説明

メディア処理装置、その制御方法及びプログラム

【課題】印刷ヘッドのクリーニングのためにメディア作製処理のスループットが低下することを防止することができるメディア処理装置、その制御方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】メディアドライブ41と、印刷ヘッドのノズルからインクを吐出させてメディアのレーベル面に対する印刷処理及び印刷ヘッドのクリーニング処理を実行するプリンター11と、メディアをメディアドライブ41やプリンター11へ搬送するメディア搬送機構31と、を備えたパブリッシャー1の制御方法であって、プリンター11が、印刷命令及びクリーニング実行命令以外の信号であってパブリッシャー1内で送受信される内部信号を受信する受信ステップS12と、内部信号に応じて、メディアの搬送処理又はデータ書込み処理の何れかの処理に並行してクリーニング処理を実行するクリーニング実行ステップS17と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホストコンピューターからの命令に基づいて、メディアの記録面へのデータ書込み処理や、メディアの印刷面に対する印刷処理を実施するメディア処理装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
CD、DVDなどのメディアを保管するためのメディア保管部と、メディアへのデータの書込み、およびメディアからのデータの読み出しを行うメディアドライブと、データが書き込まれたメディアのレーベル面に、書込みデータを表すタイトル、書込み年月日などを含むレーベルを印刷するためのレーベルプリンターと、メディアを搬送するためのメディア搬送機構と、各部の駆動制御を司る制御部を備えたメディア処理装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のメディア処理装置のメディア搬送機構、メディアドライブ、レーベルプリンターは、いずれも、当該メディア処理装置に通信可能に接続されたホストコンピューターのアプリケーションからメディア発行ジョブを受けて各種ドライバーがメディアドライブ、レーベルプリンター及びメディア搬送機構を制御し、メディアに対する規定の処理を行う。
図5は、特許文献1に記載のメディア処理装置が、ホストコンピューターにインストールされているアプリケーションからのメディア発行ジョブに基づいてメディアを処理するメディア作製処理の手順を示したものである。
【0004】
ホストコンピューターのアプリケーションへの情報入力(メディアの記録面へ書き込むデータの入力や、メディアのレーベル面へ印刷するデータの入力)が完了しメディア発行命令が与えられると、メディア作製ジョブが生成される。メディア作製ジョブに基づき、メディア搬送機構への搬送命令がメディア処理装置へ送信されると(ステップS101)、それに応じてメディア搬送機構がメディアをメディア保管部からメディアドライブへ搬送する(ステップS102)。メディアの搬送が完了するとその旨をホストコンピューターへ通知する。メディアを受け取ったメディアドライブは、書込み命令(ステップS103)に従ってデータ書込みを行う(ステップS104)。
【0005】
次に、メディア搬送機構はメディアをメディアドライブからレーベルプリンターに搬送する旨の搬送命令を受信すると(ステップS105)、メディアドライブからレーベルプリンターへメディアを搬送し(ステップS106)、搬送が完了するとその旨をホストコンピューターに通知する。メディアを受け取ったレーベルプリンターは、ホストコンピューターから印刷命令を受信すると(ステップS107)、それ以前の印刷ヘッドのクリーニング状況から、印刷処理前に印刷ヘッドのクリーニングが必要か否かを判定する。
【0006】
印刷命令を受けたレーベルプリンターは、印刷ヘッドのクリーニングが必要と判定した場合には、予め設定されたヘッドクリーニング条件に基づいて実施するヘッドクリーニングの動作を選択して、ヘッドクリーニングを実行する(ステップS108)。クリーニング終了後、メディアに対するレーベル印刷を実行する(ステップS109)。
【0007】
レーベル印刷が終了後、メディア搬送機構がレーベルプリンター上のメディアをメディア保管部に移す旨の搬送命令を受信すると(ステップS110)、その命令に基づいてメディア搬送機構がレーベルプリンター上のメディアをメディア保管部に搬送する(ステップS111)と一連の処理が完了する。
【0008】
ところで、上述した特許文献1に記載のメディア処理装置に搭載されているレーベルプリンターは、各インクカートリッジから供給されるインクを印刷ヘッドのノズルから吐出させて、メディアのレーベル面への印刷を行うインクジェットプリンターである。インクジェットプリンターでは、ノズルの汚れや目詰まりによる印刷品質の低下を防止するため定期あるいは不定期に、印刷ヘッドの汚れや目詰まりの程度に応じたヘッドクリーニングを実施することが必要である。
【0009】
