説明

モレキュラーシーブ触媒組成物、その生成及び変換方法における使用

本発明はモレキュラーシーブ触媒粒子を生成する方法を提供し、当該方法で使用できるモレキュラーシーブスラリー、モレキュラーシーブ触媒組成物、及び触媒的炭化水素変換プロセスにおけるそれらの使用を提供する。1の側面において、本発明はモレキュラーシーブ触媒粒子の生成方法を提供し、当該方法は以下の工程を含む:a)液体媒体に含まれるアルミニウム含有無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液を提供する工程;b)アルミニウム含有無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液とモレキュラーシーブ、及び任意でその他の形成剤を混合して、触媒形成スラリーを形成する工程;c)触媒形成スラリーを熟成させて、62−63ppmでシャープな27Al NMRピークを有するオリゴマー体のアルミニウム含有前駆体のアルミニウム原子を前記スラリーにおいてある割合にし、またはアルミニウム原子の存在割合を前記スラリーにおいて増加させる工程;及びd)触媒形成スラリーからモレキュラーシーブ触媒粒子を形成する工程。本発明の方法から得られる触媒組成物は改善された磨耗耐性を有し、特に炭化水素変換プロセスにおいて有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明はモレキュラーシーブ触媒組成物、当該モレキュラーシーブ触媒組成物を生成または形成する方法、及び当該触媒組成物を用いf変換方法に関する。
【0002】
本発明の背景
オレフィンは従来から、接触分解またはスチームクラッキング法により石油原料から生成されている。これらの分解法、特にスチームクラッキングは、種々の炭化水素供給原料からエチレン及び/またはプロピレンなどの軽オレフィンを生成する。エチレン及びプロピレンは、プラスティック及びその他の化合物を生成するために種々の方法において有用で重要な石油化学商品である。
【0003】
石油化学工業ではオキシジェネート、特にアルコールが軽オレフィンに変換可能であることが少し前から知られている。オキシジェネート生成に利用可能な多数の技術が存在し、天然ガス、石油、炭質、例えば石炭、再生プラスティック、都市ゴミまたはその他の有機物質由来の合成ガスの発酵または反応などがある。通常、合成ガスの生成は天然ガス、主にメタンと酸素源との燃焼反応を含み、水素、一酸化炭素及び/または二酸化炭素に変換される。合成ガスの生成プロセスは公知であり、従来の水蒸気改質、自己熱改質、またはこれらの組み合わせを含む。
【0004】
軽オレフィン生成に好ましいアルコールであるメタノールは通常、メタノール反応器中において、不均一系触媒の存在下で水素、一酸化炭素及び/または二酸化炭素との触媒反応から合成される。例えば、1の合成方法において、メタノールは水冷管メタノール反応器中で酸化銅/亜鉛触媒を用いて生成される。好ましいメタノール変換方法は一般的に、メタノール−オレフィン法(methanol−to−olefin process)として言及され、ここでメタノールはモレキュラーシーブの存在下、主にエチレン及び/またはプロピレンに変換される。
【0005】
モレキュラーシーブは異なる大きさの細孔を有する多孔質体であり、例えば、ゼオライトまたはゼオライト型モレキュラーシーブ、炭素及び酸化物などである。石油及び石油化学工業において最も有用な商業用モレキュラーシーブはゼオライトが公知であり、例えばアルミノケイ酸モレキュラーシーブである。ゼオライトは通常、均一な大きさの分子次元細孔を有する、1、2、または3次元結晶性多孔質構造を含み、当該細孔に入ることができる分子を選択的に吸着し、大き過ぎる分子を排除する。
【0006】
供給原料、特にオキシジェネート含有供給原料を1以上のオレフィンに変換する公知のモレキュラーシーブが多種存在する。例えば、米国特許第5,367,100号はメタノールをオレフィンに変換する公知のゼオライト、ZSM−5の使用について記載し;米国特許第4,062,905号は、結晶アルミノケイ酸ゼオライト、例えばゼオライトT、ZK5、エリオナイト及びカバザイト(菱沸石)を用いた、メタノール及びその他のオキシジェネートからエチレン及びプロピレンへの変換について議論しており;米国特許第4,079,095号はメタノールをエチレン及びプロピレンなどの炭化水素生成物に変換するためのZSM−34の使用について記載しており;及び米国特許第4,310,440号は、しばしばALPOとして表される結晶アルミノリン酸を用いたアルコールからの軽オレフィンの生成について記載している。
【0007】
メタノールをオレフィンに変換するための最も有用なモレキュラーシーブの1つはシリコアルミノリン酸モレキュラーシーブである。シリコアルミノリン酸(SAPO)モレキュラーシーブは[SiO]、[AlO]及び[PO]の角共有四面体単位の3次元微細孔結晶骨格構造を含む。SAPO合成については、ここにその全体が引用される米国特許第4,440,871号に記載されている。SAPOは通常、シリコン−、アルミニウム−、及びリン源と少なくとも1のテンプレート剤との反応混合物の熱水結晶化により合成される。SAPOモレキュラーシーブの合成、SAPO触媒の形成、及び炭化水素供給原料からオレフィンへの変換での使用、特に供給原料がメタノールである場合の使用については米国特許第4,499,327号、第4,677,242号、第4,677,243号、第4,873,390号、第5,095,163号、第5,714,662号、及び第6,166,282号に開示されており、これら全てをここにその全体を引用するものとする。
【0008】
通常、モレキュラーシーブは商業的な変換プロセスでの耐久性を改善するためにモレキュラーシーブ触媒組成物に形成される。商業的プロセス内での触媒組成物粒子自身、反応器壁及びその他の反応器系との間での衝突は、微粒子(fine)と呼ばれるより小さい粒子への粒子崩壊を生じる。モレキュラーシーブ触媒組成物粒子の物理的崩壊は磨耗(attrition)として知られる。微粒子は排出流れに含まれて反応器を出、再生システムに問題を来たすことが多い。高摩耗耐性を有する触媒組成物はほとんど微粒子を生じず、変換に必要な触媒組成物もより少なくてすみ、より長寿命であるので動作コストがより低くなる。
【0009】
モレキュラーシーブ触媒組成物は通常、結合剤の存在下、モレキュラーシーブとマトリックス物質とを混合することにより形成される。結合剤はマトリックス物質、通常は粘土をモレキュラーシーブに保持するためのものである。モレキュラーシーブ触媒組成物の形成のための結合剤及びマトリックス物質の使用は多数の商業的プロセスにおいて公知である。モレキュラーシーブ触媒組成物の生成または形成方法が触媒組成物の摩擦に影響することも公知である。
【0010】
触媒組成物の生成方法の例としては以下を含む:米国特許第5,126,298号は、ゼオライトスラリー及びリン源を含む別個のスラリーにおいて2種の異なる粘土粒子を混合し、3未満のpHを有するスラリーの混合物を噴霧乾燥することにより、高摩擦耐性を有するクラッキング触媒を生成する方法について説明しており;米国特許第4,987,110号及び第5,298,153号は、合成シリカ−アルミナ成分を含む粘土マトリックス内に25重量%以上のモレキュラーシーブを分散させた噴霧乾燥した摩擦耐性触媒を用いる、接触分解プロセスに関し;米国特許第5,194,412号及び第5,286,369号はモレキュラーシーブ及び結晶性リン酸アルミニウム結合剤の接触分解触媒の形成を開示し、表面積が20m/g未満及び合計細孔体積が0.1cc/g未満であり;米国特許第4,542,118号はゼオライト及びアルミニウムクロリドロール(chlorhydrol)との微粒子無機酸化物複合体の形成に関し、凝集性バインダーを形成するためにアンモニアと反応させる;米国特許第6,153,552号はSAPOモレキュラーシーブ、無機酸化物ゾル、及び外部からのリン源とのスラリーを乾燥させる、触媒の生成方法について権利を請求するものであり;米国特許第5,110,776号はゼオライトをリン酸塩含有溶液を用いて修飾することによる、ゼオライト含有接触触媒の形成について説明し;米国特許第5,348,643号は、粘土及びリン源を含むゼオライトスラリーをpH3未満で噴霧乾燥することに関する;米国特許第6,440,894号はハロゲンを除去するためにモレキュラーシーブを蒸気処理するための方法について説明;米国特許第5,248,647号はカオリン及びシリカゾルと混合したSAPO−34モレキュラーシーブの噴霧乾燥について説明;米国特許第5,346,875号は、骨格構造の各成分の等電点を無機酸化物ゾルのpHにマッチングさせることにより、接触分解触媒を生成する方法について開示;Maurer、他、Aggregation and Peptization Behavior of Zeolite Crystals in Sols and Suspensions(ゾル及び懸濁液中におけるゼオライト結晶の凝集及びペプチゼーション挙動),Ind.Eng.Chem.Vol.40、第2573〜2579、2001は、等電点またはその付近でのゼオライト凝集について説明;PCT公開公報、WO99/21651はアルミナゾル及びSAPOモレキュラーシーブの混合物を乾燥させることによる触媒作成について説明;PCT公開公報、WO02/05950は未使用のモレキュラーシーブを用いた磨耗粒子を含んだモレキュラーシーブ触媒組成物の生成について説明;WO02/05952号は、結晶性メタロ−アルミノリン酸モレキュラーシーブ及び無機酸化物バインダーと充填剤とのマトリックス物質について開示し、ここでモレキュラーシーブは触媒重量に関して40重量%未満の量で存在し、バインダーとモレキュラーシーブとの好ましい重量比は1に近い;米国特許第4,443,553号は、スラリーの粘度を減少させるために、流動体の接触分解触媒の調製時に用いる水性スラリーへアルミニウムヒドロキシクロリドを添加することについて説明;米国特許第4,987,110号は、粘土、及びシリカゾルとアルミニウムクロリドロキシド(chlorhydroxide)から由来する合成シリカアルミナ成分との混合物を含む接触触媒について開示する。
【0011】
上述のモレキュラーシーブ触媒組成物は炭化水素変換プロセスにおいて有用であるが、より優れた磨耗耐性及び商業的に望ましい操作性を有する改善されたモレキュラーシーブ触媒組成物を有することが望ましい。
【0012】
発明の概要
本発明はモレキュラーシーブ触媒粒子の生成方法、当該方法において使用できるモレキュラーシーブスラリー、モレキュラーシーブ触媒組成物を提供し、及び触媒炭化水素変換プロセス、例えば、1以上のオレフィンの製造、におけるそれらの使用を提供するものである。
【0013】
第一の側面において、本発明はモレキュラーシーブ触媒粒子を生成する方法を提供し、当該方法は以下の工程を含む:a)液体媒体中に含まれた、アルミニウム含有無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液を供給する工程;b)前記アルミニウム含有無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液及びモレキュラーシーブと、さらに任意でその他の形成剤とを混合して、触媒形成スラリーを形成する工程;c)前記触媒形成スラリーを熟成させて、62−63ppmでシャープな27Al NMRピークを有するオリゴマー体のアルミニウム含有前駆体のアルミニウム原子の1の割合が前記スラリー中で生じる、またはその存在割合を前記スラリー中で増加させる工程;及びd)前記触媒形成スラリーからモレキュラーシーブ触媒粒子を形成する工程。
【0014】
好ましくは、熟成は、触媒形成スラリー中のアルミニウム含有前駆体の少なくとも5原子%、より好ましくは10原子%のアルミニウム原子が、分子当たり10〜75アルミニウム原子を有するオリゴマー体となるような温度及び時間で行う。
【0015】
他の好ましい実施態様において、触媒形成スラリー中のアルミニウム含有前駆体のアルミニウム原子の少なくとも6原子%、好ましくは8原子%が62〜63ppmでシャープな27Al NMRピークを有するオリゴマー体である。
【0016】
第2の側面において、本発明はモレキュラーシーブ触媒粒子を作成する方法を提供し、当該方法は以下の工程を含む:a)液体媒体中において無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液を調製する工程;b)無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液とモレキュラーシーブ、及び任意でその他の形成剤とを混合して、触媒形成スラリーを形成する工程;c)無機酸化物の懸濁液を熟成する工程;及びd)触媒形成スラリーからモレキュラーシーブ触媒粒子を形成する工程。ここで、前記熟成は触媒形成スラリーが1.02〜1.25の相対結合効率(Relative Binding Efficiency)を有するような温度及び持続時間で行う。好ましくは、熟成は触媒形成スラリーが1.02〜1.2、好ましくは1.18、より好ましくは1.15の相対結合効率を有するような温度及び時間で行う。
【0017】
第3の側面において、本発明はモレキュラーシーブ触媒粒子を生成する方法を提供し、当該方法は以下の工程を含む:a)液体媒体中に含まれた無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液を調製する工程;b)無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液とモレキュラーシーブ及び任意でその他の形成剤とを混合して、触媒形成スラリーを形成する工程;c)触媒形成スラリーを熟成する工程;及びd)触媒形成スラリーからモレキュラーシーブ触媒粒子を形成する工程。ここで、前記熟成は、工程d)の後に得られたモレキュラーシーブ触媒粒子が1.0未満のARI値、好ましくは0.5未満のARI値を有するような温度及び持続時間で行う。
【0018】
本発明の前述の全3つの側面において、工程c)での熟成は、触媒形成スラリーを温度0℃〜100℃、より好ましくは15℃〜80℃に維持しながら、少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも4時間、さらにより好ましくは少なくとも5時間、及び最も好ましくは少なくとも8時間で行うことが好ましい。また、無機酸化物の溶液または懸濁液は、その他の形成スラリー成分と混合する前に熟成しないことが好ましい。
【0019】
第4の側面において、本発明はモレキュラーシーブ触媒粒子を作成する方法を提供し、当該方法は以下の工程を含む:a)液体媒体中において無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液を提供する工程;b)無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液を熟成する工程;c)無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液とモレキュラーシーブ、及び任意でその他の形成剤とを混合して、触媒形成スラリーを形成する工程;d)触媒形成スラリーからモレキュラーシーブ触媒粒子を形成する工程。ここで、前記熟成は、工程d)の後に得られたモレキュラーシーブ触媒粒子が1.0未満のARI値、好ましくは0.5未満のARI値を有するような温度及び持続時間で行う。
【0020】
本発明のこの第4の側面において、触媒形成スラリーが、工程d)のモレキュラーシーブ触媒粒子を形成する前に、温度15℃〜50℃で、12時間以下、好ましくは8時間以下で維持されることが好ましい。
【0021】
また、本発明の第4の側面において、無機酸化物前駆体溶液または懸濁液の熟成は、好ましくは温度10℃〜80℃に無機酸化物の溶液または懸濁液を維持することにより、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも1.5時間、より好ましくは少なくとも2時間、さらにより好ましくは少なくとも3時間、最も好ましくは少なくとも4時間で行われる。より好ましくは、無機酸化物の溶液または懸濁液は15℃〜70℃、好ましくは20℃〜50℃で維持される。
【0022】
本発明の前述の全4つの側面の好ましい実施態様において、触媒粒子の形成は噴霧乾燥により行われることが好ましく、当該方法が触媒使用前にモレキュラーシーブ触媒粒子を焼成する工程を含むことが好ましい。
