説明

メッキ方法

【課題】基体、例えば、光学基体への金属層の接着を改善する方法の提供。および、かかる方法によって製造される装置の提供。
【解決手段】本発明の方法は、金属堆積に先立ち、メッキ触媒を含む接着促進組成物の層を基体上で用いる。本発明は、基体上に金属膜を堆積する方法であって、基体を準備する工程、基体上に接着促進組成物の層を堆積する工程、および接着促進組成物上に金属層を堆積する工程を含み、接着促進組成物が膜形成ポリマー、メッキ触媒およびポロゲンを含有する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、金属メッキの分野に関する。特には、本発明は非導電性基体上での金属膜の形成の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置、例えば、液晶ディスプレイ(「LCD」)装置の製造においては、薄い金属膜が時折電極または回路として基体上に堆積される。その基体が複雑な表面外形、例えば、曲面または三次元表面を有するとき、金属膜の堆積において難問が生じる。基体表面が窪みまたは空洞を有するとき、別の難問が生じる。表面外形は、典型的には、金属膜の表面に反映され、金属膜に窪みまたは空洞を生じる可能性がある。
【0003】
これらの金属膜は、しばしば、非導電性表面、例えば、光学基体上に堆積される。このような金属膜は、様々な技術、例えば、真空蒸着、スパッタリングおよび化学蒸着によって堆積される。かかる堆積方法は、典型的には、減圧環境を必要とし、それはそれらの適用性を制限する。
【0004】
金属粒子を含有する特定のペーストが、電子装置内に金属膜を堆積するのに用いられている。これらのペーストを基体上に堆積した後、それらを焼成して金属膜とする。かかる焼成に必要な温度がこの技術の適用性を制限する。
【0005】
他の金属堆積方法、例えば電解性および無電界性の方法が、様々な金属膜の堆積に用いられる。電解金属堆積方法は、金属膜を堆積するため、導電性基体(陰極)を必要とする。無電界金属堆積方法は、典型的には、還元剤を含有するメッキ浴を用いる。無電界堆積技術は、堆積のための真空も高温も導電性基体も必要としない点で有利である。これらの利点は、無電界金属堆積技術を、非導電性基体、特には、電子および/または光学装置において用いられる光学基体上の金属堆積にとって魅力的なものとする。しかしながら、無電界堆積によって堆積された金属膜は、典型的には、他の金属堆積法、例えば電解堆積と比較して、基体への接着性が劣っている。
【0006】
米国特許第6,661,642号(Allenら)は、基体上の第1誘電体層にメッキドーパントを含有する誘電体層を堆積させ、その誘電体層の表面上に導電層をメッキすることによる、キャパシタの形成方法を開示する。この特許は光学基体を教示してはいない。
【特許文献1】米国特許第6,661,642号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基体(特に、光学基体)上に金属膜を堆積する方法であって、基体に悪影響を及ぼさない条件下で金属膜が堆積され、金属膜が基体への良好な接着性を有し、および金属膜が基体表面の不規則性を反映しない方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基体上に金属膜を堆積する方法であって、基体を準備する工程、基体上に接着促進組成物の層を堆積する工程、および接着促進組成物上に金属層を堆積する工程を含み、接着促進組成物が膜形成ポリマー、メッキ触媒およびポロゲン(porogen)を含有する方法を提供する。一態様において、基体は光学基体である。
【0009】
光学基体、光学基体上に堆積された接着促進組成物層、および接着促進組成物層上に堆積された金属層を含み、接着促進組成物が膜形成ポリマーおよびメッキ触媒を含有する装置も本発明によって提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書を通して用いられる場合の、以下の略語は、文脈が明瞭に他を指示しない限り、以下の意味を有する:℃=摂氏度;rpm=毎分回転;mol=モル;g=グラム;L=リットル;hr=時間;min=分;sec=秒;nm=ナノメートル;cm=センチメートル;およびwt%=重量パーセント。
【0011】
「プリント配線板」および「プリント回路板」という用語は本明細書を通して交換可能に用いられる。「堆積」および「メッキ」は本明細書を通して交換可能に用いられ、無電界メッキおよび電解メッキの両者を含む。「ポリマー」はホモポリマーおよびコポリマーの両者を含み、オリゴマーを含む。「オリゴマー」という用語は二量体、三量体、四量体等を含む。「アクリルポリマー」は、重合した単位として、アクリル酸、アルキルアクリレート、アルケニルアクリレート、およびアリールアクリレートの1以上のモノマーを含有するポリマーを含む。「メタクリルポリマー」は、重合した単位として、メタクリル酸、アルキルメタクリレート、アルケニルメタクリレート、およびアリールメタクリレートの1以上のモノマーを含有するポリマーを含む。「(メタ)アクリル」という用語はアクリルおよびメタクリルの両者を含み、並びに「(メタ)アクリレート」という用語はアクリレートおよびメタクリレートの両者を含む。同様に、「(メタ)アクリルアミド」という用語はアクリルアミドおよびメタクリルアミドの両者を指す。「アルキル」は直鎖、分岐鎖および環状アルキル基を含む。「架橋剤」および「架橋試薬」は本明細書を通して交換可能に用いられる。
【0012】
他に注記されない限り、すべての量は重量パーセントであり、すべての比は重量基準である。すべての数値範囲は境界値を含み、かかる数値範囲が100%までの加算に制約されることが明瞭である場合を除いて、任意の順番で組み合わせることができる。図においては、同様の参照番号は同様の要素を指す。
【0013】
本発明は基体上に金属膜を堆積する方法であって、基体を準備する工程、基体上に接着促進組成物の層を堆積する工程、および接着促進組成物上に金属層を堆積する工程を含み、接着促進組成物が膜形成ポリマー、メッキ触媒およびポロゲンを含有する方法を提供する。一態様において、接着促進組成物はケイ素含有物質を含む。さらなる態様においては、この方法はポロゲンを除去する工程を含む。さらなる態様においては、基体は光学基体である。
【0014】
