説明

メラミン収率を改善する触媒メラミン製造方法

メラミン収率を増大させ、流動床触媒プロセスにおいて尿素からのメラミン産生におけるダスト分離を改善する方法であって、メラミン未変換イソシアン酸に加えて、メラム、メレム及び他の高分子窒素化合物を含む流動床反応器のプロセスガスを、触媒が充填された1以上の環状反応器からなるろ過反応器に移送し、そこでまだ変換されていないイソシアン酸をメラミンに変換し、高分子窒素化合物、特にメラム及びメレムをプロセスガス中のアンモニアと反応させることによってメラミンに再変換し、流動床反応器のプロセスガス中にまだ存在する触媒微粉を取り除くことを特徴とする方法。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
目下、メラミン製造用の原料は、主に尿素であり、尿素は、反応(1)において、>350℃の第1の温度でアンモニアとイソシアン酸に分解する。形成されたイソシアン酸は反応して、さらに式(2)の後メラミンになる。
【0002】
6H2N-CO-NH2 → 6 HNCO + 6NH3 (1)
6HNCO → C3H6N6 + 3 CO2 (2)
工業規模においては、両反応は、390〜400℃及び約8MPaの非触媒(non-catalytic)高圧プロセスか、あるいは>380℃の流動床反応器において、0.1〜1.0MPaの触媒低圧プロセスのいずれかで行われる。低圧触媒プロセスの例として、DSMプロセス又はBASFプロセスが挙げられる。両方法の詳細な説明は、NITROGEN, No. 228, p 43〜51, July/August l997及びUllmann's Ency- clopedia of Industrial Chemistry, Vol. A 16,5t Edit. p 171〜185 (1990)に示されている。
【0003】
本来、流動床反応器は、攪拌ベッセルの特徴を示し、通過あたりの変換は完全ではない。尿素は、式(1)により完全に分解することは確かであるが、形成されたイソシアン酸は全部がメラミンに反応しないであろう。実際、尿素のメラミンへの変換は、流動化の条件及び触媒の活性によって、通過あたり75〜90%の範囲内である。これは、反応器からのプロセスガスが、程度の差はあるが、大量の未反応イソシアン酸を含み、熱力学的に可能な平衡に達していないことを意味する。
【0004】
本発明の理解のために、手元の図1において、触媒低圧プロセスの原理を示す。液体尿素(11)は、流動床反応器(12)中で、390〜400℃にてメラミンに変換する。流動ガス(14)として、反応の間に形成された純粋なアンモニア又はNH3/CO2混合物のいずれかが用いられる。形成されたメラミンは反応器からプロセスガス(=流動ガス+反応ガス)で、未変換イソシアン酸並びにメラム(C6H9N11)及びメレム(C6H6N10)のような副産物とともに排出される。これらの化合物以外に、プロセスガスは、反応器サイクロン中で分離されない噴流触媒微粉を含む。
【0005】
高温プロセスガスからメラミンを分離するため、DSM法で実践されたように、図1中のライン(15)でガスを水で冷却することができる。メラミン、高分子副産物、オキソトリアジン及び触媒ダストの水性懸濁液が形成される。この懸濁液から、再溶解、不溶性化合物のろ過及び再結晶によってメラミンが得られる。このプロセスの詳細は、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. A 16, p 176, (1990)を参照のこと。
【0006】
このプロセスの一つの欠点は、水による冷却によって、未変換イソシアン酸がNH3及びCO2に加水分解され、触媒ダストならびにメレムのような高分子副産物をろ過によって分離しなければならないことである。さらに、オキソトリアジンがメラミンの加水分解によって形成される。
【0007】
BASF法では、高温プロセスガスを、メラム及びメレムのような高分子副産物は脱昇華させるが、メラミンはしない、延長された冷却器(16)中で冷却することによって、これらの欠点が回避される。脱昇華された化合物は、ほとんどが触媒ダスト上に析出し、これと一緒に、高温ガスフィルター(17)で取り除かれる。
【0008】
プロセスガスから、このような方法によって精製されたメラミンは、ガスクエンチ(18)で脱昇華され、サイクロン(19)中でガスから分離される。サイクロン(19)からのほとんどメラミンを含まないガスが、洗浄器(20)内にて液体尿素で洗浄されることによって冷却され、ガスクエンチ(18)への冷却ガスとして、かつ反応器(12)への流動ガスとしてリサイクルされる。過剰のガスは分離ガスユニット中で処理される。
【0009】
尿素洗浄器において、未変換イソシアン酸は、ホーラー反応(Wohler-Reaction)に従って、アンモニアとともに尿素に再混合される。
NH3 +HNCO → [NH4] NCO → H2N-CO-NH2 (3)
【0010】
BASF法の欠点は、
a)未変換イソシアン酸が尿素洗浄器中で再度尿素と反応するため、ロスがないことは確かである。しかし、流動床反応器中で、供給された全尿素の分解のためのエネルギーを、変換率が低い場合でのメラミン収率にかかわらず、高くしなければならない。
b)プロセスガスにおけるかなりの量の未反応イソシアン酸が、ガスクエンチにおいて、望まない副生成物を形成するかもしれない。
c)ガス冷却器の放出口の温度を、プロセスガス中の高分子化合物の大部分が脱昇華する温度レベルに調整しなければならない。一方、メラミンは脱昇華することはないことから、プロセスガス中のメラミン分圧が、ガス冷却器の放出口の温度によって制約されることを意味する。このことは、かなりの経済的な欠点である。というのは、プロセスガスにおいて許容されるメラミン分圧が低いため、反応器外にメラミンを排出するのに高容量の流動ガスを必要とするからである。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、尿素からメラミンを製造するための低及び中等度の圧力での触媒方法に指向し、メラミンは、流動床反応器中で製造され、水による急冷又はガスによる急冷のいずれかによってプロセスガスから回収される。
【0012】
本発明の主な目的は、尿素変換を増加させ、高分子副産物を再変換させ、かつプロセスガスから触媒微粉を同時に除去することによって、上述した触媒プロセス、特に、DSM及びBASF法の経済的な欠点を回避することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の上述した及び他の目的は、意外にも、式(2)によるイソシアン酸の変換を増加させ、高分子副生成物をメラミンに再変換させ、同時にプロセスガスから触媒微粉を取り除く、ろ過反応器の取り付けによって達成される。
【0014】
ろ過反応器の特別な特徴は、1以上の環状反応器からなることである。個々の環状反応器は、穿孔壁を有した2つの同心シリンダーからなる。2つのシリンダー間の環状空間には触媒を含む。
【0015】
図2aは、ろ過反応器中の要素として用いられた環状反応器の構造的な原理の概要を示し、図2bは、4つの環状反応器(2)を内部に有するろ過反応器(7)の平面図を示す。
【0016】
流動床反応器からの高温プロセスガスは、直接、(1)で、1以上の環状反応器(2)から構成されるかもしれないろ過反応器(7)に供給される。
プロセスガスは、触媒床(4)を貫通する環状反応器の外側の穿孔壁(3)を通して放射状に流れ、同様に穿孔されたその内部壁を通して環状反応器から出る。ろ過反応器の中心のパイプ又はガスサンプラー(5)から、ガスがメラミン分離ユニットに流れる。
【0017】
個々の環状反応器は、ろ過反応器の上部(6)に気密固定されており、必要であれば、容易に交換することができる。式(2)によるイソシアン酸からメラミンへの変換は発熱反応であるため、ろ過反応器中の反応温度を、必要なレベルに保持するために、ろ過反応器の外壁は十分に断熱されている。
【0018】
方法の開始を容易にする他に、触媒を再生するか又は流動床反応器中の温度より高くろ過反応器の温度を上昇させるために、例えば、高温ガスによって加熱することができるように、二重壁のろ過反応器(7)を用いることが推奨される。
【0019】
ろ過反応器内の個々の環状反応器の数及び直径は、流動床反応器の容量及び変換率ならびに環状反応器中の触媒活性に依存する。振動を避け及び個々の環状反応器の交換を容易にするために、1000〜4000mm長が推奨され、特殊な場合には、他の直径を最適とすることができる。実用的な理由で、環状反応器の外径は、200〜900mmが選択され、内部シリンダーの直径は150〜300mmの範囲とすべきである。しかし、例えば、プロセスの技術的又は物理的条件のために、他の直径を用いることもできる。
【0020】
大きな円筒状の外表面および触媒床によるプロセスガスの放射状流に基づいて、触媒は最適に用いられ、触媒床にわたるの圧力低下が最小化される。同様の理由で、プロセスガス中のダストは、触媒床の外表面にのみ堆積され、高温アンモニア、流動ガス又は蒸気を、バルブ(8)を経由して、個々の環状反応器に定期的にバックフラッシュさせることによって容易に取り除くことができる。また、蒸気を再生成することにより、触媒上の有機堆積物が取り除かれる。触媒ダストはろ過反応器の底から排出することができる。
【0021】
プロセスガスに依然として含まれているイソシアン酸は、式(2)に従ってメラミンに反応する。メレム及び他の高分子窒素化合物は、触媒上でアンモニアと反応してメラミンに戻る。例えば、
C6H6N10 + 2NH3 → 2C3H6N6 (4)
これらの反応に基づいて、個々の環状反応器に残るガスは、非常に少量のイソシアン酸のみを含み、メレムの量は、含量が最終的なメラミン生成物中に100ppm未満の程度まで減少する。
【0022】
ろ過反応器に適した触媒は、メラミンの製造のために用いられているか公知の全ての触媒であり、純粋なy-AI2O3、10〜90%SiO2のアルミナ−シリケート又は純粋なSiO2を含む。特に適するものは、直径約6オングストロームより大きい平均孔サイズを有するアルミナ−シリケート20〜80%分子篩のマトリクス中に含まれる触媒である。
【0023】
環状反応器中の触媒ダストの新たな形成を避けるために、挿入された触媒が高い摩滅抵抗を有していることが重要である。この理由のために、不規則な粒状のものに代えて、成型された触媒であることが好ましい。また、規則的に成型された触媒は、個々の環状反応器内で、より低い圧力低下という利点を有する。
【0024】
ろ過反応器中の触媒は、メイン反応器中の触媒と同じ化学組成を有することができる。しかし、ろ過反応器では、イソシアン酸のメラミンへの反応および高分子窒素化合物のメラミンへの再変換にのみ触媒作用を及ぼさなければならないため、ろ過反応器において化学組成、酸性度又は表面積について全く異なる触媒を使用することが可能である。
【0025】
例えば、流体床メイン反応器が純粋なアルミナ触媒を含む場合、ろ過反応器においてはシリカ−アルミナ触媒を使用することが有利かもしれない。
また、ろ過反応器は、流体床メイン反応器と同じ圧力で作動させることもできるし、あるいはより低い圧力で実行してもよい。
【0026】
メラミンを含有するプロセスガスを有機液体、好ましくはポリアルコール又はアミノアルコールと接触させることによって冷却する欧州特許出願04000931.8に従うプロセスと、このプロセスとを組み合わせることができる。好ましい有機液体は、エチレングリコール、プロピレングリコール、グロセロール、メチルジエタノールアミン、モノ−、ジ−もしくはトリエタノールアミン又はそれらの混合物である。この工程は、部分的に再度加水分解する、メラミンと水との接触を回避する。
【0027】
以下の実施例及び図3aによって、このプロセスの好ましい実施形態をより詳細に示す。
実施例1
流体床反応器(1)中で、尿素を400℃、3バールで分解する。触媒は、純粋なy-アルミナからなる。流動ガスとして、尿素からメラミンの形成で得られた反応ガス、70容量%のアンモニアと30容量%の二酸化炭素の混合物を用いる。流体床反応器からのガスを直接ろ過反応器(2)に供給する。ろ過反応器は、それぞれ、外径600mm及び4000mm長の4つの環状反応器(3)を含んでいる(単に例である)。環状反応器中の触媒は、希土類金属酸化物32重量%で改変された、球状のアルミナ−シリケート触媒(d=4.5mm)である。
【0028】
ろ過反応器中の温度及び圧力は流体床反応器と同じである。
過度の触媒微粉を流動ガスとともに運ぶことを回避するために、例えば、流動床反応器の擾乱の場合には、サイクロン(5)を、流動床反応器とろ過反応器との間に取り付けてもよい。
表1は、ろ過反応器への導入前後のガス組成を示す(不活性成分は省略)。
【0029】
【表1】

イソシアン酸の約83%が、ろ過反応器中でメラミンに変換している。これはメラミン7.8tの毎日の余剰に相当する。メレム及び他の高分子窒素化合物はもはや検出されず、同様にガスは触媒ダストがなかった。
【0030】
ろ過反応器を放置した後、プロセスガスを冷却器(4)中で高圧蒸気を発生させるために冷却することができる。冷却の程度はろ過反応器の後にガス中のメラミンの分圧によって制限される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来技術における触媒低圧プロセスの原理を示す概略図である。
【図2a】本発明の環状反応器の断面図である。
【図2b】本発明の環状反応器の平面図である。
【図3】本発明のプロセスを説明するための概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミン収率を増大させ、流動床触媒プロセスにおいて尿素からのメラミン産生におけるダスト分離を改善する方法であって、
メラミン未変換イソシアン酸に加えて、メラム、メレム及び他の高分子窒素化合物を含む流動床反応器のプロセスガスを、触媒が充填された1以上の環状反応器からなるろ過反応器に移送し、そこでまだ変換されていないイソシアン酸をメラミンに変換し、高分子窒素化合物、特にメラム及びメレムをプロセスガス中のアンモニアと反応させることによってメラミンに再変換し、流動床反応器のプロセスガス中にまだ存在する触媒微粉を取り除くことを特徴とする方法。
【請求項2】
ろ過反応器内の個々の環状反応器が、それぞれ、穿孔壁を有する2つの同心に配置されたシリンダーからなり、2つのシリンダー間の環状空間に触媒又は触媒混合物を含有する請求項1の方法。
【請求項3】
プロセスガスが、接線方向にろ過反応器に入り、ろ過反応器内の環状反応器の触媒床を通して放射状に流れる請求項1の方法。
【請求項4】
さらに、サイクロンが、流動床反応器とろ過反応器との間に取り付けられてなる請求項1の方法。
【請求項5】
ろ過反応器を、流動床反応器と同じか又は高い温度で、同じ圧力又は流動床反応器と比較して低い圧力(AP=1〜7バール)で作動させる請求項1の方法。
【請求項6】
流動床反応器中の触媒を、蒸気によって再生成し、アンモニア、アンモニア/二酸化炭素の混合物又は蒸気でバックフラッシュして析出したダストを取り除くことができる請求項1の方法。
【請求項7】
ろ過反応器内で用いた触媒が、アルミナ、アルミナ−シリケートもしくは純粋なシリカ又はそれら成分の混合物のいずれかからなる請求項1の方法。触媒又は触媒混合物が約6オングストロームより大きな直径の孔を有する20〜80重量%の分子篩を含むことができる。
【請求項8】
メラミン含有プロセスガスを、有機液体、好ましくはポリアルコール又はアミノアルコールとの接触によって冷却する請求項1の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−517818(P2007−517818A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548194(P2006−548194)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053498
【国際公開番号】WO2005/068440
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(506024858)カサーレ ケミカルズ エス.エー. (4)
【Fターム(参考)】