説明

モリブデン−99の溶出効率を最大化するためのカラムの幾何学的形状

【課題】放射性物質(160)を溶出する少なくとも1つのシステム(100)、および放射性物質(160)を溶出する方法を提供する。
【解決手段】放射性物質(160)を溶出するシステム(100)は、放射性物質(160)を囲むように構成される溶出カラム(105)と、溶出カラム(105)の第1の端部(111)を封止する第1の封止部材(110)と、溶出カラムの第2の端部(112)を封止する第2の封止部材(120)と、第1のニードル(22)を介して溶出カラム(105)の第1の端部(111)に接続した溶出溶液供給源(20)と、第2のニードル(42)を介して溶出カラムの第2の端部(112)に接続した捕集システム(40)と、放射性物質(160)を支持し、放射性物質(160)が第2のニードル(42)に接触するのを防ぐように構成される、溶出カラム内のフィルタ(150)とを備え得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性モリブデン酸チタンからテクネチウムイオンを抽出するのに用いる溶出カラムに関する。
【背景技術】
【0002】
テクネチウム−99m(mは、準安定である)は、核医学画像診断に用いる放射性核種である。テクネチウム−99mは患者に注入され、ある種の機器と共に用いるときに、テクネチウム−99mを使用して患者の内臓を画像化する。しかし、テクネチウム−99mの半減期は、わずか6時間であるので、すぐに利用できるテクネチウム−99m源が望まれている。
【0003】
テクネチウム−99mを得る方法は、最低でも2ステップのプロセスを用いる。まず、モリブデン酸チタンをカプセル内に配置し、次いでこのカプセルを原子炉内で放射線照射する。モリブデン酸チタン内のモリブデン−98は、放射線照射プロセス中に中性子を吸収し、モリブデン−99(Mo−99)になる。代替として、モリブデン金属が放射線照射されてもよく、放射線照射後にモリブデン酸チタンが形成される。Mo−99は、不安定であり、66時間の半減期でテクネチウム−99mに崩壊する。放射線照射ステップ後、放射性モリブデン酸チタンをカプセルから取り出し、溶出のためのカラム内に配置する。続いて、食塩水を放射性モリブデン酸チタンに通過させて、放射性モリブデン酸チタンからテクネチウム−99mイオンを取り出す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例示的実施形態は、放射性物質を溶出する少なくとも1つのシステム、および放射性物質を溶出する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的実施形態によれば、放射性物質を溶出するシステムは、放射性物質を囲むように構成される溶出カラムと、溶出カラムの第1の端部を封止する第1の封止部材と、溶出カラムの第2の端部を封止する第2の封止部材と、第1のニードルを介して溶出カラムの第1の端部に接続した溶出溶液供給源と、第2のニードルを介して溶出カラムの第2の端部に接続した捕集システムと、放射性物質を支持し、放射性物質が第2のニードルに接触するのを防ぐように構成される、溶出カラム内のフィルタとを備え得る。
【0006】
例示的実施形態によれば、放射性物質を溶出する方法は、第1の円筒内で放射性物質を溶出溶液と混合して混合物を形成するステップと、混合物を加熱してイオンを含むガスを形成するステップと、チューブのコイル部においてイオンを含んだガスを凝縮してイオンを含む凝縮物を形成するステップと、第2の円筒内で凝縮物を捕集するステップとを含み得る。
【0007】
例示的実施形態によれば、放射性物質を溶出するシステムは、放射性物質を囲むと共に支持するメンブレンと、メンブレンを囲む球状カプセルと、球状カプセルの内部に溶出溶液を供給するように構成される溶出溶液供給源と、メンブレンから溶出液を受け取るように構成される捕集システムとを備え得る。
【0008】
下記の詳細な説明を添付図面と併せ読めば、本発明の例示的実施形態がより明確に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の例示的実施形態による放射性物質を溶出するシステムの断面図である。
【図2】本発明の例示的実施形態による放射性物質を溶出するシステムの断面図である。
【図3】本発明の例示的実施形態による放射性物質を溶出するシステムの断面図である。
【図4】本発明の例示的実施形態による放射性物質を溶出するシステムの断面図である。
【図5】本発明の例示的実施形態による放射性物質を溶出するシステムの断面図である。
【図6】本発明の例示的実施形態によるフロートリッパを含む溶出カラムの一部の断面図である。
【図7】本発明の例示的実施形態によるフロートリッパを含む溶出カラムの一部の図である。
