説明

メチルペンダント鎖を有するポリチオエーテル組成物及び製造方法

【課題】種々の用途に使われる液状ポリチオエーテルポリマーを提供すること。
【解決手段】常温常圧で液体である、下記式I
R1-[-R2 -S−CH(CH3)−S-]n -R2 −R1
(式中、R1はチオール基、ヒドロキシル基、無置換アミン基、モノアルキル置換アミン基、少なくとも1つのヒドロキシル基、無置換アミン基又はモノアルキル置換アミン基で置換された一価基、又は酸触媒の存在下で非反応性である基であり、
R2は二価基であり、
nは1〜60の整数である。)
を有するポリチオエーテル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、硬化時に良好な耐燃料油性、低温可撓性、耐熱性、及び優れた電気特性(低導電率、高電気抵抗率)を含む特性を必要とする種々の用途に使われる液状ポリチオエーテルポリマーに関する。本発明は、また、ポリチオールとビニルエーテルとを反応させることにより該ポリマーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
イオウ含有ポリマーは、架橋時の耐燃料油性のために航空宇宙用シーラントに用いるのに十分に適していることが知られている。商業的に価値のあるイオウ含有ポリマーは、ポリマー主鎖にポリスルフィド結合か又はポリチオエーテル結合としてイオウが存在している。更に、可撓性や液化性を与えるために、これらの市販材料は、ホルマール結合か又は単純エーテル結合として酸素を取込んでいる。これらの材料の中で特にポリチオエーテルポリエーテルポリマーがポリスルフィドポリホルマール材料に比べて耐熱性及び可撓性に優れている。
Singhらの特許文献1には、低温可撓性(低ガラス転移温度Tg)に優れている液状ポリマーの調製が教示されている。開示された液状ポリマーは、ペンダントアルキル側鎖をもち、ヒドロキシル官能チオエーテルの酸触媒縮合によって製造されている。ヒドロキシル基は、高縮合反応性についてはチオ基に対してβ位にある。しかしながら、開示された縮合反応の最大収率は、所望の縮合生成物の約75%である。更に、β-ヒドロキシスルフィドモノマーの酸触媒反応は、著しい量(典型的には約10%以上)の熱安定性で悪臭のかなりひどい環状副生成物、例えば、1-チア-4-オキサシクロヘキサンを生じる。結果として、開示されたポリマーの商業的な実行可能性は制限される。開示されたポリマーは、また、酸素含量がかなり高く、水感受性となる。更に、これらのポリマーは、高レベルの残留酸触媒を含有している。これらの2つの要因によって、導電性の高い材料が生じる。
【0003】
Morrisらの特許文献2には、ジチオールと第二又は第三アルコールとを反応させてポリマー主鎖に酸素のない液状ポリチオエーテルを得る工程が記載されている。この方法は、還元であるが環状副生成物の生成を排除していない。更に、混合反応性のヒドロキシルを用いることにより、不飽和を生じて非ランダム重合する内部脱水のような他の競合副反応が起こる。開示されたポリマーは、低酸素含量のために水の進入に対する感受性が低い。しかしながら、導電性は、残留酸触媒の存在のために比較的高い。
ある種の高抵抗率(低導電率)イオウ含有ポリマー及び他の非イオウ含有ポリマー、例えば、ポリウレタンは、それらを環境的損傷から保護するコーティング電気回路ボードのような用途の『ポッティング』化合物として用いられる。既知のポッティング化合物は、多くの欠点をもっている。例えば、過酸化鉛硬化ポリスルフィドは、耐燃料油性があるが、耐熱性がほとんどなく、更に、残留酸化鉛が存在するために毒性である。PbO2ではなくMnO2を用いて硬化したポリスルフィドは、過酸化鉛硬化ポリマーに伴う毒性問題を回避するが、電気抵抗率が低い。一方、ポリエーテルポリウレタンは、硬化したときに電気抵抗率が高いが耐燃料油性がほとんどない。上記問題に取組むために、電気抵抗率の高い第1下層及び耐燃料油性の高い第2上層をもつ、品物をオーバーコートするための異なる2層の使用が提案された。
室温液化性、耐燃料油性、及び低温可撓性のような航空宇宙用シーラントの一般的な性能要求を満たし、同時に、臭いのできるだけないかつ電気抵抗の高い材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,366,307号明細書
【特許文献2】米国特許第4,609,762号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1) 常温常圧で液体である、下記式I
R1-[-R2 -S−CH(CH3)−S-]n -R2 −R1
(式中、R1はチオール基、ヒドロキシル基、無置換アミン基、モノアルキル置換アミン基、少なくとも1つのヒドロキシル基、無置換アミン基又はモノアルキル置換アミン基で置換された一価基、又は酸触媒の存在下で非反応性である基であり、
R2は二価基であり、
nは1〜60の整数である。)
を有するポリチオエーテル。
(項目2) ガラス転移温度Tgが-50℃以下である、請求項1記載のポリチオエーテル。
(項目3) 硬化した場合、JRF 1型に60℃の周囲圧力で1週間浸漬した後の体積膨潤%が25%以下である、請求項1記載のポリチオエーテル。
(項目4) 数平均分子量が約500〜20,000である、請求項1記載のポリチオエーテル。
(項目5) 体積電気抵抗率が少なくとも1.0×1011Ωである、請求項1記載のポリチオエーテル。
(項目6) 上記二価基がC2-6 n-アルキレン基、C3-6分枝アルキレン基、C6-8シクロアルキレン基、C6-10アルキルシクロアルキレン基、-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基、又は少なくとも1つの-CH2-単位がメチル基で置換されている-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基からなる群より選ばれ、
XがO、S及び-NR3-からなる群より選ばれたものであり、
R3がH又はメチルであり、
pが2〜6の整数であり、
qが1〜5の整数であり、
rが2〜10の整数である、
請求項1記載のポリチオエーテル。
(項目7)R1が-SHである、請求項1記載のポリチオエーテル。
(項目8) 請求項7記載のポリチオエーテルの製造方法であって、(n)当量の下記式II
HS−R1−SH II
を有する化合物又は式IIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物と、(n - 1)/m当量の下記式III
R8-[-O−CH= CH2]m III
(式中、mは≧2の整数であり、
R8はm価基である。)
を有する化合物又は式IIIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物とを酸触媒の存在下に反応させる工程を含む、上記方法。
(項目9)mが2〜6の整数である、請求項8記載の方法。
(項目10) 下記式IV
B-(-S-[-R2- S - CH(CH3)- S -]n -R2 −R1)z IV
(式中、R1はチオール基、ヒドロキシル基、無置換アミン基、モノアルキル置換アミン基、少なくとも1つのヒドロキシル基、無置換アミン基又はモノアルキル置換アミン基で置換された一価基、又は酸触媒の存在下に非反応性である基であり、
R2は二価基であり、
nは1〜60の整数であり、
zは3〜6の整数であり、
Bは多官能基化剤のz価残基である。)
を有する多官能ポリチオエーテル。
(項目11) z = 3である、請求項10記載のポリチオエーテル。
(項目12) 平均官能性が約2.05〜3.00である、請求項11記載のポリチオエーテル。
(項目13) R1が-SHである、請求項10記載のポリチオエーテル。
(項目14) 請求項10記載の多官能ポリチオエーテルの製造方法であって、
(i) (n)当量の下記式II
HS−R1−SH II
を有する化合物又は式IIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物と、(n - 1)/m当量の下記式III
R8-[-O − CH = CH2]m III
(式中、mは≧1の整数であり、
R8はm価基である。)
を有する化合物又は式IIIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物とを酸触媒の存在下に反応させて液状二官能ポリチオエーテルを生成し、続いて
(ii) 上記ポリチオエーテルと多官能基化剤とを反応させて多官能ポリチオエーテルを形成する工程を含む、上記方法。
(項目15) R1が - S -(-CH2-)2-O−R4であり、
