説明

モータ装置、及びロボット装置

【課題】駆動時の消費電力を低減する。
【解決手段】回転子の少なくとも一部に掛けられる伝達部と、少なくとも複数の容量性駆動素子を有し、容量性駆動素子によって伝達部を移動させる駆動部と、回転子と伝達部との間を回転力伝達状態にして伝達部を移動させる駆動動作と、回転子と伝達部との間を回転力非伝達状態にして伝達部を所定の位置に戻す復帰動作とを、駆動部に行わせる制御部と、複数の容量性駆動素子のうち少なくとも1つの容量性駆動素子に放出させた電荷を容量性駆動素子に供給する電荷受け渡し部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置、及びロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旋回系機械を駆動させるアクチュエータとして、モータ装置が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。近年では、ヒューマノイドロボットの関節部分などに多くのモータ装置が使用されており、より消費電力の少ないモータ装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−311237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようなモータ装置は、供給された電力の使用効率を高くすることができないことがあり、この場合に消費電力が多くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、消費電力を低減することができるモータ装置、及びロボット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、回転子の少なくとも一部に掛けられる伝達部と、少なくとも複数の容量性駆動素子を有し、前記容量性駆動素子によって前記伝達部を移動させる駆動部と、前記回転子と前記伝達部との間を回転力伝達状態にして前記伝達部を移動させる駆動動作と、前記回転子と前記伝達部との間を回転力非伝達状態にして前記伝達部を所定の位置に戻す復帰動作とを、前記駆動部に行わせる制御部と、前記複数の容量性駆動素子のうち少なくとも1つの前記容量性駆動素子に放出させた電荷を前記容量性駆動素子に供給する電荷受け渡し部とを備えることを特徴とするモータ装置である。
【0007】
また、本発明の一実施形態は、回転子の少なくとも一部に掛けられる伝達部と、少なくとも容量性駆動素子を有し、前記容量性駆動素子によって前記伝達部を移動させる駆動部と、前記回転子と前記伝達部との間を回転力伝達状態にして前記伝達部を移動させる駆動動作と、前記回転子と前記伝達部との間を回転力非伝達状態にして前記伝達部を所定の位置に戻す復帰動作とを、前記駆動部に行わせる制御部と、前記容量性駆動素子から電荷を放出させて容量素子に蓄積させ、前記容量素子に蓄積させた電荷を前記容量性駆動素子に供給する電荷受け渡し部とを備えることを特徴とするモータ装置である。
【0008】
また、本発明の一実施形態は、上記のモータ装置を備えることを特徴とするロボット装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、モータ装置は、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態によるモータ装置の構成の一例を示す構成図である。
【図2】本実施形態における回転子の構成の一例を示す構成図である。
【図3】本実施形態における駆動部の構成の一例を示す断面図である。
【図4】本実施形態におけるモータ装置の接続の一例を示す構成図である。
【図5】本実施形態における制御部の構成の一例を示すブロック図である。
【図6】本実施形態における制御部と電荷受け渡し部との構成の一例を示すブロック図である。
【図7】本実施形態におけるオイラーの原理に基づく伝達部と回転子との接触角と、伝達効率との関係の一例を示すグラフである。
【図8】本実施形態における駆動部に供給される電圧波形の一例を示すグラフである。
【図9】本実施形態における駆動部の駆動準備動作の一例を示す断面図である。