【図8】本発明の例示的実施形態による螺旋プラットフォームを含む溶出カラムの一部の図である。
【図9】本発明の例示的実施形態による螺旋プラットフォームを含む溶出カラムの一部の図である。
【図10】本発明の例示的実施形態による放射性物質を溶出するシステムの断面図である。
【図11】本発明の例示的実施形態による放射性物質を溶出するシステムの断面図である。
【図12】本発明の例示的実施形態による放射性物質を溶出するシステムの図である。
【図13】本発明の例示的実施形態による放射性物質を溶出するシステムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の例示的実施形態について、例示的実施形態を示している添付図面を参照してより十分に説明する。しかし、本発明は、様々な形態で実施されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これら実施形態は、本開示が徹底的で完全なものとなり、本発明の範囲を当業者に十分に伝達するように提供されている。図面において、構成要素のサイズは、分かりやすくするために強調されている場合がある。
【0011】
ある要素もしくは層が、他の要素または層「の上に(on)」、「に接続される(connected to)」、または「に結合される(coupled to)」と称されるときは、ある要素または層は、他の要素または層の直接上にあってもよく、直接接続されてもよく、もしくは直接結合されてもよく、または介在要素もしくは介在層が存在してもよいことが理解されよう。対照的に、ある要素が、他の要素または層「の直接上にある(directly on)」、「に直接接続される(directly connected to)」、または「直接結合される(directly coupled to)」と称されるときは、介在要素または介在層は存在しない。本明細書で用いられる場合、用語「および/または」は、関連して挙げた項目のうちの1つまたは複数のいずれかおよび全ての組み合わせを含む。
【0012】
本明細書では、第1、第2などの用語を使用して様々な要素、構成要素、領域、層、および/または区間(section)を説明する場合があるが、これら要素、構成要素、領域、層、および/または区間は、これらの用語によって限定されるべきではないことは理解されよう。これら用語は、一方の要素、構成要素、領域、層、および/または区間を、他方の要素、構成要素、領域、層、および/または区間と区別するために使用されるに過ぎない。したがって、後述の第1の要素、構成要素、領域、層、または区間は、例示的実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、または区間と名付けることが可能である。
【0013】
図に示されるような、ある要素または特徴と別の(1つまたは複数の)要素または(1つまたは複数の)特徴との関係を説明するための記載を簡単にするために、空間的に相対的な用語、「真下の」、「下方の」、「下の」「上方の」、「上の」等などを本明細書において使用する場合がある。空間的に相対的な用語は、図に表した向きに加えて使用時または動作時の装置の様々な向きを包含するものであることが理解されよう。例えば、図中の装置をひっくり返した場合、「下方の」または「真下の」他の要素または特徴として記載した要素は、このとき、他の要素または特徴「の上方の」向きに配置されることになる。したがって、例示の用語「下方の」は、上方と下方の両方の向きを包含し得る。装置は、(90度回転してまたは他の向きに)違ったように向けられる場合もあり、本明細書で用いた空間的に相対的な記述語は、それに応じて解釈される。
【0014】
本明細書に記載した実施形態は、理想的な概略図による平面図および/または断面図を参照する。したがって、これら図は、製造技術および/または製造公差に応じて修正され得る。そのため、例示的実施形態は、図に示す例示的実施形態に限定されるのではなく、製造プロセスに基づいて形成される構成の修正を含む。したがって、図に例示した領域は、概略的な性質を有し、図に示す領域の形状は、要素の特定の形状または領域を例示し、例示的実施形態を限定しない。
【0015】
図1は、放射性物質60を溶出するシステム10の一例を示す。システム10は、溶出溶液供給源20と、溶出カラム30と、捕集システム40とを備える。溶出溶液供給源20は、溶出溶液を貯蔵するための貯槽21と、溶出カラム30の第1の端部11を貫通し、貯槽21に貯蔵した溶出溶液が溶出カラム30と流体連通を行うように構成される中空の第1のニードル22(第1の流体連通路の一例)とを備え得る。貯槽21は、例えば、食塩溶液を貯蔵することができる。同様に、捕集システム40は、溶出カラム30の第2の端部12を貫くように構成される中空の第2のニードル42(第2の流体連通路の一例)と、溶出カラム30から第2のニードル42を介して溶出液を捕集するための保管チャンバ41とを備え得る。溶出カラム30は、放射性物質60を囲む垂直に向いた円筒に似ていてもよい。