本発明における使用に好適な基体は、典型的には、非導電性である。このような基体には、有機、無機および有機−無機複合体が含まれる。例示的な有機基体には、ポリマー、例えば、エポキシ、ポリスルホン、ポリアミド、ポリアリーレンエーテル、ポリエステル、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ベンゾシクロブテン、ポリ(アリールエステル)、ポリ(エーテルケトン)、ポリカーボネート、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリノルボルネン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ芳香族炭化水素、例えば、ポリナフタレン、ポリキノキサリン、ポリ(過フッ素化炭化水素)、例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン)、およびポリベンゾキサゾールが含まれる。例示的な無機基体には、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、オキシフッ化ケイ素、炭化ホウ素、酸化ホウ素、窒化ホウ素、オキシフッ化ホウ素、炭化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、オキシフッ化アルミニウム、シリコーン、シロキサン、例えば、シルセスキオキサン、シリケート、およびシラザンが含まれる。他の好適な無機基体には、ガラス、例えば、ホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、インジウム−スズ−酸化物(「ITO」)、金属酸化物、例えば、二酸化チタンおよび酸化スズ、水晶、サファイア、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、ヒ化ガリウム、およびケイ素が含まれる。一態様において、基体は無機高−k(high−k)キャパシタ誘電体ではない。「高−k」が意味するところは、7以上の誘電率を有する誘電性物質である。別の態様においては、基体はセラミックではない。
【0015】
一態様において、基体は光学基体である。「光学基体」が意味するところは、可視光の50%以上透過率を有する任意の基体である。かかる光学基体は有機、無機または有機−無機物質であり得る。例示的な光学基体としては、これらに限定されるものではないが、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリカーボネート、ITO、水晶、酸化スズ、カーボンナノチューブ、ガラス、シルセスキオキサン、およびシロキサンが挙げられる。シルセスキオキサンは、一般式(RSiO1.5を有するポリシリカ物質である。R基は任意の有機基、例えば、アルキル、アルケニルおよびアリールである。この有機基は場合により置換されていてもよく、これはその水素の1個以上が別の基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシまたはアルコキシで置換されていてもよいことを意味する。好適なシルセスキオキサンとしては、これらに限定されるものではないが、水素シルセスキオキサン、アルキルシルセスキオキサン、例えば、メチルシルセスキオキサン、アリールシルセスキオキサン、例えば、フェニルシルセスキオキサン、並びにそれらの混合物、例えば、アルキル/水素、アリール/水素およびアルキル/アリールシルセスキオキサンが挙げられる。有機ポリマー光学基体、例えば、(メタ)アクリルポリマーを含むものは、米国特許第6,224,805号(Fieldsら)に開示されるものを含めて、様々な手段によって調製することができる。
【0016】
光学基体には、光学および光電子工学装置、例えば、これに限定されるものではないが、ディスプレイ装置が含まれる。本明細書において用いられる場合、「ディスプレイ装置」は電極システムから離れて機能する任意のディスプレイを指す。例示的なディスプレイ装置には、これらに限定されるものではないが、LCD、ヘッドアップディスプレイ、プラズマディスプレイおよび発光ポリマーディスプレイが含まれる。光学基体には光配向装置、例えば、これらに限定されるものではないが、導波路、ファイバー光学ケーブル、および光学パッケージングが包含される。導波路はクラッド材料により取り囲まれたコア材料を有する。基体が導波路である場合、接着促進組成物はクラッド材料上に堆積させることができる。あるいは、接着促進組成物それ自体をクラッド材料として用い、コア材料に直接堆積させることもできる。さらに他の光学基体には、発光ダイオード(「LED」)、例えば、ポリマーLED(「PLED」)および有機LED(「OLED」)が含まれる。
【0017】
接着促進組成物は、膜形成ポリマー、メッキ触媒およびポロゲンを含む。様々な膜形成ポリマーを、かかる膜形成ポリマーが、用いられる基体および処理条件に適合する条件で、用いることができる。膜形成ポリマーは有機物であって、無機物であっても、または有機−無機物質であってもよい。例示的な有機ポリマーとしては、これらに限定されるものではないが、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ、ポリスルホン、ポリアリーレン、およびポリアリーレンエーテルが挙げられる。かかるポリマーはホモポリマーであっても、コポリマーであってもよい。ポリマーの混合物を用いることもできる。例示的な無機ポリマーとしてはは、これらに限定されるものではないが、シリカ、アルミナ、ジルコニアおよびそれらの混合物が挙げられる。有機−無機ポリマーは、有機部分および金属および/または半金属(metalloid)部分を含む任意のポリマーである。例示的な有機−無機ポリマーとしては、有機ポリシリカが挙げられる。「有機ポリシリカ」物質という用語は、ケイ素、炭素、酸素および水素原子を含む物質を指す。
【0018】
一態様において、膜形成ポリマーは有機ポリシリカである。さらなる態様において、例示的な有機ポリシリカ物質は、式(I)、(II)のシランの1以上または(I)および(II)の両者を含む加水分解生成物または部分的縮合物である。
【0019】
【化1】

【0020】
式中、Rは水素、(C−C)アルキル、(C−C12)アリールアルキル、置換(C−C12)アリールアルキル、アリール、および置換アリールであり;Yは任意の加水分解性基であり;aは0〜2の整数であり;R、R、RおよびRは、水素、(C−C)アルキル、(C−C12)アリールアルキル、置換(C−C12)アリールアルキル、アリール、および置換アリールから独立に選択され;Rは(C−C10)アルキレン、−(CH−、−(CHh1−E−(CHh2−、−(CH−Z、アリーレン、置換アリーレン、およびアリーレンエーテルから選択され;Eは酸素、NRおよびZから選択され;Zはアリーレンおよび置換アリーレンから選択され;Rは水素、(C−C)アルキル、アリールおよび置換アリールから選択され;bおよびdは、独立に、0〜2の整数であり;cは0〜6の整数であり;並びに、h、h1、h2およびkは、独立に、1〜6の整数であり;ただし、R、R、RおよびRの少なくとも1つは水素ではない。「置換アリールアルキル」、「置換アリール」および「置換アリーレン」は、その水素の1個以上が別の置換基、例えば、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト、ハロ、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ等で置換されているアリールアルキル、アリールまたはアリーレン基を指す。典型的には、Rは(C−C)アルキル、ベンジル、ヒドロキシベンジル、フェネチルまたはフェニルであり、より典型的には、メチル、エチル、イソ−ブチル、tert−ブチルまたはフェニルである。一態様において、aは1である。Yに好適な加水分解性基には、これらに限定されるものではないが、ハロ、(C−C)アルコキシ、アシロキシ等が含まれる。好ましい加水分解性基はクロロおよび(C−C)アルコキシである。別の態様において、cは1〜6、典型的には、1〜4の整数である。
