説明

モノマーによって色調変化を抑えた光硬化性歯科用組成物

【課題】硬化前後における色調変化が少なく、硬化後の色調変化が少なく、かつ、薄層表面硬化性に優れた歯科用組成物を提供すること。
【解決手段】少なくとも1種以上の(a)可視光光重合触媒化合物0.01〜10重量部と、(b)1種以上の一般式(I):
【化1】


(式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素またはメチル基であり、エチレンオキサイド基の繰り返し単位数nは9〜50である)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物、および/または多官能モノマーを含む歯科用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可視光照射により硬化する光重合型の組成物に関するもので、更に詳しくは、硬化後の着色が少ない組成物である。本発明による組成物は歯科充填材料、歯冠材料、人工歯材料、歯科用接着材、歯科用表面被覆材、歯科用オペーク材、歯科用マニキュア材等に用いられる。
【背景技術】
【0002】
現在の歯科治療においては、審美性は非常に重要な要素の一つであり、修復物の色調が天然歯に類似している、また、美しい白色である等の特性が歯科用材料に強く求められる。
【0003】
実際の治療においては患者の天然歯と充填材などの材料の色を照らし合わせて色調を決定していく。しかし、従来使用されている可視光光重合触媒と重合性モノマーを組み合わせた材料では硬化前後で色調が変化するため、口腔内に装着した後で色調が適合しなくなるという問題があった。
【0004】
歯科分野では可視光線重合型レジンが広く普及し、その光重合開始剤としては、英国特許第1,408,265号公報以来、最大吸収波長470nmを有するカンファーキノンに代表されるα−ジケトン化合物とアミン化合物による水素引抜き型開始剤が広く使用されている。しかし、α−ジケトン化合物とアミン化合物から成る光重合開始剤は、アミン化合物に起因する硬化物の黄褐色化や色調変化が著しいという問題がある。
【0005】
米国特許第4,265,723号公報、米国特許第4,298,738号公報等に開示されているアシルホスフィンオキサイド化合物および米国特許第4,792,632号公報、米国特許第5,721,292号公報、米国特許第5,965,776号公報等に開示されているビスアシルフォスフィンオキサイド化合物は、紫外あるいは近紫外領域では絶大な光重合活性を示すため光重合産業で広く普及している。また、α−ジケトン化合物やアミン化合物よりも硬化物の黄変が起こりにくい。しかし、重合性モノマーの種類によっては、相互作用による硬化後の黄変があることが問題となっている。
【0006】
特許第2629060号公報では、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとアシルホスフィンオキサイド化合物を含む光重合性歯科用表面被覆材が報告されている。これによるとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとアシルホスフィンオキサイド化合物を含有しているため薄層表面硬化性が良いと報告されている。しかし、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとアシルホスフィンオキサイド化合物による硬化は、硬化物が褐色化する問題がある。
【0007】
【特許文献1】英国特許第1,408,265号公報
【特許文献2】米国特許第4,265,723号公報
【特許文献3】米国特許第4,298,738号公報
【特許文献4】米国特許第4,792,632号公報
【特許文献5】米国特許第5,721,292号公報
【特許文献6】米国特許第5,965,776号公報
【特許文献7】特許第2,629,060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、硬化前後における色調変化の少ない光重合開始剤とラジカル重合性モノマーの組み合わせを鋭意研究した。その結果、驚くべきことに、一般式(I):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素またはメチル基であって、エチレンオキサイド基の繰り返し単位数nは9〜50である)で表される重合性モノマーを配合することにより、硬化前後の色調変化が少ないという特徴、硬化後の色調の変化抑制および優れた物理的性質を付与することを究明し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、
[1] 少なくとも1種以上の(a)可視光光重合触媒化合物0.01〜10重量部と、(b)1種以上の一般式(I):
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素またはメチル基であり、エチレンオキサイド基の繰り返し単位数nは9〜50である)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物を含む歯科用組成物;
[2] 可視光光重合触媒化合物(a)がアシルホスフィンオキサイド化合物である前記[1]に記載の歯科用組成物;
[3] 可視光光重合触媒化合物(a)が2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドである前記[1]または[2]に記載の歯科用組成物;