【0016】
動作時、溶出カラム30は、放射性物質60で満たされている。放射性物質60から所望のイオンを取り出すために、溶出溶液が、溶出溶液供給源20から第1のニードル22を介し放射性物質60を介し第2のニードル42を介し捕集システム40の中に通るようになされている。上記動作は、捕集システム40からシステム10に適用される真空によって駆動される。
【0017】
図2は、溶出溶液供給源20と、捕集システム40と、それらの間に介在する溶出カラム105とを備える溶出システム100の例示的実施形態を示す。図1に示すシステム10のように、図2に示す溶出溶液供給源20は、溶出カラム105の第1の端部111を貫通するように構成され得る第1のニードル22と、溶出溶液を貯蔵するための貯槽21とを備える。同様に、システム100の捕集システム40は、溶出カラム105の第2の端部112の中に貫通するように構成される第2のニードル42と、溶出カラム105を通過した溶出液を捕集するための保管チャンバ41とをやはり備える。
【0018】
動作時、溶出カラム105は、放射性物質160、例えば、放射性モリブデン酸チタンで満たされている。図2に示すように、溶出カラム105は、内径Dおよび長さLを有する中空の円筒に似ていてもよい。溶出カラム105の第1の端部111は、第1の封止部材110によって封止することができ、溶出カラム105の第2の端部112は、第2の封止部材120によって封止することができる。第1の封止部材110および第2の封止部材120は、例えば、ゴム栓であってもよい。図2に示すように、第1の封止部材110および第2の封止部材120は、溶出カラム105の第1の端部111および第2の端部112の中に途中まで延びるゴム栓として形成されてもよい。溶出カラム105の第1の端部111および第2の端部112を封止する第1の封止部材110および第2の封止部材120に加えて、端部キャップ130および140が、第1の封止部材110および第2の封止部材120ならびに溶出カラム105の一部を覆うように溶出カラム105の第1の端部111および第2の端部112上に設けられてもよい。端部キャップ130および140は、追加の封止として機能することができ、溶出カラム105を保護するのを助けることができ、所定の位置に栓を保つことができる。図2に示していないが、追加の封止を形成するために、接着剤が、端部キャップ130および140の内壁と溶出カラム105の外壁の間に塗布されてもよい。
【0019】
図2に示すように、溶出カラム105は、放射性物質160を囲む。第2のニードル42の先端が、放射性物質160によって遮断されるのを防ぐために、フィルタ150、例えばガラスフリットを、放射性物質160をカラム内で支持し、放射性物質160が第2のニードル42に接触するのを防ぐ障壁として働くように設けてもよい。ガラスフリットがフィルタ150として使用される場合、内部ショルダ155が、ガラスフリットを支持するために溶出カラム105内に設けられてもよい。例えば、ショルダは、溶出カラム105の第2の端部112の近くに設けられてもよい。
【0020】
溶出カラム105は、比較的長く細いものでも、中くらいのものでも、比較的短く幅のあるものでもよい。例えば、カラムは、長さLが約10と5/8インチであり、内径Dが約5/8インチであってもよい(比較的長く細いカラムの一例)。別の例として、カラムは、長さが約5と1/4インチであり、内径Dが1インチであってもよい(中くらいのサイズのカラムの一例)。別の例として、カラムは、長さが約4と1/8インチであり、内径Dが1と3/16インチであってもよい(短く幅のあるカラムの一例)。
【0021】
カラムの幾何学的形状にはそれぞれ、溶出プロセス中に捕集されるイオンの捕集効率に影響を及ぼし得る異なる特性がある。例えば、長く細いカラムは、食塩溶液が放射性物質160を通過するより長い流路を与え、したがって食塩溶液が放射性物質160に接触し、放射性物質160からイオンを取り出す機会が増える。短く幅のあるカラムは、より短い流路を与えるが、流路がより短いので、溶出液を捕集する時間が少なくなる。本出願人は、長く細いカラムの効率、中くらいのカラムの効率、および短く幅のあるカラムの効率を検討した。当初、本出願人は、長く細いカラムが、カラムを通る食塩溶液の流路がより長いので、最も優れた溶出効率をもたらすだろうと考えたが、本出願人は、3つのカラムのサイズのうち、中くらいのカラムが、最良の流れ特性を得ることを発見した。
【0022】