【0021】
好適な式(I)の有機シランとしては、これらに限定されるものではないが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリルトリメトキシシラン、トリルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、イソ−プロピルトリエトキシシラン、イソ−プロピルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソ−ブチルトリエトキシシラン、イソ−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリエトキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、ヒドロキシベンジルトリメトキシシラン、ヒドロキシフェニルエチルトリメトキシシランおよびヒドロキシフェニルエチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0022】
式(II)の有機シランには、好ましくは、RおよびRが、独立に、(C−C)アルキル、ベンジル、ヒドロキシベンジル、フェネチルまたはフェニルであるものが含まれる。好ましいRおよびRはメチル、エチル、tert−ブチル、イソ−ブチルおよびフェニルである。好ましくは、Rは(C−C10)アルキル、−(CH−、アリーレン、アリーレンエーテルおよび−(CHh1−E−(CHh2である。好適な式(II)の化合物としては、これらに限定されるものではないが、Rがメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、ノルボルニレン、シクロヘキシレン、フェニレン、フェニレンエーテル、ナフチレンおよび−CH−C−CH−であるものが挙げられる。さらに、cは1〜4であることが好ましい。
【0023】
好適な式(II)の有機シランとしては、これらに限定されるものではないが、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)メタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチル−シリル)メタン、ビス(ジメトキシフェニルシリル)メタン、ビス(ジエトキシフェニルシリル)メタン、ビス(メトキシジメチルシリル)メタン、ビス(エトキシジメチルシリル)メタン、ビス(メトキシジフェニルシリル)メタン、ビス(エトキシジフェニルシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリフェノキシシリル)エタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、ビス(ジメトキシフェニルシリル)エタン、ビス(ジエトキシフェニルシリル)エタン、ビス(メトキシジメチルシリル)エタン、ビス(エトキシジメチルシリル)エタン、ビス(メトキシ−ジフェニルシリル)エタン、ビス(エトキシジフェニルシリル)エタン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,3−ビス(ジメトキシ−メチルシリル)プロパン、1,3−ビス(ジエトキシメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(ジメトキシフェニル−シリル)プロパン、1,3−ビス(ジエトキシフェニルシリル)プロパン、1,3−ビス(メトキシジメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(エトキシジメチルシリル)プロパン、1,3−ビス(メトキシジフェニルシリル)プロパン、1,3−ビス(エトキシジフェニルシリル)プロパン等が挙げられる。
【0024】
好適な有機ポリシリカ物質には、これらに限定されるものではないが、シルセスキオキサン、部分縮合されたハロシランもしくはアルコキシシラン、例えば、500〜20,000の数平均分子量を有する、制御された加水分解によって部分的に縮合したテトラエトキシシラン、組成RSiO、OSiRSiO、RSiOおよびOSiRSiO(式中、Rは有機基である)を有する有機的に修飾されたシリケート、並びにSi(OR)をモノマー単位として有する部分縮合されたオルトシリケートが挙げられる。シルセスキオキサンは、RSiO1.5(式中、Rは有機基である)型のポリマーシリケート物質である。好適なシルセスキオキサンは、アルキルシルセスキオキサン;アリールシルセスキオキサン;アルキル/アリールシルセスキオキサン混合物;およびアルキルシルセスキオキサンの混合物である。シルセスキオキサン物質には、シルセスキオキサンのホモポリマー、シルセスキオキサンのコポリマーまたはそれらの混合物が含まれる。このような物質は、一般には、商業的に入手可能であるか、または公知方法によって調製することができる。
【0025】
代わりの態様において、有機ポリシリカ物質は、上述のケイ素含有モノマーに加えて、様々な他のモノマーを含むことができる。例えば、有機ポリシリカ物質は第2架橋試薬、およびカルボシラン部分をさらに含むことができる。
【0026】
好適な第2架橋試薬はケイ素含有物質の任意の公知の架橋剤であり得る。典型的な第2架橋試薬には、式M(OR11(式中、Mはアルミニウム、チタン、ジルコニウム、ケイ素、マグネシウム、またはホウ素であり;R11は(C−C)アルキル、アシル、またはSi(OR12であり;R12は(C−C)アルキルまたはアシルであり;およびnはMの価数である)のシランが含まれる。一態様において、R11はメチル、エチル、プロピルまたはブチルである。別の態様において、Mはアルミニウム、チタン、ジルコニウムまたはケイ素である。当該技術分野における当業者は、かかる第2架橋試薬の組み合わせを用いることができることを理解する。第2ケイ素架橋試薬が用いられるとき、式(I)および(II)のシランの混合物と、かかる第2架橋試薬有機シランとの比は、典型的には99:1〜1:99、好ましくは95:5〜5:95、より好ましくは90:10〜10:90である。
【0027】
カルボシラン部分は、(Si−C)構造、例えば、(Si−A)構造(式中、Aは置換または非置換アルキレンまたはアリーレンである)、例えば、SiRCH−、−SiRCH−、=SiRCH−、および≡SiCH−(式中、Rは通常は水素であるが、任意の有機または無機基であってもよい)を有する部分を指す。好適な無機基には、有機ケイ素、シロキシル、またはシラニル部分が含まれる。これらのカルボシラン部分は、典型的には、複雑な分岐構造が生じるような方法で、「頭−尾(head−to−tail)」で接続し、すなわち、Si−C−Si結合を有する。特に有用なカルボシラン部分は、繰返し単位(SiHCH)および(SiHy−1(CH=CH)CH)(式中、x=0〜3、y=1〜3である)を有するものである。これらの繰返し単位は有機ポリシリカ樹脂中に1〜100,000、好ましくは、1〜10,000の任意の数で存在し得る。好適なカルボシラン前駆体は、米国特許第5,153,295(Whitmarshら)および第6,395,649号(Wu)に開示されるものである。