【0023】
また、本発明の前述の全4つの側面に関して、好ましい無機酸化物前駆体は酸化アルミニウム前駆体及び/または酸化ジルコニウム前駆体を含み、及びより好ましくは、アルミニウム・クロロハイドレートまたはアルミニウム−ジルコニウムクロロハイドレートである。
【0024】
本発明の前述の全4つの側面の別の実施態様において、好ましい液体媒体は水である。
【0025】
第5の側面において、本発明は以下を含む触媒形成スラリーを提供する:(a)モレキュラーシーブ粒子;(b)酸化アルミニウムの加水分解形態;(c)水;(d)任意で、マトリックス粒子;ここで、少なくとも5原子%、好ましくは少なくとも6原子%、より好ましくは少なくとも10原子%の酸化アルミニウムの加水分解形態が62〜63ppmでシャープな27Al NMRピークを有するオリゴマー体である。好ましくは、触媒形成スラリーはさらに酸化ジルコニウムの加水分解形態を含む。
【0026】
本発明の前述の全5つの側面において、触媒形成スラリーがさらに、マトリックス物質、好ましくは粘土、より好ましくはカオリン粘土を含むことが好ましい。
【0027】
本発明の前述の全5つの側面の他の実施態様において、触媒形成スラリーが、10rpmで、#3スピンドルを有するブルックフィールドLV粘度計を用いて、温度23℃〜30℃の間で測定した場合、1.0〜10.0Pa−sの粘度、好ましくは1.2〜9.5Pa−sの粘度を有することが好ましい。
【0028】
第6の側面において、本発明はシリコアルミノリン酸モレキュラーシーブ;酸化アルミニウム;酸化ジルコニウム;及び粘土を含むモレキュラーシーブ触媒を提供し、ここで当該触媒は1.0未満、好ましくは0.7未満、より好ましくは0.5未満、最も好ましくは0.2未満のARIを有する。好ましくは、触媒はアルミニウム対ジルコニウムの原子比が0.1〜20、好ましくは2.0〜15、より好ましくは3.0〜10.0である。
【0029】
本発明はまた、炭化水素供給原料の変換においての本発明の触媒の使用に関し、または本発明の方法により作られた触媒の使用に関する。
【0030】
本発明の全ての側面において、モレキュラーシーブは好ましくは、メタロアルミノリン酸モレキュラーシーブである。
【0031】
発明の詳細な説明
序文
本発明は、モレキュラーシーブ触媒組成物、その作成、及び供給原料から1以上のオレフィンへの変換の際のそれらの使用に関する。
【0032】
本発明のモレキュラーシーブ触媒組成物は、以下触媒形成スラリーとして言及するものから形成される。触媒形成スラリーは、無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液、好ましくは酸化アルミニウムまたはアルミニウム−ジルコニウム酸化物前駆体とモレキュラーシーブとを、及び任意で少なくともその他の形成剤の存在下で、混合することにより調製される。次に当該スラリーは形成工程を経て、成形品を生成し、例えば噴霧乾燥を経る。焼成後、モレキュラーシーブ触媒粒子が得られ、当該モレキュラーシーブ触媒粒子は高磨耗耐性、すなわち、物理的崩壊に対する高い耐性を有する。
【0033】
驚くべきことに、触媒粒子形成前に、触媒形成スラリーを穏やかな熱処理(熟成)に供した場合、触媒形成スラリーを触媒粒子形成前に熟成しない場合より、モレキュラーシーブ触媒粒子が磨耗耐性を有するようになることがわかった。また、驚くべきことに、触媒形成スラリーの形成前に、無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液を穏やかな熱処理(熟成)に供した場合、無機酸化物の溶液または懸濁液を熟成しない場合よりも、モレキュラーシーブ触媒粒子はより磨耗耐性を有するようになることがわかった。さらに、触媒形成スラリー形成前に、無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液を穏やかな熱処理(熟成)に供した場合、最も高い磨耗耐性を有する触媒粒子を得るために触媒形成スラリーの熟成は避けるべきであることがわかった。
【0034】
いかなる理論にも縛られるものではないが、無機酸化物の溶液または懸濁液の適当な熟成または触媒形成スラリーの適当な熟成を行った場合、触媒形成スラリー中に反応性イオン種の理想的な分布が生じるものと考えられ、これは触媒形成工程時の無機酸化物前駆体の結合効率を決定するものと考えられる。例えば、酸化アルミニウム前駆体及びアルミニウム−ジルコニウム酸化物前駆体と共に、アルミニウムイオン、ジルコニウムイオン、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムの種々の水和物が水溶液または懸濁液中に存在するものと考えられる。種々の形態のアルミニウム化合物が液相中に存在し、例えば分子当たりアルミニウム原子を2〜数百個含むアルミニウムのオリゴマー体が存在する。種々の形態のジルコニウム化合物が液相中に存在し、例えば分子当たりジルコニウム原子を2〜数百個含むジルコニウムのオリゴマー体が存在する。オリゴマー分布は種々の因子に依存し、限定されないが、例えば、酸化アルミニウム前駆体濃度、温度、pH、混合、処理歴、及びイオン強度に依存する。
【0035】
本発明は、触媒形成工程中、触媒形成スラリーにおいて最適な反応性イオン種の分布が得られる方法を提供する。反応性イオン種、好ましくは反応性アルミニウム種の分布は、触媒形成スラリーが、本発明に従って熟成しない場合よりも高い磨耗耐性を有するモレキュラーシーブ触媒粒子を生じる点において最適なものである。
【0036】
触媒形成スラリー
本発明の関連において、上述の合成モレキュラーシーブは商業的な触媒工程において用いられる。この目的のために、これらはモレキュラーシーブ触媒粒子に生成または形成される。モレキュラーシーブ触媒形成は触媒形成スラリーの生成を含み、次に触媒粒子に形成される。本発明の関連において、触媒粒子に形成されるモレキュラーシーブ含有スラリーは触媒形成スラリーとして言及する。
【0037】
触媒形成スラリーは、合成モレキュラーシーブと無機酸化物前駆体、及び任意でマトリックス物質及び/またはその他の形成剤とを混合することにより作られる。1の実施態様において、触媒形成スラリーは無機酸化物前駆体の水溶液または懸濁液とモレキュラーシーブとを混合しながら組み合わせることにより形成される。
【0038】
好ましくは、モレキュラーシーブは完全な乾燥状態では用いず、例えば、モレキュラーシーブ合成後に得られるろ過ケーキであり、ウェットろ過ケーキとして言及されることが多い。他の実施態様において、あまり好ましくはないが、モレキュラーシーブは完全に乾燥しており、無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液と混合する前に、任意で焼成される。
【0039】
PCT公開公報、WO02/05950、米国特許第6,605,749号、第6,541,415号、第6,509,290号及び米国出願公開番号第2003/0135079号に記載されているように、触媒形成スラリーは非焼成モレキュラーシーブ含有触媒粒子も含むことができ、形成プロセスにおいて再利用され、これら全ての文献をここに引用する。
【0040】
本発明に従う有用な無機酸化物前駆体が多く存在し、これらの非限定的な例としては、種々のタイプの水酸化アルミナ、シリカ、及び/またはその他の無機酸化物ゾルである。好ましい無機酸化物前駆体の例としては、アルミナ前駆体であり、より好ましくはアルミニウムクロロハイドレート及びアルミニウム−ジルコニウムクロロハイドレートである。本発明に従って用いられる無機酸化物前駆体はモレキュラーシーブ触媒粒子の製造プロセス時に無機酸化物に変換される。触媒製造プロセス時に、無機酸化物前駆体はのりのように振舞い、特に乾燥及び/または焼成後に、合成モレキュラーシーブとその他の任意の触媒形成物質とを一緒に結合させる。加熱により、無機酸化物前駆体は無機酸化物マトリックス成分に変換される。例えば、熱処理によりアルミナゾル(前駆体)は酸化アルミニウムマトリックスに変換し、混合ジルコニア−アルミナゾル(前駆体)は混合アルミニウム−ジルコニウム酸化物に変換する。
【0041】
また、アルミニウムクロロハイドレートは、アルミニウムクロリドロールまたはアルミニウムヒドロキシクロリド、塩化物対イオンを含む水酸化アルミニウムベースゾルとして言及され、一般式Al(OH)Cl・x(HO)を有し、式中、mは1〜20、nは1〜8、oは5〜40、pは2〜15、及びxは0〜30である。アルミニウムクロロハイドレートは通常、制御条件下、塩酸中に金属アルミニウムまたは水酸化アルミニウムを溶解させることにより調製される。アルミニウムクロロハイドレートは固体製品など、種々の形態で入手可能であり、例えば、化学式Al(OH)Cl・n(HO)の固体、または既製品としての水溶液である。本発明に従って使用できる有用な酸化アルミニウム前駆体のその他の非限定的な例としては、アルミニウム6水和物、アルミニウムペンタクロロハイドレート(Al(OH)Cl)、アルミニウムテトラクロロハイドレート(Al(OH)Cl)、アルミニウムトリクロロハイドレート(Al(OH)Cl)、アルミニウムジクロロハイドレート(Al(OH)Cl)、アルミニウムセスキクロロハイドレート(Al(OH)4.5Cl1.5)が挙げられる。
【0042】
水溶液中において、アルミニウムクロロハイドレートは、pH、温度、処理歴、及びその他のイオン種の存在またはその他のイオン種の濃度などいくつかの因子に依存して、単量体、二量体、オリゴマー及びポリマーのアルミニウム種を形成する。
【0043】
本発明に従って有用な結合剤のその他の非限定的な例としては、アルミニウム−ジルコニウム酸化物の前駆体である。このような前駆体は、限定されないが、アルミニウムジルコニウムクロロハイドレートを含み、例えば、アルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムクロリドレックス(chlorhydrex)、アルミニウムジルコニウムクロリドレックスグリシン錯体、例えば、アルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレックスグリシン錯体、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレックスグリシン錯体、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレックスグリシン錯体、及びアルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレックスグリシン錯体が挙げられる。グリシンがない場合、これらの物質は水溶液中でゲルを形成する。Reheis Chemicals社、バークリーハイツ(Berkeley Heights)、ニュージャージ、は多種多様のアルミニウムジルコニウムクロロハイドレートを製造している。これらの物質は、塩化ジルコニル(ZrOCl)、ジルコニルヒドロキシクロリド(ZrO(OH)Cl)、ジルコニウムヒドロキシカーボネートペースト(ZrO(OH)(CO0.5)などの種々のジルコニウム出発物質及びこれらのジルコニウム出発物質の組み合わせと、水酸化アルミニウム溶液、例えばアルミニウムクロロハイドレート、アルミニウムヘキサハイドレート、アルミニウムセスキクロロハイドレートの溶液またはアルミニウムジクロロハイドレート溶液、またはこれらのアルミニウム種溶液の1以上を組み合わせることにより得られる溶液とから調製できる。アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレートは制汗剤及びデオドラント化粧品において用いられる(Joe Parekh,“APD アルミニウムクロロハイドレート”、Sope,Perfumery&Cosmetics,2001年7月;Allan H.Rosenberg and John J.Fitzgerald,“Chemistry of Aluminum−Zirconium−Glycine Complexes(アルミニウム−ジルコニウム
−グリシン錯体の化学)”,Antiperspirants and Deodorants(制汗剤及びデオドラント)、第2版、改訂増補版、Karl Laden,Marcel Dekker、ニューヨーク、1999、第137−168頁)。Reheis社からの製品としては、REACH AZP902、REACH AZP908、REACH AZP855、REACH AZZ902、REACH AZZ855、及びREACH AZN855が挙げられる。
【0044】
濃縮ジルコニウム溶液において、カチオン性多核Zr4+錯体、例えば、Zr(OH)8+、Zr(OH)7+、Zr(OH)8+、は単核加水分解種よりもむしろ、pH範囲0〜3においては優勢である。
【0045】
特定の理論に縛られることは望まないが、アルミニウムジルコニウムクロロハイドレート溶液中のジルコニウム錯体の存在は、アルミニウム二量体及び単量体種の形成と合わせて、高分子量アルミニウム種の解重合を生じるものと考えられる。アルミニウム種の酸触媒解重合も種々のジルコニウム種のさらなる重合により達成される。
【0046】
触媒形成スラリー中の無機酸化物前駆体として用いることができるアルミナ前駆体のその他の非限定的な例としては、以下の1以上を含む:アルミニウムオキシ水酸化物、γ−アルミナ、ベーマイト、ダイアスポア、及び伝統的アルミナ、例えば、β−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、ε−アルミナ、κ−アルミナ、及びρ−アルミナ、アルミニウム三水酸化物、例えば、ギブス石、ベイヤライト(bayerite)、ノルドストランダイト、doyelite、及びこれらの混合物。
【0047】
1の実施態様において、無機酸化物前駆体溶液または懸濁液、好ましくはアルミナまたは混合アルミニウム−ジルコニウム酸化物前駆体溶液は、水中で粉末状の無機酸化物前駆体から触媒形成される直前に調製される。このような無機酸化物前駆体溶液は以下、“新しい”溶液または“非熟成”溶液として言及する。1の実施態様において、新しい無機酸化物前駆体溶液は、その他の触媒形成スラリー成分との混合前には熟成されない。すなわち、無機酸化物前駆体溶液は、触媒形成に用いられるその他の成分との混合前に、温度15℃〜50℃で、8時間以下、より好ましくは6時間以下、さらにより好ましくは4時間以下、及び最も好ましくは2時間以下の時間、維持される。
【0048】
新しい無機酸化物溶液は触媒形成スラリーを形成するためにモレキュラーシーブと混合し、次にモレキュラーシーブ触媒粒子形成前に、熟成可能である。この実施態様において、熟成は触媒形成スラリーを穏やかな熱処理に供することを意味し、振とう、及び/または攪拌、及び/または混合してもしなくてもよい。熱処理の継続期間は、十分な速度で反応性イオン種の生成が、触媒粒子において最高の磨耗耐性特性が可能となるような十分な量で可能となるような十分な時間である。
【0049】
この結果を達成可能とするための継続時間及び温度の条件は以下を含む:触媒形成スラリーを温度0℃〜100℃に維持し、好ましくは10℃〜90℃、より好ましくは15℃〜80℃、最も好ましくは20℃〜70℃に維持する。この穏やかな熱処理の継続時間は、無機酸化物前駆体の種類、無機前駆体の濃度及び温度など、種々の因子に依存して様々である。温度が高ければ高いほど、無機酸化物前駆体の濃度が低ければ低いほど、本発明に従う触媒形成スラリーの適当なレベルの熟成を達成するために必要な時間は少なくなる。熟成の時間は通常、少なくとも2時間、好ましくは少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも5時間、さらにより好ましくは少なくとも8時間、及び最も好ましくは少なくとも10時間である。好ましい実施態様において、触媒形成スラリーの熟成は150時間以下で行われ、好ましくは120時間以下、最も好ましくは100時間以下である。熟成が温度30℃〜50℃で行われる場合、触媒形成の熟成は好ましくは4時間〜80時間の間で行われ、好ましくは5時間〜75時間、より好ましくは6時間〜50時間、最も好ましくは7時間〜26時間で行われる。
【0050】
