説明

メドロゲストンの製造

【課題】3β,5α,6β−トリヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−20−オン・モノメタノラートの製造方法。
【解決手段】β,5α,6β−トリヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−20−オンの溶液から有機溶媒をメタノールで置き換えることからなる3β,5α,6β−トリヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−20−オン・モノメタノラートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メドロゲストン(6,17α−ジメチルプレグナ−4,6−ジエン−3,20−ジオン)の新規な製造方法およびそれに用いる新規な中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
メドロゲストンは、(不規則な月経周期、続発無月経、希発月経などから)正常な月経周期を誘導・回復させたり、規則的な子宮内膜の脱落を確実にしたり、機能不全性子宮出血(月経過多、不正子宮出血など)を停止・調節したりするホルモン置換療法に有用な公知のプロゲストゲンである。メドロゲストンは、単独で、ならびに、エストロゲンによる連続治療に関連して用いられてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、メドロゲストンは、臭化メチルマグネシウムと3β−アセトキシ−5α−ヒドロキシ−17α−メチル−17β−カルボメトキシアンドロスタン−6−オンとのグリニャール反応で、3β,5α,6β−トリヒドロキシ−6α,17α−ジメチル−17β−カルボメトキシアンドロスタンを得ることによって製造される。さらに臭化メチルマグネシウムと反応させると、対応するプレグナン−20−オンが得られる。こうして製造されたプレグナン−20−オンは、8Nクロム酸で酸化すると、5α,6β−ジヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−3,20−ジオンを与える。これは、酸触媒下で脱水して、メドロゲストンに変換される(米国特許第3,170,936号、実施例3〜6)。この方法は、生成物の約5%に達する3種類の不純物の生成をもたらす。これらの不純物は、メドロゲストンから除去することができるが、多少の困難を伴い、しかも、かなりの費用がかかる。したがって、メドロゲストン製造の間に、これら副生成物の生成を回避することは、この貴重な医薬化合物の著しく改善された製造方法を与えることになる。
【0004】
現在、メドロゲストン製造の間に形成される3種類の主要な夾雑物は:(1)6,17α−ジメチル−17β−イソプロペニルアンドロスタ−4,6−ジエン−3−オン(17β−メトキシカルボニル基をメチル化して、17β−1−ヒドロキシ−1−メチルエチル置換基を与え、これを最後の製造工程に用いる通常の酸触媒法で5α−および6β−ヒドロキシル基と共に脱水することによって生成する);6−メチレン−17α−メチルプレグナ−4−エン−3,20−ジオンおよび(3)6,17α−ジメチルプレグナ−6,8(14)−ジエン−3,20−ジオンであると考えられ、その各々は、5α,6β−ジヒドロキシ中間体が酸触媒下で脱水する際の転移生成物として形成される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、6,17α−ジメチルプレグナ−4,6−ジエン−3,20−ジオンの製造方法が提供される。かかる製造方法は以下の工程からなる:
【0006】
(a)3β,5α−ジヒドロキシ−17α−メチル−17β−カルボメトキシアンドロスタン−6−オンとハロゲン化メチルマグネシウムとのグリニャール反応生成物の溶液から、メタノールによる溶媒置換によって、3β,5α,6β−トリヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−20−オン・モノメタノラートを単離する;
【0007】
(b)3β,5α,6β−トリヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−20−オン・モノメタノラートを酸化して、5α,6β−ジヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−3,20−ジオンを得る;
【0008】
(c)5α,6β−ジヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−3,20−ジオンをアルカリ性条件下で脱水して、6β−ヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナ−4−エン−3,20−ジオンを得る;
(d)約65℃以下の反応・処理温度で、6β−ヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナ−4−エン−3,20−ジオンを三フッ化ホウ素・エーテル和物で脱水する;
【0009】
(e)工程(d)の反応生成物の混合物中に存在するジエン副生成物の6−メチレン−17α−メチルプレグナ−4−エン−3,20−ジオンから、無水マレイン酸との反応によって、6α,17α−ジメチルプレグナ−4,6−ジエン−3,20−ジオンを単離して、
【0010】
