説明

メディア搬送機構、メディア搬送機構の制御方法およびメディア処理装置

【課題】積層されたメディア間に生じる吸着力が大きい場合であっても、メディアを1枚のみ確実に搬送することが可能なメディア搬送機構を提案する。
【解決手段】積層されたメディアのうちの一番上のメディアである最上部メディアを搬送アーム18で把持して搬送するメディア搬送機構8は、最上部メディアの中心孔の側面に当接して最上部メディアを把持する把持部材38と、把持部材38によって把持される最上部メディアに吸着された最上部メディアの直下のメディアである直下メディアを最上部メディアから分離する分離部材39とを有している。メディア搬送機構8は、特定条件下において、搬送アーム18の上昇速度を第1の速度から第1の速度よりも遅い第2の速度に切り替えること、および、分離部材39の移動速度を第3の速度から第3の速度よりも遅い第4の速度に切り替えること、の少なくともいずれか一方を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)またはBD(Blu−ray Disc)等のメディアを搬送するメディア搬送機構、このメディア搬送機構の制御方法、および、このメディア搬送機構を有するメディア処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CDやDVD等のメディアに対してデータの書き込みとレーベル印刷とを行って、メディアを発行するCD/DVDパブリッシャー等のメディア処理装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のメディア処理装置は、データ書き込み等の処理が行われていない未使用のメディアが積層されて収容されるブランクメディアスタッカーと、処理済みのメディアが積層されて収容される作成済みメディアスタッカーと、メディアを把持して搬送するメディア搬送機構とを備えている。
【0003】
メディア搬送機構は、昇降可能な搬送アームを備えており、搬送アームは、メディアの中心孔に挿入されるガイド部と、メディアの中心孔の側面に当接してメディアを把持する把持機構とを備えている。ガイド部は、円柱状に形成される基端部と、下側へ向かって次第に径が小さくなる円錐台状のガイド面部とから構成されており、基端部の下端にガイド面部が繋がっている。把持機構は、メディアの中心孔の側面に当接してメディアを把持する3個の把持爪を備えている。なお、CDおよびDVDの記録面側の中心孔の周辺には、記録面を保護するためのスタックリングと呼ばれる円形状の突起が形成されている。
【0004】
特許文献1に記載のメディア処理装置では、処理前のメディアが記録面を下側に向けた状態でブランクメディアスタッカーに積層されて収容されている。そのため、スタッカーの内部において、上側に配置されるメディアのスタックリングと、下側に配置されるメディアの記録面の反対側の面となる印刷面とが密着して、メディア間に吸着力が生じる場合がある。この場合、ブランクメディアスタッカーに積層されたメディアのうちの一番上の1枚のメディア(最上部のメディア)を搬送アームで持ち上げようとしたときに、直下のメディア(すなわち、上から2番目のメディア)が最上部のメディアとともに持ち上げられるおそれがある。2枚のメディアが吸着された状態で、搬送アームによってメディアが搬送されると、搬送先で不具合が生じる。そこで、特許文献1に記載のメディア処理装置では、搬送アームは、最上部のメディアに対して直下のメディアを移動させて最上部のメディアから分離するキックレバーを備えている。そのため、このメディア処理装置では、ブランクメディアスタッカーから最上部のメディア1枚のみを持ち上げて搬送することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−26457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、メディアとして、CDやDVDに加え、BDが広く利用されるようになっている。BDの場合、記録面側の中心孔の周辺にスタックリングが形成されていないか、あるいは、スタックリングが形成されていても、その高さはCDやDVDのスタックリングの高さよりも低い。そのため、ブランクメディアスタッカーにBDが積層されて収容される場合、上側に配置されるBDの記録面と下側に配置されるBDの印刷面とが密着しやすくなる。上下に配置されるBDの記録面と印刷面とが密着すると、記録面と印刷面との間に空気が入りにくくなるため、ブランクメディアスタッカー内でBD間に生じる吸着力はCDやDVD間に生じる吸着力よりも大きくなる。
【0007】
上述のように、特許文献1に記載のメディア処理装置では、搬送アームがキックレバーを備えているため、ブランクメディアスタッカー内に積層されて収容されるメディアがCDやDVDであれば、ブランクメディアスタッカー内でメディア間に吸着力が発生しても、最上部のメディアから直下のメディアを分離して落下させ、ブランクメディアスタッカーから最上部のメディア1枚のみを持ち上げて搬送することが可能である。しかしながら、ブランクメディアスタッカー内に積層されて収容されるメディアがBDである場合、BD間の吸着力は、CDやDVD間の吸着力よりも大きくなる。そのため、ブランクメディアスタッカー内に積層されて収容されるメディアがBDである場合にブランクメディアスタッカー内でメディア間に吸着力が生じると、最上部のメディアから直下のメディアをキックレバーで分離する際に、最上部のメディアが直下のメディアと一緒に搬送アームから落下するといった現象が起こることが本願発明者の検討によって明らかになった。
【0008】
具体的には、本願発明者の検討によって、以下の現象が発生することが明らかになった。すなわち、図12(A)に示すように、把持爪108が最上部のメディア101を把持して持ち上げようとしたとき、最上部のメディア101に直下のメディア102が吸着されて、最上部のメディア101と一緒に直下のメディア102が搬送アーム105で持ち上げられた場合に、最上部のメディア101から直下のメディア102を分離するため、キックレバー106が直下のメディア102を蹴り出すと、直下のメディア102には、キックレバー106の蹴り出し方向に力F10が作用して、直下のメディア102は、キックレバー106の蹴り出し方向へ移動する。すると、図12(B)に示すように、直下のメディア102の中心孔102aの側面がガイド部107のガイド面部107aに接触して、ガイド面部107aに沿った力F20が直下のメディア102に作用する。すると、直下のメディア102を吸着している最上部のメディア101にもガイド面部107aに沿った力F20が作用する。すると、図12(C)に示すように、最上部のメディア101と把持爪108との接触点を支点としたモーメントM10が2枚のメディア101、102に生じて、最上部のメディア101が把持爪108から外れ、2枚のメディア101、102が回転する。すると、図12(D)に示すように、最上部のメディア101が直下のメディア102と一緒に搬送アーム105から落下する。なお、最上部のメディア101が把持爪108から外れても最上部のメディア101がキックレバー106に引っ掛かって落下しない場合もあるが、この場合には、最上部のメディア101の搬送先で不具合が生じる。