別の実施態様において、無機酸化物前駆体水溶液(または懸濁液)は第1のモレキュラーシーブスラリーと混合するかなり前に調製する。すなわち、アルミニウムクロロハイドレート溶液は第1のモレキュラーシーブスラリーと混合する前に熟成可能である。これは、例えば、無機酸化物前駆体の市販溶液を用いる場合である。この実施態様において、無機酸化物前駆体水溶液の熟成は、無機酸化物前駆体の溶液と触媒形成に用いられるその他の成分とを混合する前に、無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液を振とう、及び/または攪拌、及び/または混合しながら、またはしないで、穏やかな熱処理に供することを意味する。この穏やかな熱処理の継続期間は、無機酸化物前駆体が触媒形成スラリー中のモレキュラーシーブと混合された場合、十分な速度及び十分な量で反応性イオン種の生成が可能となるために十分な時間である。熟成は、触媒粒子が最高の磨耗耐性特性を有することが可能になるような十分な温度及び時間で行われるべきである。
【0051】
この結果を達成可能とするための継続時間及び温度の条件は以下を含む:無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液を温度0℃〜100℃に維持し、好ましくは10℃〜90℃、より好ましくは15℃〜80℃、最も好ましくは20℃〜70℃に維持する。この穏やかな熱処理の継続時間は、無機酸化物前駆体の種類、無機前駆体の濃度及び温度など、種々の因子に依存して様々である。温度が高ければ高いほど、無機酸化物前駆体の濃度が低ければ低いほど、本発明に従う無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液の適当なレベルの熟成を達成するために必要な時間は少なくなる。熟成の時間は通常、少なくとも2時間、好ましくは少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも5時間、及び最も好ましくは少なくとも6時間である。好ましい実施態様において、無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液の熟成は温度30℃〜90℃、4〜24時間の間で行われ、好ましくは温度30℃〜55℃、5時間〜20時間の間で行われる。
【0052】
無機酸化物前駆体の水溶液または懸濁液が触媒形成スラリーの形成前に熟成された場合、当該触媒形成スラリーはモレキュラーシーブ触媒粒子形成前に熟成しないことが好ましい。
【0053】
好ましい実施態様において、無機酸化物前駆体溶液または懸濁液は、その他の触媒形成成分との混合前に無機酸化物溶液または懸濁液が熟成されるかどうかに関わらず、1重量%〜80重量%、好ましくは2重量%〜75重量%、より好ましくは4重量%〜35重量%の無機酸化物前駆体を含む。
【0054】
無機酸化物前駆体に加えて、本発明の触媒形成スラリー少なくとも1のモレキュラーシーブを含み、任意でマトリックス物質またはその他の形成剤を含む。
【0055】
本発明の触媒形成工程に用いることができるモレキュラーシーブは多種多様な組成物及び構造的特徴の範囲内において様々である。
【0056】
モレキュラーシーブは様々な化学的及び物理的、構造、特徴を有する。モレキュラーシーブは、ゼオライト命名法のIUPAC委員会のルールに従って、国際ゼオライト学会の構造委員会により分類されている。構造コードは、骨格を構成する四面体配位原子の連結、トポロジーについて説明し、これら物質の特定の性質の抽象化を図っている。骨格コードゼオライト及び構造が確立されたゼオライト型モレキュラーシーブは三文字コードが割当てられ、ここにその全体を引用する、Atlas of Zeolite Framework Types(ゼオライト構造コードのアトラス)、第5版、Elsevier,ロンドン、イングランド(2001)に説明されている。
【0057】
モレキュラーシーブ物質は角共有のTO四面体3次元骨格構造を有し、ここでTは任意の四面体配位性カチオンである。これらのモレキュラーシーブは一般に、細孔を定義する環の大きさに関連して記載され、当該大きさは環内のT原子の数に基づく。その他の構造コードの特性は、ケージを形成する環配置、存在する場合、チャネルの容積、及びケージ間の空隙が挙げられる。van Bekkum、他、Introduction to Zeolite Science and Practice,Second Completely Revised and Expanded Edition(ゼオライト科学及び実務の導入、全改訂増補第2版)、第137巻、第1〜67頁、Elsevier Science、B.V.,アムステルダム、オランダ(2001)。
【0058】
小、中、及び大細孔モレキュラーシーブは4員環〜12員環以上の骨格タイプを有する。好ましい実施態様において、ゼオライトモレキュラーシーブは8−、10−、または12−員環構造またはそれ以上を有し、平均細孔サイズは約3Å〜15Åである。最も好ましい実施態様において、本発明のモレキュラーシーブ、好ましくはシリコアルミノリン酸モレキュラーシーブは8員環で平均細孔サイズが約5Å未満であり、好ましくは3Å〜約5Åの範囲であり、より好ましくは3Å〜約4.5Å、及び最も好ましくは3.5Å〜約4.2Åである。モレキュラーシーブ、特にゼオライト系及びゼオライト型モレキュラーシーブは好ましくは1、好ましくは2以上の角共有の[TO]四面体単位の分子骨格構造を有し、より好ましくは2以上の[SiO]、[AlO]及び/または[PO]四面体単位、及び最も好ましくは[SiO]、[AlO]及び[PO]四面体単位を有する。
【0059】
使用可能な角共有の[SiO]及び[AlO]四面体単位から作られる分子骨格構造を有するモレキュラーシーブの非限定的な例としては、小細孔モレキュラーシーブ、AEI、AFT、APC、ATN、ATT、ATV、AWW、BIK、CAS、CHA、CHI、DAC、DDR、EDI、ERI、GOO、KFI、LEV、LOV、LTA、MON、PAU、PHI、RHO、ROG、THO、及びこれらの置換体;中細孔モレキュラーシーブ、AFO、AEL、EUO、HEU、FER、MEL、MFL、MTW、MTT、TON、及びこれらの置換体;及び大細孔モレキュラーシーブ、EMT、FAU、及びこれらの置換体が挙げられる。その他のモレキュラーシーブは、ANA、BEA、CFI、CLO、DON、GIS、LTL、MER、MOR、MWW及びSODを含む。特にオキシジェネート含有供給原料をオレフィンに変換するための、好ましいモレキュラーシーブの非限定的な例としては、AEL、AFY、BEA、CHA、EDI、FAU、FER、GIS、LTA、LTL、MER、MFI、MOR、MTT、MWW、TAM及びTONがある。1の好ましい実施態様において、本発明のモレキュラーシーブはAEIトポロジーまたはCHAトポロジー、またはこれらの組み合わせを有し、最も好ましくはCHAトポロジーである。
【0060】
本発明の触媒形成工程で使用可能な、角共有の[AlO]及び[PO]、任意で[SiO]を含む四面体単位から作られる分子骨格構造を有するモレキュラーシーブの非限定的な例としては、多数の文献に記載されているものを含み、例えば、米国特許第4,567,029号(MeAPO、式中MeはMg、Mn、Zn、またはCo)、米国特許第4,440,871号(SAPO)、欧州特許出願EP−A−0 159 624(ELAPSO、式中ElはAs、Be、B、Cr、Co、Ga、Ge、Fe、Li、Mg、Mn、Ti、またはZn)、米国特許第4,554,143号(FeAPO)、米国特許第4,822,478号、第4,683,217号、第4,744,855号(FeAPSO)、EP−A−0 158 975、及び米国特許第4,935,216号(ZnAPSO、EP−A−0 161 489(CoAPSO)、EP−A−0 158 976(ELAPO、式中ELはCo、Fe、Mg、Mn、TiまたはZn)、米国特許第4,310,440号(AlPO)、EP−A−0 158 350(SENAPSO)、米国特許第4,973,460(LiAPSO)、米国特許第4,789,535号(LiAPO)、米国特許第4,992,250号(GeAPSO)、米国特許第4,888,167号(GeAPO)、米国特許第5,057,295号(BAPSO)、米国特許第4,738,837号(CrAPSO)、米国特許第4,759,919号及び第4,851,106号(CrAPO)、米国特許第4,758,419号、第4,882,038号、第5,434,326号及び第5,478,787号(MgAPSO)、米国特許第4,554,143号(FeAPO)、米国特許第4,894,213号(AsAPSO)、米国特許第4,913,888号(AsAPO)、米国特許第4,686,092号、第4,846,956号、及び第4,793,833号(MnAPSO)、米国特許第5,345,011号及び第6,156,931号(MnAPO)、米国特許第4,737,353号(BeAPSO)、米国特許第4,940,570号(BeAPO)、米国特許第4,801,309号、第4,684,617号及び第4,880,520号(TiAPSO)、米国特許第4,500,651号、第4,551,236号及び第4,605,492号(TiAPO)、米国特許第4,824,554号、第4,744,970号(CoAPSO)、米国特許第4,735,806号(GaAPSO)、EP−A−0 293 937(QAPSO、式中Qは酸化骨格単位[QO])、及び米国特許第4,567,029号、第4,686,093号、第4,781,814号、第4,793,984号、第4,801,364号、第4,853,197号、第4,917,876号、第4,952,384号、第4,956,164号、第4,956,165号、第4,973,785号、第5,241,093号、第5,493,066号及び第5,675,050号であり、これら全てをここに引用するものとする。その他のモレキュラーシーブは、ここに全体を引用するR.Szostak,Handbook of Molecular Sieves(モレキュラーシーブハンドブック)、Van Nostrand Reinhold、ニューヨーク、ニューヨーク州(1992)に記載されている。
【0061】
より好ましいシリコン、アルミニウム及び/またはリン含有モレキュラーシーブ、及びアルミニウム、リン、及び任意でシリコン含有モレキュラーシーブは、アルミノリン酸(ALPO)モレキュラーシーブ及びシリコアルミノリン酸(SAPO)モレキュラーシーブ及び金属置換ALPO及びSAPOモレキュラーシーブを含む。最も好ましいモレキュラーシーブはSAPOモレキュラーシーブ及び金属置換SAPOモレキュラーシーブである。1の実施態様において、金属は、元素周期表の第IA族のアルカリ金属、周期表第IIA族のアルカリ土類金属、第IIIBの希土類金属、例えばランタニド、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム;及び周期表、第IVB、VB、VIB、VIIB、VIIIB、及びIBの遷移金属、スカンジウム族またはイットリウム族、またはこれら金属種の任意の混合物である。1の好ましい実施態様において、金属は、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、Ge、Mg、Mn、Ni、Sn、Ti、Zn、及びZr、及びこれらの混合物からなる群より選択される。他の好ましい実施態様において、上述のこれらの金属原子は、例えば[MeO]など、四面体単位を通してモレキュラーシーブの骨格構造内に挿入され、金属置換基の原子価状態に応じて正味荷電を運ぶ。例えば、1の実施態様において、金属置換基が原子価状態+2、+3、+4、+5、または+6を有する場合、四面体単位の正味電荷は−2から+2の間である。
【0062】
1の実施態様において、上述の多数の米国特許において記載されているモレキュラーシーブは無水物ベースで以下の経験式により表される:
mR:(MAl)O
式中、Rは少なくとも1のテンプレート剤を表し、好ましくは有機テンプレート剤であり;mは(MAl)O1モル当たりのRのモル数であり、mは0〜1の値を有し、好ましくは0〜0.5、及び最も好ましくは0〜0.3であり;x、y及びzは酸化四面体としてのAl、P及びMのモル比率を表し、ここでMは元素の周期表のIA、IIA、IB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIIIB族及びランタニド族からなる群より選択される金属であり、好ましくはMはCo、Cr、Cu、Fe、Ga、Ge、Mg、Mn、Ni、Sn、Ti、Zn及びZrからなる群より選択される1つである。1の実施態様において、mは0.2以上であり、x、y、及びzは0.01以上である。他の実施態様において、mは0.1より大きく約1以下であり、xは0より大きく約0.25以下、yは0.4〜0.5の範囲であり、及びzは0.25〜0.5の範囲であり、より好ましくはmは0.15〜0.7、xは0.01〜0.2、yは0.4〜0.5、及びzは0.3〜0.5である。
【0063】
望ましくは、本発明のモレキュラーシーブはSi及びAlを含むメタロアルミノリン酸であり、Si/Al原子比は約0.5以下、好ましくは約0.3以下、より好ましくは約0.2以下、さらにより好ましくは約0.15以下、及び最も好ましくは約0.1以下である。好ましくは、メタロアルミノリン酸モレキュラーシーブはSi及びAlを原子比少なくとも約0.005、より好ましくは少なくとも約0.01で含む。
【0064】
本発明のSAPO及びALPOモレキュラーシーブの非限定的な例としては、SAPO−5、SAPO−8、SAPO−11、SAPO−16、SAPO−17、SAPO−18、SAPO−20、SAPO−31、SAPO−34、SAPO−35、SAPO−36、SAPO−37、SAPO−40、SAPO−41、SAPO−42、SAPO−44(米国特許第6,162,415号)、SAPO−47、SAPO−56、ALPO−5、ALPO−11、ALPO−18、ALPO−31、ALPO−34、ALPO−36、ALPO−37、ALPO−46の1つまたは組み合わせ及びこれらの金属含有モレキュラーシーブを含む。より好ましいモレキュラーシーブはSAPO−18、SAPO−34、SAPO−35、SAPO−44、SAPO−56、ALPO−18及びALPO−34の1つまたは組み合わせを含み、より好ましくはSAPO−18、SAPO−34、ALPO−34及びALPO−18、及びこれらの金属含有モレキュラーシーブの1つまたは組み合わせを含み、及び最も好ましくはSAPO−34及びALPO−18、及びこれらの金属含有モレキュラーシーブの1つまたは組み合わせを含む。
【0065】
1の実施態様において、モレキュラーシーブは1のモレキュラーシーブ組成物中に、2以上の別個の相の結晶構造を有する連晶(intergrowth)物質である。AEI/CHA連晶については、2001年8月7日に出願された米国特許出願番号第09/924,016号、及び1998年4月16日に公開されたPCT WO98/15496に記載されており、いずれもその全体をここに引用する。例えば、SAPO−18、ALPO−18及びRUW−18はAEI骨格型を有し、SAPO−34はCHA骨格型を有する。他の実施態様において、モレキュラーシーブはAEI及びCHA骨格型の少なくとも1の連晶相を含む。
【0066】
任意で、触媒形成スラリーは1以上のマトリックス物質も含む。マトリックス物質は一般的に全体的な触媒コストを減らすために効果的であり、例えば再生中、触媒組成物から熱の遮蔽を助ける熱シンクとして振舞い、触媒組成物の密度を高め、粉砕力及び磨耗耐性など触媒強度を増加させ、特定の工程において変換速度を制御する。
【0067】
マトリックス物質の非限定的な例としては、以下の1以上を含む:希土類金属、非活性、金属酸化物、例えばチタニア、ジルコニア、マグネシア、トリア、ベリリア、石英、シリカまたはゾル、及びこれらの混合物、例えばシリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニア、シリカ−アルミナ及びシリカ−アルミナ−トリア。1の実施態様において、マトリックス物質はモンモリロナイト及びカオリン属などからの自然粘土であり、最も好ましくはマトリックス物質はカオリンである。カオリンはポンプ注入可能な高固体含量スラリーを形成することがわかっており、あまり新しくない(low fresh)表面積を有し、板状構造であるため容易に密に詰められる。マトリックス物質、最も好ましくはカオリンの好ましい平均粒子サイズは約0.05μm〜約0.6μmであり、d90粒子サイズは約1μmである。
【0068】
