説明

モリブデンTZM合金からなる医療用インプラント

【課題】高い弾性率を備え、放射線不透過性であり、かつMRIに適合可能な医療用インプラントを提供すること。
【解決手段】体内の管腔内に移植するための医療用インプラントは、該インプラント内を貫通する流路を有し、かつ該インプラントはモリブデンTZM合金からなる。得られたインプラントは弾性率が少なくとも300GPaである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRI及びX線に適合可能なステント材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、損傷、又は閉塞した体腔を維持及び/又は治療するために体内に配置される。ステントは、典型的には、ストランド状の材料から管に形成されるか、開口部を備えたロール状に巻かれたシート材料から形成されるか、又はステントパターンを形成するために除去されるべき材料を含む管から形成される。ステントは通常、カテーテルを用いて体腔内に送達される。カテーテルはステントを保持して、所望の部位に送達し、そして該ステントがカテーテルから放出され、体腔の内面と係合するように拡大される。ステントの配置される位置は、該ステントが放射線不透過性材料を含む場合、蛍光透視により監視され得る。
【0003】
ステントは、バルーンにより拡張可能であるか、自身で拡張できるか、又は自身での拡張とバルーンでの拡張の組み合わせであり得る。自身で拡張可能なステントは復元力を有する材料にて形成される。自己拡張可能なステントに適した材料は、バネ鋼及びニチノール(Nitinol)のような形状記憶材料を含む。バルーンにて拡張可能なステントは、ステンレス鋼のような弾性の、塑性変形可能な材料にてしばしば形成される。ステントに適したその他の材料は、エルジロイ(elgiloy)のようなコバルトクロム合金、タンタル及び他の塑性変形可能な金属、プラチナ/タングステン合金及びチタン合金を含む。
【0004】
ステントは時として曲がりくねった管腔を通って送達されるので、可撓性を備える必要がある。可撓性を備え、かつ拡張可能なステントを得るために、ステント材料は望ましくは高い弾性率を有している。同時に、該材料は蛍光透視下にて視認できるように十分に放射線不透過性であるべきである。更に、磁気共鳴映像法(MRI)が広く使用されることになったのに伴い、体内のステントの領域にて撮影される如何なる磁気共鳴画像も歪まないように、ステント材料はMRIに適合可能であることが望ましい。
【0005】
同様な材料の検討はまた、その他の型の医療用インプラントにも適用され、該インプラントとしては、例えば、大静脈フィルター並びに、該装置が破砕されることなく配置されるべく高い強度と、破砕に対する抵抗性とが必要とされるその他の移植装置を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高い弾性率を備え、放射線不透過性であり、かつMRIに適合可能なステント材料及びその他の移植材料の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を解決するために、請求項1に記載の発明は、体内の管腔内に移植するための医療用インプラントであって、該インプラントは、インプラント内を貫通する流路を有し、かつ該インプラントはモリブデンTZM合金からなる医療用インプラント、を提供する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の医療用インプラントにおいて、該インプラントがステントの形態である、ことをその要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の医療用インプラントにおいて、弾性率が少なくとも300GPaである、ことをその要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、側壁部と複数の開口部とをその内部に有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医療用インプラントにおいて、該インプラントはシート又は管から形成され、かつ開口部はシート又は管から材料を除去することにより形成される、ことをその要旨とする。
【0010】