【0009】
そこで、本発明の課題は、メディアに形成されるスタックリングの高さが低く、または、メディアにスタックリングが形成されておらず、積層されたメディア間に生じる吸着力が大きい場合であっても、メディアを1枚のみ確実に搬送することが可能なメディア搬送機構、および、メディア搬送機構の制御方法を提案することにある。また、本発明の課題は、かかるメディア搬送機構、または、かかるメディア搬送機構の制御方法で制御されるメディア搬送機構を有するメディア処理装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明のメディア搬送機構は、昇降可能な搬送アームを有し、積層されたメディアのうちの一番上の前記メディアである最上部メディアを前記搬送アームで把持して搬送するメディア搬送機構であって、前記搬送アームに搭載され、前記最上部メディアの中心孔の側面に当接して前記最上部メディアを把持する把持部材と、前記搬送アームに搭載され、前記把持部材によって把持される前記最上部メディアに吸着された前記最上部メディアの直下の前記メディアである直下メディアを前記最上部メディアに対して移動させて前記最上部メディアから分離する分離部材と、前記メディア搬送機構を制御する制御部と、を有し、前記搬送アームの上昇速度は、第1の速度と、前記第1の速度よりも遅い第2の速度とに切替可能となっており、前記直下メディアを前記最上部メディアから分離する方向へ移動するときの前記分離部材の移動速度は、第3の速度と、前記第3の速度よりも遅い第4の速度とに切替可能となっており、前記制御部は、特定条件下において、前記搬送アームの上昇速度を前記第1の速度から前記第2の速度に切り替えること、および、前記分離部材の移動速度を前記第3の速度から前記第4の速度に切り替えること、の少なくともいずれか一方を行うことを特徴とする。
【0011】
また、上記の課題を解決するため、本発明のメディア搬送機構の制御方法は、昇降可能な搬送アームを有し、積層されたメディアのうちの一番上の前記メディアである最上部メディアを前記搬送アームで把持して搬送するメディア搬送機構の制御方法であって、前記メディア搬送機構は、前記搬送アームに搭載され、前記最上部メディアの中心孔の側面に当接して前記最上部メディアを把持する把持部材と、前記搬送アームに搭載され、前記把持部材によって把持される前記最上部メディアに吸着された前記最上部メディアの直下の前記メディアである直下メディアを前記最上部メディアに対して移動させて前記最上部メディアから分離する分離部材と、を有し、前記搬送アームの上昇速度は、第1の速度と、前記第1の速度よりも遅い第2の速度とに切替可能となっており、前記直下メディアを前記最上部メディアから分離する方向へ移動するときの前記分離部材の移動速度は、第3の速度と、前記第3の速度よりも遅い第4の速度とに切替可能となっており、特定条件下において、前記搬送アームの上昇速度を前記第1の速度から前記第2の速度に切り替えること、および、前記分離部材の移動速度を前記第3の速度から前記第4の速度に切り替えること、の少なくともいずれか一方を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明では、特定条件下において、搬送アームの上昇速度を第1の速度から第1の速度よりも遅い第2の速度に切り替えること、および、分離部材の移動速度を第3の速度から第3の速度よりも遅い第4の速度に切り替えること、の少なくともいずれか一方を行っている。最上部メディアに直下メディアが吸着されて、最上部メディアと一緒に直下メディアが搬送アームで持ち上げられた場合、最上部メディアと直下メディアとが一緒に持ち上げられてからの時間の経過に伴って、直下メディアに作用する自重の影響で、最上部メディアと直下メディアとの間に空気が入り込みやすくなり、最上部メディアと直下メディアとの吸着力が低下していく。
【0013】
そのため、本発明では、最上部メディアに直下メディアが吸着されて、最上部メディアと一緒に直下メディアが搬送アームで持ち上げられた場合や、最上部メディアと一緒に直下メディアが搬送アームで持ち上げられると想定される場合等の特定条件下において、搬送アームの上昇速度を第1の速度から第2の速度に切り替えたり、分離部材の移動速度を第3の速度から第4の速度に切り替えれば、最上部メディアを把持した搬送アームの上昇開始から分離部材による直下メディアの分離動作が行われるまでの時間を長くすることが可能になり、分離動作が行われるときの最上部メディアと直下メディアとの吸着力を低下させることが可能になる。したがって、たとえば、搬送アームが所定の高さまで上昇したときに分離部材による分離動作が行われる場合、分離動作が行われる前に、最上部メディアに吸着された直下メディアを落下させることが可能になり、また、分離動作が行われる前に最上部メディアに吸着された直下メディアを落下させることができなくても、分離部材による分離動作によって、最上部メディアに吸着された直下メディアを最上部メディアから分離して落下させることが可能になる。その結果、メディアに形成されるスタックリングの高さが低くて、または、メディアにスタックリングが形成されていなくて、積層されたメディア間に生じる吸着力が大きい場合であっても、最上部メディアと一緒に直下メディアが搬送アームで持ち上げられたときに、把持部材によって最上部メディアを把持しつつ、最上部メディアから直下メディアを分離することが可能になる。そのため、本発明では、積層されたメディア間に生じる吸着力が大きい場合であっても、メディアを1枚のみ確実に搬送することが可能になる。
【0014】
本発明において、前記搬送アームの昇降と、前記分離部材の移動とが連動しており、前記搬送アームの上昇速度が前記第1の速度から前記第2の速度に切り替わると、前記分離部材の移動速度が前記第3の速度から前記第4の速度に切り替わることが好ましい。このように構成すると、搬送アームの上昇速度および分離部材の移動速度が遅くなるため、たとえば、搬送アームが所定の高さまで上昇したときに分離部材による分離動作が行われる場合、搬送アームの上昇開始から分離部材による分離動作が行われるまでの時間をより長くすることが可能になる。したがって、分離動作が行われるときの最上部メディアと直下メディアとの吸着力をより低下させることが可能になり、最上部メディアと一緒に直下メディアが搬送アームで持ち上げられたときに、最上部メディアから直下メディアをより確実に分離することが可能になる。
【0015】
本発明において、前記特定条件は、たとえば、搬送前の前記メディアが積層されて収容される収容部内の前記メディアの枚数が2枚となっている場合である。収容部内のメディアの枚数が3枚以上であり、メディア間に吸着力が生じている場合、搬送アームで最上部メディアを持ち上げる際には、収容部に収容される最上部メディアと直下メディアとの間に直下メディアよりも下の3枚目以降のメディアの重量が作用するため、搬送アームで最上部メディアを持ち上げる際に最上部メディアから直下メディアが分離しやすい。これに対して、収容部内のメディアの枚数が2枚である場合、搬送アームで最上部メディアを持ち上げる際に、この2枚のメディアである最上部メディアと直下メディアとの間に作用するのは直下メディアの自重のみであるため、最上部メディアと一緒に直下メディアが搬送アームで持ち上げられやすくなるが、収容部内のメディアの枚数が2枚となっている場合を特定条件として、この条件下で、搬送アームの上昇速度や分離部材の移動速度を遅くすれば、最上部メディアと一緒に直下メディアが搬送アームで持ち上げられたときに、最上部メディアから直下メディアを分離することが可能になる。
