説明

メラニン量予測方法及びメラニン量予測システム

【課題】多数の人物について継続的に蓄積されたメラニン量及び内的要因のデータを使用して、個人のメラニン量の変動を予測し美容アドバイスを行うことが可能なメラニン量予測方法及びメラニン量予測システムを提供する。
【解決手段】メラニン量予測システムは、人物毎の経時的なメラニン量及び内的要因情報を蓄積したデータベース6を使用し、メラニン量の変動を多変量解析して変動の特徴によりグループ分類するメラニン量変動分類処理部53と、内的要因の変動を多変量解析して各グループに区分すると共に予測基準を生成する内的要因解析処理部54と、を備える。その予測基準に基づいて新規人物のメラニン量変動を予測するメラニン量変動予測処理部55を備え、美白のための美容アドバイスを作成することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニン量予測方法及びメラニン量予測システムに関し、詳しくは、多数の人物について継続的に蓄積されたメラニン量及び内的要因のデータを多変量解析することにより、個人のメラニン量の変動を予測すると共に美容アドバイスを行うことが可能なメラニン量予測方法及びメラニン量予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、美容カウンセリングや医療の分野において、シミやしわ、毛穴、キメ、皮脂量、肌色等の皮膚の状態を解析し、それに応じた美容アドバイスを行うサービスがある。その場合、シミやしわ、毛穴、キメ等の評価は、それぞれに対して異なる測定や解析の方法によって行われている。
例えば、シミの評価に関しては、その原因となる過剰なメラニン量を測定し解析することにより、シミのでき具合もしくはでき易さを評価している。このとき、メラニン量の解析には、細胞レベルの解析や皮膚レベルの解析等がある。細胞レベルの解析では、角質標本を作製し、1細胞当りのメラニン量とメラニン分布の不均一性の2面から測定を行うことによって、シミの評価が行われている。また、皮膚レベルの解析では、マイクロスコープ等を用いて皮膚の表面状態を撮影し、その画像を色要素別に解析することによってメラニン量を測定し、シミの評価が行われている。
【0003】
シミの評価では、上記のような細胞レベル又は皮膚レベル等でのメラニン量の評価結果を蓄積することによって、疫学的な集団のデータベースが作成されている。このデータベースを使用して、年代別、地域別など任意のグループについて、メラニン量やシミの平均値が求められる。そして、その平均値と新たに測定した個人のデータとを比較することによって、その個人の現在のシミの状態を評価するシステムが開発されている(特許文献1及び2を参照)。このような技術は、いずれも測定時のメラニン量を評価する場合に適しているが、個人の今後のメラニン量の変動を予測するには不十分であった。
【0004】
近年では、シミの状態が、季節等によって異なる紫外線量や乾燥等の外部要因、ホルモンバランス(月経周期等)や加齢等の内部要因によって影響を受けることが明らかにされてきている。このため、これらの要因もデータベースに組み込むことにより、それぞれの要因を考慮し、さらに詳細なシミの現状とともに、季節や生活習慣等の要因に対してアドバイスを行うシステムが考案されている(特許文献3〜5を参照)。このような技術により、シミの状態を評価し、今後の生活パターンや季節の変化に対して美容アドバイスを具体的に行うこともできるようになってきた。しかしながら、いずれのシステムも、これまでの疫学的なデータから得られる平均値や経験値を基に現在のシミの状態が評価されるため、個人毎に異なるメラニン量の変動を精度よく予測し、その予測に基づいて美容アドバイスを行うことは困難であった。
【0005】
近年の研究から、人の生理状態を示す値(血圧、血糖値等)には個人差が存在し、その個人の状態によっても変動することが分かってきている。メラニン量も、個人により又時期により大きく異なる値の1つである。なぜなら、メラニンの合成には、メラニン合成が開始される初期、最もメラニン合成が盛んな時期、そしてメラニン合成が終息する時期等の段階があり、メラニン合成の状態は日々変化しているからである(非特許文献1及び2を参照)。また、その変化の度合いやメラニン合成能力には個人差があるからである。このような面からも、年間のメラニン量の変動パターンは個人によって大きく異なることとなり、個人の将来のメラニン量の変動を精度よく予測することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−199727号公報
【特許文献2】特開2007−133518号公報
【特許文献3】特開2001−353129号公報
【特許文献4】特開2006−103051号公報
【特許文献5】特開2007−130104号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】フレグランスジャーナル、北原隆他、9、p9−15、2000
【非特許文献2】フレグランスジャーナル、正木仁他、9、p16−23、2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のとおり、個人の皮膚の状態(メラニンの合成)は日々変化しており、その変化の度合いやメラニンを合成する能力も人により差異が大きい。また、メラニン合成は様々な外的要因(気候、紫外線照射量、季節等)や内的要因(月経周期、スキンケア、生活習慣、ストレス等)に反応して誘起され、その後メラニン合成が盛んな時期を経て、メラニン合成が終息する時期へと移行する。どのような要因が実際にメラニン合成に影響を及ぼすかは人によって異なっている。また、様々な要因がメラニン合成に及ぼす影響の程度や速さ、時期等も、人によって異なっている。
例えば、一般的には春から夏に向けてメラニンの合成量が増えることが知られているが、その増える度合(具体的には、メラニン生成の能力や速度、メラニンの蓄積量等による。)は、外的要因が同程度の地域で生活する同世代の人においても、個人によって異なる。その原因には、個人により、スキンケアや生活習慣が異なること、メラニン合成能力に差異があること等が考えられる。
以上のように個人によって異なるメラニン合成や内的要因について、それらの時間的変動の特徴を分析する試みは、従来行われていなかった。個人のメラニン量の変動を予測するためには、人によって異なるメラニン量の変動の特徴や、人によって異なるスキンケアや生活習慣等の内的要因とメラニン量変動との関係について、定量的に分析・評価する必要がある。メラニン量変動の特徴的なパターンや、それに結び付く内的要因を見出すことができれば、個人毎に異なるメラニン量の変動を精度よく予測できることが期待されるからである。
【0009】
本発明は、前記現状に鑑みてなされたものであり、多数の人物について継続的に蓄積されたメラニン量及び内的要因のデータに基づき、個人のメラニン量の変動を予測すると共に、それに合ったスキンケア及び生活習慣を含む美容アドバイスを行うことが可能な、メラニン量予測方法及びメラニン量予測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討し、多数の人物の一定期間におけるメラニン量の変動の特徴を分類し、そのメラニン量変動の特徴に関係する内的要因を評価する方法を見出した。そして、その方法を用いて、新たな人物の今後のメラニン量の変動を予測し、効果的な美白のためのアドバイスを行うことができるメラニン量予測方法及びメラニン量予測システムを開発した。これによって、季節毎のメラニン量の変動には種々のパターンが存在し、一般に考えられているように紫外線照射が強い夏期においてメラニン量が増加するばかりでなく、冬期においてメラニン量がピークとなる例が明確に見出された。また、多数の人物のメラニン量の変動及び内的要因の変動を解析することにより、個人毎に異なるメラニン量の変動を精度よく予測することを可能にした。
【0011】
本発明は、以下のとおりである。
1.人物毎に所定期間に複数回測定されたメラニン量が蓄積して記憶された期間メラニン量データを多変量解析し、該多変量解析の結果に基づき、該所定期間におけるメラニン量の変動にそれぞれ共通性がある2以上のグループに該人物を分類するメラニン量変動分類工程と、
