説明

メンブラン電極組立構造の密封

密封および/または補強されたメンブラン電極組立構造を開示する。それぞれ裏張り層および接着剤層を備えてなるカプセル封入フィルムを、各ガス拡散基材の少なくとも片面の縁部上に、該接着剤層が各ガス拡散基材中に含浸されるように配置する。密封および/または補強されたメンブラン電極組立構造の製造方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、重合体電解質メンブラン燃料電池に好適なメンブラン電極組立構造に関し、該メンブラン電極組立構造の縁部はカプセル封入フィルムで密封および/または補強されている。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質により分離された2個の電極を備えてなる電気化学的電池である。燃料、例えば水素またはメタノール、がアノードに供給され、酸化体、例えば酸素または空気、がカソードに供給される。これらの電極で電気化学的反応が起こり、燃料および酸化体の化学的エネルギーが電気的エネルギーおよび熱に変換される。燃料電池は、清浄で効率的な動力供給源であり、固定型および自動車用動力用途の両方で、伝統的な動力供給源、例えば内燃機関、に置き換えることができる。
【0003】
重合体電解質メンブラン(PEM)燃料電池では、電解質は、電気的には絶縁性であるが、イオン的には伝導性である固体重合体メンブランである。典型的には、ペルフルオロスルホン酸材料を基材とするプロトン伝導性メンブランが使用され、アノードで発生するプロトンがメンブランを横切ってカソードに送られ、そこで酸素と結合して水を形成する。
【0004】
重合体電解質燃料電池の主要構成要素は、メンブラン電極組立構造(MEA)と呼ばれ、実質的に5つの層から構成されている。中央層は重合体メンブランである。このメンブランの両側に、アノードおよびカソードにおける様々な必要条件に合わせて製造された電気触媒を含む電気触媒層がある。最後に、各電気触媒層に隣接してガス拡散基材がある。ガス拡散基材は、反応物を電気触媒層に到達させる必要があり、電気化学的反応により発生した電流を通す必要がある。従って、この基材は多孔質で、導電性でなければならない。
【0005】
MEAは、幾つかの方法により構築することができる。電気触媒層をガス拡散基材に施し、ガス拡散電極を形成することができる。2個のガス拡散電極をメンブランの両側に配置し、一つに張り合わせ、5層MEAを形成することができる。あるいは、電気触媒層をメンブランの両面に施し、触媒被覆されたメンブランを形成することができる。続いて、ガス拡散基材を、触媒被覆されたメンブランの両面に付ける。最後に、片側が電気触媒層で被覆されたメンブラン、その電気触媒層に隣接したガス拡散基材、およびメンブランの反対側にあるガス拡散電極からMEAを形成することができる。
【0006】
典型的には、ほとんどの用途に十分な電力を供給するために、数十〜数百個のMEAが必要なので、多数のMEAを組み立て、燃料電池積重構造を形成する。MEAの分離には、フィールドフロープレートが使用される。これらのプレートは、幾つかの機能を果たす、すなわち反応物をMEAに供給し、生成物を除去し、電気的接続を与え、物理的な支持を与える。積重構造中のフィールドフロープレートおよびMEAを、例えば空気袋あるいはピストン装置、または積重構造の末端板に配置された一連のボルトを使用し、典型的には50〜200psiの絶対圧力で一つに圧縮する。典型的には、積重構造末端板の一方は、積重構造に到達するための、および積重構造から反応物、生成物および関連するすべての増湿水を除去するための、必要なポートを含む。ポートは、積重構造冷却板に到達するために、およびMEA中で発生する過剰の熱を除去するのに必要な積重構造冷却剤を積重構造冷却板から除去するためにも必要である。積重構造末端板中のポートから、ガスおよび液体が積重構造を通って各フィールドフロープレートに移送される。ポート形成の設計には、各MEAの内側部分を除去するか、またはすべてのポートをMEAの外側に形成する必要があろう。
【0007】
燃料電池積重構造では、反応物の大気中への損失、あるいは反応物が混合する可能性をすべて阻止することが不可欠である。これは、装置全体の効率低下につながり、燃料と酸化体の混合から起こる燃焼の危険性があるために、潜在的に危険な状態である。そのような事態を阻止するために、積重構造中にある部品の密封およびガスケット処理を行う。本説明の目的には、用語「密封」は、単一部品からの、または単一部品を通る流体拡散を阻止する方法を表すのに使用する。例えば、ガス拡散基材の周辺部をシーラント材料で含浸させることにより、その周辺部を密封することができる。用語「ガスケット処理」は、2個の部品間に弾性材料を配置することにより、これらの部品間の流体拡散を阻止する方法を表すのに使用する。
【0008】
燃料電池積重構造中の構成部品を密封およびガスケット処理するための良く知られている方法では、メンブランがガス拡散基材を越えて大きく、例えば25mmも、突き出ているので、突き出ているメンブランとフィールドフロープレートとの間にガスケットを配置することができる。ガスケットを圧縮により所定の位置に保持する。この方法には、特に、頻繁に使用されるようになっている非常に薄いメンブラン(約30μm)では、そのメンブランが弱く、圧縮力により損傷を受けることがあるので、問題がある。その上、メンブラン電極組立構造の活性区域の外にある区域で高価なメンブラン材料を大量に使用するのは無駄である。
【0009】
メンブラン電極組立構造は、一般的にあまり強くはなく、メンブランが突き出ている組立構造は、特に弱い縁部区域を有することになる。これは、メンブラン電極組立構造を取り扱う時、および燃料電池積重構造を構築する時に、問題を引き起こすことがある。