【化1】

【0011】
を得、このディールス・アルダー付加物を塩基の存在下で加水分解して、ジカルボン酸塩:
【0012】
【化2】

【0013】
を形成し、この塩を、水層の分離によって、6,17α−ジメチルプレグナ−4,6−ジエン−3,20−ジオンを含む非水性溶媒から分離する。
【0014】
ここでは、3β,5α−ジヒドロキシ−17α−メチル−17β−カルボメトキシアンドロスタン−6−オンのメチル化で得られる反応溶液に由来の3β,5α,6β−トリヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−20−オンをグリニャール条件下に付し、こうして形成された結晶性の生成物を乾燥させることによって、メチル化された不純物を含まない安定なモノメタノール溶媒和物が得られることが見い出された。さらに、アルカリ性条件下における5α,6β−ジヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−3,20−ジオンの脱水をメタノールの存在下で注意深く調節すると、新規な中間体である6β−ヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナ−4−エン−3,20−ジオンが収率よく得られる。この中間体は、5α,6β−ジヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−3,20−ジオンとは異なり、低級アルカノール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)から容易に結晶化して、純粋な中間体生成物を与える。この新規な中間体は、さらに精製しなくても、不純物が非常に少なく、そのまま脱水を受けてメドロゲストンに変換されるほど充分に純粋である。6β−ヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナ−4−エン−3,20−ジオンからメドロゲストンへの変換を、SOCl/ピリジン、POCl/ピリジンまたはMsCl/EtN/DMAP/CHClなどのごく普通の試薬ではなく、ルイス酸である三フッ化ホウ素・エーテル和物を用いて実施すると、約65℃以下の反応温度が可能になり、6,17α−ジメチルプレグナ−6,8(14)−ジエン−3,20−ジオンへの異性化がかなり回避される。本発明に従って製造されたメドロゲストンは、同定可能な量の6−メチレン−17α−メチルプレグナ−4−エン−3,20−ジオンを含有しておらず、これはディールス・アルダー付加物を生成する不純物(ジエン)と無水マレイン酸(ジエノフィル)との反応によって容易に除去される。このディールス・アルダー付加物は、次いで、塩基の存在下で加水分解して、二塩基酸塩を与える。この二塩基酸塩は、水性抽出によって所望の生成物から容易に除去される。本発明の方法に従って製造されたメドロゲストンは、99.2%程度のHPLC強度を示すのに対し、全不純物は約0.08%である。こうして、非常に純粋な治療薬が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法によれば、ホルモン置換療法に有用なメドロゲストンが高純度で収率よく得られる。また、本発明の新規な中間体は、平滑筋細胞の増殖を阻害する活性を有し、再発狭窄症やアテローム性動脈硬化症の治療に有用である。
【0016】
実施例
本発明の新規な方法を以下の実施例によって詳しく説明する。
【0017】
実施例1
3β,5α,6β−トリヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−20−オン
窒素雰囲気下で0〜5℃に冷却した、テトラヒドロフラン中における塩化メチルマグネシウムの3M溶液(1.777L、5.33モル)と、移し替え時のすすぎ液として用いたテトラヒドロフラン50mLとに、テトラヒドロフラン(1.52L)中における3β,5α−ジヒドロキシ−17α−メチル−17β−カルボメトキシアンドロスタン−6−オン(200g、0.528モル)のスラリーを、温度を25℃以下に維持しながら、30分間かけて添加した。スラリーの添加は、テトラヒドロフラン(120mL)のすすぎによって完了した。激しく撹拌した反応混合物の温度を60℃にした。約1時間後、暗色の溶液が粘稠になり、撹拌が困難になった。約2時間後、反応混合物は撹拌可能な灰色のスラリーになり、60℃で合計19時間保持した。この混合物を0〜5℃に冷却し、水(700mL)中における塩化アンモニウム(176.0g)の溶液を、温度を30℃以下に維持しながら、注意深く1時間かけて添加した。得られたスラリーに、水(880mL)を添加し、この混合物を10分間撹拌した。冷却した混合物に、500mLの12N塩酸を、温度を15〜20℃に維持しながら、15分間かけて添加した。この混合物を、次いで、室温(23〜27℃)で1時間撹拌した。得られた清澄な二層を分離し、有機層を80%飽和食塩水(2×480mL)で洗浄した。有機層を80%飽和食塩水(480mL)で3回目洗浄したが、この3回目の洗浄液のpHは、洗浄の間、5%重炭酸ナトリウム溶液でpH7に調節した。得られた有機層および水層の混合物を濾過して、残存している固形物を除去し、これらの層を再び分離した。有機層(3,200mL)を容量1,200mLまで蒸留した。メタノール(2,400L)を滴下して、容量を1,200mLに維持すると共に、大部分のテトラヒドロフラン溶媒を共沸・除去しながら、蒸留を続けた。得られたメタノール中の結晶スラリーは、30分間にわたって30℃に冷却した後、30分間にわたって0〜5℃に冷却した。0〜5℃で45分間後、これらの結晶を濾紙上に採取し、0〜5℃のメタノール(2×200mL)で洗浄した。油真空ポンプによる減圧下、45〜50℃で2時間乾燥させて、3β,5α,6β−トリヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−20−オンを99%純粋で安定なモノメタノラートとして得た。m.p.=235.0〜240.5℃。高速液体クロマトグラフィーによって、この生成物の純度が強度=101.6%であり、不純物=0.82%であることが判明した。