触媒形成スラリー中の無機酸化物前駆体(無機酸化物として表す場合)の量は、無機酸化物前駆体(無機酸化物として表す場合)、モレキュラーシーブ及びマトリックス物質の全重量に基づいて(液体を除く)、約2重量%〜約35重量%であり、好ましくは約3重量%〜約28重量%、及びより好ましくは約4重量%〜約24重量%である。
【0069】
触媒形成スラリー中に存在できるその他の任意の形成剤の非限定的な例としては、界面活性剤を含み、例えば、Calloway3330(Vulcan Chemicals Inc.,モンゴメリ、アラバマ州)またはその他の水溶性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン(provilidone)(PVP)−K90(BASF America、Rockway,ニュージャージ)である。
【0070】
全てのモレキュラーシーブ触媒形成工程の段階において、実質的に均一な混合物を生成するために、混合及び好ましくは激しい混合が必要である。1の実施態様において、スラリーは所望のスラリーの質、サイズ、及び/または固体粒子形態の触媒形成スラリー成分のサイズ分布を生じるために十分な時間、高せん断に供する。スラリーを製粉するために適した手段としては、コロイドミル、インライン混合器等を含む。
【0071】
本発明は水中のモレキュラーシーブスラリーを用いて説明されているが、その他の液体も水の代わりに部分的または全体的に用いることができる。適当な液体の非限定的な例としては、水、アルコール、ケトン、アルデヒド、及び/またはエステルの1つまたは組み合わせを含む。最も好ましい液体は水である。
【0072】
本発明の触媒粒子を形成する前の触媒形成スラリーの質を確保するため、スラリーのpH、表面積、固体含量及び密度も例えば、Cole Palmer pHメーター、粉体工学ジェミニ(Gemini)9375表面積機器(Micrometrics Instrument社、Norcross、ジョージア)、固体含量決定のためのCEM MAS700マイクロウェーブ・マッフルファーネス(CEM社、Mathews、ノースキャロライナ)及び正確に測定できる任意の標準量測定装置を用いて、それぞれ観測することが好ましい。
【0073】
本発明の触媒形成工程中の熟成により、比較的高い粘度を有する触媒形成スラリーが得られる。好ましくは、触媒粒子形成前の触媒形成スラリーは粘度が、温度23〜30℃で測定した場合、#3スピンドルを有するブルックフィールド(Brookfield)LV−DVE粘度計を用いて10rpmで測定して、1,000センチポアズ〜10,000センチポアズ(1.0〜10Pa−s)であり、より好ましくは1,200センチポアズ〜9,500センチポアズ(1.2〜9.5Pa−s)である。
【0074】
1の実施態様において、個々の成分、モレキュラーシーブ、無機酸化物前駆体、マトリックス物質、及びその他の成分の添加順序は特定の順番で行う。添加順序は、種々の粒子の表面が、これらがモレキュラーシーブ、結合剤またはマトリックス物質であるとに関わらず、反対の電荷、負及び正、または異なる電荷密度を有する場合に最も重要である。原則として、微粉化が完了した後、必要であれば、最後の工程は対立電荷粒子の添加及び混合である。1の好ましい実施態様において、単位質量当たりより高い電荷密度を有するモレキュラーシーブ、結合剤またはマトリックス物質から選択される成分を、単位質量当たりより低い電荷密度を有する成分に添加することが最も好ましい。
【0075】
モレキュラーシーブ触媒粒子
触媒形成スラリーは形成ユニットを用いて触媒粒子に形成される。好ましい実施態様において、形成ユニットは噴霧乾燥器である。通常、形成ユニットは触媒形成スラリーから液体をほとんど蒸発させるのに十分な温度で維持され、最終的なモレキュラーシーブ触媒粒子を形成する。得られた触媒組成物はこのように形成された場合、微小球の形態をとる。
【0076】
形成ユニットとして噴霧乾燥器を用いた場合、通常、触媒形成スラリーは乾燥気体と一緒に、平均入口温度100℃〜550℃、及び混合した出口温度50℃〜約225℃で噴霧乾燥容積に供給される。1の実施態様において、噴霧乾燥形態の触媒組成物の平均直径は約10μm〜約300μm、好ましくは約20μm〜約250μm、より好ましくは約30μm〜約150μm、及び最も好ましくは約40μm〜約120μm。
【0077】
噴霧乾燥時、スラリーはノズルを通り、スラリーから小滴に分配され、これはエアロゾルスプレーが乾燥室に入るのに似ている。微粒化はスラリーを単一ノズルまたは複数ノズルに圧力低下通すことにより、圧力低下100psig〜2000psig(690kPag〜13790kPag)で達成される。他の実施態様において、スラリーは単一ノズルまたは複数ノズルを通して、空気、燃焼排ガス、またはその他の適当な気体などの微粒化流動体と一緒に、圧力低下1psig〜150psig(6.9kPag〜1034kPag)で供給される。
【0078】
さらに他の実施態様において、上述のスラリーはスラリーを小滴に分散させるスピニングホイールの周辺に導かれ、そのサイズはスラリー粘度、表面張力、流速、圧力、及びスラリー温度、ノズルの形及び寸法、またはホイールの回転速度などの多くの因子により制御される。これらの小滴は次に、噴霧乾燥機を通過する空気の並流または逆流中で乾燥され、乾燥した、または実質的に乾燥したモレキュラーシーブ触媒組成物を形成し、より具体的には微小球状のモレキュラーシーブ触媒組成物を形成する。
【0079】
通常、微小球の大きさはスラリーの固体含量によりある程度制御される。しかしながら、触媒組成物の大きさ及びその球状特性の制御はスラリー供給物特性及び微粒化の条件を変化させることによっても制御できる。
【0080】
モレキュラーシーブ触媒組成物を形成するその他の方法は、2000年7月17日に出願された米国特許出願番号第09/617,714(再利用モレキュラーシーブ触媒組成物を用いる噴霧乾燥)に記載されており、ここに引用される。
【0081】
他の実施態様において、形成されたモレキュラーシーブ触媒組成物は、モレキュラーシーブ触媒組成物の全重量に基づいて、約1重量%〜約99重量%、好ましくは約10重量%〜約90重量%、より好ましくは約10重量%〜約80重量%、さらにより好ましくは約20重量%〜約70重量%、及び最も好ましくは約20重量%〜約60重量%のモレキュラーシーブを含む。
【0082】
モレキュラーシーブ触媒組成物を乾燥または実質的に乾燥状態で形成した場合、形成した触媒組成物をさらに固め、及び/または活性化させるために、焼成などの熱処理を高温で通常は行う。従来の焼成環境は少量の水蒸気を通常は含んだ空気である。一般的な焼成温度は約400℃〜約1,000℃の範囲であり、好ましくは約500℃〜約800℃、及び最も好ましくは約550℃〜約700℃であり、好ましくは空気、窒素、ヘリウム、燃焼排ガス(酸素が不足した燃焼生成物)など、またはこれらの任意の組み合わせの焼成環境である。1の実施態様において、形成したモレキュラーシーブ触媒組成物の焼成は多数の公知の装置中で行われ、例えば、回転式焼成炉、流動床焼成炉、バッチオーブン等である。焼成時間は通常、モレキュラーシーブ触媒組成物の硬化度に依存し、温度範囲は約1分〜約10時間、好ましくは15分〜約2時間である。
【0083】
1の実施態様において、モレキュラーシーブ触媒組成物の磨耗耐性は磨耗率指数(ARI)を用いて測定され、1時間当たり磨耗した触媒組成物の重量%で測定する。この目的に使用できる装置はS.A.Weeks及びP.Dumbill,Oil&Gas Journal(オイル・アンド・ガス・ジャーナル)、第38〜40頁、1987に記載されており、ここにその全体を引用する。当該試験の詳細な説明は以下の本発明を説明する実施例においてなされる。
【0084】
1の実施態様において、モレキュラーシーブ触媒組成物または形成されたモレキュラーシーブ触媒組成物は1時間当たり5重量%未満のARIを有し、好ましくは1時間当たり2重量%未満、より好ましくは1時間当たり1重量%未満、及び最も好ましくは1時間当たり0.5重量%未満である。1の実施態様において、モレキュラーシーブ触媒組成物または形成されたモレキュラーシーブ触媒組成物は1時間当たり0.1重量%〜1時間当たり5重量%未満の範囲のARIを有し、より好ましくは1時間当たり約0.2重量%〜1時間当たり3重量%未満、及び最も好ましくは1時間当たり約0.2重量%〜1時間当たり2重量%未満である。
【0085】
モレキュラーシーブ触媒組成物を用いる方法
上述の触媒組成物は多種多様な方法において有用であり、例えばナフサ供給原料から軽オレフィンへの分解(米国特許第6,300,537号)、または高分子量(MW)炭化水素から低MW炭化水素への分解;例えば、重石油及び/または環式供給原料の水素化分解;例えば、キシレンなどの芳香族化合物の異性化;例えば、ポリマー生成物を生成するための1以上のオレフィンの重合;改質;水素化;脱水素化;例えば、直鎖パラフィンを取除くための炭化水素の脱ワックス化;例えば、異性体を析出するためのアルキル芳香族化合物の吸収;例えば、クメンまたは長鎖オレフィンを生成するための、ベンゼン及びアルキルベンゼンなどの芳香族炭化水素と任意でプロピレンを用いたアルキル化;例えば、芳香族化合物及びポリアルキル芳香族炭化水素の組み合わせのトランスアルキル化;脱アルキル化;加水脱環化(hydrodecyclization);例えば、ベンゼン及びパラキシレンを作るためのトルエンの不均化;例えば、直鎖及び分岐鎖オレフィンのオリゴマー化;及び脱水環化がある。
【0086】
好ましい方法は、ナフサを高芳香族混合物に変換する方法;軽オレフィンをガソリン、蒸留液及び潤滑油に変換するプロセス;オキシジェネートをオレフィンに変換する方法;軽パラフィンをオレフィン及び/または芳香族化合物に変換する方法;及び不飽和炭化水素(エチレン及び/またはアセチレン)をアルコール、酸及びエステルへの変換のためにアルデヒドに変換する方法を含む。
【0087】
本発明の最も好ましい方法は供給原料を1以上のオレフィンに変換する方法である。通常、供給原料は1以上の脂肪族含有化合物を含み、脂肪族基は1〜約50炭素原子、例えば1〜20炭素原子、例えば1〜10炭素原子、及び特に1〜4炭素原子を含む。
【0088】
脂肪族含有化合物の非限定的な例としては、メタノール及びエタノールなどのアルコール、メチルメルカプタン及びエチルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、硫化メチルなどの硫化アルキル、メチルアミンなどのアルキルアミン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル及びメチルエチルエーテルなどのアルキルエーテル、塩化メチル及び塩化エチルなどのハロゲン化アルキル、ジメチルケトンなどのアルキルケトン、ホルムアルデヒド及び酢酸などの種々の酸が挙げられる。
【0089】
本発明の方法の好ましい実施態様において、供給原料は1以上のオキシジェネートを含み、より具体的には、少なくとも1の酸素原子を含む1以上の有機化合物を含む。本発明の方法の最も好ましい実施態様において、供給原料中のオキシジェネートは1以上のアルコールであり、好ましくはアルコールの脂肪族基が1〜20炭素原子、好ましくは1〜10炭素原子、及び最も好ましくは1〜4炭素原子を有する脂肪族アルコールである。本発明の方法において供給原料として有用なアルコールは低直鎖及び分岐鎖脂肪族アルコール及びそれらの不飽和対応物を含む。
【0090】
オキシジェネートの非限定的な例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、メチルエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ホルムアルデヒド、ジメチルカーボネート、ジメチルケトン、酢酸、及びこれらの混合物がある。
【0091】
最も好ましい実施態様において、供給原料は、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、またはこれらの組み合わせの1以上から選択され、より好ましくはメタノール及びジメチルエーテル、及び最も好ましくはメタノールである。
【0092】
上述の種々の供給原料、特にオキシジェネートを含む供給原料、さらに具体的にはアルコールを含む供給原料はまず1以上のオレフィンに変換される。供給原料から生成されるオレフィンは通常、2〜30炭素原子を有し、好ましくは2〜8炭素原子、より好ましくは2〜6炭素原子、さらにより好ましくは2〜4炭素原子を有し、及び最も好ましくはエチレン及び/またはプロピレンである。
【0093】
本発明の触媒組成物はガス・ツー・オレフィン(GTO)プロセス、もしくはメタノール・ツー・オレフィン(MTO)プロセスとして一般的に呼ばれるプロセスにおいて特に有用である。このプロセスにおいて、オキシジェネート供給原料、最も好ましくはメタノール含有供給原料はモレキュラーシーブ触媒組成物の存在下、1以上のオレフィンに、好ましくは主に、エチレン及び/またはプロピレンに変換される。
【0094】
供給原料、好ましくは1以上のオキシジェネートを含む供給原料の変換に本発明の触媒組成物を用いることにより、生成炭化水素の全重量に基づいて、生成したオレフィンの量は50重量%以上であり、通常は60重量%以上であり、例えば70重量%以上、及び好ましくは75重量%以上である。1の実施態様において、生成した炭化水素生成物の全重量に基づいて、生成したエチレン及び/またはプロピレンの量は65重量%以上であり、例えば70重量%以上、例えば75重量%以上、及び好ましくは78重量%以上である。通常、生成した炭化水素生成物の全重量に基づいて、生成したエチレンの量は30重量%以上、例えば35重量%以上、例えば40重量%以上である。さらに、生成した炭化水素生成物の全重量に基づいて、生成したプロピレンの量は重量%で、20重量%以上、例えば25重量%以上、例えば30重量%以上、及び好ましくは35重量%以上である。
【0095】
メタノールなどのオキシジェネート成分に加えて、供給原料は1以上の希釈剤を含むことができ、希釈剤は通常、供給原料及びモレキュラーシーブ触媒組成物に対して非反応性であり、通常は供給原料の濃度を低下させるために用いられる。希釈剤の非限定的な例としては、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水、本質的に非反応性のパラフィン(特にメタン、エタン及びプロパンなどのアルカン)、本質的に非反応性の芳香族化合物、及びこれらの混合物を含む。最も好ましい希釈剤は水及び窒素であり、特に水が好ましい。
【0096】
希釈剤、例えば水は液状または気体状、またはこれらの組み合わせで用いることができる。希釈剤は反応器に入る供給原料に直接加えてもよく、または反応器に直接加えるか、モレキュラーシーブ触媒組成物と一緒に加えてもよい。
【0097】
本発明の方法は広い範囲の温度で実施でき、例えば約200℃〜約1000℃の範囲、例えば約250℃〜約800℃、約250℃〜約750℃の範囲を含み、都合が良いのは約300℃〜約650℃であり、通常は約350℃〜約600℃及び特に約350℃〜約550℃である。
【0098】
同様に、本発明の方法は広い範囲の圧力で行うことができ、自己圧力を含む。通常、工程中で使用した希釈剤を除いた供給原料の分圧は約0.1kPaa〜約5MPaaの範囲であり、例えば、約5kPaa〜約1MPaaであり、都合が良いのは約20kPaa〜約500kPaaである。
【0099】
時間当たりの重量空間速度(WHSV)は、触媒組成物中のモレキュラーシーブ重量当たり時間当たりの希釈剤を除く供給原料の全重量として定義され、通常は約1hr−1〜約5000hr−1の範囲であり、例えば約2hr−1〜約3000hr−1、例えば約5hr−1〜約1500hr−1、及び都合が良いのは約10hr−1〜約1000hr−1である。1の実施態様において、WHSVは20hr−1より大きく、及びここで供給原料はメタノール及び/またはジメチルエーテルを含み、約20hr−1〜約300hr−1である。
【0100】
本方法が流動床中で行われる場合、反応器系内、特にライザー反応器内の希釈剤と反応生成物とを含む供給原料の表面ガス速度(Superficial gas velocity)(SGV)は、少なくとも0.1m/秒であり、例えば0.5m/秒以上、例えば1m/秒以上、例えば2m/秒以上、都合が良いのは3m/秒以上であり、通常は4m/秒以上である。例えば、ここに引用する、2000年11月8日に出願された米国特許出願番号09/708,753号を参照されたい。