前記人物毎に前記所定期間に複数回取得された内的要因情報が蓄積して記憶された期間内的要因データを多変量解析し、該多変量解析の結果を用いて、該人物を各前記グループに区分するために有効な内的要因を有効要因として選出すると共に、各該グループに区分するための予測基準を生成する内的要因解析工程と、
を備えることを特徴とするメラニン量予測方法。
2.新規人物から取得された内的要因情報を用いて、前記内的要因解析工程により選出された前記有効要因及び生成された前記予測基準に基づいて、該新規人物が前記グループのいずれに属するかを予測するメラニン量変動予測工程を備える上記1.記載のメラニン量予測方法。
3.前記内的要因解析工程は、前記期間内的要因データの前記多変量解析の結果を用いて前記有効要因毎にその程度を2以上の段階に分け、且つ各前記段階に対応した問診表を作成する問診表作成工程を含み、
前記メラニン量変動予測工程は、前記新規人物から取得された内的要因情報として、前記問診表作成工程により作成された問診表に対する回答を用いる上記1.又は2.に記載のメラニン量予測方法。
4.前記多変量解析は主成分分析又はフーリエ解析である前記1.乃至3.のいずれかに記載のメラニン量予測方法。
5.前記内的要因解析工程は、判別分析又は決定木により、前記有効要因を選出すると共に前記予測基準を生成する前記1.乃至4.のいずれかに記載のメラニン量予測方法。
6.前記2以上のグループは、冬期においてメラニン量が増加する特徴をもつグループを含む前記1.乃至5.のいずれかに記載のメラニン量予測方法。
7.前記内的要因は、年齢、肌質、月経周期、生活習慣、紫外線対策、スキンケア及びストレスレベル、のうちの1又は2以上を含む前記1.乃至6.のいずれかに記載のメラニン量予測方法。
8.前記メラニン量変動予測工程は、前記新規人物が属すると予測した前記グループのメラニン量の年間変動の特徴に基づいて、該新規人物に対する美容アドバイスを作成するアドバイス作成工程を含む前記1.乃至7.のいずれかに記載のメラニン量予測方法。
9.前記1.乃至8.のいずれかに記載のメラニン量予測方法を用いるメラニン量予測システムであって、
前記メラニン量変動分類工程を行うメラニン量変動分類処理部と、前記内的要因解析工程を行う内的要因解析処理部と、前記メラニン量変動予測工程を行うメラニン量変動予測処理部と、を備えることを特徴とするメラニン量予測システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明のメラニン量予測方法によれば、人物毎に所定期間に複数回測定されたメラニン量が蓄積して記憶された期間メラニン量データを多変量解析し、該所定期間におけるメラニン量の変動に共通性があるグループに該人物を分類するメラニン量変動分類工程を備えるため、所定期間(例えば、1年間)における多数の対象人物のメラニン量測定値を用いて、種々の観点から特徴的なメラニン量の変動パターンを抽出し、その変動パターンにそれぞれ共通性がある2以上のグループに対象人物を分けることができる。また、前記人物毎に前記所定期間に複数回取得された内的要因情報が蓄積して記憶された期間内的要因データを多変量解析し、該多変量解析の結果を用いて、該人物を各前記グループに区分するために有効な内的要因を有効要因として選出すると共に、各該グループに区分するための予測基準を生成する内的要因解析工程を備えるため、前記期間メラニン量データと同じ期間且つ同じ対象人物の内的要因データを多変量解析し、前記グループ分けのために効果的な内的要因を有効要因として選出することができ、人物の内的要因情報からその人物がどのグループに属するかを予測するための予測基準を作ることができる。
以上により、本メラニン量予測方法によれば、多数の人物について蓄積されたメラニン量データ及び内的要因データを使用し、種々の観点からメラニン量変動(例えば、季節毎の変動)の特徴を見出すことによりグループ化し、そのグループ分けに結び付く内的要因を選出すると共に予測基準を作成するため、人物毎の今後のメラニン量変動を精度よく予測することが可能になる。
また、本メラニン量予測方法を適用すれば、人物個人の将来のメラニン量の経時変化を提示することが可能になるだけでなく、様々な期間(例えば、半年間、1年間、5年間、10年間)について、また種々の条件(外的要因、世代、肌質等)により、多様な観点でメラニン量の変動の特徴を見出し、その変動に関係する内的要因(スキンケア方法、生活習慣等)についてシミュレーションすることができる。これにより、理想のメラニン量に近づけるための、又は現在のメラニン量を維持するためのスキンケアや生活習慣をアドバイスすることが可能になる。
【0013】
新規人物から取得された内的要因情報から、前記有効要因及び前記予測基準に基づいて、該新規人物が前記グループのいずれに属するかを予測するメラニン量変動予測工程を備える場合には、新規顧客の現在の内的要因の情報を取得するだけで、その新規人物のメラニン量の変動パターンを推定することができる。これによって、新規顧客に対して、今後の美白のためのスキンケアや生活習慣を含む適切な美容アドバイスを精度よくリアルタイムに行うことが可能になる。
【0014】
前記内的要因解析工程は、前記期間内的要因データの多変量解析の結果を用いて前記有効要因毎にその程度を2以上の段階に分け、且つ各段階に対応した問診表を作成する問診表作成工程を含み、前記メラニン量変動予測工程は、前記新規人物から取得された内的要因情報として、前記問診表に対する回答を用いる場合には、有効要因毎に、前記グループ分けのための最適な段階分けに対応した選択肢を設けた問診表が作成されるため、その問診表への新規人物の回答から、その新規人物がどのグループに属するかを、効率的に、より精度よく予測することができる。
【0015】
前記多変量解析は主成分分析又はフーリエ解析である場合には、多数の対象人物についての前記期間メラニン量データ又は期間内的要因データを公知の手法を用いて解析することができ、それらの解析結果を利用する処理を簡単にすることができる。
前記内的要因解析工程は、判別分析又は決定木により、前記有効要因を選出すると共に前記予測基準を生成する場合には、公知の手法を用いて、グループ分けに有効な内的要因を精度よく選出すると共に、精度のよい予測基準を生成することができるため、人物が前記グループのいずれに属するかを効率的且つ精度よく予測することが可能になる。
【0016】
前記2以上のグループは、冬期においてメラニン量が増加する特徴をもつグループを含む場合には、他の季節よりも冬期にメラニン量が増えるグループが抽出され、そのグループのメラニン量変動に結び付く内的要因が有効要因として選出されるため、そのグループに属すると予測される人物に対して冬期のメラニン量を抑制するための美容アドバイスを行うことが可能になる。
前記内的要因は、年齢、肌質、月経周期、生活習慣、紫外線対策、スキンケア及びストレスレベル、のうちの1又は2以上を含む場合には、一般にメラニン量変動に影響が大きい内的要因と考えられる喫煙頻度等の生活習慣、紫外線対策(例えば、ファンデーション、日焼け止め、帽子、日傘等)の頻度、スキンケア(例えば、洗顔、ミルクローション、クリーム、マッサージ、美白用化粧品、美白用サプリメント、化粧を落とさずに就寝等)の頻度、ストレスレベル等を適宜選択し、その要因毎の程度により数値化等したデータを内的要因データとして蓄積して記憶することができる。このため、広範な要因項目のうちから選んだ適切な内的要因情報を基に解析処理を行うことができ、その結果を用いて前記有効要因の選出及び予測基準の生成の精度を高めることができる。
前記メラニン量変動予測工程は、前記新規人物が属すると予測した前記グループのメラニン量の年間変動の特徴に基づいて、該新規人物に対する美容アドバイスを作成するアドバイス作成工程を含む場合には、新規人物について予測されるメラニン量変動を基にスキンケアや生活習慣を含む適切なアドバイスを自動的に生成することができ、より確実且つ迅速に美容アドバイスを行うことができる。
【0017】