【図10】本実施形態における駆動部の駆動動作の一例を示す断面図である。
【図11】本実施形態における駆動部の復帰動作の一例を示す断面図である。
【図12】本実施形態における複数の駆動部に供給される電圧波形の一例を示すグラフである。
【図13】本実施形態における制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図14】本実施形態における制御部が出力する電圧波形と、駆動部に供給される電圧波形との一例を示すグラフである。
【図15】本発明の第2の実施形態によるモータ装置の構成の一例を示す構成図である。
【図16】本発明の第3の実施形態によるモータ装置の構成の一例を示す構成図である。
【図17】本実施形態における6個の電荷受け渡し部を備えるモータ装置の構成の一例を示す構成図である。
【図18】本発明の第4の実施形態によるモータ装置の構成の一例を示す構成図である。
【図19】本実施形態における容量素子を備える電荷受け渡し部の構成の一例を示すブロック図である。
【図20】本実施形態における容量素子を備える電荷受け渡し部を複数備えるモータ装置の構成の一例を示す構成図である。
【図21】本発明の第5の実施形態によるロボット装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るモータ装置MTRの一例を示す概略構成図である。
【0012】
[モータ装置MTRの構成]
図1に示すように、モータ装置MTRは、回転子SFと、複数の伝達部BTと、複数の駆動部ACと、支持部材BSと、制御部50と、電荷受け渡し部60とを備えている。モータ装置MTRは、回転子SF及び複数の駆動部ACが支持部材BSによって支持された状態になっており、複数の駆動部ACにそれぞれ接続されている伝達部BTが回転子SFに掛けられている構成になっている。
また、本実施形態のモータ装置MTRは、U相と、V相と、W相とからなる各相の駆動部ACを、回転子SFの回転軸方向に沿って備えている。つまり、本実施形態のモータ装置MTRは、駆動部ACとしての、U相の駆動部ACUと、V相の駆動部ACVと、W相の駆動部ACWとを備えている。U相の駆動部ACUは、伝達部BTとしての、U相の伝達部BTUを備えている。同様に、V相の駆動部ACVは、V相の伝達部BTVを、W相の駆動部ACWは、W相の伝達部BTWを備えている。なお、以下の説明において、特定の駆動部を示す必要がない場合には、単に駆動部ACと記載する。また、以下の説明において、特定の伝達部を示す必要がない場合には、単に伝達部BTと記載する。
【0013】
また、例えば、U相の駆動部ACUと、V相の駆動部ACVと、W相の駆動部ACWとは、回転子SFの円周方向に等角度でずれた位置、具体的には120°ずつずれた位置に配置されている。伝達部BTは、例えば、回転子SFの回転軸方向に沿って、それぞれ幅(回転軸方向の寸法)を等しくして配置されている。
【0014】
図2は、回転子SFの構成を示す図である。
同図に示すように、回転子SFは、中実の円柱状に形成されており、軸部11と、拡径部12とを有している。軸部11は、例えば不図示のベアリング機構などを介して支持部材BSの軸受部41(図1参照)に回転可能に支持されている。拡径部12は、軸部11に対して径が大きく形成された部分である。軸部11及び拡径部12は、共通の回転軸を有するように形成されている。拡径部12の表面は、伝達部BTが掛けられる周面(例、外周面)となる。回転子SFは、例えばアルミニウムなどの導電材料によって構成されている。また、例えば、回転子SFは、円筒形のような中空状に形成されてもよい。なお、伝達部BTは、回転子SFの周面である内周面に掛けられるように構成されてもよい。
【0015】
[駆動部ACの構成]
駆動部ACUの構成について説明する。なお、駆動部ACV及び駆動部ACWは、駆動部ACUと同一の構成であるため、説明を省略する。以下、各図の説明においてはXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。
【0016】
図3は、駆動部ACUの構成を示す平面図である。
