説明

モノリス状有機多孔質体、その製造方法及びモノリス状有機多孔質イオン交換体

【課題】水や気体等の流体を透過させた際の圧力損失が低い、吸着剤やイオン交換体として有用な新規構造のモノリス状有機多孔質体、その製造方法及びモノリス状有機多孔質イオン交換体を提供すること。
【解決手段】マクロボイド同士が重なり合い、この重なる部分が平均半径0.1〜25mmの開口となる連続マクロボイド構造の有機多孔質体であって、該連続マクロボイド構造の見かけ上の骨格部が、全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜2.5モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが0.8〜40μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に半径が4〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造であり、前記マクロボイドの半径が、前記空孔の半径の2倍以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着装置、脱イオン水製造装置あるいはガス状汚染物質除去装置等に用いられる吸着剤またはイオン交換体として有用な連続マクロボイド構造の骨格部が共連続構造となる二重の多孔構造を有するモノリス状有機多孔質体、その製造方法及びモノリス状有機多孔質イオン交換体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内に共通の開口を有する連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体や、該多孔質体にイオン交換基を導入したモノリス状有機多孔質イオン交換体が、特開2002−306976号に開示されている。該有機多孔質体や有機多孔質イオン交換体は、吸着剤、クロマトグラフィー用充填剤および脱イオン水製造装置等に用いられるイオン交換体として有用である。
【0003】
しかし、該有機多孔質イオン交換体は、その製造方法上の制約から全細孔容積を増加させて実用的に要求される低い圧力損失を達成しようとすると、骨格構造が細くなることで水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が著しく低下してしまう、逆に全細孔容積を低下させて骨格構造を太くすると、共通の開口となるメソポアが著しく小さくなり、圧力損失が著しく増加してしまうといった欠点を有していた。
【0004】
また、有機多孔質体の構造として、三次元的に連続した骨格相とその骨格相間に三次元的に連続した空孔相とからなり、両相が絡み合った共連続構造が知られている。特開2007−154083号公報には、マイクロメートルサイズの平均直径を有し、三次元網目状に連続した細孔と有機物質に富む骨格相からなる共連続構造をもつ粒子凝集型でない有機高分子ゲル状のアフィニティー担体であって、当該アフィニティー担体が、架橋剤としての、少なくとも二官能性以上のビニルモノマー化合物、メタクリレート化合物及びアクリレート化合物の少なくともいずれか1種と、一官能性親水性モノマーとの共重合体であり、しかも、前記アフィニティー担体における前記架橋剤と前記一官能性親水性モノマーの体積比率が100〜10:0〜90であるアフィニティー担体が開示されている。このアフィニティー担体は、モノリス構造を維持するために、骨格の架橋密度を高くしている。また、このアフィニティー担体は、非特異的吸着を十分に抑制する親水的特性を有している。また、N. Tsujioka et al., Macromolecules2005, 38, 9901には、共連続構造を有し、エポキシ樹脂からなるモノリス状有機多孔質体が開示されている。
【0005】
しかしながら、特開2007−154083号公報において、実際に得られているアフィニティー担体はナノメートルサイズの細孔であるため、流体を透過させる際の圧力損失が高く、低圧力損失下で大流量の水を処理する必要のある脱イオン水製造装置に充填し、イオン交換体とすることは困難であった。また、アフィニティー担体は親水性であるため、疎水性物質の吸着剤として用いるためには、表面の疎水処理等の煩雑且つコストアップを伴う操作が必要であるという問題があった。また、エポキシ樹脂へのイオン交換基等の官能基の導入は容易ではないという問題もあった。
【0006】
このため、化学的に安定な疎水性であって、空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがなく、連続した空孔が大きく、水や気体等の流体を透過させた際の圧力損失が低いモノリス状有機多孔質体の開発が望まれていた。また、上記特性に加えて更に、体積当りのイオン交換容量が大きいモノリス状有機多孔質イオン交換体の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2002−306976号
【特許文献2】特開2007−154083号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、上記従来の技術の問題点を解決したものであって、構造が均一で大きい連続マクロボイド構造を有し、水や気体等の流体を透過させた際の圧力損失が低い、吸着剤やイオン交換体として有用な新規構造のモノリス状有機多孔質体、その製造方法及びモノリス状有機多孔質イオン交換体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、特開2002−306976号公報記載の方法で得られた架橋剤添加量の比較的少ない油中水滴型エマルジョンに、多数の粒子状テンプレートを存在させ静置重合を行い、その後粒子状テンプレートを除去することで、連続マクロボイド構造の骨格部が低架橋の骨格を有する連続マクロポア構造のもの(中間体)となり、更にこの有機多孔質中間体の存在下に、ビニルモノマーと少量の架橋剤を特定有機溶媒中で静置重合すれば、連続マクロボイド構造と共連続構造が共存する特異な構造のモノリスが得られること、この共連続構造のモノリスは、骨格が太いためイオン交換基を導入すれば、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量の著しい低下を招くことなく、水や気体等の流体を透過させた際の圧力損失を大幅に低減することが可能であることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、マクロボイド同士が重なり合い、この重なる部分が平均半径0.1〜25mmの開口となる連続マクロボイド構造の有機多孔質体であって、該連続マクロボイド構造の見かけ上の骨格部が、全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜2.5モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが0.8〜40μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に半径が4〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造であり、前記マクロボイドの半径が、前記空孔の半径の2倍以上であることを特徴とするモノリス状有機多孔質体を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、下記工程;芳香族ビニルモノマー、界面活性剤、水、架橋剤及び必要に応じて重合開始剤を、芳香族ビニルモノマー(M)と水(W)の重量比(M):(W)が1:49〜1:3、架橋剤がビニルモノマーと架橋剤の合計中、0.3〜2.5モル%となるように混合し、該混合物を撹拌して油中水滴型エマルジョンを調製するI工程、該油中水滴型エマルジョン中に多数の粒子状テンプレートを存在させ静置下重合するII工程、該重合体から該粒子状テンプレートを除去することで、連続マクロボイド構造と連続マクロポア構造が共存するモノリス状有機多孔質中間体を得るIII工程、芳香族ビニルモノマー、架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤を、ビニルモノマーをモノリス状有機多孔質中間体に対して5〜50倍となる量で配合し、混合するIV工程、IV工程で得られた混合物を静置下、且つ該III工程で得られたモノリス状有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、連続マクロボイド構造と共連続構造が共存する有機多孔質体を得るV工程、を行うことを特徴とするモノリス状有機多孔質体の製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、前記モノリス状有機多孔質体の骨格表面及び骨格内部にイオン交換基が導入されたものであって、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.075mg当量/ml以上であることを特徴とするモノリス状有機多孔質イオン交換体を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のモノリス状有機多孔質体は、その多孔構造が、連続マクロボイド構造と骨太の共連続構造を有する二重構造であるため、従来の連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体に比べて、低圧、大流量の処理が可能で、従来用いられてきた合成吸着剤を代替可能であるばかりでなく、その優れた流体透過特性を生かして、合成吸着剤では対応できなかった高粘性成分の吸着除去、ガス状汚染物質除去等新しい用途分野への応用が可能となる。また、本発明のモノリス状有機多孔質体の製造方法によれば、前記モノリス状有機多孔質体を簡易に且つ確実に製造することができる。また、本発明のモノリス状有機多孔質イオン交換体は、上記モノリス状有機多孔質体と略同じ構造を有するため、低圧、大流量の水処理が可能で、従来用いられてきたイオン交換樹脂を代替可能であるばかりでなく、その優れた流体透過特性を生かして、イオン交換樹脂では対応できなかった高粘性成分中のイオン除去、ケミカルフィルター等のガス状汚染物質除去装置に充填して好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本明細書中、「モノリス状有機多孔質体」及び「モノリス状有機多孔質イオン交換体」の両者を説明する際、単に「モノリス状多孔質体等」とも言う。また、「モノリス状有機多孔質中間体」を単に「モノリス中間体」と、「モノリス状有機多孔質体」を単に「モノリス」と、「モノリス状有機多孔質イオン交換体」を単に「モノリスイオン交換体」とも言う。