R4が少なくとも1つのヒドロキシル基、無置換アミン基又はモノアルキル置換アミン基で置換された一価基、又は酸触媒の存在下に非反応性である基である、請求項1記載のポリチオエーテル。
(項目16) R4が無置換か又は少なくとも1つの-OH基又は-NHR5基で置換されているC1-6n-アルキル基であり、
R5がH又はC1-6n-アルキル基である、請求項15記載のポリチオエーテル。
(項目17) 請求項15記載のポリチオエーテルの製造方法であって、
(i) (n)当量の下記式II
HS−R1−SH II
を有する化合物又は式IIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物と、(n - 1)/m当量の下記式III
R8-[-O − CH = CH2]m III
(式中、mは≧1の整数であり、
R8はm価基である。)
を有する化合物又は式IIIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物とを酸触媒の存在下に反応させてキャップされていないポリチオエーテルを生成し、続いて
(ii) 上記キャップされていないポリチオエーテルと約0.05〜約2当量の下記式V
CH2= CH − O − R4 V
を有する化合物又は式Vを有する2種の異なる化合物の混合物とをフリーラジカル触媒の存在下に反応させる工程を含む、上記方法。
(項目18) mが2〜6の整数である、請求項17記載の方法。
(項目19) R1が - S -(-CH2-)2-O−R4であり、
R4が少なくとも1つのヒドロキシル基、無置換アミン基又はモノアルキル置換アミン基で置換された一価基、又は酸触媒の存在下に非反応性である基である、請求項10記載の多官能ポリチオエーテル。
(項目20) R4が無置換か又は少なくとも1つの-OH基又は-NHR5基で置換されているC1-6n-アルキル基であり、
R5がH又はC1-6n-アルキル基である、請求項19記載の多官能ポリチオエーテル。
(項目21) 請求項19記載の多官能ポリチオエーテルの製造方法であって、
(i) (n)当量の下記式II
HS−R1−SH II
を有する化合物又は式IIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物と、(n - 1)/m当量の下記式III
R8-[-O − CH = CH2]m III
(式中、mは≧1の整数であり、
R8はm価基である。)
を有する化合物又は式IIIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物とを酸触媒の存在下に反応させて二官能液状ポリチオエーテルを生成する工程、
(ii) 上記ポリチオエーテルとzが3〜6であるz価多官能基化剤とを反応させて多官能ポリチオエーテルを形成する工程、及び
(iii) 上記多官能ポリチオエーテルと約0.05〜約z当量の下記式V
CH2= CH − O − R5 V
を有する化合物又は式Vを有する2種の異なる化合物の混合物とをフリーラジカル触媒の存在下に反応させる工程を含む、上記方法。
(項目22) ポリチオエーテルの製造方法であって、(n+1)モルの請求項7記載の化合物又は少なくとも2種の異なる上記化合物の混合物と(n)モルの下記式VI
CH2= CH − O -[-R11 − O -]k - CH = CH2 VI
(式中、R11はC2-6n-アルキル基、C2-6分枝アルキレン基、C6-8シクロアルキレン基又はC6-10アルキルシクロアルキレン基、-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基、又は少なくとも1つの-CH2-単位がメチル基で置換されている-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基であり、
XがO、S及び-NR3-からなる群より選ばれたものであり、
R3がH又はメチルであり、
pが2〜6の整数であり、
qが1〜5の整数であり、
rが2〜10の整数であり、
kが0〜10の合理的な数である。)
を有する化合物又は式VIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物とをフリーラジカル触媒、イオン触媒及び紫外光からなる群より選ばれた触媒の存在下に反応させる工程を含む、上記方法。
(項目23) ポリチオエーテルの製造方法であって、(n)モルの請求項7記載の化合物又は少なくとも2種の異なる上記化合物の混合物と(n+1)モルの下記式VICH2 =CH − O -[-R11 − O -]k - CH = CH2 VI
(式中、R11はC2-6n-アルキル基、C2-6分枝アルキレン基、C6-8シクロアルキレン基又はC6-10アルキルシクロアルキレン基、-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基、又は少なくとも1つの-CH2-単位がメチル基で置換されている-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基であり、
XがO、S及び-NR3-からなる群より選ばれたものであり、
R3がH又はメチルであり、
pが2〜6の整数であり、
qが1〜5の整数であり、
rが2〜10の整数であり、
kが0〜10の合理的な数である。)
を有する化合物又は式VIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物とをフリーラジカル触媒、イオン触媒及び紫外光からなる群より選ばれた触媒の存在下に反応させる工程を含む、上記方法。
(項目24) 請求項22記載の方法によって製造されたポリチオエーテル。
(項目25) 請求項23記載の方法によって製造されたポリチオエーテル。
(項目26) ポリチオエーテルの製造方法であって、(n+1)モルの請求項7記載の化合物又は少なくとも2種の異なる上記化合物の混合物と(n)モルの下記式VI
CH2= CH − O -[-R11 − O -]k - CH = CH2 VI
(式中、R11はC2-6n-アルキル基、C2-6分枝アルキレン基、C6-8シクロアルキレン基又はC6-10アルキルシクロアルキレン基、-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基、又は少なくとも1つの-CH2-単位がメチル基で置換されている-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基であり、
XがO、S及び-NR3-からなる群より選ばれたものであり、
R3がH又はメチルであり、
pが2〜6の整数であり、
qが1〜5の整数であり、
rが2〜10の整数であり、
kが0〜10の合理的な数である。)
を有する化合物又は式VIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物、及び約0.05〜約2当量の下記式V
CH2= CH − O − R4 V
(式中、R4は無置換か又は少なくとも1つの-OH基又は-NHR5基で置換されているC1-6n-アルキル基であり、
R5はH又はC1-6n-アルキル基である。)
を有する化合物又は式Vを有する2種の異なる化合物の混合物とをフリーラジカル触媒、イオン触媒及び紫外光からなる群より選ばれた触媒の存在下に反応させる工程を含む、上記方法。
(項目27) ポリチオエーテルの製造方法であって、(n)モルの請求項7記載の化合物又は少なくとも2種の異なる上記化合物の混合物と(n+1)モルの下記式VI
CH2= CH − O -[-R11 − O -]k - CH = CH2 VI
(式中、R11はC2-6n-アルキル基、C2-6分枝アルキレン基、C6-8シクロアルキレン基又はC6-10アルキルシクロアルキレン基、-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基、又は少なくとも1つの-CH2-単位がメチル基で置換されている-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基であり、
XがO、S及び-NR3-からなる群より選ばれたものであり、
R3がH又はメチルであり、
pが2〜6の整数であり、
qが1〜5の整数であり、
rが2〜10の整数であり、
kが0〜10の合理的な数である。)
を有する化合物又は式VIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物、及び約0.05〜約2当量の下記式VIIHS − R4 VII
(式中、R4は無置換か又は少なくとも1つの-OH基又は-NHR5基で置換されているC1-6n-アルキルであり、
R5はH又はC1-6n-アルキル基である。)