【0016】
本発明において、メディア搬送機構は、前記搬送アームを昇降させるステッピングモーターと、前記搬送アームに搭載され、前記収容部に収容された前記最上部メディアと前記搬送アームとの距離が所定の距離まで近づいたことを検出するためのメディア検出器と、を有し、前記制御部は、前記メディア検出器の検出結果と、前記ステッピングモーターのステップ数とに基づいて、前記収容部に収容される前記メディアの枚数が2枚となっているか否かを検出することが好ましい。このように構成すると、メディア検出器の検出結果とステッピングモーターのステップ数とに基づいて、搬送アームの上昇速度や分離部材の移動速度を自動的に切り替えることが可能になる。
【0017】
本発明において、前記特定条件は、たとえば、前記搬送アームによって持ち上げられる前記メディアの重さが2枚以上の前記メディアの重さとなっている場合である。この場合には、搬送アームによって、最上部メディアと一緒に直下メディアが持ち上げられているが、搬送アームの上昇速度や分離部材の移動速度を遅くして、最上部メディアから直下メディアを分離することが可能になる。
【0018】
本発明において、メディア搬送機構は、前記搬送アームを昇降させるモーターを有し、前記制御部は、前記モーターの電流値に基づいて、前記搬送アームによって持ち上げられる前記メディアの重さが2枚以上の前記メディアの重さとなっているか否かを検出することが好ましい。このように構成すると、モーターの電流値に基づいて、搬送アームの上昇速度や分離部材の移動速度を自動的に切り替えることが可能になる。
【0019】
本発明において、前記メディアには、前記メディアの記録面を保護するための円形状の突起である第1のスタックリングが前記記録面側に形成される第1のメディアと、前記第1のスタックリングよりも低い円形状の突起である第2のスタックリングが前記記録面側に形成される、または、円形状の突起が形成されずに前記記録面側が平面状となっている第2のメディアとがあり、前記メディアが収容される収容部には、前記記録面が下側を向いた状態で、前記メディアが積層され、前記特定条件は、たとえば、前記収容部に収容される前記最上部メディアが前記第2のメディアとなっており、前記直下メディアが前記第1のメディアとなっている場合である。収容部内のメディアの枚数が3枚以上であっても、収容部に収容される最上部メディアが第2のメディアであり、直下メディアが第1のメディアである場合には、直下メディアである第1のメディアとその下のメディアとの間の隙間が大きくなるため、直下メディアである第1のメディアとその下のメディアとの間の吸着力が弱くなり、この2枚のメディアは分離しやすくなる。したがって、この場合には、収容部内のメディアの枚数が3枚以上であっても、最上部メディアである第2のメディアと一緒に直下メディアである第1のメディアが搬送アームで持ち上げられやすくなるが、収容部に収容される最上部メディアが第2のメディアであり、直下メディアが第1のメディアである場合を特定条件として、この条件下で、搬送アームの上昇速度や分離部材の移動速度を遅くすれば、最上部メディアである第2のメディアと一緒に直下メディアである第1のメディアが搬送アームで持ち上げられたときに、第2のメディアから第1のメディアを分離することが可能になる。
【0020】
本発明において、前記特定条件は、たとえば、前記メディア搬送機構が夜間に運転されている場合、または、前記メディア搬送機構が無人で運転されている場合である。メディア搬送機構が夜間に運転される場合には、メディア搬送機構のオペレーターがメディア搬送機構の近くにいない可能性が高い。また、メディア搬送機構が無人で運転される場合には、オペレーターがメディア搬送機構の近くにいない。そのため、これらの場合に、最上部メディアから直下メディアを分離できずに、最上部メディアが直下メディアと一緒に搬送アームから落下すると、メディア搬送機構の運転がそのまま停止してしまったり、メディア搬送機構を損傷させたりするおそれがあるが、メディア搬送機構が夜間に運転されている場合や、メディア搬送機構が無人で運転されている場合を特定条件として、この条件下で、搬送アームの上昇速度や分離部材の移動速度を遅くすれば、最上部メディアと一緒に直下メディアが搬送アームで持ち上げられたときに、最上部メディアから直下メディアを分離することが可能になり、その結果、これらの不具合を解消することが可能になる。
【0021】
本発明のメディア搬送機構、または、本発明のメディア搬送機構の制御方法によって制御されるメディア搬送機構は、メディア処理装置に用いることができる。このメディア処理装置では、メディアに形成されるスタックリングの高さが低くて、または、メディアにスタックリングが形成されていなくて、積層されたメディア間に生じる吸着力が大きい場合であっても、メディアを1枚のみ確実に搬送することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態にかかるメディア処理装置の外観斜視図。
【図2】開閉扉を開いた状態のメディア処理装置の斜視図。
【図3】メディア搬送機構の斜視図。
【図4】搬送アームを下側から示す斜視図。
【図5】分離機構を上側から示す斜視図。
【図6】キックレバーの動作の説明図。
【図7】メディア検出機構の平面図。
【図8】メディア検出機構の断面図。
【図9】搬送アームによって最上部メディアと一緒に直下メディアが持ち上げられたときの状態を示す図。
【図10】制御部の、メディアの搬送制御に関連する構成およびその周辺機器を示すブロック図。
【図11】メディアの積層状態を説明するための説明図。
【図12】従来技術の問題点を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明を適用したメディア搬送機構、メディア搬送機構の制御方法およびメディア処理装置を説明する。
【0024】
(メディア処理装置の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるメディア処理装置1の外観斜視図である。図2は、図1のメディア処理装置1の内部構造が分かるように、筺体2の上板部分の一部を取り外すとともに、左右の開閉扉11、12を開いた状態を示す斜視図である。図3は、メディア搬送機構8の斜視図である。
【0025】
本形態のメディア処理装置1は、CD、DVDまたはBD等の円板状のメディア3に対してデータの書き込みとレーベル印刷とを行って、メディア3を発行するパブリッシャーである。このメディア処理装置1は、その筐体2内に、未使用のブランクメディア等の書き込み可能なメディア3が積層されて収容されるメディア供給用スタッカー(収容部)4と、メディア3へのデータの書き込みおよびメディア3からのデータの読み出しを行うメディアドライブ5と、データが書き込まれたメディア3のレーベル面3aに、書き込みデータの内容を表すタイトル等を含むレーベルを印刷するレーベルプリンター6と、データの書き込みやレーベルの印刷等が行われた排出前のメディア3が積層されて収容されるメディア排出用スタッカー7と、メディア3を搬送するメディア搬送機構8とを有している。