上述したステップS108では、印刷ヘッドを拭くワイピング動作、印刷ヘッドのノズルから規定量のインクを吸い出す本吸引動作、微量吸引動作、空吸引動作、及び休止動作といった予め設定されている各種の動作のうちから、印刷ヘッドの汚れや目詰まりの程度に応じて、何れか1つあるいは複数を組み合わせた印刷ヘッドのクリーニングを実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−331534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図5に示したように、従来はステップS107においてレーベルプリンターが印刷命令を受けたときに、印刷ヘッドのそれまでのクリーニング状況からクリーニングが必要か否かの判定を実施し、必要と判定するとクリーニング処理を実行する。このため、印刷ヘッドのクリーニング処理が完了するまでは、メディアのレーベル面への印刷処理を開始することができないため、印刷開始時期が遅れ、メディア作製処理のスループットが低下する場合がある。
【0012】
印刷ヘッドのクリーニングが、印刷ヘッドを拭くワイピング動作のように軽度のクリーニング動作だけで済む場合は、印刷開始時期の遅れはそれほど目立たず、メディア作製処理のスループットの低下もそれほど気にならない。
【0013】
しかしながら、印刷ヘッドの汚れがひどいために、複数のクリーニング動作を組み合わせた比較的処理時間の長いクリーニングを実行する場合は、クリーニングの所要時間が長くなるため、メディア作製処理のスループットの低下が無視できなくなる。特に、メディア処理装置の電源をOFF状態からON状態にした場合などのように、印刷ヘッドが長時間使用されていなかった場合は、比較的処理時間の長い強力なクリーニング動作を実行する必要があるため、最初のレーベル印刷にかかる時間、いわゆるファーストプリントの遅延が顕著となる。
【0014】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、印刷ヘッドのクリーニングのためにメディア作製処理のスループットが低下することを防止することができるメディア処理装置、その制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決することのできる本発明は、メディアの記録面へのデータ書込み処理を実行するデータ書込み部と、印刷ヘッドのノズルからインクを吐出させて前記メディアのレーベル面に対する印刷処理及び前記印刷ヘッドのクリーニング処理を実行する印刷部と、前記メディアを前記データ書込み部や前記印刷部へ搬送する搬送部と、を備えたメディア処理装置であって、
前記印刷部は、前記印刷部に対する印刷命令及びクリーニング実行命令以外の信号であって前記メディア処理装置内で送受信される内部信号に応じて、前記メディアの搬送処理又は前記データ書込み処理の何れかの処理に並行して前記クリーニング処理を実行することを特徴とする。
上記構成によれば、印刷部はホストコンピューターからの印刷命令やクリーニング命令によらず、メディア処理装置内で送受信される内部信号に応じてクリーニングを実行する。したがって、ホストコンピューターから印刷命令を受信する前に、内部信号を契機としてクリーニングを実行することができるため、クリーニングによるメディア作製処理のスループットが低下することを防止することができる。
【0016】
また、本発明のメディア処理装置において、前記内部信号は、前記搬送部が、前記データ書込み部へ前記メディアを搬送する搬送命令を前記メディア処理装置と通信可能に接続されたホストコンピューターから受信した場合に、前記搬送部から前記印刷部へ送信される信号であることを特徴とする。
上記構成によれば、搬送部がホストコンピューターから搬送命令を受けると印刷部へ内部信号を送信すれば、印刷部はホストコンピューターから印刷命令を受信する前に内部信号を契機として、メディアの搬送処理と並行してクリーニングを実行することができる。
【0017】
また、本発明のメディア処理装置において、前記内部信号は、前記データ書込み部が、前記メディア処理装置と通信可能に接続されたホストコンピューターから前記データ書込み処理を指示する書込み命令を受信した場合に、前記データ書込み部から前記印刷部へ送信される信号であることを特徴とする。
上記構成によれば、データ書込み部がホストコンピューターから書込み命令を受けると印刷部へ内部信号を送信すれば、印刷部はホストコンピューターから印刷命令を受信する前に内部信号を契機として、データ書込み処理と並行してクリーニングを実行することができる。
【0018】
また、本発明のメディア処理装置において、内部信号には、前記メディア書込み処理の処理時間が含まれ、前記印刷部は、前記処理時間に応じて、前記印刷ヘッドのクリーニングの種類を決定することを特徴とする。
上記構成によれば、印刷部は書込み処理の処理時間を知ることができるため、処理時間に応じた最適なクリーニングを選択し実行することができる。例えば、書込みデータがそれほど大きくない場合には、総所要時間が比較的短いクリーニングを選択することによって、印刷命令を受信したときにすぐに印刷処理を開始することができるよう調整することが可能となる。