【0010】
米国特許第5,187,025号明細書は、メンブラン上に直接ガスケット処理する問題が回避され、メンブラン電極組立構造の縁部区域の強度が改良される、メンブラン電極組立構造を記載している。プラスチックスペーサーがメンブランを取り囲み、接着剤層を有するプラスチックフィルムをスペーサーおよびメンブランの両側に接合する。これによって、メンブランの周囲に堅いフレームが設けられ、メンブラン縁部の周りに気密シールが施される。国際特許第WO00/74160号明細書は、別のメンブラン電極組立構造を開示しているが、そこでは、メンブランに接合する接着剤層を有するプラスチックフィルムにより、補強フレームが形成される。接着剤層がメンブランを越えて伸び、2つの接着剤層間に強力な接合部が形成される。
【0011】
これらの先行技術の例では、プラスチックフィルムおよび接着剤層がメンブランに接合される。メンブラン材料は、それらの水和レベルに応じてサイズ変化を受ける。メンブランが、プラスチックフィルムおよび接着剤層により形成された堅いフレームにより束縛されると、水和の変化により、メンブラン上に応力を生じ、場合により損傷を引き起こすことがある。
【0012】
国際特許第WO00/74160号明細書は、プラスチックフィルムをガス拡散基材中に埋め込めることを開示しているが、基材にプラスチックフィルムおよび接着剤層を付けることにより、メンブラン電極組立構造を密封または補強することは開示していない。本発明者らは、ガス拡散基材にカプセル封入フィルムを付けることにより、メンブラン電極組立構造を密封および/または補強できることを見出した。カプセル封入フィルムは、一般的に接合および張り合わせ方法に使用されており、裏張り層および接着剤層を有する。本発明では、接着剤層がガス拡散基材に含浸される。
【0013】
そこで、本発明は、重合体電解質メンブラン、該メンブランの両側に配置された電気触媒層、および該電気触媒層のそれぞれに接触しているガス拡散基材を備えてなるメンブラン電極組立構造であって、それぞれ裏張り層および接着剤層を備えてなるカプセル封入フィルムが、該接着剤層が各ガス拡散基材中に含浸されるように、各ガス拡散基材の少なくとも片面の縁部上に配置される、メンブラン電極組立構造を提供する。
【0014】
接着剤層は、基材の厚さ全体を通して含浸される必要は無いが、これは、特別な実施態様では好ましい場合がある。接着剤層は、基材の厚さの少なくとも25%、好ましくは少なくとも40%を通して含浸されるのが好適である。接着剤層は、基材の厚さ全体を通して含浸され、基材の面を越えて突き出るように、基材より厚くてもよい。
【0015】
裏張り層が各ガス拡散基材の少なくとも片面に接触するように、接着剤層全体が基材中に含浸されるのが好適である。
【0016】
カプセル封入フィルムは、各ガス拡散基材の少なくとも片面の縁部上に配置される。MEAが内側ポートを有する場合、周辺部の周りにだけではなく、組立構造中に縁部があってよい。カプセル封入フィルムは、基材の縁部から15mm未満、好ましくは8mm未満内の区域を覆うのが好適である。
【0017】
カプセル封入フィルムは、好適には非伝導性の自己支持型フィルム材料である裏張り層を有する。裏張り層は、ガス拡散基材中に含浸されず、ガス拡散基材と接触するのが好適である。裏張り層は、非接着性であるのが好適である。裏張りフィルムの融解温度は、メンブラン電極組立構造を製造する時に使用する温度(例えば張り合わせ温度)より高い必要があり、裏張り層は、製造温度でフィルム軟化をあまり示さないのが好ましい。好ましくは、裏張り層は、製造条件下であまり収縮しない。
【0018】
裏張り層は、燃料電池系の中に汚染物を浸出させず、水素、酸素および水に対する透過性が低い(好ましくは、重合体電解質メンブランの透過性よりも低い)材料から製造するのが好適である。さらに、裏張り層の材料は、ガス拡散基材から来る繊維による穿刺に対して耐性を有するのが好ましい。
【0019】
裏張り層は、好ましくは重合体状材料、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ化エチレン−プロピレン(FEP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)またはポリイミド(PI)、である。裏張り層は、金属被覆されたフィルム、すなわち重合体被覆された金属の薄層、でもよい。裏張り層の厚さは、1μmを超えるのが好適であり、好ましくは5μm〜50μmである。
【0020】
カプセル封入フィルムは、例えばポリエチレン系またはポリプロピレン系接着剤である接着剤層を有する。接着剤層は、ホット−メルト接着剤、感圧接着剤または熱硬化性接着剤を含むことができる。接着剤は、米国特許第6,756,147号明細書に記載されているように、エチレンとメタクリル酸の共重合体またはエチレンと酢酸ビニルの共重合体でよい。接着剤は、基材に含浸されるように、十分な流動性を有する必要がある。接着剤層は、100℃未満の温度で軟化しないのが好ましい。好ましくは、接着剤層は、製造条件下であまり収縮しない。接着剤層は、燃料電池系の中に汚染物を浸出させない材料で製造するのが好適である。
【0021】
カプセル封入フィルムは、裏張り層の片側に接着剤層を一つだけ有するのが好適であるが、特定の実施態様では、裏張り層の両側に接着剤層を有するのが好ましい場合もある。フィルムが二つの接着剤層を有する場合、これらの層の一つだけがガス拡散基材に含浸される。それらの接着剤層は、同一の、または異なった接着剤を含むことができる。
【0022】