図2では、溶出溶液供給源は、1本だけのニードル22を有するものとして示されているが、例示的実施形態は、これに限定されない。例えば、図3に示すように、溶出溶液供給源20は、溶出カラム105の第1の封止部材110を貫通することができる2本のサブニードル22aおよび22bを含み得るマニホールド型ニードル22’を備えてもよい。溶出溶液が、2箇所以上で放射性物質160に導入されるので、マニホールド型ニードル22’は、溶出溶液と放射性物質160の相互作用を増加させ得る。図3は、2本のサブニードル22aおよび22bを有するマニホールド型ニードル22’を用いるシステム200を示すが、例示的実施形態は、これに限定されない。例えば、マニホールド型ニードル22は、3本以上のサブニードルを有してもよい。図3に示す他の構成要素は、図2に示したシステム100について説明した構成要素と同一または類似であり得るため、簡潔にするために、類似するタイプの要素についての解説は省略する。
【0023】
図2は、比較的真っ直ぐな円筒の溶出カラム105を備える溶出システム100を示すが、例示的実施形態は、これに限定されない。例えば、図4は、「蛇」状の溶出カラム105’を備える放射性物質160を溶出するシステム300を示す。例えば、図4に示す溶出カラム105’は、複数の波形を含む。例えば、「蛇」状の溶出カラム105’の有効長さLE’は、約10と5/8インチであってもよく、「蛇」状の溶出カラム105’の内径D’は、約5/8インチであってもよい。代替例では、カラムは、「蛇」状ではなく、図5に示すように「コイル」状であってもよい。図5には、「コイル」状の溶出カラム105”を用いるシステム400が示されている。「コイル」状の溶出カラム105は、有効長さLE”が約10と5/8インチであり、内径D”が約5/8インチであってもよい。「蛇」状の溶出カラム105’および「コイル」状の溶出カラム105”はそれぞれ、溶出溶液が通過できる比較的長い流路を有する小型の溶出カラムを提供することができる。図4に示すシステム300および図5に示すシステム400は、図2に示すシステム100中の構成要素に類似する構成要素を備える。したがって、これら構成要素の説明は、簡潔にするために省略する。
【0024】
本発明者は、「蛇」状の溶出カラム105’および「コイル」状の溶出カラム105”が溶出カラム105’および105”を通過する溶出液の流れの方向を変えるため、溶出システム300および400の効率を、図2に開示したシステムに比べて増加させることができると結論を下した。つまり、「蛇」状の溶出カラム105’および「コイル」状の溶出カラム105”を通じて流れる溶出液の流れは、比較的乱流状態で導かれ、したがって、溶出溶液と放射性物質160の間でより大きい相互作用が可能になる。
【0025】
図2は、比較的真っ直ぐな溶出カラム105を備える溶出システム100を示す。前述の通り、溶出カラム105は、捕集システム40によって適用される真空の作用を受けて溶出溶液、例えば食塩溶液が通過可能である放射性物質160、例えばモリブデン酸チタンで満たされていてもよい。モリブデン酸チタンを通る溶出溶液の流路は、ほぼ垂直であり得る。したがって、放射性物質160の一部に、溶出溶液が触れない可能性がある。本発明者は、溶出溶液が乱流状態で導かれ、したがって溶出溶液と放射性物質160の間でより大きい相互作用が可能になる場合、溶出システムの効率を増加させることができると結論を下した。
【0026】
図6および図7は、図2に示す溶出カラム105にフロートリッパ170を付加することを示す。フロートリッパ170は、溶出カラム105の内壁から溶出カラム105の中心に向かって突出する複数のくさび様の要素に似ている。フロートリッパ170は、規則的なパターン、例えば、螺旋状パターンで配置されてもよく、またはランダムに配置されてもよい。フロートリッパ170は、放射性物質160で満たされている溶出カラム105の一部、例えば、図2のB−B’で表した領域内に設けることができる。フロートリッパ170は、放射性物質160を効率的に溶出するためには必要とされないが、フロートリッパ170を付加することにより、放射性物質160を通る溶出液の流路が周期的に変化するので、溶出プロセスの効率を増加させることができる。流路のこの変化により、フロートリッパ170が設けられていない場合には溶出溶液によって通常接触される可能性のない放射性物質160の部分に溶出溶液が接触することが可能になり得る。フロートリッパ170は、比較的反応しない材料、例えばガラスから作製することができる。
【0027】
図6に示すように、フロートリッパ170は、くさび状の要素に似ていてもよいが、例示的実施形態は、これに限定されない。例えば、フロートリッパ170は、長方形であってもよい。また、図6は、ほぼ水平にあるようなフロートリッパ170を示すが、例示的実施形態は、これに限定されない。例えば、フロートリッパ170は、水平方向から傾斜していてもよい。加えて、図6は、比較的平らであるフロートリッパ170を示すが、例示的実施形態は、これに限定されない。例えば、フロートリッパ170は、曲面または傾斜面を有してもよい。