駆動部ACUは、例えばステンレス等の材料を用いて矩形の板状に形成されており、Z軸方向に回転子SFが貫通する穴として貫通部10が、Z方向視のほぼ中央部に形成されている。駆動部ACUは、伝達部BTUを備えている。また、駆動部ACUは、電歪素子(圧電素子)32AU及び電歪素子(圧電素子)32BUを備えている。なお、以下の説明において、特定の駆動素子を示す必要がない場合には、単に電歪素子32と記載する。
【0017】
伝達部BTUは、ベルト部23と、第1端部21及び第2端部22とを有している。ベルト部23は、貫通部10によって形成された壁部10aに沿って、例えばZ軸方向に幅をもつ帯状に形成され、例えば弾性変形可能な程度の厚さに形成されている。ベルト部23は、貫通部10に挿入される回転子SFの外周を囲うように配置される。換言すると、回転子SFは、貫通部10のうちベルト部23によって囲まれる空間に挿入される。ベルト部23は、例えば回転子SFの少なくとも一部に掛けることができるようになっている。
【0018】
電歪素子32は、例えばピエゾ素子などの電気機械変換素子である。この電気機械変換素子は、電圧を加えることによって伸縮する。また、本実施形態における電気機械変換素子は、例えば、振動や伸縮などが可能な容量性の駆動素子(容量性駆動素子)である。
電歪素子(容量性駆動素子)32AUは、支持部33によって支持されている。電歪素子32AUは、図3に示す−X側の端部の位置が支持部33に固定されている。このため、電歪素子32AUは、X軸方向に伸縮することで図中+X側の端部の位置がX軸方向に移動することになる。電歪素子32AUのうち+X側の端部は、支持部33の先端部33aに接続されている。支持部33の先端部33aは、例えば第1端部21に接続されている。支持部33は、先端部33aよりも−X側に、例えば伸縮部33bを有している。伸縮部33bは、電歪素子32AUの+X側端部の移動に合わせて先端部33aが移動するように伸縮する。
【0019】
電歪素子(容量性駆動素子)32BUは、支持部34によって支持されている。電歪素子32BUは、図3に示す+X側の端部の位置が支持部34に固定されている。このため、電歪素子32BUは、X軸方向に伸縮することで図中−X側の端部の位置がX軸方向に移動することになる。電歪素子32BUのうち−X側の端部は、支持部34の先端部34aに接続されている。支持部34の先端部34aは、例えば第2端部22に接続されている。支持部34は、先端部34aよりも+X側に、例えば伸縮部34bを有している。伸縮部34bは、電歪素子32BUの−X側端部の移動に合わせて先端部34aが移動するように伸縮する。
【0020】
このように、電歪素子32AU及び電歪素子32BUは、電圧が印加されることにより、X軸方向に伸縮する。電歪素子32AUが+X方向に伸びれば、先端部33aとともに第1端部21が+X方向に移動して、ベルト部23が移動する。同様に、電歪素子32BUが−X方向に伸びれば、先端部34aとともに第2端部22が−X方向に移動して、ベルト部23が移動する。電歪素子32AU及び電歪素子32BUは、後述するように制御部50が備えている出力部57にそれぞれ接続されており、制御部50から出力される電圧波形に基づいて伸縮することにより、伝達部BTUを移動させる。
【0021】
[各部の接続の構成]
本実施形態のモータ装置MTRは、駆動部ACUが備える電歪素子32AU及び駆動部ACVが備える電歪素子32AVと、電荷受け渡し部60とを接続することにより、電歪素子32AUから電歪素子32AVに電荷を移動させることができる。以下、図4〜図6を用いて、モータ装置MTRが備える各部の接続の構成について説明する。
図4は、駆動部ACと制御部50と電荷受け渡し部60との接続の構成を示した図である。上述したように、本実施形態のモータ装置MTRは、U相の駆動部ACUと、V相の駆動部ACVと、W相の駆動部ACWとを備えている。図4に示すように、駆動部ACUは、伝達部BTUと、一対の電歪素子32AU及び電歪素子32BUとを備えている。また、駆動部ACVは、伝達部BTVと、一対の電歪素子32AV及び電歪素子32BVとを備えている。また、駆動部ACWは、伝達部BTWと、一対の電歪素子32AW及び電歪素子32BWとを備えている。