接着剤層の厚さは、1μm〜300μmが好適であり、好ましくは20μm〜300μmである。しかし、カプセル封入フィルムが二つの接着剤層を有する場合、最終的に重合体電解質メンブランに隣接することになる接着剤層の厚さは、1μm〜10μmが好適である。
【0023】
ガス拡散基材は、当業者には公知のすべての好適なガス拡散基材でよい。典型的な基材には、炭素紙(例えばToray Industries、日本国、から市販のToray(商品名)紙)、織った炭素布地(例えばZoltek Corporation、米国、から市販のZoltek(商品名)PWB-3)または不織炭素繊維ウェブ(例えばTechnical Fibre Products、英国、から市販のOptimat 203)系の基材が挙げられる。炭素基材は、典型的には、基材中に埋め込まれた、または平らな面上に被覆された粒子状材料、もしくは両方の組合せ、で変性される。粒子状材料は、典型的にはカーボンブラックと重合体、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、の混合物である。ガス拡散基材の厚さは、150〜300μmが好適である。好ましくは、粒子状材料、例えばカーボンブラックとPTFE、の層がガス拡散基材の、電気触媒層と接触する面上にある。
【0024】
重合体電解質メンブランは、当業者には公知のあらゆる種類のイオン伝導性メンブランでよい。このメンブランは、プロトン伝導性であるのが好適である。現状技術水準のメンブラン電極組立構造では、メンブランは、過フッ化スルホン酸材料、例えばNafion(商品名)(DuPont)、Flemion(商品名)(Asahi Glass)およびAciplex(商品名)(Asahi Kasei)、を基材とすることが多い。メンブランは、プロトン伝導性材料と、他の、機械的強度のような特性を与える材料との複合材料メンブランでよい。例えば、メンブランは、ヨーロッパ特許第875524号明細書に記載されているように、プロトン伝導性メンブランおよびシリカ繊維のマトリックスを含んでなることができる。メンブランの厚さは、200μm未満が好適であり、好ましくは厚さ50μm未満である。
【0025】
電気触媒層は、電気触媒を含んでなり、この電気触媒は、細かく分割した金属粉末(メタルブラック)でよいか、または小さな金属粒子が導電性粒子状炭素担体上に分散している、担持された触媒でよい。電気触媒金属は、好適には
(i)白金族金属(白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムおよびオスミウム)、
(ii)金または銀
(iii)卑金属
あるいは合金、またはこれらの金属の、もしくはそれらの酸化物の、一種以上を含んでなる混合物から選択される。好ましい電気触媒金属は白金であり、白金は、他の貴金属、例えばルテニウム、または卑金属、例えばモリブデンまたはタングステン、と合金化することができる。電気触媒が、担持された触媒である場合、金属粒子の炭素担体材料上への装填量は、10〜100重量%が好適であり、好ましくは15〜75重量%である。
【0026】
電気触媒層は、他の成分、例えば層中のイオン伝導性を改良するために包含するイオン伝導性重合体、を含んでなるのが好適である。これらの層をメンブラン電極組立構造中に取り入れるために、これらの層をガス拡散基材上に形成するか、またはこれらの層をメンブラン上に形成することができる。
【0027】
電気触媒層は、ガス拡散基材の、カプセル封入フィルムの接着剤層で含浸された区域と接触しないのが好ましい。これは、この区域にあるすべての電気触媒がMEAの電気化学的に活性な区域の外側になり、電気化学的反応に関与できなくなるためである。さらに、気体状反応物が、活性区域の外側にある触媒に到達できる場合、不均質気相反応が起こり、その結果、メンブランにピンホールが生じる危険性がある。
【0028】
本発明の第一実施態様では、カプセル封入フィルムが、ガス拡散基材の外側面、すなわちメンブランから遠く離れた面、上に配置される。裏張り層は、ガス拡散基材の外側面に隣接し、適切に接触し、接着剤層が基材に、外側面からメンブランに向かって含浸される。この実施態様では、カプセル封入フィルムを使用してMEAの縁部区域を密封することができ、裏張り層が、ガスケットを支持するのに好適な表面を与えることができる。MEAを密封するために、カプセル封入フィルムの接着剤層がメンブランに適切に接合する。
【0029】
メンブランは、ガス拡散基材間に位置し、接着剤層が基材を越えて伸び、突き出ているメンブランに直接接合できるのが好ましい。メンブランは、ガス拡散基材を越えて、0.5mm〜40mm、好ましくは0.5mm〜5mm、最も好ましくは0.5mm〜2mm突き出るのが好適である。あるいは、メンブランは、ガス拡散基材と同じ程度に伸びているか、またはガス拡散基材の内側にあってもよい。メンブランが基材を越えて伸びず、MEAの縁部区域を密封するのが望ましい場合、接着剤層は、基材の厚さ全体を通して含浸され、メンブランに接合する必要がある。
【0030】
カプセル封入フィルムは、ガス拡散基材の縁部を越えて伸びるのが好適であり、メンブランが突き出ている場合、2枚のカプセル封入フィルムの接着剤層が互いに接合でき、メンブラン縁部および基材縁部を包み込むように、メンブランの縁部を越えて伸びるのが好ましい。
【0031】