【0014】
本発明のモノリス状多孔質体等の基本構造は、互いに繋がっているマクロボイドとマクロボイドの該繋がり部分が所定の開口寸法となる連続マクロボイド構造の有機多孔質体であって、該連続マクロボイド構造の骨格部が、三次元的に連続した骨格と、該連続マクロボイド構造よりも小さな三次元的に連続した流路を形成する共連続構造である。すなわち、モノリス状多孔質体等中、連続マクロボイド構造において、液体や気体が低い圧力損失で流れる大きな流路を形成し、共連続構造において、液体や気体が浸透する該連続マクロボイドよりも小さな流路を形成する。なお、本明細書中、連続マクロボイド構造を形成する見かけ上の骨格部を「骨格部」と言い、共連続構造を形成する実質上の骨格部を「骨格」と言う。
【0015】
本発明のモノリス状多孔質体等における連続マクロボイド構造は、図1の模式図に示すように、互いに繋がっているマクロボイド11とマクロボイド11の当該繋がり部分が半径0.1〜25mm、好ましくは0.5〜15mm、特に好ましくは、0.5〜10mmの開口12となる構造である。すなわち、連続マクロボイド構造Xは、通常、半径0.5〜50mmのマクロボイド11とマクロボイド11が重なり合い、この重なる部分が開口12となる構造を有するもので、その部分がオープンポア構造のものである。オープンポア構造は、液体や気体を流せば該マクロボイド11と該開口12で形成される大きな空孔構造内が主たる流路となる。すなわち、モノリス状多孔質体等においては、共連続構造の三次元的に連続した空孔2と連続マクロボイド構造Xのオープンポア構造が混在し且つ互いに繋がって流路を形成している。
【0016】
マクロボイド11とマクロボイド11の重なりは、1個のマクロボイド1で1〜2個、多くのものは3〜10個である。開口12の半径が0.1mm未満であると、液体または気体透過時の圧力損失が大きく、圧力損失を低減させるという十分な効果が得られにくいため好ましくない。一方、開口の半径が25mmを越えると、液体または気体と有機多孔質体や有機多孔質イオン交換体との接触が不十分になり、その結果、吸着特性やイオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。マクロボイド11は、連続マクロボイド構造X中、概ね均一に分散されている。開口の半径が25mm近傍のものは、体積が大きな吸着剤やイオン交換体を製造する場合に適用される。また、本発明において、連続マクロボイド構造部分の好適な空隙率はモノリス状多孔質体等中、75%前後である。
【0017】
マクロボイドの形状は特に制限はなく、例えば、立方体、直方体、楕円球状、真球状あるいは不定形状等が挙げられるが、この中、該マクロボイドが、静置下重合の後、粒子状テンプレートが除去されて形成されることから、均一充填の簡易性、該テンプレート除去後のモノリス状多孔質体等の共通開口構造の均一性の観点より、真球状が好ましい。
【0018】
本発明のモノリス状多孔質体等における共連続構造は、太さが0.8〜40μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に半径が4〜100μmの三次元的に連続した空孔が配置された構造である。すなわち、共連続構造は図1や図2の模式図に示すように、連続する骨格相1と連続する空孔相2とが絡み合ってそれぞれが共に3次元的に連続する構造Yである。この連続した空孔2は、従来の連続気泡型モノリスや粒子凝集型モノリスに比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なイオンの吸着挙動が達成できる。また、骨格が太いため機械的強度が高い。
【0019】
三次元的に連続した空孔の半径が4μm未満であると、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、100μmを超えると、骨格構造の密度が減少することで、体積当りのイオン交換容量が減少してしまい、その結果、吸着特性やイオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。上記三次元的に連続した空孔の大きさは、SEM画像あるいは水銀圧入法により細孔分布曲線を測定し、細孔分布曲線の極大値として得ることができる。
【0020】
共連続構造体の骨格の太さは0.8〜40μm、好ましくは1〜30μmである。骨格の太さが0.8μm未満であると、体積当りの吸着容量が低下したり、機械的強度が低下するため好ましくなく、一方、40μmを超えると、吸着特性の均一性が失われるため好ましくない。モノリスの骨格の太さは、SEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定して算出すればよい。
【0021】
また、本発明のモノリスの共連続構造は、全細孔容積が0.5〜5ml/gであることが好ましい。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、単位断面積当りの通水量が小さくなってしまい、流体が流れ難くなるため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、骨格部分のポリマーの占める割合が低下し、体積当りのイオン交換容量が減少してしまい、その結果、吸着特性やイオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。
【0022】
本発明のモノリス状多孔質体等において、マクロボイド11の平均半径は、共連続構造の三次元的に連続した空孔2の半径の2倍以上、好ましくは2〜250000倍、特に5〜10000倍、更に10〜1000倍である。マクロボイドの平均半径が共連続構造の三次元的に連続した空孔の平均半径の2倍未満であると、液体または気体透過時の圧力損失が大きく、圧力損失を低減させるという十分な効果が得られにくいため好ましくない。また、マクロボイドの半径が大き過ぎると、液体または気体と有機多孔質体や有機多孔質イオン交換体との接触が不十分になり、その結果、吸着特性やイオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。マクロボイドと共連続構造の三次元的に連続した空孔の半径はSEM写真等において明確に認識できる。このため、それらの平均半径はSEM写真等における少なくとも任意の10点、好ましくは任意の20点の半径を抽出してその平均を取ればよい。なお、マクロボイドの形状が真球状以外の形状の場合、真球状に換算して比較する。
【0023】
なお、本発明のモノリス状多孔質体等において、連続マクロボイド構造X及び共連続構造Yは、該多孔質体等中、それぞれ均一に存在しているため、共連続構造Yをマトリックスとして、該マトリックス中に連続マクロボイド構造Xが形成された構造であり、また、連続マクロボイド構造Xをマトリックスとして、該マトリックス中に該共連続構造Yが形成された二重構造である。
【0024】
本発明において、骨格を構成するポリマーは、架橋構造を有する芳香族ビニルポリマーであり、該芳香族ビニルポリマー材料はポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜2.5モル%の架橋構造単位を含むことが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、架橋密度が低下してしまい、モノリス中間体の機械的強度が著しく低下してしまうため好ましくなく、一方、2.5モル%を越えると、モノリス中間体に芳香族ビニルモノマー、架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を含浸させ重合を行う工程において、該モノリス中間体の架橋密度が高すぎることで、十分な膨潤が行われず、連続マクロポア構造を維持したまま重合反応が進行することで、得られるモノリス状有機多孔質体の構造が、共連続構造にならず、連続マクロポア構造となってしまうため好ましくない。
【0025】
芳香族ビニルポリマーの種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、共連続構造形成の容易さ、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸・アルカリに対する安定性の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい。
【0026】
本発明のモノリス状有機多孔質体を吸着剤として使用する場合、例えば、円筒型カラムや角型カラムに、有機多孔質体を当該カラムに挿入できる形状に切り出したものを吸着剤として充填し、これにベンゼン、トルエン、フェノール、パラフィン等の疎水性物質を含有する被処理水を通水させれば、該吸着剤に前記疎水性物質が効率よく吸着される。
【0027】
本発明のモノリス状有機多孔質イオン交換体は、前記モノリス状有機多孔質体の骨格表面及び骨格内部に更にイオン交換基を均一に導入したものであり、そのイオン交換容量としては、特に制限されないが、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.075mg当量/ml以上、好ましくは0.1mg当量/mlのイオン交換容量を有しているものである。水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.075mg当量/ml未満であると、破過までに処理できるイオンを含んだ水の量、即ち脱イオン水の製造能力が低下してしまうため好ましくない。
