説明

メチルビニルエーテルの連続的製造方法

反応を連続した気相の不在でかつ≦30質量%の全液相中のメチルビニルエーテル−濃度で実施する、40〜300℃の温度及び0.1〜5MPa(絶対)の圧力で塩基性のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の存在で液相中でメタノールをエチンと反応させることによるメチルビニルエーテルの連続的製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、40〜300℃の温度及び0.1〜5MPa(絶対)の圧力で塩基性のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の存在で液相中でメタノールとエチンとを反応させることによるメチルビニルエーテルの連続的製造方法に関する。
【0002】
ビニルエーテル類は、幅広い使用分野を有する重要な化合物の種類である。例えば、これらのビニルエーテル類は、とりわけポリマー及びコポリマーにおけるモノマー構成要素として、コーティング(Beschichtungen)、接着剤、印刷インキ(Druckfarben)において並びに放射線硬化性塗料において使用される。さらなる適用分野は、中間生成物、フレグランス及びフレーバー並びに薬剤学的製品(pharmazeutischen Produkten)の製造である。
【0003】
ビニルエーテル類の工業的製造は通例、塩基性触媒の存在で相応するアルコール類とエチンとを反応させることにより行われる (Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版、2000 Electronic Release、章"VINYL ETHERS - Production"及びW. Reppe他、Justus Liebigs Ann. Chem.、601 (1956)、135〜138頁参照)。ビニル化は液相中並びに気相中で実施されることができる。気相中でのビニル化の際に塩基性の不均一系触媒、例えば活性炭上のKOH、又はMgO又はCaOが使用される。液相中では、強い発熱反応は一般的にアルカリ金属水酸化物−又はアルカリ金属アルコキシド−触媒の存在で実施される。
【0004】
DE-A 100 17 222には、塩基性のアルカリ金属化合物及び助触媒としての1,4−ブタンジオールのモノエーテル又はジエーテルの存在でアルコールとアルキンとを反応させることによるN−アルケニルエーテル類の製造方法が記載されている。ビニル化は、100〜200℃の温度、5MPa未満のエチン分圧及び数時間の反応時間で不連続に、半連続的に又は連続的に行われる。挙げられた例は、液状の反応混合物及びその上にある気相を含有しているオートクレーブ中でのt−ブチル−ビニルエーテル及びフェニル−ビニルエーテルの半連続的製造に関する。記載された方法にとって不利であるのは、反応制御に応じて相応して高い濃度の未反応エチンを含有しうるものであり、ひいてはエチンの分解傾向のためにの安全技術的な問題をまねきうる、気相の形成である。
【0005】
SU 481 589には、100〜154℃の温度及び0.7〜1.3気圧(約0.07〜0.13MPa(絶対))の圧力で塩基性のアルカリ金属化合物及び溶剤としてのビニル化反応の高沸点副生物の存在で相応するアルカノールとエチンとを反応させることによるN−C−〜C−アルキル−ビニルエーテル類の製造方法が記載されている。記載された方法にとって不利であるのは、反応混合物中のさらなる成分であり、かつその体積必要量のために空時収量の減少をまねく、溶剤の使用である。さらに使用すべき溶剤の必要な量は、費用がかかりかつ約6〜12日かかるビニル化によってはじめて得ることができる。さらに不利であるのは、反応制御に応じて相応して高い濃度の未反応エチンを含有しうるものであり、ひいてはエチンの分解傾向のために安全技術的な問題をまねきうる、気相の形成である。
【0006】
DD-A 298 775及びDD-A 298 776は、20〜200℃の温度及び0.05〜0.3MPa(絶対)の圧力で塩基性のアルカリ金属化合物、助触媒としてのクラウンエーテルもしくはポリエチレングリコール及び溶剤の存在でアルコールとエチンとを反応させることによるN−アルキルビニルエーテル類の製造方法を教示し、その際にエチン/アルコール−モル比は1〜20である。挙げた明細書の教示によれば、反応は反応混合物中の低いアルコール濃度を維持しながら行われるべきであり、その際に反応混合物中のより多量のアルコールが回避されるべきである。低沸点ビニルエーテル類、例えばメチル−ビニルエーテルの製造の際に、これらのビニルエーテル類は好都合には連続的に反応混合物から留去される。
【0007】
US 3,370,095には、160〜200℃の温度及び大気圧で塩基性のアルカリ金属化合物及び溶剤としてのC10−〜C22−アルカノール又はそのビニルエーテルの存在で低分子量アルカノールとエチンとを反応させることによる低分子量N−アルキル−ビニルエーテル類の連続的な又はバッチ式の製造方法が開示されており、その際にエチンに対する低分子量アルカノールのモル比は1〜2である。挙げられた高められた温度及び相対的に低い圧力下に、形成される低分子量N−アルキル−ビニルエーテルは過剰の低分子量アルカノール及び未反応のエチンと共に連続的に液相から蒸発され、かつ反応装置から排出される。