電歪素子32AU及び電歪素子32AVは、制御部50と、電荷受け渡し部60とに接続されている。また、電歪素子32BU、電歪素子32BV、電歪素子32AW及び電歪素子32BWは、制御部50に接続されている。
以下、制御部50及び電荷受け渡し部60の構成について説明する。
【0022】
[制御部50の構成]
まず、制御部50の構成について説明する。
図5は、制御部50の構成を示した図である。
制御部50は、取得部51と、比較部52と、算出部53と、読み出し部54と、記憶部55と、生成部56と、出力部57と、検出部58とを備えている。
記憶部55には、各電歪素子32を駆動する駆動条件と、後述する切り替え部651を切換えるタイミングの情報として切換えタイミング情報とが、各電歪素子32を駆動する操作量に関連付けられて、予め記憶されている。本実施形態において、駆動条件は、例えば電歪素子32の駆動電圧及び駆動時間である。また、本実施形態において、操作量には、例えば駆動部ACの電歪素子32を駆動する速度と、電歪素子32を駆動する周期とが含まれている。
取得部51は、上位装置から制御の目標値を取得する。本実施形態において、目標値は、例えば回転子SFの角速度である。取得部51は、目標値として、例えば回転子SFの目標角速度を上位装置から取得する。なお、目標値は、回転子SFの位置(例、回転位置など)であってもよい。
検出部58は、駆動部ACの駆動状態を検出する。本実施形態において、検出部58は、回転子SFの角速度を検出するエンコーダ581を備えている。このエンコーダ581は、回転子SFの回転に伴って、回転子SFの角速度に比例した周波数のパルス波であって、互いにパルスの位相が異なる2つのパルス波を出力する。これら2つのパルス波の位相差は、回転子SFの回転方向によって変化する。つまり、検出部58は、エンコーダ581が出力する2つのパルス波によって、回転子SFが回転する速度と、回転子SFの回転方向とを検出する。
【0023】
比較部52は、例えば、取得部51によって取得された目標値と、検出部58によって検出された検出値とを比較する。本実施形態において、比較部52は、例えば取得された回転子SFの目標角速度と、検出された回転子SFの角速度とを比較して、回転子SFの目標角速度と回転子SFの角速度との差分を比較結果として求める。
算出部53は、比較部52によって比較された結果に基づいて、駆動部ACの操作量を算出する。本実施形態において、算出部53は、例えば取得された回転子SFの目標角速度と、検出された回転子SFの角速度との差分に基づいて、各電歪素子32の動作方向と動作速度とを駆動部ACの操作量として算出する。
読み出し部54は、記憶部55に記憶されている複数の駆動条件のうちから、算出された駆動部ACの操作量に関連付けられている駆動条件を、各電歪素子32を駆動する駆動条件として読み出す。駆動条件が読み出されたことにより、各電歪素子32の駆動電圧及び駆動時間が読み出される。また、読み出し部54は、記憶部55に記憶されている複数の切換えタイミング情報のうちから、算出された駆動部ACの操作量に関連付けられている切換えタイミング情報を、切り替え部651を切換える切換えタイミング情報として読み出す。
生成部56は、読み出された各電歪素子32の駆動電圧及び駆動時間に基づいて、各駆動素子を駆動する電圧波形を生成するとともに、読み出された切換えタイミング情報に基づいて、切り替え部651を切換える制御信号を生成する。
【0024】
出力部57は、上述した図4に示すように電歪素子32AUと、電歪素子32BUと、電歪素子32AVと、電歪素子32BVと、電歪素子32AWと、電歪素子32BWとに接続されている。また、出力部57は、後述する電荷受け渡し部60が備えている電荷放出部65の切り替え部651に接続されている。
【0025】
[電荷受け渡し部60の構成]
次に電荷受け渡し部60の構成について説明する。
図6は、電荷受け渡し部60と、制御部50の出力部57との構成を示した図である。