上記のいずれかに記載のメラニン量予測方法を用いるメラニン量予測システムであって、メラニン量変動分類処理部と、内的要因解析処理部と、メラニン量変動予測処理部と、を備えるメラニン量予測システムによれば、前記メラニン量予測方法を効果的に用いて、多数の人物について蓄積されたメラニン量データ及び内的要因データを使用し、種々の観点からメラニン量変動(例えば、季節毎の変動)の特徴を見出すことによりグループ化され、そのグループ分けに結び付く内的要因が選出されると共に予測基準が作成されるため、人物毎の今後のメラニン量変動を精度よくリアルタイムに予測することができる。また、その人物に対して、今後の美白のためのスキンケアや生活習慣を含む適切な美容アドバイスを迅速に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述によって更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】本実施形態に係るメラニン量予測システムの構成を示すブロック図である。
【図2】1人の人物の1年間におけるメラニン量の変動例を示すグラフである。
【図3】通年メラニン量データの例を示す表である。
【図4】顧客の現在の状態(内的要因)を入力するために表示される入力画面の例を表す図である。
【図5】内的要因及びその数値化(内的要因スコア)の例を示す表である。
【図6】本実施形態に係るメラニン量予測方法における主要な処理の例を示すフローチャートである。
【図7】メラニン量変動分類工程における処理の例を示すフローチャートである。
【図8】通年メラニン量データの主成分分析の結果を説明するための表である。
【図9】通年メラニン量データの主成分分析の結果を説明するためのグラフである。
【図10】通年メラニン量データの主成分分析により、人物のメラニン量の年間変動を算出する式である。
【図11】通年メラニン量データの主成分分析の結果に基づき、2つのグループに分類する例を説明するための図表である。
【図12】通年メラニン量データの主成分分析の結果に基づき、4つのグループに分類する例を説明するための散布図である。
【図13】通年のメラニン量の変動を離散フーリエ変換により表す例を説明するための図である。
【図14】5人の人物の1年間における内的要因の変動例を表すグラフである。
【図15】内的要因解析工程における処理の例を示すフローチャートである。
【図16】通年内的要因データの主成分分析の結果を説明するためのグラフである。
【図17】各内的要因についての通年内的要因データの主成分分析の結果を、人物毎に示した表である。
【図18】内的要因の判別分析を行うための線形判別式である。
【図19】ステップワイズ法変数選択による判別分析によって選出される内的要因(有効要因)を説明するための図である。
【図20】別の通年内的要因データの主成分分析の結果を表した散布図である。
【図21】通年内的要因データの主成分分析の結果を用いて生成される決定木と、その決定木により選出された有効要因を示す表である。
【図22】1つの有効要因について、主成分得点の大きさ順に段階分けを行う例を説明するための図表である。
【図23】1つの有効要因について段階分けされた段階毎の、内的要因の年間変動を表したグラフである。
【図24】1つの有効要因について、問と段階分けに対応した選択肢とを作成する例を示す表である。
【図25】有効要因について、問と選択肢からなる問診表の例である。
【図26】メラニン量変動予測工程における処理の例を示すフローチャートである。
【図27】新規人物から取得された問診表に対する回答と、それにより算出されるグループ予測のための判別得点の例を示す表である。
【図28】新規人物について提示される美容アドバイス及びメラニン量変動予測の例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜28を参照しながら、本発明のメラニン量予測方法及びメラニン量予測システムを詳しく説明する。ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものである。
【0020】
本発明のメラニン量予測方法及びメラニン量予測システムの実施形態においては、多数の人物(顧客)についてメラニン量の変動を解析し、その変動の特徴に結び付く内的要因の変動を解析し、その解析結果を基に新たな人物についてメラニン量の変動を予測する。このため、多数の人物毎に、経時的に測定されたメラニン量データ、及び経時的に取得された内的要因データを使用する。メラニン量データや内的要因データは、データベースとして構成しておくことができる。
このデータベースには、居住地域や年齢、日焼け時の肌の反応性等が異なる様々な人物について、長期間(例えば、1年以上)にわたり経時的に(例えば、月に2回)特定部位の角質標本を採取し、その角質標本からメラニン量を測定した結果を、個人単位で蓄積して記憶しておくことができる。また、その人物の内的要因に関する情報を、上記同様、経時的に個人単位で蓄積して記憶しておくことができる。更に、人物を取りまく外的要因に関する情報をデータベースに蓄積して記憶しておくこともできる。
【0021】
前記「内的要因」とは、メラニン合成に影響を及ぼす人物の状態(例えば、年齢、生活地域、日焼け時の肌反応(肌質)、紫外線対策、スキンケア、月経周期、生活習慣、ストレスレベル等)を意図している。内的要因のうちには、一般に年間で変動する要因(例えば、紫外線対策、スキンケア、生活習慣等)と、一般には年間変動しないか又は変動が少ない要因(例えば、年齢、肌質、喫煙、飲酒等)がある。
本発明において、内的要因としてどのような事項を用いるかは特に限定されない。例えば、内的要因を、年齢、肌質、月経周期、生活習慣、紫外線対策、スキンケア及びストレスレベルのうちの1又は2以上を含むものとすることができる。
【0022】
前記「外的要因」とは、人物のメラニン合成に影響を及ぼす気象(例えば、気温、湿度、天気、紫外線照射量)等を意図している。外的要因の1例として、人物の居住地域の紫外線照射量が挙げられる。紫外線照射量は、気象庁により公開されている各地域における日積算UV−B量等を用いることができる。UV−B量とは波長が280〜315nmの紫外線強度の積算値(単位kJ/m2/day)である。この月平均の日積算UV−B量を、当該月における1日当りの紫外線照射量として用いることができる。各地域の紫外線照射量は緯度が小さいほど高く、紫外線照射量と緯度とはほぼ一定の関係にあることが見出される。したがって、紫外線照射量の変動がメラニン量変動に及ぼしている影響は、人物の居住地域と緯度が最も近い地域の紫外線照射量を用いることによって解析したり補正したりすることができる。また、本実施形態において解析対象とする人物を紫外線照射量の程度によりスクリーニングしてもよい。
本発明において、人物のメラニン量変動の解析や予測のために、外的要因を条件に入れるかどうかは特に問わない。
【0023】
前記「データベース」は任意の構成とすることができ、例えば、主として人物毎のメラニン量及び内的要因に関する情報を蓄積して記憶する顧客情報データベースと、主として外的要因に関する情報を蓄積して記憶する気象データベースと、を備えて構成することができる。顧客情報データベースには、人物毎に経時的に得られたメラニン量や内的要因に関するデータが蓄積される。気象データベースには、過去の全国各地域の気象に関するデータを蓄積して記憶することができる。
【0024】
1.メラニン量予測システムの構成
図1は、本実施形態に係るメラニン量予測方法を効果的に行うためのメラニン量予測システム1の構成例を示すブロック図である。メラニン量予測システム1は、画像撮影装置2、入力装置3、出力装置4、情報処理装置(サーバ)5、顧客情報データベース(記憶装置)6、及び必要に応じて気象データベース(記憶装置)7を備えて構成することができる。
メラニン量予測システム1の具体的な構成方法や接続方法等は特に限定されない。例えば、情報処理装置5は1台又は2台以上のコンピュータによって構成することができる。画像撮影装置2、入力装置3、出力装置4等のそれぞれの台数や設置場所は問わない。また、顧客情報データベース6や気象データベース7は、情報処理装置5内に備えられてもよいし、外部のデータベースを接続して利用するように構成されてもよい。また、情報処理装置5と各装置との間や、情報処理装置5と各データベースとの間等は、通信ネットワークを介して相互に通信可能に接続されていてもよい。