【0028】
導入されたイオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「イオン交換基が均一に分布している」とは、イオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。イオン交換基の分布状況は、EPMAやSIMS等を用いることで、比較的簡単に確認することができる。また、イオン交換基が、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
【0029】
有機多孔質体に導入するイオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基;四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ポリエチレンイミン基、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等のアニオン交換基;アミノリン酸基、スルホベタイン等の両性イオン交換基が挙げられる。
【0030】
次に、本発明のモノリス状有機多孔質体の製造方法について説明する。すなわち、当該製造方法は、芳香族ビニルモノマー、界面活性剤、水、架橋剤及び必要に応じて重合開始剤を、芳香族ビニルモノマー(M)と水(W)の重量比(M):(W)が1:49〜1:3、架橋剤がビニルモノマーと架橋剤の合計中、0.3〜2.5モル%となるように混合し、該混合物を撹拌して油中水滴型エマルジョンを調製するI工程、該油中水滴型エマルジョン中に多数の粒子状テンプレートを存在させ静置下重合するII工程、該重合体から該粒子状テンプレートを除去することで、連続マクロボイド構造と連続マクロポア構造が共存するモノリス状有機多孔質中間体を得るIII工程、芳香族ビニルモノマー、架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤を、ビニルモノマーをモノリス状有機多孔質中間体に対して5〜50倍となる量で配合し、混合するIV工程、IV工程で得られた混合物を静置下、且つ該III工程で得られたモノリス状有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、連続マクロボイド構造と共連続構造が共存する有機多孔質体を得るV工程を有する。
【0031】
I工程で用いられる芳香族ビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーであれば、特に制限はない。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のα−オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらモノマーの中で、好適なものとしては、芳香族ビニルモノマーであり、本発明で好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマーである。
【0032】
I工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。
【0033】
I工程で用いられる界面活性剤は、芳香族ビニルモノマーと水を混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は、1種単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量は、油溶性モノマーの種類及び、目的とするエマルジョン粒子の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。
【0034】
I工程で用いられる重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。本発明で用いられる重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。
【0035】
I工程において、芳香族ビニルモノマー、界面活性剤、水、必要に応じて架橋剤や重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、架橋剤、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。
【0036】
I工程において、芳香族ビニルモノマー(M)と水(W)の重量比(M):(W)は1:49〜1:3、好ましくは1:40〜1:3、更に好ましくは1:35〜1:3である。(M)と水(W)の配合比率を上記範囲とすることにより、III工程で得られるモノリス中間体の連続マクロポア構造における全細孔容積を4〜30ml/gとすることができる。
【0037】
II工程は、容器内の油中水滴型エマルジョン中に多数の粒子状テンプレートを存在させ静置下重合する工程である。容器内に油中水滴型エマルジョンを導入し、その後、多数の粒子状テンプレートを入れてもよく(第1の方法)、容器内に多数の粒子状テンプレートを入れ、その後、油中水滴型エマルジョンを導入してもよい(第2の方法)。
【0038】
第1の方法では、多数の粒子状テンプレートを入れた後は、落し蓋等の方法で若干、粒子状テンプレートを押圧することが、最密充填あるいはそれに近い充填ができる点で好ましい。また、第2の方法では、油中水滴型エマルジョンを導入する際、脱気しながら行なうことが、多数の粒子状テンプレート間の隙間に油中水滴型エマルジョンを十分に行き渡らせることができ、連続マクロポア構造と連続マクロボイド構造をそれぞれ均一に形成できる点で好ましい。また、第1の方法及び第2の方法のいずれの場合も、容器への油中水滴型エマルジョンの導入はエマルジョン構造を崩壊させることなく、静かに行なうことが好ましい。
【0039】
II工程で用いる粒子状テンプレートは、静置時及び重合時にその形状を保持してエマルジョンやポリマー中に存在し、重合後は除去手段により除去されるものである。粒子状テンプレートとしては、多糖類ハイドロゲルが、油中水滴型エマルジョンに対する安定性、マクロボイド形成の容易性、充填及び除去の容易性の観点から好ましい。多糖類ハイドロゲルの具体例としては、例えば、寒天、アルギン酸カルシウム、ゼラチン、カラギナン、ペクチン、グルコマンナン等のハイドロゲルが挙げられる。これらは1種単独又は2種以上をブレンドして用いてもよい。これら粒子状テンプレートの中で、寒天、アルギン酸カルシウムのハイドロゲルが、粒子状テンプレートの入手の容易性、静置下重合した後のテンプレート除去工程の容易性から好ましい。
【0040】
多糖類ハイドロゲルビーズは公知の製造方法で容易に得られる。寒天ハイドロゲルビーズの製造方法としては、例えば寒天溶液を冷却した気相部に噴霧し固化させる方法(特開平6−254382号)、寒天溶液を冷却した液相部に滴下し固化させる方法(特開2000−185229号、特開平5−49911号)が挙げられる。また、アルギン酸カルシウムハイドロゲルビーズの製造方法としては、アルギン酸ナトリウム水溶液を塩化カルシウム水溶液中に滴下することでゲル化させる方法(特開昭63−139108号、特開平11−137188号)が挙げられる。
【0041】
また、その粒子状テンプレートの形状は特に制限はなく、例えば、立方体、直方体、楕円球状、真球状等が挙げられる。この中、真球状とすることが、マクロボイドが、静置下重合の後、該テンプレートが除去されることで形成されることから、均一充填の簡易性、該テンプレート除去後のモノリス状多孔質体等の共通開口構造の均一性などの観点より好ましい。
【0042】
粒子状テンプレートの粒子径は、真球状換算にして、半径が0.5〜50mm、好ましくは0.5〜25mm、特に好ましくは、0.5〜10mmである。すなわち、粒子状テンプレート除去後、半径0.5〜50mmのマクロボイドとマクロボイドが重なり合い、この重なる部分が開口となる構造を形成し、その部分がオープンポア構造となることから、液体や気体を流した場合、該マクロボイドと該開口で形成される空孔構造内が流路となる。該テンプレート半径が0.5mm未満であると、液体または気体透過時の圧力損失が大きく、圧力損失を低減させる十分な効果が得られにくいため好ましくない。一方、該テンプレート半径が50mmを越えると、液体または気体とモノリス状多孔質体等との接触が不十分になり、その結果、吸着特性やイオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。なお、粒子状テンプレートの形状が立方体や直方体の場合、油中水滴型エマルジョン中に導入する際、特段の操作を行わずとも、静置状態において、それぞれのテンプレートがランダム方向において互いが接触するため、好適な連続マクロボイド構造を形成することができる。
【0043】
II工程において、容器の油中水滴型エマルジョン中への多数の粒子状テンプレートの充填は、適当な開口を形成させるため、それぞれの粒子状テンプレートが相互に接触するような充填、特に最密充填あるいは最密充填に近い充填をすることが好ましい。粒子状テンプレートは互いの接触が点接触のような充填であっても、重合の際、ポリマー材料部が収縮するため、適度な開口を形成することができる。なお、開口において、半径が0.1mmに近い開口を形成するには、粒子径が小さく且つ揃ったものを選択することで得ることができ、また、半径が25mmに近い開口を形成するには、粒子径が大きく且つ最密充填することで得ることができる。
【0044】
II工程において、重合条件は、芳香族ビニルモノマーの種類、重合開始剤の種類により様々な条件が選択できる。例えば、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。
【0045】
III工程は、重合体から粒子状テンプレートを除去する工程である。すなわち、重合終了後、容器から内容物を取り出し、粒子状テンプレートを除去した後、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、2−プロパノール等の溶剤で抽出して、連続マクロボイド構造と連続マクロポア構造が共存するモノリス状有機多孔質中間体を得る。