【0008】
DD-A 298 775、DD-A 298 776及びUS 3,370,095に記載された方法にとって不利であるのは、反応混合物中のさらなる成分であり、かつその体積必要量のために空時収量の減少をまねく、溶剤の使用である。さらに、反応混合物からの低沸点アルキル−ビニルエーテル類の連続留去に基づいて相対的に低い反応圧のみが可能であり、このことは液相中へのエチンの僅かな溶解度、ひいては僅かにすぎない反応速度をまねく。そのうえ供給されるエチンの量は低く保持されるべきである、それというのもさもなければエチンの分解傾向のために安全技術的な問題をまねきうる、エチン含有気相が形成されるからである。さらにUS 3,370,095に記載された方法は高められたエチン必要量を必要とする、それというのも溶剤として使用すべきC10−〜C22−アルカノールは反応の過程で同様にビニル化されるからである。
【0009】
EP-A 0 733 401は、0〜300℃の温度及び0.2〜3MPa(絶対)の圧力で液相中で塩基性のアルカリ金属化合物の存在でエチンとアルコールとを不連続に反応させて相応するビニルエーテルに変換する方法を教示し、その際に、連続した気相の不在でアセチレンは等圧的に5〜100%の飽和度まで液相中へ導入される。
【0010】
前記の半連続的な又は不連続な方法にとって不利であるのは、特に複数の反応バッチを必要とする量の製造の際に、反応装置を装填し、加熱し、加圧し、冷却し、放圧しかつ空にすることによる時間−、労働−及びエネルギー−集約的な作業工程である。さらに、半連続的な合成の間に反応物−及び生成物濃度に関して大きな濃度範囲に広がり、このことは転化率に依存している反応速度をまねき、かつ望ましくない副生物の形成を促進しうる。挙げられた欠点の結果としてより低い選択率が生じ、かつ必要な準備時間を考慮しても、化学反応速度に基づくよりも、明らかにより少ない僅かな空時収量が可能でありうる。
【0011】
ドイツ連邦共和国特許出願(DE-Az.)第101 59 673.1号は、40〜300℃及び0.11〜5MPa(絶対)で塩基性のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の存在で液相中で相応するアルコールとエチンとを反応させることによるビニルエーテル類の連続的な製造方法を教示し、その際に≧90%のアルコール−転化率が調節され、かつ連続した気相の不在で作業される。
【0012】
本発明によれば、前記の方法が約6℃のメチルビニルエーテルの極めて低い沸点のために、安全技術的に問題のない、かつ同時に経済的な方法のための満足すべき解決手段を提供しないことが認識されていた。
【0013】
それに応じて、前記の欠点を有さず、単純に実施されるべきであり、安全技術的に特にガス状エチンの取扱いに関して問題がなく、メチルビニルエーテルに対する高い選択率を有し、かつメチルビニルエーテルの全体として高い収量及び高い空時収量を可能にする、メタノールのビニル化によるメチルビニルエーテルの製造方法を見出すという課題が存在していた。
【0014】
それに応じて、40〜300℃の温度及び0.1〜5MPa(絶対)の圧力で塩基性のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の存在で液相中でメタノールとエチンとを反応させることによるメチルビニルエーテルの連続的製造方法が見出され、前記方法は、反応が連続した気相の不在でかつ≦30質量%の全液相中のメチルビニルエーテル−濃度で実施されることにより特徴付けられている。
【0015】
その際に連続した気相とは、大きさが個々の離散した泡又は小泡を超える反応空間内部のガス空間であると理解されるべきである。連続した気相を回避するためには、反応を≦30質量%の全液相中のメチルビニルエーテル−濃度で実施することが本質的である。易揮発性のメチルビニルエーテルの記載した相対的に低い濃度により、混合物の蒸気圧は明らかに低下されるので、このことは気相の形成に決定的に対抗する。
【0016】
好ましくは、反応は、≦25質量%、特に好ましくは≦20質量%、極めて特に好ましくは≦15質量%及び殊に≦10質量%の全液相中のメチルビニルエーテル−濃度で実施される。メチルビニルエーテル濃度の下限は、全液相中で一般的に≧1質量%、好ましくは≧2質量%及び特に好ましくは≧5質量%である。液相中の100質量%に不足している含分は、過剰のメタノール、塩基性のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物、溶解したエチン及び場合により形成された副生物並びに場合により添加された付加的な溶剤を含む。
【0017】
全液相中のメチルビニルエーテル−濃度の本発明に本質的な特徴に加えて、連続した気相の形成に補助的に対抗するさらなる措置として、液相中のエチン−ガス溶解度の範囲内での全液相中のエチン−濃度の正確な制御、反応混合物の強力混合及び装置及び管路の頂部範囲内での取出可能性が挙げられる。
【0018】