この第一実施態様では、MEAは、カプセル封入フィルムの裏張り層上に配置された一個以上のガスケットをさらに備えてなる。裏張り層は、MEAの縁部区域を補強するので、損傷の危険性がほとんど無しに、ガスケットをこの区域に対して圧縮することができる。ガスケットは、最終的にはフィールドフロープレートに対して圧縮される。ガスケットは、圧縮後、その本来の形状を回復することができる弾性材料から形成するのが好適である。ガスケットは、重合体状材料から形成するのが好適である。好ましいガスケット材料には、エラストマー/ゴム(例えばエチレンプロピレンゴム)、フルオロエラストマー(例えばViton(商品名)(DuPont Dow Elastomers))、クロロエラストマー(例えばポリクロロプレン、クロロスルホン化ポリエチレン)、熱可塑性エラストマー(例えばKraton(商品名)またはDynaflex(商品名)(GLS Corp))、フルオロシリコーン(例えばフルオロアルキルポリシロキサン)、シリコーンゴムまたは熱可塑性樹脂(例えばエチレン酢酸ビニル、フッ素化エチレンプロピレン共重合体またはSantoprene(商品名)(Bayer))が挙げられる。ガスケットは、予備成形し、MEAに取り付けるか、またはその場で形成することができる。
【0032】
本発明の第二実施態様では、カプセル封入フィルムをガス拡散基材の内側面、すなわちメンブランに隣接する面、上に配置する。裏張り層がガス拡散基材の内側面と接触し、接着剤層が基材に、内側面から外側面に向かって含浸される。この実施態様では、カプセル封入フィルムがガス拡散基材の縁部区域とメンブランとの間のバリヤーを形成する。これは、このバリヤーにより、ガス拡散基材から来る繊維がメンブラン材料を穿刺し、メンブランを横切って電気的な接触を形成することが阻止されるので、有利である。メンブランを横切って電気的な短絡がある場合、MEAの性能が低下し、メンブランが損傷を受ける可能性がある。さらに、メンブランが穿刺されると、反応物ガスが交叉する傾向がより大きくなり、このために不均質な気相反応が起こり、発熱し、メンブランにさらに損傷を与えることになる。
【0033】
カプセル封入フィルムは、ただ一つの接着剤層を有することができ、これが基材に、内側面から外側面に向かって含浸されなければならない。この場合、裏張り層はメンブランと直接接触し、カプセル封入フィルムとメンブランとの間に接着は無い。この利点は、メンブランが、裏張り層に接着する束縛無しに、サイズを変えられることである。裏張りフィルムの厚さは、接触損失を防止するために、電気触媒層の厚さと等しいのが好適である。あるいは、カプセル封入フィルムは、2個の接着剤層を有し、第一接着剤層が基材に含浸され、第二接着剤層がメンブランに接着することができる。この利点は、メンブランとカプセル封入フィルムとの間に効果的な密封部があることである。第二接着剤層の厚さは、第一接着剤層の厚さよりも小さいのが好適である。好ましくは、第二接着剤層の厚さは、0.1〜20μm、より好ましくは1〜10μmである。最も好ましくは、裏張り層と第二接着剤層を組み合わせた厚さは、電気触媒層の厚さと等しい。
【0034】
カプセル封入フィルムをガス拡散基材の内側面上に配置することにより、MEAの縁部区域が機械的に補強される。メンブランおよびカプセル封入フィルムがガス拡散基材を越えて伸び、MEAの周辺部の周りに、メンブランの、カプセル封入フィルムと接触している区域があるのが好適である。メンブランとカプセル封入フィルムがある区域は、カプセル封入フィルムが無い類似の区域よりも強力であるので、ガスケットを配置できる好適な表面が得られる。
【0035】
ガス拡散基材の内側面上に配置されたカプセル封入フィルムは、接着剤層が基材の厚さ全体を通して含浸された場合に、ガス拡散基材を密封することができる。あるいは、接着剤層は、基材の厚さを通して一部だけ、例えば厚さの20〜60%、含浸され、基材の残りの部分(すなわち接着剤が含浸した区域と外側表面との間の部分)はエラストマー状材料で含浸することもできる。好適なエラストマー状材料には、シリコーン、フルオロシリコーン、フルオロエラストマー(例えばViton)、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)ゴム、熱可塑性エラストマー(例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体)および液晶重合体エラストマーが挙げられる。エラストマー状材料は、基材の外側面上にも存在することができ、好ましくはガスケット部材を形成する。
【0036】
本発明の第三実施態様では、カプセル封入フィルムが、本発明の第一実施態様に記載するように、ガス拡散基材の外側面上に配置され、本発明の第二実施態様に記載するように、別のカプセル封入フィルムがガス拡散基材の内側面上に配置される。従って、これらのカプセル封入フィルムは、基材縁部とメンブランの間の密封、補強およびバリヤーを与える。
【0037】
本発明のメンブラン電極組立構造の製造に使用できる多くの方法がある。一方法では、カプセル封入フィルムを予め形成された5層張り合わせ(積層した)メンブラン電極組立構造に貼り付け、それによってメンブラン電極組立構造を密封する。本発明は、メンブラン電極組立構造を密封する方法であって、下記の、
a)メンブラン、該メンブランの両側に配置された電気触媒層、および該電気触媒層と接触しているガス拡散基材を備えてなる、5層の張り合わせたメンブラン電極組立構造を用意する工程、
b)それぞれ裏張り層および接着剤層を備えてなる2枚のカプセル封入フィルムを用意し、該カプセル封入フィルムを、該ガス拡散基材の外側面の縁部に隣接して、該接着剤層が該ガス拡散基材に面するように配置する工程、および
c)該接着剤層が該ガス拡散基材中に含浸され、メンブランに接合するように、該カプセル封入フィルムをプレスする工程、
を含んでなる、方法を提供する。
【0038】
該メンブランが該ガス拡散基材を越えて突き出る場合、本方法は、
d)該カプセル封入フィルムを、該カプセル封入フィルムが該突き出たメンブランと接合するようにプレスする、