出力部57は、電歪素子32に対応させた数の増幅部571及びダイオード572を備えている。増幅部571は、生成部56によって生成された電圧波形を増幅する。ダイオード572は、増幅部571によって増幅された電圧波形を電歪素子32に供給するとともに、電歪素子32から増幅部571に電流が流入することを防止する。また、出力部57は、生成された電圧波形を、増幅部571からダイオード572を介して各駆動部ACが備える各電歪素子32に出力するとともに、電荷受け渡し部60が備える切り替え部651を切換える制御信号を切り替え部651に出力する。
電荷受け渡し部60は、トランス部63と、電荷放出部65と、電荷供給部66とを備えている。
トランス部63は、一次側の巻線(一次側)63Aと、二次側の巻線(二次側)63Bとを備えている。一次側の巻線63Aと二次側の巻線63Bとは、相互インダクタンスによって磁気的に結合されている。一次側の巻線63Aの一端は、U相の電歪素子(第1の電歪素子)32AUの一端と、出力部57のダイオード572AUとに接続されている。一次側の巻線63Aの他端は、電荷放出部65に接続されている。二次側の巻線63Bの一端は、V相の電歪素子(第2の電歪素子)32AVの一端と、出力部57のダイオード572AVとに接続されている。二次側の巻線63Bの他端は、電荷供給部66に接続されている。トランス部63は、U相の電歪素子32AUに蓄積されている電荷を放出させて生じるエネルギを、V相の電歪素子32AVに電荷を供給するための起電力に変換する。つまり、トランス部63は、相互インダクタンスの大きさに応じて、一次側の巻線63Aに流れる電荷に相当する起電力を二次側の巻線63Bが備える両端子間に発生させ、二次側の巻線63Bに接続されている回路に電荷を供給する。
【0026】
電荷放出部65は、制御部50から出力される制御信号に基づいて、電歪素子32AUに蓄積されている電荷を放出させる切り替え部651を備えている。
切り替え部651は、例えば半導体スイッチであり、電歪素子32AUに接続されている第1の端子TM1と、一次側の巻線63Aに接続されている第2の端子TM2との間を、出力部57に接続された制御端子TM3の電圧によって導通状態又は非導通状態にさせる。本実施形態の切り替え部651は、制御部50から出力される制御信号がしきい値電圧よりも高い電圧、例えば電圧Vonであれば、第1の端子TM1と第2の端子TM2との間を導通状態にさせる。一方、切り替え部651は、制御部50から出力される制御信号がしきい値電圧よりも低い電圧、例えば電圧Voffであれば、第1の端子TM1と第2の端子TM2との間を非導通状態にさせる。
【0027】
電荷供給部66は、一方向にのみ電流を流す、例えばダイオード661を備えている。
ダイオード661は、電歪素子32AVに接続されている第1の端子TM4から、二次側の巻線63Bに接続されている第2の端子TM5にのみ電流を流す。
【0028】
上述した構成により、制御部50は、制御信号を電圧Voffにして出力部57から出力して、切り替え部651を非導通状態にするとともに、増幅部571AUからダイオード572AUを介して、電歪素子32AUに電荷を供給する。これにより制御部50は、電歪素子32AUを伸張させる。次に、制御部50は、制御信号を電圧Vonにして出力部57から出力して、切り替え部651を導通状態にする。このとき、制御部50は、電歪素子32AUから増幅部571に電荷が流れ込むことを、ダイオード572AUによって防止する。このようにして制御部50は、電歪素子32AUに蓄積されている電荷を一次側の巻線63Aに供給する。これにより、二次側の巻線63Bには、相互インダクタンスに応じた起電力が発生し、ダイオード661を介して電歪素子32AVに電荷が供給される。このようにして、制御部50は、電歪素子32AUに蓄積されている電荷に相当する電荷を、トランス部63を介して電歪素子32AVに供給する。また、制御部50は、電歪素子32AUに蓄積されているエネルギのうち、トランス部63などの損失によって失われるエネルギに相当するぶんの電荷を、増幅部571AVからダイオード572AVを介して、電歪素子32AVに供給する。このとき、電荷放出部65は、増幅部571AVからダイオード572AVを介して二次側の巻線63Bに電荷が流れ込むことを、ダイオード661によって防止する。
