説明

メッキ用基板取付け装置および取外し装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、銅張積層板やプリント配線板等の矩形平板状の被メッキ体である基板をメッキ用ラックに自動的に取り付けるメッキ用基板取付け装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、被メッキ体を保持するメッキ用ラックとして、例えば特公平4−14199号公報に開示されたものや、実公平1−19416号公報に開示されたものなどが知られている。
【0003】特公平4−14199号のラックは、給電用横竿(キャリヤバー)に一対の側杆を設けるとともにこの側杆の対向面側にクリップを取り付け、このクリップで被メッキ体であるプリント基板の端部を挟んでプリント基板を保持するようにしたものである。また、このクリップを押し開き、プリント基板の着脱を行なえるようにしたものである。
【0004】また、実公平1−19416号公報のラックは、溝を有する一対の縦枠材を溝を対向させて配設するとともにこの溝内に板状のスプリングを配設し、被メッキ体としての基板を溝に差し込んでスプリングの弾性力で基板を保持するようにしたものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特公平4−14199号のラックは、クリップで基板の端を挟むだけの構造になっているので、基板の取付けを自動化する場合、基板とクリップとの正確な位置合わせが要求され、一つのラックに複数のプリント基板を取り付けることは困難である。このため、メッキ槽の処理量の少ないものには適しているが、処理量の多いメッキ槽には適さない。
【0006】また、クリップと基板との接触部が小さいため、電解メッキ処理を行う場合に基板表面の電位分布のばらつきが大きくなり、メッキ膜厚にむらができるという問題がある。さらに、クリップが小さくその位置を変更することができないので、基板の縦方向のサイズを変更した場合に対応することができない。
【0007】また、スルーホールメッキ等では、スルーホール内のエアを抜くためにメッキ槽内でラックを揺動させるが、基板の端部数カ所をクリップで保持しただけでは、特に薄い基板では揺動による変形が生じてクリップが外れやすく、抜け落ち易いという問題がある。
【0008】実公平1−19416号のラックは、基板を縦枠材の溝に沿わせて差し込むだけでよいので、厚い基板であれば自動化により複数の基板を取り付けるのに適しているが、スプリングの弾性力に抗して基板を差し込まなければならないので、薄い基板では変形することがあり適していない。
【0009】また、基板の片面は溝の内面に接触するのに対して反対側の面はスプリングの先端しか接触しないので、基板の表裏で給電部面積が大きく異なり、基板表裏の電流が大きく変わってメッキ膜厚が表裏で大きく変わるという問題がある。
【0010】また、ラックから基板を取り外す場合には、スプリングの押圧力と摩擦力に抗して、縦枠材を左右に拡げるか、基板を下から引き抜くかしなければならず、いずれも人手で行う場合には重労働になり、自動化の点でも問題がある。
【0011】本発明は、基板を確実に固定してメッキ槽での基板の脱落を防止し、かつ、電解メッキ膜厚を均一にすることができるメッキ用ラックを用いるとともに、このメッキ用ラックに対する基板の取付け作業あるいはメッキ処理済の基板の取外し作業を自動化することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するためになした本発明のメッキ用基板取付け装置は、同一の平面内で平行に配設された一対の導電性の縦枠と、該一対の縦枠の上記平面と平行な同一平面内の側面に沿ってそれぞれ配設された導電性の咬持部材と、上記咬持部材の略中央を支点として該咬持部材の内側縁を該咬持部材が対向する前記縦枠に向けて付勢する弾性部材と、前記一対の縦枠と前記咬持部材との間隙の延長面外で該縦枠の端部に設けられるとともに該一対の縦枠の間隔を保持する横枠とを備えたメッキ用ラックに対して、被メッキ体である基板を取り付けるためのメッキ用基板取付け装置であって、前記基板を供給する基板供給部と、前記基板を水平に整列させるとともに該整列状態を保持して基板を移送する基板整列部と、前記基板整列部で移送される基板の移送路の両側端部に縦枠が移送方向と平行に位置するように前記メッキ用ラックを保持するとともに該メッキ用ラックの前記縦枠と前記咬持部材との間隙を開閉する基板取付け部と、を備え、前記基板取付け部で、前記メッキ用ラックの咬持部材と縦枠との間隙を開けて上記基板整列部から移送される整列状態の基板を該メッキ用ラックの前記横枠側から上記間隙内にスライドさせ、該間隙を閉めて上記基板を咬持することにより、メッキ用ラックに基板を取り付けるようにようにしたことを特徴とする。
【0013】また、本発明のメッキ用基板取外し装置は、同一の平面内で平行に配設された一対の導電性の縦枠と、該一対の縦枠の上記平面と平行な同一平面内の側面に沿ってそれぞれ配設された導電性の咬持部材と、上記咬持部材の略中央を支点として該咬持部材の内側縁を該咬持部材が対向する前記縦枠に向けて付勢する弾性部材と、前記一対の縦枠と前記咬持部材との間隙の延長面外で該縦枠の端部に設けられるとともに該一対の縦枠の間隔を保持する横枠とを備えたメッキ用ラックから、メッキ処理済の基板を取り外すためのメッキ用基板取外し装置であって、前記メッキ処理済の基板が取り付けられた前記メッキ用ラックを水平に保持するとともに該メッキ用ラックの前記縦枠と前記咬持部材との間隙を開閉する基板取外し部と、前記基板取外し部に保持された前記メッキ用ラックに取り付けられているメッキ処理済の基板を水平に保持して該メッキ用ラックから該基板を引き出す基板引出し部と、前記基板引出し部に保持された基板を取り込む基板取込み部と、を備え、前記基板取外し部で、メッキ処理済の基板が取付けられたメッキ用ラックの咬持部材と縦枠との間隙を開け、前記基板引出し部により、該メッキ用ラックに取り付けられているメッキ処理済の基板を該メッキ用ラックの前記横枠側から前記基板取込み部に引き出すようにしてメッキ処理済の基板をメッキ用ラックから取り外すようにしたことを特徴とする。
【0014】
【作用】本発明に適用されるメッキ用ラックにおいて、前記基板は、一対の縦枠とこの縦枠に沿って配設されるとともに弾性部材によって内側縁が縦枠に向けて付勢された咬持部材とにより咬持され、保持される。また、咬持部材は縦枠に沿って配設されているので、基板の両端部を均等に咬持することができ、基板を確実に保持することができる。また、導電性の咬持部材は導電性の縦枠に沿って配設されているので、基板の表面の電位分布をより均一にすることができるとともに、基板の表裏に略同等の給電部面積を得ることができる。
【0015】ここで、咬持部材はその略中央を支点として内側縁が縦枠に向けて付勢されているので、この付勢力に抗して咬持部材の外側端部を押圧することにより咬持部材と縦枠との間隙を容易に開けることができ、かつ、横枠は、一対の縦枠と咬持部材との間隙の延長面外に設けられているので、本発明のメッキ用基板取付け装置において、基板をスライドさせるだけで、基板の取付けおよび取外しを容易に行うことができる。
【0016】本発明のメッキ用基板取付け装置は、基板供給部から基板を供給し、基板整列部で、この基板を水平に整列させるとともに水平に保持して移送する。一方、基板取付け部で、前記基板整列部で移送される基板の移送路の両側端部に前記縦枠が移送方向と平行に位置するようにメッキ用ラックを保持し、該メッキ用ラックの縦枠と咬持部材との間隙を開ける。そして、基板整列部から移送される基板を上記間隙内にスライドさせ、この間隙を閉じて基板をメッキ用ラックに取り付ける。
【0017】また、本発明のメッキ用基板取外し装置は、基板取外し部で、メッキ処理済の基板が取り付けられたメッキ用ラックを水平に保持し、該メッキ用ラックの縦枠と咬持部材との間隙をあける。そして、基板引出し部で、基板取外し部に保持されたメッキ用ラックに取り付けられているメッキ処理済の基板を水平に保持して該メッキ用ラックから該基板を引き出し、基板取込み部にメッキ処理済の基板を取り込む。
【0018】
【実施例】図11(A) は本発明の実施例のメッキ用基板取付け装置に適用されるメッキ用ラックの正面図、図11R>1(B) は同メッキ用ラックの側面図、図11(C) は同メッキ用ラックの下面図であり、図12は図11(A) のA−A拡大断面図である。
【0019】この実施例におけるメッキ用ラックは、スルーホール用に穴あけされたプリント配線板(以後、この実施例では「基板」という。)をメッキ槽に浸漬するためのものであり、このメッキ用ラックに基板を複数枚取り付け、さらに基板を取り付けた複数のラック(例えば3枚)をキャリアバーに取り付けてキャリアバーごとメッキ槽に浸漬される。なお、以後、この実施例では「メッキ用ラック」を単に「ラック」という。
【0020】図において、1はラックの長手方向の枠を構成する縦枠、2は縦枠1に沿って配設された咬持部材、3は咬持部材2を縦枠1に押圧する弾性部材、4は縦枠1の下端と上部とに取り付けられた横枠である。なお、縦枠1、咬持部材2、弾性部材3、横枠4は良導電性の材料でできている。
【0021】縦枠1の上端部には先端を下方に折り曲げて係合部1aが形成されるとともにこの係合部1aの背面に係合突起1bが形成されている。また、咬持部材2は片側3本づつを一組として縦枠1に沿って配設され、縦枠1と咬持部材2との間には導電性の角棒5が縦枠1に沿って固定されている。
【0022】弾性部材3は例えばスチール板やステンレス板等の強い弾性を有する板材を加工したもので、このラックへの組み付け前は断面形状が二等辺三角形となるように折り曲げ加工されている。
【0023】この弾性部材3は、縦枠1の長手方向の適宜数カ所において各咬持部材2と縦枠1を外側から咬持するように取り付けられ、咬持部材2の略中央を角棒5の一辺を支点Oとして咬持部材2の内側縁2Aを縦枠1に向けて付勢している。なお、図12に示すように、この弾性部材3はこのラックの側面端部に相当する部分の板材が内側に湾曲している。
【0024】上下2つの横枠4は同じ構造になっており、それぞれ両側の縦枠1に固定された枠材4Aと枠材4Bを組み合わせた構造になっている。片側の枠材4Aの先端は他方の枠材4Bに摺動自在に係合されるとともに、枠材4Bの先端は、枠材4Aに形成された長穴4Aaを通したボルト4Baを枠材4Bの先端に取り付けられたナット4Bbにネジ止めすることにより、枠材4Aに固定されている。
【0025】また、上下の横枠4は、縦枠1に対して咬持部材2の配設面と反対側の面に取り付けられており、この横枠4は、縦枠1と咬持部材2との間隙の延長面外に設けられている。
【0026】以上の構成により、先ず、図12に示すように縦枠1が下になるようにしてラックを水平に保持し、横枠4のボルト4Baを緩めることにより枠材4Aと枠材4Bをスライド可能とし、一対の縦枠1の間隔を基板10の幅に調整し、ボルト4Baを締めて一対の縦枠1の間隔を固定する。
【0027】次に、左右両側の各咬持部材2について、図10(A) に示したように咬持部材2の外側上端2Bを押さえて、図10(B) のように、弾性部材3の弾性力に抗して咬持部材2を縦枠1と平行になるようにし、この咬持部材2と縦枠1との間に角棒5の厚み分の間隙εをあける。
【0028】この状態で、図11に示した下端(係合部1aと反対側)の横枠4側から基板10を水平にして供給し、基板10の両端を縦枠1上で摺動させて間隙T内に挿入する。このとき、基板10は大きさに応じた枚数(図11の例では2枚)だけ、一連にして、または、順次挿入する。そして、図10(C) のように、各咬持部材2の外側上端2Bを押さえている力を解除し、弾性部材3の復元力によって縦枠1と咬持部材2とで基板10の両端を咬持する。これによって基板10の取付けが完了する。
【0029】なお、基板10が取り付けられたラックは、キャリアバーに取り付けてメッキ槽に搬送し、所定のメッキ処理を行う。そして、メッキ済基板を取り外すときは、取付け時と同様に、縦枠1が下になるようにしてラックを水平に保持し、左右両側の各咬持部材2の外側上端を押さえて咬持部材2と縦枠1との間に角棒5の厚み分の間隙Tをあけ、メッキ済基板を縦枠1と咬持部材2との間隙εから抜き出す。
【0030】図13は、実施例のラックをキャリアバーに取り付けた状態を示す図であり、この例では、3枚のラックAがキャリアバー20に取り付けられている。なお、キャリアバーは、ラック等を保持する他、電解メッキ処理を行うときにはラック等に通電を行うためのものでもあり、移動カソードバーとも呼ばれている。
【0031】図1は、実施例のメッキ用基板取付け装置の正面図、図2は同メッキ用基板取付け装置の一部破砕平面図、図3は図2のB−B矢視図、図4は図2のC−C矢視図である。このメッキ用基板取付け装置は、基板供給部11、基板整列部12、基板取付け部13を備えており、ラックは基板取付け部13に供給され、基板は基板供給部11→基板整列部12→基板取付け部13の順に搬送される。
【0032】基板供給部11は、架台11aの上面に多数のローラ11bを備え、このローラ11bはモータ11cによって回転される。そして、前段の基板収容部から供給される基板をローラ11bの回転によって図1の矢印■の方向に搬送し、1つのラックに取り付ける必要枚数の基板を基板整列部12に順次供給する。
【0033】基板整列部12は、架台12aの上面に多数のローラ12bを備え、このローラ12bはモータ12cによって回転される。ローラ12bの上部には、基板の搬送方向を長手方向にして下面を吸着面とした吸着パッド12dを備えており、この吸着パッド12dはエアシリンダ12eによって上下動されるとともに水平スライド機構12fによってこの基板整列部12と基板取付け部13との間を往復移動される。
【0034】また、図2に示したように、架台12a上の搬送面の片側には、ローラ12bの間隙からこのローラ面より突出した固定ガイド12gが配設されるとともに、この固定ガイド12gの反対側にはローラ面より突出した移動ガイド12hが配設されている。さらに、基板取付け部13側にはローラ面に対して上下に上下動するストッパ12iが配設され、架台12a上の搬送面には、ストッパ12iと平行に複数段の移動ストッパ12jが配設されている。
【0035】なお、移動ストッパ12jはローラ面に対して上下に上下動するとともにローラ12bより下にあるときに基板の搬送方向に往復移動可能になっており、移動ストッパ12jの基板搬送方向の位置は基板の長さに応じて設定される。
【0036】基板整列部12において、基板供給部11から供給される基板はローラ12bの回転によって送られ、最初の基板がストッパ12iに当接して止まると、この基板の長さに応じて位置が設定されている移動ストッパ12jが、最初の基板の後端部近傍でローラ12bの間隙から上昇される。そして、次の基板が送られてくるとこの移動ストッパ12jに当接して止まり、同様にこの基板の後端部近傍に後段の移動ストッパ12jが上昇され、次の基板がこの移動ストッパ12jに当接して止まる。
【0037】このようにして、順次基板が停止して前後方向の整列が完了する。なお、ストッパ12iと前段の移動ストッパ12jとの間隔および前段と後段の移動ストッパ12jの間隔は基板の長さより僅かに広くなるように設定される。
【0038】そして、1つのラックに取り付ける必要枚数の基板を基板供給部11から取り込むと移動ガイド12hを固定ガイド12g側に移動し、基板を固定ガイド12gと移動ガイド12hによって挟むようにして横方向の整列を完了する。このように、移動ストッパ12jにより2枚目以降の基板の停止位置を規制するようにしているので、基板が薄い場合でも整列が容易になる。
【0039】整列が完了すると、エアシリンダ12eによって吸着パッド12dを下降させ、この吸着パッド12dの下面でローラ12b上の各基板を水平に整列した状態で吸着する。そして、ストッパ12iおよび移動ストッパ12jを下降させた後、吸着パッド12dを水平スライド機構12fによって移動し、各基板を整列した状態で保持して図1の矢印■の方向に水平に基板取付け部13に移送する。
【0040】基板取付け部13は、架台13a上にラックの搬送方向に沿って配設された昇降コンベア13bを備えている。また、架台13aには昇降コンベア13bと平行に2本のスライダ13cが付設されており、スライダ13c上には、このスライダ13cと直交する方向に掛け渡された長台131a,132aをそれぞれ基台とする固定ラック開閉装置131と移動ラック開閉装置132とがそれぞれ配設されている。
【0041】そして、固定ラック開閉装置131と移動ラック開閉装置132は架台13aの下部に配設されたスライド機構13dによってラックの搬送方向に往復移動される。なお、固定ラック開閉装置131は基板整列部12の固定ガイド12gに対応する所定の基準位置から外側に僅かな移動範囲が設定され、移動ラック開閉装置132はラックの縦枠の間隔に応じた移動範囲が設定される。
【0042】固定ラック開閉装置131と移動ラック開閉装置132は互いに対面して略対称な構造になっており、それぞれ長台131a,132aに沿って縦板131b,132bが立設され、この縦板131b,132bにはエアシリンダ131c,132cが垂直に並設されている。
【0043】縦板131b,132bの上端にはラックの縦枠1に沿うように受け板131d,132dが配設され、また、各エアシリンダ131c,132cのロッドには、受け板131d,132dに対向する押え板131e,132eを配設した長板131f,132fが取り付けられている。さらに、縦板131b,132bの対向面側にはラックに基板を取り付けるときに基板を支える補助ローラ131g,132gが取り付けられている。
【0044】なお、架台13aの基板整列部12側とその反対側には、ラックの横枠を下方に押さえるための横枠保持機構133が配設されており、この横枠保持機構133は上下動するシリンダ133aの先端に回動爪133bを備え、回動爪133bを横枠に係合させて僅かに下降し、基板整列部12から移送される基板がラッチ内に確実に通過できるようにしている。
【0045】以上の構成により基板取付け部13は次のように動作する。先ず、昇降コンベア13bは、図4に二点鎖線で示したようにその上面が固定ラック開閉装置131と移動ラック開閉装置132の上端の長板131f,132fより上になる位置にあり、この状態でラックを搬入し、先頭が固定ラック開閉装置131の手前近傍となる位置で停止させる。
【0046】次に、昇降コンベア13bを図4の実線の位置に下降させる。このとき昇降コンベア13bの上面が固定ラック開閉装置131と移動ラック開閉装置132の受け板131d,132dの上面より僅かに下に位置となるように設定されており、この状態で固定ラック開閉装置131が内側に僅かに移動される。
【0047】このとき、固定ラック開閉装置131の受け板131dの先端に形成されたテーパー面によりラックの縦枠の下面が受けられ、固定ラック開閉装置131の受け板131dと押え板131eとの間にラックの縦枠と咬持部材が収まり、この固定ラック開閉装置131の位置で規制される所定位置に停止される。
【0048】また、固定ラック開閉装置131の動作とともに、移動ラック開閉装置132は内側に移動し、上記同様にラックの反対側の縦枠と咬持部材を受け板132dと押え板132eとの間に収める。このように、固定ラック開閉装置131と移動ラック開閉装置132により、ラックは、縦枠を下にして水平にされるとともにラックの縦枠が基板の移送方向と平行になるように基板整列部12の前方に保持される。
【0049】ラックの両側の縦枠と咬持部材が固定ラック開閉装置131および移動ラック開閉装置132に収められると、横枠保持機構133で横枠を押さえ、図5に示したように、固定ラック開閉装置131および移動ラック開閉装置132は、エアシリンダ131c,132cを駆動し、前記図10について説明したように、各咬持部材2を縦枠1と平行になるようにして咬持部材2と縦枠1との間に間隙をあける。
【0050】ここで、このラックの固定位置は、固定ラック開閉装置131および移動ラック開閉装置132の受け板131d,132dに固定されている縦枠1と咬持部材2との間隙が、前記基板整列部12の吸着パッド12dの下面に吸着された基板の両端部と同じ位置同じ高さになるように設定されており、吸着パッド12dで移送される基板の両端部を咬持部材2と縦枠1との間隙に挿入される。そして、基板が挿入されると、エアシリンダ131c,132cを解除して前記図10(C) に示したように基板10をラックに固定して基板の取付けを完了する。
【0051】基板がラックに取り付けられると、固定ラック開閉装置131と移動ラック開閉装置132は互いに外側に移動し、ラックを昇降コンベア13b上に載置し、昇降コンベア13bを上昇させるとともに昇降コンベア13bを駆動してラックを次工程に搬出する。そして、次工程で、基板が取り付けられたラックの整列配置、キャリアバーへのラックの取付け動作、メッキ槽へのキャリアバーの搬送等が行われる。
【0052】なお、メッキが終了した基板は、後述説明するように、上記のメッキ用基板取付け装置と同様な構造のメッキ用基板取外し装置によって自動的に取り外すことができる。
【0053】ところで、メッキ前処理、無電解メッキ、電解メッキを同一のラックで連続して行うパネルメッキ処理等では、メッキ済基板を取り外したラックおよびキャリアバーは、ラックおよびキャリアバー自体がメッキされているので、メッキ槽内に設けられた剥離槽に投入して剥離処理を行っている。また、メッキ処理および剥離処理には所定の時間を要するので、この剥離槽にラックとキャリアバーを搬送する搬送経路とメッキ処理の搬送経路を同じ経路にすることにより省スペースが図れる。
【0054】そこで、メッキ用基板取付け装置とメッキ用基板取外し装置を並設し、メッキ済基板が取り外されたラックを基板取外し部から基板取付け部13に供給して、メッキ処理を行うラックおよびキャリアバーと同じ搬送経路でメッキ槽(剥離槽)に搬送するようにする。
【0055】このように構成すると、メッキ用基板取外し装置の基板取外し部は、前記メッキ用基板取付け装置の基板取付け部13に対するラック供給部として共用することができる。そこで、この基板取外し部にラックの縦枠の幅をセットする幅調整機構を設けることにより、メッキ用基板取付け装置で取り付ける基板の幅に対応させることができる。
【0056】図6は実施例のメッキ用基板取外し装置の正面図、図7はその一部破砕平面図、図8は図7のB−B矢視図、図9は図7のC−C矢視図である。このメッキ用基板取外し装置は、基板取外し部21、基板引出し部22、基板取込み部23を備えており、メッキ処理済の基板が取付けられたメッキ処理済のラックは基板取外し部21に供給され、この基板取外し部21でラックから取り外された基板は基板引出し部22および基板取込み部23の順に搬送される。
【0057】このメッキ用基板取外し装置は前記基板取付け装置と略同様の構造になっており、基板取外し部21は前記基板取付け部13に、基板引出し部22は前記基板整列部12に、基板取込み部23は前記基板供給部11にそれぞれ対応して略同様の構造になっている。
【0058】そこで、簡単のために、メッキ用基板取外し装置とメッキ用基板取付け装置とで対応する同様の要素については、符号の数字の上位2桁についてメッキ用基板取外し装置の「21」とメッキ用基板取付け装置の「13」、メッキ用基板取外し装置の「22」とメッキ用基板取付け装置の「12」、メッキ用基板取外し装置の「23」とメッキ用基板取付け装置の「11」とをそれぞれ対応付けてアルファベットを同じにし、数字が3桁のものは1桁目の数字とアルファベットを同じにしている。なお、メッキ用基板取外し装置についてメッキ用基板取付け装置と同様の要素については詳細な説明は省略する。
【0059】基板取外し部21において、架台21a上にはラックの搬送方向に沿って昇降コンベア21bが配設されるとともに、昇降コンベア21bと平行に付設された2本のスライダ21c上には、長台211a,212aをそれぞれ基台とする固定ラック開閉装置211と移動ラック開閉装置212とがそれぞれ配設されており、この固定ラック開閉装置211と移動ラック開閉装置212は、前記取付け装置の場合と同様に、スライド機構21dによってラックの搬送方向に往復移動される。
【0060】また、このメッキ用基板取外し装置には、架台21aの縁で固定ラック開閉装置211と移動ラック開閉装置212の端部に対応する位置に、ラックの横枠を下方に押さえるための横枠保持機構213の他に、横枠保持機構213に隣接してボルト締緩機構214が配設されている。
【0061】このボルト締緩機構214は、図8に示したように、正逆回転するモータ214aの先端にレンチ214bを備え、固定ラック開閉装置211の基準位置から一定の位置、すなわち、図11に示すラックの枠材4Bの縦枠1からボルト4Baまでの間隔に設定されている。
【0062】そして、横枠保持機構213はシリンダ213a駆動により回動爪213bを横枠に係合させて僅かに下降するように動作し、ラックの幅調整時には、ラックのボルト4Baをボルト締緩機構214のレンチ214bに係合させてボルト4Baを緩めたり締めたりする。
【0063】以上の構成によりメッキ用基板取外し装置は次のように動作する。先ず、基板取外し部21において、昇降コンベア21b、固定ラック開閉装置211および移動ラック開閉装置212は、基板取付け装置の昇降コンベア13b、固定ラック開閉装置131および移動ラック開閉装置132と同様の動作を行う。
【0064】そして、昇降コンベア21bによりメッキ処理済のラック(および基板)を所定の位置に搬入するとともに、固定ラック開閉装置211を基準位置にし、この固定ラック開閉装置211と移動ラック開閉装置212の受け板211d,212dと押え板211e,212eとの間にラックの縦枠と咬持部材を収める。これにより、ラックは、縦枠を下にして水平にされるとともにラックの縦枠が基板の移送方向と平行になるように基板引出し部22の前方に保持される。
【0065】次に、ラックが固定ラック開閉装置211および移動ラック開閉装置212に収められると、横枠保持機構213で横枠を押さえ、前記図5で説明したと同様に、固定ラック開閉装置211および移動ラック開閉装置212は、エアシリンダ211c,212cを駆動し、前記図10について説明したように、各咬持部材2を縦枠1と平行になるようにして咬持部材2と縦枠1との間に隙間をあける。なお、この状態で、ラックは固定ラック開閉装置211および移動ラック開閉装置212に固定されたことになる。
【0066】次に、基板引出し部22の吸着パッド22dが基板取外し部21の固定ラック開閉装置211と移動ラック開閉装置212の間に移動するとともに下降し、この吸着パッド22dでラックに取り付けられている基板を吸着する。そして、吸着パッド22dを基板引出し部22のローラ22b上に移動してラックから基板を引出し、ローラ22b上で吸着パッド22dの吸引力を解除して基板をローラ22b上に載置する。
【0067】なお、ローラ22b上に引き出された基板は、ローラ22bと基板取込み部23のローラ23bにより搬送され、乾燥処理が施される。また、ラックから基板が取り外されると、エアシリンダ211c,212cを解除して固定ラック開閉装置211と移動ラック開閉装置212を互いに外側に移動し、メッキ処理済のラックを昇降コンベア21b上に載置して基板取付け装置に搬送する。
【0068】以上の動作は、メッキ処理済のラックからメッキ処理済の基板を取り外すときの動作であるが、このメッキ用基板取外し装置では、基板の幅の種類に対応させるためにラックの幅を調整する動作も行う。
【0069】すなわち、剥離処理済等のラックが昇降コンベア21bにより基板取外し部21に搬入されると、先ず、基板を取り外すときと同様の動作を行って、ラックを固定ラック開閉装置211および移動ラック開閉装置212に固定する。
【0070】ラックの固定が完了すると、横枠保持機構213で横枠を下方に押さえて枠材4Bのボルト4Baをボルト締緩機構214のレンチ214bに係合させ、所定方向にモータ214aを駆動してボルト4Baを緩めて横枠保持機構213を解除する。
【0071】次に、ラックの縦枠および咬持部材2を固定ラック開閉装置211と移動ラック開閉装置212に固定した状態で、移動ラック開閉装置212を外側または内側に移動して縦枠1の間隔を所望の幅に調整する。
【0072】そして、再び、横枠保持機構213で横枠を下方に押さえて枠材4Bのボルト4Baをボルト締緩機構214のレンチ214bに係合させ、モータ214aを駆動してボルト4Baを締めて横枠保持機構213を解除する。これによって、ラックの縦枠1の幅が所望の幅に調整することができ、幅調整したラックは例えば前記のメッキ用基板取付け装置やラックのリザーバ部に搬送する。
【0073】以上のように、メッキ用基板取付け装置によれば、縦枠1とこの縦枠1に沿うように配設された咬持部材2で基板の両端を固定するので、確実に基板を固定することができる。また、咬持部材2は基板の端部の縦枠1と同じ端部に対して連続的に接触するので、基板の表裏で電位分布が均一になり、表裏のメッキ膜厚が従来のものよりも均一になる。
【0074】また、メッキ用基板取付け装置およびメッキ用基板取外し装置によれば、メッキ用ラックの咬持部材2を押さえるだけで咬持部材2と縦枠1との間に容易に間隙をあけることができ、基板を容易に着脱できるので、基板の取付け取外し作業を容易に自動化することができる。
【0075】さらに、この実施例のメッキ用基板取付け装置の基板整列部およびメッキ用基板取外し装置の基板引出し部には吸着パッドを用いていいるので、整列した基板やラックに取り付けられている基板の水平保持が容易であり自動化に適したものとなる。
【0076】
【発明の効果】以上説明したように本発明のメッキ用基板取付け装置によれば、横枠で保持された一対の導電性の縦枠に沿って導電性の咬持部材を配設し、この咬持部材の略中央を支点としてこの咬持部材の内側縁が縦枠に向けて付勢するとともに、横枠を縦枠と咬持部材との間隙の延長面外に設けるようにしたメッキ用ラックに対して、基板を取り付ける際に、基板供給部から供給した基板を基板整列部で水平に整列させるとともに水平に保持して基板取付け部に移送し、基板取付け部でメッキ用ラックを基板の両側端部に対して縦枠が移送方向と平行に位置するように保持するとともに縦枠と咬持部材との間隙を開けて、基板整列部から移送される基板を該間隙内にスライドさせて咬持部材と縦枠とで基板を咬持するようにしたので、メッキ用ラックに対する基板の取付け作業を容易に自動化することができ、基板を確実に取り付けることができる。また、基板の厚さの変化に対応して基板の取付けを自動化することができる。
【0077】また、本発明のメッキ用基板取外し装置によれば、上記同様なメッキ用ラックからメッキ処理済の基板を取り外す際に、基板取外し部でメッキ用ラックを水平に保持して該メッキ用ラックの縦枠と咬持部材との間隙をあけ、基板引出し部で、基板取外し部に保持されたメッキ用ラックに取り付けられているメッキ処理済の基板を水平に保持して該メッキ用ラックから該基板を引き出し、基板取込み部にメッキ処理済の基板を取り込むようにしたので、メッキ用ラックからの基板の取外し作業を容易に自動化することができる。なお、実施例によれば、縦枠の幅を調整可能なメッキ用ラックに対して、幅調整機構によって縦枠の幅を調整するようにしているので、メッキ処理を行う際に、基板の幅の変化に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例のメッキ用基板取付け装置の正面図である。
【図2】実施例におけるメッキ用基板取付け装置の一部破砕平面図である。
【図3】実施例における基板取付け部の側面図である。
【図4】実施例における基板取付け部の背面図である。
【図5】実施例における固定ラック開閉装置および移動ラック開閉装置の要部の動作説明図である。
【図6】本発明実施例のメッキ用基板取外し装置の正面図である。
【図7】実施例におけるメッキ用基板取外し装置の一部破砕平面図である。
【図8】実施例における基板取外し部の側面図である。
【図9】実施例における基板取外し部の背面図である。
【図10】実施例におけるメッキ用ラックの開閉動作を説明する図である。
【図11】本発明の実施例のメッキ用ラックの正面図、側面図および下面図である。
【図12】図11(A) のA−A拡大断面図である。
【図13】実施例のメッキ用ラックをキャリアバーに取り付けた状態を示す図である。
【符号の説明】
11…基板供給部、12…基板整列部、12d,22d…吸着パッド、12g…固定ガイド、12h…移動ガイド、12i…ストッパ、13…基板取付け部、21…基板取外し部、22…基板引出し部、23…基板取込み部、13b,21b…昇降コンベア、131,211…固定ラック開閉装置、132,212…移動ラック開閉装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 同一の平面内で平行に配設された一対の導電性の縦枠と、該一対の縦枠の上記平面と平行な同一平面内の側面に沿ってそれぞれ配設された導電性の咬持部材と、上記咬持部材の略中央を支点として該咬持部材の内側縁を該咬持部材が対向する前記縦枠に向けて付勢する弾性部材と、前記一対の縦枠と前記咬持部材との間隙の延長面外で該縦枠の端部に設けられるとともに該一対の縦枠の間隔を保持する横枠とを備えたメッキ用ラックに対して、被メッキ体である基板を取り付けるためのメッキ用基板取付け装置であって、前記基板を供給する基板供給部と、前記基板を水平に整列させるとともに該整列状態を保持して基板を移送する基板整列部と、前記基板整列部で移送される基板の移送路の両側端部に縦枠が移送方向と平行に位置するように前記メッキ用ラックを保持するとともに該メッキ用ラックの前記縦枠と前記咬持部材との間隙を開閉する基板取付け部と、を備え、前記基板取付け部で、前記メッキ用ラックの咬持部材と縦枠との間隙を開けて上記基板整列部から移送される整列状態の基板を該メッキ用ラックの前記横枠側から上記間隙内にスライドさせ、該間隙を閉めて上記基板を咬持することにより、メッキ用ラックに基板を取り付けるようにようにしたことを特徴とするメッキ用基板取付け装置。
【請求項2】 前記基板整列部は前記基板の移送方向に往復移動する吸着パッドを備え、前記整列された基板を上記吸着パッドで吸着することにより該基板の整列状態を保持して該基板を前記咬持部材と縦枠との間隙にスライドさせるようにしたことを特徴とする請求項1記載のメッキ用基板取付け装置。
【請求項3】 同一の平面内で平行に配設された一対の導電性の縦枠と、該一対の縦枠の上記平面と平行な同一平面内の側面に沿ってそれぞれ配設された導電性の咬持部材と、上記咬持部材の略中央を支点として該咬持部材の内側縁を該咬持部材が対向する前記縦枠に向けて付勢する弾性部材と、前記一対の縦枠と前記咬持部材との間隙の延長面外で該縦枠の端部に設けられるとともに該一対の縦枠の間隔を保持する横枠とを備えたメッキ用ラックから、メッキ処理済の基板を取り外すためのメッキ用基板取外し装置であって、前記メッキ処理済の基板が取り付けられた前記メッキ用ラックを水平に保持するとともに該メッキ用ラックの前記縦枠と前記咬持部材との間隙を開閉する基板取外し部と、前記基板取外し部に保持された前記メッキ用ラックに取り付けられているメッキ処理済の基板を水平に保持して該メッキ用ラックから該基板を引き出す基板引出し部と、前記基板引出し部に保持された基板を取り込む基板取込み部と、を備え、前記基板取外し部で、メッキ処理済の基板が取付けられたメッキ用ラックの咬持部材と縦枠との間隙を開け、前記基板引出し部により、該メッキ用ラックに取り付けられているメッキ処理済の基板を該メッキ用ラックの前記横枠側から前記基板取込み部に引き出すようにしてメッキ処理済の基板をメッキ用ラックから取り外すようにしたことを特徴とするメッキ用基板取外し装置。
【請求項4】 前記基板引出し部は前記メッキ処理済の基板の引出し方向に往復移動する吸着パッドを備え、前記基板取外し部のメッキ用ラックに取り付けられているメッキ処理済の基板を上記吸着パッドで吸着することにより該基板を保持して該基板をメッキ用ラックから取り外すようにしたことを特徴とする請求項3記載のメッキ用基板取外し装置。
【請求項5】 前記横枠が前記縦枠の幅を調整可能となっている前記メッキ用ラックから前記メッキ処理済の基板を取り外すためのメッキ用基板取外し装置であって、前記縦枠の幅を調整する幅調整手段を備えていることを特徴とする請求項3または請求項4記載のメッキ用基板取付け装置。

【図1】
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【図12】
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【図2】
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【図3】
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【図10】
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【図4】
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【図5】
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【図11】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図13】
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【特許番号】特許第3507129号(P3507129)
【登録日】平成15年12月26日(2003.12.26)
【発行日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−118586
【出願日】平成6年5月31日(1994.5.31)
【公開番号】特開平7−316885
【公開日】平成7年12月5日(1995.12.5)
【審査請求日】平成12年12月21日(2000.12.21)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【参考文献】
【文献】特開 平2−19499(JP,A)