さらなる工程を有する必要がある。
【0039】
接着剤がホット−メルト接着剤である場合、プレス工程は、接着剤の融解温度より上で行う必要がある。適切な圧力は、使用する材料によって異なるが、50〜250psiの範囲内であろう。
【0040】
第二の方法では、カプセル封入フィルムをガス拡散基材に貼り付けることができ、同時にメンブラン、電気触媒層およびガス拡散基材を張り合わせ、メンブラン電極組立構造を形成する。密封および/または補強されたメンブラン電極組立構造が、その構成部品から、単一工程で製造される。この密封および/または補強されたメンブラン電極組立構造の製造方法は、下記の、
a)メンブラン、該メンブランの両側と接触している電気触媒層、および該電気触媒層と接触しているガス拡散基材を備えてなる、張り合わせていない5層組立構造を用意する工程、
b)それぞれ裏張り層および接着剤層を備えてなるカプセル封入フィルムを用意し、該カプセル封入フィルムを、該ガス拡散基材の外側および/または内側面の縁部に隣接して、該接着剤層が該ガス拡散基材に面するように配置する工程、および
c)該カプセル封入フィルムおよび該張り合わせていない5層組立構造をプレスし、該接着剤層が該ガス拡散基材中に含浸されている、張り合わされたメンブラン電極組立構造を形成する工程、
を含んでなる。
【0041】
張り合わせていない5層組立構造は、2個のガス拡散電極間に配置されたメンブラン、2個のガス拡散基材間に配置された触媒被覆されたメンブラン、または1個のガス拡散電極と1個のガス拡散基材との間に配置された、1個の触媒作用を持たせた面を有するメンブランを備えてなることができる。この方法により密封されたメンブラン電極組立構造を製造するには、カプセル封入フィルムをカプセル封入フィルムの外側縁部に隣接して配置し、接着剤層をガス拡散基材に含浸させ、メンブランに接合すべきである。
【0042】
圧力は、5層組立構造の構成部品を張り合わせるのに十分でなければならず、好適には50〜250psiである。
【0043】
第三の方法では、基材をメンブランおよび電気触媒層と組み合わせる前に、カプセル封入フィルムをガス拡散基材に貼り付けることができる、すなわちメンブラン電極組立構造を形成するのに2つのプレス工程が必要になる。従って、本発明は、裏張り層および接着剤層を備えてなるカプセル封入フィルムを、ガス拡散基材の面の縁部上に、接着剤層がガス拡散基材中に含浸されるように、配置する、ガス拡散基材を提供する。電気触媒層は、カプセル封入フィルムをガス拡散基材に貼り付ける前またはその後に、ガス拡散基材に付けることができる。従って、本発明は、ガス拡散基材上に堆積させた電気触媒層を備えてなるガス拡散電極であって、裏張り層および接着剤層を備えてなるカプセル封入フィルムを、ガス拡散基材の面の縁部上に、接着剤層がガス拡散基材中に含浸されるように、配置する、ガス拡散電極をさらに提供する。密封および/または補強されたメンブラン電極組立構造は、下記の、
a)それぞれ裏張り層および接着剤層を備えてなるカプセル封入フィルムを用意し、該カプセル封入フィルムを、ガス拡散基材の縁部に隣接して、該接着剤層が該ガス拡散基材に面するように配置する工程、
b)該カプセル封入フィルムをプレスし、該接着剤層を該ガス拡散基材中に含浸させる工程、
c)メンブラン、該メンブランの両側と接触している電気触媒層、および該電気触媒層と接触している、含浸されたガス拡散基材を備えてなる、張り合わせていない(積層させていない)5層組立構造を製造する工程、および
d)該張り合わせていない5層組立構造をプレスし、張り合わされたメンブラン電極組立構造を形成する工程、
を含んでなる方法により、製造される。
【0044】
張り合わせていない5層組立構造は、2個のガス拡散電極間に配置されたメンブラン、2個のガス拡散基材間に配置された触媒被覆されたメンブラン、または1個のガス拡散電極と1個のガス拡散基材との間に配置された、1個の触媒作用を持たせた面を有するメンブランを備えてなることができる。該基材、メンブランおよび電気触媒層を組み立て、張り合わせていない5層組立構造を形成する時、該カプセル封入フィルムは、該ガス拡散基材の内側面および/または外側面上にあってよい。
【0045】
接着剤層が、基材の厚さの一部だけを通して含浸され、基材の残りの部分はエラストマー状材料で含浸されたメンブラン電極組立構造を製造する方法は、張り合わせたメンブラン電極組立構造を型の中に配置し、エラストマー状材料が基材の一部の中に含浸されるように、メンブラン電極組立構造の縁部の周りに、エラストマー状材料の成形された区域を形成する工程をさらに含んでなる。
【0046】
該成形された区域は、射出成形または圧縮成形を使用して形成することができる。
【0047】
本発明をより深く理解するために、図式的な図面を参照する。
【0048】
図1の工程(i)は、メンブラン(1)、2個のガス拡散基材(2)および2個の電気触媒層(3)を備えてなる5層の張り合わせたメンブラン電極組立構造を示す。電気触媒層(3)は、基材の全区域と接触していない。メンブラン(1)は、基材(2)を越えて伸びている。裏張り層(5)および接着剤層(4)を備えてなるカプセル封入フィルムが、基材(2)の外側面の縁部上に配置されている。工程(ii)で、カプセル封入フィルムは、矢印により示す位置で高温プレス(6)され、接着剤層がガス拡散基材中に含浸される。電気触媒層は含浸された区域まで伸びていないので、すべての電気触媒が、MEAの電気化学的に活性な区域に存在できる。工程(iii)で、カプセル封入フィルムは、矢印により示す位置でさらに高温プレス(6)されるので、接着剤が、突き出たメンブランに接合する。カプセル封入フィルムは、突き出たメンブランを越えて伸びているので、工程(iii)で、突き出たメンブランは接着剤により包み込まれる。