【0025】
前記画像撮影装置2は、人物の角質細胞を撮影する装置である。角質細胞の撮影方法は特に限定されず、例えば、テープストリッピング法で採取された角質細胞標本を、フォンタナ・マッソン法によりメラニンを染色し、該角質細胞標本を画像撮影装置2に接続された顕微鏡で撮影することができる。その他、テープストリッピング法で採取された角質細胞標本を、蛍光色素やメラニン抗体によりメラニンを標識し、該角質細胞標本を画像撮影装置2に接続したレーザー顕微鏡を用いて撮影してもよい。また、角質細胞を採取せず、画像撮影装置2に接続した共焦点レーザー顕微鏡や2光子励起顕微鏡を用いて、プローブを顔に密着させて直接角質細胞を撮影してもよい。
【0026】
画像撮影装置2により撮影された人物の角質細胞の画像は、メラニン量測定処理部51に送られる。メラニン量測定処理部51は、受信された角質細胞画像に対して、例えばセグメンテーション処理と二値化処理を行うことにより、メラニン量を測定する。
前記セグメンテーション処理は、角質細胞の部分とそうでない部分とを区分する処理のことであり、詳しくは、画像の緑色成分ヒストグラムを複数個の正規分布でモデル化し、正規分布のパラメータにより動的に角質細胞の部分とそうでない部分とを区分する処理である。また、前記二値化処理は、メラニンが存在する部分とそうでない部分に区分する処理であり、具体的には、セグメンテーション処理により画像の角質細胞に区分された部分を、閾値によりメラニンが存在する部分とそうでない部分とに区分する。これにより、角質細胞の部分に占めるメラニンが存在する部分の割合をメラニン量として求めることができる。本実施形態の説明及び図において、「メラニン量」はこの割合を百分率で表すこととする。
【0027】
人物毎のメラニン量は、ほぼ一定の日にちの間隔で測定されることが好ましい。その測定間隔は特に限定されず、例えば、1週間毎、2週間毎、半月毎、1月毎等とすることができる。測定されたメラニン量は、人物(人物番号、氏名等)及び測定日(角質細胞の採取年月日)と関連付けて、顧客情報データベース6に記憶しておくことができる。その他、顧客情報データベース6には、撮影された角質細胞画像等のデータを記憶しておくこともできる。
【0028】
図2は、ある1人の人物について毎月2回(各月1日及び15日)測定されたメラニン量の1年間における変動例を表している。図中の曲線は1日毎のメラニン量の推定値を表し、本例においては、正規分布の確率密度関数による重み付き平均を用いて推定している。このような1日毎のメラニン量を適宜求めることによって、メラニン量の時間的変動の解析処理を容易にすることができる。1日毎のメラニン量の算出方法は特に問わない。
顧客情報データベース6には、上記のようなメラニン量データが人物毎に蓄積される。図3は、顧客情報データベース6から1年間における100人(人物番号1〜100)のメラニン量データを抽出した例(一部)を示している。
【0029】
前記入力装置3は、情報処理装置5に対して情報を入力するための装置であり、入力情報に応じて、パーソナルコンピュータやキーボード、タッチパネル、スキャナ等を適宜用いることができる。メラニン量予測システム1は、入力装置3を介して人物毎の内的要因情報を取得するようにすることができる。
図4は、人物毎の状態の情報を得るために入力装置3に表示される顧客情報入力画面の一例を表している。ここで表示されているような人物の年齢、居住地域、肌質(日焼け時の肌)、日中の屋外活動時間、紫外線対策(日焼け止め、帽子、日傘)、生活習慣(喫煙、飲酒、食生活の乱れ、職種、運動、睡眠時間)、フェイシャルエステティック、生理周期、ストレスレベル、朝及び夜のスキンケア(ローション、ミルクローション、クリーム、マッサージ、飲用サプリメント)等を、内的要因の項目として挙げることができる。このような項目毎に程度や頻度が回答されるようにし、人物毎の内的要因情報を経時的に(例えば、メラニン量の測定日毎に)取得することができる。取得された内的要因情報は、人物及び取得日と関連付けて、顧客情報データベース6に記憶しておくこともできる。
尚、後に顧客情報データベース6を参照して分析や評価の対象とする内的要因の項目は、上記取得された内的要因情報のうちから任意に選択することができる。
【0030】
取得された人物の内的要因情報から、内的要因毎に数値化することによって、内的要因スコアを作成することができる。例えば、内的要因毎の程度や頻度を点数付けすることにより内的要因スコアを生成し、それを内的要因情報として顧客情報データベース6に記憶しておくことができる。その点数は、各項目の程度や頻度について、一般にメラニン量を増加させると考えられる順、又はメラニン量の増加を抑制しないと考えられる順等で点数付けすることができる。もっとも、内的要因の中には、時期によって変動しがちな要因や変動の少ない要因があり、また、その程度をメラニン量の変動の程度と関係付けることが困難な要因もある。したがって、内的要因の数値化を一律に行う必要はなく、内的要因の項目により適宜のルールで数値化されればよい。
【0031】
図5(b)は、内的要因毎に5段階(1〜5)で点数付けする例を示している。例えば、「ダブル洗顔」はメラニン量の増加を抑制する効果があると考えられるため、その頻度が低いほど高い点数(5)を与えている。また、「日中に屋外で1時間以上過ごす機会」が多ければメラニン量を増加させると考えられるため、その頻度が「ほぼ毎日」である場合には高い点数(5)を与えている。
一方、同図(a)に挙げられている「日焼け時の肌反応」、「飲酒」等の内的要因については、変動が少なく、又はメラニン量の変動の程度と直接に関係付けることが適切ではないと考えられるため、別の方法で数値化(P1〜P5)を行っている。例えば、「飲酒」が「月に何回か」である場合にはP3を「1」、その他を「0」とする等によりスコア化すればよい。
【0032】
前記出力装置4は、情報処理装置5による処理結果や操作者への指示等を出力するための装置であり、出力情報に応じて、パーソナルコンピュータやモニタ、プリンタ、音声出力装置等を適宜用いることができる。
【0033】
前記情報処理装置5は、各種情報処理を行うコンピュータによって構成され、メラニン量測定処理部51、顧客情報入力処理部52、メラニン量変動分類処理部53、内的要因解析処理部54及びメラニン量変動予測処理部55を備えている。内的要因解析処理部54には、その一部として問診表作成処理部541を備えることができる。また、メラニン量変動予測処理部55には、その一部としてアドバイス作成処理部551を備えることができる。尚、問診表作成処理部541やアドバイス作成処理部551は、別個に備えられていてもよい。
前記各処理部の機能は、主としてコンピュータのソフトウェアにより構成することができるが、演算回路等のハードウェアと組み合わせて構成されてもよい。
【0034】
前記顧客情報データベース6及び前記気象データベース7は記憶装置上に構成され、情報処理装置5の各前記処理部によりアクセス可能とされている。これらデータベースは統合して1つのデータベースとして構成されてもよいし、更に複数に分割して構成されてもよい。
顧客情報データベース6には、過去及び新規の顧客に関するメラニン量データ及び内的要因データが蓄積して記憶される。メラニン量データには、人物毎に、経時的にされた複数回のメラニン量測定日(角質細胞採取又は撮影年月日)と、各測定日における該角質細胞のメラニン量の値を含む。また、内的要因データには、人物毎に、経時的に取得された人物の内的要因情報を含む。内的要因情報としてはメラニン量の各測定日間の人物の状態であることが好ましく、メラニン量の各測定日にその人物の内的要因情報を取得するようにすることができる。内的要因データは、内的要因毎にその程度等を数値化した内的要因スコアとすることができる。
また、前記のとおり、必要に応じて気象データベース7を備え、過去の全国各地域の気象に関するデータを蓄積して記憶することができる。気象データに含まれる地域毎の紫外線照射量等は、その地域で生活する人物のメラニン量の変動に影響を及ぼす外的要因となる。
