部17内の発酵液Bが発酵部17の中央下部の出入口23から下部センタチューブ14を通るとともに、発酵部17の内部周縁から各ミキシングシャフト21を通って、上部室18内に送り込まれて貯留される。このとき、発酵部17から上部室18内への発酵液Bの移動にともない、上部室18内の上部に滞留している生成ガスがガス排出パイプ25を介して外部に排出されて、図示しないガス貯留ホルダーに貯留される。一方、発酵部17内の発酵液Bにスカム発生原因物質であるプラスチック類や布、紙類の異物が混入している場合には、その異物がスカムとなって発酵液Bの液面に浮上する。
【0027】
この状態で、図5に示すように、廃棄物供給パイプ24から下部センタチューブ14内に廃棄物Aが供給されると、その廃棄物Aが旋回装置22の出入口23から発酵部17内に流出される。このとき、下部センタチューブ14内への廃棄物Aの供給により、上部室18における堤壁16内の処理液Dの液面が上昇し、その堤壁16をオーバーフローした処理液Dが処理液排出パイプ26を介して外部に排出される。
【0028】
さらに、図6に示すように、ガス流路19の開閉弁20が開放されると、発酵部17内の生成ガスがガス流路19を介して上部室18内に流入し、上部室18内の低い状態の圧力が高くなるとともに、発酵部17内の高い状態の圧力が低くなる。このため、上部室18内の処理液Dが下部センタチューブ14を介して、旋回装置22の旋回流出入口23から発酵部17内へ流れ込み、発酵部17内の発酵液Bが水平方向及び鉛直方向に旋回されながら撹拌される。このとき、図2に示すように、発酵液Bの液面上に浮上しているスカムSが発酵液Bとともに水平方向に旋回されながら、受け止め壁27により受け止められて収集される。
【0029】
その後、前記上部室18から発酵部17への処理液Dの流れ込みにともなって、発酵部17内の発酵液Bの液面が最高液位部L1まで上昇すると、発酵液Bの液面に浮上しているスカムSが発酵液Bとともに、排出路28の入口部28aから排出路28内に進入して外部に排出される。そして、排出されたスカムS及び発酵液Bがスカム処理管路29に流される途中で、フィルタ30によりスカムSが捕捉されるとともに、残りの発酵液Bが熱交換器31で加温されて槽本体12の発酵部17内に戻され、または供給槽34に投入されて廃棄物供給パイプ24から発酵部17内に再供給される。
【0030】
以上のように、図1及び図4〜図6に示す動作を繰り返すことにより、発酵部17内の発酵液Bの旋回撹拌が無動力によって行われて、生成ガス及び処理液の生成が連続的に行われる。
【0031】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) このメタン発酵槽においては、発酵部17内において発酵液Bの発酵にともない、メタンガス及び処理液Dの生成が進行すると、発酵部17内の発酵液BがスカムSと分離されて、発酵部17の中央部の上部室18内に送り込まれて貯留されるとともに、処理液排出パイプ26から外部に排出される。そして、発酵部17内の発酵液Bの液面が最高液位部L1まで上昇したとき、発酵液Bの液面に浮上しているスカムSが排出路28を通して外部に排出される。よって、発酵部17内の発酵液BからスカムSを効果的に分離して外部に排出除去することができて、発酵部17内の発酵液B中に多量のスカムSが残留することを防止できて、発酵効率の低下を招くおそれを抑制することができる。
【0032】
また、このメタン発酵槽においては、発酵液Bの液面に浮上しているスカムSが排出路28を通して外部に排出されるため、従来構成とは異なり、槽の壁面にスカムの取出口を設けて、開閉蓋により覆う必要がない。よって、取出口から、槽内の生成ガスにエアが混入するおそれを抑制することができる。従って、このメタン発酵槽内においては、良好な嫌気性雰囲気を維持できる。
【0033】
(2) このメタン発酵槽においては、発酵部17の高液位部に、発酵液Bとともに旋回されるスカムSを受け止めるための受け止め壁27が設けられている。そして、前記排出路28の入口部28aが受け止め壁27の上流部の近傍に開口されている。このため、発酵部17内の発酵液Bが液面上昇されながら、水平面内で旋回されるとき、発酵液Bの液面に浮上しているスカムSが発酵液Bとともに旋回されて、受け止め壁27により受け止められる。従って、スカムSを排出路28の入口部28a付近に効率よく収集することができて、発酵部17内の発酵液Bの液面が最高液位部L1上昇したときに、そのスカムSを排出路28から外部へスムーズに排出することができる。
【0034】
(3) このメタン発酵槽においては、発酵部17内において収集されたスカムが発酵液Bとともに排出路28を介して排出される。従って、発酵液Bが搬送流となってスカムを流出させる作用を果たすため、スカムの排出が円滑に実行される。そして、スカムが分離された発酵液Bは熱交換器31によって加温されて直接発酵部17に、あるいは供給槽34を経て発酵部17内に再度供給される。従って、発酵部17内を適温に維持することができて、発酵部17内の適切な発酵状態を得ることができる。従って、メタンガスを効率よく採取できる。
【0035】