を有する化合物又は式VIIを有する2種の異なる化合物の混合物とをフリーラジカル触媒、イオン触媒及び紫外光からなる群より選ばれた触媒の存在下に反応させる工程を含む、上記方法。
(項目28) 請求項26記載の方法によって製造されたポリチオエーテル。
(項目29) 請求項27記載の方法によって製造されたポリチオエーテル。好適実施態様の概要
本発明の態様によれば、常温常圧で液体である、下記式I
R1-[-R2 -S−CH(CH3)−S-]n -R2 −R1
(式中、R1はチオール基、ヒドロキシル基、無置換アミン基、モノアルキル置換アミン基、少なくとも1つのヒドロキシル基、無置換アミン基又はモノアルキル置換アミン基で置換された一価基、又は酸触媒の存在下で非反応性である基であり、
R2は二価基であり、
nは1〜60の整数である。)
を有するポリチオエーテルが提供される。
個々の実施態様においては、二価基がC2-6 n-アルキレン基、C3-6分枝アルキレン基、C6-8シクロアルキレン基、C6-10アルキルシクロアルキレン基、-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基、又は-CH2-単位の少なくとも1つがメチル基で置換されている-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基からなる群より選ばれる。上記基において、XはO、S及び-NR3-からなる群より選ばれたものであり、
R3はH又はメチルであり、
pは2〜6の整数であり、
qは1〜5の整数であり、
rは2〜10の整数である。
【0006】
好適実施態様においては、本発明の化合物は、R1が-SHであるジチオールである。本発明の他の態様によれば、下記式II
B-(-S-[-R2- S - CH(CH3)- S -]n -R2 −R1)z II
(式中、R1はチオール基、ヒドロキシル基、無置換アミン基、モノアルキル置換アミン基、少なくとも1つのヒドロキシル基、無置換アミン基又はモノアルキル置換アミン基で置換された一価基、又は酸触媒の存在下に非反応性である基であり、
R2は二価基であり、
nは1〜60の整数であり、
zは3〜6の整数であり、
Bは多官能基化剤のz価残基である。)
を有する多官能ポリチオエーテルが提供される。
個々の実施態様においては、zは3であり、よって多官能基化剤は三官能基化剤である。他の個々の実施態様においては、ポリチオエーテルの平均官能性は、約2.05〜約3.00の範囲である。
【0007】
上記ポリチオエーテルの製造方法も提供される。
即ち、本発明の態様によれば、更に、(n)モルの下記式III
HS−R2−SHIII
を有する化合物又は式IIIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物と、(n-1)/mモルの下記式IV
R8-[-O−CH= CH2]m IV
(式中、mは≧1の整数であり、R8はm価基である。)
を有する化合物又は式IVを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物とを酸触媒の存在下に反応させることにより、ポリチオエーテルが製造される。
本方法により、ジチオール、例えば、2つの末端-SH基(R1=チオール)を有するポリチオエーテルが得られる。
R8は、得られた式IVの化合物が反応においてビニル基の供与体として働くことができる限り、広範囲のm価基のいずれでもあり得る。
【0008】
本発明の態様によれば、更に、(n)モルの式IIIを有する化合物、又は式IIIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物と、(n-1)/mモルの式IVを有する化合物、又は式IVを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物とを酸触媒の存在下に反応させて液状二官能ポリチオエーテルを生成し、続いてそのように形成したポリチオエーテルと多官能基化剤とを反応させて多官能ポリチオエーテルを形成することにより、ポリチオエーテルが製造される。
上記方法により、前の方法によって製造されたジチオールと同様にポリチオールが得られる。
上記方法に従って調製されたポリチオエーテルも提供される。
チオール、即ち、『キャップされた』ポリチオエーテル以外の末端基を有する二官能又は多官能ポリチオエーテルも本発明に従って得られる。
好ましい実施態様には、式I
(式中、R1は- S -(-CH2-)2-O−R4であり、
R4は少なくとも1つのヒドロキシル基、無置換アミン基又はモノアルキル置換アミン基で置換された一価基、又は酸触媒の存在下に非反応性である基である。)
のポリチオエーテルが含まれる。
【0009】
キャップされたポリチオエーテルの製造方法も提供される。即ち、本発明の他の態様によれば、更に、(n)モルの式IIIを有する化合物、又は式IIIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物と、(n-1)/mモルの式IVを有する化合物、又は式IVを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物とを、酸触媒の存在下に反応させてキャップされていないポリチオエーテルを生成し、続いて前記キャップされていないチオエーテルと約0.05〜約2モルの下記式V
CH2 =CH − O − R4 V
(式中、R4は無置換か又は少なくとも1つの-OH基又は-NHR5基で置換されているC1-6n-アルキル基であり、
R5はH又はC1-6n-アルキル基である。)
を有する化合物又は式Vを有する2種の異なる化合物の混合物とをフリーラジカル触媒の存在下に反応させることにより、キャップされた二官能ポリチオエーテルが製造される。
本発明の他の態様によれば、また、(n)モルの式IIIを有する化合物、又は式IIIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物と、(n-1)/mモルの式IVを有する化合物、又は式IVを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物とを酸触媒の存在下に反応させて液状二官能ポリチオエーテルを生成し、次に、そのように形成したポリチオエーテルとz価多官能基化剤(ここで、zは3〜6の整数である。)とを反応させて多官能ポリチオエーテルを形成し、続いて多官能ポリチオエーテルと約0.05〜約zモルの式Vを有する化合物、又は式Vを有する2種の異なる化合物の混合物とをフリーラジカル触媒の存在下に反応させることにより、キャップされた多官能ポリチオエーテルが製造される。
【0010】
上記キャップされていない二官能又は多官能ポリチオエーテルは、それ自体で有効であり、追加のポリチオエーテルを製造するのにも有効である。即ち、本発明の他の態様によれば、(n+1)モルの上記キャップされていないジチオール化合物、又は少なくとも2種のかかる化合物の混合物と、(n)モルの下記式 VI
CH2 =CH − O -[-R11 − O -]k - CH = CH2 VI
(式中、R11はC2-6n-アルキル基、C2-6分枝アルキレン基、C6-8シクロアルキレン基又はC6-10アルキルシクロアルキレン基、-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基、又は少なくとも1つの-CH2-単位がメチル基で置換されている-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基であり、
XがO、S及び-NR3-からなる群より選ばれたものであり、
R3がH又はメチルであり、
pが2〜6の整数であり、
qが1〜5の整数であり、
rが2〜10の整数であり、
kが0〜10の合理的な数である。)
を有する化合物又は式VIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物をフリーラジカル触媒、イオン触媒及び紫外光からなる群より選ばれた触媒の存在下に反応させる工程を含むポリチオエーテルの製造方法が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、また、(n)モルの上記キャップされていないジチオールポリチオエーテル、又は少なくとも2種のかかる化合物の混合物と、(n+1)モルの式VIを有する化合物、又は式VIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物とをフリーラジカル触媒、イオン触媒及び紫外光からなる群より選ばれた触媒の存在下に反応させる工程を含むポリチオエーテルの製造方法が提供される。
