説明

メルトブロー不織布

【課題】本発明の目的は、脂肪族ポリエステルを主成分としながら、紡糸安定性に優れ、乾熱収縮率が極めて小さいメルトブロー不織布を提供する。
【解決手段】海成分を脂肪族ポリエステル、島成分をポリアミド又はポリオレフィンのいずれかで構成されてなる海島型複合繊維からなるメルトブロー不織布であって、該メルトブロー不織布の100℃×3分の条件下におけるタテおよびヨコの乾熱収縮率がそれぞれ0〜5%の範囲にあるものであることを特徴とするメルトブロー不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族ポリエステルを主成分としながら、紡糸安定性に優れ、乾熱収縮の小さいメルトブロー不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不織布製造法の一つであるメルトブロー法は、一般に、紡糸口金から押し出された熱可塑性ポリマーを熱風噴射することにより繊維状に細化し、該繊維の自己融着特性を利用してウェブとして形成せしめる方法であり、スパンボンド法等、他の不織布製造法に比べて複雑な工程を必要とせず、また数10μmから数μm以下の細い繊維が容易に得られることから、メルトブロー不織布はフィルター製品の濾材、電池セパレータ等々に幅広く使用されている。
【0003】
またメルトブロー不織布に使用される樹脂については、主にポリプロピレンが用いられてきたが、近年は環境負荷低減の観点から、自然資源を原料とした生分解性ポリマーの研究が活発となっており、中でも力学特性やコスト等の面から注目を集めているのが脂肪族ポリエステルの一種であるポリ乳酸(以下、PLAと略称する)である。しかしながら、PLAをメルトブロー法で不織布に製造した場合、メルトブロー法では、実質的に延伸されないため、高分子鎖の配向および結晶化が進まないことから、熱収縮が大きいという問題があるが、これまでPLAのメルトブロー不織布は数々提案がなされているが熱収縮を改善する提案はされてなく、ポリエステル系メルトブロー不織布においては、次のような提案がなされている。
【0004】
例えば、非結晶質ポリエステル系重合体と結晶質ポリプロピレン系重合体との混合物からなるポリエステル系極細繊維不織ウエブが提案されている(特許文献1)。しかしながら、主成分が生分解性ポリマーでは無いことから、環境負荷への低減には何ら寄与せず、且つ単なる混合であることから、ポリオレフィン系ポリマーのサイズにバラツキが大きいと想像され、紡糸安定性に劣ることが考えられる。
【0005】
また、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィン系ポリマーの混合ポリマーにより、構成される低収縮なメルトブロー不織布が提案されている(特許文献2)。こちらも前記提案同様の理由により、環境負荷への低減が無く、紡糸安定性に劣ることが考えられる。
【0006】
上記したように、脂肪族ポリエステル、あるいは脂肪族ポリエステルを主成分としながら、紡糸安定性に優れ、且つ熱収縮の小さいメルトブロー不織布を得ることについては何ら提案されていないのが実状であった。
【特許文献1】特開平7−138863号公報
【特許文献2】特開平5−51852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、脂肪族ポリエステルを主成分としながら、紡糸安定性に優れ、乾熱収縮率が極めて小さいメルトブロー不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する本発明の不織布は、次の構成を有する。
(1)海成分を脂肪族ポリエステル、島成分をポリアミド又はポリオレフィンのいずれかで構成されてなる海島型複合繊維からなるメルトブロー不織布であって、該メルトブロー不織布の100℃×3分の条件下におけるタテおよびヨコの乾熱収縮率がそれぞれ0〜5%の範囲であることを特徴とするメルトブロー不織布。
【0009】
(2)前記島成分のポリアミド又はポリオレフィンのドメインサイズが50〜800nmであることを特徴とする(1)記載のメルトブロー不織布。
【0010】
(3)前記脂肪族ポリエステル/ポリアミド又はポリオレフィンの重量比が55/45〜95/5であることを特徴とする(1)または(2)に記載のメルトブロー不織布。
【0011】