【0049】
図2の工程(i)は、ガス拡散基材(2)および電気触媒層(3)を備えてなる2個のガス拡散電極の間にあるメンブラン(1)を示す。メンブラン(1)は、ガス拡散基材(2)と同じ程度に伸びているが、電気触媒層(3)は基材の全区域と接触していない。裏張り層(5)および接着剤層(4)を備えてなるカプセル封入フィルムが、基材(2)の外側面の縁部上に配置されている。工程(ii)で、カプセル封入フィルムは、矢印により示す位置で高温プレス(6)される。ガス拡散電極がメンブランに張り合わされ、接着剤層が、ガス拡散基材の厚さ全体を通して含浸され、メンブランに接合し、対向するカプセル封入フィルムの接着剤層が互いに接合される。
【0050】
図3の工程(i)は、ガス拡散基材(2)、および基材(2)の内側面の縁部上に配置された、裏張り層(5)および接着剤層(4)を備えてなるカプセル封入フィルムを示す。工程(ii)で、カプセル封入フィルムは、矢印により示す位置で高温プレス(6)され、接着剤層(4)が、ガス拡散基材(2)中に含浸される。メンブラン(1)および2個の電気触媒層(3)を備えてなる、触媒被覆されたメンブランが、ガス拡散基材(2)間に配置される。メンブラン(1)はガス拡散基材(2)を越えて伸びている。工程(iii)で、ガス拡散基材(2)が、矢印により示す位置で高温プレス(6)され、触媒被覆されたメンブラン(1、3)に張り合わされる。
【0051】
図4の工程(i)は、ガス拡散基材(2)および電気触媒層(3)を備えてなる2個のガス拡散電極の間にあるメンブラン(1)を示す。電気触媒層(3)は基材の全区域と接触していない。メンブラン(1)は、基材(2)を越えて伸びている。裏張り層(5)、第一接着剤層(4)および第二接着剤層(7)を備えてなるカプセル封入フィルムが、基材(2)の内側面の縁部上に配置されている。工程(ii)で、カプセル封入フィルムは、矢印により示す位置で高温プレス(6)される。ガス拡散電極がメンブランに張り合わされ、第一接着剤層(4)がガス拡散基材(2)中に含浸され、第二接着剤層(7)がメンブランに接着する。カプセル封入フィルムは、メンブランの縁部を越えて伸びており、裏張り層(5)間の区域が接着剤により充填される。工程(iii)で、エラストマー状材料が、メンブラン電極組立構造上に、エラストマー状材料(8)がガス拡散基材(2)に含浸され、基材(2)の縁部およびカプセル封入フィルム(4、5、7)を包み込むように、成形される。エラストマー状材料は、ガスケット部材(9)も形成する。
【0052】
図5の工程(i)は、メンブラン(1)および2個の電気触媒層(3)を備えてなる触媒被覆されたメンブランを示す。ガス拡散基材(2)は、触媒被覆されたメンブランの両側に配置されている。メンブラン(1)は、ガス拡散基材(2)を越えて伸びている。電気触媒層(3)は、基材の全区域と接触していない。裏張り層(5)および接着剤層(4)を備えてなるカプセル封入フィルムが、基材(2)の内側面および外側面の縁部上に配置されている。工程(ii)で、カプセル封入フィルムは、矢印により示す位置で高温プレス(6)される。ガス拡散基材は、触媒被覆されたメンブランに張り合わされ、接着剤層がガス拡散基材中に含浸され、互いに接合される。裏張り層(5)は、ガス拡散基材(2)の外側面上で、ガス拡散基材(2)の内側面とメンブラン(1)との間に位置する。
【0053】
ここで、本発明を例により説明するが、これらの例は、例示のためであり、本発明を制限するものではない。
【0054】
例1
2個の200μmToray(商品名)TGP-H-060ガス拡散基材(それぞれ、縁部周囲の1cm境界区域を除いて、一面を横切ってカーボンブラック/PTFEベース層を含む)および30μmFlemion(商品名)SH-30メンブランからMEAを製造した。炭素担持された白金触媒およびNafion(商品名)イオノマーを含んでなる触媒層を2個の基材のベース層の上に塗布した。触媒作用を持たせた基材およびメンブランを張り合わせ製法で組み合わせた。2個の基材は同じ寸法を有し、メンブランが基材の縁部を越えて1mm伸びている。
【0055】
カプセル封入フィルム(Morane Ltd、英国、から購入)をMEAの外側縁部に隣接して配置し、図1に示すように2工程プレス製法で貼り付けた。第一工程では、カプセル封入フィルムを基材上に圧力100psiで30秒間プレスした。第二工程では、カプセル封入フィルムを突き出たメンブラン上に圧力200psiで1分間接合させた。両工程は、95℃で行った。フィルムの裏張り層は、20μmポリエステル層であり、接着剤層は55μmポリエチレン層であった。
【0056】
カプセル封入フィルムは、突き出たメンブランの縁部を越えて伸びていたので、2個の接着剤層を一つに接合した。この2工程プレス製法の後、カプセル封入フィルムの縁部を切り取った。
【0057】
MEAを温水(80℃)中に288時間入れ、48時間毎に漏れ試験した。この漏れ試験では、MEAを、2枚のステンレス鋼製の板間に配置した。入口パイプを一方の板に取り付け、MEAに空気を供給するのに使用した。第二の板には出口パイプを取り付けた。両パイプはバルブを含んでいた。平面内漏れ試験を行い、ガスがMEAの縁部から漏れるか、否かを確認した。出口パイプ中のバルブを閉じ、空気を3psiで入口パイプを通して作用させた。圧力は降下せず、MEAの縁部からガスが漏れていないことを示していた。平面を通る漏れ試験を行い、ガスがMEAを横切って漏れるか、否かを確認した。3psiの窒素を入口パイプを通して作用させ、出口パイプ上のバルブは開いた。出口パイプを通って離れるガスの量を測定した。メンブランには、固有のガス透過性があるので、一定量のガスがMEAを横切って移動すると予想された。出口パイプを通って離れるガスの量は、メンブランを通して透過すると予想されるガスの計算レベルと一致しており、このMEAには、ピンホールのような余分な漏れ経路は無いことを示している。