【0046】
粒子状テンプレートの除去方法としては、特に制限はなく、例えば、熱溶解、加水分解、酵素分解、酸化分解、エチレンジアミン四酢酸やヘキサメタりん酸ナトリウム等、キレート剤によるイオン交換処理等が挙げられる。これら粒子状テンプレート除去方法の中、熱溶解又はエチレンジアミン四酢酸やヘキサメタりん酸ナトリウム等のキレート剤によるイオン交換処理が、実験操作上の簡易性、該テンプレート除去の容易性の点で好ましい。
【0047】
III工程で得られるモノリス中間体は、連続マクロボイド構造の骨格部が低架橋の骨格を有する連続マクロポア構造である。連続マクロポア構造は、マクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が平均半径0.01〜100μmの開口となる連続マクロポア構造である。連続マクロポア構造は、互いに繋がっているマクロポアとマクロポアの該繋がり部分が半径0.01〜100μm、好ましくは0.1〜100μm、特に好ましくは5〜60μmの開口となる構造である。すなわち、連続マクロポア構造は、通常、半径0.2〜500μmのマクロポアとマクロポアが重なり合い、この重なる部分が開口となる構造を有するもので、その部分がオープンポア構造のものである。
【0048】
また、モノリス中間体の連続マクロポア構造は、全細孔容積が4〜30ml/gであることが好ましい。全細孔容積が4ml/g未満であると、骨格密度が高いことで、後に得られるモノリス状有機多孔質体の構造形成に悪影響を及ぼし、該有機多孔質体の構造が、モノリス中間体由来の連続マクロポア構造になってしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が30ml/gを越えると、骨格部分のポリマーの占める割合が低下し、モノリス中間体に芳香族ビニルモノマー、架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を含浸させ重合を行う工程において、十分量の芳香族ビニルモノマーを骨格部へ吸着又は分配することが出来なくなるため好ましくない。
【0049】
モノリス中間体のマクロポアとマクロポアの重なり部分である開口の半径0.01〜100μmは、油中水滴型エマルジョンを得る工程において、界面活性剤の添加量、攪拌混合における攪拌回転数及び攪拌時間などを適宜に決定することで達成することができる。また、攪拌混合の際、アルコール、カルボン酸あるいは炭化水素を共存させることにより調整することもできる。開口の半径0.01μm近傍は、界面活性剤の添加量を多くしたり、攪拌回転数を高めたり、攪拌時間を長くとることにより、逆に半径100μm近傍は、界面活性剤の添加量を少なくしたり、攪拌回転数を低くしたり、攪拌時間を短くすることで達成することができる。
【0050】
IV工程は、芳香族ビニルモノマー、架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調整する工程である。
【0051】
IV工程で用いられる芳香族ビニルモノマーとしては、前記I工程と同様に分子中に重合可能なビニル基を含有し、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーであれば、特に制限はない。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のα−オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらモノマーの中で、好適なものとしては、芳香族ビニルモノマーであり、本発明で好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマーである。
【0052】
これら芳香族ビニルモノマーの添加量は、前記III工程で得られたモノリス中間体に対して、重量で5〜50倍である。芳香族ビニルモノマー添加量が多孔質体に対して5倍未満であると、生成したモノリスの骨格を太くできず、体積当りの吸着容量やイオン交換基導入後の体積当りのイオン交換容量が小さくなってしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー添加量が50倍を超えると、開口径が小さくなり、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
【0053】
IV工程で用いられる架橋剤は、前記I工程と同様に分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。
【0054】
IV工程で用いられる有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、芳香族ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、芳香族ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状(ポリ)エーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。また、ジオキサンやTHF、トルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。これら有機溶媒の使用量は、上記芳香族ビニルモノマーの濃度が5〜80重量%となるように用いることが好ましい。有機溶媒使用量が上記範囲から逸脱して芳香族ビニルモノマー濃度が5重量%未満となると、重合速度が低下してしまうため好ましくない。一方、芳香族ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合が暴走する恐れがあるため好ましくない。
【0055】
IV工程で用いられる重合開始剤としては、前記I工程と同様に熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。本発明で用いられる重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。
【0056】
V工程は、前記IV工程で得られた混合物を静置下、且つ前記III工程で得られたモノリス状有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、連続マクロボイド構造と共連続構造が共存する有機多孔質体を得る工程である。また、骨格部である共連続構造は全細孔容積0.5〜5ml/g、全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜2.5モル%含有する、該有機多孔質中間体の骨格より太い骨格を有する多孔質構造である。
【0057】
V工程で用いるモノリス中間体は、本発明の斬新な構造を有するモノリスを創出する上で、極めて重要な役割を担っている。特表平7−501140号等に開示されているように、モノリス中間体不存在下で芳香族ビニルモノマーと架橋剤を特定の有機溶媒中で静置重合させると、粒子凝集型のモノリス状有機多孔質体が得られる。それに対して、本発明のように上記重合系に、全細孔容積4〜30ml/g、全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜2.5モル%含有する連続マクロポア構造のモノリス中間体を存在させると、重合後のモノリスの構造は劇的に変化し、粒子凝集構造、連続マクロポア構造が消失し、上述の共連続構造のモノリスが得られる。その理由は詳細には解明されていないが、モノリス中間体が存在しない場合は、重合により生じた架橋重合体が粒子状に析出・沈殿することで粒子凝集構造が形成されるのに対し、重合系に比較的低架橋の多孔質体(中間体)が存在すると、ビニルモノマー及び架橋剤が液相から多孔質体の骨格部に吸着又は分配され、多孔質体中で重合が進行し、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁部から一次元の棒状骨格に変化して共連続構造のモノリスが得られると考えられる。
【0058】
V工程において、重合条件はII工程と同様に、芳香族ビニルモノマーの種類、重合開始剤の種類により様々な条件が選択できる。例えば、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。重合終了後、容器から内容物を取り出し、未反応のビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、2−プロパノール等の溶剤で抽出してモノリス状有機多孔質体を得る。
【0059】
次に、本発明のモノリス状有機多孔質イオン交換体の製造方法について説明する。該モノリス状有機多孔質イオン交換体は、上記の方法により得られたモノリス状有機多孔質体を製造した後、モノリス状有機多孔質体の骨格表面及び骨格内部にイオン交換基を均一に導入したものであって、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.075mg当量/ml以上、好ましくは0.1〜5.0mg当量/mlである。このように、予めモノリス状有機多孔質体を製造し、その後、イオン交換基を導入する方法が、モノリス状有機多孔質イオン交換体の多孔構造を厳密にコントロールできる点で好ましい。
【0060】