【0028】
様々なメッキ触媒を本発明において用いることができる。本発明において有用なメッキ触媒は、接着促進組成物上での導電層のメッキを可能にする任意のものである。好ましくは、メッキ触媒は導電性である。このようなメッキは任意の好適な方法、例えば、無電界金属堆積および電解金属堆積によるものであり得る。無電界メッキには浸漬メッキが含まれる。好適なメッキ触媒としては、これらに限定されるものではないが、スズ、鉛、パラジウム、コバルト、銅、銀、金、酸化亜鉛、導電性ポリマー、およびグラファイトが挙げられる。メッキ触媒の混合物、例えば、パラジウム/スズ混合物を有利に用いることができる。一態様において、特に好適なメッキ触媒は、スズ、パラジウム、コバルト、銅、銀、金、酸化亜鉛およびそれらの混合物である。
【0029】
金属系メッキ触媒が用いられる場合、それらは接着促進組成物層に様々な形態で存在することができ、この形態には、これらに限定されるものではないが、元素金属、金属合金、金属化合物、例えば、金属酸化物および金属塩、金属錯体、または導電性金属構造に変換することができる金属前駆体が含まれる。金属または金属合金は、粒子、針、ロッド、クリスタリットまたは他の好適な構造として用いることができる。メッキ触媒は、熱、光または他の外部手段によって導電性金属構造に変換することができる。例示的な金属前駆体としては、金属有機堆積試薬、ハロゲン化銀物質等が挙げられる。一態様において、メッキ触媒が金属または金属合金であるとき、それは微粒子(1nm〜10μm)として存在する。このような微細な金属または金属合金粒子は様々な手段、例えば、燃焼化学蒸着、機械的粉砕、二相モノリス(biphasic monolith)のエッチング、超音波、化学的還元、真空蒸着等によって調製することができる。
【0030】
例えば、これらに限定されるものではないが、ポリアセチレンおよびポリピロールをはじめとする様々な導電性ポリマーが知られている。任意の導電性ポリマーを本発明において用いることができる。典型的には、用いられる導電性ポリマーは250℃より高く加熱しても安定である。
【0031】
メッキ触媒は接着促進組成物中に、接着促進組成物層上での導電層のメッキを提供するのに十分な量で存在する。必要な最少量は、個々のメッキ触媒および堆積させようとする導電層に依存する。例えば、導電層を電解で堆積させる場合、メッキ触媒は導電層の電気メッキを可能にするのに十分な導電性である量で存在していることが必要である。導電層を浸漬メッキによって堆積させようとする場合、堆積させる金属よりもより正に帯電している十分な金属触媒が、必要な置換(浸漬)メッキを生じさせるのに十分な量で存在していることが必要がある。このような最少量については、十分に、当該技術分野における当業者の能力範囲内である。メッキ触媒は、典型的には、接着促進組成物中に50体積%まで存在することができる。より多量のメッキ触媒を有利に用いることができる。一般には、メッキ触媒の量は45体積%まで、より典型的には、40体積%までである。
【0032】
様々なポロゲンを本発明において用いることができる。本明細書で用いられる場合、「ポロゲン」という用語は接着促進組成物から除去可能である物質を指す。除去することで、ポロゲンは、必ずではないが、接着促進組成物層の表面に細孔または空洞を形成することができる。理論により束縛されるのを望まないが、ポロゲンは、幾つかの場合において、接着促進組成物層全体を通して細孔を形成することができる。膜形成ポリマーおよびメッキ触媒中に分散させ、または膜形成ポリマーおよびメッキ触媒と共に懸濁させ、または共に溶解し、または他の方法で膜形成ポリマーおよびメッキ触媒と組み合わせることができ、並びに、必ずではないが、続いて接着促進組成物から除去することができる、任意の物質を好適に用いることができる。接着促進組成物から選択的にエッチングまたは除去することができ、好ましくは、接着促進組成物層に悪影響を及ぼさない有機ポリマーまたは化合物が、ポロゲンとして特に好適である。一態様において、ポロゲンは、接着促進組成物中で実質的に凝集または凝塊しないように選択される。このような非凝集または非凝塊は接着促進組成物全体を通してのポロゲンのより均一な分布を可能にする。ポロゲンはポリマー粒子であることが好ましい。ポロゲンポリマー粒子が、接着促進組成物を堆積させるために用いられる任意の溶媒に可溶または混和性であることがさらに好ましい。
【0033】
ポロゲンはポリマー、例えば、線形ポリマー、星状ポリマー、樹状ポリマーおよびポリマー粒子であってよく、または高沸点溶媒であってもよく、または膜形成ポリマーと共重合して不安定な(除去可能な)成分を有するブロックコポリマーを形成するモノマーもしくはポリマーであってもよい。代わりの態様において、ポロゲンは膜形成ポリマーと、もしくは、その代わりに、膜形成ポリマーの形成に用いられるモノマーと、またはそれらの両者と事前に重合もしくは事前に反応していてもよい。
【0034】
ポロゲンとして有用な不安定成分を有する好適なブロックコポリマーは米国特許第5,776,990号および第6,093,636号に開示されるものである。このようなブロックコポリマーは、例えば、高度に分岐した脂肪族エステルであって、官能化された脂肪族エステルが、ガラス化しているマトリックス(すなわち、膜形成ポリマー)中に組み込まれる、すなわち共重合するような、適切な反応性基でさらに官能化されている官能基を有する脂肪族エステルを孔隙形成物質として用いることによって調製することができる。このようなブロックコポリマーとしては、これらに限定されるものではないが、ベンゾシクロブテン、ポリ(アリールエステル)、ポリ(エーテルケトン)、ポリカーボネート、ポリノルボルネン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ芳香族炭化水素、例えば、ポリナフタレン、ポリキノキサリン、ポリ(過フッ化炭化水素)、例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリベンゾキサゾールおよびポリシクロオレフィンが挙げられる。
【0035】
特に好適なポロゲンは、架橋されたポリマー粒子、例えば、米国特許第6,271,273B1号(Youら)および第6,420,441号(Allenら)に開示されるものである。このポリマーポロゲンは、重合単位として、1種以上のモノマーおよび1種以上の架橋試薬を含む。ポロゲンの調製において有用な好適なモノマーとしては、これらに限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリレート、アルケニル(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、ビニル芳香族モノマー、窒素含有化合物およびそれらのチオ類似体、置換されたエチレンモノマーおよび芳香族モノマーが挙げられる。このようなポロゲンは、エマルジョン重合および溶液重合を含む様々な重合法、好ましくは、溶液重合によって調製することができる。
【0036】