【0058】
例2
例1を繰り返したが、ただし、カプセル封入フィルムは30μmポリエステル裏張り層および55μmポリエチレン接着剤層を有していた。漏れ試験は、このMEAが密封されていることを示していた。
【0059】
例3
例1を繰り返したが、ただし、カプセル封入フィルムは20μmBOPP裏張り層および105μmポリエチレン接着剤層を有していた。漏れ試験は、このMEAが密封されていることを示していた。
【0060】
例4
2個の200μmToray(商品名)TGP-H-060ガス拡散基材(それぞれ、一全面を横切って、カーボンブラック/PTFEベース層を含む)および30μmFlemion(商品名)SH-30メンブランからMEAを製造した。炭素担持された白金触媒およびNafion(商品名)イオノマーを含んでなる触媒層を2個の基材のベース層の上に塗布したが、基材縁部の周囲には、触媒作用を持たせていない境界を残した。12μmポリエステル裏張り層および30μmポリエチレン接着剤層を有するカプセル封入フィルムを、触媒作用を持たせた基材とメンブランの間に、裏張り層がメンブランと接触するように配置した。触媒作用を持たせた基材、カプセル封入フィルムおよびメンブランを、200psiを超える圧力をかけ、150℃で2分間プレスすることにより、張り合わせた。2個の基材は同じ寸法を有し、メンブランは基材の縁部を越えて30mm伸びていた。カプセル封入フィルムは、メンブランの縁部に伸び、基材を5mm横切っていた。補強されたMEAの縁部を切り取ってから、燃料電池に組み立てた。
【0061】
MEAを2枚のフィールドフロープレートの間に挟み、下側フィールドフロープレートに隣接するガスケットを配置し、燃料電池に組み立てた。電池をポテンシオスタットに接続し、電池を横切って0.3Vを印加し、電流を測定することにより、MEAを横切る電気的短絡を測定した。電流から抵抗を計算し、表1に示す。
【0062】
比較例1
例4を繰り返したが、ただし、カプセル封入フィルムはMEAに組み込まなかった。
【0063】
例5
例4を繰り返したが、ただし、メンブランは、Flemion(商品名)重合体および無定形シリカ繊維を含む30μm複合材料メンブランであった。
【0064】
比較例2
例5を繰り返したが、ただし、カプセル封入フィルムはMEAに組み込まなかった。
【0065】
抵抗測定
表1は、例4および5および比較例1および2に関する抵抗測定を示す。カプセル封入フィルムを、MEA中の基材の内側面上に包含することにより、MEAを横切る電気的短絡が低減することは明らかである。
【0066】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明のメンブラン電極組立構造を密封する方法を図式的に示す図である。
【図2】図2は、本発明の密封されたメンブラン電極組立構造を製造する方法を図式的に示す図である。
【図3】図3は、本発明の補強されたメンブラン電極組立構造を製造する方法を図式的に示す図である。
【図4】図4は、本発明の密封され、補強されたメンブラン電極組立構造を製造する方法を図式的に示す図である。
【図5】図5は、本発明の密封され、補強されたメンブラン電極組立構造を製造する方法を図式的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メンブラン電極組立構造であって、
重合体電解質メンブランと、前記メンブランの両側に配置された電気触媒層と、および前記電気触媒層のそれぞれに接触しているガス拡散基材とを備えてなり、
裏張り層および接着剤層をそれぞれ備えてなるカプセル封入フィルムが、各ガス拡散基材の少なくとも片面の縁部上に配置され、前記接着剤層が各ガス拡散基材中に含浸されてなる、メンブラン電極組立構造。
【請求項2】
前記裏張り層が、各ガス拡散基材の少なくとも片面に接触してなる、請求項1に記載のメンブラン電極組立構造。
【請求項3】
前記裏張り層の厚さが5μm〜50μmである、請求項1または2に記載のメンブラン電極組立構造。
【請求項4】
前記接着剤層の厚さが1μm〜300μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のメンブラン電極組立構造。
【請求項5】
前記電気触媒層が、前記カプセル封入フィルムの前記接着剤層で含浸された前記ガス拡散基材の区域と接触されていない、請求項1〜4のいずれか一項に記載のメンブラン電極組立構造。
【請求項6】
前記カプセル封入フィルムが、前記ガス拡散基材の外側面上に配置されてなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のメンブラン電極組立構造。
【請求項7】
前記カプセル封入フィルムの前記接着剤層が前記メンブランに接合してなる、請求項6に記載のメンブラン電極組立構造。
【請求項8】
前記メンブランが前記ガス拡散基材を越えて伸びてなり、かつ、前記接着剤層が前記突き出ているメンブランに直接接合してなる、請求項6または7に記載のメンブラン電極組立構造。
【請求項9】
前記メンブランが、前記ガス拡散基材を越えて0.5mm〜40mm伸びている、請求項8に記載のメンブラン電極組立構造。
【請求項10】
前記カプセル封入フィルムが、前記ガス拡散基材の縁部を越え伸び、かつ、前記メンブランの縁部を越えて伸び、並びに