(4) このメタン発酵槽においては、発酵部17を経た発酵液Bがスカム処理管路29を経て供給槽34に供給されるため、その供給槽34内において予備発酵させることができる。そのため、発酵部17内に供給された廃棄物は発酵部17内の発酵にスムーズに移行できる。しかも、外部から供給槽34内に新たに供給された発酵液B内のスカム発生原因となるプラスチック類等のスカム発生原因物質の比率が高い場合、処理管路29を経た発酵液Bを供給槽34内に供給することによって、スカム発生原因物質の比率を下げることができる。このため、スカム発生原因物質が供給ポンプ35や廃棄物供給パイプ24内で詰まったりすることを防止できる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
この第2実施形態では、図7及び図8に示すように、槽本体12の発酵部17内において、排出パイプよりなる排出路28の途中に可撓パイプ38が設けられ、排出路28の先端部分が可撓パイプ38を介して上下に傾動可能なように構成されている。排出路28の入口部28aには、発酵部17内の発酵液Bの液面に浮上するフロート39が設けられている。このため、排出路28の入口部28aが発酵液Bの液面位置に保持される。そして、図8に示すように、発酵液Bの液面が例えば、最高液位部L1、中間液位部L2及び最低液位部L3と変位する過程において、発酵液Bの液面に浮上しているスカムSが発酵液Bとともに、排出路28の入口部28aから排出路28内に進入して外部に排出される。
【0037】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態における(1)〜(4)に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができるとともに、以下の効果を得ることができる。
【0038】
(5) このメタン発酵槽においては、排出路28の入口部28aが発酵部17内の液面の上下に従って上下するため、より多くのスカムを捕捉して排出させることができる。
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0039】
この第3実施形態では、図9に示すように、メタン発酵槽11における槽本体12の排出路28から排出されるスカムS及び発酵液Bが、スカム処理管路29を介して処理装置40内に投入されるようになっている。この処理装置40は、スクリーンまたはスクリュープレスや遠心分離等の脱水機能を有し、スカムS及び発酵液Bの水分を分離して、スカムS及び発酵液Bの混合物をケーキ状に固めて処理する。
【0040】
従って、この第3実施形態においては、前記第1実施形態における(1)及び(2)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(6) スカムS及び発酵液Bのケーキが生成されるため、そのスカムS及び発酵液Bの運搬や廃棄が容易になる。
【0041】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 受け止め壁27及び排出路28を相互間隔をおいて、同一水平面内に複数設けること。
【0042】
・ 受け止め壁27をネット状のものによって構成すること。
【符号の説明】
【0043】
11…メタン発酵槽、12…槽本体、13…区画壁、14…下部センタチューブ、16…堤壁、17…発酵部、18…上部室、21…ミキシングシャフト、22…旋回手段としての旋回装置、23…旋回流出入口、24…廃棄物供給パイプ、27…受け止め手段としての受け止め壁、28…スカム排出手段としての排出路、30…分離手段を構成するフィルタ、36…管路、A…廃棄物、B…発酵液、D…処理液、S…スカム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物からなる発酵液を貯留してメタンガスを発生させる発酵部と、
その発酵部の中央部に設けられ、前記発酵部で生成された処理液をスカムと分離した状態で貯留するための上部室とを備えたメタン発酵槽において、
前記発酵部の高液位部に、スカムを外部に排出するためのスカム排出手段を設けたことを特徴とするメタン発酵槽。
【請求項2】
前記発酵部内の発酵液を水平面内で旋回させる旋回手段を設け、発酵部の高液位部には旋回されるスカムを受け止める受け止め手段を設け、その受け止め手段の上流部に前記スカム排出手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載のメタン発酵槽。
【請求項3】
前記受け止め手段を受け止め壁によって構成したことを特徴とする請求項2に記載のメタン発酵槽。
【請求項4】
前記スカム排出手段には、スカムと発酵液とを分離するための分離手段を接続したことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のメタン発酵槽。
【請求項5】
前記分離手段には、分離された発酵液を前記発酵部に戻すための戻し管路を接続したことを特徴とする請求項4に記載のメタン発酵槽。
【請求項6】
前記戻し管路には発酵液を加温するための加温手段を設けたことを特徴とする請求項5に記載のメタン発酵槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−176355(P2012−176355A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40180(P2011−40180)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】