【0026】
筺体2は、略直方体状に形成されている。筐体2の前面には、左右に開閉可能な開閉扉11、12が取り付けられている。開閉扉11の下方には、表示ランプおよび操作ボタン等が配列された操作パネル13が形成されている。操作パネル13の側方には、メディア排出口14が形成されている。
【0027】
開閉扉11、12を開けると、図2に示すように、メディア処理装置1の筐体2内の右側の部位に、メディア供給用スタッカー4とメディア排出用スタッカー7とが同軸状態で上下に配置されている。メディア供給用スタッカー4およびメディア排出用スタッカー7の後側の部位には、メディア搬送機構8が配置されている。メディア供給用スタッカー4、メディア排出用スタッカー7およびメディア搬送機構8の側方の部位には、上側にメディアドライブ5が配置され、下側にレーベルプリンター6が配置されている。図2では、メディアドライブ5およびレーベルプリンター6のメディアトレイ5a、6aはそれぞれ手前に引き出されたメディア受け渡し位置にある。メディアドライブ5およびレーベルプリンター6の側方の部位には、レーベルプリンター6へインクを供給するためのインクカートリッジを装着するためのカートリッジ装着部15が設けられている。
【0028】
メディア供給用スタッカー4には、メディア3が、レーベル面3aを上にした状態で厚さ方向に積層されて収容されている。メディア供給用スタッカー4は、前方へ水平に引き出し可能なスライド板4aと、このスライド板4aの上に垂直に配置されている左右一対の円弧状の枠板4b、4cとを備えている。メディア供給用スタッカー4にブランクメディア等の書き込み可能なメディア3を収容あるいは補充する場合には、開閉扉12を開けてスライド板4aを手前に引き出し、メディア3を枠板4b、4cの間に上方から挿入する。枠板4b、4cの間にメディア3が挿入されると、メディア3は、同軸状態で積層されてメディア供給用スタッカー4に収容される。この状態で、スライド板4aを筐体2内へ戻すと、メディア3の収容や補充が完了する。
【0029】
メディア排出用スタッカー7は、メディア供給用スタッカー4と同様に、前方に水平に引き出し可能なスライド板7aと、このスライド板7aの上面に垂直に配置されている左右一対の円弧状の枠板7b、7cとを備えている。データ書き込み済みのメディア3やレーベル印刷済みのメディア3はメディア搬送機構8によって円弧状の枠板7b、7cの間に上方から挿入され、同軸状態に積層されてメディア排出用スタッカー7に保管される。開閉扉12を開けてスライド板7aを手前に引き出すことにより、メディア排出用スタッカー7に保管されているメディア3を一括して取り出すことができる。
【0030】
メディア搬送機構8は、メディア3を1枚ずつ筐体2内の各部分に搬送するものであり、メディア3のレーベル面3aの一部分を外周側から中心に延びる帯状に覆った状態で、このメディア3の中心部分を把持する搬送アーム18を備えている。搬送アーム18は、たとえば、メディア供給用スタッカー4に積層されて収容されるメディア3のうちの一番上のメディア3である最上部メディア3Aを順次、把持して取り出し、所定の位置へ搬送する。また、メディア搬送機構8は、シャーシ19と、シャーシ19の上下の水平支持板部分の間に垂直に架け渡されている垂直ガイド軸20とを備えている。搬送アーム18は、垂直ガイド軸20に取り付けられており、垂直ガイド軸20に沿って昇降可能であるとともに、垂直ガイド軸20を中心に左右へ旋回可能となっている。
【0031】
図3に示すように、メディア搬送機構8は、搬送アーム18を昇降させるためのモーター21を備えている。モーター21は、ステッピングモーターである。モーター21の回転は、歯車列22を介してシャーシ19の上端近傍位置に配置されている駆動側プーリー23に伝達される。シャーシ19の下端近傍位置には、従動側プーリー24が配置されており、駆動側プーリー23と従動側プーリー24との間にはタイミングベルト25が架け渡されている。タイミングベルト25の左右のベルト部分の一方には、搬送アーム18の後端部分が固定されている。したがって、モーター21を駆動すると、タイミングベルト25が上下方向に移動し、タイミングベルト25に取り付けられている搬送アーム18が垂直ガイド軸20に沿って昇降する。
【0032】
また、メディア搬送機構8は、搬送アーム18を旋回させるためのモーター26を備えており、モーター26の回転は、歯車列27を介して扇形の最終段歯車28に伝達される。扇形の最終段歯車28は、垂直ガイド軸20を中心として左右に旋回可能である。最終段歯車28には、搬送アーム18の昇降機構の構成部品が組み付けられているシャーシ19が搭載されている。モーター26を駆動すると、最終段歯車28が左右に旋回するので、最終段歯車28に搭載されているシャーシ19が最終段歯車28と一体となって垂直ガイド軸20を中心として左右に旋回する。その結果、シャーシ19に搭載されている昇降機構によって保持されている搬送アーム18が垂直ガイド軸20を中心として左右に旋回する。
【0033】
図2に示すように、メディア供給用スタッカー4およびメディア排出用スタッカー7の一対の枠板4b、4cおよび枠板7b、7cの間には、搬送アーム18が昇降可能な隙間が形成されている。また、上下方向において、メディア供給用スタッカー4とメディア排出用スタッカー7との間には、搬送アーム18が水平に旋回して、メディア排出用スタッカー7の真上まで移動できるように、空間が形成されている。さらに、メディア供給用スタッカー4の上方から搬送アーム18を水平に旋回させると、メディア受け渡し位置にあるメディアドライブ5のメディアトレイ5aに搬送アーム18がアクセス可能となっている。また、上側のメディアトレイ5aをメディアドライブ5に押し込んだ後に搬送アーム18を下降させると、メディア受け渡し位置にあるレーベルプリンター6のメディアトレイ6aに搬送アーム18がアクセス可能となっている。さらに、上下のメディアトレイ5a、6aをメディアドライブ5およびレーベルプリンター6に押し込んだ後に搬送アーム18を下降させると、メディア排出口14に搬送アーム18がアクセス可能となっている。このように、搬送アーム18の昇降および左右への旋回の組み合わせ動作によって、メディア3を各部分に搬送することが可能である。
【0034】
(搬送アームの構成)
図4は、搬送アーム18を下側から示す斜視図である。図5は、分離機構32を上側から示す斜視図である。図6は、キックレバー39の動作の説明図である。図7は、メディア検出機構34の平面図である。図8は、メディア検出機構34の断面図であり、(A)はメディア3を検出していない状態を示す図、(B)はメディア3を検出している状態を示す図である。図9は、搬送アーム18によって最上部メディア3Aと一緒に直下メディア3Bが持ち上げられたときの状態を示す図である。図10は、メディア搬送機構8の制御部50の、メディア3の搬送制御に関連する構成およびその周辺機器を示すブロック図である。
【0035】