【0035】
2.メラニン量予測方法
本実施形態に係るメラニン量予測方法及びメラニン量予測システムは、前記データベースを使用して処理を行うように構成することができる。
本メラニン量予測方法は、主として前記メラニン量変動分類処理部53により行われるメラニン量変動分類工程と、主として前記内的要因解析処理部54により行われる内的要因解析工程と、主として前記メラニン量変動予測処理部55により行われるメラニン量変動予測工程と、を備える。また、内的要因解析工程には、主として前記問診表作成処理部541により行われる問診表作成工程を備えることができる。メラニン量変動予測工程には、主として前記アドバイス作成処理部551により行われるアドバイス作成工程を備えることができる。
本メラニン量予測システム1は、前記メラニン量変動分類処理部53と、前記内的要因解析処理部54と、前記メラニン量変動予測処理部55と、を備えて構成することができる。
【0036】
図6は、本メラニン量予測方法の概略の流れを表している。ここでは、経時的なメラニン量の測定及び内的要因情報の取得のための工程は省いている。メラニン量予測方法の全体の工程は、解析の対象とする人物(以下、「対象人物」という。)の集合をメラニン量変動の特徴により分類し、その内的要因の解析を行う工程A(同図(a))と、該工程Aの結果を用いて、1人の人物についてメラニン量変動の予測を行う工程B(同図(b))とに分けて構成することができる。工程Aを一度行ってその結果を記憶しておけば、その結果を利用することによって、新規人物毎に工程Bを行うことができる。また、顧客情報データベース6に蓄積されている人物から、予め異なる条件(例えば、世代、肌質、居住地域、紫外線照射量等)により対象人物をスクリーニングし、その条件の異なる各集合について工程Aを行って結果を記憶しておけば、同様の条件の新規人物についてメラニン量変動の予測を行うことが可能となる。
前記工程Aの処理は、前記メラニン量変動分類工程において行われるメラニン量変動分類処理S1と、前記内的要因解析工程において行われる、内的要因解析処理S2及び問診表作成処理S3と、から構成することができる。また、前記工程Bの処理は、前記メラニン量変動予測工程において行われる、メラニン量変動予測処理S4及びアドバイス作成処理S5から構成することができる。以下、これらの工程における処理について具体的に説明する。
【0037】
(メラニン量変動分類工程)
前記メラニン量変動分類工程は、対象人物毎に所定期間に複数回測定されたメラニン量を蓄積した期間メラニン量データを多変量解析し、その多変量解析の結果に基づき、該所定期間におけるメラニン量の変動にそれぞれ共通性がある2以上のグループに対象人物を分類する工程である。
前記「対象人物」は、過去の所定期間においてメラニン量が経時的に測定されている人物であり、以下で行うメラニン量変動の解析の対象とする人物である。対象人物の数は問わないが、多数(例えば、数十〜数千人)であることが好ましい。顧客情報データベース6に記憶されている人物のうち、メラニン量が所定期間において経時的に測定されているすべての人物を対象人物として抽出してもよいし、前記のとおり、世代や肌質、外的要因等の条件によりスクリーニングしてもよい。
前記「所定期間」の長さは特に限定されず、目的により、例えば6ヶ月、1年、3年等とすることができる。メラニン量の季節による変動に着目する場合には、所定期間を1年間とすることが好ましい。この場合、1年間の区切りは任意であり、過去のある1年間に限ってもよいし、同一の月日で区切った複数年のデータを抽出してもよい。以下の説明では、所定期間を1年間とする。
前記「期間メラニン量データ」とは、前記所定期間において抽出された対象人物の集合(対象人物全員)のメラニン量データをいう。所定期間を1年間とした場合を「通年メラニン量データ」という。図3に示したのは、対象人物100人について約2週間毎に測定された通年メラニン量データの例である。
【0038】
図7は、前記メラニン量変動分類処理S1の例を示している。先ず、顧客情報データベース6から、対象人物の全てについての期間(通年)メラニン量データを取り出す(S11)。
次に、ステップS11で取り出した前記通年メラニン量データの多変量解析を行う(S12)。メラニン量の年間変動を構成する共通要素を抽出可能であれば、多変量解析の手法は特に限定されない。例えば、主成分分析やフーリエ解析(離散フーリエ変換)等の手法を適用することができる。
そして、ステップS12で行った多変量解析の結果に基づき、メラニン量の変動にそれぞれ共通性がある2以上のグループ(G、G等)に対象人物を分類する(S13)。
【0039】
図8及び図9は、前記ステップS12における通年メラニン量データの主成分分析の例を説明するための図表である。図8は、図3に示した対象人物100人の通年メラニン量データを主成分分析した結果を示しており、図9はそれをグラフに表したものである。図9の各グラフの横軸は4月1日から翌年3月末日までの1年を表す。図9(a)は平均メラニン量M、同図(b)は第1主成分ベクトルMV1、(c)は第2主成分ベクトルMV2、(d)は第3主成分ベクトルMV3をそれぞれ示している。以上の4つの成分に、メラニン量の年間変動の全情報量の大半が集約されており、第4主成分以下の寄与率は0.01以下となるため無視することができる。
図10に示すように、各対象人物のメラニン量の年間変動Mは、それぞれの主成分得点S及び主成分ベクトルMViとの積の和に、平均メラニン量Mを加えて表されることとなる。図11(a)に、上例の前記主成分分析により得られた対象人物毎の主成分得点S(S〜S)の値を示す。
【0040】
前記ステップS13においては、前記多変量解析の結果に基づき、メラニン量の変動にそれぞれ共通性がある2以上のグループに対象人物を分類する。多変量解析として主成分分析を行った場合には、それによって得られた前記主成分得点Sを用いて分類することができる。
図9に示したグラフを参照すると、第2主成分得点Sが正の値である場合には、メラニン量が夏季に増加し且つ冬季に減少するという特徴が強いと解釈することができる。また、第3主成分得点Sが正の値である場合には、メラニン量が春季に減少し且つ秋季に増加するという特徴が強いと解釈することができる。そうすると、冬季にメラニン量が増加するという特徴をもつかどうかによって対象人物を2つのグループに分類しようとすれば、第2主成分得点Sの値によって分ければよいといえる。グループ分けの境界をゼロとして、第2主成分得点Sが0又は正の値であった人物をグループG、負の値であった人物をグループGとすると、図11(a)の最右欄に示したようにグループ分けされる。尚、本例では、グループGが51人、グループGが49人となった。
図11(b)は、前記グループG及びグループGにそれぞれ属する対象人物の平均のメラニン量変動パターンを表したグラフである。図から明らかなように、グループGに属する人物は夏季にメラニン量が増大するという特徴があり、グループGに属する人物は夏季以上に冬季にメラニン量が増大するという特徴があることが分かる。
【0041】
対象人物を分類するグループ数やグループの境界線は、分類の目的や人数配分等に応じて種々設定することができる。例えば、図12は、別の対象人物149人の通年メラニン量データを主成分分析し、それによって得られた第2主成分得点Sを横軸とし、第3主成分得点Sを縦軸として表した、対象人物の散布図である。第1主成分得点Sは年間の平均レベルに対応するため、メラニン量の年間変動を表すのは第2主成分得点S及び第3主成分得点Sである。そこで、第2主成分得点S及び第3主成分得点Sそれぞれの値の正負によって、4つのグループ(G00、G01、G10、G11)に分類することができる。
また、グループ間の境界線は直交しなくてもよいし、各軸に対して平行移動されたり適宜の角度で回転されてもよい。グループ分類の境界線を変えれば、1つのグループに属する人物の平均のメラニン量の変動パターンは異なるものとなる。
以下では、簡単のため、メラニン量の年間変動パターンの特徴が異なる2つのグループ(前記G、G)に分類する場合を中心に説明する。
【0042】
