説明

モータルーム内部品搭載構造およびモータルーム内衝撃吸収構造

【課題】 車両の前面衝突時に、モータルーム内に設置する硬物部品の車両後方への移動を抑える。
【解決手段】 モータルーム3内に収容する車両駆動用のモータ17を、少なくとも車両後端側がフロントサイドメンバ11に連結されているサスペンションメンバ19に取り付け、空気コンプレッサ25を、モータ17の車両前方かつ上方に一体化するよう取り付ける。両端をサイドメンバ11に連結する部品搭載フレーム13上には電力変換装置15を設置する。空気コンプレッサ25が、車両の前面衝突時に、車両後方へ移動して部品搭載フレーム13に干渉して衝撃を吸収する際に、モータ17および空気コンプレッサ25が下方へ移動し、このときサスペンションメンバ19が、その車両後端側のフロントサイドメンバ11への後方連結部21を支点として回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部におけるモータルーム内部品搭載構造およびモータルーム内衝撃吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載する高強度の硬物部品として、例えば電動エアコンコンプレッサは、ガソリンエンジンと電気モータの双方を駆動源として使用する、いわゆるハイブリッド車両では、従来のガソリン車と同様にエンジンに取り付けている。
【0003】
一方、電気自動車では、例えば下記特許文献1に記載されているように、高強度の硬物部品となるエアコンコンプレッサを、モータルーム内にて、車体構造部材であるサイドメンバに連結した部品搭載フレーム上に取り付けている。
【特許文献1】特開平8−310252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のモータルーム内部品搭載構造では、エアコンコンプレッサなどの高強度の硬物部品を、部品搭載フレーム上に取り付けているので、例えば車両の前面衝突時に、硬物部品がモータルーム後方に移動し、モータルーム後方の車体パネル部品の変形量を増大させる恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、車両の前面衝突時に、モータルーム内に設置する硬物部品の車両後方への移動を抑えることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両前部のモータルーム内に収容する車両駆動用のモータに、車体構造部材に比べて高強度な硬物部品を取り付けるとともに、前記モータの上方に配置する部品を支持する部品搭載フレームの車幅方向両端をサイドメンバに連結し、前記硬物部品の少なくとも一部を前記部品搭載フレームより車両前方に配置することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車体構造部材に比べて高強度な硬物部品を、車両駆動用のモータに取り付けた上で、部品搭載フレームより車体前方に配置することで、車両の前面衝突時に、硬物部品がその車両後方に位置する部品搭載フレームに干渉して衝撃を吸収しながら、この衝撃をサイドメンバに効率よく伝達し、モータルーム内に設置する硬物部品の車両後方への移動を抑えることができ、モータルーム後方の車体パネル部品の変形量増大を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係わるモータルーム内部品搭載構造を示す、車両前部の側面断面図、図2は、モータルーム内の平面図である。なお、図1,2中の矢印FRで示す方向が車両前方である。
【0010】
車両1の前部のモータルーム3は、図1に示す前方のラジエータ5(図2では省略)と、後方のダッシュパネル7と、車幅方向両側のフードリッジパネル9との間に形成されている。
【0011】
また、車両1の車幅方向両側のフードリッジパネル9の下部には、車両前後方向に延びるサイドメンバであるフロントサイドメンバ11を設けてある。フロントサイドメンバ11は、図1に示すようにモータルーム3から車両後方に向かうに従って屈曲部11aにて下方に屈曲し、モータルーム3の後方の車室側部分では車両の床下位置にて車両後方に延びている。
【0012】
モータルーム3内における左右一対のフロントサイドメンバ11には、車幅方向に延びる2本の部品搭載フレーム13の端部を連結し、部品搭載フレーム13上には、インバータなどの電力変換装置15を設置する。電力変換装置15は、車両1に搭載している図示しない燃料電池で発電した電力を、例えば直流から交流に変換して後述する車両駆動用のモータ17に供給するなどの機能を備える。
【0013】
車両駆動用のモータ17は、電力変換装置15の下方に位置し、その下部後方側をサスペンションメンバ19上に固定する一方、その上部を図示しないブラケットなどを介してフロントサイドメンバ11に固定する。図3は、図2における部品搭載フレーム13,電力変換装置15およびダッシュパネル7を省略した平面図である。