【0101】
本発明の方法は適宜、固定床プロセス、または一般的には流動床プロセス(乱流床プロセスを含む)として行われ、例えば連続流動床プロセス、及び特に連続高速流動床プロセスである。
【0102】
当該プロセスは種々の触媒反応器中で実施でき、例えば高密度床または固定床の反応領域を有し、及び/または循環流動床反応器、ライザー反応器等と一緒に連動した高速流動床の反応領域を有するハイブリッド反応器である。適当な従来の反応器の種類は例えば、米国特許第4,076,796号、米国特許第6,287,522号(二重ライザー)、及びFluidization Engineering(流動工学)、D.Kunii及びO.Levenspiel,Robert E.Krieger Publishing Company、ニューヨーク、ニューヨーク1977に記載されており、ここにその全体を引用する。
【0103】
好ましい反応器の種類は、Riser Reactor,Fluidization and Fluid−Particle Systems(ライザー反応器、流動化及び流動−微粒子システム)、第48〜59頁、F.A.Zenz及びD.F.Othmo,Reinhold Publishing Corporation,ニューヨーク、1960、及び米国特許第6,166,282号(高速−流動床反応器)及び2000年5月4日に出願された米国特許出願番号第09/564,613号(マルチプルライザー反応器)に概要が記載されているライザー反応器であり、これらの文献の全てをここに引用する。
【0104】
1の実用的な実施態様において、当該プロセスは反応器システム、再生システム及び回収システムを利用する流動床プロセスまたは高速流動床プロセスとして行われる。
【0105】
このようなプロセスにおいて、反応器システムは適宜、1以上のライザー反応器内に第1の反応領域、及び通常は1以上のサイクロンを含む少なくとも1の撤退容器内に第2の反応領域を有する、流動床反応器システムを含む。1の実施態様において、1以上のライザー反応器及び撤退容器は単一の反応器容器内に含まれる。新しい供給原料は、好ましくは1以上のオキシジェネートを含み、任意で1以上の希釈剤を含み、1以上のライザー反応器に供給され、そこにモレキュラーシーブ触媒組成物またはそれらのコークス化したものを導入する。1の実施態様において、ライザー反応器に導入する前に、モレキュラーシーブ触媒組成物またはそれらのコークス化したものは液体、好ましくは水またはメタノール、及び/または気体、例えば不活性気体、例えば窒素などと接触させる。
【0106】
1の実施態様において、液体及び/または蒸気として反応器システムに供給される新しい供給原料の量は、供給原料及びそこに含まれる希釈剤の全重量に基づいて、0.1重量%〜約85重量%の範囲であり、例えば約1重量%〜約75重量%、より一般的には約5重量%〜約65重量%である。液体及び蒸気供給原料は同じ組成であってもよく、または同じまたは異なる供給原料と同じまたは異なる希釈剤とを様々な比率で含んでもよい。
【0107】
反応器システムに入る供給原料は好ましくは、第1の反応領域内で一部または全部が気体状排出物に変換され、撤退容器にコークス化触媒組成物と一緒に入る。好ましい実施態様において、サイクロンが撤退容器内に備えられ、撤退容器内においてコークス化触媒組成物を1以上のオレフィンを含む気体状排出物から分離する。サイクロンが好ましいが、撤退容器内の重力効果も気体状排出物から触媒組成物を分離するために用いることができる。気体状排出物から触媒組成物を分離するその他の方法は、板、キャップ、エルボー等の使用がある。
【0108】
1の実施態様において、撤退容器は剥ぎ取り領域を含み、通常は撤退容器の下部にある。剥ぎ取り領域において、コークス化触媒組成物は気体、好ましくは蒸気、メタン、二酸化炭素、一酸化炭素、水素またはアルゴンなどの不活性気体の1つまたはそれらの組み合わせと接触し、好ましくは蒸気と接触し、コークス化触媒組成物から吸着炭化水素を回収し、それから再生システムに導入される。
【0109】
コークス化触媒組成物は撤退容器から取り出され、再生システムに導入される。再生システムは再生器を含み、ここでコークス化触媒組成物は、従来の温度、圧力及び滞留時間の再生条件下で、再生媒体と接触し、好ましくは気体含有酸素と接触する。
【0110】
適当な再生媒体の非限定的な例として、酸素、O、SO、NO、NO、NO、N、空気、窒素または二酸化炭素で希釈した空気、酸素及び水(米国特許第6,245,703号)、一酸化炭素、及び/または水素の1以上を含む。適当な再生条件はコークス化触媒組成物からコークスを燃焼できる条件であり、好ましくは再生システムに入るコークス化モレキュラーシーブ触媒組成物の全重量に基づいて、0.5重量%未満のレベルにできる条件である。例えば、再生温度は約200℃〜約1500℃の範囲であり、例えば約300℃〜約1000℃、例えば約450℃〜約750℃、及び都合が良いのは約550℃〜700℃である。再生圧力は約15psia(103kPaa)〜約500psia(3448kPaa)の範囲であり、例えば約20psia(138kPaa)〜約250psia(1724kPaa)、例えば約25psia(172kPaa)〜約150psia(1034kPaa)、及び都合が良いのは約30psia(207kPaa)〜約60psia(414kPaa)である。
【0111】
再生器中の触媒組成物の滞留時間は約1分〜数時間の範囲であり、例えば約1分〜100分であり、及び再生気体中の酸素の容量は気体の全体積に基づいて、約0.01モル%〜約5モル%の範囲である。
【0112】
再生工程中のコークスの燃焼は発熱反応である。1の実施態様において、再生システム内の温度は冷却気体を再生器容器に送るなど、当業界の種々の技術により制御され、バッチ、連続または半連続法、またはこれらの組み合わせで操作する。好ましい技術は再生触媒組成物を再生システムから取り出し、触媒冷却器に通し、冷却された再生触媒組成物を形成することを含む。1の実施態様において、触媒冷却器は熱交換器であり、再生システムの内部または外部に位置する。再生システムを操作するためのその他の方法は、ここに引用する米国特許第6,290,916号(湿度制御)に開示されている。
【0113】
再生システム、好ましくは触媒冷却器から取り出された再生触媒組成物は、新しいモレキュラーシーブ触媒組成物及び/または再循環モレキュラーシーブ触媒組成物及び/または供給原料及び/または新しい気体または液体と混合し、ライザー反応器に戻す。1の実施態様において、再生システムから取り出した再生触媒組成物はライザー反応器に直接戻し、好ましくは触媒冷却器を通過した後に戻す。反応器システム、好ましくは1以上のライザー反応器への再生触媒組成物の導入を促進するために、不活性気体、供給原料蒸気、水蒸気等のキャリアが連続的または半連続的に使用できる。
【0114】
再生システムから反応器システムへの再生触媒組成物または冷却再生触媒組成物の流れを制御することにより、反応器に入るモレキュラーシーブ触媒組成物の最適なコークスレベルが維持される。触媒組成物の流れを制御する多数の技術が存在し、ここに引用する、Michael Louge、Experimental Techniques、Circulating Fluidized Beds(実験技術、循環流動床),Grace,Avidan and Knowlton、編集、Blackie、1997(336−337)に記載されている。
【0115】
触媒組成物のコークスレベルは変換工程から触媒組成物を取り出し、その炭素含量を測定することにより測られる。モレキュラーシーブ触媒組成物の通常のコークスレベルは、再生後で、モレキュラーシーブの重量に基づいて、0.01重量%〜約15重量%の範囲であり、例えば、約0.1重量%〜約10重量%、例えば、約0.2重量%〜約5重量%、及び都合が良いのは約0.3重量%〜約2重量%である。
【0116】
気体状排出物は撤退システムから取り出され、回収システムを通過する。オレフィン及び精製オレフィンを気体状排出物から分離するのに有用な公知の回収システム、技術及び手順が多数存在する。回収システムは通常、種々の分離、分留、及び/または蒸留塔、カラム、スプリッター、またはトレイン、反応システム、例えばエチルベンゼン製造器(米国特許第5,476,978号)及びその他の派生工程、例えばアルデヒド、ケトン、及びエステル製造器(米国特許第5,675,041号)及びその他の関連装置、例えば、種々のコンデンサー、熱交換器、冷却システムまたは冷却トレイン、圧縮器、ノックアウトドラムまたはポット、ポンプ等の1以上、または組み合わせを含む。
【0117】
単独または組み合わせて用いられる、これらの塔、カラム、スプリッター、またはトレインの非限定的な例としては、脱メタン塔、好ましくは高温脱メタン塔、脱エタン塔、脱プロパン塔、しばしば苛性洗浄塔として言及される洗浄塔、及び/または冷却塔、吸収塔、吸着塔、膜、エチレン(C2)スプリッター、プロピレン(C3)スプリッター及びブテン(C4)スプリッターの1以上を含む。エチレン、プロピレン、及び/またはブテンなどのオレフィン回収に有用な種々の回収システムは、米国特許第5,960,643号(二級リッチエチレンストリーム)、米国特許第5,019,143号、第5,452,581号及び第5,082,481号(膜分離)、米国特許第5,672,197号(圧力依存吸着体)、米国特許第6,069,288号(水素除去)、米国特許第5,904,880号(1工程での水素及び二酸化炭素へのメタノール回収)、米国特許第5,927,063号(ガスタービン発電所へのメタノール回収)、及び米国特許第6,121,504号(直接生成物冷却)、米国特許第6,121,503号(超分留しない高精製オレフィン)、及び米国特許第6,293,998号(圧力スイング吸着法)に記載されており、ここにその全体を引用する。
【0118】
精製システム、例えばオレフィン精製のためのシステムを含むその他の回収システムは、ここに引用する、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、第5巻、John Wiley&Sons、1996、第249−271頁、及び894−899頁に記載されている。精製システムについても、例えばここに引用する、米国特許第6,271,428号(ジオレフィン炭化水素ストリームの精製)、米国特許第6,293,999号(プロパンからのプロピレン分離)、及び2000年10月20日に出願された米国特許出願番号第09/689,363号(水酸化触媒を用いるパージストリーム)に記載されている。
【0119】
通常、好ましい主な生成物と一緒に、ほとんどの回収システムにおいて、追加の生成物、副生成物、及び/または汚染物質の生成、発生または蓄積が伴う。好ましい主な生成物、軽オレフィン、例えば、エチレン及びプロピレンは通常、派生する製造工程、例えば重合工程において使用するために精製される。従って、回収システムの最も好ましい実施態様において、回収システムは精製システムも含む。例えば、特にMTOプロセスにおいて生成された軽オレフィンは精製システムを通過し、低レベルの副生成物または汚染物質が除去される。
【0120】
汚染物質及び副生成物の非限定的な例としては、通常、極性化合物、例えば水、アルコール、カルボン酸、エーテル、酸化炭素、硫黄化合物、例えば硫化水素、硫化カルボニル及びメルカプタン、アンモニア、及びその他の窒素化合物、アルシン、ホスフィン、及び塩化物を含む。その他の汚染物質または副生成物は水素及び炭化水素、例えばアセチレン、メチルアセチレン、プロパジエン、ブタジエン及びブチンなどを含む。
【0121】
通常、1以上のオキシジェネートを2、3の炭素原子を有するオレフィンに変換する際、少量の炭化水素、特に4以上の炭素原子を有するオレフィンも生成される。C+炭化水素の量は通常、水以外の当該方法から取り出される排ガスの全重量に基づいて、20重量%未満、例えば10重量%未満、例えば5重量%未満、及び特に2重量%未満である。通常、従って、回収システムはC+不純物を有用な生成物に変換するための1以上の反応システムを含んでもよい。
【0122】
このような反応システムの非限定的な例としては、ここに引用する、米国特許第5,955,640号(4炭素生成物のブテン−1への変換)、米国特許第4,774,375号(アルキル化ガソリンにオリゴマー化されたイソブタン及びブテン−2)、米国特許第6,049,017号(n−ブチレンの二量化)、米国特許第4,287,369号及び第5,763,678号(カルボニル化合物を生成するための、二酸化炭素及び水素を用いる高級オレフィンのカルボニル化またはヒドロホルミル化)、米国特許第4,542,252号(多段階断熱過程)、米国特許第5,634,354号(オレフィン−水素回収)、及びCosyns,J.他、Process for Upgrading C3、C4、及びC5オレフィン系ストリーム、Pet.&Coal,第37巻、No.4(1995)(プロピレン、ブチレン及びペンチレンの二量化またはオリゴマー化)に記載されている。
【0123】
上述の方法のいずれかにより生成された好ましい軽オレフィンは、単一の炭素数のオレフィンをオレフィンの全重量に基づいて、80重量%以上、例えば90重量%以上、例えば95重量%以上、例えば少なくとも約99重量%で含む、高精製主要オレフィン生成物である。
【0124】
1の実用的な実施態様において、本発明の方法は炭化水素供給原料、好ましくは気体状炭化水素供給原料、特にメタン及び/またはエタンから軽オレフィンを生成するための統合プロセスの一部を形成する。当該方法の第1の工程は気体状供給原料を、好ましくは水流と組み合わせて、合成ガス生成領域に通し、合成ガス(syngas)流を生成し、通常、合成ガス流は二酸化炭素、一酸化炭素及び水素を含む。合成ガス生成は公知であり、一般的な合成ガス温度は約700℃〜約1200℃の範囲であり、合成ガス圧力は約2MPa〜約100MPaの範囲である。合成ガス流は天然ガス、石油、及び炭質、例えば石炭、再生プラスティック、都市ごみ、またはその他の有機物質から生成される。好ましくは、合成ガス流は天然ガス流の改質により生成される。
【0125】
本方法の次の工程は、合成ガス流と通常は不均一触媒、通常は銅ベース触媒とを接触させ、オレフィン含有流を生成することを含み、水との混合物であることが多い。1の実施態様において、接触工程は温度約150℃〜約450℃及び圧力約5MPa〜約10MPaの範囲で行う。
【0126】
このオキシジェネート含有流、または未精製メタノールは通常、アルコール生成物及び種々のその他の成分、例えばエーテル、特にジメチルエーテル、ケトン、アルデヒド、溶解ガス、例えば水素メタン、酸化炭素、及び窒素、及び燃料油を含む。オキシジェネート含有流、未精製メタノールは、好ましい実施態様において、公知の精製工程、蒸留、分離、及び分留を通って、精製オキシジェネート含有流、例えば、商業グレードA及びAAメタノールを生じる。
【0127】
次に、オキシジェネート含有流または精製オキシジェネート含有流は、任意で1以上の希釈剤と一緒に、エタン及び/またはプロピレンなどの軽オレフィンを生成する工程において供給原料として用いることができる。この統合工程の非限定的な例は、ここに引用する、EP−B−0 933 345に記載されている。
【0128】
任意で上述の統合工程と混合した、他のさらなる統合工程において、生成されるオレフィンは1の実施態様において、種々のポリオレフィンを生成するための1以上の重合工程に関する。(例えば、ここにその全体を引用する2000年7月13日に出願された米国特許出願番号第09/615,376号を参照されたい)。
【0129】
重合工程は液相、気相、スラリー相及び高圧工程、またはこれらの組み合わせを含む。特に好ましくは、1以上のオレフィン、少なくとも1つはエチレンまたはプロピレン、の気相またはスラリー相重合である。これらの重合工程は上述のモレキュラーシーブ触媒のいずれか1つまたは組み合わせを含むことができる重合触媒を利用する。しかしながら、好ましい重合触媒はチーグラー・ナッタ、フィリップス型、メタロセン、メタロセン型、及び改良型重合触媒、及びこれらの混合物である。
【0130】