尚、すべての対象人物を散布図上でグループに分類することは、対象人物が属するグループを予測することと言い換えることができる。また、対象人物の散布図上での位置を予測することとしても同じである。すなわち、グループ分類は、位置を予測する手法を適用して行うこともできる。
【0043】
以上では、通年メラニン量データの多変量解析に主成分分析を用いる例を挙げたが、多変量解析の別の手法として、離散フーリエ変換を適用することもできる。その例を図13に示す。
図13(a)は、通年のメラニン量の変動を離散フーリエ変換により表す式を示している(t:時間(年))。メラニン量M(t)は、離散的な振幅値(A)及び位相(B)と定数Cとによって表すことができる。ここで、cos(2π・i・t)の周期は(1/i)年とする。すなわち、i=1、2、3…のとき、cos(2π・i・t)の周期は1年、半年、(1/3)年…となる。離散フーリエ変換によって、対象人物毎のメラニン量変動から振幅値A及び位相Bを求めることができる。前記100人の対象人物について離散フーリエ変換した例では、100人を平均した振幅A=5.0、A=2.5、A=0.4、…となったので、平均振幅の小さいA以下を無視することができる。そこで、この100人について位相B及びBの分布を求めると、位相Bの値はπ付近に偏っているという結果が得られた。つまり、多くの対象人物のメラニン量の年間変動は、7月及び1月に増加するような変動(cos(4πt+π))と、年内のいずれかの時期に1回増加するような変動(cos(2πt+B))とを組み合わせて表すことができる。
【0044】
図13(b)は、前記対象人物100人について求められた位相Bの分布を表している。冬季よりも夏季にメラニン量増加が大きい人物は、位相Bの値がπ〜2πの範囲(すなわち、cos(2πt+B)の極大値が7月寄りになる。)に分布することとなる。逆に、夏季よりも冬季にメラニン量増加が大きい人物は、位相Bの値が0〜πの範囲(すなわち、cos(2πt+B)の極大値が1月寄りになる。)に分布する。したがって、前記主成分分析の場合と同様に、夏季と冬季とのメラニン量増加の特徴により対象人物を分類する場合には、位相Bの値を指標とし、B<πであればグループG、B=π又はB>πであればグループG、とすることができる。
【0045】
(内的要因解析工程)
前記内的要因解析工程は、期間内的要因データを多変量解析し、該多変量解析の結果を用いて、前記対象人物を各前記グループに区分(判別)するために有効な内的要因を有効要因として選出すると共に、各該グループに区分(判別)するための予測基準を生成する工程である。
前記「期間内的要因データ」とは、所定期間における対象人物の集合(対象人物全員)の内的要因データをいう。所定期間を1年間とした場合を「通年メラニン量データ」という。内的要因解析工程における処理は、前記メラニン量変動分類工程においてメラニン量の変動を解析したのと同じ期間及び同じ対象人物の集合を対象として行う。顧客情報データベース6には、この対象人物毎に経時的に取得された内的要因情報が蓄積して記憶されている。図14は、5人の人物について、1つの内的要因スコア(「夜のお手入れ頻度(クリーム)」)の1年間の変動の例を示している。このように、多くの人物の状態は、人物により又時期により変動する。
【0046】
図15は、前記内的要因解析処理S2の例を示している。このうちステップS31及びS32は、前記問診表作成処理S3のステップであり、後述する。
先ず、顧客情報データベース6から、前記対象人物(100人)について前記所定期間(1年間)の通年内的要因データを取り出す(S21)。
次に、取り出した通年内的要因データの多変量解析を行う(S22)。内的要因の年間変動を構成する共通要素を抽出可能であれば、多変量解析の手法は特に限定されない。例えば、前記メラニン量変動分類処理S1における通年メラニン量データの多変量解析と同様に、主成分分析を適用することができる。
そして、通年内的要因データの多変量解析の結果を用いて、前記メラニン量変動分類処理S1により分類されたグループ(G、G)に対象人物を区分するために有効な内的要因を有効要因として抽出すると共に、各該グループに区分するための予測基準を生成する(S23)。すなわち、対象人物がどのグループ(G、G)に属するか、又は人物が分布上のどこに位置するかを予測するために有効な情報を選び出すと共に、その有効な情報からその予測を行うための予測基準を生成する。
【0047】
図16は、前記ステップS22において、1つの内的要因の年間変動について通年内的要因データを主成分分析した例を表している。本図は、前記対象人物100人の通年内的要因データ中の1つの内的要因(「夜のお手入れ頻度(クリーム)」)について、その変動を主成分分析した結果であり、同図(a)は当該内的要因スコアの平均値fを表し、同図(b)及び(c)は、それぞれ第1主成分ベクトルfV1、第2主成分ベクトルfV2を表している。以下、この3つの成分(f、fV1、fV2)により当該内的要因の年間変動を表すこととする。メラニン量の場合(図9参照)と同様に図16に表された変動を解釈すると、第1主成分得点Sが正の値である場合には、年間を通して「夜のお手入れ頻度(クリーム)」が減少するという特徴が強いといえる。また、第2主成分得点Sが正の値である場合には、「夜のお手入れ頻度(クリーム)」が夏季に減少し且つ冬季に増加するという特徴が強いといえる。
【0048】
各対象人物の内的要因毎の年間変動fは、前記メラニン量の場合(図10参照)と同様に、それぞれの主成分得点S及び主成分ベクトルfViとの積の和に、平均スコアfを加えて表されることとなる。
図17に、本例の各内的要因の年間変動について、主成分分析により得られた対象人物毎の第1主成分得点S及び第2主成分得点Sの値を示す。前記のとおり、「タバコ」や「飲酒」については、メラニン量の変動の程度と直接に関係付けることが適切ではないため、別の方法で数値化したスコア(P1〜P5)をそのまま挙げている。
【0049】
前記ステップS23においては、通年内的要因データの多変量解析の結果(主成分分析の場合には、主成分得点S)を用いて、前記メラニン量変動分類処理S1により分類されたグループ(G、G)に対象人物を区分するために有効な内的要因を選び出す。また、各該グループに区分するための予測基準を生成する。すなわち、対象人物がどのグループ(G、G)に属するか、又は対象人物が分布上のどこに位置するかを予測するために有効な情報を選択すると共に、その情報からその予測を行うための予測基準を作成する。
前記有効な情報は、各内的要因についての主成分得点Sの他、年間変動の少ない内的要因スコア(例えば、図17に挙げた「タバコ」や「飲酒」についてのスコアP1〜P5等)を用いて選択することができる。また、年齢、肌質、季節毎の平均外出時間等の情報を適宜用いてもよい。
【0050】
対象人物がどのグループに属するか(区分)を予測する手法は問わず、例えば、判別分析、k近傍法、ニューラルネットワーク、サポートベクタマシン、決定木等の手法が挙げられる。また、対象人物が集合の分布上のどこに位置するかを予測するようにしてもよい。その手法として、例えば、重回帰分析、最近傍探索等が挙げられる。
【0051】
前記有効要因を選出する具体的な手法として、ステップワイズ法(変数増減法)変数選択による判別分析(α=0.2)を行う例を説明する。この手法によれば、多数の内的要因の中から、危険率αで有意となる内的要因(すなわち判別に有効な内的要因)のみを選別しながら判別することができる。本例で、有効な内的要因の選別には、内的要因についての第1主成分得点S及び第2主成分得点S、前記スコアP1〜P5等を用いる。この判別分析により、各グループ(G、G)の区分けに有効な内的要因が選別され、その各内的要因についての判別係数(h)が算出される。
上記判別分析により、対象人物がいずれのグループに属するかを予測することができる。この予測の基準(予測基準)として、例えば、図18に示す線形判別式を挙げることができる。同図に示すように、対象人物について、N個の内的要因(i)の年間スコアx(第i主成分得点S又は年間変動の少ない内的要因スコアP1〜P5)及び判別係数hと、定数項Cとを用いて判別得点zを求める。そして、例えば判別得点zが0又は正であればグループG、負であればグループG、と判別することができる。