2枚のカプセル封入フィルムの前記接着剤層が互いに接合し、前記メンブラン縁部および基材縁部を包み込んでなる、請求項6〜9のいずれか一項に記載のメンブラン電極組立構造。
【請求項11】
前記カプセル封入フィルムの前記裏張り層の上に配置された一個以上のガスケットをさらに備えてなる、請求項6〜10のいずれか一項に記載のメンブラン電極組立構造。
【請求項12】
前記カプセル封入フィルムが、前記ガス拡散基材の内側面上に配置されてなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のメンブラン電極組立構造。
【請求項13】
前記カプセル封入フィルムが唯一1個の接着剤層を有し、かつ、前記カプセル封入フィルムと前記メンブランとの間が接着されていない、請求項12に記載のメンブラン電極組立構造。
【請求項14】
前記裏張りフィルムの厚さが、前記触媒層の厚さとほぼ等しい、請求項13に記載のメンブラン電極組立構造。
【請求項15】
前記カプセル封入フィルムが2個の接着剤層を有し、
第一接着剤層が前記基材に含浸され、かつ、第二接着剤層が前記メンブランに接着する、請求項12に記載のメンブラン電極組立構造。
【請求項16】
前記裏張り層と前記第二接着剤層を組み合わせた厚さが、前記触媒層の厚さと等しい、請求項15に記載のメンブラン電極組立構造。
【請求項17】
前記接着剤層が、前記基材の厚さを通して一部だけ含浸され、かつ、前記基材の残りの部分がエラストマー状材料で含浸される、請求項12〜16のいずれか一項に記載のメンブラン電極組立構造。
【請求項18】
前記カプセル封入フィルムが、前記ガス拡散基材の外側面および内側面の上に配置されてなる、請求項1〜17のいずれか一項に記載のメンブラン電極組立構造。
【請求項19】
メンブラン電極組立構造を密封する方法であって、
a)メンブランと、前記メンブランの両側に配置された電気触媒層と、および前記電気触媒層と接触しているガス拡散基材とを備えてなる、5層の張り合わせたメンブラン電極組立構造を用意し、
b)裏張り層および接着剤層それぞれを備えてなる2枚のカプセル封入フィルムを用意し、前記カプセル封入フィルムを、前記ガス拡散基材の外側面の縁部に隣接して、前記接着剤層が前記ガス拡散基材に面するように配置し、および
c)前記カプセル封入フィルムをプレスし、前記接着剤層が前記ガス拡散基材中に含浸され、前記メンブランに接合することを含んでなる、方法。
【請求項20】
前記メンブランが前記ガス拡散基材を越えて伸びてなり、
d)前記カプセル封入フィルムをプレスし、前記カプセル封入フィルムが前記突き出たメンブランと接合することをさらに含んでなる、請求項19に記載のメンブラン電極組立構造を密封する方法。
【請求項21】
メンブラン電極組立構造の製造方法であって、
a)メンブランと、前記メンブランの両側と接触している電気触媒層と、および前記電気触媒層と接触しているガス拡散基材とを備えてなる、張り合わせていない5層組立構造を用意し、
b)裏張り層および接着剤層それぞれを備えてなるカプセル封入フィルムを用意し、前記カプセル封入フィルムを、前記ガス拡散基材の外側および/または内側面の縁部に隣接して、前記接着剤層が前記ガス拡散基材に面するように配置し、および
c)前記カプセル封入フィルムおよび前記張り合わせていない5層組立構造をプレスし、前記接着剤層が前記ガス拡散基材中に含浸される、張り合わされたメンブラン電極組立構造を形成することを含んでなる、製造方法。
【請求項22】
メンブラン電極組立構造の製造方法であって、
a)裏張り層および接着剤層それぞれを備えてなるカプセル封入フィルムを用意し、前記カプセル封入フィルムを、ガス拡散基材の縁部に隣接して、前記接着剤層が前記ガス拡散基材に面するように配置し、
b)前記カプセル封入フィルムをプレスし、前記接着剤層を前記ガス拡散基材中に含浸させ、
c)メンブランと、前記メンブランの両側と接触している電気触媒層と、および前記電気触媒層と接触している含浸されたガス拡散基材とを備えてなる、張り合わせていない5層組立構造を製造し、および
d)前記張り合わせていない5層組立構造をプレスし、張り合わされたメンブラン電極組立構造を形成することを含んでなる、製造方法。
【請求項23】
前記カプセル封入フィルムが前記ガス拡散基材の内側面上にのみ配置され、
前記張り合わせたメンブラン電極組立構造を型の中に配置し、および
前記メンブラン電極組立構造の縁部の周りに、エラストマー状材料の成形された区域を形成し、前記エラストマー状材料を前記基材の一部の中に含浸することをさらに含んでなる、請求項21または22に記載のメンブラン電極組立構造の製造方法。
【請求項24】
裏張り層および前記接着剤層を備えてなるカプセル封入フィルムが、前記ガス拡散基材の面の縁部上に配置され、前記接着剤層が前記ガス拡散基材中に含浸されてなる、ガス拡散基材。
【請求項25】
ガス拡散電極であって、
ガス拡散基材上に堆積させた電気触媒層を備えてなり、
裏張り層および接着剤層を備えてなるカプセル封入フィルムを、前記ガス拡散基材の面の縁部上に配置し、前記接着剤層が前記ガス拡散基材中に含浸されてなる、ガス拡散電極。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2007−503688(P2007−503688A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524406(P2006−524406)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003334
【国際公開番号】WO2005/020356
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】