このようにして、制御部50と電荷受け渡し部60とは、電歪素子32AUに蓄積されている電荷に相当する電荷を電歪素子32AVに供給して、電歪素子32AUを収縮させるとともに、電歪素子32AVを伸張させる。
【0029】
[回転子SFの駆動原理]
次に、本実施形態のモータ装置MTRが、回転子SFを駆動させる原理について説明する。U相の駆動部ACは、回転子SFを駆動させる際に、回転子SFに巻き掛けられたU相の伝達部BTUに有効張力を生じさせ、当該有効張力によって回転子SFにトルクを伝達する。V相及びW相は、いずれもU相と同一の構成であるため、説明を省略する。
【0030】
オイラーの摩擦ベルト理論により、回転子SFに巻き掛けられた伝達部BTUの第1端部21側の張力T1及び第2端部22側の張力T2が下記式(1)を満たすとき、伝達部BTUと回転子SFとの間で摩擦力が生じ、伝達部BTUが移動することにより、回転子SFが回転する。この伝達部BTUの移動により、回転子SFにトルクが伝達される。ただし、式(1)において、μは伝達部BTUと回転子SFとの間の見かけ上の摩擦係数であり、θは伝達部BTUの有効巻き付き角である。
【0031】
【数1】

【0032】
このとき、トルクの伝達に寄与する有効張力は、(T1−T2)によって表される。上記式(1)に基づいて有効張力(T1−T2)を求めると、下記式(2)のようになる。式(2)は、T1を用いて有効張力を表す式である。
【0033】
【数2】

【0034】
上記式(2)より、回転子SFに伝達されるトルクは伝達部BTUの張力T1によって一意に決定されることがわかる。式(2)の右辺のT1の係数部分は、伝達部BTUと回転子SFとの間の摩擦係数μ及び伝達部BTUの有効巻き付き角θにそれぞれ依存する。
図7は、摩擦係数μを変化させたときの有効巻き付き角θと係数部分の値との関係を示すグラフである。グラフの横軸は有効巻き付き角θを示しており、グラフの縦軸は係数部分の値を示している。
【0035】
図7に示すように、例えば摩擦係数μが0.3の場合には、有効巻き付き角θが300度以上のときに係数部分の値がおよそ0.8以上となっている。このことから、摩擦係数μが0.3の場合には、有効巻き付き角θを300度以上とすることにより、伝達部BTUによる張力T1のおよそ80%以上の力が回転子SFのトルクに寄与することがわかる。
【0036】
このように、トルクの大きさは伝達部BTUの張力T1によって一意に決定されることになり、例えば伝達部BTUの移動距離などには無関係であることがわかる。
上述した原理に基づいて、制御部50は、電歪素子32AU及び電歪素子32BUを変形させて回転子SFに回転力を伝達する。
【0037】
[電歪素子を駆動する電圧波形]
ここで、図8〜図11を用いて、電歪素子32を駆動する駆動信号の電圧波形について説明する。
図8は、U相の駆動部ACUが備える1対の電歪素子32AU及び電歪素子32BUが、伝達部BTUを移動させて回転子SFを回転させる際に、電歪素子32に供給される駆動信号の電圧波形を示している。本実施形態の電歪素子32は、印加される電圧が高くなれば伸張し、印加される電圧が低くなれば収縮する。つまり、電歪素子32は図8に示す電圧波形が電圧Vから電圧Vに変化した場合には伸張し、電圧波形が電圧Vから電圧Vに変化した場合には収縮する。なお、他の相の駆動部ACにおいても同様であるため、V相及びW相については、説明を省略する。
駆動部ACUは、駆動準備動作と駆動動作と復帰動作とを順次繰り返すことによって、伝達部BTUを移動させ、回転子SFに回転力を伝達する。以下、各動作について説明する。
【0038】
まず、駆動準備動作は、駆動部ACUが伝達部BTを回転子SFに対して回転力を伝達していない状態から、回転力を伝達している状態にさせる動作である。
図9は、駆動部ACUが駆動準備動作を行っている状態を示している。
駆動準備動作は、伝達部BTUが、駆動力の伝達を開始する位置(以下、「駆動開始位置」と表記する)にあり、回転子SFに対して回転力を伝達していない状態から開始される。