[4] さらに、(c)重合性官能基を3個以上有する多官能モノマーを含む前記[1]ないし[3]のいずれか1に記載の歯科用組成物;
[5] 多官能モノマー(c)がジペンタエリスルトールヘキサアクリレートである前記[4]に記載の歯科用組成物;および
[6] (b)ジ(メタ)アクリレート化合物を5〜70重量部、(c)多官能モノマーを30〜95重量部含む前記[4]または[5]に記載の歯科用組成物
を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の可視光照射により硬化する光重合型の組成物およびそれに用いる重合性モノマーは、硬化前後における色調変化が少なく、硬化後の色調変化が少なく、かつ、薄層表面硬化性に優れる。本発明による歯科用組成物は、歯科充填材料、歯冠材料、人工歯材料、前装冠材料、歯科用接着剤、歯科用表面被覆材、歯科用オペーク材、歯科用マニキュア材、ラミネートベニアなどに用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の歯科用組成物に用いる(a)可視光光触媒化合物の例としては、ジアセチル、ベンジル、4,4‘−ジメトキシベンジル、4,4‘−ジメトキシベンジル、4,4‘−オキシベンジル、4,4‘−クロルベンジル、カンファーキノン、カンファーキノンカルボン酸、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナンスレンキノン、アセナフテンキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチル、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸フェニルエステルなどが挙げられる。
この中でも特に、アシルホスフィンオキサイド化合物は、紫外あるいは近紫外領域では絶大な光重合性を示すため光重合の産業分野で広く普及している。また、硬化物の黄変が起こりにくく、内部硬化性も優れている。したがって透明な厚膜や隠ぺい力の大きい顔料を含有した材料の光硬化に利用され、最近では、歯科分野でも使用されている。また、アシルホスフィンオキサイド化合物から成る可視光線重合開始剤を用いた組成物は、薄層表面硬化性の向上効果も得られる。よってアシルホスフィンオキサイド化合物が好ましく、さらに好ましくは、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドである。
【0016】
これら可視光光触媒化合物の配合量は、後述する(b)ジ(メタ)アクリレート化合物および(c)多官能モノマーを合したラジカル重合性単量体100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜6重量部、さらに好ましくは0.1〜4.0重量部である。アシルホスフィン化合物の配合量が少ないと薄層表面硬化性が悪くなり、逆に、多くなると黄色の色調が増し、可使時間が短くなる。
【0017】
また、本発明の組成物に用いる(b)ジ(メタ)アクリレート化合物は、一般式(I):
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素またはメチル基であり、エチレンオキサイド基の繰り返し単位数n=9〜50である)で表される化合物である。本発明はジ(メタ)アクリレート化合物を配合することにより、硬化前後の色調変化を少なくすることができることを見出した。繰り返し単位が少なくなると色調変化を抑制できなくなるため、エチレンオキサイド基の繰り返し単位数nが9以上の化合物を用いることが好ましい。ただし、繰り返し単位が多くなりすぎると硬化物の剛直さが失われていくため最大の繰り返し単位数nは50まで、さらに好ましくは23までにするのがよい。
【0020】
本発明の組成物に用いる(b)ジ(メタ)アクリレート化合物の具体的な例としては、ノナエチレングリコールジメタクリレート、デカンエチレングリコールジメタクリレート、ウンデカンエチレングリコールジメタクリレート、ドデカンエチレングリコールジメタクリレート、トリデカンエチレングリコールジメタクリレート、テトラデカンエチレングリコールジメタクリレート、ペンタデカンエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサデカンエチレングリコールジメタクリレート、ヘプタデカンエチレングリコールジメタクリレート、オクタデカンエチレングリコールジメタクリレート、ノナデカンエチレングリコールジメタクリレート、イコサンエチレングリコールジメタクリレート、ヘンイコサンサエチレングリコールジメタクリレート、ドコサンエチレングリコールジメタクリレート、トリコサンエチレングリコールジメタクリレート、テトラコサンエチレングリコールジメタクリレート、ペンタコサンエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサコサンエチレングリコールジメタクリレート、ヘプタコサンエチレングリコールジメタクリレート、オクタコサンエチレングリコールジメタクリレート、ノナコサンエチレングリコールジメタクリレート、トリアコンタンエチレングリコールジメタクリレート、テトラコンタンエチレングリコールジメタクリレート、ペンタコンタンエチレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。