(4)前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸、前記ポリアミドがナイロン6、前記ポリオレフィンがポリプロピレンであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のメルトブロー不織布。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、脂肪族ポリエステルを主成分としながら、紡糸安定性に優れ、乾熱収縮率が極めて小さいメルトブロー不織布を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、前記課題、すなわち脂肪族ポリエステルを主成分としながら、紡糸安定性に優れ、乾熱収縮率が極めて小さいメルトブロー不織布について、鋭意検討し、海成分を脂肪族ポリエステル、島成分をポリアミド又はポリオレフィンのいずれかで構成されてなる海島型複合繊維となるように、前記特定ポリマーよりなるポリマーブレンドにより混合された原料混合ポリマーを用いて、メルトブロー法で不織布を作ってみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0014】
以下本発明について詳細に説明する。
【0015】
まず、本発明の主たる構成であるメルトブロー法により作製されるメルトブロー不織布について説明すると、不織布製造法の一つであるメルトブロー法は、一般に、紡糸口金から押し出された溶融熱可塑性ポリマーを熱風噴射することにより繊維状に細化し、該溶融繊維の自己融着特性を利用してウェブとして形成せしめる方法である。
【0016】
本発明のメルトブロー不織布は、海成分の脂肪族ポリエステルと、島成分のポリオレフィン又はポリアミドとからなる海島構造を持つ海島型複合繊維により構成されるものである。本発明でいう海島型複合繊維は、多芯型の芯鞘型構造を有するものであり、すなわち、該海島型複合繊維の断面を観たとき、海成分である脂肪族ポリエステルが、多数の島成分であるポリオレフィン又はポリアミドの全てを被覆する構造を有するものであればよい。特にかかる脂肪族ポリエステルと、ポリオレフィン又はポリアミドは、いわゆるポリマーブレンドにより混合されてなるもので構成されているものであるのが好ましい。
【0017】
かかる海成分を構成する脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレートバリレート、あるいはこれらのブレンド物、共重合体、変性物等を用いることができる。
【0018】
中でもポリ乳酸は熱安定性の面から最も好ましいものである。かかるポリ乳酸としては、ポリ(D−乳酸)と、ポリ(L−乳酸)と、D−乳酸とL−乳酸の共重合体、あるいはこれらのブレンド体が好ましいものである。ポリ乳酸の重量平均分子量は5万〜25万が好ましく、さらに好ましくは7万〜20万である。かかるポリ乳酸の重量平均分子量が5万未満の場合、低粘度のため糸形成が困難となり、紡糸性不良となるため好ましくない方向である。逆に重量平均分子量が25万を超える場合、粘度が高いため繊維の細径化が困難となり好ましくない方向である。
【0019】
また、島成分を構成するポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレンやこれらの共重合体およびその変性物を単独または混合して用いることができる。また、島成分を構成するポリアミドとしてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−10、ナイロン12やこれらの共重合体およびその変性物を単独または混合して用いることができる。なかでもポリプロピレン、ナイロン6はポリ乳酸と融点差が小さいため、ポリマーへの親和性が高く、複合紡糸した場合の紡糸性も良好であり、特に好ましい。また、かかるブレンド後のブレンドポリマーには、粒子、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させても良いし、島成分としてのポリマーの性質を損なわない範囲で他の成分が共重合されていても良い。
【0020】
ここで、ブレンドされる脂肪族ポリエステルとポリオレフィン又はポリアミドの重量比(脂肪族ポリエステル/(ポリオレフィン又はポリアミド))は、55/45〜95/5の範囲が好ましく、さらに好ましくは60/40〜90/10である。島成分のポリオレフィン、又はポリアミドの重量比が45/100を超えて多くなる場合は、脂肪族ポリエステルがその生分解性を発揮できないことがあるため好ましくなく、また5/100未満の少なすぎる場合は、海成分の脂肪族ポリエステルが支配的となり、島成分のポリオレフィン、又はポリアミドの特性が充分に発揮できないため、好ましくない。