好ましい実施態様において、統合工程は、重合反応器中、重合触媒系の存在下、1以上のオレフィンを重合し、1以上のポリマー生成物を生成する方法を含み、ここで1以上のオレフィンは、上述のモレキュラーシーブ触媒組成物を用いてアルコール、特にメタノールを変換することにより作られる。好ましい重合工程は気相重合工程であり、少なくとも1のオレフィンはエチレンまたはプロピレンであり、好ましくは重合触媒系は担持メタロセン触媒系である。この実施態様において、担持メタロセン触媒系は担体、メタロセンまたはメタロセン型化合物及び活性化剤を含み、好ましくは活性化剤は非配位性アニオンまたはアルモキサン、またはこれらの組み合わせであり、最も好ましくは活性化剤はアルモキサンである。
【0131】
上述の重合工程により生成したポリマーは、直鎖低密度ポリエチレン、エラストマー、プラストマー、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリプロピレンコポリマーを含む。当該重合工程により生成したプロピレンベースポリマーは、アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、及びプロピレンランダム、ブロック、またはインパクトコポリマーを含む。
【0132】
実施例
代表的な利点を有する本発明のさらなる理解を助けるために、以下の実施例を示す。
【0133】
焼成ベースに基づく量及び比率
触媒形成に用いられる混合物の構成成分は通常、揮発性成分を含み、限定されないが、水及びモレキュラーシーブの場合、有機テンプレートを含む。これらの構成成分の量または比率を“焼成ベース”に基づいて説明することは一般的なやり方である。焼成は、含有する揮発性成分を除去し、乾燥させるために十分な高温の空気の存在下で物質を加熱することを含む(例えば、650℃、1時間以上)。“焼成ベース”に基づくとは、本発明の目的において、成分が焼成された場合、予測される重量減少からなる数学的に減少された後に残った各成分の量または割合として定義される。用語LOI(強熱減量)はここで、“焼成ベース”に基づく、焼成時の割合損失(fractional loss)と交換可能に用いる。従って、25%の揮発性物質を含む10gの成分は、2.5gまたは25重量%のLOIを用いて、“焼成ベースで7.5g”として記載される。
【0134】
方法
磨耗耐性試験
モレキュラーシーブ触媒組成物の磨耗耐性は磨耗率指数(ARI)を用いて測定し、1時間当たり磨耗した触媒組成物を重量%で測定する。装置はここに引用する、S.A.ウィーク及びP.Dumbill、Oil&Gasジャーナル、38〜40頁、1987、に記載されているようなものである。ARIは、硬化スチール磨耗カップに約53ミクロン〜約125ミクロンの範囲の粒子サイズを有する触媒組成物6.0gを加えることにより測定する。約23,700cc/分の窒素ガスを窒素を湿らすために水分含有バブラーを通して泡立てる。湿った窒素は磨耗カップを通過し、多孔質繊維シンブルを経由して磨耗装置を出る。窒素流れは微粒子を除去し、より大きな粒子はカップ内に残る。多孔質繊維シンブルは微細触媒粒子を窒素から分離し、窒素はシンブルを通って出て行く。シンブル中に残った微細粒子は磨耗により粉砕した触媒組成物を表す。磨耗カップを通過する窒素流れは1時間維持される。シンブル内に回収された微粒子は当該ユニットから除去される。次に、新しいシンブルが導入される。磨耗ユニットに残った触媒は、同じ気流及び湿度レベル下でさらに3時間磨耗される。シンブル内で回収された微粒子を回収する。最初の1時間後にシンブルにより分離された微細触媒粒子の回収物の重量を量る。時間当たりの、微粒子のグラム量を最初に磨耗カップに充填された触媒の量で割ったものが、ARI、時間当たりの重量%(重量%/時間)である。ARIは以下の式により表される:ARI=C/(B+C)/D×100%、式中、Bは磨耗試験後にカップ内に残った触媒組成物の重量であり、Cは磨耗処理の最初の1時間後に回収した微細触媒粒子の重量であり、及びDは磨耗処理の最初の1時間後の処理継続時間(時間)である。ARIが高ければ、磨耗率が高いことを意味し、または物理的崩壊に対して触媒の耐性が低いことを意味する。
【0135】
粘度
触媒形成スラリーの粘度は、ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリーズ社(Middleboro、マサチューセッツ州)の#3スピンドルを用いるブルックフィールドLV粘度計を用いて、様々なせん断速度、例えば10RPM〜100RPMで測定した。全ての測定は室温で行った。粘度計はスラリーサンプルの測定を行う前に、まず、粘度500cps、1000cps、及び3000cps(それぞれ、0.5、1.0及び3.0Pa−s)の較正標準を用いて較正した。これらの較正標準はブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリーズ社(Middleboro、マサチューセッツ州)に認証されたものである。
【0136】
27Al NMR
27Al NMR測定はBruker DSX500 NMR分光計を用いて、H周波数500.13MHz及び27Al周波数130.31MHzで、シングル90°(27Al)パルス及び循環遅延(recycle delay)1秒を用いて行った。
【0137】
HPLCで測定したアルミニウムクロロハイドレート(ACH)のスペシエーション
アルミニウムクロロハイドレート(ACH)は、連続的な分子量分布を形成しない、安定な、高分子量無機ポリマーである。この適当な分子量照会の欠如とポリマーの複数の電荷により、その同定は難しいものとなっている。
【0138】
ACHの調製では、広いスペクトルの異なる特性の塩基性アルミニウムポリマー塩が存在し、これは、調製方法、温度、寿命、pH、アルミニウムの塩化物比に対する関数として遅い連続した変化を受ける。これら全ての因子がこれらの種の構造及び反応性を決定する。
【0139】
HPLC/GPC(高圧液体クロマトグラフィー/ゲル浸透クロマトグラフィー)はこれらの変化を特性化するために用いられる。
【0140】
この技術を用いて、種々のポリマー種がそのサイズに基づいてカラムから溶出し、最も大きいポリマーは最も小さいポリマーよりも速く溶出する。
【0141】
ACH溶液のHPLC分析は、細孔サイズ60Å及び粒子サイズ5ミクロンのPhenonmenex Maxsil RP2カラム(Phenonmenex社、トランス、カリフォルニア州)を備えたウォーターズHPLC(ウォーターズ社、ミルフォード、マサチューセッツ州)を用いて行った。分析条件は:室温、流速1ml/分の移動相として0.01M 硝酸であり、及び検出のため屈折率(RI)検出器を用いた。
【0142】
保持時間の関数としてのクロマトグラム、RI検出器シグナル(ボルト)はACH溶液のスペシエーションの特徴を提供する。
【0143】
実施例1−市販ACH溶液を用いる触媒形成
実施例1.1.
45重量%固体を含むモレキュラーシーブスラリーをこの手順に従って調製した:(A)991.56gのSAPO−34モレキュラーシーブ(ウェットろ過ケーキ、LOI:45.54%)を568.55gの脱イオン化水に加え、600〜800rpmで5〜10分間、Yamatoモデル2100ホモジナイザー(Yamato Scientific America Inc.,オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて混合し、次にSilverson L4RT−A高せん断ミキサー(Silverson Machines,Inc.,East Longmeadow,マサチューセッツ)を用いて6000rpm、5分間、混合し、32℃でpH6.5の第1のモレキュラーシーブスラリーを得た;(B)608.94gの市販アルミニウムクロロハイドレート溶液(Reheisクロリドロール50重量%溶液、ロット番号58204、アルミニウム対塩化物の原子比は2.0、Reheis社、バークリーハイツ、ニュージャージーから市販)を攪拌しながらスラリー(A)に加えた。得られた混合物は、Yamatoホモジナイザーを用いて600−800RPMで5分間、混合し、次にSilverson高せん断ミキサーを用いて6000RPMで5分間混合した。そのようにして得られたスラリーは26℃でpH3.9である;(C)767.79gのUSPウルトラファイン(超微細)カオリン粘土(Engelhard社、Iselin,ニュージャージー)を600rpmで混合しながら工程(B)で得られたスラリーに加えた。混合速度は1000RPMまで徐々に増加し、10分間維持し、30℃でpH3.9を有するスラリーを生じた;(D)63.17gの脱イオン水を次に、600RPMで攪拌しながら、工程(C)で得たスラリーに加え、それからSilverson高せん断ミキサーを用いて6000RPMで5分間混合した。これにより、31℃でpH3.9を有する滑らかなスラリーが得られ、当該スラリーは45重量%固体(焼成ベース)を含み、40%はSAPO−34であり、10.6%はアルミナ、及び49.4%は粘土であり、以下、これをスラリー1と呼ぶ。スラリー1(750g)はYamato DL−41噴霧乾燥器(Yamato Scientific America、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて噴霧乾燥した。噴霧乾燥器は1mmの微粒化ノズルを用いてダウンスプレーモードで操作した。噴霧乾燥条件は:供給速度40g/分;入口温度350℃;微粒化圧力1bar;キャリアガス(窒素)流れ、フルセットの60%である。噴霧乾燥生成物はサイクロン内に回収した。これらは2時間、空気中、650℃でマッフルファーネス中で焼成し、触媒1を得た。当該触媒を磨耗耐性試験に供した。触媒1は焼成後、0.44%/時間のARIを与えた。
【0144】
実施例1.2.
スラリー1の一部(1500g)を250−350RPMで一定に混合しながら、水槽中、40℃、16時間で維持した。この処理の後、水を当該スラリーに加え、蒸発による水損失量を補い、5分間、6000RPMで高せん断混合(Silverson高せん断ミキサー)した。このスラリーを以下、スラリー2と呼ぶ。
【0145】
スラリー2の一部(750g)をYamato DL−41噴霧乾燥器(Yamato Scientific America、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて、実施例1.1と同じ条件下で噴霧乾燥した。噴霧乾燥生成物を2時間、空気中、650℃でマッフルファーネス中で焼成し、触媒2を得た。当該触媒は磨耗耐性試験に供した。触媒2は0.67%/時間のARIを与えた。
【0146】
実施例1.3.
スラリー2の一部(750g)を混合せずに3日間室温で放置した。このスラリーを以下、スラリー3と呼ぶ。
【0147】
スラリー3の一部(750g)をYamato DL−41噴霧乾燥器(Yamato Scientific America、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて、実施例1.1と同じ条件下で噴霧乾燥した。噴霧乾燥生成物を2時間、空気中、650℃でマッフルファーネス中で焼成し、触媒3を得た。当該触媒は磨耗耐性試験に供した。触媒3は1.36%/時間のARIを与えた。
【0148】
表1は、異なる熟成処理を受けたスラリー1、2及び3からの噴霧乾燥した触媒に関して得られた磨耗耐性試験の結果を要約したものである。磨耗耐性試験の結果は、噴霧乾燥前に熟成または熱処理を受けていないスラリー1が、磨耗に最も耐性を有する触媒を与えることを示す。スラリーの熱熟成(スラリー2)は触媒1よりも磨耗耐性の低い噴霧乾燥触媒を与える。スラリー熟成の延長(スラリー3)は、噴霧乾燥後、触媒磨耗耐性をさらに減少させる。
【表1】

【0149】
実施例2−新しいACH溶液を用いる触媒形成
実施例2.1.
45重量%固体を含むスラリーはこの手順に従って調製した:
(A)2988.93gのSAPO−34分子(ウェットろ過ケーキ、LOI:45.54%)を1703.84gの脱イオン水に混合し、Yamato 4000Dミキサー(Yamato Scientific America社、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて、1500RPMで、15分間、混合し、26℃で測定してpH値6.2を有するスラリーを与えた。
【0150】
(B)アルミニウムクロリドロール(chlorhydrol)溶液を、869.03gのReheis MicroDryアルミニウムクロロハイドレート(Reheis Inc.,バークリーハイツ、ニュージャージー)を859.12gの脱イオン水に添加し、Yamato 4000Dミキサー(Yamato Scientific America社、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて1500RPMで、15分間、混合し、Silverson高せん断ミキサーを用いて6000RPMで、10分間、高せん断処理することにより調製した。この溶液は31℃で測定して、pH3.3を有した。
【0151】
(C)(B)で調製したアルミニウムクロリドロール溶液を(A)で調製したSAPO−34スラリーと混合した。得られた混合物はYamato 4000Dミキサー(Yamato Scientific America社、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて、1500RPMで、15分間、混合し、次にSilverson高せん断ミキサーを用いて6000RPMで、10分間、混合した。これにより30℃で測定してpH値4.2を有するスラリーを得た。
【0152】
(D)2302.3gのUSP ウルトラファインカオリン粘土(Engelhard社、Iselin、ニュージャージー)を250〜400RPMで一定に混合しながら、(C)で調製したスラリーに加えた。次に、得られたスラリーをYamato 4000Dミキサー(Yamato Scientific America社、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて1500RPMで、15分間混合し、次にSilversonミキサーを用いて6000RPMで、10分間、高せん断混合した。
【0153】
(E)脱イオン化水(283.97g)を(D)で調製したスラリーに加えた。当該スラリーは次に、Yamatoミキサーを用いて1500RPMで15分間混合し、Silversonミキサーを用いて6000RPM、10分間で高せん断混合した。この最終スラリーを以下、スラリー4と呼び、36℃で測定して、pH3.8を有した。これにより、45重量%固体(焼成ベース)を有する8000gのスラリー4が得られ、この中で、40%はSAPO−34、10.6%はアルミナ、及び49.4%は粘土である。
【0154】
スラリー4の一部(800g)を、実施例1.1と同じ条件下、Yamato DL−41噴霧乾燥器(Yamato Scientific America、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて噴霧乾燥した。噴霧乾燥生成物を2時間、空気中、650℃でマッフルファーネス中で焼成し、触媒4を得た。当該触媒は磨耗耐性試験に供した。触媒4は0.95%/時間のARIを与えた。
【0155】
実施例2.2.
実施例2.1からのスラリー4の一部(1500g)を250−350RPMで一定に混合しながら、水槽中、40℃、16時間で維持した。この処理の後、蒸発による水損失量を補うために、水を当該スラリーに加え、5分間、6000RPMで高せん断混合(Silverson高せん断ミキサー)した。このスラリーを以下、スラリー5と呼ぶ。
【0156】
スラリー5の一部(750g)をYamato DL−41噴霧乾燥器(Yamato Scientific America、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて、実施例1と同じ条件下で噴霧乾燥した。噴霧乾燥生成物を2時間、空気中、650℃でマッフルファーネス中で焼成し、触媒5を得た。当該触媒は磨耗耐性試験に供した。触媒2は0.38%/時間のARIを与えた。
【0157】
表2は、異なる熟成処理を受けたスラリー4及び5からの噴霧乾燥した触媒に関して得られた磨耗耐性試験の結果を要約したものである。磨耗耐性試験の結果は、噴霧乾燥前に熟成及び/または熱処理を受けたスラリー5が、磨耗に最も耐性を有する触媒を与えることを示す。
【表2】

【0158】
実施例3−新しいZACH溶液を用いる触媒形成
実施例3.1.