【0019】
また、上記課題を解決することのできる本発明は、メディアの記録面へのデータ書込み処理を実行するデータ書込み部と、印刷ヘッドのノズルからインクを吐出させて前記メディアのレーベル面に対する印刷処理及び前記印刷ヘッドのクリーニング処理を実行する印刷部と、前記メディアを前記データ書込み部や前記印刷部へ搬送する搬送部と、を備えたメディア処理装置の制御方法であって、
前記印刷部が、前記印刷部に対する印刷命令及びクリーニング実行命令以外の信号であって前記メディア処理装置内で送受信される内部信号を受信する受信ステップと、前記内部信号に応じて、前記メディアの搬送処理又は前記データ書込み処理の何れかの処理に並行して前記クリーニング処理を実行するクリーニング実行ステップと、を含むことを特徴とする。
【0020】
また、上記課題を解決することのできる本発明は、上記メディア処理装置が備えるコンピューターに、上記の受信ステップ及びクリーニング実行ステップを実行させるためのプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態のパブリッシャーの開閉扉を開状態としたときの外観斜視図である。
【図2】パブリッシャーのケースを外した状態の前方上側から見た斜視図である。 図1に示したメディア処理システムの制御方法の説明図である。
【図3】メディア処理システムの一実施の形態のブロック図である。
【図4】図3に示したメディア処理システムにおけるメディア作製処理を説明するための図である。
【図5】従来のメディア処理装置の制御方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るメディア処理装置の実施形態の例を、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、メディア処理装置の一例として、CDやDVD等の円板状のメディアへのデータの書き込みやメディアのレーベル面への印刷を行うディスクパブリッシャー(以下、「パブリッシャー」という。)を例示して説明する。
【0023】
(パブリッシャーの構成について)
図1は本実施形態のパブリッシャーの開閉扉を開状態としたときの外観斜視図、図2はパブリッシャーのケースを外した状態の前方上側から見た斜視図である。
パブリッシャー1は、例えばCDやDVD等の円板状のメディアへのデータの書き込みやメディアのレーベル面への印刷を行う装置であり、ほぼ直方体形状のケース2を備えている。このケース2の前面には、左右に開閉可能な開閉扉3,4が取り付けられている。ケース2の上側左端部には、表示ランプ、操作ボタン等が配列された操作面5が設けられており、また、ケース2の下端には、下方に突出するように載置用の脚部6が左右両側に設けられている。左右の脚部6の間位置には引出機構7が設けられている。
【0024】
正面視右側の開閉扉3は、図1に示すように、パブリッシャー1の前面側の開口部8を開閉するもので、例えば未使用のメディアMを開口部8を介してセットする時、あるいは作成済みのメディアMを、開口部8を介して取り出すときに、開閉する扉である。
また、正面視左側の開閉扉4は、図2に示すプリンター11のインクカートリッジ12の入れ換え時に開閉するためのものであり、この開閉扉4を開けると、鉛直方向に配列された複数のカートリッジホルダ13を有するカートリッジ装着部14が露出するようになっている。
【0025】
図2に示すように、パブリッシャー1のケース2の内部には、データ書き込み処理が行われていない複数枚(例えば50枚)の未使用のメディアMをスタック可能なメディア保管部としてのメディアスタッカー21と、複数枚(例えば50枚)の未使用のメディアMあるいは作成済みメディアMが保管されるメディア保管部としてのメディアスタッカー22とが保管されるメディアMの中心軸線が同一となるように上下に配置されている。メディアスタッカー21及びメディアスタッカー22は、それぞれ所定位置に対して着脱自在である。
【0026】
上側のメディアスタッカー21は、左右一対の円弧状の枠板24,25を備えており、これにより、メディアMを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で収容可能な構成をなしている。メディアスタッカー21にメディアMを収容あるいは補充する作業は、開閉扉3を開けてメディアスタッカー21を取り出すことにより、簡単に行うことが可能となっている。
【0027】
下側のメディアスタッカー22も同一構造となっており、左右一対の円弧状の枠板27,28を備え、これによって、メディアMを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で収容可能なスタッカーが構成されている。
【0028】
メディアスタッカー21及びメディアスタッカー22の後側には、メディア搬送機構31が配置されている。メディア搬送機構31は、本体フレーム30とシャーシ32の天板33との間に垂直に架け渡されている垂直ガイド軸35を有している。この垂直ガイド軸35に搬送アーム36が昇降及び旋回可能な状態で支持されている。搬送アーム36は、駆動モータ37によって垂直ガイド軸35に沿って昇降可能であるとともに、垂直ガイド軸35を中心に左右に旋回可能である。
