モデル構築システム、モデル構築方法及びプログラム
【課題】はり要素モデルまたはシェル要素モデルを使用して、断面形状が不均一な対象物に対する所望の解析を短時間に精度よく解析することが可能なモデル構築システム、モデル構築方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】モデル構築システム10は、対象物に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、入力情報記憶部26の幾何学情報記憶部52に基づいて、設定軸に直交する面で区切って複数の区間に分割する区間分割部21と、対象物の実形状に依存する特性値を、材料情報記憶部51に記憶されている対象物の材料情報と幾何学情報記憶部52に記憶されているCAD等の対象物の幾何学情報に基づいて、設定軸に沿った座標の関数を用いて変換し、区間分割部21によって分割された区間Vi毎の対象物の解析要素に、変換した特性値を割り付ける特性値割付部22と、を備えている。
【解決手段】モデル構築システム10は、対象物に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、入力情報記憶部26の幾何学情報記憶部52に基づいて、設定軸に直交する面で区切って複数の区間に分割する区間分割部21と、対象物の実形状に依存する特性値を、材料情報記憶部51に記憶されている対象物の材料情報と幾何学情報記憶部52に記憶されているCAD等の対象物の幾何学情報に基づいて、設定軸に沿った座標の関数を用いて変換し、区間分割部21によって分割された区間Vi毎の対象物の解析要素に、変換した特性値を割り付ける特性値割付部22と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータを用いた有限要素法解析に使用するモデル構築システム、モデル構築方法及びプログラムに関する。特に、はり要素モデルまたはシェル要素モデルを使用して断面形状が不均一な対象物を解析するためのモデル構築システム、モデル構築方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の構造や特性を解析する方法として有限要素法が用いられている。一般に、有限要素法は、対象物が複雑な形状をしている場合は、対象物の形状の作成作業やメッシュの分割作業に時間がかかってしまうという問題があった。そこで、この対象物の形状の作成作業やメッシュの分割作業を短時間に行うための様々な方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、はり要素モデルまたはシェル要素モデルを使用して断面形状が不均一な対象物の解析を行う方法として、モデルの断面形状は変化させずに、対象物の断面形状の変化に応じて各区間に割り付ける特性値を段階的に変化させる解析方法がある。
【0004】
上述の方法は、例えば、図14に示すような、円筒状のゴム製部品300を円形の穴を開けた鋼製のパネル301にはめ込んだときに、パネル301から抜けないように厚さを部分的に変化させたゴム製部品300を、シェル要素モデルを用いて解析する場合、厚さを変化させる代わりに、応力―歪特性の応力値に対して対象物の厚さ変化に応じて段階的に変化させた係数を掛けて応力―歪特性を変化させることにより応力解析を行う解析方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−334276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した対象物の断面形状の変化に応じて各区間に割り付ける特性値を段階的に変化させる解析方法では、断面形状が変化する部分において、対象物の長手方向に対して周期的にまたは対称的にその形状が変化しない場合、あるいは、突発的にその形状が大きく変化する場合には、区間分割の数が多くなり、各区間に割り付ける特性値を算出するのに多大な時間がかかってしまうという問題があった。その結果、対象物を解析するのに多大な時間がかかってしまうという問題があった。
【0007】
また、対象物が非常に複雑な断面形状を有する場合(例えば、外形の起伏形状と厚さの変動が連動していないような対象物の場合)、上述した対象物の断面形状の変化に応じて各区間に割り付ける特性値を段階的に変化させる解析方法を適用することは、困難であった。
【0008】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、はり要素モデルまたはシェル要素モデルを使用して、断面形状が不均一な対象物に対する所望の解析(応力解析、熱解析、回路解析、流体解析等)を短時間に精度よく解析することが可能なモデル構築システム、モデル構築方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した従来の問題点を解決すべく下記の発明を提供する。
本発明の第1の態様にかかるモデル解析システムは、コンピュータを使用して、はり要素モデルまたはシェル要素モデルにより断面形状の不均一な対象物を解析するためのモデル構築システムであって、前記対象物に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、前記対象物の幾何学情報に基づいて、設定した軸に直交する面で区切って複数の区間に分割する区間分割手段と、前記対象物の実形状に依存する特性値を、前記対象物の材料情報及び幾何学情報に基づいて、前記軸に沿った座標の関数を用いて変換し、前記区間分割手段によって分割された前記区間毎の前記対象物の解析要素に、変換した特性値を割り付ける特性値割付手段と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様にかかるモデル解析システムは、本発明の第1の態様にかかるモデル解析システムにおいて、前記区間分割手段が、所定の軸設定ルール及び前記幾何学情報に基づいて、前記対象物の解析に最適な前記軸を設定する軸設定手段と、前記解析空間もしくは前記解析モデル自体を、前記幾何学情報に基づいて、前記軸設定手段によって設定された前記軸に直交する面で区切って複数の前記区間に分割して、前記区間毎の前記解析要素の前記軸における位置である要素位置を設定する要素位置設定手段と、前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記幾何学情報に基づいて、前記対象物の形状を特徴付ける特徴点を、前記区間毎に取得する特徴点取得手段と、を備え、
前記特性値割付手段が、前記材料情報及び前記幾何学情報に基づいて、前記特性値を、前記軸設定手段によって設定した前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換する特性値変換手段と、前記特性値変換手段によって変換された前記特性値と、前記要素位置設定手段によって設定した前記区間毎の前記要素位置とを対応付ける特性値対応付手段と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の態様にかかるモデル解析システムは、本発明の第2の態様にかかるモデル解析システムにおいて、前記特性値変換手段が、前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記特徴点取得手段によって取得した前記特徴点に基づいて、前記要素位置における前記軸に沿った座標の関数で表した前記対象物の断面形状を取得し、取得した前記断面形状と前記材料情報とに基づいて、前記特性値を前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換することを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の態様にかかるモデル解析システムは、本発明の第2の態様にかかるモデル解析システムにおいて、前記特性値変換手段が、前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状である場合に、前記形状曲線または前記形状曲面の関数で表される前記対象物の形状を、前記軸に沿った座標の関数で表した前記対象物の形状に変換し、変換した前記対象物の形状と前記材料情報とに基づいて、前記特性値を前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換することを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の態様にかかるモデル解析システムは、本発明の第2の態様にかかるモデル解析システムにおいて、前記要素位置設定手段が、前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記区間を、前記軸に対して略直交する前記対象物の断面形状が近似的に一定であると見なせる十分微小な領域となるように分割することを特徴とする。
【0014】
本発明の第6の態様にかかるモデル解析システムは、本発明の第2の態様にかかるモデル解析システムにおいて、前記軸設定ルールが、前記対象物に対してはり要素モデルを適用できる場合、はり要素モデルのはりの所望の位置における接線を、前記軸に設定することを特徴とする。
【0015】
本発明の第7の態様にかかるモデル解析システムは、本発明の第2の態様にかかるモデル解析システムにおいて、前記軸設定ルールが、前記対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、前記対象物の形状が略軸対称である場合、前記対象物の形状の対称軸を、前記軸に設定することを特徴とする。
【0016】
本発明の第8の態様にかかるモデル解析システムは、本発明の第2の態様にかかるモデル解析システムにおいて、前記軸設定ルールが、前記対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、前記対象物の形状が略軸対称ではない場合、仮の軸に対して略直交する前記対象物の断面図形の数が最小となるような前記仮の軸を、前記軸に設定することを特徴とする。
【0017】
本発明の第1の態様にかかるモデル解析方法は、コンピュータを使用して、はり要素モデルまたはシェル要素モデルにより断面形状の不均一な対象物を解析するためのモデル構築方法であって、(a)前記対象物に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、前記対象物の幾何学情報に基づいて、設定した軸に直交する面で区切って複数の区間に分割する工程と、(b)前記対象物の実形状に依存する特性値を、前記対象物の材料情報及び幾何学情報に基づいて、前記軸に沿った座標の関数を用いて変換し、前記工程(a)によって分割された前記区間毎の前記対象物の解析要素に、変換した特性値を割り付ける工程と、を備えていることを特徴とする。
【0018】
本発明の第2の態様にかかるモデル解析方法は、本発明の第1の態様にかかるモデル解析方法において、前記工程は(a)が、(a1)所定の軸設定ルール及び前記幾何学情報に基づいて、前記対象物の解析に最適な前記軸を設定する工程と、(a2)前記解析空間もしくは前記解析モデル自体を、前記幾何学情報に基づいて、前記工程(a1)によって設定された前記軸に直交する面で区切って複数の前記区間に分割して、前記区間毎の前記解析要素の前記軸における位置である要素位置を設定する工程と、(a3)前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記幾何学情報に基づいて、前記対象物の形状を特徴付ける特徴点を、前記区間毎に取得する工程と、を備え、
前記工程(b)が、(b1)前記材料情報及び前記幾何学情報に基づいて、前記特性値を、前記工程(a1)によって設定した前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換する工程と、(b2)前記工程(b1)によって変換された前記特性値と、前記工程(a2)によって設定した前記区間毎の前記要素位置とを対応付ける工程と、を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明の第3の態様にかかるモデル解析方法は、本発明の第2の態様にかかるモデル解析方法において、前記工程(b1)が、前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記工程(a3)によって取得した前記特徴点に基づいて、前記要素位置における前記軸に沿った座標の関数で表した前記対象物の断面形状を取得し、取得した前記断面形状と前記材料情報とに基づいて、前記特性値を前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換することを特徴とする。
【0020】
本発明の第4の態様にかかるモデル解析方法は、本発明の第2の態様にかかるモデル解析方法において、前記工程(b1)が、前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状である場合に、前記形状曲線または前記形状曲面の関数で表される前記対象物の形状を、前記軸に沿った座標の関数で表した前記対象物の形状に変換し、変換した前記対象物の形状と前記材料情報とに基づいて、前記特性値を前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換することを特徴とする。
【0021】
本発明の第5の態様にかかるモデル解析方法は、本発明の第2の態様にかかるモデル解析方法において、前記工程(a2)が、前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記区間を、前記軸に対して略直交する前記対象物の断面形状が近似的に一定であると見なせる十分微小な領域となるように分割することを特徴とする。
【0022】
本発明の第6の態様にかかるモデル解析方法は、本発明の第2の態様にかかるモデル解析方法において、前記軸設定ルールが、前記対象物に対してはり要素モデルを適用できる場合、はり要素モデルのはりの所望の位置における接線を、前記軸に設定することを特徴とする。
【0023】
本発明の第7の態様にかかるモデル解析方法は、本発明の第2の態様にかかるモデル解析方法において、前記軸設定ルールが、前記対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、前記対象物の形状が略軸対称である場合、前記対象物の形状の対称軸を、前記軸に設定することを特徴とする。
【0024】
本発明の第8の態様にかかるモデル解析方法は、本発明の第2の態様にかかるモデル解析方法において、前記軸設定ルールが、前記対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、前記対象物の形状が略軸対称ではない場合、仮の軸に対して略直交する前記対象物の断面図形の数が最小となるような前記仮の軸を、前記軸に設定することを特徴とする。
【0025】
本発明の第1の態様にかかるプログラムは、はり要素モデルまたはシェル要素モデルにより断面形状の不均一な対象物を解析するための処理を、コンピュータに実行させるプログラムであって、本発明の第1乃至第8のいずれか1つの態様にかかるモデル構築システムの各手段を実現させる処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、はり要素モデルまたはシェル要素モデルを使用する、断面形状が不均一な対象物に対する応力解析、熱解析、回路解析、流体解析等の所望の解析を短時間に精度よく実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態に係るモデル構築システムを適用して解析する対象物の一例における該対象物の長手方向(X軸方向)に直交した面の概略断面図であり、(b)は、該対象物の長手方向(X軸方向)に平行な面の概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るモデル構築システムを適用して解析する対象物の別の例を示す全体概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るモデル構築システムを適用して解析する対象物の別の一例における該対称物の長手方向(X軸方向)に平行な面の概略断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るモデル構築システムを実行させるコンピュータの概略構成を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるモデル構築システムにおけるシステム構成の一例を示す図である。
【図6】対象物1の応力解析を説明するための図である。
【図7】対象物2の流体解析を説明するための図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかるモデル構築方法の各工程をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の一例である。
【図9】本発明の一実施形態にかかるモデル構築方法の各工程をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の別の一例である。
【図10】軸設定処理をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の一例である。
【図11】図10の設定軸探索処理(ステップS306)をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の一例である。
【図12】コンクリート製不定形プール(対象物3)の概略外観斜視図である。
【図13】図12のコンクリート製不定形プールの平面Aによる断面図であり、(b)は、図12のコンクリート製不定形プールの平面Bによる断面図である。
【図14】対象物の従来の解析を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なもので置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0029】
本発明の一実施形態に係るモデル構築システムは、はり要素モデルまたはシェル要素モデルを使用して、断面形状が不均一な対象物に対する応力解析、熱解析、回路解析、流体解析等の所望の解析をするためのシステムであり、コンピュータを使用したシステムである。
【0030】
例えば、本発明の一実施形態に係るモデル構築システムは、図1に示す、長手方向(X軸方向)に略直交する平面の形状(断面形状)が、長手方向(X軸方向)に対して変化しているような両端部が開口した円筒状を有する形状で、かつ、長手方向(X軸方向)が対称軸となるような軸対称な(即ち、対称軸に対して回転対称な)形状の製品を、即ち、シェル要素モデルを使用できる形状の製品を対象物としたときの、該対象物に対する応力解析を行うためのシステムである。ここで、図1(a)は、本発明の一実施形態に係るモデル構築システムを適用して解析する対象物の一例における該対象物の長手方向(X軸方向)に直交した面の概略断面図であり、(b)は、該対象物の長手方向(X軸方向)に平行な面の概略断面図である。
【0031】
また、例えば、本発明の一実施形態に係るモデル構築システムは、シェル要素モデルを使用できる形状の製品である、図2(a)に示す壺のような一端部が開口し他端部が閉じた中空状態の製品や、図2(b)に示すつぶれたゴムボールのような開口部のない中空状態の製品や、図2(c)に示す厚みが部分的に変化している板状の製品等を対象物として、解析を行うためのシステムでもある。また、例えば、本発明の一実施形態に係るモデル構築システムは、図3に示す、はり要素モデルを使用して管状の流路を流体が流れるような場合の流体解析を行うためのシステムでもある。ここで、図3は、本発明の一実施形態に係るモデル構築システムを適用して解析する対象物の別の一例における該対称物の長手方向(X軸方向)に平行な面の概略断面図である。
【0032】
図4は、本発明の一実施形態に係るモデル構築システムを実行させるコンピュータの概略構成を示す図である。図4に示すように、コンピュータ100は、CPU(中央処理装置)101、ROM102、RAM103、各種出力装置104、各種入力装置105等を備えている。
【0033】
CPU101は、コンピュータ100で実行させるモデル構築システムを実現するためのソフトウェア(ファームウェアを含む)およびデータを記憶しているROM102から、必要な情報を読み出し、実行することにより、モデル構築システムを実現する。また、RAM103は、コンピュータ100で実行させるモデル構築システムを実現するために必要なデータの記憶装置として機能する。また、各種出力装置104は、例えば、表示装置、印刷装置、外部記憶装置等であり、CPU101からの命令に従って出力情報を出力する。また、各種入力装置105は、例えば、スキャナ、キーボード、外部記憶装置等であり、CPU101からの命令に従って入力情報を入力して、RAM103に記憶する。
【0034】
次に、本発明の一実施形態にかかるモデル構築システムにおけるシステム構成について説明する。図5は、本発明の一実施形態にかかるモデル構築システムにおけるシステム構成の一例を示す図である。
【0035】
図5に示すように、モデル構築システム10は、区間分割部21、特性値割付部22、入力部23、出力部24、軸設定ルール記憶部25、入力情報記憶部26、及び解析情報記憶部27を備えている。また、区間分割部21は、軸設定部31、要素位置設定部32及び特徴点取得部33を備え、特性値割付部22は、特性値変換部41及び特性値対応付部42を備え、入力情報記憶部26は、材料情報記憶部51及び幾何学情報記憶部52を備えている。
【0036】
モデル構築システム10は、区間分割部21の各機能(軸設定部31、要素位置設定部32及び特徴点取得部33の機能)及び特性値割付部22の各機能(特性値変換部41及び特性値対応付部42の機能)に対応するソフトウェアと、ROM102に記憶されている軸設定ルール記憶部25に対応するデータと、RAM103に記憶されている入力情報記憶部26(材料情報記憶部51及び幾何学情報記憶部52)に対応するデータと、を読み出して、解析を実行し、得られた結果である各種解析情報をRAM103の解析情報記憶部27に格納すると共に、所望の情報を各種出力装置104に出力させることによりシステムを実現する。
【0037】
まず、モデル構築システム10の区間分割部21について説明する。モデル構築システム10の区間分割部21は、軸設定部31、要素位置設定部32及び特徴点取得部33を備え、対象物に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、入力情報記憶部26の幾何学情報記憶部52に基づいて、設定した軸(以下、設定軸と呼ぶ)に直交する面で区切って複数の区間に分割する。以下、設定軸をX軸とする。
【0038】
区間分割部21の軸設定部31は、軸設定ルール記憶部25に記憶されている所定の軸設定ルールと幾何学情報記憶部52に記憶されているCAD等の対象物の幾何学情報とに基づいて、対象物の解析に最適な設定軸(X軸)を設定し、解析情報記憶部27に格納する。例えば、軸設定ルールは、対象物に対してはり要素モデルを適用できる場合、はり要素モデルのはりの所望の位置における接線を設定軸とする。また、軸設定ルールは、対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、該対象物の形状が略軸対称である場合、該対象物の対称軸を設定軸とする。また、軸設定ルールは、対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、該対象物の形状が略軸対称ではない場合、仮の軸に対して略直交する対象物の断面図形の数が最小となるような仮の軸を、設定軸とする。
【0039】
区間分割部21の要素位置設定部32は、対象物の解析空間もしくは解析モデル自体を、対象物の幾何学情報に基づいて、軸設定手段31によって設定された設定軸に直交する面で区切ってn個の区間Vi(i=1〜n)に分割して、区間Vi毎の解析要素のX軸における位置Xi(i=1〜n)(以下、要素位置Xiと呼ぶ)を設定し、解析情報記憶部27に格納する。尚、区間Viの分割は、設定軸(X軸)に対して略直交する対象物の断面形状が近似的に一定であると見なせる十分微小な領域となるように各区間Viを分割する。以下、断面形状とは、設定軸(X軸)に略直交する対象物の断面形状のことをいう。
【0040】
区間分割部21の特徴点取得部33は、対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、対象物の幾何学情報に基づいて、対象物の形状を特徴付ける特徴点を、区間Vi毎に取得し、解析情報記憶部27に格納する。ここで、対象物の形状を特徴付ける特徴点とは、対象物の形状の輪郭線上の点や頂点等のことである。従って、特徴点は、対象物の形状を特徴付けるのに十分な個数を取得する。即ち、対象物の形状がより複雑な形状になるほど、取得する特徴点の個数はより多くなる。
【0041】
例えば、図1に示した対象物1の応力解析をする場合、軸設定部31では、対象物1が軸対称な形状であることから、対象物1の対称軸を設定軸(X軸)とする。そして、要素位置設定部32では、図6に示すように、対象物1に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、X軸に直交するようにn個の区間Vi(i=1〜n)に分割する。
【0042】
このとき、対象物1に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、対象物の幾何学情報に基づいて、X軸に直交する平面Ti(i=0〜n)によって、n個の区間Vi(i=1〜n)に分割する。また、区間Viの分割は、区間Viの任意のX軸位置における対象物1の断面形状が近似的に一定であると見なせるような十分微小な領域となるように、対象物1に対する解析空間もしくは解析モデル自体を分割する。そして、平面TiとX軸との交点を、区間Viの要素位置Xiとして設定する。
【0043】
特徴点取得部33では、平面Ti上の対象物1の形状(断面形状)Siを表すのに十分な数の特徴点を、対象物の幾何学情報に基づいて取得する。ここでは、平面Ti上の対象物1の内壁位置を示す特徴点Bij(j=1〜m)と平面Ti上の対象物1の外壁位置を示す特徴点Aij(j=1〜m)を取得する。
【0044】
次に、モデル構築システム10の特性値割付部22について説明する。モデル構築システム10の特性値割付部22は、特性値変換部41及び特性値対応付部42を備え、対象物の実形状に依存する特性値を、材料情報記憶部51に記憶されている対象物の材料情報と幾何学情報記憶部52に記憶されているCAD等の対象物の幾何学情報に基づいて、設定軸に沿った座標の関数を用いて変換し、区間分割部21によって分割された区間Vi毎の対象物の解析要素に、変換した特性値を割り付ける。
【0045】
特性値割付部22の特性値変換部41は、対象物の材料情報及び幾何学情報に基づいて、機械特性値、物理特性値、化学特性値等のうち実形状に依存する特性値を、設定軸(X軸)に沿った座標の関数で表した特性値に変換する。特性値割付部22の特性値対応付部42は、特性値変換部41によって変換された特性値と、要素位置設定部32によって設定した区間Vi毎の要素位置Xiとを対応付けて、解析情報記憶部27に格納する。
【0046】
尚、特性値の変換は、対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合の変換方法(変換方法1)と、対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状である場合の変換方法(変換方法2)とがある。
【0047】
(変換方法1)
対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合には、特徴点取得部33によって取得した特徴点に基づいて、要素位置における設定軸(X軸)に沿った座標に対応づけられた対象物1の断面形状(対象物の肉厚等の形状)を取得し、取得した断面形状と材料情報とに基づいて、特性値を設定軸(X軸)に沿った座標に対応づけられた特性値に変換する。
【0048】
例えば、図1及び図6に示す対象物1は、形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない。尚、対象物1の応力解析において、断面2次モーメントIを特性値として解析する。そこで、対象物1の断面2次モーメントIを解析する場合、まず、平面Ti上の特徴点Bij(j=1〜m)と特徴点Aij(j=1〜m)とから、断面形状Siが、点Xiを中心とする特徴点Bij(j=1〜m)を通る半径ri1の円と点Xiを中心とする特徴点Aij(j=1〜m)を通る半径ri2の円とからなる円形リング形状であることを取得する。この断面形状Siに対する断面2次モーメントIiを半径ri1と半径ri2の関数で表すと、下記に示す関係式(1)により表される。この断面形状Siに対する断面2次モーメントIiが要素位置Xiに対応づけられた特性値となる。
【0049】
【数1】
【0050】
(変換方法2)
対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状である場合には、対象物の形状を、設定軸(X軸)に沿った座標の関数で表し、対象物の材料情報に基づいて、特性値を設定軸(X軸)に沿った座標の関数で表した特性値に変換する。
【0051】
対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状である場合とは、例えば、図3に示すように、はり要素モデルを適用した対象物2で、軸対称な流路である対象物2の流路壁が、下記の関係式(2)に示す曲線で表される場合である。ここで、対象物2のはりの接線をX軸とし、X軸に直交する軸をY軸とする。尚、対象物2の流体解析において、圧力損失ΔPを特性値として解析する。また、流路の長さを1[m]とする。
【0052】
【数2】
【0053】
まず、対象物2の形状である関係式(2)を内壁半径方向rで表すと、対象物2の形状は下記の関係式(3)となる。
【0054】
【数3】
【0055】
対象物2の特性値である圧力損失ΔPは、図7に示すように、内径(直径)がd[m]、管の長さがL[m]の円管内を流体が流量V[m3/s]で流れるとき、圧力損失ΔPは下記の関係式(4)で表される。ここで、λは管摩擦係数を、ρ[kg/m3]は流体の密度を、u[m/s]は管内平均流速を表す。
【0056】
【数4】
【0057】
また、図3に示す対象物2において、流路の内壁直径(内径)dと管内平均流速uは、下記の関係式(5)を満たしながら、X軸の位置によって変動する。即ち、流路の内壁半径rと管内平均流速uは、下記の関係式(6)を満たしながら、X軸の位置によって変動する。
【0058】
【数5】
【0059】
ここで、流路の内壁半径rはX軸の位置Xの関数r=f(X)であることから、関係式(6)は、下記の関係式(7)となる。
【0060】
【数6】
【0061】
関係式(4)及び関係式(7)から、X軸の位置Xにおける圧力損失ΔPは、下記の関係式(8)で表される。このX軸の位置Xが要素位置Xiであるとき、圧力損失ΔPが要素位置Xiに対応づけられた特性値となる。
【0062】
【数7】
【0063】
次に、モデル構築システム10の入力部23及び出力部24について説明する。入力部23は、入力装置105(例えば、スキャナ、キーボード、外部記憶装置等)から対象物の材料情報やCAD等の対象物の幾何学情報を入力し、入力した材料情報を入力情報記憶部26の材料情報記憶部51に格納し、入力した幾何学情報を入力情報記憶部26の幾何学情報記憶部52に格納する。
【0064】
出力部24は、モデル構築システム10の区間分割部21(軸設定部31、要素位置設定部32及び特徴点取得部33)及び特性値割付部22(特性値変換部41及び特性値対応付部42)によって算出・決定された情報を、解析情報記憶部27から取得して、出力装置(例えば、表示装置、印刷装置、記憶装置等)に出力する。
【0065】
上述した本発明の一実施形態に係るモデル構築システム10により、はり要素モデルまたはシェル要素モデルを使用する、断面形状が不均一な対象物に対する応力解析、熱解析、回路解析、流体解析等の所望の解析を短時間に精度よく実行することができる。
【0066】
次に、本発明の一実施形態に係るモデル構築方法について説明する。
図8は、本発明の一実施形態にかかるモデル構築方法の各工程をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の一例である。図8では、図1及び図6に示した対象物1の応力解析を行うときの処理手順を例に挙げて説明する。
【0067】
対象物1の応力解析は、まず、入力装置105(例えば、スキャナ、キーボード、外部記憶装置等)から対象物1の材料情報やCAD等の対象物1の幾何学情報を入力し、入力した材料情報を入力情報記憶部26の材料情報記憶部51に格納し、入力した幾何学情報を入力情報記憶部26の幾何学情報記憶部52に格納する(ステップS101)。
【0068】
次に、軸設定ルール記憶部25に記憶されている所定の軸設定ルールと幾何学情報記憶部52に記憶されているCAD等の対象物1の幾何学情報とに基づいて、対象物1の解析に最適な設定軸(X軸)を設定し、解析情報記憶部27に格納する(ステップS102)。ここでは、図1及び図6に示したように、対象物1は軸対称であるので、対象物1の対称軸を設定軸(X軸)とする。尚、設定軸の設定処理の詳細は後述する。
【0069】
次に、対象物1に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、設定軸に直交する面で区切ってn個の区間Vi(i=1〜n)に分割して、区間Vi毎の要素位置Xi(i=1〜n)を設定し、解析情報記憶部27に格納する(ステップS103)。ここでは、図1及び図6に示すように、対象物1に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、対象物1の幾何学情報に基づいて、X軸に直交する平面Ti(i=0〜n)によって、n個の区間Vi(i=1〜n)に分割する。そして、平面TiとX軸との交点を、区間Viの要素位置Xiとして設定する。
【0070】
次に、対象物1の幾何学情報に基づいて、対象物1の形状を特徴付ける特徴点を、区間Vi毎に取得し、解析情報記憶部27に格納する(ステップS104)。ここでは、平面Ti上の対象物1の内壁位置を示す特徴点Bij(j=1〜m)と平面Ti上の対象物1の外壁位置を示す特徴点Aij(j=1〜m)を取得する。
【0071】
次に、取得した特徴点に基づいて、要素位置Xiにおける設定軸(X軸)に沿った座標に対応づけられた値で表した対象物1の断面形状(対象物1の肉厚等の形状)を取得する(ステップS106)。ここでは、図1及び図6に示すように、平面Ti上の特徴点Bij(j=1〜m)と特徴点Aij(j=1〜m)とから、断面形状Siが、点Xiを中心とする特徴点Bij(j=1〜m)を通る半径ri1の円と点Xiを中心とする特徴点Aij(j=1〜m)を通る半径ri2の円とからなる円形リング形状であることを取得する。
【0072】
次に、対象物1の材料情報及び幾何学情報に基づいて、機械特性値、物理特性値、化学特性値等のうち実形状に依存する特性値(図1及び図6では、断面2次モーメントI)を、設定軸(X軸)に沿った座標に対応づけられた値で表した特性値に変換する(ステップS107)。ここでは、図1及び図6に示すように、上述の関係式(1)に示す、断面形状Siに対する断面2次モーメントIiを、半径ri1と半径ri2の関数で表す。
【0073】
次に、変換した特性値と、設定した区間Vi毎の要素位置Xiとを対応付けて、解析情報記憶部27に格納する(ステップS108)。
【0074】
ステップS106乃至S108を、すべての区間Viについて実行し(ステップS105、S109、S110)、最後に、算出・決定された情報(特性値等)を、解析情報記憶部27から取得して、出力装置(例えば、表示装置、印刷装置、記憶装置等)に出力し(S111)、対象物1の応力解析の処理を終了する。
【0075】
図9は、本発明の一実施形態にかかるモデル構築方法の各工程をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の別の一例である。図9では、図3に示した対象物2の流体解析を行うときの処理手順を例に挙げて説明する。
【0076】
対象物2の流体解析は、まず、入力装置105(例えば、スキャナ、キーボード、外部記憶装置等)から対象物2の材料情報やCAD等の対象物2の幾何学情報を入力し、入力した材料情報を入力情報記憶部26の材料情報記憶部51に格納し、入力した幾何学情報を入力情報記憶部26の幾何学情報記憶部52に格納する(ステップS201)。
【0077】
次に、軸設定ルール記憶部25に記憶されている所定の軸設定ルールと幾何学情報記憶部52に記憶されているCAD等の対象物2の幾何学情報とに基づいて、対象物2の解析に最適な設定軸(X軸)を設定し、解析情報記憶部27に格納する(ステップS202)。ここでは、図3に示したように、対象物2がはり要素モデルを適用する対象物であるので、対象物2のはりの接線を設定軸(X軸)とする。尚、設定軸の設定処理の詳細は後述する。
【0078】
次に、形状曲線または形状曲面の関数で表される対象物の形状を、設定軸(X軸)に沿った座標の関数で表した対象物2の形状に変換する(ステップS203)。ここでは、図3に示すように、形状曲線または形状曲面の関数である上述の関係式(2)で表す対象物2の形状を、内壁半径方向rで表した、上述の関係式(3)に示す対象物2の形状に変換する。
【0079】
次に、対象物2の材料情報及び変換した対象物2の形状に基づいて、機械特性値、物理特性値、化学特性値等のうち実形状に依存する特性値(図3では、圧力損失ΔP)を、設定軸(X軸)に沿った座標の関数で表した特性値に変換する(ステップS204)。ここでは、圧力損失ΔPは、上述の関係式(4)に示す、流路の内壁直径(内径)dの関数で表される。
【0080】
次に、X軸の位置Xにおける変化した特性値をもとめ、要素位置Xiにおける特性値を、解析情報記憶部27に格納する(ステップS205)。ここでは、図3に示すように、X軸の位置Xにおける圧力損失ΔPは、下記の関係式(8)で表される。このX軸の位置Xが要素位置Xiであるとき、圧力損失ΔPが要素位置Xiに対応づけられた特性値となる。尚、対象物2が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状であることから、要素位置Xiは、解析精度に応じた所望の個数及び所望の位置を設定する。
【0081】
最後に、算出・決定された情報(特性値等)を、解析情報記憶部27から取得して、出力装置(例えば、表示装置、印刷装置、記憶装置等)に出力する(S206)、対象物2の流体解析の処理を終了する。
【0082】
次に、上述の図8のステップS102及び図9のステップS202の軸設定処理について、図10及び図11を参照して説明する。
図10は、軸設定処理をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の一例であり、図11は、図10の設定軸探索処理(ステップS306)をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の一例である。
【0083】
図10に示すように、軸設定処理は、まず、対象物に対してはり要素モデルが適用できるか否かを判定し(ステップS301)、はり要素モデルが適用できる場合(ステップS301:Yes)は、はり要素モデルのはりの所望の位置における接線を設定軸(X軸)に設定して(S302)、軸設定処理を終了する。
【0084】
はり要素モデルが適用できない場合(ステップS301:No)は、対象物に対してシェル要素モデルが適用できるか否かを判定し(ステップS303)、シェル要素モデルが適用できる場合(ステップS303:Yes)は、対象物が略軸対称であるか否かを判定する(ステップS304)。また、対象物に対してシェル要素モデルが適用できない場合(ステップS303:No)は、本発明の適用外として(S307)、軸設定処理を終了する。
【0085】
対象物が略軸対称である場合(ステップS304:Yes)は、対象物の形状の対称軸を設定軸(X軸)に設定して(S305)、軸設定処理を終了する。また、対象物が略軸対称でない場合(ステップS304:No)は、最適な設定軸を探索して(S306)軸設定処理を終了する。
【0086】
図11に示すように、ステップS306の設定軸探索処理は、まず、対象物に対して、任意の方向の初期設定軸を設定し、初期設定軸をX軸に設定する(S401)。次に、初期設定軸を、Y軸の周りにΔθi(i=0〜n)、Z軸の周りにΔθj(j=0〜n)だけ回転させた方向を、仮の設定軸Pij(以下、仮設定軸と呼ぶ)に設定する(S405)。ここで、Δθi及びΔθjは下記の関係式(9)及び(10)を満たす。
【0087】
【数8】
【0088】
次に、仮設定軸Pijに直交する平面Tk(k=0〜p)で対象物の解析空間もしくは解析モデル自体をp個の区間Vk(k=1〜p)に分割し、平面Tk上の対象物の断面における閉ループ数をmijkとして、下記の関係式(11)に示す仮設定軸Pijに対する閉ループ数の総数Nを算出する(S406)。
【0089】
【数9】
【0090】
ステップS405及びS406を、すべてのi及びjについて実行し(ステップS402、S403、S404、S407、S408、S409)、最後に、閉ループ数の総数Nの最小値となる仮設定軸Pijを検出し、検出した仮設定軸Pijを対象物の解析用の設定軸に設定する(S410)。
【0091】
但し、流体の流れを解析対象とする場合は流れに沿った方向に軸を設定することが望ましいが、上記の方法で設定軸の探索を行うと、設定軸の方向が必ずしも流れに沿った方向にならない場合がある。その場合は上記の設定軸探索の結果によらず、設定軸の方向を流れに沿った方向に定めることもあり得る。
【0092】
図11に示した設定軸探索処理を用いた場合の解析として、例えば、図12に示すような、コンクリート製の不定形プールに水を入れた場合の耐圧解析を行う例を挙げることができる。図12は、コンクリート製不定形プールの概略外観斜視図を示したものである。また、図13(a)は、図12のコンクリート製不定形プールの平面Aによる断面図であり、(b)は、図12のコンクリート製不定形プールの平面Bによる断面図である。ここで、平面Aは後述の平面Tiのことである。また、平面Bは、後述の設定軸Pを通る平面Aに直交する平面である。
【0093】
尚、図12に示すコンクリート製不定形プールの耐圧解析においては、ヤング率を特性値として解析する。また、図12に示すコンクリート製不定形プール3(以下、対象物3と呼ぶ)は、形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状であるので、上述の変換方法1により特性値を変換する。従って、図8に示した、本発明の一実施形態にかかるモデル構築方法の各工程をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の一例を参照して、図12及び図13に示した対象物3の解析処理手順を説明する。
【0094】
図8に示すように、対象物3の耐圧解析は、まず、入力装置105(例えば、スキャナ、キーボード、外部記憶装置等)から対象物3の材料情報やCAD等の対象物3の幾何学情報を入力し、入力した材料情報を入力情報記憶部26の材料情報記憶部51に格納し、入力した幾何学情報を入力情報記憶部26の幾何学情報記憶部52に格納する(ステップS101)。
【0095】
次に、軸設定ルール記憶部25に記憶されている所定の軸設定ルールと幾何学情報記憶部52に記憶されているCAD等の対象物3の幾何学情報とに基づいて、対象物3の解析に最適な設定軸(X軸)を設定し、解析情報記憶部27に格納する(ステップS102)。ここで、対象物3は、シェル要素モデルが適用できる対象物であり、更に、軸対称ではない対象物である。従って、対象物3の解析に最適な設定軸としては、図10に示した、軸設定処理の手順に従うと、図11に示した設定軸探索処理によって探索された設定軸となる。
【0096】
具体的に、図11及び図12を参照して説明する。図11に示したように、まず、対象物3に対して、任意の方向の初期設定軸を設定し、初期設定軸をX軸に設定する(S401)。ここで、初期設定軸P00として設定する任意の方向を鉛直上向き方向とする。
【0097】
次に、初期設定軸P00を、Y軸の周りにΔθi(i=0〜n)、Z軸の周りにΔθj(j=0〜n)だけ回転させた方向を、仮の設定軸Pij(以下、仮設定軸と呼ぶ)に設定する(S405)。ここで、Δθi及びΔθjは上記の関係式(9)及び(10)を満たす。
【0098】
次に、仮設定軸Pijに直交する平面Tk(k=0〜p)で対象物3の解析空間もしくは解析モデル自体をp個の区間Vk(k=1〜p)に分割し、平面Tk上の対象物3の断面における閉ループ数をmijkとして、上記の関係式(11)に示す仮設定軸Pijに対する閉ループ数の総数Nを算出する(S406)。
【0099】
ステップS405及びS406を、すべてのi及びjについて実行し、最後に、閉ループ数の総数Nの最小値となる仮設定軸Pijを検出し、検出した仮設定軸Pijを対象物3の解析用の設定軸に設定する(S410)。この結果、設定軸は、図12に示すような軸Pとなった。この軸(設定軸)Pを改めて、X軸に設定し直し、以下の処理(図8のステップS103以下の処理)を実行する。
【0100】
次に、対象物3に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、設定軸P(X軸)に直交する面で区切ってn個の区間Vi(i=1〜n)に分割して、区間Vi毎の要素位置Xi(i=1〜n)を設定し、解析情報記憶部27に格納する(ステップS103)。ここでは、図12及び図13に示すように、対象物3に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、対象物3の幾何学情報に基づいて、X軸に直交する平面Ti(i=0〜n)によって、n個の区間Vi(i=1〜n)に分割する。そして、平面TiとX軸との交点を、区間Viの要素位置Xiとして設定する。
【0101】
次に、対象物3の幾何学情報に基づいて、対象物3の形状を特徴付ける特徴点を、区間Vi毎に取得し、解析情報記憶部27に格納する(ステップS104)。次に、取得した特徴点に基づいて、要素位置Xiにおける設定軸(X軸)に沿った座標に対応づけられた値で表した対象物3の断面形状(対象物3の肉厚等の形状)を取得する(ステップS106)。
【0102】
次に、対象物3の材料情報及び幾何学情報に基づいて、機械特性値、物理特性値、化学特性値等のうち実形状に依存する特性値(図12及び図13では、ヤング率)を、設定軸P(X軸)に沿った座標に対応づけられた値で表した特性値に変換する(ステップS107)。断面形状Siに対するヤング率Eciは、下記の関係式(12)で表される。ここで、tiは各要素位置Xiにおける対象物3の平均肉厚、tsiは対象物3に対するシェル要素モデルの設定肉厚、Esは対象物3に対して予め設定したヤング率である。
【0103】
【数10】
【0104】
次に、変換した特性値と、設定した区間Vi毎の要素位置Xiとを対応付けて、解析情報記憶部27に格納する(ステップS108)。
【0105】
ステップS106乃至S108を、すべての区間Viについて実行し(ステップS105、S109、S110)、最後に、算出・決定された情報(特性値等)を、解析情報記憶部27から取得して、出力装置(例えば、表示装置、印刷装置、記憶装置等)に出力し(S111)、対象物3の耐圧解析の処理を終了する。
【0106】
上述した本発明の一実施形態に係るモデル構築方法により、はり要素モデルまたはシェル要素モデルを使用する、断面形状が不均一な対象物に対する応力解析、熱解析、回路解析、流体解析等の所望の解析を短時間に精度よく実行することができる。例えば、図1及び図3に示した対象物1の応力解析を図8に示したモデル構築方法で行った結果、従来の方法では、解析モデルの生成に5時間程度かかっていたが、本発明の一実施形態に係るモデル構築方法では、解析モデルの生成は1時間であった。即ち、解析時間を5分の1に短縮することができた。
【符号の説明】
【0107】
1、2、3 : 対象物
10 : モデル構築システム
21 : 区間分割部
22 : 特性値割付部
23 : 入力部
24 : 出力部
25 : 軸設定ルール記憶部
26 : 入力情報記憶部
27 : 解析情報記憶部
31 : 軸設定部
32 : 要素位置設定部
33 : 特徴点取得部
41 : 特性値変換部
42 : 性値対応付部
51 : 材料情報記憶部
52 : 幾何学情報記憶部
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータを用いた有限要素法解析に使用するモデル構築システム、モデル構築方法及びプログラムに関する。特に、はり要素モデルまたはシェル要素モデルを使用して断面形状が不均一な対象物を解析するためのモデル構築システム、モデル構築方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の構造や特性を解析する方法として有限要素法が用いられている。一般に、有限要素法は、対象物が複雑な形状をしている場合は、対象物の形状の作成作業やメッシュの分割作業に時間がかかってしまうという問題があった。そこで、この対象物の形状の作成作業やメッシュの分割作業を短時間に行うための様々な方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、はり要素モデルまたはシェル要素モデルを使用して断面形状が不均一な対象物の解析を行う方法として、モデルの断面形状は変化させずに、対象物の断面形状の変化に応じて各区間に割り付ける特性値を段階的に変化させる解析方法がある。
【0004】
上述の方法は、例えば、図14に示すような、円筒状のゴム製部品300を円形の穴を開けた鋼製のパネル301にはめ込んだときに、パネル301から抜けないように厚さを部分的に変化させたゴム製部品300を、シェル要素モデルを用いて解析する場合、厚さを変化させる代わりに、応力―歪特性の応力値に対して対象物の厚さ変化に応じて段階的に変化させた係数を掛けて応力―歪特性を変化させることにより応力解析を行う解析方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−334276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した対象物の断面形状の変化に応じて各区間に割り付ける特性値を段階的に変化させる解析方法では、断面形状が変化する部分において、対象物の長手方向に対して周期的にまたは対称的にその形状が変化しない場合、あるいは、突発的にその形状が大きく変化する場合には、区間分割の数が多くなり、各区間に割り付ける特性値を算出するのに多大な時間がかかってしまうという問題があった。その結果、対象物を解析するのに多大な時間がかかってしまうという問題があった。
【0007】
また、対象物が非常に複雑な断面形状を有する場合(例えば、外形の起伏形状と厚さの変動が連動していないような対象物の場合)、上述した対象物の断面形状の変化に応じて各区間に割り付ける特性値を段階的に変化させる解析方法を適用することは、困難であった。
【0008】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、はり要素モデルまたはシェル要素モデルを使用して、断面形状が不均一な対象物に対する所望の解析(応力解析、熱解析、回路解析、流体解析等)を短時間に精度よく解析することが可能なモデル構築システム、モデル構築方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した従来の問題点を解決すべく下記の発明を提供する。
本発明の第1の態様にかかるモデル解析システムは、コンピュータを使用して、はり要素モデルまたはシェル要素モデルにより断面形状の不均一な対象物を解析するためのモデル構築システムであって、前記対象物に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、前記対象物の幾何学情報に基づいて、設定した軸に直交する面で区切って複数の区間に分割する区間分割手段と、前記対象物の実形状に依存する特性値を、前記対象物の材料情報及び幾何学情報に基づいて、前記軸に沿った座標の関数を用いて変換し、前記区間分割手段によって分割された前記区間毎の前記対象物の解析要素に、変換した特性値を割り付ける特性値割付手段と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様にかかるモデル解析システムは、本発明の第1の態様にかかるモデル解析システムにおいて、前記区間分割手段が、所定の軸設定ルール及び前記幾何学情報に基づいて、前記対象物の解析に最適な前記軸を設定する軸設定手段と、前記解析空間もしくは前記解析モデル自体を、前記幾何学情報に基づいて、前記軸設定手段によって設定された前記軸に直交する面で区切って複数の前記区間に分割して、前記区間毎の前記解析要素の前記軸における位置である要素位置を設定する要素位置設定手段と、前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記幾何学情報に基づいて、前記対象物の形状を特徴付ける特徴点を、前記区間毎に取得する特徴点取得手段と、を備え、
前記特性値割付手段が、前記材料情報及び前記幾何学情報に基づいて、前記特性値を、前記軸設定手段によって設定した前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換する特性値変換手段と、前記特性値変換手段によって変換された前記特性値と、前記要素位置設定手段によって設定した前記区間毎の前記要素位置とを対応付ける特性値対応付手段と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の態様にかかるモデル解析システムは、本発明の第2の態様にかかるモデル解析システムにおいて、前記特性値変換手段が、前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記特徴点取得手段によって取得した前記特徴点に基づいて、前記要素位置における前記軸に沿った座標の関数で表した前記対象物の断面形状を取得し、取得した前記断面形状と前記材料情報とに基づいて、前記特性値を前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換することを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の態様にかかるモデル解析システムは、本発明の第2の態様にかかるモデル解析システムにおいて、前記特性値変換手段が、前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状である場合に、前記形状曲線または前記形状曲面の関数で表される前記対象物の形状を、前記軸に沿った座標の関数で表した前記対象物の形状に変換し、変換した前記対象物の形状と前記材料情報とに基づいて、前記特性値を前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換することを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の態様にかかるモデル解析システムは、本発明の第2の態様にかかるモデル解析システムにおいて、前記要素位置設定手段が、前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記区間を、前記軸に対して略直交する前記対象物の断面形状が近似的に一定であると見なせる十分微小な領域となるように分割することを特徴とする。
【0014】
本発明の第6の態様にかかるモデル解析システムは、本発明の第2の態様にかかるモデル解析システムにおいて、前記軸設定ルールが、前記対象物に対してはり要素モデルを適用できる場合、はり要素モデルのはりの所望の位置における接線を、前記軸に設定することを特徴とする。
【0015】
本発明の第7の態様にかかるモデル解析システムは、本発明の第2の態様にかかるモデル解析システムにおいて、前記軸設定ルールが、前記対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、前記対象物の形状が略軸対称である場合、前記対象物の形状の対称軸を、前記軸に設定することを特徴とする。
【0016】
本発明の第8の態様にかかるモデル解析システムは、本発明の第2の態様にかかるモデル解析システムにおいて、前記軸設定ルールが、前記対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、前記対象物の形状が略軸対称ではない場合、仮の軸に対して略直交する前記対象物の断面図形の数が最小となるような前記仮の軸を、前記軸に設定することを特徴とする。
【0017】
本発明の第1の態様にかかるモデル解析方法は、コンピュータを使用して、はり要素モデルまたはシェル要素モデルにより断面形状の不均一な対象物を解析するためのモデル構築方法であって、(a)前記対象物に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、前記対象物の幾何学情報に基づいて、設定した軸に直交する面で区切って複数の区間に分割する工程と、(b)前記対象物の実形状に依存する特性値を、前記対象物の材料情報及び幾何学情報に基づいて、前記軸に沿った座標の関数を用いて変換し、前記工程(a)によって分割された前記区間毎の前記対象物の解析要素に、変換した特性値を割り付ける工程と、を備えていることを特徴とする。
【0018】
本発明の第2の態様にかかるモデル解析方法は、本発明の第1の態様にかかるモデル解析方法において、前記工程は(a)が、(a1)所定の軸設定ルール及び前記幾何学情報に基づいて、前記対象物の解析に最適な前記軸を設定する工程と、(a2)前記解析空間もしくは前記解析モデル自体を、前記幾何学情報に基づいて、前記工程(a1)によって設定された前記軸に直交する面で区切って複数の前記区間に分割して、前記区間毎の前記解析要素の前記軸における位置である要素位置を設定する工程と、(a3)前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記幾何学情報に基づいて、前記対象物の形状を特徴付ける特徴点を、前記区間毎に取得する工程と、を備え、
前記工程(b)が、(b1)前記材料情報及び前記幾何学情報に基づいて、前記特性値を、前記工程(a1)によって設定した前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換する工程と、(b2)前記工程(b1)によって変換された前記特性値と、前記工程(a2)によって設定した前記区間毎の前記要素位置とを対応付ける工程と、を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明の第3の態様にかかるモデル解析方法は、本発明の第2の態様にかかるモデル解析方法において、前記工程(b1)が、前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記工程(a3)によって取得した前記特徴点に基づいて、前記要素位置における前記軸に沿った座標の関数で表した前記対象物の断面形状を取得し、取得した前記断面形状と前記材料情報とに基づいて、前記特性値を前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換することを特徴とする。
【0020】
本発明の第4の態様にかかるモデル解析方法は、本発明の第2の態様にかかるモデル解析方法において、前記工程(b1)が、前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状である場合に、前記形状曲線または前記形状曲面の関数で表される前記対象物の形状を、前記軸に沿った座標の関数で表した前記対象物の形状に変換し、変換した前記対象物の形状と前記材料情報とに基づいて、前記特性値を前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換することを特徴とする。
【0021】
本発明の第5の態様にかかるモデル解析方法は、本発明の第2の態様にかかるモデル解析方法において、前記工程(a2)が、前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記区間を、前記軸に対して略直交する前記対象物の断面形状が近似的に一定であると見なせる十分微小な領域となるように分割することを特徴とする。
【0022】
本発明の第6の態様にかかるモデル解析方法は、本発明の第2の態様にかかるモデル解析方法において、前記軸設定ルールが、前記対象物に対してはり要素モデルを適用できる場合、はり要素モデルのはりの所望の位置における接線を、前記軸に設定することを特徴とする。
【0023】
本発明の第7の態様にかかるモデル解析方法は、本発明の第2の態様にかかるモデル解析方法において、前記軸設定ルールが、前記対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、前記対象物の形状が略軸対称である場合、前記対象物の形状の対称軸を、前記軸に設定することを特徴とする。
【0024】
本発明の第8の態様にかかるモデル解析方法は、本発明の第2の態様にかかるモデル解析方法において、前記軸設定ルールが、前記対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、前記対象物の形状が略軸対称ではない場合、仮の軸に対して略直交する前記対象物の断面図形の数が最小となるような前記仮の軸を、前記軸に設定することを特徴とする。
【0025】
本発明の第1の態様にかかるプログラムは、はり要素モデルまたはシェル要素モデルにより断面形状の不均一な対象物を解析するための処理を、コンピュータに実行させるプログラムであって、本発明の第1乃至第8のいずれか1つの態様にかかるモデル構築システムの各手段を実現させる処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、はり要素モデルまたはシェル要素モデルを使用する、断面形状が不均一な対象物に対する応力解析、熱解析、回路解析、流体解析等の所望の解析を短時間に精度よく実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態に係るモデル構築システムを適用して解析する対象物の一例における該対象物の長手方向(X軸方向)に直交した面の概略断面図であり、(b)は、該対象物の長手方向(X軸方向)に平行な面の概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るモデル構築システムを適用して解析する対象物の別の例を示す全体概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るモデル構築システムを適用して解析する対象物の別の一例における該対称物の長手方向(X軸方向)に平行な面の概略断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るモデル構築システムを実行させるコンピュータの概略構成を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるモデル構築システムにおけるシステム構成の一例を示す図である。
【図6】対象物1の応力解析を説明するための図である。
【図7】対象物2の流体解析を説明するための図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかるモデル構築方法の各工程をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の一例である。
【図9】本発明の一実施形態にかかるモデル構築方法の各工程をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の別の一例である。
【図10】軸設定処理をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の一例である。
【図11】図10の設定軸探索処理(ステップS306)をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の一例である。
【図12】コンクリート製不定形プール(対象物3)の概略外観斜視図である。
【図13】図12のコンクリート製不定形プールの平面Aによる断面図であり、(b)は、図12のコンクリート製不定形プールの平面Bによる断面図である。
【図14】対象物の従来の解析を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なもので置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0029】
本発明の一実施形態に係るモデル構築システムは、はり要素モデルまたはシェル要素モデルを使用して、断面形状が不均一な対象物に対する応力解析、熱解析、回路解析、流体解析等の所望の解析をするためのシステムであり、コンピュータを使用したシステムである。
【0030】
例えば、本発明の一実施形態に係るモデル構築システムは、図1に示す、長手方向(X軸方向)に略直交する平面の形状(断面形状)が、長手方向(X軸方向)に対して変化しているような両端部が開口した円筒状を有する形状で、かつ、長手方向(X軸方向)が対称軸となるような軸対称な(即ち、対称軸に対して回転対称な)形状の製品を、即ち、シェル要素モデルを使用できる形状の製品を対象物としたときの、該対象物に対する応力解析を行うためのシステムである。ここで、図1(a)は、本発明の一実施形態に係るモデル構築システムを適用して解析する対象物の一例における該対象物の長手方向(X軸方向)に直交した面の概略断面図であり、(b)は、該対象物の長手方向(X軸方向)に平行な面の概略断面図である。
【0031】
また、例えば、本発明の一実施形態に係るモデル構築システムは、シェル要素モデルを使用できる形状の製品である、図2(a)に示す壺のような一端部が開口し他端部が閉じた中空状態の製品や、図2(b)に示すつぶれたゴムボールのような開口部のない中空状態の製品や、図2(c)に示す厚みが部分的に変化している板状の製品等を対象物として、解析を行うためのシステムでもある。また、例えば、本発明の一実施形態に係るモデル構築システムは、図3に示す、はり要素モデルを使用して管状の流路を流体が流れるような場合の流体解析を行うためのシステムでもある。ここで、図3は、本発明の一実施形態に係るモデル構築システムを適用して解析する対象物の別の一例における該対称物の長手方向(X軸方向)に平行な面の概略断面図である。
【0032】
図4は、本発明の一実施形態に係るモデル構築システムを実行させるコンピュータの概略構成を示す図である。図4に示すように、コンピュータ100は、CPU(中央処理装置)101、ROM102、RAM103、各種出力装置104、各種入力装置105等を備えている。
【0033】
CPU101は、コンピュータ100で実行させるモデル構築システムを実現するためのソフトウェア(ファームウェアを含む)およびデータを記憶しているROM102から、必要な情報を読み出し、実行することにより、モデル構築システムを実現する。また、RAM103は、コンピュータ100で実行させるモデル構築システムを実現するために必要なデータの記憶装置として機能する。また、各種出力装置104は、例えば、表示装置、印刷装置、外部記憶装置等であり、CPU101からの命令に従って出力情報を出力する。また、各種入力装置105は、例えば、スキャナ、キーボード、外部記憶装置等であり、CPU101からの命令に従って入力情報を入力して、RAM103に記憶する。
【0034】
次に、本発明の一実施形態にかかるモデル構築システムにおけるシステム構成について説明する。図5は、本発明の一実施形態にかかるモデル構築システムにおけるシステム構成の一例を示す図である。
【0035】
図5に示すように、モデル構築システム10は、区間分割部21、特性値割付部22、入力部23、出力部24、軸設定ルール記憶部25、入力情報記憶部26、及び解析情報記憶部27を備えている。また、区間分割部21は、軸設定部31、要素位置設定部32及び特徴点取得部33を備え、特性値割付部22は、特性値変換部41及び特性値対応付部42を備え、入力情報記憶部26は、材料情報記憶部51及び幾何学情報記憶部52を備えている。
【0036】
モデル構築システム10は、区間分割部21の各機能(軸設定部31、要素位置設定部32及び特徴点取得部33の機能)及び特性値割付部22の各機能(特性値変換部41及び特性値対応付部42の機能)に対応するソフトウェアと、ROM102に記憶されている軸設定ルール記憶部25に対応するデータと、RAM103に記憶されている入力情報記憶部26(材料情報記憶部51及び幾何学情報記憶部52)に対応するデータと、を読み出して、解析を実行し、得られた結果である各種解析情報をRAM103の解析情報記憶部27に格納すると共に、所望の情報を各種出力装置104に出力させることによりシステムを実現する。
【0037】
まず、モデル構築システム10の区間分割部21について説明する。モデル構築システム10の区間分割部21は、軸設定部31、要素位置設定部32及び特徴点取得部33を備え、対象物に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、入力情報記憶部26の幾何学情報記憶部52に基づいて、設定した軸(以下、設定軸と呼ぶ)に直交する面で区切って複数の区間に分割する。以下、設定軸をX軸とする。
【0038】
区間分割部21の軸設定部31は、軸設定ルール記憶部25に記憶されている所定の軸設定ルールと幾何学情報記憶部52に記憶されているCAD等の対象物の幾何学情報とに基づいて、対象物の解析に最適な設定軸(X軸)を設定し、解析情報記憶部27に格納する。例えば、軸設定ルールは、対象物に対してはり要素モデルを適用できる場合、はり要素モデルのはりの所望の位置における接線を設定軸とする。また、軸設定ルールは、対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、該対象物の形状が略軸対称である場合、該対象物の対称軸を設定軸とする。また、軸設定ルールは、対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、該対象物の形状が略軸対称ではない場合、仮の軸に対して略直交する対象物の断面図形の数が最小となるような仮の軸を、設定軸とする。
【0039】
区間分割部21の要素位置設定部32は、対象物の解析空間もしくは解析モデル自体を、対象物の幾何学情報に基づいて、軸設定手段31によって設定された設定軸に直交する面で区切ってn個の区間Vi(i=1〜n)に分割して、区間Vi毎の解析要素のX軸における位置Xi(i=1〜n)(以下、要素位置Xiと呼ぶ)を設定し、解析情報記憶部27に格納する。尚、区間Viの分割は、設定軸(X軸)に対して略直交する対象物の断面形状が近似的に一定であると見なせる十分微小な領域となるように各区間Viを分割する。以下、断面形状とは、設定軸(X軸)に略直交する対象物の断面形状のことをいう。
【0040】
区間分割部21の特徴点取得部33は、対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、対象物の幾何学情報に基づいて、対象物の形状を特徴付ける特徴点を、区間Vi毎に取得し、解析情報記憶部27に格納する。ここで、対象物の形状を特徴付ける特徴点とは、対象物の形状の輪郭線上の点や頂点等のことである。従って、特徴点は、対象物の形状を特徴付けるのに十分な個数を取得する。即ち、対象物の形状がより複雑な形状になるほど、取得する特徴点の個数はより多くなる。
【0041】
例えば、図1に示した対象物1の応力解析をする場合、軸設定部31では、対象物1が軸対称な形状であることから、対象物1の対称軸を設定軸(X軸)とする。そして、要素位置設定部32では、図6に示すように、対象物1に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、X軸に直交するようにn個の区間Vi(i=1〜n)に分割する。
【0042】
このとき、対象物1に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、対象物の幾何学情報に基づいて、X軸に直交する平面Ti(i=0〜n)によって、n個の区間Vi(i=1〜n)に分割する。また、区間Viの分割は、区間Viの任意のX軸位置における対象物1の断面形状が近似的に一定であると見なせるような十分微小な領域となるように、対象物1に対する解析空間もしくは解析モデル自体を分割する。そして、平面TiとX軸との交点を、区間Viの要素位置Xiとして設定する。
【0043】
特徴点取得部33では、平面Ti上の対象物1の形状(断面形状)Siを表すのに十分な数の特徴点を、対象物の幾何学情報に基づいて取得する。ここでは、平面Ti上の対象物1の内壁位置を示す特徴点Bij(j=1〜m)と平面Ti上の対象物1の外壁位置を示す特徴点Aij(j=1〜m)を取得する。
【0044】
次に、モデル構築システム10の特性値割付部22について説明する。モデル構築システム10の特性値割付部22は、特性値変換部41及び特性値対応付部42を備え、対象物の実形状に依存する特性値を、材料情報記憶部51に記憶されている対象物の材料情報と幾何学情報記憶部52に記憶されているCAD等の対象物の幾何学情報に基づいて、設定軸に沿った座標の関数を用いて変換し、区間分割部21によって分割された区間Vi毎の対象物の解析要素に、変換した特性値を割り付ける。
【0045】
特性値割付部22の特性値変換部41は、対象物の材料情報及び幾何学情報に基づいて、機械特性値、物理特性値、化学特性値等のうち実形状に依存する特性値を、設定軸(X軸)に沿った座標の関数で表した特性値に変換する。特性値割付部22の特性値対応付部42は、特性値変換部41によって変換された特性値と、要素位置設定部32によって設定した区間Vi毎の要素位置Xiとを対応付けて、解析情報記憶部27に格納する。
【0046】
尚、特性値の変換は、対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合の変換方法(変換方法1)と、対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状である場合の変換方法(変換方法2)とがある。
【0047】
(変換方法1)
対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合には、特徴点取得部33によって取得した特徴点に基づいて、要素位置における設定軸(X軸)に沿った座標に対応づけられた対象物1の断面形状(対象物の肉厚等の形状)を取得し、取得した断面形状と材料情報とに基づいて、特性値を設定軸(X軸)に沿った座標に対応づけられた特性値に変換する。
【0048】
例えば、図1及び図6に示す対象物1は、形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない。尚、対象物1の応力解析において、断面2次モーメントIを特性値として解析する。そこで、対象物1の断面2次モーメントIを解析する場合、まず、平面Ti上の特徴点Bij(j=1〜m)と特徴点Aij(j=1〜m)とから、断面形状Siが、点Xiを中心とする特徴点Bij(j=1〜m)を通る半径ri1の円と点Xiを中心とする特徴点Aij(j=1〜m)を通る半径ri2の円とからなる円形リング形状であることを取得する。この断面形状Siに対する断面2次モーメントIiを半径ri1と半径ri2の関数で表すと、下記に示す関係式(1)により表される。この断面形状Siに対する断面2次モーメントIiが要素位置Xiに対応づけられた特性値となる。
【0049】
【数1】
【0050】
(変換方法2)
対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状である場合には、対象物の形状を、設定軸(X軸)に沿った座標の関数で表し、対象物の材料情報に基づいて、特性値を設定軸(X軸)に沿った座標の関数で表した特性値に変換する。
【0051】
対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状である場合とは、例えば、図3に示すように、はり要素モデルを適用した対象物2で、軸対称な流路である対象物2の流路壁が、下記の関係式(2)に示す曲線で表される場合である。ここで、対象物2のはりの接線をX軸とし、X軸に直交する軸をY軸とする。尚、対象物2の流体解析において、圧力損失ΔPを特性値として解析する。また、流路の長さを1[m]とする。
【0052】
【数2】
【0053】
まず、対象物2の形状である関係式(2)を内壁半径方向rで表すと、対象物2の形状は下記の関係式(3)となる。
【0054】
【数3】
【0055】
対象物2の特性値である圧力損失ΔPは、図7に示すように、内径(直径)がd[m]、管の長さがL[m]の円管内を流体が流量V[m3/s]で流れるとき、圧力損失ΔPは下記の関係式(4)で表される。ここで、λは管摩擦係数を、ρ[kg/m3]は流体の密度を、u[m/s]は管内平均流速を表す。
【0056】
【数4】
【0057】
また、図3に示す対象物2において、流路の内壁直径(内径)dと管内平均流速uは、下記の関係式(5)を満たしながら、X軸の位置によって変動する。即ち、流路の内壁半径rと管内平均流速uは、下記の関係式(6)を満たしながら、X軸の位置によって変動する。
【0058】
【数5】
【0059】
ここで、流路の内壁半径rはX軸の位置Xの関数r=f(X)であることから、関係式(6)は、下記の関係式(7)となる。
【0060】
【数6】
【0061】
関係式(4)及び関係式(7)から、X軸の位置Xにおける圧力損失ΔPは、下記の関係式(8)で表される。このX軸の位置Xが要素位置Xiであるとき、圧力損失ΔPが要素位置Xiに対応づけられた特性値となる。
【0062】
【数7】
【0063】
次に、モデル構築システム10の入力部23及び出力部24について説明する。入力部23は、入力装置105(例えば、スキャナ、キーボード、外部記憶装置等)から対象物の材料情報やCAD等の対象物の幾何学情報を入力し、入力した材料情報を入力情報記憶部26の材料情報記憶部51に格納し、入力した幾何学情報を入力情報記憶部26の幾何学情報記憶部52に格納する。
【0064】
出力部24は、モデル構築システム10の区間分割部21(軸設定部31、要素位置設定部32及び特徴点取得部33)及び特性値割付部22(特性値変換部41及び特性値対応付部42)によって算出・決定された情報を、解析情報記憶部27から取得して、出力装置(例えば、表示装置、印刷装置、記憶装置等)に出力する。
【0065】
上述した本発明の一実施形態に係るモデル構築システム10により、はり要素モデルまたはシェル要素モデルを使用する、断面形状が不均一な対象物に対する応力解析、熱解析、回路解析、流体解析等の所望の解析を短時間に精度よく実行することができる。
【0066】
次に、本発明の一実施形態に係るモデル構築方法について説明する。
図8は、本発明の一実施形態にかかるモデル構築方法の各工程をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の一例である。図8では、図1及び図6に示した対象物1の応力解析を行うときの処理手順を例に挙げて説明する。
【0067】
対象物1の応力解析は、まず、入力装置105(例えば、スキャナ、キーボード、外部記憶装置等)から対象物1の材料情報やCAD等の対象物1の幾何学情報を入力し、入力した材料情報を入力情報記憶部26の材料情報記憶部51に格納し、入力した幾何学情報を入力情報記憶部26の幾何学情報記憶部52に格納する(ステップS101)。
【0068】
次に、軸設定ルール記憶部25に記憶されている所定の軸設定ルールと幾何学情報記憶部52に記憶されているCAD等の対象物1の幾何学情報とに基づいて、対象物1の解析に最適な設定軸(X軸)を設定し、解析情報記憶部27に格納する(ステップS102)。ここでは、図1及び図6に示したように、対象物1は軸対称であるので、対象物1の対称軸を設定軸(X軸)とする。尚、設定軸の設定処理の詳細は後述する。
【0069】
次に、対象物1に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、設定軸に直交する面で区切ってn個の区間Vi(i=1〜n)に分割して、区間Vi毎の要素位置Xi(i=1〜n)を設定し、解析情報記憶部27に格納する(ステップS103)。ここでは、図1及び図6に示すように、対象物1に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、対象物1の幾何学情報に基づいて、X軸に直交する平面Ti(i=0〜n)によって、n個の区間Vi(i=1〜n)に分割する。そして、平面TiとX軸との交点を、区間Viの要素位置Xiとして設定する。
【0070】
次に、対象物1の幾何学情報に基づいて、対象物1の形状を特徴付ける特徴点を、区間Vi毎に取得し、解析情報記憶部27に格納する(ステップS104)。ここでは、平面Ti上の対象物1の内壁位置を示す特徴点Bij(j=1〜m)と平面Ti上の対象物1の外壁位置を示す特徴点Aij(j=1〜m)を取得する。
【0071】
次に、取得した特徴点に基づいて、要素位置Xiにおける設定軸(X軸)に沿った座標に対応づけられた値で表した対象物1の断面形状(対象物1の肉厚等の形状)を取得する(ステップS106)。ここでは、図1及び図6に示すように、平面Ti上の特徴点Bij(j=1〜m)と特徴点Aij(j=1〜m)とから、断面形状Siが、点Xiを中心とする特徴点Bij(j=1〜m)を通る半径ri1の円と点Xiを中心とする特徴点Aij(j=1〜m)を通る半径ri2の円とからなる円形リング形状であることを取得する。
【0072】
次に、対象物1の材料情報及び幾何学情報に基づいて、機械特性値、物理特性値、化学特性値等のうち実形状に依存する特性値(図1及び図6では、断面2次モーメントI)を、設定軸(X軸)に沿った座標に対応づけられた値で表した特性値に変換する(ステップS107)。ここでは、図1及び図6に示すように、上述の関係式(1)に示す、断面形状Siに対する断面2次モーメントIiを、半径ri1と半径ri2の関数で表す。
【0073】
次に、変換した特性値と、設定した区間Vi毎の要素位置Xiとを対応付けて、解析情報記憶部27に格納する(ステップS108)。
【0074】
ステップS106乃至S108を、すべての区間Viについて実行し(ステップS105、S109、S110)、最後に、算出・決定された情報(特性値等)を、解析情報記憶部27から取得して、出力装置(例えば、表示装置、印刷装置、記憶装置等)に出力し(S111)、対象物1の応力解析の処理を終了する。
【0075】
図9は、本発明の一実施形態にかかるモデル構築方法の各工程をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の別の一例である。図9では、図3に示した対象物2の流体解析を行うときの処理手順を例に挙げて説明する。
【0076】
対象物2の流体解析は、まず、入力装置105(例えば、スキャナ、キーボード、外部記憶装置等)から対象物2の材料情報やCAD等の対象物2の幾何学情報を入力し、入力した材料情報を入力情報記憶部26の材料情報記憶部51に格納し、入力した幾何学情報を入力情報記憶部26の幾何学情報記憶部52に格納する(ステップS201)。
【0077】
次に、軸設定ルール記憶部25に記憶されている所定の軸設定ルールと幾何学情報記憶部52に記憶されているCAD等の対象物2の幾何学情報とに基づいて、対象物2の解析に最適な設定軸(X軸)を設定し、解析情報記憶部27に格納する(ステップS202)。ここでは、図3に示したように、対象物2がはり要素モデルを適用する対象物であるので、対象物2のはりの接線を設定軸(X軸)とする。尚、設定軸の設定処理の詳細は後述する。
【0078】
次に、形状曲線または形状曲面の関数で表される対象物の形状を、設定軸(X軸)に沿った座標の関数で表した対象物2の形状に変換する(ステップS203)。ここでは、図3に示すように、形状曲線または形状曲面の関数である上述の関係式(2)で表す対象物2の形状を、内壁半径方向rで表した、上述の関係式(3)に示す対象物2の形状に変換する。
【0079】
次に、対象物2の材料情報及び変換した対象物2の形状に基づいて、機械特性値、物理特性値、化学特性値等のうち実形状に依存する特性値(図3では、圧力損失ΔP)を、設定軸(X軸)に沿った座標の関数で表した特性値に変換する(ステップS204)。ここでは、圧力損失ΔPは、上述の関係式(4)に示す、流路の内壁直径(内径)dの関数で表される。
【0080】
次に、X軸の位置Xにおける変化した特性値をもとめ、要素位置Xiにおける特性値を、解析情報記憶部27に格納する(ステップS205)。ここでは、図3に示すように、X軸の位置Xにおける圧力損失ΔPは、下記の関係式(8)で表される。このX軸の位置Xが要素位置Xiであるとき、圧力損失ΔPが要素位置Xiに対応づけられた特性値となる。尚、対象物2が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状であることから、要素位置Xiは、解析精度に応じた所望の個数及び所望の位置を設定する。
【0081】
最後に、算出・決定された情報(特性値等)を、解析情報記憶部27から取得して、出力装置(例えば、表示装置、印刷装置、記憶装置等)に出力する(S206)、対象物2の流体解析の処理を終了する。
【0082】
次に、上述の図8のステップS102及び図9のステップS202の軸設定処理について、図10及び図11を参照して説明する。
図10は、軸設定処理をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の一例であり、図11は、図10の設定軸探索処理(ステップS306)をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の一例である。
【0083】
図10に示すように、軸設定処理は、まず、対象物に対してはり要素モデルが適用できるか否かを判定し(ステップS301)、はり要素モデルが適用できる場合(ステップS301:Yes)は、はり要素モデルのはりの所望の位置における接線を設定軸(X軸)に設定して(S302)、軸設定処理を終了する。
【0084】
はり要素モデルが適用できない場合(ステップS301:No)は、対象物に対してシェル要素モデルが適用できるか否かを判定し(ステップS303)、シェル要素モデルが適用できる場合(ステップS303:Yes)は、対象物が略軸対称であるか否かを判定する(ステップS304)。また、対象物に対してシェル要素モデルが適用できない場合(ステップS303:No)は、本発明の適用外として(S307)、軸設定処理を終了する。
【0085】
対象物が略軸対称である場合(ステップS304:Yes)は、対象物の形状の対称軸を設定軸(X軸)に設定して(S305)、軸設定処理を終了する。また、対象物が略軸対称でない場合(ステップS304:No)は、最適な設定軸を探索して(S306)軸設定処理を終了する。
【0086】
図11に示すように、ステップS306の設定軸探索処理は、まず、対象物に対して、任意の方向の初期設定軸を設定し、初期設定軸をX軸に設定する(S401)。次に、初期設定軸を、Y軸の周りにΔθi(i=0〜n)、Z軸の周りにΔθj(j=0〜n)だけ回転させた方向を、仮の設定軸Pij(以下、仮設定軸と呼ぶ)に設定する(S405)。ここで、Δθi及びΔθjは下記の関係式(9)及び(10)を満たす。
【0087】
【数8】
【0088】
次に、仮設定軸Pijに直交する平面Tk(k=0〜p)で対象物の解析空間もしくは解析モデル自体をp個の区間Vk(k=1〜p)に分割し、平面Tk上の対象物の断面における閉ループ数をmijkとして、下記の関係式(11)に示す仮設定軸Pijに対する閉ループ数の総数Nを算出する(S406)。
【0089】
【数9】
【0090】
ステップS405及びS406を、すべてのi及びjについて実行し(ステップS402、S403、S404、S407、S408、S409)、最後に、閉ループ数の総数Nの最小値となる仮設定軸Pijを検出し、検出した仮設定軸Pijを対象物の解析用の設定軸に設定する(S410)。
【0091】
但し、流体の流れを解析対象とする場合は流れに沿った方向に軸を設定することが望ましいが、上記の方法で設定軸の探索を行うと、設定軸の方向が必ずしも流れに沿った方向にならない場合がある。その場合は上記の設定軸探索の結果によらず、設定軸の方向を流れに沿った方向に定めることもあり得る。
【0092】
図11に示した設定軸探索処理を用いた場合の解析として、例えば、図12に示すような、コンクリート製の不定形プールに水を入れた場合の耐圧解析を行う例を挙げることができる。図12は、コンクリート製不定形プールの概略外観斜視図を示したものである。また、図13(a)は、図12のコンクリート製不定形プールの平面Aによる断面図であり、(b)は、図12のコンクリート製不定形プールの平面Bによる断面図である。ここで、平面Aは後述の平面Tiのことである。また、平面Bは、後述の設定軸Pを通る平面Aに直交する平面である。
【0093】
尚、図12に示すコンクリート製不定形プールの耐圧解析においては、ヤング率を特性値として解析する。また、図12に示すコンクリート製不定形プール3(以下、対象物3と呼ぶ)は、形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状であるので、上述の変換方法1により特性値を変換する。従って、図8に示した、本発明の一実施形態にかかるモデル構築方法の各工程をコンピュータに実行させるプログラムの処理手順を示すフローチャート図の一例を参照して、図12及び図13に示した対象物3の解析処理手順を説明する。
【0094】
図8に示すように、対象物3の耐圧解析は、まず、入力装置105(例えば、スキャナ、キーボード、外部記憶装置等)から対象物3の材料情報やCAD等の対象物3の幾何学情報を入力し、入力した材料情報を入力情報記憶部26の材料情報記憶部51に格納し、入力した幾何学情報を入力情報記憶部26の幾何学情報記憶部52に格納する(ステップS101)。
【0095】
次に、軸設定ルール記憶部25に記憶されている所定の軸設定ルールと幾何学情報記憶部52に記憶されているCAD等の対象物3の幾何学情報とに基づいて、対象物3の解析に最適な設定軸(X軸)を設定し、解析情報記憶部27に格納する(ステップS102)。ここで、対象物3は、シェル要素モデルが適用できる対象物であり、更に、軸対称ではない対象物である。従って、対象物3の解析に最適な設定軸としては、図10に示した、軸設定処理の手順に従うと、図11に示した設定軸探索処理によって探索された設定軸となる。
【0096】
具体的に、図11及び図12を参照して説明する。図11に示したように、まず、対象物3に対して、任意の方向の初期設定軸を設定し、初期設定軸をX軸に設定する(S401)。ここで、初期設定軸P00として設定する任意の方向を鉛直上向き方向とする。
【0097】
次に、初期設定軸P00を、Y軸の周りにΔθi(i=0〜n)、Z軸の周りにΔθj(j=0〜n)だけ回転させた方向を、仮の設定軸Pij(以下、仮設定軸と呼ぶ)に設定する(S405)。ここで、Δθi及びΔθjは上記の関係式(9)及び(10)を満たす。
【0098】
次に、仮設定軸Pijに直交する平面Tk(k=0〜p)で対象物3の解析空間もしくは解析モデル自体をp個の区間Vk(k=1〜p)に分割し、平面Tk上の対象物3の断面における閉ループ数をmijkとして、上記の関係式(11)に示す仮設定軸Pijに対する閉ループ数の総数Nを算出する(S406)。
【0099】
ステップS405及びS406を、すべてのi及びjについて実行し、最後に、閉ループ数の総数Nの最小値となる仮設定軸Pijを検出し、検出した仮設定軸Pijを対象物3の解析用の設定軸に設定する(S410)。この結果、設定軸は、図12に示すような軸Pとなった。この軸(設定軸)Pを改めて、X軸に設定し直し、以下の処理(図8のステップS103以下の処理)を実行する。
【0100】
次に、対象物3に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、設定軸P(X軸)に直交する面で区切ってn個の区間Vi(i=1〜n)に分割して、区間Vi毎の要素位置Xi(i=1〜n)を設定し、解析情報記憶部27に格納する(ステップS103)。ここでは、図12及び図13に示すように、対象物3に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、対象物3の幾何学情報に基づいて、X軸に直交する平面Ti(i=0〜n)によって、n個の区間Vi(i=1〜n)に分割する。そして、平面TiとX軸との交点を、区間Viの要素位置Xiとして設定する。
【0101】
次に、対象物3の幾何学情報に基づいて、対象物3の形状を特徴付ける特徴点を、区間Vi毎に取得し、解析情報記憶部27に格納する(ステップS104)。次に、取得した特徴点に基づいて、要素位置Xiにおける設定軸(X軸)に沿った座標に対応づけられた値で表した対象物3の断面形状(対象物3の肉厚等の形状)を取得する(ステップS106)。
【0102】
次に、対象物3の材料情報及び幾何学情報に基づいて、機械特性値、物理特性値、化学特性値等のうち実形状に依存する特性値(図12及び図13では、ヤング率)を、設定軸P(X軸)に沿った座標に対応づけられた値で表した特性値に変換する(ステップS107)。断面形状Siに対するヤング率Eciは、下記の関係式(12)で表される。ここで、tiは各要素位置Xiにおける対象物3の平均肉厚、tsiは対象物3に対するシェル要素モデルの設定肉厚、Esは対象物3に対して予め設定したヤング率である。
【0103】
【数10】
【0104】
次に、変換した特性値と、設定した区間Vi毎の要素位置Xiとを対応付けて、解析情報記憶部27に格納する(ステップS108)。
【0105】
ステップS106乃至S108を、すべての区間Viについて実行し(ステップS105、S109、S110)、最後に、算出・決定された情報(特性値等)を、解析情報記憶部27から取得して、出力装置(例えば、表示装置、印刷装置、記憶装置等)に出力し(S111)、対象物3の耐圧解析の処理を終了する。
【0106】
上述した本発明の一実施形態に係るモデル構築方法により、はり要素モデルまたはシェル要素モデルを使用する、断面形状が不均一な対象物に対する応力解析、熱解析、回路解析、流体解析等の所望の解析を短時間に精度よく実行することができる。例えば、図1及び図3に示した対象物1の応力解析を図8に示したモデル構築方法で行った結果、従来の方法では、解析モデルの生成に5時間程度かかっていたが、本発明の一実施形態に係るモデル構築方法では、解析モデルの生成は1時間であった。即ち、解析時間を5分の1に短縮することができた。
【符号の説明】
【0107】
1、2、3 : 対象物
10 : モデル構築システム
21 : 区間分割部
22 : 特性値割付部
23 : 入力部
24 : 出力部
25 : 軸設定ルール記憶部
26 : 入力情報記憶部
27 : 解析情報記憶部
31 : 軸設定部
32 : 要素位置設定部
33 : 特徴点取得部
41 : 特性値変換部
42 : 性値対応付部
51 : 材料情報記憶部
52 : 幾何学情報記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを使用して、はり要素モデルまたはシェル要素モデルにより断面形状の不均一な対象物を解析するためのモデル構築システムであって、
前記対象物に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、前記対象物の幾何学情報に基づいて、設定した軸に直交する面で区切って複数の区間に分割する区間分割手段と、
前記対象物の実形状に依存する特性値を、前記対象物の材料情報及び幾何学情報に基づいて、前記軸に沿った座標の関数を用いて変換し、前記区間分割手段によって分割された前記区間毎の前記対象物の解析要素に、変換した特性値を割り付ける特性値割付手段と、
を備えていることを特徴とするモデル構築システム。
【請求項2】
前記区間分割手段は、
所定の軸設定ルール及び前記幾何学情報に基づいて、前記対象物の解析に最適な前記軸を設定する軸設定手段と、
前記解析空間もしくは前記解析モデル自体を、前記幾何学情報に基づいて、前記軸設定手段によって設定された前記軸に直交する面で区切って複数の前記区間に分割して、前記区間毎の前記解析要素の前記軸における位置である要素位置を設定する要素位置設定手段と、
前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記幾何学情報に基づいて、前記対象物の形状を特徴付ける特徴点を、前記区間毎に取得する特徴点取得手段と、
を備え、
前記特性値割付手段は、
前記材料情報及び前記幾何学情報に基づいて、前記特性値を、前記軸設定手段によって設定した前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換する特性値変換手段と、
前記特性値変換手段によって変換された前記特性値と、前記要素位置設定手段によって設定した前記区間毎の前記要素位置とを対応付ける特性値対応付手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載のモデル構築システム。
【請求項3】
前記特性値変換手段は、
前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記特徴点取得手段によって取得した前記特徴点に基づいて、前記要素位置における前記軸に沿った座標の関数で表した前記対象物の断面形状を取得し、取得した前記断面形状と前記材料情報とに基づいて、前記特性値を前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換することを特徴とする請求項2に記載のモデル構築システム。
【請求項4】
前記特性値変換手段は、
前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状である場合に、前記形状曲線または前記形状曲面の関数で表される前記対象物の形状を、前記軸に沿った座標の関数で表した前記対象物の形状に変換し、変換した前記対象物の形状と前記材料情報とに基づいて、前記特性値を前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換することを特徴とする請求項2に記載のモデル構築システム。
【請求項5】
前記要素位置設定手段は、
前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記区間を、前記軸に対して略直交する前記対象物の断面形状が近似的に一定であると見なせる十分微小な領域となるように分割することを特徴とする請求項2に記載のモデル構築システム。
【請求項6】
前記軸設定ルールは、前記対象物に対してはり要素モデルを適用できる場合、はり要素モデルのはりの所望の位置における接線を、前記軸に設定することを特徴とする請求項2に記載のモデル構築システム。
【請求項7】
前記軸設定ルールは、前記対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、前記対象物の形状が略軸対称である場合、前記対象物の形状の対称軸を、前記軸に設定することを特徴とする請求項2に記載のモデル構築システム。
【請求項8】
前記軸設定ルールは、前記対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、前記対象物の形状が略軸対称ではない場合、仮の軸に対して略直交する前記対象物の断面図形の数が最小となるような前記仮の軸を、前記軸に設定することを特徴とする請求項2に記載のモデル構築システム。
【請求項9】
コンピュータを使用して、はり要素モデルまたはシェル要素モデルにより断面形状の不均一な対象物を解析するためのモデル構築方法であって、
(a)前記対象物に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、前記対象物の幾何学情報に基づいて、設定した軸に直交する面で区切って複数の区間に分割する工程と、
(b)前記対象物の実形状に依存する特性値を、前記対象物の材料情報及び幾何学情報に基づいて、前記軸に沿った座標の関数を用いて変換し、前記工程(a)によって分割された前記区間毎の前記対象物の解析要素に、変換した特性値を割り付ける工程と、
を備えていることを特徴とするモデル構築方法。
【請求項10】
前記工程は(a)は、
(a1)所定の軸設定ルール及び前記幾何学情報に基づいて、前記対象物の解析に最適な前記軸を設定する工程と、
(a2)前記解析空間もしくは前記解析モデル自体を、前記幾何学情報に基づいて、前記工程(a1)によって設定された前記軸に直交する面で区切って複数の前記区間に分割して、前記区間毎の前記解析要素の前記軸における位置である要素位置を設定する工程と、
(a3)前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記幾何学情報に基づいて、前記対象物の形状を特徴付ける特徴点を、前記区間毎に取得する工程と、
を備え、
前記工程(b)は、
(b1)前記材料情報及び前記幾何学情報に基づいて、前記特性値を、前記工程(a1)によって設定した前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換する工程と、
(b2)前記工程(b1)によって変換された前記特性値と、前記工程(a2)によって設定した前記区間毎の前記要素位置とを対応付ける工程と、
を備えていることを特徴とする請求項9に記載のモデル構築方法。
【請求項11】
前記工程(b1)は、
前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記工程(a3)によって取得した前記特徴点に基づいて、前記要素位置における前記軸に沿った座標の関数で表した前記対象物の断面形状を取得し、取得した前記断面形状と前記材料情報とに基づいて、前記特性値を前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換することを特徴とする請求項10に記載のモデル構築方法。
【請求項12】
前記工程(b1)は、
前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状である場合に、前記形状曲線または前記形状曲面の関数で表される前記対象物の形状を、前記軸に沿った座標の関数で表した前記対象物の形状に変換し、変換した前記対象物の形状と前記材料情報とに基づいて、前記特性値を前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換することを特徴とする請求項10に記載のモデル構築方法。
【請求項13】
前記工程(a2)は、
前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記区間を、前記軸に対して略直交する前記対象物の断面形状が近似的に一定であると見なせる十分微小な領域となるように分割することを特徴とする請求項10に記載のモデル構築方法。
【請求項14】
前記軸設定ルールは、前記対象物に対してはり要素モデルを適用できる場合、はり要素モデルのはりの所望の位置における接線を、前記軸に設定することを特徴とする請求項10に記載のモデル構築方法。
【請求項15】
前記軸設定ルールは、前記対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、前記対象物の形状が略軸対称である場合、前記対象物の形状の対称軸を、前記軸に設定することを特徴とする請求項10に記載のモデル構築方法。
【請求項16】
前記軸設定ルールは、前記対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、前記対象物の形状が略軸対称ではない場合、仮の軸に対して略直交する前記対象物の断面図形の数が最小となるような前記仮の軸を、前記軸に設定することを特徴とする請求項10に記載のモデル構築方法。
【請求項17】
はり要素モデルまたはシェル要素モデルにより断面形状の不均一な対象物を解析するための処理を、コンピュータに実行させるプログラムであって、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のモデル構築システムの各手段を実現させる処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
コンピュータを使用して、はり要素モデルまたはシェル要素モデルにより断面形状の不均一な対象物を解析するためのモデル構築システムであって、
前記対象物に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、前記対象物の幾何学情報に基づいて、設定した軸に直交する面で区切って複数の区間に分割する区間分割手段と、
前記対象物の実形状に依存する特性値を、前記対象物の材料情報及び幾何学情報に基づいて、前記軸に沿った座標の関数を用いて変換し、前記区間分割手段によって分割された前記区間毎の前記対象物の解析要素に、変換した特性値を割り付ける特性値割付手段と、
を備えていることを特徴とするモデル構築システム。
【請求項2】
前記区間分割手段は、
所定の軸設定ルール及び前記幾何学情報に基づいて、前記対象物の解析に最適な前記軸を設定する軸設定手段と、
前記解析空間もしくは前記解析モデル自体を、前記幾何学情報に基づいて、前記軸設定手段によって設定された前記軸に直交する面で区切って複数の前記区間に分割して、前記区間毎の前記解析要素の前記軸における位置である要素位置を設定する要素位置設定手段と、
前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記幾何学情報に基づいて、前記対象物の形状を特徴付ける特徴点を、前記区間毎に取得する特徴点取得手段と、
を備え、
前記特性値割付手段は、
前記材料情報及び前記幾何学情報に基づいて、前記特性値を、前記軸設定手段によって設定した前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換する特性値変換手段と、
前記特性値変換手段によって変換された前記特性値と、前記要素位置設定手段によって設定した前記区間毎の前記要素位置とを対応付ける特性値対応付手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載のモデル構築システム。
【請求項3】
前記特性値変換手段は、
前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記特徴点取得手段によって取得した前記特徴点に基づいて、前記要素位置における前記軸に沿った座標の関数で表した前記対象物の断面形状を取得し、取得した前記断面形状と前記材料情報とに基づいて、前記特性値を前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換することを特徴とする請求項2に記載のモデル構築システム。
【請求項4】
前記特性値変換手段は、
前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状である場合に、前記形状曲線または前記形状曲面の関数で表される前記対象物の形状を、前記軸に沿った座標の関数で表した前記対象物の形状に変換し、変換した前記対象物の形状と前記材料情報とに基づいて、前記特性値を前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換することを特徴とする請求項2に記載のモデル構築システム。
【請求項5】
前記要素位置設定手段は、
前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記区間を、前記軸に対して略直交する前記対象物の断面形状が近似的に一定であると見なせる十分微小な領域となるように分割することを特徴とする請求項2に記載のモデル構築システム。
【請求項6】
前記軸設定ルールは、前記対象物に対してはり要素モデルを適用できる場合、はり要素モデルのはりの所望の位置における接線を、前記軸に設定することを特徴とする請求項2に記載のモデル構築システム。
【請求項7】
前記軸設定ルールは、前記対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、前記対象物の形状が略軸対称である場合、前記対象物の形状の対称軸を、前記軸に設定することを特徴とする請求項2に記載のモデル構築システム。
【請求項8】
前記軸設定ルールは、前記対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、前記対象物の形状が略軸対称ではない場合、仮の軸に対して略直交する前記対象物の断面図形の数が最小となるような前記仮の軸を、前記軸に設定することを特徴とする請求項2に記載のモデル構築システム。
【請求項9】
コンピュータを使用して、はり要素モデルまたはシェル要素モデルにより断面形状の不均一な対象物を解析するためのモデル構築方法であって、
(a)前記対象物に対する解析空間もしくは解析モデル自体を、前記対象物の幾何学情報に基づいて、設定した軸に直交する面で区切って複数の区間に分割する工程と、
(b)前記対象物の実形状に依存する特性値を、前記対象物の材料情報及び幾何学情報に基づいて、前記軸に沿った座標の関数を用いて変換し、前記工程(a)によって分割された前記区間毎の前記対象物の解析要素に、変換した特性値を割り付ける工程と、
を備えていることを特徴とするモデル構築方法。
【請求項10】
前記工程は(a)は、
(a1)所定の軸設定ルール及び前記幾何学情報に基づいて、前記対象物の解析に最適な前記軸を設定する工程と、
(a2)前記解析空間もしくは前記解析モデル自体を、前記幾何学情報に基づいて、前記工程(a1)によって設定された前記軸に直交する面で区切って複数の前記区間に分割して、前記区間毎の前記解析要素の前記軸における位置である要素位置を設定する工程と、
(a3)前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記幾何学情報に基づいて、前記対象物の形状を特徴付ける特徴点を、前記区間毎に取得する工程と、
を備え、
前記工程(b)は、
(b1)前記材料情報及び前記幾何学情報に基づいて、前記特性値を、前記工程(a1)によって設定した前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換する工程と、
(b2)前記工程(b1)によって変換された前記特性値と、前記工程(a2)によって設定した前記区間毎の前記要素位置とを対応付ける工程と、
を備えていることを特徴とする請求項9に記載のモデル構築方法。
【請求項11】
前記工程(b1)は、
前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記工程(a3)によって取得した前記特徴点に基づいて、前記要素位置における前記軸に沿った座標の関数で表した前記対象物の断面形状を取得し、取得した前記断面形状と前記材料情報とに基づいて、前記特性値を前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換することを特徴とする請求項10に記載のモデル構築方法。
【請求項12】
前記工程(b1)は、
前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状である場合に、前記形状曲線または前記形状曲面の関数で表される前記対象物の形状を、前記軸に沿った座標の関数で表した前記対象物の形状に変換し、変換した前記対象物の形状と前記材料情報とに基づいて、前記特性値を前記軸に沿った座標の関数で表した特性値に変換することを特徴とする請求項10に記載のモデル構築方法。
【請求項13】
前記工程(a2)は、
前記対象物が形状曲線または形状曲面の関数の形を割り出せる形状ではない場合に、前記区間を、前記軸に対して略直交する前記対象物の断面形状が近似的に一定であると見なせる十分微小な領域となるように分割することを特徴とする請求項10に記載のモデル構築方法。
【請求項14】
前記軸設定ルールは、前記対象物に対してはり要素モデルを適用できる場合、はり要素モデルのはりの所望の位置における接線を、前記軸に設定することを特徴とする請求項10に記載のモデル構築方法。
【請求項15】
前記軸設定ルールは、前記対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、前記対象物の形状が略軸対称である場合、前記対象物の形状の対称軸を、前記軸に設定することを特徴とする請求項10に記載のモデル構築方法。
【請求項16】
前記軸設定ルールは、前記対象物に対してシェル要素モデルが適用でき、かつ、前記対象物の形状が略軸対称ではない場合、仮の軸に対して略直交する前記対象物の断面図形の数が最小となるような前記仮の軸を、前記軸に設定することを特徴とする請求項10に記載のモデル構築方法。
【請求項17】
はり要素モデルまたはシェル要素モデルにより断面形状の不均一な対象物を解析するための処理を、コンピュータに実行させるプログラムであって、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のモデル構築システムの各手段を実現させる処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−165035(P2011−165035A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28724(P2010−28724)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]