45重量%固体を含むスラリーはこの手順に従って調製した:
(A)991.56gのSAPO−34分子(ウェットろ過ケーキ、LOI:45.54%)を573.15gの脱イオン水に加え、Yamato 2100ホモジナイザー(Yamato Scientific America社、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて、700RPMで、10分間、混合し、それからSilverson高せん断ミキサー(Silverson Machines,Inc.,East Longmeadow、マサチューセッツ)を6000rpmで用いて混合し、pH値6.9を有するスラリーを得た;(B)ジルコニウムアルミニウムテトラクロハイドレックス(tetrachlohydrex)溶液を、285.39gのReheis AZP−908 スーパーウルトラファイン活性化ジルコニウムアルミニウムテトラクロハイドレックスGL(Reheis Inc.,バークリーハイツ、ニュージャージー)を286.59gの脱イオン化水に加えて、Yamato 2100ミキサー(Yamato Scientific America社、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて、700RPMで、10分間、混合することにより調製した。この溶液はpH3.1であった。(C)Yamato2100ホモジナイザーを用いて700RPMで混合しながら、工程(B)で調製したジルコニウムアルミニウムテトラクロハイドレックス溶液を工程(A)で調製したSAPO−34スラリーとを混ぜた。得られた混合物を次にSilverson高せん断ミキサーを用いて6000RPMで4分間混合した。これにより、pH値3.6を有するスラリーを得た。(D)767.7gのウルトラファインカオリン粘土(Engelhard社、Iselin,ニュージャージー)を700rpmで混合しながら、(C)で調製したスラリーに加えた。700RPMでの混合は10分間続け、pH3.6を有するスラリーを生じた。(E)当該スラリーは次に、Silversonミキサーを用いて、6000RPM、4分間、高せん断混合工程に供した。(F)脱イオン化水(95.52g)を(E)で調製したスラリーに加えた。当該スラリーを次に、Yamatoミキサーを用いて、700RPM、10分間で混合し、続いて、Silversonミキサーを用いて、6000RPM、4分間で高せん断混合した。この最終的なスラリーを以下、スラリー6と呼び、45重量%の固体(焼成ベース)を含み、そのなかで、40%がSAPO−34、10.6%がジルコニア−アルミナ(4.3重量% ZrO及び6.3重量% Al)、及び49.4%が粘土である。
【0159】
スラリー6の一部(750g)を実施例1.1と同じ条件下、Yamato DL−41噴霧乾燥器(Yamato Scientific America、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて噴霧乾燥した。噴霧乾燥生成物は2時間、空気中、650℃でマッフルファーネス中で焼成し、触媒6を得た。当該触媒は磨耗耐性試験に供した。触媒6は1.05%/時間のARIを与えた。
【0160】
実施例3.2
スラリー6の一部を250RPMで一定に混合しながら、水槽中、40℃、16時間で維持した。この処理の後、蒸発による水損失量を補うために、水を当該スラリーに加え、5分間、6000RPMで高せん断混合(Silverson高せん断ミキサー)した。このスラリーを以下、スラリー7と呼ぶ。
【0161】
スラリー7の一部をYamato DL−41噴霧乾燥器(Yamato Scientific America、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて、実施例1.1と同じ条件下で噴霧乾燥した。噴霧乾燥生成物を2時間、空気中、650℃でマッフルファーネス中で焼成し、触媒7を得た。当該触媒は磨耗耐性試験に供した。触媒7は0.43%/時間のARIを与えた。
【0162】
実施例3.3
スラリー7の一部を混合せずに3日間室温で放置した。このスラリーを以下、スラリー8と呼ぶ。
【0163】
スラリー8の一部をYamato DL−41噴霧乾燥器(Yamato Scientific America、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて、実施例1.1と同じ条件下で噴霧乾燥した。噴霧乾燥生成物を2時間、空気中、650℃でマッフルファーネス中で焼成し、触媒8を得た。当該触媒は磨耗耐性試験に供した。触媒8は0.20%/時間のARIを与えた。
【0164】
表3は、異なる熟成処理を受けたスラリー6、7及び8からの噴霧乾燥した触媒に関して得られた磨耗耐性試験の結果を要約したものである。磨耗耐性試験の結果は、噴霧乾燥前に熱処理及び熟成を受けたスラリー8が、磨耗に最も耐性を有する触媒を与えることを示す。
【表3】

【0165】
また、表4に示す通り、熟成効果はスラリー6、7及び8の粘度及び密度測定により説明される。
【0166】
触媒形成スラリーの密度(比重、g/cc)測定は、体積83.2ccを有するPaul N.Gardner U.S.標準重量/ガロンカップ、Gardco Cup83.2(Paul N.Gardner Company Inc.,Pompano Beach,フロリダ)を用いて、ASTM D1475に従って行った。
【0167】
カップ含量の正味重量、W(g)は、ポンド/ブリティッシュガロン(PBG)に係数0.1掛けて(PBG=W×0.1 lb/GL)変換される。例えば、123.82gのWを与えるスラリーサンプルは12.38lb/GLのPBGを有する。比重(SG)または密度は、PBGに係数0.1202を掛けて(SG=PBG×0.1202 g/cc)変換することにより得られる。例えば、12.382のPBGを与えるスラリーサンプルは1.49g/ccの密度を有する。
【0168】
粘度は既に述べたように、スピンドルNo.3を用いるブルックフィールド粘度計により測定した。
【表4】

【0169】
表4の結果は、熟成により触媒形成スラリーの粘度は増加するが、密度は大きく変化しないことを示す。最も高い粘度を有するスラリーは最も高い磨耗耐性を有する触媒を生成する。
【0170】
実施例4−その他の酸化アルミニウムを用いる触媒形成
前駆体溶液
実施例4.1−Nalco−1056酸化アルミニウム前駆体
45重量%固体を含むスラリーはこの手順に従って調製した:
(A)264.4gのSAPO−34モレキュラーシーブ(ウェットろ過ケーキ、LOI:45.54%)を179.2gの脱イオン水に添加し、Yamato D−4000ミキサー(Yamato Scientific America社、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて、700RPMで、10分間、混合し、次に、Silverson高せん断ミキサーモデル14RT−A(Silverson Machines,Inc.,East Longmeadow,マサチューセッツ)を用いて6000rpmで3分間混合し、30℃でpH値6.51を有するスラリーを与えた。
【0171】
(B)4%アルミナ及び25%シリカ含有の127.2gのNalco−1056コロイド状アルミナゾル(Nalcoケミカルカンパニー、ネーパービル、イリノイ州)を、PVP90K(BASFアメリカ、Bud Lake、ニュージャージー州)から調製した20gの10%ポリビニルピロリドン溶液に添加し、Yamatoミキサーを用いて700RPMで、10分間混合し、続いてSilversonミキサーを用いて6000rpm、3分間で高せん断混合することにより、コロイド状酸化アルミニウム溶液を調製した。この溶液は29℃でpH3.39を有した。
【0172】
(C)Yamatoミキサーを用いて700RPM、10分間混合しながら、工程(B)で調製したコロイド状酸化アルミニウム溶液を工程(A)で調製したSAPO−34スラリーと混合した。得られたミキサーを次に、Sileverson高せん断ミキサーを用いて、6000RPM、3分間で混合した。これにより、30℃でpH値4.47を有するスラリーが得られた。
【0173】
(D)209.2gのUSPウルトラファイン・カオリン粘土(Engelhard Corporation、Iselin、ニュージャージー州)を700RPMで混合しながら、(C)で調製したスラリーに添加した。700RPMでの混合を10分間続け、次に、Silverson高せん断ミキサーを用いて6000rpm、3分間、高せん断混合し、スラリーを得た。当該スラリーを以下、スラリー9と呼び、25℃で測定して、pH4.89を有した。スラリー9は45重量%の固体(焼成ベース)を含み、その中で、40%がSAPO−34、10.6%がアルミナ−シリカ、及び49.4%がカオリン粘土である。
【0174】
スラリー9の粘度は、ブルックフィールドLV粘度計を用いて測定して、#3スピンドルを10rpmで用いて、23℃で3380センチポアズ(3.38Pa−s)であった。
【0175】
スラリー9の一部(700g)をYamato DL−41噴霧乾燥器(Yamato Scientific America、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて、実施例1.1と同じ条件下で噴霧乾燥した。噴霧乾燥生成物を2時間、空気中、650℃でマッフルファーネス中で焼成し、触媒9得た。当該触媒は磨耗耐性試験に供した。触媒9は6.81重量%/時間のARIを与えた。
【0176】
実施例4.2−Nalco−8676酸化アルミニウム前駆体
45重量%固体を含むスラリーはこの手順に従って調製した:
(A)661.04gのSAPO−34モレキュラーシーブ(ウェットろ過ケーキ、LOI:45.54%)を319.34gの脱イオン水に添加し、Yamato D−4000ミキサー(Yamato Scientific America社、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて、700RPMで、10分間、混合し、次に、Silverson高せん断ミキサーモデルL4RT−A(Silverson Machines,Inc.,East Longmeadow,マサチューセッツ)を用いて6000rpmで3分間混合し、27℃でpH値6.98を有するスラリーを与えた。
【0177】
(B)10%アルミナ含有の450gのNalco−8676コロイド状アルミナゾル(Nalcoケミカルカンパニー、ネーパービル、イリノイ州)を、Yamatoミキサーを用いて700RPMで10分間混合しながら、工程(A)で調製したSAPO−34スラリーと混合した。得られた混合物は次にSilverson高せん断ミキサーを用いて6000rpmで、3分間、混合した。これにより、27℃で、pH値4.53のスラリーを得た。
【0178】
(C)569.62gのUSPウルトラファイン・カオリン粘土(Engelhard Corporation、Iselin、ニュージャージー州)を700RPMで混合しながら、(B)で調製したスラリーに添加した。700RPMでの混合を10分間続け、次に、Silverson高せん断ミキサーを用いて6000rpm、3分間、高せん断混合し、スラリーを得た。当該スラリーを以下、スラリー10と呼び、25℃で測定して、pH4.28を有した。スラリー10は45重量%の固体(焼成ベース)を含み、その中で、40%がSAPO−34、5%がアルミナ、及び55%がカオリン粘土である。
【0179】
スラリー10の粘度は、ブルックフィールドLV粘度計を用いて測定して、#3スピンドルを10rpmで用いて、29℃で240センチポアズ(0.24Pa−s)であった。
【0180】
スラリー10の一部(700g)をYamato DL−41噴霧乾燥器(Yamato Scientific America、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて、実施例1.1と同じ条件下で噴霧乾燥した。噴霧乾燥生成物を2時間、空気中、650℃でマッフルファーネス中で焼成し、触媒10得た。当該触媒は磨耗耐性試験に供した。触媒10は10.88重量%/時間のARIを与えた。
【0181】
実施例4.3−硝酸アルミニウム酸化アルミニウム前駆体
40重量%固体を含むスラリーはこの手順に従って調製した:
(A)264.4gのSAPO−34モレキュラーシーブ(ウェットろ過ケーキ、LOI:45.54%)を99.5gの脱イオン水に添加し、Yamato D−4000ミキサー(Yamato Scientific America社、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて、700RPMで、10分間、混合し、次に、Silverson高せん断ミキサーモデルL4RT−A(Silverson Machines,Inc.,East Longmeadow,マサチューセッツ)を用いて6000rpmで3分間混合し、26℃でpH値7.25を有するスラリーを得た。
【0182】
(B)138.2gの硝酸アルミニウム(Nalcoケミカルカンパニー、ネーパービル、イリノイ州)を49.7gの脱イオン水に添加し、Yamatoミキサーを用いて700RPMで10分間混合し、次にSilversonミキサーを用いて6000rpmで、3分間、高せん断混合することにより、硝酸アルミニウム溶液を調製した。この溶液は26℃でpH1.4を有した。
【0183】
(C)前記硝酸アルミニウム溶液を、Yamatoミキサーを用いて700RPM、10分間混合しながら、工程(A)で調製したSAPO−34スラリーと混合した。得られた混合物を次にSilverson高せん断ミキサーを用いて6000RPMで、3分間、混合した。これにより、29℃でpH2.24を有するスラリーが得られた。
【0184】
(D)231.2gのUSPウルトラファイン・カオリン粘土(Engelhard Corporation、Iselin、ニュージャージー州)を700RPMで混合しながら、(C)で調製したスラリーに添加した。これにより非常に粘度の高いスラリーが得られ、これを53.8gの脱イオン水及び61.6gの15%アンモニア溶液を加えることにより、希釈し、当該スラリーをさらに処理した。当該スラリーを700RPM、10分間混合し、次にSilverson高せん断ミキサーを用いて、6000RPM、3分間で高せん断混合を行い、スラリーを生じた。このスラリーを以下、スラリー11とし、23℃でpH3.81を有した。スラリー11は40重量%の固体を含有し(焼成ベース)、この中で、40%はSAPO−34、5.3%はアルミナ及び54.7%はカオリン粘土である。
【0185】
スラリー11の粘度は、ブルックフィールドLV粘度計、#3スピンドルを10rpmで用いて、測定できなかった。
【0186】
スラリー11の一部(700g)をYamato DL−41噴霧乾燥器(Yamato Scientific America、オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて、実施例1.1と同じ条件下で噴霧乾燥した。噴霧乾燥生成物を2時間、空気中、650℃でマッフルファーネス中で焼成し、触媒11得た。当該触媒は磨耗耐性試験に供した。触媒11は10.40重量%/時間のARIを与えた。
【0187】
表5は触媒9、10、及び11に関して得られた磨耗耐性試験の結果をまとめたものである。磨耗耐性試験の結果は、触媒9、10、及び11が実施例1、2または3において調製された触媒のいずれよりもずっと磨耗耐性が低いことを示す。
【表5】

【0188】
実施例5−NMR分光法による酸化アルミニウム前駆体溶液中のアルミニウム種の同定
酸化アルミニウム前駆体溶液をいくつか調製し、27Al NMR分光法により分析した。
【0189】
溶液A:106gのアルミニウムクロロハイドレートMicroDry(ACH、Reheis社から。Berkeley Hights、ニュージャージー州)を984gの脱イオン水に添加し、Yamato2100ホモジナイザー(Yamato Scientific America Inc.,オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて700RPM、10分間で混合することにより、10.6重量%のアルミニウムクロリドロールを含む溶液を調製した。
【0190】
溶液B:500gの溶液Aを水槽中、16時間、密封したポリプロピレン容器内で40℃で維持した。
【0191】
溶液C:212gのアルミニウムクロリドロール溶液REACH501クロリドロール50%(Reheis Inc.から市販、Berkeley Heights,ニュージャージー)を788gの脱イオン水を用いて希釈し、Yamato2100ホモジナイザー(Yamato Scientific America Inc.,オレンジバーグ、ニューヨーク)を用いて700RPMで10分間混合することにより、10.6重量%のアルミニウムクロリドロールを含む溶液を調製した。
【0192】
溶液D:4%アルミナ及び26%シリカを含むNALCO−1056の溶液をNalcoケミカルカンパニー(ネーパービル、イリノイ州)から購入した。
【0193】
溶液E:10%アルミナを含有するNALCO−8676の溶液をNalcoケミカルカンパニー(ネーパービル、イリノイ州)から購入した。
【0194】
溶液F:溶液Eの一部を水槽中、16時間、密封したポリプロピレン容器内で40℃で維持した。
【0195】
溶液A、B、C、D、E及びFをBruker DSX 500 NMR分光法を用いて、H周波数500.13MHz及び27Al周波数130.31MHzで、シングル90°(27Al)パルス及び循環遅延(recycle delay)1秒を用いて、27Al NMR分光法により分析した。
【0196】
これらの条件下で溶液A、B及びCに関して得た27Al NMRスペクトルを図1に示す。これら全ての溶液において、NMRスペクトルは70ppm、11.3ppm、10.7ppm、0ppm及び−25ppmで広いピークを示し、これらは高及び中間分子量のアルミニウム種の存在を示すものであり、分子当たりほぼ約80〜約40アルミニウム原子を有する。62−63ppmでの非常に鋭いピークは、Al13−マー、またはAln−マーなどのアルミニウム13マー(Al13−マー)と同じまたは類似の構造内で、12個の8面体AlOに囲まれた、四面体AlOの特徴を示すものである(n>13だが、アルミニウムのオリゴマーは8面体アルミニウムにより囲まれた四面体アルミニウム部位を有する)。62−63ppmシグナルは四面体アルミニウム部位に対応する。溶液Bの場合、約12%のアルミニウム原子がAl13−マー構造様状態にあると推定され、溶液Aの場合、4%のアルミニウム原子しかAl13−マー構造様状態にないと推定される。これらの結果は、新しいアルミニウムクロリドロールの溶液の熟成により、27Al NMR分光法における62−63ppmでの非常に鋭いピークに関係して、Al13−マー構造様状態のアルミニウム種の量が増加することを示す。
【0197】
溶液D、E及びFに関して得られたスペクトルは図2に示す。溶液E及びFに関して、62−63ppmでは低強度のピークが見られるが、溶液DのNMRスペクトルではそのようなピークが識別できない。
【0198】