【0028】
図2に示す溶出カラム105の領域B−B’にフロートリッパ170を設けるのではなく、図8〜図9に示すように、溶出カラム105が、螺旋プラットフォーム180を備えてもよい。図8〜図9に示すように、螺旋プラットフォーム180は、溶出液を垂直流路ではなく螺旋流路で移動させることができ、したがって溶出液の流路を増加させる。螺旋プラットフォーム180は、図8に示すように滑面、または図6中のフロートリッパに示すように階段状面を備えてもよい。溶出液の流路が増加するので、溶出溶液と放射性物質160の間の相互作用が増加し、それによって溶出効率を増加させることができる。螺旋プラットフォーム180は、比較的反応しない材料、例えばガラスから作製することができる。
【0029】
上記の通り、例示的実施形態は、溶出カラムの様々な構成を与える。前述の各溶出カラムは、各カラムの内径が、比較的一定であるように構成されるが、例示的実施形態は、これに限定されない。例えば、図10は、カラムの端部で直径D1を有すると共にカラムの中央近くでより小さい直径D2を有する砂時計に似ている例示の溶出カラム105Aを備えるシステム500を示す。カラム105Aは砂時計形であるので、砂時計を通る溶出溶液の流路は、カラムの中心の中央近くで変化する。例えば、溶出カラムの中央より上の溶出溶液の流路F1は、カラムの中央近くで集まる。しかし、溶出カラム105Aが狭くなっていることにより、溶出溶液の流路は、溶出カラム105Aの中央で変化し、カラムの中央部から現れる流路F2に変えられる。砂時計形の溶出カラム105Aは、少なくとも2つの理由のために、溶出効率を増加させることができる。第1に、溶出液の流路がより長く、放射性物質160と溶出溶液の間のより大きい相互作用が可能になる。第2に、砂時計形の溶出カラム105Aを通過する溶出溶液の流路は、円筒形の溶出カラム105を通過する溶出溶液の流れより乱れ、したがって溶出溶液と放射性物質160の間の相互作用を増加させる。システム500は、図2に示すシステム100で用いられる構成要素に類似する構成要素を備えることができる。したがって、これら要素の解説は、簡潔にするために省略する。
【0030】
図11は、溶出システム600の別の例を示す。図11に示すシステム600は、図2に示す溶出システム100に類似し、したがってシステム600の詳細な解説は、簡潔にするために省略する。図2に示すシステム100と図6に示すシステム600との間の主な差異には、カラム105Bの形状が含まれる。図2に示すシステム100では、カラム105は、一定の内径Dを有する円筒形であるのに対して、システム600のカラムは、溶出カラム105Bの底近くの直径D3より大きい溶出カラム105Bの頂部での直径D4を有する漏斗形である。したがって、ほぼ垂直な状態で溶出カラム105Bを通過する溶出溶液の流路を傾斜することができ、溶出カラム105Bを通る溶出溶液の流路をより長くすることが可能である。したがって、システム600中の溶出溶液と放射性物質160の間の相互作用は、システム100中の溶出溶液とシステム100の放射性物質160の相互作用より大きいものであり得る。よって、図6に示すシステムの効率は、円筒の溶出カラム105を有する図2に示すシステム100の効率より高いものであり得る。
【0031】
図12は、放射性物質からイオンを捕集するシステム700を表している。システム700は、第1の端部キャップ330によって封止した第1の円筒310と、第2の端部キャップ340によって封止した第2の円筒320と、第1の円筒310を第2の円筒320に接続するチューブ360と、第1の円筒310を加熱するように構成される加熱器390とを備え得る。図12に示すように、チューブ360は、第1の端部キャップ330を貫通し、第1の円筒310に貫入する第1の端部部分370と、第2の端部キャップ340を貫通し、第2の円筒320に貫入する第2の端部部分380とを備え得る。チューブ360は、チューブ360内に存在し得る蒸気の冷却を促進するためにコイル部350も備え得る。チューブ360は、第1の円筒310と第2の円筒320の間で流体連通をもたらすことができる。
【0032】
本例示的実施形態では、溶出溶液、例えば食塩溶液は、放射性物質、例えばモリブデン酸チタンと混合され、第1の円筒310に貯蔵することができる。第1の円筒310を囲む加熱器390は、熱を発生させて、放射性物質が内部に混合された溶出溶液を沸騰させることができる。ガス状の溶出溶液は、イオン、例えばテクネチウム−99mイオンを、溶出溶液と放射性物質の混合物からチューブ360の第1の端部部分370を介してチューブ360の中に運ぶ。次いで、イオンを含んだガス状の溶出溶液は、チューブ360のコイル部350に移動し、そこでガス状の溶出溶液は、凝縮し、第2の端部部分380を介して第2の円筒320の中に滴下する。したがって、イオン、例えばテクネチウム−99mは、図12に示す凝縮装置によって捕集することができる。当業者が理解するように、第1の円筒310および第2の円筒320ならびにチューブ360は、比較的反応しない材料、例えばガラスから作製すべきである。しかし、当業者は、図12に示す溶出システム700に適したものであり得る多数の材料を認識できる。