搬送アーム18には、メディア3の中心孔3bに挿入されるメディアガイド30と、メディア3を把持する把持機構31とが搭載されている。上述のように、搬送アーム18は、メディア供給用スタッカー4に積層されて収容されるメディア3のうちの一番上のメディア3である最上部メディア3Aを順次、把持して取り出し、所定の位置へ搬送する。そのため、搬送アーム18には、最上部メディア3Aに吸着された最上部メディア3Aの直下のメディア3である直下メディア3B(図9参照)を最上部メディア3Aから分離する分離機構32が搭載されている。また、搬送アーム18には、メディア供給用スタッカー4に収容された最上部メディア3Aと搬送アーム18の先端側とが上下方向において所定の距離まで近づいたことを検出するためのメディア検出機構34が搭載されている。把持機構31、分離機構32およびメディア検出機構34の一部は、扁平な略直方体状に形成されるケース体33の中に収容されている。
【0036】
メディアガイド30は、搬送アーム18の先端側に配置されている。また、メディアガイド30は、搬送アーム18の下面側に配置されている。メディアガイド30の中心部分は、メディア3の調心機能を有するガイド部35となっている。ガイド部35は、下方向に向かうにしたがって外径が小さくなる略円錐台状に形成されている。ガイド部35の外周側には、3個の突起36が同一円上に等角度ピッチで配置されている。3個の突起36の外接円の径は、メディア3の中心孔3bの内径よりもわずかに小さくなっている。把持機構31によってメディア3が把持される際には、ガイド部35によって、メディア3の中心孔3bが3個の突起36の外周側へ案内される。
【0037】
把持機構31は、メディア3の中心孔3bの側面に当接してメディア3を把持する円柱状の3個の把持爪(把持部材)38を備えている。3個の把持爪38は、ガイド部35に形成される切欠き部の中に配置されるとともに、同一円上に等角度ピッチで配置されている。3個の把持爪38は、ソレノイド等の駆動源を有する把持爪38の駆動機構に連結されており、連動して径方向へ移動可能となっている。メディア3の中心孔3bが突起36の外周側に配置されている状態で、3個の把持爪38が径方向外側へ移動すると、メディア3の中心孔3bの側面に把持爪38が当接して、メディア3が把持爪38に把持される。また、把持爪38がメディア3を把持している状態で、把持爪38が径方向内側へ移動すると、メディア3が把持爪38から外れる。把持爪38は、メディア3を把持するときに、図9に示すように、直下メディア3Bが吸着された最上部メディア3Aの中心孔3bの側面には当接するが、直下メディア3Bの中心孔3bの側面には当接しないように形成され、配置されている。
【0038】
分離機構32は、中間部39aがケース体33に回動可能に支持されるキックレバー(分離部材)39を備えている。キックレバー39の先端側は、下方に屈曲された後に側方に屈曲された作用片39bとなっている。作用片39bは、ガイド部35に形成される切欠き部の中に配置されている。キックレバー39の基端側には、揺動機構40が設けられている。揺動機構40は、図5に示すように、複合クラッチ歯車41と、鉛直複合伝達歯車42と、水平複合伝達歯車43と、ラック44とを備えている。複合クラッチ歯車41および鉛直複合伝達歯車42は、上下方向を軸方向とする回転が可能となるようにケース体33に支持されている。水平複合伝達歯車43は、水平方向を軸方向とする回転が可能となるようにケース体33に支持されている。ラック44は、シャーシ19に、垂直ガイド軸20と平行に支持されている。
【0039】
ラック44には、水平複合伝達歯車43のピニオン43aが噛み合っている。水平複合伝達歯車43には、ねじ歯車43bが設けられている。ねじ歯車43bは、鉛直複合伝達歯車42のねじ歯車42aに噛み合っている。鉛直複合伝達歯車42には、平歯車42bが設けられている。平歯車42bは、複合クラッチ歯車41の平歯車41aに噛み合っている。複合クラッチ歯車41には、平歯車41aに対して相対回転可能な間欠歯車41bが設けられている。間欠歯車41bは、周面の一部に複数の歯からなる歯列41cを備えている。歯列41cは、鉛直複合伝達歯車42の平歯車42bと噛み合い可能となっている。また、間欠歯車41bの上面には、カム穴41dが形成されている。カム穴41dには、キックレバー39の基端近傍で下方へ突出するカムピン(図示省略)が摺動可能に配置されている。平歯車41aと間欠歯車41bとの間には、クラッチ機構が設けられており、複合クラッチ歯車41の回転範囲内の所定の範囲では、平歯車41aと間欠歯車41bとが供回りし、その他の範囲では、平歯車41aに対して間欠歯車41bが空回りする。
【0040】
メディア供給用スタッカー4に収容された最上部メディア3Aを搬送アーム18が把持して持ち上げる前には、図6(A)に示すように、キックレバー39の作用片39bは、メディア3の中心孔3bの側面よりも径方向内側に配置されている。この状態で、搬送アーム18が上昇を開始すると、複合クラッチ歯車41の平歯車41aとともに間欠歯車41bが回転を開始する。間欠歯車41bが平歯車41aと一緒に回転すると、キックレバー39が中間部39aを中心に回動して、作用片39bが矢印Vの方向へ移動する。搬送アーム18が所定量上昇して、間欠歯車41bが所定量回転すると、図6(B)に示すように、作用片39bの先端部分が、把持爪38によって把持されているメディア3の中心孔3bの側面よりも径方向外側に移動する。また、この状態で、搬送アーム18が下降すると、平歯車41aとともに間欠歯車41bが回転する。搬送アーム18が所定量下降して、間欠歯車41bが所定量回転すると、キックレバー39が中間部39aを中心に回動して、図6(A)に示すように、作用片39bの先端部分がメディア3の中心孔3bの側面よりも径方向内側に移動する。
【0041】
このように、搬送アーム18の昇降に連動して、キックレバー39が中間部39aを中心に回動し、キックレバー39の作用片39bがメディア3の径方向へ移動する。なお、搬送アーム18が上昇する際には、作用片39bの先端部分がメディア3の径方向外側に向かって所定量移動すると、その後、平歯車41aに対して間欠歯車41bが空回りして、キックレバー39への動力の伝達が遮断される。また、搬送アーム18が下降する際には、作用片39bの先端部分がメディア3の径方向内側に向かって所定量移動すると、その後、平歯車41aに対して間欠歯車41bが空回りして、キックレバー39への動力の伝達が遮断される。
【0042】
作用片39bは、図9に示すように、最上部メディア3Aの中心孔3bの側面には当接しないが、最上部メディア3Aに吸着された直下メディア3Bの中心孔3bの側面に当接する位置に配置されている。そのため、把持爪38が把持する最上部メディア3Aに直下メディア3Bが吸着された状態で、搬送アーム18が上昇し、作用片39bがV方向へ移動すると、図6(B)に示すように、作用片39bが直下メディア3Bの中心孔3bの側面に当接して、最上部メディア3Aに対して直下メディア3Bを矢印Vの方向へ移動させる。直下メディア3Bが矢印Vの方向へ移動すると、最上部メディア3Aに吸着された直下メディア3Bは、最上部メディア3Aから分離して、落下する。
【0043】