上記方法に従って製造したキャップされていない二官能ポリチオエーテルも提供される。
本発明の態様によれば、更に、(n+1)モルの上記キャップされていないジチオールポリチオエーテル、又は少なくとも2種の異なる化合物の混合物と、(n)モルの式VIを有する化合物、又は式VIを有する少なくとも2種の異なるその化合物の混合物、及び約0.05〜約2モルの式Vを有する化合物、又は式Vを有する2種の異なる化合物の混合物とを、フリーラジカル触媒、イオン触媒及び紫外光からなる群より選ばれた触媒の存在下に反応させる工程を含むポリチオエーテルの製造方法が提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、また、(n)モルの上記キャップされていないジチオールポリチオエーテル、又は少なくとも2種の異なるその化合物の混合物と、(n+1)モルの式VIを有する化合物、又は式VIを有する少なくとも2種の異なる化合物、及び約0.05〜約2モルの下記式VII
HS − R4 VII
を有する化合物、又は式VIIを有する2種の化合物の混合物とを、フリーラジカル触媒、イオン触媒及び紫外光からなる群より選ばれた触媒の存在下に反応させる工程を含むポリチオエーテルの製造方法が提供される。
上記方法に従って製造したキャップされた二官能ポリチオエーテルも提供される。
適切な多官能基化剤を用いて製造した類似のキャップされていない又はキャップされた多官能ポリチオエーテルも提供される。
本発明の他の目的、特徴及び利点は、次の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。しかしながら、本発明の好適実施態様を示している詳細な説明と個々の実施例は、例示として示され、限定するものでないことは理解されるべきである。本発明の範囲内の多くの変更や修正は、その真意から逸脱することなく行うことができ、本発明は、そのような修正を全て包含する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適実施態様の詳細な説明
文献においては、チオールをオレフィンに酸触媒付加すると、チオールとオレフィン間のフリーラジカル触媒付加反応から予想される直鎖の、しばしば固体の抗マルコウニコフ反応生成物と対照的に側鎖を有する、よって液状マルコウニコフ反応生成物が得られることが示された。以前の研究から、ジチオールをジビニルエーテルにマルコウニコフ付加すると、S、Oケタール単位を有するポリチオエーテルが得られることが示された。例えば、Nuyken, O.ら, Makromol, Chem.191, 2465-2473(1990)を参照されたい。驚くべきことに、出発材料を適切に選ぶことにより、S、Oケタール結合が中間体生成物として形成することができるが、S、Sケタール単位のみをもつ熱力学的に安定なポリマーが生じるまで反応を続けさせることができることを発見した。そのように形成したポリマーは、常温常圧であり、望ましい物理的及びレオロジー的性質、好ましくは低Tgを含むものを有し、更に、残留モノマー又は環状副生成物がほとんどなく、よって臭いが少ない。
本発明によれば、常温常圧で液体であり、優れた低温可撓性(低Tg)や耐燃料油性を有するポリチオエーテルが提供される。本明細書に用いられる『常温常圧』は、約25℃(77°F)、及び1気圧を示す。
【0014】
本発明は、常温常圧で液体である、下記式I
R1-[-R2 -S−CH(CH3)−S-]n -R2 −R1 I
(式中、R1はチオール基、ヒドロキシル基、無置換アミン基、モノアルキル置換アミン基、少なくとも1つのヒドロキシル基、無置換アミン基又はモノアルキル置換アミン基で置換された一価基、又は酸触媒の存在下で非反応性である基であり、
R2は二価基であり、
nは1〜60の整数である。)
を有する二官能ポリチオエーテルを提供する。
本発明のポリチオエーテルポリマーのガラス転移温度Tgは、好ましくは-50℃以下である。本発明のポリマーのTgは、更に好ましくは-55℃以下である。本発明のポリマーのTgは、非常に好ましくは-60℃以下である。低Tgは、良好な低温可撓性を示し、既知の方法、例えば、AMS(航空宇宙材料規格)3267§4.5.4.7、MIL-S(軍事規格)-8802E§3.3.12及びMIL-S-29574に記載された方法、及びASTM(アメリカ材料試験協会)D522-88に記載されたものと同様の方法によって求め得る。
【0015】
本発明のポリチオエーテルは、硬化時に非常に望ましい耐燃料油性の特性を示す。本発明のポリマーの耐燃料油性の尺度は、炭化水素燃料油に長時間曝露した後の体積膨潤%であり、ASTM D792又はAMS 3269に記載されたものと同様の方法を用いて定量的に求め得る。従って、好適実施態様においては、本発明のポリマーは、硬化時の体積膨潤がジェット基準液(JRF)1型に60℃(140°F)及び常圧で1週間浸漬した後に25%以下である。硬化したポリマーの体積膨潤%は、20%以下である。
耐燃料油性の定量に本明細書に用いられるJRF 1型は、下記の組成を有する(SAE(自動車工業会、ペンシルベニア州ウォーレンデール)から入手できるAMS 2629、1989年7月1日発行、3.1.1以下を参照されたい)。
トルエン 28±1容量%
シクロヘキサン(工業用)34±1容量%
イソオクタン 38±1容量%
tert-ジブチルジスルフィド(ドクタースイート)1±0.005容量%
tert-ブチルメルカプタン他の4成分の0.015%±0.0015重量%
【0016】
望ましくは、本発明のポリチオエーテルの数平均分子量は、約200〜20,000、好ましくは約1,000〜10,000、非常に好ましくは約2.000〜5,000の範囲にある。
好適実施態様においては、本発明のポリマーは、また、優れた電気抵抗特性を有する。本発明のポリマーの硬化時の体積抵抗率は、少なくとも約1×1011Ω、更に特に約1×1011Ω〜1×1013Ωである。
式Iにおいては、R2は二価基である。個々の二価基R2は、C2-6n-アルキレン基、C3-6分枝アルキレン基、C6-8シクロアルキレン基、C6-10アルキルシクロアルキレン基、-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基、又は-CH2-単位の少なくとも1つがメチル基で置換されている-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基からなる群より選ばれ、
XはO、S及び-NR3-からなる群より選ばれたものであり、
R3はH又はメチルであり、
pは2〜6の整数であり、
qは1〜5の整数であり、
rは2〜10の整数である。
【0017】
特に好適な実施態様においては、R4は-SHである。即ち、ポリチオエーテルは、下記構造HS -[-R2 −S−CH2(CH3)−S-]n-R2 −SHを有するキャップされていないジチオールポリチオエーテルである。
式Iの化合物は二官能化合物である。多官能化合物も本発明に従って提供される。多官能化合物は、下記式II
B-(-S-[-R2- S - CH(CH3)- S -]n -R2 −R1)z II
(式中、R1及びR2は上記式Iについて定義した通りであり、
nは1〜60の整数であり、
zは3〜6の整数であり、
Bは多官能基化剤のz価残基である。)
を有する。
式IIの好ましい多官能化合物としては、R1が-SHであるもの、即ち、ポリチオールポリチオエーテルが含まれる。
【0018】
本明細書に用いられる『多官能基化剤』という用語は、2つを超える反応性部分、特に式I(式中、R1=SH)の化合物と反応性である2つを超える部分を有する化合物である。多官能基化剤は、その部分を、好ましくは3〜6含むので、『z価』多官能基化剤として示され、zは該剤中に含まれるその部分の数(好ましくは3〜6)、よって多官能ポリチオエーテルが含むそれぞれの分枝の数である。多官能基化剤は、下記式
B-(R9)z
(式中、R9は式Iの化合物、好ましくは末端-SH基と反応性である部分である。)で表され得る。各R9は同じであることも異なることもできる。Bは、多官能基化剤のz価残基、即ち、反応性部分R9以外の該剤の部分である。
個々の多官能基化剤としては、三官能基化剤、即ち、z=3の化合物が含まれる。好ましい三官能基化剤としては、チオールと反応性である1,2,3-プロパントリチオールが含まれる。
他の有効な多官能基化剤としては、米国特許第4,366,307号、同第4,609,762号及び同第5,225,472号に記載されたポリチオールが含まれ、それぞれの明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。
【0019】