【0021】
さらに、本発明の組成物には、(c)重合性官能基を3個以上有する多官能モノマーを含ませることにより、硬化後の組成物の強度特性、例えば、曲げ弾性、硬度などを飛躍的に向上させることが可能となる。また、多官能モノマーを含むことにより、顕著に表れるのが硬化性である。表面硬化性が向上し、表面未重合層を軽減することができる。
本発明の組成物に用いる(c)多官能モノマーの例としては、ポリエチレン性不飽和カルバモイルイソシアヌレートを含む重合性多官能アクリレート;フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマーおよびペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどのウレタン結合を有する重合性多官能アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
この中でも特に、安定性などが優れているジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
【0022】
硬化後の色調変化軽減と、薄層表面硬化性を良好な状態に最適化するためには、(a)可視光光重合触媒化合物を0.01〜10重量部に加えて、(b)ジ(メタ)アクリレート化合物5〜70重量部および(c)多官能モノマー30〜95重量部配合させることが好ましい。(b)の配合量が多すぎると硬化性が低下し、また(c)の配合量が多すぎると硬化後の色調変化が増加する。さらに好ましくは(b)ジ(メタ)アクリレート化合物10〜50重量部および(c)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート50〜90重量部である。
【0023】
さらに、本発明の歯科用組成物には、所望により、本発明の効果を損なわない範囲で重合性モノマーを配合することができ、重合性モノマーの例としては公知のモノマーを制限なく使用できる。重合性モノマーのうち、単官能モノマー化合物の例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロオキシエチルアシッドホスフェートなどのエステル化合物、スチレン、α−メシチレンなどのスチレン系化合物、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのシラン化合物、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの窒素含有化合物、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有化合物、ポリマーの主鎖がシリコーン成分であり片末端が(メタ)アクリレート基で修飾された重合性シリコーン化合物などが挙げられる。
【0024】
また、二官能モノマー化合物の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス((メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(3−(メタ)アクリロキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシイソプロポキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロキシジプロポキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。
【0025】
また、本発明の歯科組成物には、用途によってフィラー(充填材)を適宜配合することができる。
【0026】
このフィラーの例としては、無機物または有機物およびこれらの複合体が用いられ、無機系フィラーの例としてはソーダガラス、リチウムボロシリケートガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、亜鉛ガラス、フルオロアルミナムボロシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、結晶石英、溶融シリカ、合成シリカ、アルミナシリケート、無定形シリカ、ガラスセラミックまたはこれらの混合物などが挙げられる。無機系フィラーの粒径は特に制限はないが、組成物の目的とする使用用途により数nm〜数十μmまでの粒子径のフィラーが選定される。また、上記無機系フィラーは、従来公知の表面処理をしておくのが好ましい。表面処理剤の例としては、シラン化合物、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。有機系フィラーとしては、前述の重合性モノマーの重合体粉末や重合性モノマーに無機フィラーを分散、重合させた複合体の粉末(複合フィラー)も使用することができる。
【0027】
さらに、本発明における歯科用組成物には、所望により重合禁止剤、紫外線吸収剤、顔料および溶剤などの公知の配合成分を添加することができる。
この重合禁止剤の例としては、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ブチル化ヒドロキシトルエン、ハイドロキノン、などを挙げることができ、その中でもハイドロキノンモノメチルエーテルおよびブチル化ヒドロキシトルエンが好ましい。
また、紫外線吸収剤の例としては、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系、ヒンダートアミン系、トリアジン系などを挙げることができる。
また、溶剤の例としては、水、エタノール、i−プロパノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸ブチルなどを挙げることができる。
【0028】
本発明は可視光照射により硬化する光重合型の組成物に関するもので、さらに詳しくは、硬化前後の着色変化が少ない組成物である。本発明の組成物は歯科充填材料、歯冠材料、人工歯材料、歯科用接着材、歯科用表面被覆材、歯科用オペーク材、歯科用マニキュア材、などとして用いられる。
【実施例】
【0029】
次に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0030】
本発明の実施例に使用した化合物の略号を以下に示す。
CQ:dl−カンファーキノン
APO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
DMBE:4−N,Nジメチルアミノ安息香酸エチル
DPH:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
UDMA:ジメタクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジウレタン
23G:トリコサンエチレングリコールジメタクリレート(繰り返し単位数n=23)
14G:テトラデカンエチレングリコールジメタクリレート(繰り返し単位数n=14)
9G:ノナエチレングリコールジメタクリレート(繰り返し単位数n=9)
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート(繰り返し単位数n=3)
【0031】
本発明の実施例に使用した材料評価方法を下記に示す。
(1)薄層表面硬化性評価
調製した各種光硬化性組成物を練板紙上に1滴採取し、筆で薄く(厚さ約0.1mm)拡げた。ハロゲンランプ照射器ソリディライト[株式会社松風社製](1分間照射)で光照射し、手感により薄層表面硬化性を確認した。
◎:表面の未反応モノマー量が極めて少なく、極めて高い薄層表面硬化性を示す。
○:表面の未反応モノマー量が少なく、高い薄層表面硬化性を示す。
×:表面の未反応モノマー量が認められ、低い薄層表面硬化性を示す。
【0032】
(2)硬化前後の色差の測定
調製した各種光硬化性組成物をステンレス製リング(内径15mm、厚さ0.5mm)内に入れ、2枚のカバーガラスで上下方向から圧接し、分光測色計CM−2002(コニカミノルタ社)により測色(L*a*b*表色系)し、硬化前の色調とした。次に、光重合器(ソリディライト、株式会社松風社製)で表裏両面1分間ずつ光照射した後測色を行った。硬化前と硬化後の色差ΔE*およびΔb*を算出した。ΔE*とΔb*は以下のように算出される。
【0033】
【数1】

【0034】
実施例1〜6および比較例1〜3
可視光線重合開始剤およびラジカル重合性モノマー(DPH、14G)からなる組成物を表1に示す組成で均一溶液に調整した。歯科用光照射器による薄層表面硬化性の評価、硬化前後の色調変化および硬化後色調の評価を測定した。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1の結果より、本発明の可視光光触媒化合物0.01〜10重量部、ならびにジ(メタ)アクリレート化合物よりなる可視光重合性組成物(実施例1〜6)は、優れた薄層表面硬化性を示し、また、硬化前後の色調変化および硬化後の色調においても色の変化が少ないことを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種以上の(a)可視光光重合触媒化合物0.01〜10重量部と、(b)1種以上の一般式(I):
【化1】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素またはメチル基であり、エチレンオキサイド基の繰り返し単位数nは9〜50である)で表されるジ(メタ)アクリレート化合物を含む歯科用組成物。
【請求項2】
可視光光重合触媒化合物(a)がアシルホスフィンオキサイド化合物である請求項1に記載の歯科用組成物。
【請求項3】
可視光光重合触媒化合物(a)が2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドである請求項1または2に記載の歯科用組成物。
【請求項4】
さらに、(c)重合性官能基を3個以上有する多官能モノマーを含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の歯科用組成物。
【請求項5】
多官能モノマー(c)がジペンタエリスルトールヘキサアクリレートである請求項4に記載の歯科用組成物。
【請求項6】
(b)ジ(メタ)アクリレート化合物を5〜70重量部、(c)多官能モノマーを30〜95重量部含む請求項4または5に記載の歯科用組成物。

【公開番号】特開2009−209079(P2009−209079A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52963(P2008−52963)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(390011143)株式会社松風 (125)
【Fターム(参考)】