メディア検出機構34は、図7、図8に示すように、検出器(メディア検出器)46と、検出レバー47とを備えている。検出器46は、たとえば、所定の隙間を介して対向配置される発光素子と受光素子とを備える光学式のセンサである。検出レバー47の基端側は、水平方向を軸方向とする回動が可能となるようにケース体33に支持されている。検出レバー47の先端部47aは、下方に屈曲しており、図4に示すように、ケース体33の底面に形成される開口部33aからケース体33の下面側へ突出している。検出レバー47の側面には、図7に示すように、検出器46の発光素子と受光素子との間を遮る遮光部47bが形成されている。
【0044】
メディア検出機構34では、搬送アーム18の下側の所定の範囲内にメディア3がないときには、図8(A)に示すように、検出レバー47の先端部47aがケース体33の下面側へ大きく突出している。また、このときには、検出器46の発光素子と受光素子との間を遮光部47bが遮っている。一方、搬送アーム18が下降して、メディア供給用スタッカー4に収容される最上部メディア3Aに検出レバー47の先端部47aの先端が当接すると、図8(B)に示すように、検出レバー47がその基端側を中心に回動して、検出器46の発光素子と受光素子との間から遮光部47bが外れる。このように、検出器46の発光素子と受光素子との間から遮光部47bが外れることで、メディア供給用スタッカー4に収容された最上部メディア3Aと搬送アーム18の先端側とが上下方向において所定の距離まで近づいたことが検出される。また、搬送アーム18に最上部メディア3Aが把持されている間は、検出器46の発光素子と受光素子との間から遮光部47bが外れているため、メディア検出機構34によって、搬送アーム18に最上部メディア3Aが把持されていることも検出される。
【0045】
なお、図10に示すように、メディア搬送機構8の制御部50は、モーター21を制御するモーター制御部51を備えており、検出器46は、モーター制御部51に接続されている。
【0046】
(メディア搬送機構の制御)
図11は、メディア3の積層状態を説明するための説明図である。上述のように、搬送アーム18には、分離機構32が搭載されているため、搬送アーム18に把持されて持ち上げられる最上部メディア3Aに吸着された直下メディア3Bを最上部メディア3Aから分離して落下させることが可能である。ここで、メディア3がCDやDVD(第1のメディア)である場合には、図11(A)に示すように、メディア3のレーベル面3aの反対側となる記録面側の中心孔3bの周りに、記録面を保護するための円環状の突起であるスタックリング3cが形成されている。一方、メディア3がBD(第2のメディア)である場合には、図11(B)に示すように、メディア3の記録面側にスタックリングが形成されておらず、メディア3の記録面側は平面状になっている。あるいは、メディア3がBDである場合には、メディア3の記録面側に、スタックリング3cよりも低いスタックリングが形成されている。そのため、メディア供給用スタッカー4にメディア3としてBDが積層されて収容されている場合、BDとその直下のメディア3との間に生じる吸着力が大きくなる。
【0047】
本形態のメディア搬送機構8では、メディア3間の吸着力が大きい場合であっても、最上部メディア3Aに直下メディア3Bが吸着されて、最上部メディア3Aと一緒に直下メディア3Bが搬送アーム18で持ち上げられたときに、最上部メディア3Aから直下メディア3Bを分離することができるように、モーター制御部51が、モーター21の回転速度を制御して、搬送アーム18の上昇速度とキックレバー39の作用片39bの移動速度とを制御する。具体的には、以下のように、モーター制御部51が搬送アーム18の上昇速度とキックレバー39の作用片39bの移動速度とを制御する。
【0048】
まず、最上部メディア3AがBDであって、最上部メディア3Aに直下メディア3Bが吸着されて、最上部メディア3Aと一緒に直下メディア3Bが搬送アーム18で持ち上げられたとしても、最上部メディア3Aと直下メディア3Bとが一緒に持ち上げられてからの時間の経過に伴って、直下メディア3Bに作用する自重の影響で、最上部メディア3Aと直下メディア3Bとの間に空気が入り込みやすくなり、最上部メディア3Aと直下メディア3Bとの吸着力が低下していく。そこで、本形態では、特定条件下において、モーター21の回転速度を下げ、搬送アーム18の上昇速度と作用片39bの移動速度とを遅くして、最上部メディア3Aを把持した搬送アーム18の上昇開始からキックレバー39による直下メディア3Bの分離動作が行われるまでの時間を長くすることで、分離動作が行われる際の最上部メディア3Aと直下メディア3Bとの吸着力を低下させて、最上部メディア3Aから直下メディア3Bを分離している。
【0049】
具体的には、モーター21の回転速度は、2段階に切替可能となっており、モーター制御部51は、特定条件以外の条件下でモーター21が通常の回転速度で回転し、かつ、特定条件下でモーター21が通常の回転速度よりも遅い回転速度で回転するように、モーター21の回転速度を切り替えて、搬送アーム18の上昇速度および作用片39bの移動速度を切り替える。すなわち、特定条件以外の条件下での搬送アーム18の上昇速度を第1の速度とし、特定条件以外の条件下での作用片39bの移動速度を第3の速度とすると、モーター制御部51は、特定条件下で、モーター21の回転速度を切り替えて、搬送アーム18の上昇速度を第1の速度から第1の速度よりも遅い第2の速度に切り替えるとともに、作用片39bの移動速度を第3の速度から第3の速度よりも遅い第4の速度に切り替える。
【0050】
特定条件は、たとえば、メディア供給用スタッカー4に収容される全てのメディア3がBDであって、かつ、メディア供給用スタッカー4に収容されるメディア3の枚数が2枚となっている場合である。メディア供給用スタッカー4に収容される全てのメディア3がBDであって、かつ、メディア供給用スタッカー4に収容されるメディア3の枚数が3枚以上である場合、メディア3間に吸着力が生じると、搬送アーム18で最上部メディア3Aを持ち上げる際には、メディア供給用スタッカー4に収容される最上部メディア3Aと直下メディア3Bとの間に直下メディア3Bよりも下の3枚目以降のメディア3の重量が作用するため、搬送アーム18で最上部メディア3Aを持ち上げる際に最上部メディア3Aから直下メディア3Bが分離しやすい。これに対して、メディア供給用スタッカー4に収容されるメディア3の枚数が2枚である場合、搬送アーム18で最上部メディア3Aを持ち上げる際に、この2枚のメディア3である最上部メディア3Aと直下メディア3Bとの間に作用するのは直下メディア3Bの自重のみであるため、最上部メディア3Aと一緒に直下メディア3Bが搬送アーム18によって持ち上げられやすくなり、また、2枚のメディア3が搬送アーム18によって持ち上げられると、最上部メディア3Aから直下メディア3Bが分離しにくい。したがって、最上部メディア3Aから直下メディア3Bを分離しやすくするため、この条件下において、モーター制御部51は、モーター21の回転速度を切り替えて、搬送アーム18の上昇速度および作用片39bの移動速度を遅くする。
【0051】
なお、メディア供給用スタッカー4に収容されるメディア3の枚数が2枚となっているか否かは、検出器46での検出結果と、ステッピングモーターであるモーター21のステップ数とに基づいて、たとえば、モーター制御部51が検出する。すなわち、検出器46の発光素子と受光素子との間から検出レバー47の遮光部47bが外れたときの、モーター21の、所定の基準位置からステップ数に基づいて、メディア供給用スタッカー4に収容されるメディア3の枚数が2枚となっているか否かが検出される。また、メディア供給用スタッカー4に収容されるメディア3の枚数が2枚となっていることが検出されると、モーター制御部51は、モーター21の回転速度を自動で切り替える。
【0052】
また、特定条件は、たとえば、メディア供給用スタッカー4に収容されるメディア3の中にCDやDVDとBDとが混在している場合であって、かつ、図11(C)に示すように、メディア供給用スタッカー4に収容される最上部メディア3AがBDとなっており、また、直下メディア3BがCDまたはDVDとなっている場合である。メディア供給用スタッカー4に収容されるメディアの枚数が3枚以上であっても、この場合には、上から2枚目の直下メディア3Bとその下(上から3枚目)のメディア3との間の隙間が大きくなるため、直下メディア3Bとその下のメディア3との間の吸着力が弱くなり、搬送アーム18で最上部メディア3Aを持ち上げる際に、この2枚のメディア3は分離しやすくなる。一方で、最上部メディア3Aと直下メディア3Bとは密着して、その間に生じる吸着力が大きくなる。そのため、この場合には、メディア供給用スタッカー4に収容されるメディアの枚数が3枚以上であっても、搬送アーム18で最上部メディア3Aを持ち上げる際に、最上部メディア3Aと一緒に直下メディア3Bが搬送アーム18で持ち上げられやすくなり、また、2枚のメディア3が搬送アーム18によって持ち上げられると、最上部メディア3Aから直下メディア3Bが分離しにくい。したがって、最上部メディア3Aから直下メディア3Bを分離しやすくするため、この条件下において、モーター制御部51は、モーター21の回転速度を切り替えて、搬送アーム18の上昇速度および作用片39bの移動速度を遅くする。
【0053】
なお、メディア供給用スタッカー4に収容される最上部メディア3AがBDとなっており、かつ、直下メディア3BがCDまたはDVDとなっているか否かは、たとえば、メディア処理装置1のオペレーターによって確認される。また、オペレーターによって入力された情報に基づいて、モーター制御部51は、モーター21の回転速度を切り替える。
【0054】
(本実施の形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、最上部メディア3Aから直下メディア3Bが分離しにくい特定条件下において、モーター制御部51は、モーター21の回転速度を下げ、搬送アーム18の上昇速度と作用片39bの移動速度とを遅くして、最上部メディア3Aを把持した搬送アーム18の上昇開始からキックレバー39による直下メディア3Bの分離動作が行われるまでの時間を長くしている。そのため、最上部メディア3Aと一緒に直下メディア3Bが搬送アーム18で持ち上げられた場合であっても、キックレバー39による分離動作が行われる際の最上部メディア3Aと直下メディア3Bとの吸着力を低下させることができる。
【0055】
したがって、キックレバー39による分離動作が行われる前に、最上部メディア3Aに吸着された直下メディア3Bを落下させることが可能になり、また、キックレバー39による分離動作が行われる前に最上部メディア3Aに吸着された直下メディア3Bを落下させることができなくても、キックレバー39による分離動作によって、最上部メディア3Aに吸着された直下メディア3Bを最上部メディア3Aから分離して落下させることが可能になる。その結果、最上部メディア3Aにスタックリングが形成されていなくて、あるいは、最上部メディア3Aに形成されるスタックリングの高さが低くて、積層されたメディア3間に生じる吸着力が大きい場合であっても、最上部メディア3Aと一緒に直下メディア3Bが搬送アーム18で持ち上げられたときに、把持爪38によって最上部メディア3Aを把持しつつ、最上部メディア3Aから直下メディア3Bを分離することが可能になる。そのため、本形態では、積層されたメディア3間に生じる吸着力が大きい場合であっても、メディア3を1枚のみ確実に搬送することが可能になる。
【0056】
(他の実施の形態)
上述した形態では、モーター21の回転速度が切り替えられる特定条件は、メディア供給用スタッカー4に収容されるメディア3の枚数が2枚となっている場合や、メディア供給用スタッカー4に収容される最上部メディア3AがBDとなっており、かつ、直下メディア3BがCDまたはDVDとなっている場合であるが、モーター21の回転速度が切り替えられる特定条件は、たとえば、搬送アーム18によって持ち上げられるメディア3の重さが2枚以上のメディア3の重さとなっている場合であっても良い。この場合には、搬送アーム18によって、最上部メディア3Aと一緒に直下メディア3Bが持ち上げられているが、搬送アーム18の上昇速度およびキックレバー39の作用片39bの移動速度を遅くして、最上部メディア3Aから直下メディア3Bを分離することが可能になる。
【0057】
なお、この場合には、搬送アーム18によって持ち上げられるメディア3の重さが2枚以上のメディア3の重さとなっているか否かは、モーター21の電流値に基づいて、たとえば、モーター制御部51が検出する。また、搬送アーム18によって持ち上げられるメディア3の重さが2枚以上のメディア3の重さとなっていることが検出されると、モーター制御部51は、モーター21の回転数を自動で切り替える。
【0058】
また、モーター21の回転速度が切り替えられる特定条件は、たとえば、メディア処理装置1が夜間に運転されている場合であっても良いし、メディア処理装置1が無人で運転されている場合であっても良い。メディア処理装置1が夜間に運転される場合には、メディア処理装置1のオペレーターがメディア搬送機構8の近くにいない可能性が高い。また、メディア処理装置1が無人で運転される場合には、オペレーターはメディア搬送機構8の近くにいない。そのため、これらの場合には、最上部メディア3Aと直下メディア3Bとの間の吸着力が大きくて、最上部メディア3Aから直下メディア3Bを分離できずに最上部メディア3Aが直下メディア3Bと一緒に搬送アーム18から落下すると、メディア搬送機構8の運転がそのまま停止してしまったり、メディア搬送機構8を損傷させたりするおそれがあるが、メディア処理装置1が夜間に運転されている場合や無人で運転されている場合を特定条件として、この条件下で、モーター21の回転速度を切り替えれば、最上部メディア3Aと直下メディア3Bとの間の吸着力が大きい場合であっても、最上部メディア3Aと一緒に直下メディア3Bが搬送アーム18で持ち上げられたときに、最上部メディア3Aから直下メディア3Bを分離することが可能になり、その結果、これらの不具合を解消することが可能になる。なお、メディア処理装置1の夜間運転時や無人運転時には、オペレーターの入力操作に基づいて、モーター制御部51は、モーター21の回転速度を切り替える。
【0059】
上述した形態では、モーター21が回転すると、搬送アーム18が昇降するとともに、作用片39bが移動するが、搬送アーム18を上昇させる駆動源と、作用片39bを移動させる駆動源とが別個に設けられても良い。この場合には、特定条件下で、搬送アーム18の上昇速度を変えずに、作用片39bの移動速度を遅くしても良い。また、この場合には、搬送アーム18が所定の高さまで上昇したときにキックレバー39による分離動作が行われるように構成されているのであれば、特定条件下で、作用片39bの移動速度を変えずに、搬送アーム18の上昇速度を遅くしても良い。また、この場合には、特定条件下で、搬送アーム18の上昇速度を遅くするとともに、作用片39bの移動速度を遅くしても良い。このようにしても、最上部メディア3Aを把持した搬送アーム18の上昇開始からキックレバー39による直下メディア3Bの分離動作が行われるまでの時間を長くすることが可能になる。
【符号の説明】
【0060】
1・・・メディア処理装置、3・・・メディア、3A・・・最上部メディア、3B・・・直下メディア、3b・・・中心孔、3c・・・スタックリング(第1のスタックリング)、4・・・メディア供給用スタッカー(収容部)、8・・・メディア搬送機構、18・・・搬送アーム、21・・・モーター(ステッピングモーター)、38・・・把持爪(把持部材)、39・・・キックレバー(分離部材)、46・・・検出器(メディア検出器)、50・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能な搬送アームを有し、積層されたメディアのうちの一番上の前記メディアである最上部メディアを前記搬送アームで把持して搬送するメディア搬送機構であって、
前記搬送アームに搭載され、前記最上部メディアの中心孔の側面に当接して前記最上部メディアを把持する把持部材と、前記搬送アームに搭載され、前記把持部材によって把持される前記最上部メディアに吸着された前記最上部メディアの直下の前記メディアである直下メディアを前記最上部メディアに対して移動させて前記最上部メディアから分離する分離部材と、前記メディア搬送機構を制御する制御部と、を有し、
前記搬送アームの上昇速度は、第1の速度と、前記第1の速度よりも遅い第2の速度とに切替可能となっており、
前記直下メディアを前記最上部メディアから分離する方向へ移動するときの前記分離部材の移動速度は、第3の速度と、前記第3の速度よりも遅い第4の速度とに切替可能となっており、
前記制御部は、特定条件下において、前記搬送アームの上昇速度を前記第1の速度から前記第2の速度に切り替えること、および、前記分離部材の移動速度を前記第3の速度から前記第4の速度に切り替えること、の少なくともいずれか一方を行うことを特徴とするメディア搬送機構。
【請求項2】
前記搬送アームの昇降と、前記分離部材の移動とが連動しており、
前記搬送アームの上昇速度が前記第1の速度から前記第2の速度に切り替わると、前記分離部材の移動速度が前記第3の速度から前記第4の速度に切り替わることを特徴とする請求項1に記載のメディア搬送機構。
【請求項3】
前記特定条件は、搬送前の前記メディアが積層されて収容される収容部内の前記メディアの枚数が2枚となっている場合であることを特徴とする請求項1または2に記載のメディア搬送機構。
【請求項4】
前記搬送アームを昇降させるステッピングモーターと、前記搬送アームに搭載され、前記収容部に収容された前記最上部メディアと前記搬送アームとの距離が所定の距離まで近づいたことを検出するためのメディア検出器と、を有し、
前記制御部は、前記メディア検出器の検出結果と、前記ステッピングモーターのステップ数とに基づいて、前記収容部に収容される前記メディアの枚数が2枚となっているか否かを検出することを特徴とする請求項3に記載のメディア搬送機構。
【請求項5】
前記特定条件は、前記搬送アームによって持ち上げられる前記メディアの重さが2枚以上の前記メディアの重さとなっている場合であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のメディア搬送機構。
【請求項6】
前記搬送アームを昇降させるモーターを有し、
前記制御部は、前記モーターの電流値に基づいて、前記搬送アームによって持ち上げられる前記メディアの重さが2枚以上の前記メディアの重さとなっているか否かを検出することを特徴とする請求項5に記載のメディア搬送機構。
【請求項7】
前記メディアには、前記メディアの記録面を保護するための円形状の突起である第1のスタックリングが前記記録面側に形成される第1のメディアと、前記第1のスタックリングよりも低い円形状の突起である第2のスタックリングが前記記録面側に形成される、または、円形状の突起が形成されずに前記記録面側が平面状となっている第2のメディアとがあり、
前記メディアが収容される収容部には、前記記録面が下側を向いた状態で、前記メディアが積層され、
前記特定条件は、前記収容部に収容される前記最上部メディアが前記第2のメディアとなっており、前記直下メディアが前記第1のメディアとなっている場合であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のメディア搬送機構。
【請求項8】
前記特定条件は、前記メディア搬送機構が夜間に運転されている場合、または、前記メディア搬送機構が無人で運転されている場合であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のメディア搬送機構。
【請求項9】
昇降可能な搬送アームを有し、積層されたメディアのうちの一番上の前記メディアである最上部メディアを前記搬送アームで把持して搬送するメディア搬送機構の制御方法であって、
前記メディア搬送機構は、前記搬送アームに搭載され、前記最上部メディアの中心孔の側面に当接して前記最上部メディアを把持する把持部材と、前記搬送アームに搭載され、前記把持部材によって把持される前記最上部メディアに吸着された前記最上部メディアの直下の前記メディアである直下メディアを前記最上部メディアに対して移動させて前記最上部メディアから分離する分離部材と、を有し、
前記搬送アームの上昇速度は、第1の速度と、前記第1の速度よりも遅い第2の速度とに切替可能となっており、
前記直下メディアを前記最上部メディアから分離する方向へ移動するときの前記分離部材の移動速度は、第3の速度と、前記第3の速度よりも遅い第4の速度とに切替可能となっており、
特定条件下において、前記搬送アームの上昇速度を前記第1の速度から前記第2の速度に切り替えること、および、前記分離部材の移動速度を前記第3の速度から前記第4の速度に切り替えること、の少なくともいずれか一方を行うことを特徴とするメディア搬送機構の制御方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載のメディア搬送機構、または、請求項9に記載のメディア搬送機構の制御方法で制御されるメディア搬送機構を有することを特徴とするメディア処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−89259(P2013−89259A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225607(P2011−225607)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)