【0033】
図13を参照すると、放射性物質805を溶出するシステム800の断面は、球状カプセル860を利用することができる。図13に示すように、放射性物質805を溶出する例示のシステム800は、溶出溶液供給源830、球状カプセル860、および捕集システム810を備え得る。チューブ840は、溶出溶液、例えば食塩溶液を球状カプセル860に導入するように溶出溶液供給源830を球状カプセル860に接続することができる。別のチューブ820は、放射性物質805を通過した溶出液を捕集するために捕集システム810を球状カプセル860に接続することができる。球状カプセル860は、放射性物質805、例えば放射性モリブデン酸チタンで満たされているメンブレン870を囲むことができる。例えば、メンブレン870は、食塩水透過性物質、例えばセルロース系材料またはセルロース系ポリマーから作製することができる。放射性物質805で満たされているメンブレン870は、溶出溶液供給源830に接続したチューブ840によって貫かれ得る。放射性物質805が溶出溶液供給源830に入るのを防ぐために、フィルタ850、例えばガラスフリットが、チューブ840の端部に取り付けられてもよい。
【0034】
球状カプセル860は、内径D5が3インチであってもよく、メンブレン870は、外径D6が約2.75インチであってもよい。したがって、図13に示す例示のシステム800では、球状カプセル860の内面とメンブレン870との間の間隙は、約0.125インチであり得る。
【0035】
動作時、溶出溶液は、溶出溶液供給源830に接続したチューブ840を介して球状カプセル860に入る。溶出溶液供給源830を出発する溶出溶液の流れパターンを、894として示す。メンブレン870の中心に入ると、溶出溶液は、放射性物質805を通じて流れ、メンブレン870を通過し球状カプセル860とメンブレン870の間の空間880の中に入ることができる。図13に示すように、空間880内の溶出溶液の流れパターンを符号892で示す。捕集システム810は、メンブレン870の外側へ真空を適用するので、溶出溶液が、空間880からチューブ820を介して捕集システム810の中に引き出し可能である。チューブ820を通過する溶出液の流路は、符号890で示す。メンブレン870の内側の溶出溶液の流れパターンは、符号894で図13に示す。したがって、溶出溶液は、様々な角度から放射性物質805を通過する。
【0036】
当業者が容易に理解するように、チューブ820および840ならびに球状カプセル860は、比較的反応しない材料、例えばガラスまたはポリマーから作製すべきである。
【0037】
例示的実施形態を特に図示し、本発明の例示的実施形態を参照して説明してきたが、添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく形態および細部の様々な変更を本発明において行うことが可能であると当業者には理解されよう。食塩溶液を例示のシステムで用いるための溶出溶液の一例として使用してきたが、例示的実施形態は、溶出溶液として食塩溶液を用いることに限定されないことも理解されよう。加えて、前述の溶出システムで用いることができる放射性物質を例示するために、放射性モリブデン酸チタンを用いてきたが、溶出システムは、他の放射性物質と共に用いられてもよいことが理解されよう。さらに、放射性物質から溶出できるイオンを例示するために、テクネチウム−99mを用いてきたが、例示的実施形態は、これに限定されない。
【符号の説明】
【0038】
10 放射性物質を溶出するシステム
11 溶出カラムの第1の端部
12 溶出カラムの第2の端部
20 溶出溶液供給源
21 貯槽
22 中空の第1のニードル
22’ マニホールド型ニードル
22a マニホールド型サブニードル
22b マニホールド型サブニードル
30 溶出カラム
40 捕集システム
41 溶出液を捕集するための保管チャンバ
42 中空の第2のニードル
60 放射性物質
100 放射性物質を溶出するシステム
105 溶出カラム
105A 「砂時計」形の溶出カラム
105B 「漏斗」形の溶出カラム
105’ 「蛇」状の溶出カラム
105” 「コイル」状の溶出カラム
110 第1の封止部材
111 溶出カラムの第1の端部
112 溶出カラムの第2の端部
120 第2の封止部材
130 端部キャップ
140 端部キャップ
150 フィルタ
155 内側ショルダ