かかるポロゲンは、典型的には、5,000〜1,000,000、より典型的には、10,000〜500,000、さらにより典型的には、10,000〜100,000の範囲の分子量を有する。ポリマー粒子がポロゲンとして用いられる場合、それらは様々な平均粒子サイズ、例えば、1000nmまでのいずれを有していてもよい。典型的な平均粒子サイズの範囲は0.5〜1000nm、より典型的には、0.5〜200nm、さらにより典型的には、0.5〜50nm、最も典型的には、1nm〜20nmである。
【0037】
ポロゲン粒子は、典型的には、架橋している。典型的には、架橋試薬の量は、ポロゲンの重量を基準にして、少なくとも約1重量%である。ポロゲンの重量を基準にして100%以下の架橋試薬をポロゲン粒子において有効に用いることができる。一般には、架橋剤の量は1%〜80%、より典型的には、1%〜60%である。様々な架橋試薬を用いることができる。かかる架橋試薬は多官能性モノマーであり、当該技術分野における当業者によく知られている。例示的な架橋試薬は米国特許第6,271,273(Youら)に開示されている。特に好適な架橋試薬は2つ以上のエチレン性不飽和基を含むモノマーである。
【0038】
広範囲の粒子サイズを有するポロゲン粒子を本発明において用いることができる。これらの物質の粒子サイズ多分散性は1〜20、典型的には1.001〜15、より典型的には、1.001〜10の範囲内である。均一な粒子サイズ分布(1〜1.5の粒子サイズ多分散性)または広い粒子サイズ分布を有する粒子を本発明において有効に用いることができることが理解される。
【0039】
任意に、接着促進組成物は1種以上のさらなる成分、例えば、粘度調整剤、界面活性剤、溶媒および重合触媒を含むことができる。選択される膜形成ポリマー、メッキ触媒およびポロゲンに依存して様々な溶媒を用いることができる。例示的な溶媒としては、これらに限定されることはないが:水;アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノールおよびヘプタノール;エステル、例えば、酢酸エチル、ギ酸エチル、酢酸n−アミル、酢酸n−ブチルおよび乳酸エチル;カーボネート、例えば、プロピレンカーボネート;ケトン、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、2−ヘプタノン、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノン;ラクトン、例えば、γ−ブチロラクトンおよびγ−カプロラクトン;グリコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、およびトリプロピレングリコール;グリコール誘導体、例えば、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテート;炭化水素、例えば、キシレン、メシチレン;エーテル、例えば、ジフェニルエーテルおよびアニソール;並びに窒素含有化合物、例えば、N−メチル−2−ピロリドンおよびN,N'−ジメチルプロピレン尿素が挙げられる。溶媒の混合物を用いることができる。
【0040】
接着促進組成物は、膜形成ポリマー、メッキ触媒、ポロゲンおよびあらゆる任意の成分を任意の順序で組み合わせることによって調製することができる。一般には、膜形成ポリマーは接着促進組成物中に、接着促進組成物の重量を基準にして、0.005〜50wt%、より典型的には、0.05〜25wt%、さらにより典型的には、0.1〜5wt%の量で存在する。ポロゲンは、典型的には、接着促進組成物中に、接着促進組成物の重量を基準にして、1〜60wt%、より典型的には、3〜50wt%、さらにより典型的には、50〜45wt%の量で存在する。膜形成ポリマーとポロゲンの比は、これらの成分の重量基準で、1:99〜99:1、より典型的には、10:90〜90:90、さらにより典型的には、10:90〜50:50の範囲内である。
【0041】
接着促進組成物は任意の好適な手段、例えば、これらに限定されるものではないが、スピンコーティング、ディップコーティング、ローラーコーティング、カーテンコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、接触印刷、およびスプレーコーティングによって基体上に堆積させることができる。このような方法は当該技術分野における当業者によく知られている。任意に、接着促進組成物の堆積に先立って基体を洗浄してもよい。様々な洗浄剤、例えば、これらに限定されるものではないが、水、有機溶媒、およびアルカリ性洗浄剤、例えば、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドおよびアルカリ金属水酸化物を使用することができる。1より多くのかかる洗浄工程を使用することができる。
【0042】
接着促進組成物の層は様々な厚みを有することができる。個々の厚みは、ある程度、個々の用途に依存する。例えば、基体がファイバー光ケーブルである場合、接着促進組成物は、一般には、いくぶんかの柔軟性を残すのに十分な薄さである。一般には、接着促進組成物の層は1nm〜100μmの厚みを有する。より典型的には、任意の硬化工程の後に、層は1〜500nm、さらにより典型的には、5〜50nmの厚みを有する。
【0043】
膜形成ポリマーは、接着促進組成物を基体上に堆積させた後、さらに硬化させることができる。本明細書において用いられる場合、「硬化する」および「硬化」という用語は、重合、縮合、または化合物の分子量が増加する他の任意の反応を指す。溶媒除去のみの工程は本明細書において用いられる「硬化」とはみなされない。しかしながら、溶媒除去と、例えば重合との両方を含む工程は、本明細書において用いられる「硬化」という用語の範囲内にある。例えば、膜形成ポリマーは、熱、光に暴露することにより、または重合触媒を活性化することによりさらに重合させることができる。有機ポリシリカの場合には、塩基または酸に暴露することで有機ポリシリカ膜をさらに重合させることができる。有機ポリシリカが用いられる場合、金属層の堆積に先立って有機ポリシリカを硬化させることが好ましい。
【0044】
本発明の接着促進組成物層は、メッキ触媒を、接着促進組成物上に導電層の直接メッキを提供するのに十分な量で含有する。接着促進組成物は様々な方法、例えば、これらに限定されるものではないが、無電界メッキ、電解メッキ、および浸漬メッキによって金属被覆され得る。好適な導電層としては、これらに限定されるものではないが、銅、銀、金、ニッケル、スズ、鉛、スズ−鉛、スズ−銅、スズ−ビスマス、スズ−銀、スズ−銀−銅、白金、パラジウムおよびモリブデンが挙げられる。このような導電層は、好適な合金化金属、例えば、これらに限定されるものではないが、ビスマス、インジウム、およびアンチモンでさらに合金化することができる。1種より多くの合金化金属を用いることができる。
【0045】
無電界メッキは、様々な公知の方法によって好適に達成され得る。無電界メッキすることができる好適な金属としては、これらに限定されるものではないが、銅、金、銀、ニッケル、パラジウム、スズ、および鉛が挙げられる。浸漬メッキは様々な公知の方法によって達成することができる。金、銀、スズおよび鉛を浸漬メッキによって好適に堆積させることができる。このような無電界および浸漬メッキ浴は、当該技術分野における当業者によく知られており、一般に様々な供給源、例えば、Rohm and Haas Electronic Materials(マサチューセッツ州マールボロ)から商業的に入手可能である。