一実施形態において、本発明は体内の管腔内に移植するための、タングステン−レニウム合金からなる医療用インプラントに関する。該インプラントは、該インプラント内を貫通する流路を備え、かつ、望ましくはステント又は大静脈フィルターの形態である。インプラントは、本質的にタングステンとレニウムから構成されるタングステン−レニウム合金から選択的に製造され得る。典型的には、タングステンは、約75重量%乃至約99重量%の範囲の量にて存在し、かつレニウムは約25重量%乃至約1重量%の範囲の量にて存在する。該インプラントは、シート状材料、管状材料、又はその他の適切な形状の合金から製造され得る。
【0011】
別の実施形態において、本発明は体内の管腔内に移植するための、モリブデンTZM合金からなる医療用インプラントに関する。該インプラントは、該インプラント内を貫通する流路を備え、かつ望ましくはステントの形態であるか、又は大静脈フィルターである。選択的に、該医療用インプラントは、弾性率が少なくとも300GPaであるモリブデンTZM合金から構築され得る。該インプラントは、シート状材料、管状材料、又はその他の適切な形状の合金から製造され得る。
【0012】
別の実施形態において、本発明はシート材料、金属管、又はその他の形状の合金から製造されるステントに関し、該金属は300GPa又はそれ以上の弾性率を有する。ステントは、シート状材料、管状材料、又はその他の適切な形状の合金から製造され得る。該ステントは、タングステン−レニウム合金、モリブデンTZM合金からなるか、又は本質的にモリブデンから構成され得る。タングステン−レニウム合金の場合、該タングステンは約75重量%乃至約99重量%の範囲の量にて存在していることが望ましく、かつレニウムは約25重量%乃至約1重量%の範囲の量にて存在していることが望ましい。選択的に、該ステントは、400GPa又はそれ以上の弾性率を有する。
【0013】
別の実施形態において、本発明はモリブデンTZM合金からなる医療用インプラントに関する。典型的には、該医療用インプラントはステントの形態である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い弾性率を備え、放射線不透過性であり、かつMRIに適合可能な医療用インプラントであって、モリブデンTZM合金からなる医療用インプラントが提供された。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ステントの形態であるインプラントの斜視図である。
【図2】図1のステントの拡大した状態の斜視図である。
【図3】ステントの形態である別のインプラントの側面図である。
【図4】図3のステントの平面パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書中に記載されている全ての米国特許、米国特許出願及びその他の刊行物は、その全体を本明細書中にて参照として援用される。
本発明の範囲を制限することなく、本発明のクレームされた実施形態のいくらかの要約を以下に記載する。本発明の要約化された実施形態の更なる詳細及び/又は本発明の更なる実施形態は以下に記載の発明の詳細な説明にて見出せ得る。
【0017】
本明細書中の技術的な開示の短い要約は、米国特許法施行規則第1.72条に適合する目的にて同様に提供されている。
更なる詳細な説明及び/又は本発明の実施形態を以下に記載する。
【0018】
本発明は種々の形態にて具現化されているものの、本発明の特殊な望ましい実施形態が本明細書中にて詳細に記載されている。この記載は本発明の原理を例示するものであり、本発明を例示された特殊な実施形態に限定することを意図するものではない。
【0019】
この開示の目的において、特に指示されていない場合、異なる図面において使用されている同一の符号は同一の構成要素を示す。
本明細書に開示されている発明は、医療用インプラントに関する。典型的には、該医療用インプラントは、該インプラント内を貫通する流路を有する装置の形態である。該インプラントはステントの形態であることが望ましいが、例えば、大静脈フィルターのようなその他の形態としても提供され得る。
【0020】
ステントの実施例は、拡張していない状態のものが、図1において符号100にて示されている。ステント100は、該ステントの長手軸102の方向に貫通する流路を備えている。該ステントは、複数の開口部104を備えた側壁部を有する。図1のステントは、図2においてその拡張した形態が示されている。その他のステントのデザインが図3及び4において符号100にて示されている。図1乃至4のステントのデザインは例示のみの目的にて示されている。本明細書中に開示された進歩性を備えたステントはその他周知のステントの幾何学的形状にて製造され得る。
【0021】