【0029】
上下のスタッカー21,22及びメディア搬送機構31の側方の後方の部位には、上下に積層された2つのメディアドライブ41,41が配置され、これらメディアドライブ41,41の下側にプリンター11のキャリッジが移動可能に配置されている。
メディアドライブ41は、メディアMへのデータ書き込み位置とメディアMの受け取り受け渡しを行うメディア受け渡し位置との間を移動可能なメディアトレイ41aをそれぞれ有している。
【0030】
また、プリンター11は、メディアMのレーベル面へ印刷可能な印刷位置とメディアMの受け取り受け渡しを行うメディア受け渡し位置との間を移動可能なメディアトレイ45を有している。
【0031】
図2では、上下のメディアドライブ41のメディアトレイ41aが手前に引き出されてメディア受け渡し位置にある状態及び下側のプリンター11のメディアトレイ45が手前側のメディア受け渡し位置にある状態が示されている。また、プリンター11はインクジェットプリンターであり、インク供給機構60として各色(本実施形態ではブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタの6色)のインクカートリッジ12が用いられ、これらのインクカートリッジ12がカートリッジ装着部14の各カートリッジホルダ13に前方から装着されている。
【0032】
ここで、メディアスタッカー21の左右一対の枠板24,25の間及びメディアスタッカー22の左右一対の枠板27,28の間には、メディア搬送機構31の搬送アーム36が昇降可能な隙間が形成されている。また、これら上下のメディアスタッカー21とメディアスタッカー22との間には、メディア搬送機構31の搬送アーム36が水平に旋回して、メディアスタッカー22の真上に位置できるように隙間が開いている。さらに、両メディアトレイ41aをメディアドライブ41に押し込むと、メディア搬送機構31の搬送アーム36を下降させて、メディア受け渡し位置にあるメディアトレイ45にアクセス可能となっている。
【0033】
メディア搬送機構31の搬送アーム36は、両メディアトレイ41aをデータ書き込み位置に位置させ、メディアトレイ45を奥側の印刷位置に位置させた状態で、メディアトレイ45の高さ位置よりもさらに下側まで下降可能となっている。そして、メディアトレイ45のメディア受け渡し位置の下方には、搬送アーム36がこの位置まで下降してリリースしたメディアMが通過するガイド穴であって、メディアスタッカー(別体スタッカー)が装着されるガイド穴65が形成されている。
【0034】
図1及び図2に示すように、引出機構7は、本体フレーム30の下側に、本体フレーム30から引き出して開いたり、収納して閉じたりすることが可能な引出トレイ70を有している。引出トレイ70には、スタッカー部71が下方に凹んで設けられている。引出トレイ70が収納位置(閉位置)にあるとき、スタッカー部71は、ガイド穴65の下方に位置し、スタッカー部71の中心部は、受け渡し位置にある両メディアトレイ41aとメディアトレイ45の中心軸線が同一となるように位置されている。このスタッカー部71は、ガイド穴65を介して投入されるメディアMを受け入れ、このメディアMを比較的少量(例えば5枚〜10枚程度)だけ収容する。スタッカー部71は、メディアMを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で収容可能となっている。
【0035】
収納状態にある引出トレイ70のスタッカー部71及びガイド穴65には、スタッカー部71よりもメディアMの収容量が多いメディアスタッカー(別体スタッカー)72が着脱可能となっている(図2参照)。このメディアスタッカー72も、一対の円弧状の枠板73,74を備えており、これによって、メディアMを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で複数枚(例えば50枚)収容可能となっている。一対の円弧状の枠板73,74の間には、メディア搬送機構31の搬送アーム36が昇降可能な隙間が形成されている。また、一方の枠板74の上部には着脱時にユーザーによって把持される取っ手75が設けられている。
【0036】
そして、メディアスタッカー72を取り付けた状態とすれば、下側のメディアスタッカー22から未使用のメディアMを取り出し、メディアドライブ41およびプリンター11でデータ記録および印刷を行った後に、メディアスタッカー72に収容することができる。
また、例えば、上側のメディアスタッカー21および下側のメディアスタッカー22にそれぞれの最大収容枚数(50枚+50枚)の未使用のメディアMを装填し、下側のメディアスタッカー22の全枚数(50枚)のメディアMを順次処理してメディアスタッカー72に収容し、次に、上側のメディアスタッカー21の全枚数(50枚)のメディアMを順次処理して、空となった下側のメディアスタッカー22に収容する。このようにして、上側のメディアスタッカー21および下側のメディアスタッカー22の最大収容枚数(50枚+50枚)のメディアMを一度に処理する(バッチ処理モード)。