【0046】
電界メッキは様々な公知の方法によって達成することができる。電気分解的に堆積させることができる例示的な金属としては、これらに限定されるものではないが、銅、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金、スズ、スズ−鉛、スズ−銅、スズ−ビスマス、スズ−銀、およびスズ−銀−ビスマスが挙げられる。このような電界メッキ浴は当該技術分野における当業者によく知られており、様々な供給源、例えば、Rohm and Haas Electronic Materialsから商業的に入手可能である。
【0047】
当該技術分野における当業者は、追加の導電層を第1の導電層上に堆積できることを理解する。かかる追加導電層は第1導電層と同じであっても異なっていてもよい。追加導電層は任意の好適な手段、例えば、無電界、電解、浸漬メッキ、化学蒸着、物理蒸着、およびスパッタリングによって堆積させることができる。例えば、導電層を無電界メッキによって堆積させる場合、かかる無電界金属堆積を続いて電解メッキして、より厚い金属堆積を形成することができる。かかる続いて電解堆積される金属は、無電界堆積された金属と同じであっても異なっていてもよい。あるいは、さらなる無電界堆積金属層および/または浸漬堆積金属層を第1導電層上に堆積させることもできる。
【0048】
図1A−1Cは本発明の方法を説明する。図1Aを参照すると、接着促進組成物15の層は、任意の好適な手段により、基体10(例えば光学基体)上に堆積されている。接着促進組成物15はメッキ触媒16およびポロゲン17を含む。メッキ触媒16は、例えば、金属塩、例えば、酢酸パラジウムであり得る。ポロゲン17は架橋されたポリマー粒子、例えば、架橋された(メタ)アクリルポリマーであり得る。
【0049】
任意に、接着促進組成物15は硬化される。一態様においては、接着促進組成物15が有機ポリシリカ物質であるとき、任意に、酸または塩基の存在下でそれを熱に暴露して有機ポリシリカ物質を硬化させる。
【0050】
次に、第1金属層20、例えば銅またはニッケルを、接着促進組成物層15上に、例えば、無電界メッキによって堆積させる。図1Bを参照されたし。金属層20は、10〜1000nmの範囲の厚みを有することができるが、より薄い、またはより厚い膜を用いることもできる。
【0051】
追加金属層を第1金属層上に堆積させることができる。図1Cを参照して、第2金属層25、例えば銅を第1金属層20上に堆積させることができる。第2金属層25は任意の好適な手段、例えば、無電界メッキまたは電解メッキによって堆積させることができる。
【0052】
あるいは、ポロゲンを、金属堆積の前または後、典型的には金属堆積の前に、接着促進組成物から除去することができる。一般には、ポロゲンは、膜形成ポリマーおよびメッキ触媒に悪影響を及ぼすことのない条件下で除去される。「除去可能」が意味するところは、ポロゲンが、揮発性成分または断片へ解重合されまたは他の方法で分解され、次にそれが接着促進組成物層から除去され、または接着促進組成物層から外部に移動され、孔隙を生じることである。このようにして生じた孔隙は、除去プロセスにおいて用いられる任意の坦体気体で充填されてもよい。接着促進組成物層を実質的に劣化させることなしに、すなわち、膜形成ポリマーおよびメッキ触媒のそれぞれの5重量%未満が損失される、少なくとも部分的にポロゲンを除去する任意の手順または条件を用いることができる。ポロゲンは実質的に除去されることが好ましい。典型的な除去方法としては、これらに限定されるものではないが、化学エッチング、熱、圧力もしくは放射線(例えば、これらに限定されるものではないが、化学線、IR、マイクロ波、UV、X線、ガンマ線、アルファ粒子、もしくは電子ビーム)への暴露が挙げられる。1より多くのポロゲン除去方法、例えば、熱および化学線の組み合わせを用いることができることは理解される。接着促進組成物層を熱に暴露してポロゲンを除去することが好ましい。当該技術分野における当業者は、ポロゲン除去の他の方法を用いることができることも理解する。
【0053】
本発明のポロゲンは、これらに限定されるものではないが、真空、空気、窒素、アルゴン、窒素と水素の混合物(例えば、フォーミングガス)、または他の不活性もしくは還元性雰囲気、並びに酸化雰囲気下を含む、様々な雰囲気下で、熱的に除去することができる。典型的には、本発明のポロゲンは、広範囲の温度、例えば、150°〜650℃、好ましくは、225°〜500℃で除去することができる。このような加熱は、オーブン、炎、マイクロ波等の手段によって提供され得る。当該技術分野における当業者は、熱的に不安定なポロゲンの個々の除去温度が、そのポロゲンの組成に従って変化することを認識する。例えば、ポロゲンの芳香族性および/または架橋の程度の増加は、典型的には、ポロゲンの除去温度を上昇させる。典型的には、本発明のポロゲンは1〜120分の範囲の期間加熱することで除去される。接着促進組成物から除去した後、典型的には0〜20重量%のポロゲンが残存する。
【0054】
ポロゲンの除去により、孔隙または他の肌理を有する、肌理が付けられた接着促進組成物が得られ、それらの孔隙のサイズは、好ましくは、ポロゲンの粒径と実質的に同じであるか、またはそれより小さい。一般には、1,000nmまでの孔隙サイズ、例えば、0.5〜1000nmの範囲の平均孔隙サイズが得られる。平均孔隙サイズが0.5〜200nmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.5〜50nm、最も好ましくは1nm〜20nmであることが好ましい。
【0055】
図1Bを参照して、金属層20の堆積に先立ってポロゲン17を接着促進組成物層15から除去することができる。このようなポロゲン除去は任意の好適な手段、例えば、加熱によるものであり得る。ポロゲンの除去は接着促進組成物層15に孔隙17または他の肌理をもたらす。
【0056】
光学基体、光学基体上に堆積される接着促進組成物層、および接着促進組成物層上に堆積される金属層を含む装置であって、接着促進組成物が膜形成ポリマーおよびメッキ触媒を含有する装置も本発明によって意図される。ポロゲンはかかる装置に存在していてもいなくてもよい。
【0057】
一態様において、この方法は、金属堆積に続く焼き戻し工程をさらに含む。例えば、ニッケルが接着促進組成物上に無電界堆積される場合、窒素の下で基体を200℃で加熱することによってそれを焼き戻すことができる。銅が、第1金属層として接着促進組成物上に堆積される、または第2金属層として第1金属層(例えばニッケル)上に堆積される場合、空気または窒素のいずれかの下で基体を120℃で加熱することによってそれを焼き戻すことができる。他の焼き戻し温度および雰囲気を用いることができることが理解される。このような焼き戻し工程は十分に当該技術分野における当業者の能力の範囲内である。金属堆積に先立ってポロゲンが除去されない場合は、任意の金属焼き戻し工程の過程でポロゲンが除去され得る。