一般的にエチンは、液相中の最大ガス溶解度の≦100%、好ましくは≦95%、特に好ましくは≦90%及び極めて特に好ましくは≦80%の量で添加される。液相中のエチン−濃度の下限は連続した気相の回避に関連して非本質的である。
【0019】
反応器として、本発明による方法の場合に技術文献に記載された気−液−反応のための装置が原則的に使用されることができる。連続した気相の形成に補助的に抵抗するために、反応混合物の強力混合を生じさせることは有利である。これは、例えば液相中へのエチンの効率的な導入により及び/又は反応混合物の混合のためのさらなる措置により、例えば強力撹拌又は強力な流れの発生により達成されることができる。反応混合物の強力混合はさらに空時収量の増大にも寄与する。
【0020】
反応は、本発明による方法の場合に単独の反応器中で又は複数の直列接続された反応器、例えば反応器カスケード中で実施されることができる。適している反応器として撹拌釜、撹拌釜カスケード、流管(好ましくは内部構造物を備える)、気泡塔及びループ反応器を挙げることができる。効率的な導入を達成するために、エチンは撹拌釜の使用の場合に好ましくは撹拌機により、かつ流管、気泡塔及びループ反応器の使用の場合に好ましくはノズルにより導入される。
【0021】
本発明による方法の場合に特に好ましいのは、ジェットループ反応器の使用である。内部の差込管及び出発物質及び場合によりいわゆるジェットノズルを経ての外部循環流の供給により、特に強力な混合を生じさせる内部循環流が発生される。ジェットノズルによる十分に大きい運動量導入を保証するために、好ましくは外部循環路を備えた、ジェットループ反応器が運転される。この際に連続的に反応混合物は取り出され、かつポンプ及び場合により熱交換器を経てジェットノズルに返送される。ジェットノズルは、反応器の底部又は頂部に取り付けられていてよく、その際に最後に挙げた場合に好ましくは同心の差込管は、導入される液体流の流動方向に沿って反応器の中心に存在する。反応器の最高点でのジェットノズルの配置は、液体循環利用の停止の際に液体がジェットノズルのガス搬送部へ上昇できないという利点を有する。相応して、頂部側のジェットノズルの使用の際に循環流の取出しは反応器の底部に存在する。自己吸引性ジェットノズルの使用は、付加的な、組み込まれた安全機構である、それというのも、サーキュレーションポンプ、ひいては液体駆動ジェットの故障の場合にガスがもはや吸引されないからである。
【0022】
反応器の頂部での気泡の理論的に考えられる集積を確実に防止するために、引き続きメチルビニルエーテルの後処理及び単離のために取り出すべき反応混合物は好ましくは反応器の最も高い位置で取り出される。
【0023】
溶液中に存在する残りのエチンを同様にメタノールと反応させるために、主反応器中での反応が出発化合物であるメタノール及びエチンの供給下に、かつ1つ又はそれ以上の後反応器中での反応が出発化合物の別の供給なしで実施される方法が好ましい。後反応器として、例えば流管又は滞留容器(Verweilzeitbehaelter)が使用されることができる。逆混合を回避するために、好ましくはカスケード化された後反応器が使用される。一般的に、後反応器は主反応器よりも小さい容積を有する。1つの後反応器中もしくは複数の後反応器中での反応を完了させるために、一般的に5分〜1時間の滞留時間で十分である。それゆえ100%までのエチン−転化率が可能である。
【0024】
反応は、本発明による方法の場合に40〜300℃、好ましくは60〜230℃、特に好ましくは70〜200℃及び極めて特に好ましくは80〜150℃の温度で実施される。これは0.1〜5MPa(絶対)、好ましくは0.15〜3MPa(絶対)及び特に好ましくは0.5〜3MPa(絶対)の圧力で実施される。
【0025】
メタノール及びエチンは、一般的にそれらの消費に相応して供給される。故に供給される量はほぼ化学量論的に必要な量に相当し、例えば未反応の出発物質の排出によるか又は副生物形成による考えられる影響だけを校正する。
【0026】
本発明による方法の場合に、塩基性のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物は、反応混合物に対して、一般的に0.05〜15質量%、好ましくは0.1〜10質量%及び特に好ましくは0.1〜5質量%の量で使用される。
【0027】
塩基性のアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物として、本発明による方法の場合に、一般的に酸化物、水酸化物及びアルコラート、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム及びカルシウムのC−〜C−アルカノラート、例えばメタノラート、エタノラート、1−プロパノラート、2−プロパノラート、1−ブタノラート、2−ブタノラート、2−メチル−1−プロパノラート及び2−メチル−2−プロパノラートが使用される。カチオンとして好ましいのはナトリウム及びカリウム、特にカリウムである。アニオンとして好ましいのは水酸化物及びアルコラートである。アルカリ金属アルコラート及びアルカリ土類金属アルコラートは、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属、それらの酸化物又は水酸化物を相応するアルコールと、形成される副生物である水素もしくは水の除去下で反応させることにより得られることができる。酸化物及び水酸化物の使用の際にこれは一般的に相応するアルコールと一緒に、形成される水の蒸発下に加熱される。異なるアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の混合物の使用も可能である。