3を超える反応性部分を有する多官能基化剤(即ち、z>3)により、『スター』ポリチオエーテルやハイパーブランチドポリチオエーテルが得られる。
上記のポリチオエーテルは、広範囲の平均官能性を有する。例えば、三官能基化剤は、約2.05〜3.0、好ましくは約2.1〜2.6の平均官能性を生じ得る。広範囲の平均官能性は、四官能基以上の多官能基化剤を用いることにより達成し得る。官能性は、また、当業者に既知である化学量論のような要因によって影響される。
本発明のジチオールポリチオエーテルやポリチオールポリチオエーテルは、ジチオール化合物とビニル供与体化合物とを酸触媒の存在下に反応させる工程を含む方法によって調製されることが好ましい。ジチオールポリチオエーテルを製造する本発明の第1方法によれば、(n)モルの下記式III
HS−R1−SH III
を有するジチオール化合物又は式IIIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物と、(n-1)/mモルの下記式IV
R8-[-O − CH = CH2]m IV
(式中、mは≧1の整数であり、R8はm価基である。)
を有する化合物又は式IVを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物とを酸触媒の存在下に反応させる。
【0020】
式IIIの化合物は、ジチオール化合物である。一般的には、これらの化合物は、環化せず(即ち、それ自体と反応しない)、ビニルエーテルと酸触媒の存在下に反応せず、82℃(180°F)で安定である環状化合物を形成しない。即ち、選ばれたジチオールは、それ自体又はビニルエーテルと反応することにより、それ以後の反応、特に開環に抵抗する環を形成しない。小さな環、特に5員環や6員環は、特に安定であるので、本発明の式IIのジチオール化合物は、C2又はC3ジチオール、例えば、エタンジチオール又は1,3-プロパンジチオールでないことが好ましい。
好ましいジチオールとしては、二価基R2がC4-6 n-アルキル、即ち、1,4-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール及び1,6-ヘキサンジチオールである化合物が含まれる。他の有効なジチオールとしては、R2がC6-8シクロアルキル又はC6-10アルキルシクロアルキルであるもの、例えば、ジペンテンジメルカプタンやエチルシクロヘキシルジチオール(ECHDT)が含まれる。
更に好ましいジチオールとしては、炭素主鎖に1つ以上のヘテロ原子置換基、即ち、R2が-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-であるジチオールが含まれる。上記式において、Xは好ましくはS又はOであり、更に好ましくはSである。指数pとrは同じであり、共に2であることが非常に好ましい。メチレン基の1つ以上がメチル基で更に置換される式-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-のR2基も有効である。このタイプの特に好ましい具体的なジチオールとしては、ジメルカプトジエチルスルフィド(DMDS)(p,r= 2、q = 1、X = S)が含まれる。
【0021】
酸素は、可能なヘテロ原子置換基である。しかしながら、R1にヘテロ原子として酸素を含む化合物が用いられる場合には、第1反応で化合物の過度の分解を防止ために注意しなければならない。これは、かかる化合物のC−O−C結合が第1反応の酸性条件下で安定でないので、分解を受けるためである。しかしながら、第2反応においては、酸が取り除かれるので、C−O−C結合はもはや分解を受けない。従って、R2にヘテロ原子として酸素を含む化合物は、切断速度が第1反応の速度より遅いように選ばれなければならない。
式IVの化合物は、ビニルエーテルである。式Vにおいては、化合物Vがビニル基の供与体として働くことができる限り、R8は特定の基に限定されない。
式IVの具体的な化合物は下記式IVa
CH2 =CH − O -[-R10 − O -]s - CH = CH2 VIa
(式中、R10はメチレン基、二価のC2-6n-アルキル基、C2-6分枝アルキレン基、C6-8シクロアルキレン基又はC6-10アルキルシクロアルキレン基、又は-[(-CH2-)p-Y-]q-(-CH2-)r-基であり、
YはO、S及び-NR7-からなる群より選ばれたものであり、
R7がH又はC1-6n-アルキルであり、
sは0〜10の合理的な数であり、
p、q、及びrは上で定義した通りである。)
有する化合物である。
【0022】
式IVのビニルエーテルとしては、好ましくは少なくとも1個のビニル基、最も好ましくは1〜4個のビニル基をもつ化合物(即ち、mが1〜4の整数である化合物)が含まれる。本発明のポリチオエーテルを製造するのに市販のジビニルエーテル混合物を用いることも可能である。かかる混合物は、1分子当りアルコキシ単位の数が整数でない平均値を特徴とする。従って、式IVaのsは、0〜10、好ましくは1〜10、非常に好ましくは1〜4、特に2〜4の整数でない合理的な数値で用い得る。
具体的なジビニルエーテルとしては、R8がC2-6 n-アルキル又はC2-6分枝鎖アルキルである化合物が含まれる。このタイプの好ましいジビニルエーテルとしては、エチレングリコールジビニルエーテル(EG-DVE);ブタンジオールジビニルエーテル(BD-DVE); ヘキサンジオールジビニルエーテル(HD-DVE); ジエチレングリコールジビニルエーテル(DEG-DVE);トリエチレングリコールジエチルエーテル(TEG-DVE); 及びテトラエチレングリコールジビニルエーテルが含まれる。有用なジビニルブレンドとしては、R10=エチル及びs=3.8のPLURIOL(登録商標)E-200ジビニルエーテル(BASFから入手できる)『PLURIOL(登録商標)』型ブレンド、及びDPE-2やDPE-3(インターナショナルスペシャリティプロダクツ(InternationalSpecialty Products, ニュージャージー州ウェインから入手できる)のような『DPE』ポリマーブレンドが含まれる。これらの中でDEG-DVE及びPLURIOL(登録商標)E-200が特に好ましい。
【0023】
R8がC2-6分枝鎖アルキルである有用なビニルエーテルは、ポリヒドロキシ化合物とアセチレンとを反応させることにより調製し得る。このタイプの具体的な化合物としては、R-が-CH(CH3)-のようなアルキル置換メチレン基である化合物が含まれる。
他の有用なジビニルエーテルとしては、R8がポリテトラヒドロフリル(ポリTHF)、又はポリオキシアルキレンである、好ましくは平均が約3モノマー単位である化合物が含まれる。
式IIIの2種以上の化合物、及び式IVの2種以上の化合物が上記方法において使用し得る。本発明の範囲内であるそのような組合わせの化合物全てが企図される。
式IIIと式IVの化合物間の反応は、酸触媒によって触媒される。好ましい触媒としては、HCl、ZnCl2又は他のルイス酸が含まれる。他の有効な酸触媒としては、硫酸、リン酸、亜リン酸、及び他の非酸化鉱酸が含まれる。
本発明の多官能ポリチオエーテルは、nモルの式IIIを有する化合物と(n-1)/m当量の式IVを有する化合物とを反応させて第1反応混合物を形成することにより製造される。この第1反応混合物は、酸触媒の存在下に反応させて液状二官能ポリチオエーテルを形成する。次に、そのように形成したポリチオエーテルを上記のz価多官能基化剤と組合わせて第2反応混合物を形成する。次に、第2反応混合物を触媒、好ましくはフリーラジカル触媒の存在下に反応させて液状多官能ポリチオエーテルを形成する。
【0024】
上記方法によって、R1が−SHである本発明の二官能又は多官能ポリチオエーテル、即ち、ジチオール又はポリチオールポリチオエーテルが得られる。−SH以外のR1基を含む本発明の化合物も提供される。かかるR1基としては、例えば、ヒドロキシル基、無置換アミン基、モノアルキル置換アミン基、少なくとも1つのヒドロキシル基、無置換アミン基又はモノアルキル置換アミン基で置換された一価基、又は酸触媒の存在下に非反応性である基が挙げられる。これらの化合物は、『キャップされた』化合物である。キャップされた化合物は、完全に(残存する遊離末端−SH基がない)又は部分的にキャップされ得る。
本発明の式I又は式IIの好ましいキャップされた化合物としては、R1が- S -(-CH2-)2-O−R4であり、R4が少なくとも1つのヒドロキシル基、無置換アミン基又はモノアルキル置換アミン基で置換された一価基、又は酸触媒の存在下に非反応性である基である化合物が含まれる。
更に特に好ましい実施態様としては、R4が無置換か又は少なくとも1つの-OH基又は-NHR5基で置換されているC1-6n-アルキル基であり、
R5がH又はC1-6n-アルキル基である化合物が含まれる。
【0025】
キャップされた二官能又は多官能ポリチオエーテルは、それぞれのキャップされていない二官能又は多官能ポリチオエーテルと適切なキャッピング剤とを、好ましくはフリーラジカル触媒の存在下に反応させることにより調製し得る。好ましくは、キャップされた化合物は、それぞれのキャップされていない化合物と約0.05〜約2モル(ジチオールについて)又は約0.05〜約zモル(z価ポリチオールについて)の下記式V
CH2 =CH − O − R4 V
を有する化合物又は式Vを有する2種の異なる化合物の混合物とを、フリーラジカル触媒の存在下に反応させることにより調製される。
式Vの化合物は、モノビニルエーテルであり、末端チオール基と反応させてポリチオエーテルポリマーをキャップする。式Vの好ましいモノビニルエーテルとしては、3-アミノプロピルビニルエーテルや4-ヒドロキシブチルビニルエーテル(ブタンジオールモノビニルエーテル)のようなアミノ又はヒドロキシアルキルビニルエーテル、又はエチルビニルエーテルのような無置換アルキルビニルエーテルが含まれる。2モルの式Vの化合物(ジチオールについて)又はzモル(z価ポリチオールについて)を用いると完全にキャップされたポリマーが得られ、少量を用いると部分的にキャップされたポリマーが得られる。
【0026】
上記方法においては、第2反応混合物を反応させるのに用いられる有効なフリーラジカル触媒としては、アゾ化合物、例えば、アゾ(ビス)イソブチロニトリル(AIBN)のようなアゾビスニトリル化合物;過酸化ベンゾイルやt-ブチルペルオキシドのような有機過酸化物; 又は過酸化水素のような無機化酸化物が含まれる。反応は、カチオン光開始部分を含めてか又は含めずに紫外光で照射することにより行い得る。無機又は有機塩基、例えば、トリエチルアミンを用いたイオン触媒法によって、本発明の関係において有用な材料が得られる。
上記反応は、約30〜約120℃の温度で約2〜約24時間行われることが好ましい。約70〜約90℃の温度で約2〜約6時間反応が行われることが非常に好ましい。
本発明の反応が縮合反応ではなくて付加反応であるので、本反応は、典型的には実質的に完結するまで進行する。即ち、本発明のポリチオエーテルは約100%の収率で製造される。望ましくない副生成物は全く又はほとんど生成しない。特に、本反応は、ポリチオエーテルの既知の製造方法の特徴を示すような悪臭のひどい環状副生成物の認知できる量を生成しない。更に、本発明に従って調製したポリチオエーテルは、残留酸性触媒をほとんど含まない。この残留触媒がないことは、悪臭のひどい環状化合物を生じるポリチオエーテルの水活性化分解を防止する。従って、本発明のポリチオエーテルは、熱安定性と低臭の双方を特徴とする。
【0027】
上記キャップされていないジチオール又はポリチオールポリチオエーテルは、それ自体有効であるほか、一般に譲渡された米国特許同時係属出願第08/928,972号に記載された具体的な各種方法に従ってジビニルエーテルと反応させることにより追加のポリチオエーテルを製造するのに有効である。この明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。
1つの方法においては、ポリチオエーテルは、(n+1)モルの上記式Iのキャップされていないジチオール化合物、又は少なくとも2種の異なるその化合物、と(n)モルの下記式VI
CH2 =CH − O -[-R11 − O -]k - CH = CH2 VI
(式中、R11はC2-6n-アルキル基、C2-6分枝アルキレン基、C6-8シクロアルキレン基又はC6-10アルキルシクロアルキレン基、-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基、又は少なくとも1つの-CH2-単位がメチル基で置換されている-[(-CH2-)p-X-]q-(-CH2-)r-基であり、
XはO、S及び-NR3-からなる群より選ばれたものであり、
R3はH又はメチルであり、
pは2〜6の整数であり、
qは1〜5の整数であり、
rは2〜10の整数であり、
kは0〜10の合理的な数である。)
を有する化合物又は式VIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物とをフリーラジカル触媒、イオン触媒及び紫外光からなる群より選ばれた触媒の存在下に反応させることにより製造される。この方法によって、チオール末端のポリチオエーテルが得られる。
【0028】
他の方法によれば、ビニル末端ポリチオエーテルは、過剰量の式VIの化合物を用いることにより製造される。即ち、(n)モルの上記式Iのキャップされていないジチオールポリチオエーテル、又は少なくとも2種のその化合物の混合物と、(n+1)モルの式VIを有する化合物、又は式VIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物とをフリーラジカル触媒、イオン触媒及び紫外光からなる群より選ばれた触媒の存在下に反応させる。
上記化合物は、キャップされていないポリチオエーテルである。チオール末端化合物もビニル末端化合物も更に反応させてキャップされたポリチオエーテルを得ることができる。1つの方法によれば、キャップされたチオール末端化合物は、(n+1)モルの上記式Iのキャップされていないジチオールポリチオエーテル、又は少なくとも2種の異なるその化合物の混合物と、(n)モルの式VIを有する化合物、又は式VIを有する少なくとも2種の化合物の混合物、及び約0.05〜約2モルの式Vを有する化合物、又は式Vを有する2種の異なる化合物の混合物とを反応させることにより製造される。上記成分は、フリーラジカル触媒、イオン触媒又は紫外光のような触媒の存在下に反応させることが好ましい。
【0029】
同様に、キャップされたビニル末端化合物は、(n)モルの上記式Iのキャップされていないジチオールポリチオエーテル、又は少なくとも2種の異なるその化合物の混合物と、(n+1)モルの式VIを有する化合物、又は式VIを有する少なくとも2種の異なる化合物の混合物、及び約0.05〜約2モルの式VII
HS − R4 VII
を有する化合物又は式VIIを有する2種の異なる化合物の混合物とを上で示した触媒の存在下に反応させることにより製造される。
上記化合物は、二官能ポリチオエーテルである。同様のキャップされていない又はキャップされた多官能ポリチオエーテルが適切な多官能基化剤を用いてここに記載された方法で製造される。更に、混合反応性の多官能基化剤(即ち、チオールと反応する部分及びビニル基と反応する他の部分を含む物質)であり得る、末端ビニル基と反応性である他の多官能基化剤も使用し得る。かかる追加の多官能基化剤は、米国特許出願第08/928,972号に記載されている。
本発明のポリチオエーテルは、低温可撓性及び耐燃料油性が重要である用途において重合性シーラント組成物として配合される。そのシーラント組成物は、例えば、航空宇宙用シーラントとして有効である。従って、好ましい第1重合性組成物としては、本明細書に記載された少なくとも1種のポリチオエーテル; 硬化剤又は硬化剤の組合わせ; 及び充填剤が含まれる。
【0030】
ポリチオエーテル又はポリチオエーテルの組合わせは、好ましくは約30wt%〜約90wt%、更に好ましくは約40〜約80wt%、非常に好ましくは約 45〜約75wt%の量で重合性組成物中に存在し、wt%は組成物の全不揮発成分の重量に基づいて計算される。重合性組成物に用いられるポリチオエーテルのTgは、好ましくは約-55℃以下、更に好ましくは約-60℃以下である。
本発明の重合性組成物に用いられる硬化剤としては、エポキシ樹脂、例えば、ヒダントインジエポキシド、ビスフェノールAエポキシドのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFエポキシドのジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシド、及び任意のエポキシ化不飽和フェノール樹脂が挙げられる。他の有効な硬化剤としては、市販のポリオールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、不飽和合成又は天然樹脂化合物、TAC(トリアリルシアヌレート)、及び本発明の化合物のオレフィン末端誘導体のような不飽和化合物が含まれる。更に、有効な硬化は、当業者に既知の有機又は無機過酸化物(例えば、MnO2)を用いてチオール基の酸化カップリングによって得ることができる。具体的な硬化剤の選定によって、硬化組成物のTgに影響し得る。例えば、TgがポリチオエーテルのTgより低い硬化剤は、硬化した組成物のTgを低下させることができる。
本組成物中に用いられるポリチオエーテルの種類によっては、本組成物は、約90〜約150%の化学量論量、好ましくは約95〜約125%の選定された硬化剤を含有する。
【0031】
本発明の重合性組成物に用いられる充填剤としては、カーボンブラックや炭酸カルシウム(CaCO3)のような当該技術において一般に用いられるものが含まれる。本組成物は、好ましくは約5〜約60wt%、非常に好ましくは約10〜50wt%の選定充填剤又は充填剤の組合わせが含まれる。
本発明の重合性組成物に用いられるポリチオエーテル、硬化剤及び充填剤、及び下記の任意の添加剤は、相互に相溶性であるように選択されなければならない。本発明の組成物の相溶性成分の選択は、不当な実験に頼ることなく当業者によって容易に行われ得る。
上記重合性組成物は、好ましくは約0℃、更に好ましくは約-10℃、非常に好ましくは約-20℃の最低温度で硬化可能であり、硬化時のTgは好ましくは約-55℃以下、更に好ましくは-60℃以下、非常に好ましくは-65℃以下である。硬化時の重合性組成物の体積膨潤%は、ジェット基準液(JRF)1型に60℃(140°F)及び周囲圧力で1週間浸漬した後に好ましくは25%以下である。
上記成分のほかに、本発明の重合性組成物には、1種以上の次のもの: 色素; チキソトロープ剤; 促進剤; 遅延剤; 接着促進剤; 及びマスキング剤が任意に含まれ得る。
【0032】
有効な色素としては、カーボンブラックや金属酸化物のような当該技術において慣用のものが含まれる。色素は、好ましくは約0.1〜約10wt%の量で存在する。
チキソトロープ剤、例えば、シリカは、好ましくは約0.1〜約5wt%の量で用いられる。
アミンのような当該技術に既知の促進剤は、好ましくは約0.1〜約5wt%の量で存在する。その2種の有効な促進剤は、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO(登録商標)、エアプロダクツ(AirProducts)、化学添加剤部門、ペンシルベニア州アーリントンから市販されている)及びDMP-30(登録商標)(ローム & ハース(Rohm& Haas)、ペンシルベニア州フィラデルフィアから市販されている)である。
同様に、ステアリン酸のような遅延剤は、好ましくは約0.1〜約5wt%の量で用いられる。接着促進剤は、例えば、慣用のフェノール樹脂又はシランであり得る接着促進剤が使われる場合には、好ましくは約0.1〜約5wt%の量で存在する。低レベル臭の組成物を被覆するのに有効なマスキング剤、例えば、マツ芳香剤又は他の香水は、好ましくは約0.1〜約1wt%の量で存在する。
【0033】
好ましい第2重合性組成物は、1種以上の可塑剤と上記ポリチオエーテル、硬化剤及び充填剤との組合わせである。可塑剤の使用は、航空宇宙用シーラントに通常有効であるより高いTgを有するポリチオエーテルを重合性組成物が含むことを可能にする。即ち、可塑剤の使用は組成物のTgを効果的に下げるので、ポリチオエーテルのみのTgに基づいて予想されるものより硬化した重合性組成物の低温可撓性を高める。
本発明の重合性組成物に有効である可塑剤としては、フタレートエステル、塩素化パラフィン、水素添加ターフェニル等が含まれる。可塑剤又は可塑剤の組合わせは、本組成物の好ましくは1〜約40wt%、更に好ましくは1〜約10wt%を構成する。
上記重合性組成物は、また、好ましくは0℃、更に好ましくは約-10℃、非常に好ましくは約-20℃の最低温度で硬化可能である。
次の限定されない実施例によって、本発明を更に詳細に示す。
実施例1〜4においては、液状ポリチオエーテルオリゴマーを、まず、ジチオールとジビニルエーテルとを酸触媒の存在下に混合することにより調製した。次に、オリゴマーを多官能基化剤と反応させて多官能ポリマーを製造した。
【実施例】
【0034】
実施例1
スターラーと温度計を備えた1000mlの3つ口フラスコに、192g(1.20モル)のジメルカプトジエチルスルフィド(DMDS)、350gのトルエン及び66gの濃塩酸を添加した。58g(0.41モル)のブタンジオールジビニルエーテル(BD-DVE)を一度に全部添加し、混合液を4.5時間撹拌した。水層を除去し、残りの混合液を72時間沈降させた。次に、有機層を傾瀉し、トルエンを除去した。有機層を93℃(200°F)で48時間加熱した。メルカプタン当量(ME)が272である透明な無色の液状オリゴマーを得た(重量平均分子量Mw= 544)。
次に、4.3gのオリゴマーを11.0g(44ミリモル)のPLURIOL(登録商標)E-200ジビニルエーテル、9.5g(52ミリモル)のジメルカプトジオキサオクタン(DMDO)及び0.99g(4ミリモル)のトリアリルシアヌレート(TAC)と共に小さなガラスびんに入れた。次に、0.25g(1.3ミリモル)のアゾビスニトリルフリーラジカル触媒(VAZO(登録商標)67[2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)]、デュポン(DuPont)から市販されている)を反応混合液へ撹拌した。反応混合液を82℃(180°F)まで約4時間、次に、93℃(200°F)まで加熱してMEが1164、Tgが-65℃、粘度が52ポアズ及び官能性Fが2.5である25g(8ミリモル、収率100%)の液状ポリチオエーテル樹脂(Mw= 316)を得た。
【0035】
実施例2
192g(1.20モル)のDMDS、350gのトルエン及び66gの濃塩酸を実施例1のようにフラスコ中で混合し、73g(0.51モル)のBD-DVEを一度に全部添加した。その混合液を実施例1のように反応させてMEが576及びTgが-60℃である濃厚な濁った液状オリゴマーを得た。Mw= 1152.F = 2.0.
次に、69.7gのオリゴマーを5.15g(32ミリモル)のジエチレングリコールジビニルエーテル及び1.01g(4ミリモル)のTACと共に100mlの容器に入れた。次に、0.35g(1.8ミリモル)のVAZO(登録商標)67を反応混合液へ撹拌した。その混合液を実施例1のように反応させてMEが1573、Tgが-49℃、粘度が336ポアズ及び官能性Fが2.2である70g(20ミリモル、収率100%)の液状ポリチオエーテル樹脂を得た(Mw= 3450)。
【0036】
実施例3
192g(1.20モル)のDMDS、350gのトルエン及び66gの濃塩酸を実施例1のようにフラスコで混合し、43.5g(0.31モル)のBD-DVEを一度に全部添加した。混合液を実施例1のように反応させてMEが168及びMwが約340である液状オリゴマーを得た。
23.0gのこの物質を8.9g(0.05モル)のヘキサンジオールジビニルエーテルと小さなガラスびんで混合した。0.13g(0.7ミリモル)のVAZO(登録商標)67を触媒として添加した。その混合液を82℃(180°F)で約20時間加熱した後、99℃(210°F)で1時間脱ガスしてMEが1012、粘度が104ポアズ、Tgが-59℃である生成物を得た。
化学量論量のDEN431エポキシノボラック樹脂で硬化した後、この物質は次の特性を有した。
硬度 42 A型硬度計
Tg -47
JRF 1型における体積膨潤%27%
体積抵抗率 1.1×1012Ω-cm
表面抵抗率 4.0×1011Ω
【0037】
実施例4
83.9g(0.53モル)の1,6-ヘキサンジチオール(HDT)、154gのトルエン及び29gの濃塩酸を実施例1のようにフラスコで混合し、25.5g(0.18モル)のBD-DVEを一度に全部添加した。混合液を実施例1のように反応させてから、メタノールで洗浄してMEが327である液状オリゴマーを得た。Mw= 654. 次に、21.0gのオリゴマーを3.1g(20ミリモル)のジエチレングリコールジビニルエーテル(DEG-DVE)及び0.80g(3.2モル)のTACと共に小さなガラスびんに入れた。次に、0.20g(1.0ミリモル)のVAZO(登録商標)67を反応混合液へ撹拌した。その混合液を実施例1のように反応させてMEが1515、Tgが-76℃、及び官能性Fが2.5である25g(6.4ミリモル、収率100%)の液状ポリチオエーテル樹脂を得た。硬化時の樹脂のTgは-66℃であった。硬化した物質の体積抵抗率は3.2×1010Ωであった。
実施例5〜8においては、液状オリゴマーを調製した。
【0038】
実施例5
34.3g(0,21モル)のDMDS、100mlのトルエン及び11gの濃塩酸を実施例1のようにフラスコで混合し、18.9g(0.13モル)のエチレングリコールブチルビニルエーテル(EG-BVE、モノビニルエーテル)を一度に全部添加した。混合液を実施例1のように反応させて透明な液状オリゴマーを得た。Mw= 430.
【0039】
実施例6
111g(0.70モル)のDMDS、200mlのトルエン及び43gの濃塩酸を実施例1のようにフラスコで混合し、27.8g(0.19モル)のエチルビニルエーテル(EVE、モノビニルエーテル)を一度に全部添加した。この物質を実施例1のように混合したが加熱熟成せず、MEが187である透明な液状オリゴマーを得た。
【0040】
実施例7
41.3g(0.26モル)のDMDS、100mlのトルエン及び19.1gの濃塩酸を実施例1のようにフラスコで混合し、12.3g(58ミリモル)のトリメチロールプロパントリビニルエーテル(TMP-TVE、トリビニルエーテル)をゆっくりと滴下した。この物質を実施例1のように混合したが加熱熟成しなかった。メタノールで洗浄した後、MEが376及びMwが724である液状ポリマーを得た。
【0041】
実施例8
4.14g(30ミリモル)の1,5-ペンタンジオール、15mlのトルエン及び1.6gの濃塩酸を50ml中で混合し、1.44g(10ミリモル)のBD-DVEを徐々に添加した。この物質を4時間混合し、回転蒸発させて溶媒を除去し、93℃(200°F)で3日間加熱熟成してMEが233である液状ポリマーを得た。
【0042】
実施例9
48g(0.30モル)のDMDS、14.5g(0.10モル)のBD-DVE、100gのトルエン、0.1gのZnCl2及び3滴のH2Oを250mlのフラスコで混合した。この混合液を4時間撹拌した。
この混合液に水性NaClを添加して2層を分離することを援助した。有機層を乾燥し、110℃に加熱してMEが146である透明な液状オリゴマーを得た。
【0043】
実施例10
高抵抗率組成物
次の混合液を調製した。
実施例1のオリゴマー10g
DEN 431 6.7g
DABCO 0.02g
混合液を60℃(140°F)で一晩加熱して硬化した。硬化した物質のTgが-22℃、硬度計の読取りが65(レックス(Rex)ゲージ)、及び体積抵抗率が>1×1013Ωであった。純粋なトルエン中60℃(140°F)で4日後、硬化した物質は重量増加分18%を示した。乾燥後、応力亀裂は観察されなかった。硬化した物質は透明で無色であった。
【0044】
実施例11
高抵抗率組成物
次の混合液を調製した。
TAC 3.4g(14ミリモル)
1,6-ヘキサジエン6.81g(83ミリモル)
実施例1のオリゴマー79.69g(136ミリモル)
これらの成分を100mlのフラスコに混合し、0.4g(1.6ミリモル)のVAZO(登録商標)52(2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)と60℃(140°F)で約4時間反応させた。次に、0.2gVAZO(登録商標)67(1.0ミリモル)を添加し、この物質を93℃(200°F)で数時間以上加熱した。次に、反応生成物を脱ガスしてメルカプタン当量が1154及びTgが-56℃の90g(収率100%)の濃厚な不透明な液体を得た。Mw= 3100. F = 2.5. 10gのこのポリマーを5gのCaCO3と混合しかつ実施例10に記載されたように硬化したときに、この物質のTgは-46℃及びJRF1型における燃料油膨潤は9%であった。体積抵抗率は1.2×1011Ωであった。
【0045】
実施例12
高抵抗率材料
次の混合物を調製した。
TAC 3.2g(13ミリモル)
1,9デカジエン11.01g(77ミリモル)
実施例1のオリゴマー75.25g(128ミリモル)
これらの成分を0.85gVAZO(登録商標)67(3.4ミリモル)と共に71〜82℃(160〜180°F)で約7時間100mlのフラスコで混合してから、脱ガスしてメルカプタン当量が1203及びTgが-57℃である90g(収率100%)の軟らかい固形物を得た。Mw= 3500、F = 2.5.
10gのこのポリマーを5gのCaCO3と混合し、実施例10に記載されたように硬化したとき、この物質のTgは-50℃であり、JRF1型における燃料油膨潤が15%であった。体積抵抗率は、4.5×1011Ωであった。
【0046】
実施例13
スターラーと温度計を備えた500mlの3つ口フラスコへ56g(0.35モル)のDMDS、32g(0.20モル)のヘキサンジチオール(HDT)、165gのトルエン、及び36gの濃塩酸を添加した。36g(0.25モル)のBD-DVEを速やかに(10分で)添加し、反応混合液を2.5時間撹拌した。72時間沈降させた後、水層を除去した。有機層を傾瀉し、トルエンを除去した。この物質を93℃(200°F)で72時間加熱してから、99〜116℃(210〜240°F)で脱ガスした。Mwが約2000である無色の液体を得た。メルカプタン当量は、1032であった。25℃における粘度= 109ポアズ、Tg = -60℃.
この物質を化学量論量のDEN 431エポキシノボラック樹脂で硬化したとき、次の特性を得た。
硬度 50(A型硬度計)
Tg-51
JRF 1型における体積膨潤%27%
体積抵抗率1.028×1012Ω
表面抵抗率5.66×1011Ω-cm
この物質の低温可撓性は、良好であり、-50℃において2"径マンドレルの周りの湾曲を合格した。
【0047】
実施例14
192g(1.20モル)のDMDS及び6.6g(0.04モル)のTVCHをスターラーと温度計を備えた250mlの3つ口フラスコで混合及び加熱した。0.4gのVAZO(登録商標)67(2ミリモル)の全量を添加し、混合液を88〜93℃(190〜200°F)で約4時間加熱した。IRスペクトルから、C=C結合のないことが示される。
32gの上記溶液、31g(0.2モル)のDMDS、100gのトルエン及び20gの濃塩酸をスターラーと温度計を備えた250mlの3つ口フラスコで混合した。25g(0.17モル)のBD-DVEを速やかに添加した。混合液を3時間撹拌し、72時間沈降させた。有機層と水層を分け、有機層からトルエンを除去した。93℃(200°F)で5日後、この物質を99〜116℃(210〜240°F)で脱ガスしてメルカプタン当量が1163及びTgが47℃の透明で無色な液体を得た。
二官能ビスフェノールAエポキシ樹脂で硬化した後、硬度40(A型硬度計)が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される化合物。

【公開番号】特開2009−209377(P2009−209377A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151665(P2009−151665)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【分割の表示】特願2000−541234(P2000−541234)の分割
【原出願日】平成11年3月29日(1999.3.29)
【出願人】(502328466)ピーアールシー−デソト インターナショナル,インコーポレイティド (29)
【Fターム(参考)】