【0058】
他の工程をこの方法において実施できることが理解される。例えば、基体と接着促進組成物層との間に基層を堆積させることができる。かかる基層は、典型的にはメッキ触媒を含有しないが、任意に、かかるメッキ触媒を含有してもよい。一態様において、基層は膜形成ポリマーおよび、任意にポロゲンを含む。さらなる態様においては、基層は接着促進組成物層におけるのと同じ膜形成ポリマーを含む。別の態様においては、基層は無機物である。例示的な無機基層としては、これらに限定されるものではないが、ITO、窒化ケイ素、および炭化ケイ素が挙げられる。複数の基層が用いられるとき、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0059】
図2は本発明の代替態様を説明する。基層14が基体10(例えば光学基体)上に、任意の好適な手段、例えば、接着促進組成物層の堆積について上述される手段によって堆積される。例えば、基層14は、膜形成ポリマー、特に、有機ポリシリカ物質を含有する組成物の層である。あるいは、基層14はITOまたは窒化ケイ素である。次に、接着促進層15が基層14上に堆積される。接着促進組成物15はメッキ触媒16およびポロゲン17並びに膜形成ポリマー(図示せず)を含む。ポロゲン17は、任意に、金属層20の堆積、例えば無電界堆積されるニッケルの堆積に先立って除去してもよい。
【0060】
理論によって束縛されることを意図するものではないが、本発明の接着促進組成物中のポロゲンが、それらの除去により、孔隙または他の様式で肌理が付けられた接着促進組成物層を提供するために機能し得るものと考えられる。別に可能性があるのは、ポロゲンが接着促進組成物層の堆積中に潤滑剤としても機能することである。
【0061】
本発明の接着促進組成物上に堆積された金属層は、一般には、室温(20〜25℃)で72時間の保存の後でも気泡を生じない。かかる金属膜は、テープ試験において、基体上に直接堆積されている同じ金属膜と比較して、基体への接着力の増加をも示す。
【0062】
当該技術分野における当業者は、本発明が基体の選択的金属被覆化において有用であり得ることを理解する。例えば、本発明の接着促進組成物は基体(例えば光学基体)上の所望のパターンにおける金属層に用いることができる。図3Aおよび3Bは基体の選択的金属被覆化を説明する。図3Aにおいては、接着促進組成物15層が基体10上にパターンをもたらす方法で堆積されている。接着促進組成物層15はメッキ触媒16およびポロゲン17を含む。次に、金属層20を接着促進組成物層15上に選択的に堆積させる。
【0063】
接着促進組成物の所望のパターンは、インクジェット印刷、スクリーン印刷、接触印刷、およびマスクを介したコーティングによってもたらされ得る。当該技術分野において知られる他の好適な手段を用いることもできる。例えば、接着促進組成物を基体表面全体に適用した後、金属層が望まれていない領域において基体から選択的に除去することができる。代わりの態様においては、例えば組成物に光活性物質を添加することにより、接着促進組成物を光画像形成性にすることができる。本発明の接着促進組成物において有用な例示的な光画像形成性膜形成ポリマーは、米国特許第6,731,857号(Shelnutら)において導波路として、および米国特許第6,803,171号(Gronbeckら)においてフォトレジストとして開示されるものである。当該技術分野における当業者は本発明の接着促進組成物において用いることができる他の光画像形成性物質を理解する。
【0064】
さらに別の態様においては、例えば、メッキ触媒をレーザー、例えば、波長248nmのKrFエキシマレーザーを用いることで活性化することによって、接着促進組成物が選択的に触媒とされ得る。パラジウム触媒の活性化におけるこのようなレーザーの使用が米国特許第6,319,564号(Naundorfら)に記載されている。
【0065】
以下の実施例は本発明の様々な側面をさらに説明することが期待されるが、いかなる解釈においても本発明の範囲を制限しようとするものではない。
【実施例】
【0066】
実施例1
10cm×10cmガラス基体を以下のように洗浄した。イソプロパノールに20℃で5分間接触させ、冷水を用いて20℃で5分間すすぎ、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの1%w/w水溶液に50°で5分間接触させ、冷水を用いて20℃で4分間すすぎ、および圧縮空気を用いて及びオーブン内(120℃で10分間)で乾燥させた。
【0067】
6wt%の、一般式(CSiO1.5)(CHSiO1.5)を有するフェニル−メチルシルセスキオキサンオリゴマー、0.5wt%のシロキサン含有界面活性剤を含有し、残部がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである基層組成物を調製した。
【0068】
1wt%の、一般式(CSiO1.5)(CHSiO1.5)を有するフェニル−メチルシルセスキオキサンオリゴマー、0.5wt%のシロキサン含有界面活性剤、20g/Lの、メッキ触媒としての酢酸パラジウム、および20wt%の、重合された単位としてメトキシ−キャップドポリプロピレンオキシドメタクリレート/トリメチロールプロパントリアクリレート/アクリル酸を80/15/5(20%固形分)の比で含むポロゲンを含有し、残部がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである接着促進組成物を調製した。
【0069】
基層組成物の層をガラス基体上に1000rpmで30秒間スピンコートした。その基層は約150nmの厚みを有していた。次に、接着促進組成物の層を基層組成物上にスピンコーティングにより同じ条件下で堆積させた。接着促進組成物層の厚みは約20nmであった。その後、基層および接着促進組成物層を200℃で60分間硬化させた。
【0070】
次に、接着促進組成物層を商業的に入手可能な無電界ニッケルメッキ浴(NIPOSIT 468、Rohm and Haas Electronic Materials、マサチューセッツ州マールボロ、より入手可能)に、推奨されるメッキ条件を用いて接触させた。ニッケルは約25nm/分の速度で堆積させた。接触の4分後、試料をメッキ浴から取り出し、110℃で10分間乾燥させた後、120℃で60分間焼き戻した。その試料は、接着促進層上に、約100nmの厚みを有するニッケル層を含んでいた。
【0071】
実施例2
実施例1からのニッケルメッキされた試料を商業的に入手可能な電解銅メッキ浴(EP 1100、Rohm and Haas Electronic Materialsより入手可能)に、推奨されるメッキ条件を用いて接触させた。2分後、試料をメッキ浴から取り出し、空気中で乾燥させた。銅の層(約125nm厚)が無電界ニッケル層上に堆積された。
【0072】
実施例3