本発明における脂肪族ポリエステルとポリオレフィン、又はポリアミドからなる海島型複合繊維は、ポリマーブレンドからなる混合ポリマーを原料とするために、多数の島成分を含有する海島型複合繊維であり、サイドバイサイド型や多層積層型、多葉型複合、放射状張り合わせ構造等の構成ではない。
該海島型複合繊維における、島数は、10島以上がよく、より好ましくは20島以上、さらに好ましくは30島以上である。島数が、10島以上であればポリオレフィン又はポリアミドのブレンド効果を充分に活かせるため好ましい。また紡糸性の観点から、海島型複合繊維中の島ポリマーのドメインサイズ(島サイズ)を均一に制御することが重要である。ここで、ドメインサイズとは、海島型複合繊維横断面における島ポリマー部分の直径のことをいう。ドメインサイズは、メルトブロー不織布で使われる一般的な繊維径が20μm以下であることから、50nm以上が好ましく、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。また、800nm以下が好ましく、より好ましくは700nm以下、さらに好ましくは600nm以下である。ドメインサイズが50nmより大きいとポリオレフィン、又はポリアミドの特性を充分に活かすことができ、800nm以下とすることで安定した紡糸を行うことが可能となるためである。
【0021】
該ドメインサイズの測定方法としては、得られたメルトブロー不織布をアルカリ処理しポリ乳酸成分を溶出させた後、島成分のみで構成される不織布の任意の場所から、1cm×1cmの測定サンプルを30個採取し、走査型電子顕微鏡で倍率を80000倍に調節して、採取したサンプルから繊維表面写真を各1枚ずつ、計30枚を撮影する。写真の中の繊維直径がはっきり確認できるものについてすべて測定して、平均した値をドメインサイズとして求めることができる。
【0022】
このような均一で微細な海島構造を持つ海島型複合繊維とするには、ポリマーの混練が非常に重要なものとなるので、その方法について、以下説明する。
【0023】
上記の均一で微細な海島構造を持つ海島型複合繊維を製造するには、まず、島成分が微細に分散したブレンドポリマーチップを作成した後、このチップを溶融紡糸する方法を採用することが好ましい。ブレンドポリマーチップの作製について、具体的に混練を行う際の目安としては、組み合わせるポリマーにもよるが、混練押出機を用いる場合は、2軸押出混練機を用いることが好ましく、静止混練機を用いる場合は、その分割数は100万以上とすることが好ましい。また、ブレンド斑や経時的なブレンド比率の変動を避けるため、それぞれのポリマーを独立に計量し、独立にポリマーを混練装置に供給することが好ましい。このとき、ポリマーはチップとして別々に供給しても良く、あるいは、溶融状態で別々に供給しても良い。また、2種類のポリマーを押出混練機の根本に供給しても良いし、あるいは、一成分を押出混練機の途中から供給するサイドフィードとしても良い。
混練装置として二軸押出混練機を使用する場合には、高度の混練とポリマー滞留時間の抑制を両立させることが好ましい。スクリューは、送り部と混練部から構成されているが、混練部長さをスクリュー有効長さの20%以上とすることで高混練とすることができ好ましい。また、混練部長さがスクリュー有効長さの40%以下とすることで、過度の剪断応力を避け、しかも滞留時間を短くすることができ、ポリマーの熱劣化やポリアミド成分等のゲル化を抑制することができる。また、混練部はなるべく二軸押出機の吐出側に位置させることで、混連語の滞留時間を短くし、島ポリマーの再凝集を抑制することができる。加えて、混練を強化する場合は、押出混練機中でポリマーを逆方向に送るバックフロー機能のあるスクリューを設けることもできる。
【0024】
さらに、ベント式として混練時の分解ガスを吸引したり、ポリマー中の水分を減じることによってポリマーの加水分解を抑制し、ポリアミド中のアミン末端基やポリエステル中のカルボン酸末端基量も抑制することができる。
【0025】
また、ブレンドポリマーチップの着色の指標であるL表色系のb値を10以下とすることで、繊維化した際の色調を整えることができ、好ましい。なお、易溶解性成分として熱水可溶性ポリマーを用いる場合、その分子構造から一般に耐熱性が悪く着色しやすいが、上記のような滞留時間を短くする操作により、着色を抑制することが可能となる。