【0037】
また、メディアスタッカー72を取り外した状態とすれば、上側のメディアスタッカー21あるいは下側のメディアスタッカー22から未使用のメディアMを取り出し、メディアドライブ41及びプリンター11でデータ記録及び印刷を行った後に、収納状態にある引出トレイ70のスタッカー部71に収容することができる。
【0038】
これにより、その後、引出トレイ70を引き出すことでスタッカー部71から処理が完了したメディアMを取り出すことができる。つまり、メディアMへの処理中であっても、開閉扉3を閉じたまま、処理が完了したメディアMから順に1枚ずつあるいは複数枚ずつ取り出すことができる(外部排出モード)。
【0039】
(ホストコンピューターとパブリッシャーの内部処理について)
次に上述したパブリッシャー1とパブリッシャー1と通信可能に接続されたホストコンピューター100と、を備えた本実施形態のメディア処理システムの内部処理について説明する。図3はメディア処理システムの一実施の形態のブロック図、図4は図3に示したメディア処理システムにおけるメディア作製処理を説明するための図である。
【0040】
図3に示したメディア処理システム200は、ホストコンピューター100と、パブリッシャー1とから構成されている。ホストコンピューター100は、主として、アプリケーション101、プリンタードライバー102、搬送命令生成部105、書込み命令生成部106及び送受信部107を備えている。
【0041】
アプリケーション101は、ホストコンピューター100上で動作するアプリケーションプログラムで、パブリッシャー1によるメディア作製処理に必要なデータを、プリンタードライバー102、搬送命令生成部105及び書込み命令生成部106を介して、パブリッシャー1に送信するユーザーインターフェースを提供する。
【0042】
プリンタードライバー102は、アプリケーション101からメディア作製指示を受信すると、プリンター11が処理可能な形式の印刷データ、印刷コマンドを生成する印刷データ生成部103を備えている。
また、送受信部107は、各種命令、印刷データ及び記録データ等をパブリッシャー1へ送信し、パブリッシャー1から送信されるデータを受信するためのインターフェースである。
【0043】
搬送命令生成部105は、アプリケーション101からメディア作製指示を受信すると、メディア搬送機構31が処理可能な形式の搬送コマンドを生成し、送受信部107を介してパブリッシャー1へ送信する。
また、書込み命令生成部106は、アプリケーション101からメディア作製指示を受信するとメディアドライブ41が処理可能な形式の書込みコマンドを生成し、アプリケーション101から指示された記録データとともに送受信部107を介してパブリッシャー1へ送信する。
【0044】
ユーザーは、アプリケーション101上で印刷データの作成や編集、メディア作製指示を行う。プリンタードライバー102は、アプリケーション101により呼び出され、プリンター11の動作を制御する。同様に、搬送命令生成部105はアプリケーション101により呼び出されてメディア搬送機構31の動作を直接制御し、書込み命令生成部106はアプリケーション101により呼び出されてメディアドライブ41の動作を制御する。ユーザーがアプリケーション101で入力した印刷データやメディア記録面への記録データは、アプリケーション101のデータ管理部108に保存される。
【0045】
なお、アプリケーション101及びプリンタードライバー102は、ホストコンピューター1の図示しないROMに予め格納されたプログラムであり、各機能部は、ホストコンピューター1の図示しないCPUが上記プログラムを読み出し、実行することにより構成される。
【0046】
一方、パブリッシャー1は、プリンター11、メディア搬送機構31及びメディアドライブ41の3つのUSBデバイスを内蔵している。パブリッシャー1が内蔵する各USBデバイスは、ホストコンピューター100のUSBポートに複数のUSBデバイスを接続するための分岐装置であるハブ110を介して、ホストコンピューター100と通信可能に接続されている。
【0047】
各USBデバイスは、通信インターフェースとしての送受信部111,131,141をそれぞれ備えている。
プリンター11は、送受信部111の他に、印刷データを展開保存するプリントバッファ112と、不図示の印刷ヘッドやキャリッジの動作を制御する印刷制御部113と、印刷ヘッドのクリーニング動作を制御するクリーニング実行部114を備えている。送受信部111、印刷制御部113及びクリーニング実行部114は、不図示のCPUがROM等の不揮発性の記憶部に記憶されているファームウェアを実行することによって構成される。
【0048】
送受信部111は、ホストコンピューター100からハブ110を介して送信された印刷データ、印刷命令等を受信するためのインターフェースである。送受信部111で一時保存した印刷データはプリントバッファ112に展開され、印刷可能なドットデータに変換される。印刷制御部113は、受信した印刷命令に基づいて、印刷ヘッドやキャリッジ等を駆動させてプリントバッファ112に展開されたドットデータをメディアのレーベル面に印刷する。
【0049】
クリーニング実行部114は、クリーニング処理として、例えば、印刷ヘッドを拭くワイピング動作、印刷ヘッドのノズルから規定量のインクを吸い出す本吸引動作、微量吸引動作、空吸引動作、及び休止動作といった各種の動作を実行できるように構成されている。なお、本実施形態において、クリーニング実行部114は、メディア搬送機構31から送信される内部信号に応じて、印刷ヘッドのクリーニングが必要であるか否かを判定する。クリーニング状況を参照しクリーニング処理が必要であると判定した場合に上述したクリーニング処理を実行する。
【0050】
メディア搬送機構31は、送受信部131の他に、搬送アーム36によるメディアの搬送動作を制御する搬送制御部132及びプリンター1へ送信する内部信号を生成する内部信号生成部133を備えている。
送受信部131は、ホストコンピューター1からハブ110を介して送信された搬送命令を受信するためのインターフェース部である。送受信部131で一時保存した搬送命令に基づき、搬送制御部132は、搬送アーム36やメディアを把持する把持機構等を駆動させて、メディアを搬送する。例えば、搬送制御部132からの指示に応じて搬送アーム36が、メディアが積層されたメディア保管部からメディアを把持し、把持したメディアをメディアドライブ41のメディアトレイ41aやプリンター11のメディアトレイ45まで搬送する。また、搬送制御部132からの指示に応じて搬送アーム36が、レーベル印刷後のメディアをメディアトレイ45からピックアップし、ピックアップしたメディアを引出しトレイ70へ搬送する。
【0051】
内部信号生成部133は、ホストコンピューター100から搬送命令を受信したときに、プリンター11に対して送信する内部信号を生成する。
本実施形態において内部信号とは、メディアをメディア保管部(例えば、メディアスタッカー21)からメディアドライブ41へ搬送する搬送命令をホストコンピューター100から受信した場合に、メディア搬送機構31からプリンター11へ送信される信号であって、パブリッシャー1の内部で送受信される信号をいう。
【0052】
ところで、本実施形態のパブリッシャー1において、メディア搬送機構31による搬送先、搬送元となり得るのは、メディア保管部であるメディアスタッカー21,22と、メディアドライブ41,41と、プリンター11と、スタッカー部71の6つである。したがって、搬送命令生成部105は少なくとも30種類の搬送命令を生成することができ、適切な種類の搬送命令をパブリッシャー1へ送信する。
上述したように、本実施形態の内部信号生成部133は、この30種類の搬送命令のうち、未処理のメディアを保管するメディア保管部(メディアスタッカー21)を搬送元とし、データ書込み処理を実行するメディアドライブ41を搬送先とする搬送命令を受信した場合に、内部信号を生成するよう構成されている。これは、メディアドライブ41へメディアを搬送する搬送命令を受信したときに、内部信号を生成してプリンターへ送信すれば、クリーニング処理をデータ書込み処理と並行して実行させることができるからである。
【0053】
また、メディアドライブ41は、前述の送受信部141の他に、データ書込み動作を制御するデータ書込み制御部142を備えている。送受信部141は、ホストコンピューター1からハブ110を介して送信された書込み命令を受信するためのインターフェースである。データ書込み制御部142は、記録データをメディアの記録面に記録する。
【0054】
なお、送受信部131及び搬送制御部132、送受信部141及びデータ書込み制御部142は、メディア搬送機構31及びメディアドライブ41がそれぞれ備える不図示のCPUがROM等の不揮発性の記憶部に記憶されているファームウェアを実行することによって構成される。
【0055】
(メディア作製処理について)
以上に説明したメディア処理システム200におけるメディア作製処理の流れを説明する。図4は、メディア作製処理を説明するための図である。
まず、ホストコンピューター100のアプリケーション101への情報入力画面で、メディアのレーベル面へ印刷するデータの入力が完了すると、アプリケーション101からメディア作製指示が送信される。
【0056】
次に、アプリケーション101からのメディア作製指示に応じて、搬送命令生成部105が未処理のメディアをメディアドライブ41へ搬送するための搬送命令を生成し、パブリッシャー1のメディア搬送機構31へ送信する(ステップS11)。送受信部131が搬送命令を受信すると、内部信号生成部133は、内部信号を生成して送受信部131を介してプリンター11へ送信する(ステップS12)。一方、搬送命令に応じて搬送制御部132は、メディア保管部に積層されているメディアをピックアップし、メディアドライブ41へ搬送する(ステップS13)。
【0057】
さらに、アプリケーション101からのメディア作製指示に応じて、書込み命令生成部106がデータ管理部108に保管されている記録データの書込み命令を生成し、パブリッシャー1のメディアドライブ41へ送信する(ステップS14)。メディアを受けたメディアドライブ41は、データ書込み命令にしたがってデータ書込み処理を行う(ステップS15)。
【0058】
ここで、ステップS13〜S15を実行している間に、プリンター11は、ステップS12でメディア搬送機構31から受信した内部信号に応じて、クリーニング実行部114が印刷ヘッドのクリーニング状況からクリーニング処理が必要であるか否かを判定する(ステップS16)。判定ステップS16において、クリーニング処理が必要であると判定した場合は、クリーニング実行部114はクリーニング処理を実行する(ステップS17)。このクリーニング実行ステップS17では、メディアドライブ41へのメディアの搬送処理(ステップS13)又はメディアドライブ41におけるデータ書込み処理(ステップS15)の何れかの処理と並行してクリーニングを実行する。
【0059】
メディアドライブ41におけるデータ書込み処理(ステップS15)が完了すると、搬送命令生成部105は、メディアをメディアドライブ41からプリンター11に搬送する旨の搬送命令を生成しメディア搬送機構31へ送信する(ステップS18)。搬送命令を受けたメディア搬送機構31がメディアドライブ41からプリンター11へメディアを搬送すると(ステップS19)、印刷データ生成部103が印刷命令を生成して印刷データとともにプリンター11へ送信する(ステップS20)。
【0060】
印刷命令を受けたプリンター11は印刷データに基づいて、メディアに対するレーベル印刷を実行する(ステップS21)。次に、搬送命令生成部105はプリンター11上のメディアをメディア保管部(例えば、メディアスタッカー22)に搬送する旨の搬送命令をメディア搬送機構31に発行し(ステップS22)、その命令に基づいてメディア搬送機構31がプリンター11上のメディアをメディア保管部に搬送する(ステップS23)。以上で、一連のメディア作製処理が完了する。
【0061】
このように、本実施形態によれば、プリンター11はホストコンピューター100からの印刷命令やクリーニング命令によらず、パブリッシャー1内で送受信される内部信号に応じてクリーニングを実行する。したがって、ホストコンピューター100から印刷命令を受信する前に、内部信号を契機としてクリーニングを実行することができるため、クリーニングによるメディア作製処理のスループットが低下することを防止することができる。
またメディア搬送機構31は、ホストコンピューター100からメディアをメディア保管部からメディアドライブ41へ搬送する旨の搬送命令を受けるとプリンター11へ内部信号を送信するので、プリンター11はホストコンピューター100から印刷命令を受信する前に内部信号を契機として、メディアの搬送処理と並行してクリーニングを実行することができる。
【0062】
このように本実施形態では、プリンター11へ送信される内部信号は、メディア搬送機構31の内部信号生成部133が生成するよう構成したが、このような構成に限られない。内部信号をメディアドライブ41からプリンター11へ送信するよう構成することもできる。この場合は、内部信号生成部133をメディアドライブ41に備え、ホストコンピューター100からデータ書込み命令を受信すると、内部信号を生成してプリンター11へ送信するようにすればよい。
メディアドライブ41がホストコンピューター100から書込み命令を受信したときにプリンター11へ内部信号を送信すれば、プリンター11はホストコンピューター100から印刷命令を受信する前に内部信号を契機として、データ書込み処理と並行してクリーニングを実行することができる。
【0063】
さらに、メディアドライブ41に内部信号生成部113を備える構成とした場合には、内部信号にメディア書込み処理の処理時間を含めることもできる。
具体的には、ホストコンピューター100から送信される書込み命令に、記録データのデータ量を含めておくことによって、書込み命令を受信したデータ書き込み制御部142は、記録データのデータ量に応じたデータ書込み処理時間を算出することができる。この場合、データ書込み制御部142は、記録データのデータ量と、メディアドライブ41のメディアの種類に応じたデータ書込み速度と、に基づいてデータ書込み時間を算出する。一般に、CD(Compact Disc)に記録データを書き込む場合、書込み速度は1倍速で150KB/秒、2倍速で300KB/秒である。DVD(Digital Versatile Disc)にデータを書き込む場合、書き込み速度は1倍速で1385KB/秒、2倍速で2770KB/秒であることが知られている。メディアドライブ41のメディアの種類に応じた書込み倍速仕様に応じて、データ書込み処理時間を算出することができる。例えば、CDに100MBの記録データを12倍速で書き込む場合、書込み処理時間は約56秒となる。
【0064】
このようにプリンター11は、データ書込み処理時間を含む内部信号を受信することで、クリーニング実行部114は、受信したデータ書込み処理時間内にクリーニングを完了するよう、実行するクリーニングの種類を変更することができる。例えば、上述したように、データ書込み処理時間が56秒であったとすると、56秒以内に完了することができるクリーニング処理を選択し実行する。
なお、データ書込み処理時間がクリーニング処理に必要な時間より短い場合は、クリーニング処理を実行しないで、次に十分なデータ書込み処理時間が得られたときに実行してもよい。
【0065】
また、パブリッシャー1において、分岐装置であるハブ110が、ホストコンピューター100から送信される搬送命令及び書き込み命令の少なくとも一方をプリンター11へ中継するよう構成することもできる。すなわち、プリンター11がハブ110から送信された搬送命令又は書き込み命令を内部信号として受信する。プリンター11が分岐装置から直接、搬送命令や書込み命令を受信することができれば、メディア搬送機構31又はメディアドライブ41に内部信号生成部133のような機能を設ける必要がない。
このような構成によれば、ホストコンピューター100から送信される搬送命令及び書込み命令をプリンター11に中継することによって、プリンター11のクリーニング実行部114は搬送命令あるいは書込み命令を契機としてクリーニングを実行することが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1:パブリッシャー、11:プリンター、31:メディア搬送機構、41:メディアドライブ、100:ホストコンピューター、101:アプリケーション、102:プリンタードライバー、103:印刷データ生成部、104:印刷準備命令生成部、105:搬送命令生成部、106:書込み命令生成部、107:送受信部、108:データ管理部、110:ハブ、112:プリントバッファ、113:印刷制御部、114:クリーニング実行部、115:印刷準備命令判定部、132:搬送制御部、133:内部信号生成部、142:データ書込み制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアの記録面へのデータ書込み処理を実行するデータ書込み部と、印刷ヘッドのノズルからインクを吐出させて前記メディアのレーベル面に対する印刷処理及び前記印刷ヘッドのクリーニング処理を実行する印刷部と、前記メディアを前記データ書込み部や前記印刷部へ搬送する搬送部と、を備えたメディア処理装置であって、
前記印刷部は、前記印刷部に対する印刷命令及びクリーニング実行命令以外の信号であって前記メディア処理装置内で送受信される内部信号に応じて、前記メディアの搬送処理又は前記データ書込み処理の何れかの処理に並行して前記クリーニング処理を実行することを特徴とするメディア処理装置。
【請求項2】
前記内部信号は、前記搬送部が、前記データ書込み部へ前記メディアを搬送する搬送命令を前記メディア処理装置と通信可能に接続されたホストコンピューターから受信した場合に、前記搬送部から前記印刷部へ送信される信号であることを特徴とする請求項1に記載のメディア処理装置。
【請求項3】
前記内部信号は、前記データ書込み部が、前記メディア処理装置と通信可能に接続されたホストコンピューターから前記データ書込み処理を指示する書込み命令を受信した場合に、前記データ書込み部から前記印刷部へ送信される信号であることを特徴とする請求項1に記載のメディア処理装置。
【請求項4】
前記内部信号には、前記メディア書込み処理の処理時間が含まれ、
前記印刷部は、前記処理時間に応じて、前記印刷ヘッドのクリーニングの種類を決定することを特徴とする請求項1又は3に記載のメディア処理装置。
【請求項5】
メディアの記録面へのデータ書込み処理を実行するデータ書込み部と、印刷ヘッドのノズルからインクを吐出させて前記メディアのレーベル面に対する印刷処理及び前記印刷ヘッドのクリーニング処理を実行する印刷部と、前記メディアを前記データ書込み部や前記印刷部へ搬送する搬送部と、を備えたメディア処理装置の制御方法であって、
前記印刷部が、前記印刷部に対する印刷命令及びクリーニング実行命令以外の信号であって前記メディア処理装置内で送受信される内部信号を受信する受信ステップと、
前記内部信号に応じて、前記メディアの搬送処理又は前記データ書込み処理の何れかの処理に並行して前記クリーニング処理を実行するクリーニング実行ステップと、を含むことを特徴とするメディア処理装置の制御方法。
【請求項6】
前記メディア処理装置が備えるコンピューターに、請求項5に記載の受信ステップ及びクリーニング実行ステップを実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−165439(P2010−165439A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8925(P2009−8925)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)