実施例1のプロセスを繰返した。その後、無電界ニッケルメッキされた試料を商業的に入手可能な無電界銅メッキ浴(CIRCUPOSIT 880、Rohm and Haas Electronic Materialsより入手可能)に、推奨されるメッキ条件を用いて接触させた。銅をニッケル層上に8〜12nm/分の速度で堆積させた。メッキ浴から取り出した後、試料を110℃で10分間乾燥させ、次に120℃で60分間焼き戻した。その試料は無電界ニッケル層上に堆積された無電界銅の層を含んでいた。
【0073】
実施例4
実施例1の手順を繰り返す。次に、無電界ニッケルメッキされた試料を商業的に入手可能な浸漬金メッキ浴(例えば、AUROLECTROLESS SMT、Rohm and Haas Electronic Materialsより入手可能)に、推奨されるメッキ条件を用いて接触させる。適切な時間の後、試料をメッキ浴から取り出し、任意にすすぎ、乾燥させる。試料が無電界ニッケル層上に浸漬堆積された金層を含むことがが期待される。
【0074】
実施例5
無電界ニッケル浴を通常の無電界銅メッキ浴(CIRCUPOSIT 880)で置き換えることを除いて実施例1の手順を繰返す。適切な時間の後、試料をメッキ浴から取り出し、任意にすすぎ、乾燥させる。試料が接着促進層上に堆積された無電界銅層を有することが期待される。
【0075】
実施例6
実施例5からの試料を、次に、商業的に入手可能な浸漬銀メッキ浴(例えば、STERLING、MacDermid,Waterbury,Connecticutから入手可能)に、推奨されるメッキ条件を用いて接触させる。適切な時間後、試料をメッキ浴から取り出し、任意にすすぎ、乾燥させる。試料が無電界銅層上に浸漬堆積された銀層を有することが期待される。
【0076】
実施例7
接着促進組成物中の成分が以下の通りであることを除いて、実施例1の手順を繰返す。
【0077】
【表1】

【0078】
上記接着促進組成物は、無電界堆積されたニッケル層を有する試料をもたらすことが期待される。
【0079】
実施例8
実施例2の手順を数回繰返した。5000nm厚みまでの電着された銅層が得られた。
【0080】
無電界メッキされたニッケル上にこの電着された銅層を含む試料を、テープ試験を用いて接着について評価した。2.5×10cmのテープ(3M 610、銘柄)の断片を試料に貼付し、次いで除去した。このテープおよび試料を視認検査し、金属層が幾らかでも試料から除去されるかどうかを決定した。金属がテープで除去されないとき、試料をこの試験に合格したものとみなした。無電界堆積ニッケル層上に500nmまでの電解堆積銅を含む試料がこの試験に合格した。
【0081】
実施例9
本発明の幾つかの試料を実施例3の方法によって調製した。500nmより厚い厚みを有する銅層を堆積させた。
【0082】
接着促進組成物がいかなるメッキ触媒をも含有しないことを除いて実施例1の方法を繰返すことにより、比較試料を調製した。接着促進組成物を堆積させた後、酢酸パラジウムを含む別々の浴に試料を接触させた。次に、実施例1に従い、比較試料にニッケルを無電界メッキした。ニッケル層を堆積させた後、実施例3に従い、試料を無電界銅メッキ浴と接触させた。かかる試料は150nmまでの無電界堆積された銅を含んでいた。
【0083】
本発明の試料および比較試料を実施例8のテープ試験に従って評価した。200nmまでの無電界堆積された銅を有する本発明の試料はテープ試験に合格した。比較試料については、テープ試験に合格した無電界堆積された銅の最大厚みは120nmであった。
【0084】
本発明の方法がより厚い金属層を提供し、かかる金属層が接着促進組成物中にメッキ触媒を含有しない試料と比較して改善された接着力を有することが明瞭に理解され得る。
【0085】
実施例10
無電界ニッケル層を第1無電界銅層に置き換え、次にそれを第2無電界銅層でメッキすることを除いて、実施例9の手順を繰返した。200nmまでの無電界堆積された銅を有する本発明の試料はテープ試験に合格した。比較試料については、テープ試験に合格した無電界堆積された銅の最大厚みは120nmであった。
【0086】
本発明の方法がより厚い金属層を提供し、かかる金属層が接着促進組成物中にメッキ触媒を含有しない試料と比較して改善された接着力を有することが明瞭に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1A】本発明の方法を説明する。
【図1B】本発明の方法を説明する。
【図1C】本発明の方法を説明する。
【図2】本発明の、代替態様を説明する。
【図3A】本発明の、さらなる態様を説明する。
【図3B】本発明の、さらなる態様を説明する。
【符号の説明】
【0088】
10 基体
14 基層
15 接着促進組成物層
16 メッキ触媒
17 ポロゲン又は孔隙
20 金属層
25 第2金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に金属膜を堆積する方法であって、基体を準備する工程、基体上に接着促進組成物の層を堆積する工程、および接着促進組成物上に金属層を堆積する工程を含み、接着促進組成物が膜形成ポリマー、メッキ触媒およびポロゲンを含有する方法。一態様において、基体は光学基体である。
【請求項2】
膜形成ポリマーが、有機ポリシリカである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポロゲンが、架橋されたポリマー粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
金属層が、無電界メッキによって堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
基体が、光学基体である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
メッキ触媒が、金属系である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
光学基体、光学基体上に堆積された接着促進組成物層、および接着促進組成物層上に堆積された金属層を含む装置であって、接着促進組成物が膜形成ポリマーおよびメッキ触媒を含有する装置。
【請求項8】
膜形成ポリマーが、有機ポリシリカである、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
ポロゲンが、架橋されたポリマー粒子である、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
基体が、光学基体である、請求項7に記載の装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2006−225765(P2006−225765A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−36252(P2006−36252)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(596156668)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (31)
【住所又は居所原語表記】455 Forest Street,Marlborough,MA 01752 U.S.A
【Fターム(参考)】