【0026】
また、ブレンドポリマーチップの島成分を微分散させるには、ポリマーの組み合わせも重要であり、本発明では、前記したように、海成分を脂肪族ポリエステル、島成分をポリアミド又はポリオレフィンのいずれかを選択して用いるという特定な組合せで構成するものである。
【0027】
島成分であるポリアミド又はポリオレフィンのいずれかからなる繊維断面を円形に近づけるためには、島ポリマーと海ポリマーは非相溶であることが好ましい。しかしながら、単なる非相溶ポリマーの組み合わせでは島ポリマーが十分微分散化し難い。このため、組み合わせるポリマーの相溶性を最適化することが好ましいが、このための指標の一つが溶解度パラメータ(SP値)である。
【0028】
かかるSP値とは、SP値=(蒸発エネルギー/モル容積)1/2で定義される物質の凝集力を反映するパラメータであり、SP値が近いもの同士では相溶性が良いポリマーアロイが得られる可能性がある。SP値は種々のポリマーで知られているが、例えば「プラスチック・データブック」旭化成アミダス株式会社/プラスチック編集部共編、189ページ等に記載されている。2つのポリマーのSP値の差が1〜9(MJ/m)1/2であると、非相溶化による島ドメインの円形化と超微分散化が両立させやすく好ましい。
【0029】
さらに、溶融粘度も重要であり、島を形成するポリマーの方を低く設定すると、剪断力による島ポリマーの変形が起こりやすいため、島ポリマーの微分散化が進みやすく、極細繊維化の点から好ましい。ただし、島ポリマーを過度に低粘度にすると海化しやすくなり、繊維全体に対するブレンド比を高くできないため、島ポリマー粘度は海ポリマー粘度の1/10以上とすることが好ましい。この時、溶融粘度は紡糸の際の口金面温度で剪断速度121.6sec−1での値である。
【0030】
次に、本発明のメルトブロー不織布について詳細に記述する。
【0031】
本発明のメルトブロー不織布の目付は、好ましくは10g/m以上であり、より好ましくは13g/m以上である。また、好ましくは200g/m以下であり、より好ましくは100g/m以下である。不織布の目付が10g/m未満の場合、ウェブの破断が発生しやすい傾向となるため好ましくない。不織布の目付が200g/mを超える場合は、捕集が不安定となるため好ましくない。
【0032】
ここでいう不織布の目付は、本発明のメルトブロー不織布をJIS L1906(2000年度版)の5.2に準じて測定した値を目付として用いた。
【0033】
本発明の海島型複合繊維の繊維径については、1μm以上が好ましい。一方、20μm以下が好ましく、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。繊維径が1μm未満の場合、ショットが発生しやすく、紡糸が不安定となるため好ましくない。また20μmを越えるとシートの斑が悪くなり好ましくない傾向となる。
かかる繊維径の測定法としては、不織布シートの任意の場所から、1cm×1cmの測定サンプルを30個採取し、繊維径が1〜5μm程度である場合は、走査型電子顕微鏡で倍率を3000倍に調節し、また繊維径が5〜10μm程度の場合は、倍率を2000倍に調節、さらに繊維径10〜20μmの場合は、倍率を1000倍に調節し、採取したサンプルから繊維写真を各1枚ずつ、計30枚を撮影し、写真の中の繊維直径がはっきり確認できるものについてすべて測定し、平均した値を平均繊維径として求めることができる。
【0034】
なお、該繊維の断面形状は何ら制限されるものではなく、丸形、中空丸形、あるいはX形、Y形、多葉形等の異形、等が好ましく使用されるが、製造の簡便な点から丸形形状が最も好ましいものである。
【0035】
本発明のメルトブロー不織布の乾熱収縮率については、100℃×3分の条件下において、タテ、ヨコ共に0〜5%の範囲内にあることが重要であり、好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下である。かかる乾熱収縮率が0%であると、寸法変化が無いことから、例えばフィルターの濾材に用いる場合に、フィルター性能が変化しない、またフィルム、骨材等と貼り合わせている場合には、剥離が生じない等、様々な利点がある。一方、乾熱収縮率が5%を越えると、フィルター性能については、圧力損失が上昇し、またフィルム、骨材等と貼り合わせている場合には、剥離が生じやすい傾向となるため好ましくない。
【0036】