【0018】
実施例2
5α,6β−ジヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−3,20−ジオン
氷/アセトン浴中で0〜5℃に冷却したアセトン(750mL)中における実施例1で製造した化合物(75.0g、0.183モル)の撹拌懸濁液に、温度を10℃以下に維持しながら、ジョーンズ試薬[リーエイジェンツ・フォア・オーガニック・シンセシス(Reagents for Organic Synthesis),ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience),第1巻,142頁,1967年]の2.67M溶液158mL(0.422モル)を、1時間かけて添加した。この添加は、水のすすぎ(8mL)によって完了した。得られた混合物を、クロロホルム−メタノール(100:8)を展開剤(硫酸による炭化で可視化)とするシリカゲルG F254(イー・メルク(E.Merck))プレート上での薄層クロマトグラフィーによって判定して反応が完結するまで(約2時間)、0〜5℃で撹拌した。撹拌した緑色の混合物を、温度を5℃以下に維持しながら、6%w/w水酸化ナトリウム約210mLを滴下することによって、pH2.5に中和した。この混合物を周囲温度で半時間撹拌した。水(565mL)を添加し、この混合物をジクロロメタン(450mLおよび225mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を、酸性にした水[まず、12N HCl 30mLを添加したHO 565mL;次に、HCl 15mLを添加したHO 300mL;最後に、HCl 15mLを添加したHO 300mL]で3回洗浄した。有機層を水(300mL)で洗浄したが、洗浄の間、水層のpHは10%NaHCO溶液でpH7に調節した。このジクロロメタン溶液を、水(300mL)でもう1回洗浄し、洗浄液のpHが中性であることを調べた。この溶液を容量300mLまで蒸留し、濃厚な結晶スラリーを得た。トルエン(150mL)を添加し、容量を450mLにした。この混合物を蒸留し、トルエン(300mL)を滴下することによって、容量を450mLに維持した。トルエンを全部添加した後、容量を300mLに減少させ、撹拌したスラリーを2時間にわたって室温に冷却した。このスラリーを室温で2時間撹拌した後、結晶を濾紙上に採取し、0〜5℃のトルエン(3×55mL)で洗浄した。65℃で18時間乾燥させ、63.70g(理論の92.7%)の5α,6β−ジヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−3,20−ジオンを、融点234.8〜237.2℃の淡黄色の生成物として得た。この生成物は、HPLCによると95.5%純粋であり、6β−ヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナ−4−エン−3,20−ジオンに変換するのに充分に純粋であるとみなした。
【0019】
実施例3
6β−ヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナ−4−エン−3,20−ジオン
実施例2で製造した化合物(620.00g)、メタノール(8.00L)および500mLの5N NaOHの混合物を機械的に撹拌し、窒素雰囲気下で1時間還流(69〜70℃)加熱した。得られた溶液を65℃に冷却し、水(3,250mL)を35分間かけて添加しながら、その温度で維持した。得られた結晶スラリーを1時間にわたって20℃に冷却した。白色の結晶を濾紙上に採取し、3:7メタノール−水(3×1L)および水(2×1L)で順次洗浄した。減圧下、80〜90℃で42時間乾燥させて、514.98g(理論の87.2%)の粗生成物を得た。粗生成物(314.62g)を2−プロパノールから再結晶して、292.83g(理論の93.1%)の純粋な表題化合物を得た。融点=235〜237.8℃、[α]=26.4°(c=1,CHCl);M(DEI)358,λmax(KBr)1668,1691cm−1,pmr(DMSO−d)δ5.78(C−4におけるビニルプロトン)
元素分析の結果(C2334
計算値:C,77.05;H,9.56
実測値:C,76.84;H,9.49
【0020】
実施例4
6,17α−ジメチルプレグナ−4,6−ジエン−3,20−ジオン(メドロゲストン)