いかなる理論に縛られることも望まないが、27Al NMRにおいて62−63ppmの鋭いピークに対応するアルミニウム種は、モレキュラーシーブ触媒形成に用いる場合、独特な磨耗耐性を生じるようである。このアルミニウム種の量は、触媒形成プロセス時に、アルミニウム含有溶液またはスラリーに適当な熟成を行うことにより制御できる。27Al NMR分光法における62−63ppmの鋭いピークの存在は、Al13−マー種[AlOAl12(OH)24(HO)127+のAlO基の存在を明らかに示すものである(J.J.Fitzgerald and Loren E.Johnson,Journal of Magnetic Resonance(磁気共鳴ジャーナル) 84、121−131(1989);J.J.Fitzgerald and A.H.Rosenberg,Antiperspirants and deodorants(制汗剤及びデオドラント)、第2版、Karl Laden編、Marcel Dekker,Inc,(1999)を参照)。
【0199】
実施例5−高圧液体クロマトグラフィー及び相対結合効率
酸化アルミニウム前駆体溶液をいくつか調製し、高圧液体クロマトグラフィーにより分析した。
【0200】
溶液X:250gのアルミニウムクロロハイドレートMicroDry(ACH、Reheis社から市販、Berkeley Heights、ニュージャージー)を250gの脱イオン水に添加し、Yamatoモデル2100ホモジナイザー(Yamato Scientific America Inc.,オレンジバーグ、ニューヨーク州)を用いて250rpmで透明溶液が得られるまで混合することにより、50重量%のアルミニウムクロリドロールを含有する溶液を調製した。
【0201】
溶液Y:250gの溶液Xを水槽中、16時間、密封したポリプロピレン容器内で40℃で維持した。
【0202】
溶液Z:市販のACH溶液、クロリドロール50%溶液、Lot.R298−37をReheis社(Berkeley Heights、ニュージャージー州)から購入した。
【0203】
溶液X、Y及びZを高圧液体クロマトグラフィー分析に供した。各サンプルは異なる保持時間でいくつかのピークを表した。この分析方法において、最も高い分子量を有するオリゴマー種が最初に溶出し、最も低い分子量種は最後に溶出する。サンプルX、Y及びZに関して得られたHPLCクロマトグラムは異なるピーク領域を有するいくつかのピークを示した。データを表5に示し、ここでP1〜P5は観測された各ピークであり、P1〜P5の下の括弧内の値は各ピークの保持時間を示し、P1〜P5の欄の下の数字は標準化ピーク領域を示す。表5の最後の欄は相対結合効率(Relative Binding Efficiency)(RBE)であり、P1の比に対応し、溶液XのP1の比に比例する。
【表6】

【0204】
表5に示す結果は、新しいACH溶液を熟成することにより、RBEが増加するが、一方、市販ACH溶液はすでに非常に高いRBEを有することを示す。
【0205】
本発明は、特定の実施態様を参照することにより記載及び説明されているが、当業者であれば本発明がここに説明するまでもなく種々の改良にも適していることを当然に認識できる。例えば、本発明のレキュラーシーブ触媒組成物は、オレフィンの相互変換(inter−conversion)、オキシジェネートのガソリン変換反応、無水マレイン酸、無水フタル酸、及びアクリロニトリル形成、気相メタノール合成、種々のフィッシャートロプシュ反応にも有用であると考えられる。さらに、栓流、固定床または流動床プロセスが組み合わせて用いられ、特に単一または複数の反応器システム内の異なる反応領域において用いることが考えられる。また、ここに記載のモレキュラーシーブ触媒組成物は吸収剤、吸着剤、気体分離器、洗剤、浄水器として、及びその他の種々の用途、例えば農業及び園芸において有用であると考えられる。さらに、本発明のモレキュラーシーブ触媒組成物は1以上のその他のモレキュラーシーブを組み合わせて含むことも考えられる。従って、請求の範囲に対する参照は本発明の実際の範囲を決定する目的においてのみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】図1は、熟成または未熟性の調製アルミニウム・クロロハイドレート(ACH)溶液の27Al NMRスペクトルを示す。
【図2】図2は、熟成または未熟性の調製NALCO−1056及びNALCO−8676溶液の27Al NMRスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モレキュラーシーブ触媒粒子を生成する方法であって、当該方法は以下の工程を含む:
a)液体媒体中に含まれた、アルミニウム含有無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液を供給する工程;
b)アルミニウム含有無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液及びモレキュラーシーブと、さらに任意でその他の形成剤とを混合して、触媒形成スラリーを形成する工程;
c)触媒形成スラリーを熟成させて、62−63ppmでシャープな27Al NMRピークを有するオリゴマー体のアルミニウム含有前駆体のアルミニウム原子の割合が前記スラリーにおいて生じ、またはその存在割合を前記スラリーにおいて増加させる工程;及びd)前記触媒形成スラリーからモレキュラーシーブ触媒粒子を形成する工程。
【請求項2】
工程c)の熟成が、触媒形成スラリー中のアルミニウム含有前駆体の少なくとも5原子%のアルミニウム原子が、分子当たり10〜75アルミニウム原子を有するオリゴマー体となるような温度及び時間で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程c)の熟成が、触媒形成スラリー中のアルミニウム含有前駆体の少なくとも10原子%のアルミニウム原子が、分子当たり10〜75アルミニウム原子を有するオリゴマー体となるような温度及び時間で行われる、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
工程d)が行われる前において、触媒形成スラリー中のアルミニウム含有前駆体の少なくとも6原子%のアルミニウム原子が、62−63ppmでシャープな27Al NMRピークを有するオリゴマー体である、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程d)が行われる前において、触媒形成スラリー中のアルミニウム含有前駆体の少なくとも8原子%のアルミニウム原子が、62−63ppmでシャープな27Al NMRピークを有するオリゴマー体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
モレキュラーシーブ触媒粒子の生成方法であって、当該方法は以下の工程:
a)液体媒体中において無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液を調製する工程;
b)前記無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液とモレキュラーシーブ、及び任意でその他の形成剤とを混合して、触媒形成スラリーを形成する工程;
c)無機酸化物の懸濁液を熟成する工程;及び
d)前記触媒形成スラリーからモレキュラーシーブ触媒粒子を形成する工程;
を含み、ここで、前記工程c)の熟成が、触媒形成スラリーが1.02〜1.25の相対結合効率(Relative Binding Efficiency)を有するような温度及び持続時間で行われる、方法。
【請求項7】
工程c)の熟成が、触媒形成スラリーが1.02〜1.2、好ましくは1.18、より好ましくは1.15の相対結合効率を有するような温度及び時間で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
モレキュラーシーブ触媒粒子を生成する方法であって、当該方法は以下の工程:
a)液体媒体中において無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液を調製する工程;
b)無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液とモレキュラーシーブ、及び任意でその他の形成剤とを混合して、触媒形成スラリーを形成する工程;
c)前記触媒形成スラリーを熟成する工程;及び
d)前記触媒形成スラリーからモレキュラーシーブ触媒粒子を形成する工程;
を含み、ここで、工程c)の熟成は、工程d)の後に得られたモレキュラーシーブ触媒粒子が1.0未満のARI値を有するような温度及び持続時間で行われる、方法。
【請求項9】
工程d)の後に得られたモレキュラーシーブ触媒粒子が0.5未満のARI値を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程c)での熟成が、触媒形成スラリーを温度0℃〜100℃に維持しながら、少なくとも2時間、好ましくは少なくとも4時間で行われる、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
工程c)での熟成が、触媒形成スラリーを温度15℃〜80℃に維持しながら行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程c)で触媒形成スラリーの熟成が、少なくとも5時間、好ましくは少なくとも8時間で行われる、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
工程c)で触媒形成スラリーの熟成が、24時間以下で行われる、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液が、工程b)におけるその他の形成成分との混合前には熟成されない、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液が、工程b)においてその他の成分と混合される前に、4時間以下、温度15℃〜50℃で維持される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
工程b)で用いられるモレキュラーシーブの少なくとも一部は未焼成のモレキュラーシーブ触媒粒子の形態で提供される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
液体媒体が水であり、工程b)で調製される触媒形成スラリーが温度23℃〜30℃、ブルックフィールドLV粘度計、#3スピンドルを用いて10rpmで測定して、1.0〜10.0Pa−sの粘度を有し、好ましくは1.2〜9.5Pa−sの粘度を有する、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
モレキュラーシーブ触媒粒子の生成方法であって、当該方法は以下の工程:
a)液体媒体中に含まれた無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液を提供する工程;
b)無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液を熟成する工程;
c)無機酸化物前駆体の溶液または懸濁液とモレキュラーシーブ、及び任意でその他の形成剤とを混合して、触媒形成スラリーを形成する工程;
d)触媒形成スラリーからモレキュラーシーブ触媒粒子を形成する工程;
を含み、ここで、工程b)の熟成は工程d)の後に得られたモレキュラーシーブ触媒粒子が1.0未満のARI値を有するような温度及び持続時間で行われる、方法。
【請求項19】
工程d)の後に得られたモレキュラーシーブ触媒粒子が0.5未満のARI値を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程c)で形成された触媒形成スラリーが、工程d)でモレキュラーシーブ触媒粒子を形成する前に、温度15℃〜50℃、12時間以下で維持され、好ましくは8時間以下で維持される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
無機酸化物前駆体が、アルミニウムクロロハイドレート及びアルミニウム−ジルコニウムクロロハイドレート、及びこれらの混合物からなる群より選択され、無機酸化物前駆体溶液または懸濁液の熟成が、工程b)において、無機酸化物の溶液または懸濁液を温度10℃〜80℃で、少なくとも1時間維持し、好ましくは少なくとも1.5時間、より好ましくは少なくとも2時間、さらにより好ましくは少なくとも3時間、最も好ましくは少なくとも4時間で維持することにより行われる、請求項18〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
工程b)で無機酸化物の溶液または懸濁液が維持される温度が15℃〜70℃であり、好ましくは20℃〜50℃である、請求項18〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
工程b)の熟成が、少なくとも5時間、好ましくは少なくとも12時間、より好ましくは少なくとも24時間、最も好ましくは少なくとも48時間行われる、請求項18〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
工程c)で用いるモレキュラーシーブの少なくとも一部が未焼成モレキュラーシーブ触媒粒子の形態で提供される、請求項18〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
液体媒体が水であり、工程c)で調製される触媒形成スラリーが、ブルックフィールドLV粘度計、#3スピンドルを10rpmで用いて、温度23℃〜30℃で測定して、粘度1.0〜10.0Pa−s、好ましくは1.2〜9.5Pa−sである、請求項18〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
液体媒体が水である、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
無機酸化物前駆体が、酸化アルミニウム前駆体及び酸化ジルコニウム前駆体を含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
無機酸化物前駆体が、酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウム−ジルコニウム前駆体である、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
無機酸化物前駆体が、アルミニウムクロロハイドレート及びアルミニウム−ジルコニウムクロロハイドレートからなる群より選択される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
触媒形成スラリーがさらに、マトリックス物質を含み、好ましくは粘土、より好ましくはカオリン粘土を含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
触媒粒子の形成が噴霧乾燥により行われる、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
さらに、モレキュラーシーブ触媒粒子を焼成する工程を含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
触媒形成スラリーであって、当該触媒形成スラリーは:
(a)モレキュラーシーブ粒子;
(b)酸化アルミニウムの加水分解形態;
(c)水;
(d)任意で、マトリックス粒子;
を含み、ここで、酸化アルミニウムの加水分解形態の少なくとも5原子%、好ましくは少なくとも6原子%、より好ましくは少なくとも10原子%が、62〜63ppmでシャープな27Al NMRピークを有するオリゴマー体である、触媒形成スラリー。
【請求項34】
さらに、酸化ジルコニウムの加水分解形態を含む、請求項33に記載の触媒形成スラリー。
【請求項35】
触媒形成スラリーが、ブルックフィールドLV粘度計、#3スピンドルを10rpmで用いて、温度23℃〜30℃で測定した場合、粘度1.0〜10.0Pa−s、好ましくは1.2〜9.5Pa−sを有する、請求項33または34に記載の触媒形成スラリー。
【請求項36】
モレキュラーシーブがメタロアルミノリン酸モレキュラーシーブである、請求項1〜32のいずれかに記載の方法または請求項33〜35のいずれかに記載の触媒形成スラリー。
【請求項37】
モレキュラーシーブがシリコアルミノリン酸モレキュラーシーブである、請求項36に記載の方法または触媒形成スラリー。
【請求項38】
モレキュラーシーブがSAPO−18、SAPO−34、SAPO−44、それらの連晶(intergrown)形態、それらの金属含有形態、及びこれらの混合物から選択される、請求項37に記載の方法または触媒形成スラリー。
【請求項39】
モレキュラーシーブ触媒であって、当該モレキュラーシーブ触媒は、シリコアルミノリン酸モレキュラーシーブ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、及び粘土を含み、ここで前記触媒のARIは1.0未満であり、好ましくは0.7未満、より好ましくは0.5未満、最も好ましくは0.2未満である、モレキュラーシーブ触媒。
【請求項40】
アルミニウム対ジルコニウム原子比が、0.1:20であり、好ましくは2.0:15であり、より好ましくは3.0:10.0である、請求項39のモレキュラーシーブ触媒。
【請求項41】
モレキュラーシーブ触媒が、SAPO−18、SAPO−34、SAPO−44、それらの連晶形態、それらの金属含有形態、及びこれらの混合物から選択される、請求項39または40に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項42】
触媒内のモレキュラーシーブの量が、2重量%〜85重量%、好ましくは20重量%〜80重量%である、請求項39〜41のいずれかに記載のモレキュラーシーブ触媒。
【請求項43】
触媒内の酸化アルミニウムと酸化ジルコニウムとの合計量が4重量%〜30重量%である、請求項39〜42のいずれかに記載のモレキュラーシーブ触媒。
【請求項44】
触媒の粒子サイズ分布が15〜200ミクロンである、請求項39〜43のいずれかに記載のモレキュラーシーブ触媒。
【請求項45】
有機化合物を含む供給原料を変換生成物に変換する方法であって、供給原料と請求項1〜32のいずれかに記載の方法により調製されたモレキュラーシーブ触媒粒子の活性型または請求項39〜44のいずれかに記載のモレキュラーシーブ触媒の活性型を含む触媒とを接触させる工程を含む、方法。
【請求項46】
前記供給原料がオキシジェネートを含み、前記変換生成物が1以上のオレフィンを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
供給原料が、メタノール、エタノール、プロパノール、ジメチルエーテル、またはこれらの混合物を含む、請求項45または46に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−512941(P2007−512941A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533852(P2006−533852)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/026547
【国際公開番号】WO2005/039761
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】