かかる乾熱収縮率の測定の方法としては、JIS L1906 5.9.1の方法において、装置内の温度を100℃に設定し、乾熱収縮率を求めた。
【0037】
本発明において、紡糸安定性に優れ、且つ乾熱収縮率の小さいメルトブロー不織布が得られる理由としては、海成分に脂肪族ポリエステル、島成分にポリオレフィン、又はポリアミドを用いた海島型複合繊維とするが、均一にブレンドされたポレマーを用いることにより、加熱によって海成分の非晶分子が移動し、収縮しようとしても島成分のポリオレフィン又はポリアミドが阻害することにより、分子移動を抑え、熱収縮を小さく抑えているものと推定する。
【0038】
次に、本発明のメルトブロー不織布の製造方法について説明する。
【0039】
メルトブロー法による製造方法は、原料を押出機により溶融し、吐出孔が1列に配列された口金から押し出すと共に、口金吐出孔の両サイドに設けられた熱風噴射溝から噴射する熱風により、細化され、冷却しながら捕集コンベア上に捕集され、シートを形成するものである。
【0040】
該メルトブロー法の製造方法において、本発明のメルトブロー不織布を安定して得るためには以下の条件が採用されるものである。すなわち、海成分の脂肪族ポリエステルとしてポリ乳酸を、島成分のポリオレフィンとしてポリプロピレンを、又は島成分のポリアミドとしてナイロン6を使用し、これらが均一ブレンドされたポリマーを採用する。前述のとおり、これらを均一ブレンドしたブレンドポリマーチップを作製し、このチップを溶融してメルトブロー法により不織布化する。溶融の際の温度は220〜260℃とすることが好ましく、さらに好ましくは225℃から255℃、最も好ましくは230℃から250℃がよい。220℃未満で紡糸するとナイロン6で紡糸する場合にナイロン6の融点に対し低いものとなり、紡糸の安定性に劣るものとなり好ましくない。また紡糸温度が260℃を超えるとポリ乳酸の分解により、紡糸の安定性に劣るものとなり好ましくない。その他、吐出量、冷却条件等については、所望の不織布となるよう適宜設定されるものである。
【0041】
本発明のメルトブロー不織布の使用用途は、何ら制限されるものではないが、各種フィルターの濾材、電池セパレータ等に好ましく使用されるものである。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げてより具体的に本発明を説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において使用する特性値は、次の測定法により測定したものである。
【0043】
(1)目付
15cm×15cmのシートの重量を測定し、得られた値を1m当たりの値に換算し、目付(g/m)とした。
【0044】
(2)平均繊維径
不織布シートの任意の場所から、1cm×1cmの測定サンプルを30個採取し、繊維径が1〜5μm程度である場合は、走査型電子顕微鏡で倍率を3000倍に調節し、写真サイズが少なくともタテ、ヨコ共に15μm以上となるように撮影する。また繊維径が5〜10μm程度の場合は、倍率を2000倍に調節し、写真サイズが少なくともタテ、ヨコ共に20μm以上となるように撮影する。さらに繊維径10〜20μmの場合は、倍率を1000倍に調節し、写真サイズが少なくともタテ、ヨコ共に40μm以上となるように撮影する。それぞれ、採取した30個のサンプルで各1枚ずつ、計30枚を撮影し、写真の中の繊維直径がはっきり確認できるものについてすべて測定し、平均した値を平均繊維径とした。
【0045】
(3)ドメインサイズ(島成分の平均直径)
得られたメルトブロー不織布をアルカリ処理しポリ乳酸成分を溶出させた後、島成分のみで構成される不織布の任意の場所から、1cm×1cmの測定サンプルを30個採取し、走査型電子顕微鏡で倍率を80000倍に調節して、採取したサンプルから繊維表面写真を写真サイズがタテ、ヨコ共に5μm以上となるように各1枚ずつ、計30枚を撮影する。 写真の中の繊維直径がはっきり確認できるものについてすべて測定して、平均した値をドメインサイズ(島成分の平均直径)とした。
【0046】
(4)乾熱収縮率
JIS L1906 5.9.1の方法において、装置内の温度を100℃に設定して得た値を乾熱収縮率とした。
【0047】
実施例1
溶融粘度500Pa・s(230℃、剪断速度121.6sec−1)、融点170℃のポリ乳酸と、溶融粘度300Pa・s(230℃、剪断速度121.6sec−1)、融点220℃のナイロン6とを、2軸押出混練機でブレンド比8/2の割合で230℃で混練し、ポリマーアロイチップを得た。