ステントは、適切なステントの製造技術を用いて製造され得る。該ステントは、金属シート、管から製造されるか、又は個々のシリンダをつなぎ合わせたものから形成される。金属シートから製造されたステントの場合、該シートは巻かれ、その端部が選択的に他方の端部と固定されるか、又は他方の端部とは固定されない状態とされる。シート又は管に対して化学的エッチングを行うか、管に対してレーザカッティングを行うか、又は開口部を提供するようなその他公知の技術を用いることにより、該ステントに開口部が設けられる。
【0022】
本発明はまた、大静脈フィルターの形態にて提供され得る。大静脈フィルターに関する更なる情報は、米国特許第5059205号明細書及び米国特許第5951585号明細書に見出せる。
【0023】
一態様において、本発明は医療用インプラントに関し、該インプラントはこれまでにインプラント用に使用していなかった合金を使用する。望ましくは、該合金はMRIに適合可能である。適切な合金としては、モリブデンTZM及びタングステン−レニウム合金を含む。純粋なモリブデンは本発明の幾つかの実施形態において使用され得る。
【0024】
一実施形態において、本発明は、上記記載のモリブデンTZM合金からなるような医療用インプラントに関する。モリブデンTZMは、モリブデンベースの合金であり、少量の更なる微細な分散粒子を含んでおり、該分散粒子は例えば、約0.25乃至1.0重量%のチタン、望ましくは0.5重量%のチタンと、約0.04乃至2.0重量%のジルコニウム、望ましくは0.08重量%のジルコニウムと、約0.01乃至0.04重量%の炭素とである。モリブデンTZMは例えば、真空炉ホットゾーン材料、ホットダイ及び成形材料、X線用管状ターゲット及びカソードカップ材料、又は多くの航空宇宙製品の部品用材料としてこれまでに使用されている。
【0025】
インプラントがステントの形態である場合、少なくともTZM合金からなる部分を備えた管が設けられ、かつステントのパターンが管から材料を除去することにより設けられる。既に述べたように、該材料は、エッチング、レーザカッティング又はその他の適切な材料除去工程により該管から除去され得る。材料の除去により、該管は図1乃至4に示すようなパターンか、又はその他所望のパターンを得る。該管は、適切な研磨工程を用いて研磨されるか、及び/又は所望の材料を用いてメッキ又はコーティングされ、体内に移植するためのステントとなる。
【0026】
本発明のTZM合金ステントはまた、TZM合金からなる個々のセグメントを組み立てることにより製造され得る。例えば、TZM合金からなる一つ以上の個々の管状セグメントを溶接、接着剤の使用又はその他適切な方法を介して接合してステントを形成する。個々の管状セグメントは選択的に自身にて血管を支持するように構築されるか、又は自身上にて血管を支持することは不可能であり得る。他の材料のセグメントもまた、ステントの一部として包含され得る。
【0027】
ステントはまた、ステントパターンを形成するために材料が除去されたシート状のTZM合金、又はその一部がTZM合金であるシートから形成され得る。該シートを巻いて、二つの相対向する端部を互いに固定して管を形成するか、あるいは該シートは二つの相対向する端部を固定することなくロール状の形状のままにて維持される。次いで、該シートの一部又は全体を必要に応じて研磨及び/又はコーティングする。
【0028】
他の実施形態において、本発明はまた、既に記載したようなタングステン−レニウム合金からなる医療用インプラントに関する。該インプラントは本質的にタングステン及びレニウムから構成されるタングステン−レニウム合金から選択的に製造されるか、又はタングステン−レニウム合金及び他の材料からなる。本発明のインプラントにおいて、典型的には、タングステンは、約75乃至99重量%の範囲の量にて存在し、レニウムは約25乃至1重量%の範囲の量にて存在する。仮にわずかの不純物が存在したとしても、各不純物は、1重量%を超えない量にて存在していることが望ましい。
【0029】
望ましい一実施形態において、タングステン−レニウム合金は、本質的には約75重量%のタングステンと、約25重量%のレニウムとからなる。別の望ましい実施形態において、タングステン−レニウム合金は、本質的には約95重量%のタングステンと、約5重量%のレニウムとからなる。別の望ましい実施形態において、タングステン−レニウム合金は、本質的には約97重量%のタングステンと、約3重量%のレニウムとからなる。
【0030】
一般的なインプラント全体、特にステントは、タングステン−レニウム合金から形成されるか、又は一部のみが該合金から形成されるとともに該インプラントのその他の部分は一つ以上の異なる材料から形成される。
【0031】
タングステン−レニウム合金から形成されるステント、又はタングステン−レニウム合金から形成された部分を有するステントは、少なくとも400GPaの弾性率を有することが望ましい。
【0032】
別の実施形態において、本発明は、既に述べたように、モリブデンTZM合金からなり、かつ体内の管腔内に移植されるための医療用インプラントに関する。望ましくはステントの形態である該インプラントは、該ステントを製造するために、本明細書に開示されているようなその他の技術のいずれかを用いて形成され得る。該ステントは全体をモリブデンTZM合金から形成されているか、又は該ステントの選択された部分のみがモリブデンTZM合金から形成される。
【0033】
該インプラントは、選択的には、少なくとも300GPaの弾性率を備えたTZM合金からその一部、又は全体が構成される。
別の実施形態において、本発明は金属シート、又は金属管から製造される体内の管腔用インプラントに関し、該金属は300GPa又はそれ以上の弾性率を有する。例えば、ステント又は大静脈フィルターであるインプラントは、タングステン−レニウム合金、モリブデンTZM合金からなるか、又は本質的にモリブデンから構成される。
【0034】
インプラント全体がタングステン−レニウム合金、モリブデンTZM合金又はモリブデンから形成されるか、又は該インプラントの一部のみがこれらの材料から形成されるとともに該インプラントのその他の部分がその他の材料から形成される。本発明はまた、一般的にはインプラントを企図するが、特にタングステン−レニウム合金、モリブデンTZM合金又はモリブデンの組み合わせから製造されるステントを企図する。従って、該インプラントの一部は、該材料のうちの一つから形成され、かつ別の部分は該材料のうちのその他の材料から形成される。種々の部分が、溶接、接着、又はその他の適切な接合技術を介して互いに接合される。一実施形態において、ステントの一つ以上の部分は、ある弾性率を有するモリブデンTZM合金又はタングステン−レニウム合金から形成され、かつ該ステントの一つ以上のその他の部分は異なる弾性率を有するモリブデンTZM合金又はタングステン−レニウム合金から形成され得る。一例として、該ステンドの一方の端部又は両方の端部は、該ステントの中央の部分より高い、又は低い弾性率であり得る。該ステントはまた、該ステントの長手方向に沿って弾性率が増大するように構築し、かつ配置され得る。
【0035】
タングステン−レニウム合金からなるインプラントの場合、該タングステンは、望ましくは約75乃至99重量%の範囲の量にて存在し、かつ該レニウムは、望ましくは約25乃至1重量%の範囲の量にて存在する。
【0036】
該ステントは、選択的に400GPa又はそれ以上の弾性率を有する。タングステン−レニウム合金から形成されたステントは、典型的にはそのような弾性率を有する。
本発明は、拡張していない状態、又は拡張した状態である上記ステントのいずれかに関する。
【0037】
本発明は更に、二又に分かれたステントに関し、該二又に分かれたステントの一つ以上の部分は、上述の合金又はモリブデンのいずれかから形成される。例えば、二又に分かれたステントの各脚部、該二又に分かれたステントの一方の脚部又は該二又に分かれたステント全体が、上記に開示されたタングステン−レニウム合金若しくはモリブデンTZM合金かのいずれかからなるか、又は全体がモリブデンから形成され得る。二又に分かれたステントに関する更なる詳細な説明は、米国特許第5,916,263号明細書並びに米国特許出願第09/659571号に見出される。
【0038】
上記に開示された本発明のステントのいずれかは、均一の直径を備えたものとして提供されるか、又は該ステントの一部がテーパ状であるか若しくは該ステント全体が長手方向に沿ってテーパ状である。また、本発明のステントの種々の部分の厚みはステントの所定の部分に沿って増大又は減少する。例えば、該ステントの一方の端部又は両方の端部は、該ステントの中央部分と比べてより厚い壁又はより薄い壁を備え得る。一実施形態において、該ステントの、その壁厚がステントの長手方向に沿って増大したものが提供され得る。
【0039】
本明細書に開示されている本発明のステントは、冠状動脈、腎動脈、腸骨(illiac)動脈を含む末梢動脈、首の動脈及び脳動脈において使用され得る。しかしながら、本発明のステントは血管系における使用にのみ制限されるものではなく、その他の体の構造体においても有利に使用可能であり、該構造体としては、動脈、静脈、胆管、尿道、卵管、気管支、気管、食道及び前立腺を含むがそれらに限定されるものではない。
【0040】
別の実施形態において、本発明はまた、本明細書に開示された合金から形成された大静脈フィルター及び他の医療用インプラント並びに比較的純粋なモリブデンからその一部、又は全体が形成された大静脈フィルター及び他の医療用インプラントに関する。モリブデンは、少なくとも99重量%の純度であることが望ましい。モリブデンは、99.9%の純度であることがより望ましい。市販の合金でないモリブデンが使用され得る。
【0041】
本明細書に開示された本発明の装置のいずれかは、市販の金属又は合金の試料から製造され得る。該金属は通常、短時間の間、アニーリングされている必要がある。典型的には、アニーリングは、1乃至15分間の範囲の間、金属の溶融温度の約2分の1の温度にて実施される。
【0042】
本明細書に開示されている本発明の医療用インプラントのいずれかは、ステントの一部又は全体を放射線不透過性とする適切なコーティング、及び/又は薬物、及び/又はポリマーコーティングを供給することができる。例えば、ステントは金又はその他の貴金属にてコーティングされ得るか、又はタンタル又は他の金属でスパッタリングされ得る。使用され得るその他の放射線不透過性金属としては、白金、白金−タングステン、パラジウム、白金−イリジウム、ロジウム、タンタル、又はこれらの金属の合金若しくは複合材料を含む。しかしながら、これらの金属の幾つかは、ステントのMRI適合性に影響を与え得る。
【0043】
本発明のステント又はその他の医療用装置はまた、該ステント又はその他の医療用装置の種々の特性を向上させるために種々の生体適合性のコーティングを施すことができる。例えば、本発明のステント又はその他の医療用装置は滑らかなコーティングを施すことができる。本発明のステント又はその他の医療用装置はまた、薬物、又は経時的に薬物を放出する薬物含有コーティングを供給され得る。
【0044】
本発明のステント又はその他の医療用装置はまた、該ステント又はその他の医療用装置を体内の所望の部位への送達時にバルーン上に維持するために糖質、又はより詳細には、炭水化物及び/又はゼラチンを供給され得る。ステントを処理するためのその他の適切な化合物としては、生分解性ポリマー及び体内の流体にて溶解可能なポリマーを含む。該ステント及びその他の医療用装置の内側及び/又は外側の一部を、化合物でコーティング又は含浸することができる。送達時に該ステント及びその他の医療用装置をバルーン上に維持するために機械的な保持装置を使用することもできる。この目的のために、本発明のステント及びその他の医療用装置にその他のコーティングを使用することもまた本発明の範囲内にある。
【0045】
コーティングは、一つ以上の非遺伝的な治療剤、遺伝物質、細胞及びそれらの組み合わせ、並びにその他のポリマーコーティングからなる。
非遺伝的な治療剤は、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、PPack(デキストロフェニルアラニン プロリン アルギニン クロロメチルケトン)のような抗血栓形成剤、エノキサプリン(enoxaprin)、アンギオペプチン(angiopeptin)、又は平滑筋細胞の増殖を阻止することが可能なモノクロナール抗体、ヒルジン及びアセチルサリチル酸のような抗増殖剤、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン及びメサラミンのような抗炎症剤、パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポシロン、エンドスタチン、アンギオスタチン及びチミジンキナーゼ阻害剤のような抗新生物/抗増殖/抗縮瞳剤、リドカイン、ブピバカイン及びロピバカインのような麻酔剤、D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体アンタゴニスト、抗トロンビン抗体(anticodies)、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤及びダニ(tick)抗血小板ペプチドのような抗凝血剤、成長因子阻害剤、成長因子受容体アンタゴニスト、転写活性化因子及び翻訳プロモータのような血管細胞成長プロモータ、成長因子阻害剤、成長因子受容体アンタゴニスト、転写レプレッサ、翻訳レプレッサ、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対して指向する抗体、成長因子及び細胞毒素からなる二機能分子並びに抗体及び細胞毒素からなる二機能分子のような血管細胞成長阻害剤、コレステロール低下剤、血管拡張剤、及び内因性の血管作用性メカニズム(endogenous vascoactive mechanisms)と干渉する薬剤を含む。
【0046】
遺伝材料は、欠損又は不完全な内因性分子、酸性及び塩基性の繊維芽細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、表皮成長因子、形質転換成長因子α及びβ、血小板由来内皮増殖因子、血小板由来増殖因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞成長因子及びインスリン様増殖因子、CD阻害剤を含む細胞周期阻害剤、チミジンキナーゼ(TK)及びその他の細胞の増殖及び骨形成蛋白質(bone morphogenic proteins)(BMP群)群であるBMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(OP−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15及びBMP−16を干渉するのに有用な薬剤を置き換えるためのアンチセンスDNA及びRNA、アンチセンスRNA、tRNA又はrRNAのためのDNAを含む。望ましいBMP群は、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6及びBMP−7のいずれかである。これらの二量体蛋白質はホモダイマー、ヘテロダイマー若しくはそれらの組み合わせのみ、又は他の分子と併用したものとして供給される。これに代えて、又はこれに加えて、BMPの上流又は下流効果(upstream or downstream effect)を誘導することが可能な分子が供給され得る。そのような分子は、「ヘッジホッグ」蛋白質又はそれらをコードするDNAのいずれかを含む。
【0047】
細胞は、所望であれば移植部位にて重要な蛋白質を送達するために遺伝子操作されたヒト由来(自系又は異系)又は動物源(異種)からなるものであり得る。該細胞は送達媒体中にて供給され得る。該送達媒体は、細胞の機能及び生存を維持するために必要に応じて処方化され得る。
【0048】
適切なポリマーコーティング材料は、ポリカルボン酸、酢酸セルロース及び硝酸セルロースを含むセルロールポリマー、ゼラチン、ポリビニルビロリドン、架橋化されたポリビニルピロリドン、マレイン酸無水物ポリマーを含むポリ無水物、ポリアミド、ポリビニールアルコール、EVAのようなビニルモノマーのコポリマー、ポリビニルエーテル、ポリビニール芳香族化合物、ポリエチレンオキシド、グリコサミノグリカン、多糖類、ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン及び高分子量ポリエチレンを含むポリアルキレン、ポリテトラフルオロエチレンを含むハロゲン化ポリアルキレン、ポリウレタン、ポリオルトエステル、蛋白質、ポリペプチド、シリコン、シロキサンポリマー、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、吉草酸ポリヒドロキシブチレート及びそれらの混合物並びにコポリマー、ポリウレタン分散体(例えば、BAYHDROL(登録商標))のようなポリマー分散体からのコーティング剤、フィブリン、コラーゲン及びその誘導体、セルロース、デンプン、デキストラン、アルギン酸塩及び誘導体のような多糖類、ヒアルロン酸、スクアレン乳剤を含む。HYDROPLUS(登録商標)(マサチューセッツ州、ナティックに所在のボストン・サイエンティフィック社)として入手可能であり、かつ本明細書中において参照として援用されている米国特許第5091205号明細書に記載されているポリアクリル酸が特に望ましい。ポリ乳酸及びポリカプロラクトンのコポリマーが更に望ましい。
【0049】
本発明のステントはまた、移植のための枠組みとして使用され得る。適切な被覆剤は、ナイロン、コラーゲン、PTFE及び延伸加工されたPTFE、ポリエチレンテレフタレート及びKEVLAR、米国特許第5824046号明細書及び米国特許第5755770号明細書に開示されている材料のいずれか及び生体移植材料を含む。生体移植材料の例は、フィブリン、コラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸を含むがそれらに限定されるものではない。より一般的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリグリコール酸、ポリエステル、ポリアミド、それらの混合物、混和物及びコポリマーのような合成ポリマーを含む任意の周知の移植材料が使用され得る。
【0050】
米国特許第6123712号明細書、米国特許第6120522号明細書及び米国特許第5957930号明細書に開示されているような適切なステント送達装置が本発明のステントを体内の所望の位置に送達するために使用され得る。送達装置の選択は、自己拡張可能なステントを使用するか、又はバルーンにより拡張可能なステントを使用するかに依存する。本発明のステントは、一つ以上のステント保持スリーブと連結して送達され得る。ステント保持スリーブの例は、米国仮出願第60/238178号に開示されている。
【0051】
上述の開示は、例示的な目的にて意図されたものであり、包括的なものではない。この記載は当業者に対して種々の変更例及び代替例を提示するであろう。これらの代替例及び変更例の全ては請求の範囲内に含まれるべきであることが意図されており、該請求の範囲において、「からなる(comprising)」という用語は「含むが、それらに限定されるものではない」ことを意味する。当業者は、本明細書に記載された特殊な実施形態に対してその他の均等物を認識することができ、該均等物はまた請求の範囲に包含されるべきであることが意図されている。
【0052】
更に、従属請求項に例示されている特殊な特徴は、本発明の範囲内においてその他の様式にて互いに結合可能であり、それにより、本発明は従属請求項の特徴のその他の可能な組み合わせを有する他の実施形態を特定するものとしても認識されるべきである。例えば、請求の範囲の公開の目的のために、以下に記載の任意の従属請求項は、多数項従属の様式が法律の範囲内において許容可能な様式である場合、該従属請求項において参照される全ての先行的基礎を有する該請求項より前の全ての請求項からの多数項従属の形態に代替的に書かれたものとして受け入れられるべきである(例えば、請求項1に直接従属する各請求項を該請求項より前の全ての請求項に従属するように代替的に受け入れられるべきである)。多数項従属の様式が制限される法律においては、以下に記載の従属請求項の各々は、以下に示す該従属請求項に挙げられた特定の請求項以外の請求項であって、かつそれより前の先行的基礎を有する請求項への従属性を作出する各単一の従属請求項の様式に代替的に書かれたものとして受け入れられるべきである(例えば、請求項3は代替的に請求項1から従属されるものとして考慮されるべきであり、請求項4は代替的に請求項1又は請求項2に従属するもとして考慮され得るなど)。
【0053】
本開示は例示的な目的にて意図されたものであり、包括的なものではない。この記載は当業者に対して種々の変更例及び代替例を提示するであろう。これらの代替例及び変更例の全ては添付された請求の範囲内に含まれるべきであることが意図されている。当業者は、本明細書に記載された特殊な実施形態に対してその他の均等物を認識することができ、該均等物はまた本明細書に添付された請求の範囲に包含されるべきであることが意図されている。
【0054】
このPCT出願は、2002年3月22日に出願された米国特許出願第10/063125号からの優先権を主張し、該米国特許出願の全ての内容が本明細書において参照として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内の管腔内に移植するための医療用インプラントであって、
前記インプラントは、該インプラント内を貫通する流路を有し、かつ該インプラントはモリブデンTZM合金からなる医療用インプラント。
【請求項2】
ステントの形態である請求項1に記載の医療用インプラント。
【請求項3】
弾性率が少なくとも300GPaである請求項1又は2に記載の医療用インプラント。
【請求項4】
側壁部と複数の開口部とをその内部に有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医療用インプラントであって、前記インプラントはシート又は管から形成され、かつ前記開口部は前記シート又は管から材料を除去することにより形成される、医療用インプラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−110652(P2010−110652A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24170(P2010−24170)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【分割の表示】特願2003−579894(P2003−579894)の分割
【原出願日】平成15年3月18日(2003.3.18)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】