【0052】
図19は、前記ステップワイズ法変数選択による判別分析によって選出された内的要因及び第i主成分得点S(前記スコアP1〜P5を含む)と、各内的要因の判別係数h及び定数項Cの例を示している。同図(a)は、有意水準α=0.2のステップワイズ法変数選択による判別分析によって選出された内的要因を表す。同図(b)は、上記判別分析で有意確率(p値)が0.1未満となった内的要因のみで、更に判別分析を行った結果を表している。このようにして、同図(b)に挙げられた9つの内的要因を有効要因として選出し、図18に示した判別式を用いて(N=9)、対象人物をグループGとグループGとに区分することができる。
【0053】
以上は2つのグループGとGとに区分する例を説明したが、グループがより多数に分類されていてもよい。図20の散布図は、1つの内的要因(「夜のお手入れ頻度(クリーム)」)について、前記ステップS22の主成分分析により得られた第1主成分得点Sを横軸とし、第2主成分得点Sを縦軸として、前記別の対象人物149人の分布を表している。第1主成分得点Sは年間の平均レベルを表し、当該内的要因の年間変動を表すのは第2主成分得点Sである。
図20に示した分布について、ステップワイズ変数選択による判別分析により、境界線を変化させつつ対象人物を4グループ(g00、g01、g10、g11)に分け、前記メラニン量変動分類処理によって分類された4グループ(G00、G01、G10、G11)の区分と最も近い(正判別率が高い)分け方を求める。そうすると、グループ間の境界線を、座標(s=−1.5、s=−0.84)で直交し、回転(−0.2rad)して設定した場合に、最も正判別率(メラニン量変動分類工程で分類されたグループに対して、本手法によるグループ区分が一致した率)が高くなった。このような判別法によって、有効要因を選出することができ、2以上に分類されているグループに対象人物を区分することができる。
【0054】
また、分類されたグループに対象人物を区分するための有効要因の選出及び予測基準の生成は、ステップワイズ変数選択による判別分析に代わり、決定木の手法を適用しても可能である。図21(a)は、前記主成分分析の結果を用いて決定木を生成した例であり、同図(b)は、その決定木により選出された有効要因(f1〜f8)を示している。決定木のアルゴリズムには、C4.5アルゴリズム(Ross Quinlan (1993). "C4.5: Programs for Machine Learning", Morgan Kaufmann Publishers, San Mateo, CA.)を使用し、グループに区分するために最も効率のよい問診(有効要因)と閾値を順次求めていくことによって、区分ルール(予測基準)が定まる。
図21(a)において、先頭の節(分岐基準となる内的要因の項目)に「朝のお手入れ頻度(クリーム)」(f1)を置き、その第2主成分得点Sの値(分岐基準)によって分岐させる。本例では、葉の最小個体数を6人としており、前記分岐の結果、第2主成分得点S=1.76を閾値として、グループGと区分される葉(7人)と、次の節(f2)とに分けられる。以下同様にして、9つの葉が求められる。尚、本例の決定木による正判別率は81%であった。
【0055】
(問診表作成工程)
ある新規人物について内的要因の情報が取得されれば、以上のステップS21〜S23により選出された有効要因と予測基準に基づいて、その新規人物がどのグループに属するかを予測することができる。内的要因の情報取得を効率的にし、より予測精度を向上させるためには、対象人物の内的要因の多変量解析(S22)の結果を利用して、新規人物の内的要因の情報を取得する際の問診の選択肢を、最適化しておくことが好ましい。
そのため、問診表作成処理S3(図15参照)においては、多変量解析の結果を用いて、各有効要因について効果的な段階分けを行い(S31)、その段階に対応して問診を作成するようにすることができる(S32)。以下では、主成分分析により得られた主成分得点を利用して前記段階分けを行う例を説明する。
【0056】
前記ステップS31においては、有効要因毎に、主成分得点の大きさによって段階分けを行う。図22(a)は、前記ステップワイズ法変数選択による判別分析によって有効要因として選出された「夜のお手入れ頻度(クリーム)」の第2主成分得点Sについて、その大きさの順に、対象人物100人の値をプロットしたグラフである。ここで、各段階に含まれる人数がほぼ同じとなるように各段階間の境界(例えば、±5名程度)を設定して、5段階(C1〜C5)に分けるものとする。この段階間の境界は、例えば遺伝的アルゴリズムを用いて探索することができる。同図(b)は、このように分けられた各段階(C1〜C5)の、第2主成分得点Sの平均値(代表値)S2Aを示している。
【0057】
図23は、各前記段階(C1〜C5)に属する人物について、前記内的要因の平均の年間変動を示している。図中に示すように、内的要因スコアfの年間変動は、平均f、平均第2主成分得点S2A及び平均第2主成分ベクトルfV2Aによって算出することができる。この図から、例えば、段階C2に属する人物の平均的な「夜のお手入れ頻度(クリーム)」は、夏は4日に約2.5日であり、冬は4日に約2日であることが分かる(図5参照)。また、段階C5に属する人物は、夏は4日に1〜1.5日程度と低いのに比較して、冬は4日に3〜4日程度と高いことが分かる(図5参照)。
また、図23から明らかなように、段階C2とC3の年間変動はほぼ同じである。このような場合には、段階C2とC3とを1つの段階(C2’)として、全体を4つの段階にまとめることが好ましい。例えば、各段階の年間変動の特徴情報に基づいて類似性を判断する等して、類似する2つの段階については1つにまとめることができる。前記特徴情報は、通年の平均値や、季節又は月による値の変化から抽出することができる。
上記のような段階分けを、選出されたすべての有効要因について行う。
【0058】
前記ステップS32では、全ての有効要因に対応した問と、前記ステップS31において分けた段階に対応する回答の選択肢によって、問診表を作成する。
図24は、前記「夜のお手入れ頻度(クリーム)」の例について、「1年を通した夜のお手入れにおけるクリームの使用頻度は?」という問(Q)と、その問に対する回答の選択肢を表している。問Qは、年間変動を問うという目的に合わせて、内的要因毎に予め用意しておけばよい。そして、前記4つの段階(C1、C2’、C4、C5)に対応して選択肢a1〜a4を設け、それぞれの選択肢について、年間変動の特徴情報に応じて予め用意された文言を選択したり組み合わせたりすることにより作成することができる。年間変動の特徴情報とは、図23に示したような段階毎の変動パターンの特徴をいう。
【0059】
例えば、有効要因が第1主成分得点Sに関するものであれば、第1主成分は年間の平均を表わす成分であるため(図16参照)、年間平均の第1主成分得点Sのレベルに対応して選択肢の文言を選択すればよい。また、有効要因が第2主成分得点Sに関するものであれば、第2主成分は季節による変化を表わす成分であるため、春(3〜5月)、夏(6〜8月)、秋(9〜11月)及び冬(12〜2月)の季節毎に平均の第2主成分得点Sをレベル分けし、その1年間の組合せに対応して選択肢の文言を選択すればよい。
有効要因が年間変動の少ない「飲酒」等である場合には、その内的要因の程度(図5(a)のP1〜P5)等を、そのまま選択肢とすればよい。
上記のような問Qとそれに対する回答の選択肢をすべての有効要因について準備することにより、新規人物がメラニン量変動のどのグループ(G、G)に属するかを予測するために最適な問診表を作成することができる。図25は、作成された問診表の例(一部分)である。
【0060】
また、前記決定木により有効要因の選出及び予測基準の生成を行った場合(図21参照)には、各節となった有効要因(f1〜f8)について、分岐基準を基に2つの選択肢を設けることができる。これは、前記ステップS31において、有効要因毎に分岐基準(閾値)により2つに段階分けを行うことに相当する。その後、問診表は前記と同様にして作成することができる。決定木を用いることにより、効率のよい問診表を作成することができる。
【0061】
(メラニン量変動予測工程)
メラニン量変動予測工程は、新規人物から取得された内的要因情報を用いて、前記内的要因解析工程により抽出された有効要因及び生成された予測基準に基づいて、該新規人物が前記グループのいずれに属するかを予測する工程である。新規人物の内的要因情報は、前記顧客情報入力処理部52によって取得することができる。予測精度を高めるためには、前記内的要因解析工程において作成された問診表を用いて、それに対する回答を新規人物の内的要因情報として取得することが好ましい。
【0062】
図26は、前記メラニン量変動予測処理S4の例を示している。新規人物について測定されたメラニン量は、任意の手段により記憶しておくことができる。また、新規人物について取得された内的要因又は問診表の回答は、任意の手段により記憶しておくことができる。そこで、新規人物について取得され、記憶されている内的要因又は問診表の回答データを得る(S41)。そして、その回答データを用いれば、前記予測基準に基づいて、メラニン量変動について分類されたどのグループに新規人物が属するかを予測することができる(S42)。また、その新規人物が属するグループのメラニン量変動の特徴に基づいて、新規人物のメラニン量の変動を予測することができる(S43)。
【0063】
図27は、前記問診表(図25参照)を用いて取得された新規人物の回答と、それに対応する各有効要因の平均主成分得点S2A及び判別係数hの例を示している。この場合に、前記予測基準(図18参照)によりその新規人物の判別得点zを算出するとz=−3.910となり、判別得点zの値が負であるから、当該新規人物はグループGに属するものと予測することができる。これにより、当該新規人物の通年のメラニン量の変動は、夏よりも冬にメラニン量が多くなるものと推定することができる(図11(b)参照)。
【0064】
(アドバイス作成工程)
メラニン量変動予測工程には、アドバイス作成工程を含むことができる。アドバイス作成工程においては、前記新規人物が属すると予測した前記グループのメラニン量の年間変動の特徴に基づいて、当該新規人物に対する美容アドバイスを作成する処理(アドバイス作成処理S5)を行う。
アドバイス作成処理S5では、新規人物が属すると予測されたグループの通年のメラニン量の変動パターンの他、当該新規人物について測定されたメラニン量、当該新規人物について取得された内的要因の程度(問診表への回答)等に基づいて、当該新規人物に対して今後のメラニン量を抑制するための美容アドバイスを作成することができる。
【0065】
図28に、美容アドバイスの1例を示す。本例では、「メラニンタイプの特徴」(前記新規人物が属するグループGの通年メラニン量変動の特徴)、「美白アドバイス」、「メラニン量年間変動予測」が提示されている。美白アドバイスの文言は、グループの通年メラニン量変動の特徴、当該新規人物について取得された各内的要因の程度(問診表への回答)等に基づいて、予め用意されている文言を選択して組み合わせる等の方法によって作成することができる。また、メラニン量年間変動予測は、例えば、グループの平均値を基に、新規人物について測定されたメラニン量により補正することができる。
【0066】
前記美容アドバイスの他、前記各工程による処理結果は、結果表示処理部57に送信して出力するように構成することができる。結果表示処理部57では、各工程による出力情報を処理し、出力データを出力装置4へと送信する。出力データの形式は任意であり、例えば、HTML、XML、画像、動画、音声ファイル等が可能である。
【0067】
尚、本発明においては、上述の実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲で種々変更した実施形態とすることができる。
例えば、本メラニン量予測方法は、以上に説明した工程を変形したり、対象人物をスクリーニングする条件を種々設定したり、着目する年間変動の特徴によりグループ分類を変えたりする等によって多様なシミュレーションを行うことができ、様々な観点によりメラニン量変動予測を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本メラニン量予測方法及びメラニン量予測システムは、皮膚科、美容皮膚科、エステティックサロン、化粧品販売等において、顧客のシミや肌色に対して、通年のメラニン量及び内的要因の変動を分析評価すると共に、その結果を基に個人毎に今後のメラニン量変動を予測し、美白におけるスキンケアや生活習慣の提案を行うことが可能な方法及びシステムとして、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1;メラニン量予測システム、2;画像撮影装置、3;入力装置、4;出力装置、5;情報処理装置(サーバ)、51;メラニン量測定処理部、52;顧客情報入力処理部、53;メラニン量変動分類処理部、54;内的要因解析処理部、541;問診表作成処理部、55;メラニン量変動予測処理部、551;アドバイス作成処理部、57;結果表示処理部、6;顧客情報データベース、7;気象データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人物毎に所定期間に複数回測定されたメラニン量が蓄積して記憶された期間メラニン量データを多変量解析し、該多変量解析の結果に基づき、該所定期間におけるメラニン量の変動にそれぞれ共通性がある2以上のグループに該人物を分類するメラニン量変動分類工程と、
前記人物毎に前記所定期間に複数回取得された内的要因情報が蓄積して記憶された期間内的要因データを多変量解析し、該多変量解析の結果を用いて、該人物を各前記グループに区分するために有効な内的要因を有効要因として選出すると共に、各該グループに区分するための予測基準を生成する内的要因解析工程と、
を備えることを特徴とするメラニン量予測方法。
【請求項2】
新規人物から取得された内的要因情報を用いて、前記内的要因解析工程により選出された前記有効要因及び生成された前記予測基準に基づいて、該新規人物が前記グループのいずれに属するかを予測するメラニン量変動予測工程を備える請求項1記載のメラニン量予測方法。
【請求項3】
前記内的要因解析工程は、前記期間内的要因データの前記多変量解析の結果を用いて前記有効要因毎にその程度を2以上の段階に分け、且つ各前記段階に対応した問診表を作成する問診表作成工程を含み、
前記メラニン量変動予測工程は、前記新規人物から取得された内的要因情報として、前記問診表作成工程により作成された問診表に対する回答を用いる請求項1又は2に記載のメラニン量予測方法。
【請求項4】
前記多変量解析は主成分分析又はフーリエ解析である請求項1乃至3のいずれかに記載のメラニン量予測方法。
【請求項5】
前記内的要因解析工程は、判別分析又は決定木により、前記有効要因を選出すると共に前記予測基準を生成する請求項1乃至4のいずれかに記載のメラニン量予測方法。
【請求項6】
前記2以上のグループは、冬期においてメラニン量が増加する特徴をもつグループを含む請求項1乃至5のいずれかに記載のメラニン量予測方法。
【請求項7】
前記内的要因は、年齢、肌質、月経周期、生活習慣、紫外線対策、スキンケア及びストレスレベル、のうちの1又は2以上を含む請求項1乃至6のいずれかに記載のメラニン量予測方法。
【請求項8】
前記メラニン量変動予測工程は、前記新規人物が属すると予測した前記グループのメラニン量の年間変動の特徴に基づいて、該新規人物に対する美容アドバイスを作成するアドバイス作成工程を含む請求項1乃至7のいずれかに記載のメラニン量予測方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のメラニン量予測方法を用いるメラニン量予測システムであって、
前記メラニン量変動分類工程を行うメラニン量変動分類処理部と、前記内的要因解析工程を行う内的要因解析処理部と、前記メラニン量変動予測工程を行うメラニン量変動予測処理部と、を備えることを特徴とするメラニン量予測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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