【0028】
酸化物又は水酸化物が使用される場合には、これらは水及びメタノラートの形成下にメタノールと化学平衡状態にある。このことは、酸化物もしくは水酸化物の使用される量に対して相対的に僅かな含分の化学的に有効なメタノラートをまねき、このことは、補償のために明らかにより多量の酸化物もしくは水酸化物の使用を必要とする。
【0029】
これに関連して、アルコラートの使用の際により僅かな副生物形成が生じ、かつさらにより大きなメチルビニルエーテル−濃度で初めて連続した気相が生じることがさらに見出された。前者はその後の後処理における利点をもたらし、後者はより高い安全上の備蓄をもたらす。
【0030】
故に特に好ましくは、アルコラート、極めて特に好ましくはメタノラート及び特にカリウムメタノラートの使用である。
【0031】
本発明による方法の場合に、いわゆる助触媒を使用することは可能であり、かつ場合により有利である。これらは場合により副生物形成の低下を生じさせることができる。助触媒の使用は一般的に公知であり、かつ例えばDE-A 3 215 093、US 5,665,889、DE-A 100 17 222、WO 01/46139及びWO 01/46141に記載されており、これらについては明示的に関連づけられる。可能な助触媒の好ましい例として、ポリオキシアルキレン化合物(例えばポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレン)又はジオールのジビニル化合物(例えば1,2−ジビニルオキシエタン又は1,4−ジビニルオキシブタン)を挙げることができる。これらは通例2〜30質量%の量で使用される。使用される助触媒の種類及び量に応じて、これは場合により溶剤とみなされることができる。
【0032】
本発明による方法の場合に原則的に溶剤を使用することも可能である。適している溶剤は、その中にメチルビニルエーテル並びにメタノール及び塩基性のアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物が溶解し、これらが化学的にこれらの化合物と反応しない、すなわちとりわけ塩基性基を捕捉するようになる酸性中心を有さず、かつこれらが形成されるメチルビニルエーテルから大きな費用を有さずに、好ましくは蒸留により、除去されることができることに特徴付けられる。適している溶剤の例として、二極性非プロトン性溶剤であるN−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン並びにグリコール、ジグリコール、オリゴグリコール又はポリグリコールのジアルキルエーテルを挙げることができる。本発明による方法は好ましくは付加的な溶剤なしで実施される。
【0033】
定義に従って反応器に供給されたメタノール量及び反応器から導出されたメタノール量に基づいている、反応器ワンパスでのメタノール−転化率はまず第一に、本方法が付加的な溶剤を用いて実施されるか又はそうではないかに依存している。本方法が付加的な溶剤を用いて実施される場合には、これは場合により、メチルビニルエーテルの必要な濃度を保証するために液状の反応混合物の主要部分でありうる。この場合に、メタノール−転化率は100%までですらありうる。
【0034】
付加的な溶剤を用いない好ましい実施態様において、液相の大部分は未反応のメタノールからなる。故に計算上、一般的に約5%〜約25%の範囲内である、反応器ワンパスでの僅かなメタノール−転化率となる。
【0035】
反応器から取り出され、かつメチルビニルエーテル、メタノール、塩基性のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物、エチン及び場合により副生物及び場合により添加された溶剤を含有する反応混合物は、一般的に引き続き後処理される。後処理はその際に通例蒸留により行われる。約6℃のメチルビニルエーテルの相対的に低い沸点に基づいて、これは通常塔中及び好ましくは薄膜型蒸発缶中で頂部を経て分離され、かつ後接続された塔中で低沸成分、例えば主に未反応エチンから分離され、かつこれらから缶出液として取得される。第一の塔の缶出液は本質的にはメタノール、塩基性のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物及び場合により高沸点の副生物並びに場合により添加された溶剤を含有し、かつ好ましくはビニル化反応器に返送される。副生物の集積を回避し、かつ塩基性のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の変わらずに高い活性を保証するために、通常、連続的な流れはパージ流として取り出され、かつ塩基性のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の新鮮な溶液は連続的に添加される。
【0036】
特に好ましくは、
(a)反応を反応器中で出発化合物であるメタノール及びエチンの供給下に実施し、
(b)反応により得られた反応混合物を放圧し、
(c)放圧した反応混合物を薄膜型蒸発缶中で、メチルビニルエーテルを含有する塔頂流及びメタノール及び塩基性のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含有する塔底流へ分離し、かつ
(d)アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含有する塔底流の少なくとも一部を反応器に返送する
ことによる、本発明による一方法である。
【0037】
本発明による方法によるメチルビニルエーテルの製造のための好ましいプラントは、外部循環路を備えたジェットループ反応器、カスケード化された後反応器、形成されたメチルビニルエーテルの分離のための薄膜型蒸発缶及びメチルビニルエーテルから分離されるメタノール性溶液の返送のためのポンプを含む。本発明による方法の場合に、メタノール、カリウムメタノラート及びエチンはジェットループ反応器に連続的に供給される。供給は、同心の差込管と組み合わせて反応混合物の強力混合をもたらす頂部側のジェットノズルを経て行われる。外部循環路のための取り出すべき反応混合物は、ジェットループ反応器の下部で取り出され、サイクルポンプ及び熱交換器を経て導かれ、ジェットノズルに通される。後処理すべき反応混合物は、ジェットループ反応器の頂部で取り出され、かつカスケード化された後反応器中へ通される。後反応器を去る反応混合物はほぼ大気圧に放圧され、かつ冷却され、かつ薄膜型蒸発缶に分離のために供給される。これから底部を経て未反応のメタノール及びカリウムメタノラートを含有する溶液が取り出され、かつ返送ポンプを経て外部反応器循環路に返送される。高沸成分の集積を防止するために、小さな流れがパージ流として外に移された。薄膜型蒸発缶の頂部を経て取り出された気相は、別の塔中でメチルビニルエーテル及びエチン含有の廃ガス流へ分離される。
【0038】
本発明による方法は、単純に実施されることができ、安全技術的に特にガス状エチンの取扱いに関して問題がなく、メチルビニルエーテルに対する高い選択率を有し、かつメチルビニルエーテルの全体として高い収量及び高い空時収量を可能にする、メタノールのビニル化によるメチルビニルエーテルの連続的製造を可能にする。
実施例
【0039】
定義
エチン−転化率、メタノール−転化率及び空時収量についての例において記載された値は次の等式により定義されている:
【0040】
【数1】

【0041】
【数2】

【0042】
試験プラント
連続的に作業する試験プラントの単純化された工程流れ図は図1に示されている。メタノール(II)及びメタノール中の塩基性カリウム化合物(例1における水酸化カリウム及び例2におけるカリウムメチラート)からなる溶液(III)を、反応器Aの返送排出物及びメタノール中の塩基性カリウム化合物の返送流と一緒にし、ポンプP1及び熱交換器W1を経て反応器Aの頂部に導く。そこで、この供給流中へエチン(I)を供給し、これをノズルを経て反応器A中へ導通させる。反応器Aとして、差込管及び1.6 Lの全容積を有するジャケット加熱されたジェットループ反応器を使用した。この中にノズルを経て導通させた供給流の運動量により内部循環流が発生する。反応器Aは運転の間に、連続した気相が形成されることができない限りは充填される。既に記載されたポンプP1及び熱交換器W1を経て、さらに外部循環流が発生する。後処理すべき反応混合物の取出しは、反応器Aの頂部で行われる。試験実施に応じて、反応混合物を、エチン−転化率の増大のため、すなわち残りの溶解されたエチンの反応完了のために、後反応器Bに通すことは可能であった。これは、気泡形成の防止のために絞り(Blenden)が設けられている、1.4 Lの容積を有するカスケード化された管形反応器であった。反応混合物を後反応器Bに通す場合には、弁V2及びV3は開いており、かつ弁V1は閉じていた。後反応器Bを迂回する場合には、弁V2及びV3は閉じており、かつ弁V1は開いていた。反応混合物を、熱交換器W2を経て冷却し、放圧弁V4によりほぼ大気圧に放圧した。引き続いて、反応混合物を容器C、熱交換器W3、サイクルポンプP2及び別の熱交換器W4を含んでいた急冷循環路(Quenschkreislauf)中でさらに冷却した。冷却した反応混合物を、急冷循環路から取り出し、メチルビニルエーテル及び場合により存在しているエチンからの未反応メタノール及び塩基性カリウム化合物の分離のために薄膜型蒸発缶D中へ通した。底部を経て取り出された、未反応メタノール及び塩基性カリウム化合物を含有する溶液を、ポンプP3を経て外部反応器循環路に返送した。高沸成分の集積を防止するために、小さな流れをパージ流(VI)として外に移した。薄膜型蒸発缶Dの頂部を経て取り出された気相を、別の塔E中でメチルビニルエーテル(IV)及びエチン含有の廃ガス流(V)へ分離した。
【0043】
試験実施
試験プラントの始動のために、ジェットループ反応器Aを、相応する量のメタノール及び塩基性カリウム化合物で充填し、外部循環路を運転し、系を所望の温度にした。引き続いて、後反応器Bも、これが試験経過において使用される場合は、急冷循環路、薄膜型蒸発缶D及びメタノール及び塩基性カリウム化合物の返送を運転した。エチン(I)及びメタノールの供給により、引き続いてビニル化反応が開始し、試験プラント中の、所望のパラメーター、例えば供給量、圧力、温度、循環量及び還流量を調節した。
【0044】
例1及び2の試験パラメーター及び結果は第1表に示されている。
【0045】
例は、本発明による方法により、≦30質量%のメチルビニルエーテル−濃度及び連続した気相の不在での反応の場合にも、メチルビニルエーテルに対する高い選択率及びメチルビニルエーテルの高い収量及び高い空時収量が達成されることを示している。
【0046】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】試験プラントの単純化された流れ図。
【符号の説明】
【0048】
I エチン、 II メタノール、 III メタノール中の塩基性カリウム化合物からなる溶液、 VI パージ流、 V エチン含有の廃ガス流、 IV メチルビニルエーテル、 A 反応器、 B 後反応器、 C 容器、 D 薄膜型蒸発缶、 E 塔、
P1,P3 ポンプ、 P2 サイクルポンプ、 W1,W2,W3,W4 熱交換器、 V1,V2,V3 弁、 V4 放圧弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
40〜300℃の温度及び0.1〜5MPa(絶対)の圧力で塩基性のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の存在で液相中でメタノールをエチンと反応させることによるメチルビニルエーテルの連続的製造方法において、
反応を、連続した気相の不在でかつ≦30質量%の全液相中のメチルビニルエーテル−濃度で実施することを特徴とする、メチルビニルエーテルの連続的製造方法。
【請求項2】
反応を≦20質量%の全液相中のメチルビニルエーテル−濃度で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
エチンを液相中の最大ガス溶解度の≦100%の量で添加する、請求項1から2までのいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
反応をジェットループ反応器中で実施する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
主反応器中での反応を、出発化合物であるメタノール及びエチンを供給下に、かつ1つ又はそれ以上の後反応器中での反応を、出発化合物をさらに供給することなく実施する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
反応を80〜150℃の温度で実施する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
反応を0.5〜3MPa(絶対)の圧力で実施する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
液相中の塩基性のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を0.05〜15質量%の濃度で使用する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
塩基性のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物としてカリウムメタノラートを使用する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
(a)反応を、反応器中で出発化合物であるメタノール及びエチンの供給下に実施し、
(b)反応により得られた反応混合物を放圧し、
(c)放圧した反応混合物を薄膜型蒸発缶中で、メチルビニルエーテルを含有する塔頂流及びメタノール及び塩基性のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含有する塔底流へ分離し、かつ
(d)アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含有する塔底流の少なくとも一部を反応器に返送する、
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−524649(P2006−524649A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505161(P2006−505161)
【出願日】平成16年4月16日(2004.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004038
【国際公開番号】WO2004/096741
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】