160 放射性物質
170 フロートリッパ
180 螺旋プラットフォーム
200 放射性物質を溶出するシステム
300 放射性物質を溶出するシステム
310 円筒
320 円筒
330 端部キャップ
340 端部キャップ
350 チューブのコイル部
360 チューブ
370 チューブの第1の端部部分
380 チューブの第2の端部部分
390 加熱器
400 放射性物質を溶出するシステム
500 放射性物質を溶出するシステム
600 放射性物質を溶出するシステム
700 放射性物質を溶出するシステム
800 放射性物質を溶出するシステム
805 放射性物質
810 捕集システム
820 チューブ
830 溶出溶液供給源
840 チューブ
850 フィルタ
860 球状カプセル
870 メンブレン
880 球状カプセルとメンブレンの間の空間
890 流路
892 流れパターン
894 流れパターン
B 領域
B’ 領域
D 溶出カラムの内径
D’ 「蛇」状のカラムの内径
D” 「コイル」状のカラムの内径
D1 「砂時計」形のカラムのより大きい直径
D2 「砂時計」形のカラムのより小さい直径
D3 溶出カラムの底近くの直径
D4 溶出カラムの頂部での直径
D5 球状カプセルの内径
D6 球状カプセルの外径
F1 流路
F2 流路
L カラムの長さ
LE’ カラムの有効長さ
LE” カラムの有効長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質(160)を溶出するシステム(100)であって、
前記放射性物質(160)を囲むように構成される溶出カラム(105、105’、105”)と、
前記溶出カラム(105)の第1の端部(111)を封止する第1の封止部材(110)と、
前記溶出カラム(105)の第2の端部(112)を封止する第2の封止部材(120)と、
第1の流体連通路(22)を介して前記溶出カラム(105)の前記第1の端部(111)に接続した溶出溶液供給源(20)と、
第2の流体連通路(42)を介して前記溶出カラム(105)の前記第2の端部(112)に接続した捕集システム(40)と、
前記放射性物質(160)を支持し、前記放射性物質(160)がニードル(42)に接触するのを防ぐように構成される、前記溶出カラム(105)内のフィルタ(150)と
を備えるシステム(100)。
【請求項2】
前記カラム(105)の長さ(L)が約10と5/8インチであり、前記溶出カラム(105)の内径(D)が約5/8インチである、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記カラム(105)の長さ(L)が約5と1/4インチであり、前記溶出カラムの内径(D)が約1インチである、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記カラム(105)の長さ(L)が約4と1/8インチであり、前記溶出カラム(105)の内径(D)が約1と3/16インチである、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記フィルタ(150)がガラスフリットであり、前記ガラスフリットが前記溶出カラム(105)の内側ショルダ(155)によって支持される、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
第1のニードル(22’)が、少なくとも2本のサブニードル(22a、22b)を含むマニホールド型ニードルである、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記溶出カラム(105’)が、複数の波形を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記溶出カラム(105”)が、コイル状である、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記溶出カラム(105)の内側壁に取り付けた複数のフロートリッパ(170)
をさらに備える、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
各前記フロートリッパ(170)が、前記溶出カラム(105)の内側壁に取り付けた一方の端部と、前記溶出カラム(105)の中心に向かって延びる他方の端部とを有する、請求項9記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−221011(P2011−221011A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−65318(P2011−65318)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC