説明

モノニトロトルエンを製造するための方法

本発明は、モノニトロ化した有機化合物、特にモノニトロベンゼンを連続的に製造する方法に関する。更に特定的に、本発明は、ニトロベンゼンを製造するための、改良された連続的な断熱的方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノニトロ化(単硝酸化)された有機化合物を連続的に製造する方法に関し、特にモノニトロベンゼンを製造するための方法に関する。より特定的には、本発明は、ニトロベンゼンを製造するための、改良された連続的で断熱的な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族化合物をニトロ化(硝酸化)する方法、特にベンゼンをニトロ化する方法は、しばしば公知であり、そして例えば(特にアニリンの製造に使用される)モノニトロベンゼンを得るために、多年にわたり商用に使用されてきた。典型的には、ニトロベンゼンの製造は、ベンゼンに硝酸と、硫酸を加えることを含む。このニトロ化は、反応熱を排出させて、60〜70℃の温度範囲内で行うことができ、又はこのニトロ化は、断熱条件下に行うことができる。反応を行うために、硝酸及び硫酸が混合され、そしてベンゼンが計量導入され、該ベンゼンは、硝酸と反応して水及び主としてニトロベンゼンを生成する。
【0003】
ベンゼンと硝酸が反応する反応領域は、攪拌タンク又は管型反応装置の配置構成で構成されても良く、この反応のためには良好な混合が必要とされる。従って、管型反応装置(該管型反応装置の内部には、ベンゼン、硝酸、硫酸及び水の強い混合を確実にする分散要素が、管型反応装置の長さにわたって分配して配置されている)を使用することが好ましい。このような反応装置は、例えば特許文献1(WO2001/64333A2)に記載されている。
【0004】
反応の後に得られる、基本的に硝酸を有しない反応混合物が、相分離装置に供給され、該相分離装置内で、2相が形成され、2相の内の第1の相は、粗製ニトロベンゼンと称され、そして主としてニトロベンゼン、ベンゼン、及びニトロベンゼンに溶解した量の硫酸と水で構成されており、そして第2の相は廃酸(waste acid)と称され、主として水、硫酸、及び硫酸中に溶解したニトロベンゼンから構成されている。
【0005】
反応の間、酸相とベンゼン相は非混合性なので、反応速度と時空収率(space-time yield)は、相間の物質移動によって高度に限定され、すなわち、相の相互の大きなインターフェース領域(接触面領域)に曝す性能によって限定される。インターフェース領域が拡大されると、相間の反応速度が増す。通常のニトロベンゼン製造プラントでは、これらのインターフェース領域は、反応関与物を、(液体に大きいせん断力が施される)1つ以上の混合容器内で変換することによって形成される。
【0006】
ベンゼンの工業的なニトロ化では、主たるニトロベンゼン生成物に加え、多くの副生成物も、数100ppmの範囲〜数1000ppmの範囲で得られる。発生する副生成物は、2つのグループの分けることができる:ポリニトロ化ベンゼン及びモノ−又はポリニトロ化されたフェノール性の副生成物。発生するポリニトロ化されたベンゼンは、異性体のジニトロベンゼン:1,2−ジニトロベンゼン、1,3−ジニトロベンゼン、及び1,4−ジニトロベンゼンである。形成されるフェノール性の副生成物は、異性体のニトロ化フェノール:2−ジニトロフェノール、3−ニトロフェノール、及び4−ニトロフェノールである。異性体のジニトロ化フェノール、2,4−ジニトロフェノール、及び2,6−ジニトロフェノール、及びトリニトロ化された2,4,6−トリニトロフェノール(ピクリン酸)も得られる。副生成物は低濃度でのみ得られるが、それにもかかわらず、これらは、その毒性及び生態毒性、及びその除去の複雑さのために、製造と汚水処理における複雑さのレベルが増し、及び従ってニトロベンゼンの経済的な継続性を、非常に高い程度に損なうものである。
【0007】
上述した副生成物の発生を低減するために、典型的には過剰のベンゼンが使用され、及び特に、ポリニトロ化されたベンゼンの形成を抑制するために、特定の構造を有する反応装置が使用される。この目的のために、例えば特許文献2(WO01/46433A2)は、内部で分散領域が沈静領域と交互している管型反応装置を使用することを提案している。しかしながら、この反応装置の一つの短所は、反応装置の沈静領域で、相の大きな分離が生じること(堆積:セジメンテーション)で、このことは、下流の分散領域で、個々の反応物質の、非常にエネルギー大量消費の混合を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2001/64333A2
【特許文献2】WO01/46433A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、(単純な構造の管型反応装置内で行うことができ、及び最終的な変換率が高く、及び副生成物の量が少ない)硝酸化(ニトロ化)された芳香族化合物を連続的に製造するための、特にニトロベンゼンを製造するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、
(a)少なくとも1種の芳香族化合物、及び硝酸、硫酸、及び水を含む混合物を、任意の順序で、所定の管型反応装置に供給する工程、
(b)反応混合物を得るために、少なくとも1種の芳香族化合物、及び硝酸、硫酸、及び水を含む混合物を、反応装置内で、断熱条件下に反応させる工程、及び
(c)反応を行った後、工程(b)で得られた反応混合物を、有機相と水性相に分離する工程、
を含み、及び
前記管型反応装置は、反応装置の直径の30〜70倍に相当する距離で、反応装置の全長さにわたって設けられ、且つ160°〜200°の偏向角度(偏角:deflection angle)を有する複数の垂直管ベンドを有し、及び複数の静的混合要素を有し、該複数の静的混合要素は、高い逆混合が、管型反応装置の第1の部分に存在し、及び低い逆混合が、反応装置の第2の部分に存在するように設けられている、少なくとも1種の芳香族化合物を、硝酸、硫酸、及び水を含む混合物と反応させることによって、硝酸化(ニトロ化)された芳香族化合物を連続的に製造する方法によって達成される。
【0011】
本発明に従う方法を使用することにより、芳香族モノニトロ化合物、特にニトロベンゼンを高い収率で、及び副生成物の低い割合で、及び費用を要し、複雑な反応装置を使用することなく製造することができることがわかったのは、驚くべきことであった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
反応装置の直径の30〜70倍、好ましくは60〜40倍、より好ましくは45〜55倍に相当する距離で、反応装置の全長さにわたって設けられ、且つ160°〜200°の範囲の偏向角度、好ましくは180°の偏向角度を有する複数の垂直管ベンドを含む管型反応器を使用することにより、(少なくとも1種の芳香族化合物、及び硝酸、硫酸及び水を含む混合物の)使用する反応物質の非常に効果的な混合が、極めて小さい複雑さ、及び低いエネルギー供給と共に達成され、この結果、高い分散動作、及び従って、高い反応速度が同時に有利に達成される。「垂直管ベンド(vertical tube bend)」という用語は、本発明では、基礎に対して垂直に配置され、及び従って二相混合物を再分散させるのに作用する管ベンドを意味すると理解される。有利なことに、二相混合物が(装置の複雑性が最小限のレベルである)垂直管ベンドを流れる間、二相混合物は非常に効果的に混合される。
【0013】
管反応装置中の管ベンドの配置は、反応条件に依存する。本発明の一実施の形態では、管型反応装置(tubular reactor)は、ベンドによって6〜18個のチェンバー(chamber)、より好ましくは10〜12個のチェンバーに分けられる。本発明の更なる実施の形態では、管ベンドは、管型反応装置の全長さにわたって、等距離に配置される。
【0014】
本発明の方法が行われる管型反応装置は、更に、複数の静的混合要素を含み、該静的混合要素は、(管ベンドと相互作用して、)高い逆混合(backmixing)が、管型反応装置の第1の部分に存在し、及び低い逆混合が管型反応装置の第2の部分に存在するように配置されている。内部に高い逆混合が存在する第1の部分の長さは、管型反応装置の全長さの20〜40%、好ましくは25〜35%であり;低い逆混合が存在する管型反応装置の第2の部分の長さは、管型反応装置の全長さに対して60〜80%、好ましくは65〜75%である。反応条件に依存して、静的混合要素は、上記に定義した条件が、対応する区域に存在するように配置される。本発明について、「高い逆混合(high backmixing)」は、ボーデンシュタイン数(Bodenstein number)が、5未満の値(又は5未満の複数の値)の条件が、反応装置の小区域に存在することを意味する。「低い逆混合(lower backmixing)」は、ボーデンシュタイン数(Bodenstein number)が、5を超える値(又は5を超えるの複数の値)の条件が、反応装置の小区域に存在することを意味する。管ベンド及び静的混合要素の配置は、この技術分野の当業者が、その技術的知識に基づいて、対応する条件が反応装置の対応する領域に存在するように受け負うことができる。
【0015】
管型反応器内に存在する静的混合要素は、好ましくは、リストリクター、特にオフセットリストリクター、床(ベッド)、及び適切なオリフィスを有するプレートである。断熱的な処理の過程で表れる高い反応温度、及び挑戦的(aggressive)な投入物質は、プレート(床、基礎)の材料に高い条件を要求するので、プレートのために、これらの条件下では殆ど不活性の材料が使用され、より好ましくはステンレススチール、又は被覆された材料又はセラミック材料が使用される。
【0016】
プレートは、分散要素として機能し、及びオリフィスを有する。オリフィスは、スラット、ホール、又はボアであっても良い。オリフィスはボアであることが好ましい。この理由は、その製造が特に単純であるからである。しかしながら、他のオリフィス形状を選択することも可能である。本発明の一実施の形態では、せん孔したプレートとして構成されることが有利であることがわかった。これらのせん孔されたプレートは、複数の孔を有している(一実施の形態では、これらの孔は、対称的に、又は均一にプレートの領域にわたって配置されている)。本発明の更なる実施の形態では、せん孔されたプレートは、単位面積当たりの均一な孔の分布の末端に、単位面積当たりの孔の数がより少ない領域を有している。
【0017】
本発明の特に好ましい実施の形態では、本発明に従う方法では、ボアと三角形、及び/又は四角形、及び/又は六角形、又は弧状の切り取り部の両方を有するプレートを使用することが有利であることがわかった。これらの切り取り部は、好ましくは、プレートの領域の一部分で均一に分配され、この一方で、切り取り部はプレートの他の部分で、分配して配置されている。一実施の形態では、三角形、及び/又は四角形、及び/又は五角形、及び/又は六角形、又は弧状の切り取り部は、部分的にのみ打ち抜かれ、そしてプレートの平面から、好ましくは流れの方向に曲げられており、そして調節板として機能する。このようなプレートの使用は、本発明に従う方法で使用される反応物質の特に有利な混合をもたらす。
【0018】
本発明に従う方法で使用される反応装置は、好ましくは垂直に配置され、そして下側端部と上側端部を有する。反応装置の下側端部は、(少なくとも1種の芳香族化合物、及び硝酸、硫酸、及び水の混合物の)反応物質の投入にために、少なくとも1つの供給手段を有しており、及び上側端部は、反応混合物の取り出しのための除去手段を少なくとも1つ有している。本発明の一実施の形態では、反応物質は少なくとも1個のポンプを使用して供給される。好ましい実施の形態では、反応装置(反応器)は追加的に、反応装置内に存在する個々のチェンバーへの供給を可能とする、有機及び水性相のための供給手段を有する。
【0019】
反応関与物(reaction participant)は、一緒に供給することができるが、しかし個々に、又はこれらの2種又は3種の混合物として、同時に、又は引き続いて反応装置内に供給することもできる。本発明の一実施の形態では、反応物質は、上述した態様で、ノズル等の1個以上の供給部を経由して導入することができる。
【0020】
得られる反応混合物が、全体の混合の後に、本発明の組成を有するならば、反応物質、硝酸、芳香族化合物、及び硫酸、及び水が相互に混合される順序、及び組成は、本発明を効果的に行う上での重要性は小さい。
【0021】
内部構造、特にプレートを通しての望ましくない逆流を、反応装置の全体にわたり防止するために、管型反応器内で、プレート当たり、0.05〜3バールの圧力損失を形成するプレートを使用することが好ましい。芳香族化合物を断熱的にモノニトロ化するために、好ましくは0.05〜1バール、最も好ましくは0.08〜0.8バールの圧力損失を形成するプレートを使用することが特に好ましい。プレート当たりの圧力損失は好ましくは最小減に維持される。この理由は、圧力損失が大きいと、例えば高性能のポンプが必要になり、これにより工程全体のコストが高くなるからである。
【0022】
本発明の一実施の形態では、反応物質は、(反応物質を管型反応装置内に、強く混ぜながら供給することを可能とする)少なくとも1個の供給部を通して供給される。本発明の一実施の形態では、少なくとも1種の芳香族化合物を、1個の供給部、例えばノズルを経由して供給することができ、及び硝酸、硫酸、及び水を含む混合物を、更なる供給部、例えばノズルを経由して供給することができる;好ましい実施の形態では、少なくとも1種の芳香族化合物、及び硝酸、硫酸、及び水を含む混合物を、1個の供給部、例えばノズルを介して管型反応装置内に同時に供給することができる。更なる好ましい実施の形態では、硝酸、硫酸、及び水を含む混合物が、管型反応器の長さにわたって分配されて配置された複数の供給部、例えば複数のノズルを経由して管型反応装置に供給される。
【0023】
本発明の好ましい実施の形態で、本発明に従う方法で使用されるノズルは、反応装置の技術分野の当業者にとって公知である。ノズルは、好ましくは、(液滴のダイバージェントパターン(フルコーン)を形成し、及び上記液滴に回転動作要素を与えても良く、与えなくても良い)ダイバージェントトランジション層として乱流を放出するように構成される。このような流れのパターンは、スプレー−乾燥技術から公知のノズルを使用することによって得ることができる。ノズルは、好ましくは、内壁を有し、又は(出口で形成された液滴の分散性を高めるように作用する螺旋流を得るために、直線状のダイバージェント流に付加される、放射状(螺旋状)出口流を形成するために)1つ以上の正接の、又は螺旋の通路を規定するものを有する。ノズルは、好ましくは70°以下の出口コーン角度を有する。
【0024】
本発明に従う方法で使用される供給部は、反応装置技術の分野の当業者にとって公知である。供給部は、該供給部が既に予混合(予備混合)を形成するように構成されることが好ましい。このことは、この技術分野の当業者にとって公知の、異なる混合ノズルを(また、静的ミキサー、又はT−ピースをも)使用することによって達成される。
【0025】
供給部、特にノズルを通しての直線状の流体の流速は、典型的には、5〜50m/sであり、及び10〜1000μmの平均液滴径が達成される。
【0026】
反応関与物は、供給部中で、又は反応装置内で、20〜110℃の範囲、好ましくは40〜100℃の範囲、より好ましくは55〜95℃の範囲で混合される。断熱反応条件が維持される。最終温度は、混合温度のレベル、反応物質の割合、及び変換に依存する;通常140℃を超えることがなく、一般的に130℃を超えることがない。
【0027】
本発明で使用することが可能な芳香族化合物は、例えば、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ナフタレン、及びアントラキノンである。好ましい実施の形態では、芳香族化合物はベンゼンである。
【0028】
硝酸、硫酸、及び水を含む混合物中の硝酸の割合は、硝酸、硫酸、及び水の合計に対して、1〜8質量%、好ましくは2〜6質量%、より好ましくは2.5〜4質量%である。硝酸は、高度に濃縮して、又は共沸点の状態で使用することができるが、好ましくは、約60〜65質量%の、及び安価な「弱酸」の状態で使用される。
【0029】
硝酸、硫酸、及び水を含む混合物中の硫酸の含有量は、硝酸、硫酸、及び水の含有量に対して、58〜74質量%、好ましくは60〜70質量%、より好ましくは62〜68質量%、最も好ましくは64〜67質量%である。
【0030】
100%になるための残りの部分は、水である。これは、硫酸の希釈水として、硝酸の希釈水として、又は上述した1種以上の状態で使用することができる。より好ましくは、水は硫酸と硝酸の両方の希釈水として存在する。
【0031】
少なくとも1種の芳香族化合物、特にベンゼンの、HNO3に対するモル割合は、通常、0.9〜1.5である。望ましくないポリニトロ化された芳香族化合物、特にポリニトロ化されたベンゼンを最小限にするために、芳香族化合物の硝酸に対するモル割合は、好ましくは1.0〜1.5、より好ましくは1.03〜1.3、最も好ましくは1.05〜1.2である。ニトロベンゼンを製造する場合の、本発明に従う方法の反応は、式で表すと次のものである:C66+HNO3→O2N−C65+H2O。
【0032】
従って、本発明の好ましい実施の形態では、ベンゼンとHNO3が、この方法に導入され、そしてモノニトロベンゼン及び水が排出され、この一方で、上述したH2SO4/H2O混合物が反応媒体を構成する。希釈した硝酸を、工業実装で使用することが有利であるので、反応の水に加え、硝酸の希釈水を排出することも必要である。
【0033】
次に、反応物質の流速について説明する。反応関与物の最適な流速は、種々のファクター、例えば、反応装置の寸法、及び反応条件に依存するので、この点で一般化することはできないが、しかし内径が50〜350mmの管型反応装置の場合、管内の直線流(linear flow)は、通常、0.20〜3.00m/s、好ましくは0.5〜1.5m/sである。管型反応装置内の反応関与物の滞留時間は、反応条件と管型反応装置に依存するが、通常、0.5分〜5分、好ましくは0.5分〜2分である。反応器内の圧力は、通常、2〜5バールabsである。このことは、ベンゼンが、存在する温度条件下で、液体状態で存在することを確実化する。
【0034】
管型反応装置の長さと内径は、工程パタメーターに依存する;管型反応装置の長さは通常、2.5m〜300m、好ましくは25m〜200m、より好ましくは100〜150mである。管型反応器の内径は、同様に広い範囲で変化し、そして通常、50〜350mm、好ましくは100〜300mm、より好ましくは150〜280mmである。
【0035】
工程(c)では、管型反応器を出る反応混合物は、分離器内で、有機相と酸相に分離される。除去された酸相は、公知の方法、例えば装置、例えば真空蒸発装置で再濃縮され、この場合、反応と混合で発生した熱が使用され、及び必要であれば再度使用される。芳香族化合物のニトロ化で通常行われる方法、例えば洗浄及び蒸留を使用することによって、存在する不純物を除去することによって、有機相から所望の芳香族ニトロ化合物を精製することができる。
【0036】
以下に実施例を使用して本発明を説明する。
【0037】
実施例1
内径d=200mm、及び長さL=130mの管型反応装置内で、ベンゼンを、65%のH2SO4、3%のHNO3及び36%の水から成る混合酸と、出発温度T=90℃で、断熱条件下、ベンゼンのモル過剰が10%で反応させた。反応器は、合計で15個の静的混合要素を備え、その内の7個は(反応装置の体積の)三分の一の最初に備え、5個は三分の一の二番目に備え、及び3個は三分の一の三番目に備えた。t=1.5分の滞留時間で、97%のニトロ芳香族の収率が達成された。フェノール性の二次成分の割合は、1000〜5000ppmの間であった。長さの全体にわたって均一に分配された、180°の半径(radius)の管ベンドを12個、追加的に設けた場合、収率は98%に上昇し、そしてこの場合、フェノール性副生成物の割合は10%低減した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の芳香族化合物、及び硝酸、硫酸、及び水を含む混合物を、任意の順序で、所定の管型反応装置に供給する工程、
(b)反応混合物を得るために、反応装置内の反応混合物を、断熱条件下に反応させる工程、及び
(c)反応を行った後、工程(b)で得られた反応混合物を、有機相と水性相に分離する工程、
を含み、及び
前記管型反応装置は、反応装置の直径の30〜70倍に相当する距離で、反応装置の全長さにわたって設けられ、且つ160°〜200°の範囲の偏向角度を有する複数の垂直管ベンドを有し、及び複数の静的混合要素を有し、該複数の静的混合要素は、高い逆混合が、管型反応装置の第1の部分に存在し、及び反応物質の低い逆混合が、反応装置の第2の部分に存在するように設けられている、ことを特徴とする少なくとも1種の芳香族化合物を、硝酸、硫酸、及び水を含む混合物と反応させることによって、ニトロ化された芳香族化合物を連続的に製造する方法。
【請求項2】
前記静的混合要素は、ベッド、穴を開けられたシート、リストリクター、及び静的混合器から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硝酸、硫酸、及び水を含む混合物が、複数の供給部を経由して管型反応装置に供給され、前記複数の供給部は管型反応装置の全長にわたって分配して配置されていることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の方法。
【請求項4】
芳香族化合物の硝酸に対するモル割合は、1.0〜1.5を超え、好ましくは1.03〜1.3を超えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
管型反応装置が、管ベンドによって、6〜18個のチェンバーに分けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種の芳香族化合物が、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ナフタレン、及びアントラキノンから選ばれることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種の芳香族化合物がベンゼンであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−503127(P2013−503127A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526020(P2012−526020)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062176
【国際公開番号】WO2011/023638
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】