【0048】
このチップを使用し、直径が0.4mmの吐出孔を有する口金(孔ピッチ:1mm、孔数:151ホール、幅:150mm)を用いて、メルトブロー法により、ポリマー吐出量32g/分、ノズル温度230℃、エア圧力0.05MPaの条件で噴射し、捕集コンベア速度を調整することによって目付が30g/mの不織布を得た。このメルトブロー不織布を構成する繊維1本の断面を観ると、島成分平均直径187nmの海島型複合繊維であった。
【0049】
不織布の特性値について表1に示した。
【0050】
実施例2
溶融粘度350Pa・s(230℃、剪断速度121.6sec−1)、融点170℃のポリ乳酸と、溶融粘度300Pa・s(230℃、剪断速度121.6sec−1)、融点165℃のポリプロピレン(トリアジン系化合物であるキマソーブ(R)944(チバガイギー製)を1重量%添加したもの)とを、2軸押出混練機でブレンド比8/2の割合で230℃で混練し、ポリマーアロイチップを得た。
【0051】
このチップを使用し、実施例1と同じ口金を用いて、メルトブロー法により、ポリマー吐出量32g/分、ノズル温度240℃、エア圧力0.03MPaの条件で噴射し、捕集コンベア速度を調整することによって目付が25g/mの不織布を得た。このメルトブロー不織布の構成繊維1本の断面も、実施例1と同様に、島成分平均直径154nmの海島型複合繊維であった。
【0052】
不織布の特性値について表1に示した。
【0053】
比較例1
原料ポリマーとして、実施例1で使用したポリ乳酸のチップのみを使用した以外は、実施例1と同様にして、メルトブロー法により目付が30g/mの不織布を得た。不織布の特性値について表1に示した。
【0054】
比較例2
原料ポリマーとして、実施例1で使用したポリ乳酸のチップのみを使用した以外は、実施例2と同様にして、メルトブロー法により目付が25g/mの不織布を得た。不織布の特性値について表1に示した。
【0055】
【表1】

【0056】
表1から明らかなように、海成分にポリ乳酸、島成分にナイロン6もしくはポリプロピレンを用いて作製したポリマーアロイチップをメルトブロー法で不織布を製造した実施例1〜3では、紡糸性も良好であり、乾熱収縮率が極めて小さい値のメルトブロー不織布が得られた。
【0057】
一方、ポリ乳酸を単成分のみで製造した比較例1、2のメルトブロー不織布は、乾熱収縮率が極めて高い値となった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明により、脂肪族ポリエステルを主成分としながら、乾熱収縮率が極めて小さいメルトブロー不織布が得られ、このメルトブロー不織布は、各種フィルターの濾材、電池セパレータ等に好ましく用いることができるが、その応用範囲はこれらに限られるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海成分を脂肪族ポリエステル、島成分をポリアミド又はポリオレフィンのいずれかで構成されてなる海島型複合繊維からなるメルトブロー不織布であって、該メルトブロー不織布の100℃×3分の条件下におけるタテおよびヨコの乾熱収縮率がそれぞれ0〜5%の範囲にあるものであることを特徴とするメルトブロー不織布。
【請求項2】
前記島成分のポリアミド又はポリオレフィンのドメインサイズが、50〜800nmであることを特徴とする請求項1記載のメルトブロー不織布。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステル/ポリアミド又はポリオレフィンの重量比が、55/45〜95/5であることを特徴とする請求項1または2に記載のメルトブロー不織布。
【請求項4】
前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸、前記ポリアミドがナイロン6、前記ポリオレフィンがポリプロピレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のメルトブロー不織布。

【公開番号】特開2008−138299(P2008−138299A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323298(P2006−323298)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】