塩化メチレン(650mL)中における実施例3で製造した乾燥した非結晶化6β−ヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナ−4−エン−3,20−ジオン(72.00g、0.2008モル)の溶液を、50mLの蒸留液が採取されるまで、蒸留した。撹拌・冷却(22℃)した溶液に、窒素雰囲気下で、三フッ化ホウ素・エーテル和物(50mL、0.4065モル、2.02モル過剰)を滴下した。この混合物を1時間にわたって還流するまで加温した(この間、白色の結晶性錯体が沈殿した)。この混合物を、塩化メチレン:酢酸エチル(1:1)を展開剤とするシリカゲル(イー・メルク)プレート上での薄層クロマトグラフィーで判定して反応が完結するまで(約1時間)、還流状態で維持した。得られた撹拌した暗赤色の溶液を、氷浴を用いて10〜15℃に冷却し、HO(450mL)中におけるNaHCO(100g)のスラリーを5分間かけて注意深く添加した。二層混合物を10〜15℃で1時間、15〜20℃で1時間、そして20〜25℃で30分間、激しく撹拌した。これらの層を分離し、有機層を水(250mL)で3回洗浄した。塩化メチレン溶液を容量150mLまで蒸留し(最終的な反応容器の温度50℃)、トルエン(100mL)を添加した。この溶液を、水流吸引器による減圧下で、容量150mLまで再び蒸留した。トルエン(450mL)を添加し、この溶液を、水流吸引器による減圧下で、容量480mLまで蒸留した。この低温合成および処理は、熱力学的に生成する副生成物であると考えられる6,17α−ジメチルプレグナ−6,8(14)−ジエン−3,20−ジオンの生成を回避する。
【0021】
得られた粗生成物のトルエン溶液に、無水マレイン酸(11.0g、0.1122モル)を添加し、この混合物を、窒素下、ディールス・アルダー条件下で1時間加熱還流した(反応容器の温度114〜115℃)。冷却した(22℃)溶液を、やはり22℃の水(720mL)中における炭酸ナトリウム(40g)の撹拌溶液に添加し、この撹拌混合物を50℃に加熱し、50℃で1時間維持した。この混合物を室温(25℃)に冷却し、層を分離した。有機層を200mL(×2)および100mL(×1)の1.5N水酸化ナトリウム、300mLの飽和食塩水および200mL(×2)の水で順次洗浄した。この段階で、水性洗浄液は中性であった。この溶液を、水流吸引器による減圧下で、ほぼ蒸発乾固させた。ヘプタン(250mL)を添加し、この撹拌混合物を窒素下で加熱還流した(98〜99℃)。得られた溶液を冷却し、表題化合物を適当な播種によって結晶化した。結晶化は78℃から始まった。撹拌した結晶スラリーの温度が35℃に達したとき、氷/水による冷却法を用いて、温度を0〜5℃に低下させた。結晶を濾紙上に採取し、ヘプタン(2×75mL)で洗浄した;55.2g(理論の80.8%)。
【0022】
2−プロパノールから結晶化を3回行い、融点=145〜147℃、[α]=77.7°(c=1,CHCl),M(PBEI)340およびλmax(KBr)1665,1691cm−1の純粋な物質(38.03g、55.6%)を得た。
元素分析の結果(C2332
計算値:C,80.94;H,9.26
実測値:C,80.90;H,9.28
【0023】
新規な方法に加えて、新規な中間体である6β−ヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナ−4−エン−3,20−ジオンが平滑筋細胞の増殖を阻害するのに有用であることが見出された。この有用性は、かかる化合物を以下の標準的な実験的試験法に付すことによって確立された。
【0024】
10%ウシ胎児血清(ギブコ(Gibco))を加えた培地199(ギブコ)で増殖させた初期ラット大動脈平滑筋細胞培養物を、カルシウムやマグネシウムを含まないダルベッコのリン酸緩衝食塩水で洗浄し、5分間トリプシン処理した。ゴム片を付けたポリスマンを用いて、培養皿から細胞をかき取り、遠心分離にかけた。細胞を、H−チミジン(0.5μCi/mL)を含む10%ウシ胎児血清を加えたM199培地に、8〜15,000細胞/mLの割合で再懸濁し、プレートのウェル中に入れた。新規な中間体を各ウェルに添加し、これらのプレートを、5%CO雰囲気中、37℃で24時間インキュベートした。培養した細胞をトリクロロ酢酸で処理して、酸可溶性タンパクを除去し、細胞超構造体およびDNAのみを残した。これらの細胞を可溶化し、シンチレーションでカウントし、結果を対照と比較して、ウェルあたりの細胞数を決定した。細胞の差は、対照のパーセントとして表した。この研究によると、6β−ヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナ−4−エン−3,20−ジオンが26.45μMのIC50を示したのに対し、メドロゲストンは14.84μMのIC50を示した。
【0025】
したがって、平滑筋増殖の阻害剤である化合物6β−ヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナ−4−エン−3,20−ジオンは、再発狭窄症およびアテローム性動脈硬化症の治療に有用であり、かかる化合物およびそれを含有する医薬組成物は、本発明の別の実施態様を与える。かかる医薬組成物は、ステロイドに対して従来から採用されている経路、例えば、経皮的、経口的、非経口的、鼻腔内などの経路によって投与すればよい。このステロイドは、そのまま投与しても、医薬上許容される担体と組み合わせて投与しもよい。
【0026】
固形担体は、香味剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁化剤、充填剤、潤滑剤、圧縮補助剤、結合剤または錠剤崩壊剤としても作用しうる一種またはそれ以上の物質を含有することができる;それはカプセル化材料とすることもできる。散剤の場合、担体は、細かく粉砕された固体であって、やはり細かく粉砕された活性成分と混合されている。錠剤の場合、活性成分は、必要な圧縮性を有する担体と適当な割合で混合され、所望の形状および寸法に成形される。散剤および錠剤は、好ましくは99%までの活性成分を含有する。適当な固形担体は、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、乳糖、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、低融点ワックスおよびイオン交換樹脂を含む。
【0027】
液状担体は、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤および加圧組成物を調製するのに用いられる。活性成分は、医薬上許容される液状担体(例えば、水、有機溶媒、両方の混合物、または医薬上許容される油脂)中に溶解または懸濁させることができる。液状担体は、他の適当な医薬用添加物(例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝化剤、保存剤、甘味料、香味剤、懸濁化剤、増粘剤、着色剤、粘度調節剤、安定化剤または浸透圧調節剤)を含有することができる。経口および非経口投与用の液状担体の適当な例は、水(上記の添加剤、例えば、セルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を部分的に含有する)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えば、グリコールを含む)およびそれらの誘導体、ならびに油(例えば、分別ヤシ油および落花生油)を含む。非経口投与の場合、担体は、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油状エステルとすることもできる。無菌の液状担体は、非経口投与用の無菌液状組成物に有用である。加圧組成物用の液状担体は、ハロゲン化炭化水素または他の医薬上許容される噴射剤とすることができる。
【0028】
無菌の液剤または懸濁剤である液状の医薬組成物は、例えば、筋肉内、腹腔内または皮下への注射によって利用することができる。無菌液剤は、静脈内投与することもできる。上記化合物は、液状または固形のいずれの組成物形態でも、経口投与することができる。
【0029】
用量に関する必要条件は、投与の経路、発現した症状の重篤度および治療中の特定の患者によって変化する。標準的な薬理学的試験法で得られた結果に基づいて、6β−ヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナ−4−エン−3,20−ジオンの計画的な一日量は、0.005〜50mg/kg、好ましくは0.05〜10mg/kgである。
【0030】
治療は、一般的に、この化合物の適量より少ない用量から開始する。その後、かかる状況下で至適な効果に達するまで用量を増大させる;経口的、非経口的、鼻腔内、または経皮的な投与に対する正確な用量は、治療を受ける個々の患者による経験に基づいて、投与する医師が決定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3β,5α,6β−トリヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−20−オンの溶液から有機溶媒をメタノールで置き換えることからなる3β,5α,6β−トリヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−20−オン・モノメタノラートの製造方法。
【請求項2】
前記3β,5α,6β−トリヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−20−オン・モノメタノラートを、メタノール中のスラリーから結晶性の生成物として採取し、乾燥雰囲気に曝して、過剰のメタノールを除去する請求項1記載の方法。
【請求項3】
3β,5α,6β−トリヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−20−オンからメタノールによって置き換えられる溶媒が、共沸混合物としてのテトラヒドロフランである請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥雰囲気が、周囲温度と約60℃との間の温度で低い気圧によって作られる請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記低い気圧が油真空ポンプで作った雰囲気である請求項4記載の方法。
【請求項6】
溶媒和物である3β,5α,6β−トリヒドロキシ−6α,17α−ジメチルプレグナン−20−オン・モノメタノラート。

【公開番号】特開2007−119500(P2007−119500A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33723(P2007−33723)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【分割の表示】特願平7−105298の分割
【原出願日】平成7年4月28日(1995.4.28)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】