【0014】
サスペンションメンバ19は、図4に平面図、図5に側面図としてフロントサイドメンバ11とともに示すように、左右のフロントサイドメンバ11に対し、後端を後方連結部21にて連結固定するとともに、前端部付近の上部を前方連結部23にて固定する。
【0015】
そして、上記したモータ17の車両前方かつ上方位置には、硬物部品としての空気コンプレッサ25を一体に取り付ける。このとき空気コンプレッサ25は、その少なくとも一部を、部品搭載フレーム13より車両前方に配置する。空気コンプレッサ25は、図示しない燃料電池に供給する空気を圧縮する。
【0016】
なお、上記したフロントサイドメンバ11,サスペンションメンバ19,部品搭載フレーム13は、車体構造部材を構成している。
【0017】
上記した本実施形態によるモータルーム内部品搭載構造によれば、車両1の前面衝突時に、空気コンプレッサ25が車両後方に向けて衝撃を受ける際に、その後方の部品搭載フレーム13に干渉して衝撃を吸収し、この衝撃はさらに、部品搭載フレーム13を連結しているサイドメンバ11に効率よく伝達される。
【0018】
また、空気コンプレッサ25は、部品搭載フレーム13に干渉した後、その下部後方に位置するモータ17を下方に移動させるよう作用し、この際、サイドメンバ11に連結部である後方連結部21にて連結しているサスペンションメンバ19が、この後方連結部21を中心として、図1中で矢印Aで示す反時計方向に回転し、これに伴いモータ17および空気コンプレッサ25が下方へ移動する。
【0019】
この結果、モータルーム3内に設置する硬物部品である空気コンプレッサ25の車両後方への移動を抑えることができ、モータルーム3後方の車体パネル部品であるダッシュパネル7の変形量増大を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係わるモータルーム内部品搭載構造を示す、車両前部の側面断面図である。
【図2】図1のモータルーム内の平面図である。
【図3】図2における部品搭載フレーム,電力変換装置およびダッシュパネルを省略した平面図である。
【図4】サスペンションメンバをフロントサイドメンバとともに示す平面図である。
【図5】サスペンションメンバをフロントサイドメンバとともに示す側面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 車両
3 モータルーム
11 フロントサイドメンバ(車体構造部材)
13 部品搭載フレーム
17 車両駆動用のモータ
19 サスペンションメンバ
21 後方連結部
25 空気コンプレッサ(硬物部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部のモータルーム内に収容する車両駆動用のモータに、車体構造部材に比べて高強度な硬物部品を取り付けるとともに、前記モータの上方に配置する部品を支持する部品搭載フレームの車幅方向両端をサイドメンバに連結し、前記硬物部品の少なくとも一部を前記部品搭載フレームより車両前方に配置することを特徴とするモータルーム内部品搭載構造。
【請求項2】
前記モータを、少なくとも車両後端側が前記サイドメンバに連結されているサスペンションメンバに取り付け、前記硬物部品を、前記モータの車両前方かつ上方に配置することを特徴とする請求項1に記載のモータルーム内部品搭載構造。
【請求項3】
前記硬物部品は、空気コンプレッサであることを特徴とする請求項1または2に記載のモータルーム内部品搭載構造。
【請求項4】
車両前部のモータルーム内に収容する車両駆動用のモータに、車体構造部材に比べて高強度な硬物部品を取り付け、この硬物部品が車両の前面衝突時に車両後方へ移動する際に、前記モータの上方に位置して部品を搭載する部品搭載フレームに干渉して衝撃を吸収するとともに、この衝撃を前記部品搭載フレームの両端に連結するサイドメンバが吸収することを特徴とするモータルーム内衝撃吸収構造。
【請求項5】
前記モータを、少なくとも車両後端側が前記サイドメンバに連結されているサスペンションメンバに取り付けるとともに、前記硬物部品を、前記モータの車両前方かつ上方に配置し、前記硬物部品が、車両後方へ移動して前記部品搭載フレームに干渉して衝撃を吸収する際に、前記サスペンションメンバが、その車両後端側の前記サイドメンバへの連結部を支点として回転することで、前記硬物部品および前記モータが下方に移動することを特徴とする請求項4に記載のモータルーム内衝撃吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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