上記モノリス状有機多孔質体の表面及び骨格内部にイオン交換基を均一に導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、スルホン酸基を導入する方法としては、有機多孔質体がスチレン−ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロ硫酸や濃硫酸、発煙硫酸を用いてスルホン化する方法;有機多孔質体の表面及び骨格内部にラジカル開始基や連鎖移動基を導入し、スチレンスルホン酸ナトリウムやアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換によりスルホン酸基を導入する方法等が挙げられる。また、四級アンモニウム基を導入する方法としては、有機多孔質体がスチレン-ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法;有機多孔質体をクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により製造し、三級アミンと反応させる方法;有機多孔質体の表面及び骨格内部にラジカル開始基や連鎖移動基を導入し、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレートやN,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドをグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換により四級アンモニウム基を導入する方法等が挙げられる。また、ベタインを導入する方法としては、有機多孔質体に三級アミンを導入した後、モノヨード酢酸を反応させ導入する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、スルホン酸基を導入する方法については、クロロ硫酸を用いてスチレン-ジビニルベンゼン共重合体にスルホン酸基を導入する方法が、四級アンモニウム基を導入する方法としては、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体にクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法やクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により有機多孔質体を製造し、三級アミンと反応させる方法が、イオン交換基を骨格表面及び骨格内部に均一かつ定量的に導入できる点で好ましい。なお、導入するイオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基;四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ポリエチレンイミン基、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等のアニオン交換基;アミノリン酸基、ベタイン、スルホベタイン等の両性イオン交換基が挙げられる。
【0061】
イオン交換容量の調整は、多孔質体と反応試薬の選択により適宜決定できる。例えば、0.075mg当量/gといった比較的低いカチオン交換容量の多孔質体を製造する場合には、濃硫酸やクロロスルホン酸といったスルホン化試薬との反応性が低いジビニルベンゼンを主成分とする多孔質体をスルホン化することで達成できる。また、グラフト反応によりカチオン交換基を導入する場合は、多孔質体に導入するラジカル開始基や連鎖移動基の導入量を低く抑えることで、カチオン交換容量を低くすることができる。一方、カチオン交換容量を高くしたい場合には、スルホン化試薬との反応性が高いスチレンを主成分とする多孔質体をスルホン化する。また、グラフト反応を用いる場合には、多孔質体に導入するラジカル開始基や連鎖移動基の導入量を多くすればよい。また、アニオン交換容量や両性イオン交換容量の場合も、前記カチオン交換容量の場合と同じ方法で行うことができる。
【0062】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0063】
(モノリス状有機多孔質中間体の製造)
スチレン4.66g、ジビニルベンゼン0.10g、ソルビタンモノオレート0.25g及び、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.07gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/ソルビタンモノオレート/2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を45.0gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて13.3kPaの減圧下、公転回転数1000回転/分、自転回転数330回転/分で2分間撹拌し、油中水滴型エマルジョンを得た(I工程)。
【0064】
I工程で得られた油中水滴型エマルジョンを円筒容器内に静かに注入した。次いで、該エマルジョン中に真球状で粒子半径が1.5mmの寒天ハイドロゲルを最密充填し、系内を窒素で十分置換した後密封し、静置下60℃で24時間重合させた(II工程)。寒天ハイドロゲルビーズは、寒天溶液を冷却した溶液に滴下し固化させる方法により製造されたものを使用した。
【0065】
重合終了後、内容物を取り出し、90℃以上に加熱した純水中で1時間撹拌することで、寒天ハイドロゲルを除去した。その後、2−プロパノールで6時間ソックスレー抽出し、未反応モノマー、水及び、ソルビタンモノオレートを除去した後、85℃で一昼夜減圧乾燥することで、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有した、連続マクロボイド構造を有するモノリス状有機多孔質中間体を得た(III工程)。
【0066】
この有機多孔質中間体の内部構造は、連続マクロボイド構造と連続マクロポア構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径1.5mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.6mmであった。また骨格部分の連続マクロポア構造は、平均半径32μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は14μm、全細孔容積は8.8ml/gであった。得られた多孔質体は、重量4.3g、直径70.0mm、高さ41.2mmの円柱状であった。結果を表1にまとめて示す。
【0067】
(モノリス状有機多孔質体の製造)
スチレン39.2g、ジビニルベンゼン0.8g、1−オクタノール60g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.4gを混合し、均一に溶解させた(IV工程)。
【0068】
次に上記III工程で得られたモノリス中間体を厚さ約20mmの円盤状に切断して、2.0g分取した。分取したモノリス中間体を内径88mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1−オクタノール/2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一昼夜減圧乾燥することで、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有した、連続マクロボイド構造を有するモノリス状有機多孔質体を得た(V工程)。
【0069】
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス状有機多孔質体の内部構造は、連続マクロボイド構造と共連続構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径1.3mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.5mmであった。また骨格部分の共連続構造を、SEMにより観察した結果を図3に示す。当該モノリス状有機多孔質体(乾燥体)の内部構造をSEMにより観察したところ、骨格及び空孔がそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。また、SEM画像から測定した骨格の太さは11μmであった。また、粒子状テンプレートを使用しないこと以外は同様の方法で別途に調製した共連続構造体について、空孔の大きさ及び全細孔容積を水銀圧入法により測定した。水銀圧入法により測定した当該モノリスの三次元的に連続した空孔の大きさは21μm、全細孔容積は2.9ml/gであった。また、得られた多孔質体は、重量34.0g、直径88.0mm、高さ25.1mmの円盤状であった。結果を表2にまとめて示す。
【0070】
(モノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
実施例1で得られた有機多孔質体に、ジクロロメタン1800mlを加え、35℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、クロロ硫酸186.4gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた。その後、メタノールを加え、残存するクロロ硫酸をクエンチした後、メタノールで洗浄してジクロロメタンを除き、更に純水で洗浄して連続マクロボイド構造を有するモノリス状有機多孔質カチオン交換体を得た。
【0071】
得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.69倍であり、直径は148.7mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.15mg当量/mlであった。水湿潤状態において、連続マクロボイド構造のマクロボイド平均半径は2.2mm、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は1.0mmであった。
【0072】
また、骨格部分の共連続構造を、有機多孔質体の直径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、骨格直径は19μm、連続空孔の大きさは35μm、全細孔容積は2.9ml/gであった。結果を表3にまとめて示す。
【実施例2】
【0073】
(モノリス状有機多孔質中間体の製造)
粒子半径が1.5mmの寒天ハイドロゲルに代えて、粒子半径が2.5mmの寒天ハイドロゲルを使用した以外は、実施例1と同様の方法でモノリス状有機多孔質中間体を製造した。
【0074】
この有機多孔質中間体の内部構造は、連続マクロポア構造と連続マクロボイド構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径2.5mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は1.0mmであった。また骨格部分の連続マクロポア構造は、平均半径30μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は12μm、全細孔容積は8.9ml/gであった。得られた多孔質体は、重量4.1g、直径70.5mm、高さ41.5mmの円柱状であった。結果を表1にまとめて示す。
【0075】
(モノリス状有機多孔質体の製造)
実施例2で得られたモノリス状有機多孔質中間体を、実施例1と同様の方法でスチレン/ジビニルベンゼン/1−オクタノール/2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、重合反応を行い、モノリス状有機多孔質体を製造した。得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス状有機多孔質体の内部構造は、連続マクロボイド構造と共連続構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径2.4mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.9mmであった。また骨格部である連続マクロポア構造を、SEMにより観察した結果を図6に示す。図6のSEM画像は、図3と同様にモノリスを任意の位置で切断して得た骨格部の切断面の任意の位置における画像である。骨格部分の共連続構造について、実施例1と同様の方法で求めた骨格直径は12μmであった。また、実施例1と同様の方法で求めた当該モノリスの連続空孔の大きさは20μm、全細孔容積は2.8ml/gであった。また、得られた多孔質体は、重量33.5g、直径87.5mm、高さ24.5mmの円盤状であった。結果を表2にまとめて示す。
【0076】
(モノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
実施例2で得られたモノリス状有機多孔質体を、実施例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、モノリス状有機多孔質カチオン交換体を製造した。得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.73倍であり、直径は151.3mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.14mg当量/mlであった。水湿潤状態において、連続マクロボイド構造のマクロボイド平均半径は4.2mm、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は1.7mmであった。また、骨格部分の共連続構造を、有機多孔質体の直径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、骨格直径は21μm、連続空孔の大きさは35μm、全細孔容積は2.8ml/gであった。結果を表3にまとめて示す。
【実施例3】
【0077】
(モノリス状有機多孔質中間体の製造)
粒子半径が1.5mmの寒天ハイドロゲルに代えて、粒子半径が12.5mmの寒天ハイドロゲルを使用した以外は、実施例1と同様の方法でモノリス状有機多孔質中間体を製造した。
【0078】
この有機多孔質中間体の内部構造は、連続マクロポア構造と連続マクロボイド構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径12.5mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は5.5mmであった。また骨格部分の連続マクロポア構造は、平均半径31μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は13μm、全細孔容積は8.6ml/gであった。得られた多孔質体は、重量4.2g、直径70.0mm、高さ40.6mmの円柱状であった。結果を表1にまとめて示す。
【0079】
(モノリス状有機多孔質体の製造)
実施例3で得られたモノリス状有機多孔質中間体を、実施例1と同様の方法でスチレン/ジビニルベンゼン/1−オクタノール/2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、重合反応を行い、モノリス状有機多孔質体を製造した。得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス状有機多孔質体の内部構造は、連続マクロボイド構造と共連続構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径11.5mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は4.6mmであった。また骨格部である連続マクロポア構造を、SEMにより観察した結果を図7に示す。図7のSEM画像は、図3と同様にモノリスを任意の位置で切断して得た骨格部の切断面の任意の位置における画像である。骨格部分の共連続構造について、実施例1と同様の方法で求めた骨格直径は11μmであった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの連続空孔の大きさは21μm、全細孔容積は2.7ml/gであった。また、得られた多孔質体は、重量34.5g、直径87.8mm、高さ24.3mmの円盤状であった。結果を表2にまとめて示す。
【0080】
(モノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
実施例3で得られたモノリス状有機多孔質体を、実施例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、モノリス状有機多孔質カチオン交換体を製造した。得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.74倍であり、直径は152.8mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.14mg当量/mlであった。水湿潤状態において、連続マクロボイド構造のマクロボイド平均半径は21.0mm、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は9.6mmであった。また、骨格部分の共連続構造を、有機多孔質体の直径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、骨格直径は19μm、連続空孔の大きさは37μm、全細孔容積は2.7ml/gであった。結果を表3にまとめて示す。
【実施例4】
【0081】
(モノリス状有機多孔質中間体の製造)
粒子半径が1.5mmの寒天ハイドロゲルに代えて、粒子半径が1.5mmのアルギン酸カルシウムハイドロゲルを使用したことと、テンプレート除去条件を、90℃以上に加熱した純水中で1時間撹拌することに代えて、10%ヘキサメタりん酸ナトリウム水溶液中で4時間撹拌することに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でモノリス状有機多孔質中間体を製造した。なお、アルギン酸カルシウムハイドロゲルビーズは、アルギン酸ナトリウム水溶液を塩化カルシウム水溶液中に滴下してゲル化させる方法で得られたものを使用した。
【0082】
この有機多孔質中間体の内部構造は、連続マクロポア構造と連続マクロボイド構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径1.5mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.6mmであった。また骨格部分の連続マクロポア構造は、平均半径30μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は14μm、全細孔容積は8.7ml/gであった。得られた多孔質体は、重量4.2g、直径70.3mm、高さ40.0mmの円柱状であった。結果を表1にまとめて示す。
【0083】
(モノリス状有機多孔質体の製造)
実施例4で得られたモノリス状有機多孔質中間体を、実施例1と同様の方法でスチレン/ジビニルベンゼン/1−オクタノール/2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、重合反応を行い、モノリス状有機多孔質体を製造した。得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス状有機多孔質体の内部構造は、連続マクロボイド構造と共連続構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径1.4mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.5mmであった。また骨格部である連続マクロポア構造を、SEMにより観察した結果を図8に示す。図8のSEM画像は、図3と同様にモノリスを任意の位置で切断して得た骨格部の切断面の任意の位置における画像である。骨格部分の共連続構造について、実施例1と同様の方法で求めた骨格直径は10μmであった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの連続空孔の大きさは21μm、全細孔容積は2.8ml/gであった。また、得られた多孔質体は、重量34.2g、直径87.0mm、高さ24.5mmの円盤状であった。結果を表2にまとめて示す。
【0084】
(モノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
実施例4で得られたモノリス状有機多孔質体を、実施例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、モノリス状有機多孔質カチオン交換体を製造した。得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.70倍であり、直径は147.9mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.15mg当量/mlであった。水湿潤状態において、連続マクロボイド構造のマクロボイド平均半径は2.4mm、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は1.0mmであった。
【0085】
また、骨格部分の共連続構造を、有機多孔質体の直径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、骨格直径は17μm、連続空孔の大きさは36μm、全細孔容積は2.8ml/gであった。結果を表3にまとめて示す。
【実施例5】
【0086】
(モノリス状有機多孔質中間体の製造)
スチレン4.66g、ジビニルベンゼン0.10g、ソルビタンモノオレート0.25gの原料に代えて、スチレン1.30g、ジビニルベンゼン0.03g、ソルビタンモノオレート0.07gの原料に変更した以外は、実施例1と同様の方法でモノリス状有機多孔質中間体を製造した。
【0087】
この有機多孔質中間体の内部構造は、連続マクロポア構造と連続マクロボイド構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径1.5mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.5mmであった。また骨格部分の連続マクロポア構造は、平均半径57μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は21μm、全細孔容積は15.5ml/gであった。得られた多孔質体は、重量1.5g、直径69.5mm、高さ39.5mmの円柱状であった。結果を表1にまとめて示す。
【0088】
(モノリス状有機多孔質体の製造)
モノリス中間体を厚さ約20mmの円盤状に切断して、2.0g分取したことに代えて、厚さ約20mmの円盤状に切断して、0.8g分取したこと以外は実施例1と同様の方法で、実施例5で得られたモノリス状有機多孔質中間体を、スチレン/ジビニルベンゼン/1−オクタノール/2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、重合反応を行い、モノリス状有機多孔質体を製造した。得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス状有機多孔質体の内部構造は、連続マクロボイド構造と共連続構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径1.5mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.5mmであった。また骨格部である連続マクロポア構造を、SEMにより観察した結果を図9に示す。図9のSEM画像は、図3と同様にモノリスを任意の位置で切断して得た骨格部の切断面の任意の位置における画像である。骨格部分の共連続構造について、実施例1と同様の方法で求めた骨格直径は9μmであった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの連続空孔の大きさは23μm、全細孔容積は3.2ml/gであった。また、得られた多孔質体は、重量32.5g、直径88.0mm、高さ23.5mmの円盤状であった。結果を表2にまとめて示す。
【0089】
(モノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
実施例5で得られたモノリス状有機多孔質体を、実施例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、モノリス状有機多孔質カチオン交換体を製造した。得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.79倍であり、直径は157.5mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.14mg当量/mlであった。水湿潤状態において、連続マクロボイド構造のマクロボイド平均半径は2.7mm、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.9mmであった。また、骨格部分の共連続構造を、有機多孔質体の直径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、骨格直径は16μm、連続空孔の大きさは41μm、全細孔容積は3.2ml/gであった。結果を表3にまとめて示す。
【実施例6】
【0090】
(モノリス状有機多孔質中間体の製造)
スチレン4.66g、ジビニルベンゼン0.10g、ソルビタンモノオレート0.25gの原料に代えて、スチレン10.5g、ジビニルベンゼン0.22g、ソルビタンモノオレート0.56gの原料に変更した以外は、実施例1と同様の方法でモノリス状有機多孔質中間体を製造した。
【0091】
この有機多孔質中間体の内部構造は、連続マクロポア構造と連続マクロボイド構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径1.5mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.5mmであった。また骨格部分の連続マクロポア構造は、平均半径16μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される開口の平均半径は6μm、全細孔容積は4.5ml/gであった。得られた多孔質体は、重量9.6g、直径70.8mm、高さ41.2mmの円柱状であった。結果を表1にまとめて示す。
【0092】
(モノリス状有機多孔質体の製造)
スチレン39.2g、ジビニルベンゼン0.8g、1−オクタノール60gの原料に代えて、スチレン34.3g、ジビニルベンゼン0.7g、1−オクタノール45gの原料に変更したこと、モノリス中間体を厚さ約20mmの円盤状に切断して、2.0g分取したことに代えて、厚さ約20mmの円盤状に切断して、4.5g分取したこと以外は実施例1と同様の方法で、実施例6で得られたモノリス状有機多孔質中間体を、スチレン/ジビニルベンゼン/1−オクタノール/2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、重合反応を行い、モノリス状有機多孔質体を製造した。得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有したモノリス状有機多孔質体の内部構造は、連続マクロボイド構造と共連続構造が均一に混在し互いに繋がったものであった。連続マクロボイド構造は、平均半径1.5mmのマクロボイドの大部分が重なり合い、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は0.6mmであった。また骨格部である連続マクロポア構造を、SEMにより観察した結果を図10に示す。図10のSEM画像は、図3と同様にモノリスを任意の位置で切断して得た骨格部の切断面の任意の位置における画像である。骨格部分の共連続構造について、実施例1と同様の方法で求めた骨格直径は15μmであった。また、水銀圧入法により測定した当該モノリスの連続空孔の大きさは17μm、全細孔容積は2.5ml/gであった。また、得られた多孔質体は、重量33.5g、直径89.0mm、高さ24.5mmの円盤状であった。結果を表2にまとめて示す。
【0093】
(モノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
実施例6で得られたモノリス状有機多孔質体を、実施例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、モノリス状有機多孔質カチオン交換体を製造した。得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.81倍であり、直径は161.1mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.16mg当量/mlであった。水湿潤状態において、連続マクロボイド構造のマクロボイド平均半径は2.7mm、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は1.1mmであった。また、骨格部分の共連続構造を、有機多孔質体の直径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、骨格直径は27μm、連続空孔の大きさは31μm、全細孔容積は2.5ml/gであった。結果を表3にまとめて示す。
【実施例7】
【0094】
(モノリス状有機多孔質アニオン交換体の製造)
実施例1と同様の方法でモノリス状有機多孔質体を製造した。得られた有機多孔質体に、ジメトキシメタン1405ml、四塩化スズ44.6gを加え、10℃以下まで冷却した後、クロロ硫酸978.7gを徐々に加え、昇温して35℃で5時間反応させた。その後、再び10℃以下まで冷却し、容器より反応溶液を抜き取り、テトラヒドロフラン/水=1/1混合溶液1800mlを加え洗浄し、クロロメチル化有機多孔質体を得た。該クロロメチル化有機多孔質体に、テトラヒドロフラン1800mlを加え、そこにトリメチルアミン30%水溶液879.1gを加え、昇温して50℃で6時間反応させた。その後、容器より反応溶液を抜き取り、メタノール/水=1/1混合溶液1800mlを加え洗浄を行い、更に純水で洗浄してモノリス状有機多孔質アニオン交換体を得た。得られたアニオン交換体の、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量は、0.12mg当量/mlであった。
【0095】
比較例1
(連続気泡構造型モノリス状有機多孔質体の製造)
スチレン4.66g、ジビニルベンゼン0.10g、ソルビタンモノオレート0.25g及び、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.07g及び純水45.0gの原料を、スチレン19.24g、ジビニルベンゼン1.01g、ソルビタンモノオレート1.07g、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26g及び純水180gの原料に変更したこと、寒天ハイドロゲルビーズの使用を省略したこと以外は、実施例1のモノリス状有機多孔質中間体の製造方法と同様の方法でモノリス状有機多孔質体を製造した。
【0096】
得られた有機多孔質体は、粒子状テンプレートを用いないことから、連続マクロボイド構造を形成しておらず、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.3モル%含有した連続マクロポア構造のみを形成した。この有機多孔質体の内部構造は、平均半径31μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される連続空孔の大きさは24μm、全細孔容積は8.6ml/gであった。また、骨格構造をSEMにより観察したところ、壁面厚みは5μmであった。得られた多孔質体は、重量16.7g、直径70.8mm、高さ42.0mmの円柱状であった。結果を表1、表2にまとめて示す。
【0097】
(連続気泡構造型モノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
比較例1で得られた連続マクロポア構造のモノリス状有機多孔質体を、実施例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、モノリス状有機多孔質カチオン交換体を製造した。得られた該カチオン交換体には連続マクロボイド構造は形成しておらず、反応前後の膨潤率は1.92倍であり、直径135.9mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.19mg当量/mlであった。この有機多孔質カチオン交換体の内部構造は、連続マクロポア構造を有しており、水湿潤状態の平均細孔半径を、有機多孔質体の連続空孔の大きさと水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、連続空孔の大きさは46μm、骨格直径は10μmであった。結果を表3にまとめて示す。
【0098】
参考例1
(モノリス状有機多孔質カチオン交換体の製造)
実施例1で製造したモノリス状有機多孔質中間体に、スチレン/ジビニルベンゼン/1−オクタノール/2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、重合反応を行う工程を省略し、そのままスルホン化反応を行うことで、モノリス状有機多孔質カチオン交換体を製造した。
【0099】
すなわち、実施例1のIII工程で得られたモノリス状多孔質中間体を厚さ約20mmの円盤状に切断して、2.0g分取した後、実施例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、モノリス状有機多孔質カチオン交換体を製造した。得られたカチオン交換体の反応前後の膨潤率は1.87倍であり、直径は132.8mm、全細孔容積は8.9ml、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.04mg当量/mlであった。
【0100】
水湿潤状態において、連続マクロボイド構造のマクロボイド平均半径は2.6mm、マクロボイドとマクロボイドの重なりで形成される開口の平均半径は1.0mmであった。また、骨格部分の連続マクロポア構造を、有機多孔質体の直径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、連続空孔の大きさは49μm、壁面厚みは9μmであった。結果を表1、表2、表3にまとめて示す。
【0101】
(イオン除去性能試験1)
実施例1で得られたモノリス状有機多孔質カチオン交換体を、内径10mm、高さ100mmのカラムに充填し、0.004mol/l 塩化ナトリウム水溶液(Naイオン濃度:92.0ppm)を、線速度10m/hで通液し、Naイオンの除去性能を測定した。その結果、Naイオン除去率は99%以上であり、圧力損失は0.002MPaであった。また、モノリス状有機多孔質カチオン交換体は、イオン除去性能試験に耐える強度を有するものであった。
【0102】
(イオン除去性能試験2)
実施例1で得られたモノリス状有機多孔質カチオン交換体に代えて、比較例1で製造した連続気泡構造型モノリス状有機多孔質カチオン交換体を用いたこと以外は、イオン除去性能試験1と同様のイオン除去性能試験を行った。その結果、Naイオン除去率は99%以上であったが、圧力損失は0.010MPaであった。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

【0105】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のモノリス状多孔質体等は、連続マクロボイド構造と共連続構造が均一に混在し、更に共連続構造の骨格が骨太であるというユニークな構造である。このことから、水や気体などの流体を流した際圧力損失が極めて低くなることが期待でき、フィルターや吸着剤;2床3塔式純水製造装置や電気式脱イオン水製造装置に充填して用いられるイオン交換体;固体酸/塩基触媒として有用であり、広範な用途分野に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明のモノリス状多孔質体等の基本構造を示す模式図である。
【図2】本発明のモノリス状多孔質体等の骨格部である共連続構造を模式的に示した図である。
【図3】実施例1で得られたモノリス状有機多孔質体のSEM写真である。
【図4】実施例1で得られたモノリス状有機多孔質カチオン交換体の外観写真である。
【図5】比較例1で得られたモノリス状有機多孔質体のSEM写真である。
【図6】実施例2で得られたモノリス状有機多孔質体のSEM写真である。
【図7】実施例3で得られたモノリス状有機多孔質体のSEM写真である。
【図8】実施例4で得られたモノリス状有機多孔質体のSEM写真である。
【図9】実施例5で得られたモノリス状有機多孔質体のSEM写真である。
【図10】実施例6で得られたモノリス状有機多孔質体のSEM写真である。
【符号の説明】
【0108】
1 骨格相
2 空孔相
10 共連続構造
11 マクロボイド
12 共通の開口
X 連続マクロボイド構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクロボイド同士が重なり合い、この重なる部分が平均半径0.1〜25mmの開口となる連続マクロボイド構造の有機多孔質体であって、該連続マクロボイド構造の見かけ上の骨格部が、全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜2.5モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが0.8〜40μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に半径が4〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造であり、前記マクロボイドの半径が、前記空孔の半径の2倍以上であることを特徴とするモノリス状有機多孔質体。
【請求項2】
前記マクロボイドの平均半径が、前記空孔の平均半径の2〜250000倍であることを特徴とする請求項1記載のモノリス状有機多孔質体。
【請求項3】
下記工程;
芳香族ビニルモノマー、界面活性剤、水、架橋剤及び必要に応じて重合開始剤を、芳香族ビニルモノマー(M)と水(W)の重量比(M):(W)が1:49〜1:3、架橋剤がビニルモノマーと架橋剤の合計中、0.3〜2.5モル%となるように混合し、該混合物を撹拌して油中水滴型エマルジョンを調製するI工程、
該油中水滴型エマルジョン中に多数の粒子状テンプレートを存在させ静置下重合するII工程、
該重合体から該粒子状テンプレートを除去することで、連続マクロボイド構造と連続マクロポア構造が共存するモノリス状有機多孔質中間体を得るIII工程、
芳香族ビニルモノマー、架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤を、ビニルモノマーをモノリス状有機多孔質中間体に対して5〜50倍となる量で配合し、混合するIV工程、
IV工程で得られた混合物を静置下、且つ該III工程で得られたモノリス状有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、連続マクロボイド構造と共連続構造が共存する有機多孔質体を得るV工程、
を行うことを特徴とするモノリス状有機多孔質体の製造方法。
【請求項4】
前記粒子状テンプレートが、多糖類ハイドロゲルであることを特徴とする請求項3記載のモノリス状有機多孔質体の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載のモノリス状有機多孔質体の骨格表面及び骨格内部にイオン交換基が導入されたものであって、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.075mg当量/ml以上であることを特徴とするモノリス状有機多孔質イオン交換体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−221428(P2009−221428A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70097(P2008−70097)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】