図8(a)に示すように、駆動準備動作を行う期間である時刻t1a〜t2aの間において制御部50から電歪素子32AUに出力される電圧波形は、例えば電圧波形W1のように電圧Vから電圧Vに単調増加する。この電圧波形W1によって電歪素子32AUは、図9に示すように+X方向に伸びるように駆動される。これにより、電歪素子32AUに接続されている第1端部21は、+X方向に移動する。このようにして、駆動部ACUは、伝達部BTUを回転子SFに接触させ、伝達部BTUと回転子SFとの間において摩擦力が生じる状態にさせる。
【0039】
次に、駆動動作は、駆動部ACUが伝達部BTを回転子SFに対して回転力を伝達した状態にさせて、回転子SFを回転させる動作である。
図10は、駆動部ACUが駆動動作を行っている状態を示している。
図8(b)に示すように、駆動動作を行う期間である時刻t1b〜t2bの間において制御部50から電歪素子32AUに出力される電圧波形は、例えば電圧波形W2のように電圧Vから電圧Vに単調減少する。この電圧波形W2によって電歪素子32AUは、電歪素子32AUは、図10に示すように−X方向に縮むように駆動される。これと同時に、図8(b)に示すように制御部50から電歪素子32BUに出力される電圧波形は、例えば電圧波形W3のように電圧Vから電圧Vに単調増加する。この電圧波形W3によって、電歪素子32BUは、図10に示すように−X方向に伸びるように駆動される。このとき、第1端部21と第2端部22との間の距離を一定に保つように電歪素子32AUと、電歪素子32BUとが駆動される。これにより、第1端部21と、第2端部22とは、一定の距離を保って+X方向に移動される。このようにして、駆動部ACUは、伝達部BTUを回転子SFに対して回転力を伝達した状態にさせて、回転子SFを回転させる。
【0040】
次に、復帰動作は、伝達部BTが、回転子SFに対して回転力を伝達していない状態にされて、駆動開始位置に戻される動作である。
図11は、駆動部ACUが復帰動作を行っている状態を示している。
図8(c)に示すように復帰動作を行う期間である時刻t1c〜t2cの間において制御部50から電歪素子32BUに出力される電圧波形は、例えば電圧波形W4のように電圧Vから電圧Vに単調減少する。この電圧波形W4によって、電歪素子32BUは、図11に示すように+X方向に縮むように駆動される。これにより、第2端部22は、−X方向に移動される。このようにして、駆動部ACUは、伝達部BTUを回転子SFに対して回転力を伝達していない状態にさせる。
【0041】
次に、各相の駆動部ACを駆動する順序について説明する。
図12は、U相、V相及びW相の各相の駆動部ACについて、各駆動部ACがそれぞれ備える1対の電歪素子32に供給される電圧波形を示している。
上述したように、各相の駆動部ACが備えている1対の電歪素子32は、駆動準備動作と駆動動作と復帰動作とを繰り返して、回転子SFを回転させる。このとき、制御部50は、電圧波形の位相を120度ずつずらして各相の駆動部ACに供給する。つまり、図12に示す時刻t1〜t2の期間において、U相の駆動部ACUは駆動準備動作を、V相の駆動部ACVは復帰動作を、W相の駆動部ACWは駆動動作をそれぞれ行う。また、図12に示す時刻t3〜t4の期間において、U相の駆動部ACUは駆動動作を、V相の駆動部ACVは駆動準備動作を、W相の駆動部ACWは復帰動作をそれぞれ行う。また、図12に示す時刻t5〜t6の期間において、U相の駆動部ACUは復帰動作を、V相の駆動部ACVは駆動動作を、W相の駆動部ACWは駆動準備動作をそれぞれ行う。このようにして、制御部50は、出力する電圧波形によって各駆動部ACが備えている電歪素子32を伸縮させて、伝達部BTを移動させ、回転子SFを回転させる。
【0042】
このとき、図12に示す時刻t3〜t4の期間において、U相の駆動部ACUが備える電歪素子32AUに供給される電圧波形W5と、V相の駆動部ACVが備える電歪素子32AVに供給される電圧波形W6とは、電圧値及び継続時間が同一であり、傾きが互いに逆である関係を有している。
【0043】
[制御部50の動作]
制御部50は、記憶部55に予め記憶されている各駆動部ACの駆動条件に基づいて、駆動部ACを駆動する。以下、制御部50の動作について説明する。
【0044】
図13は、制御部50の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、取得部51は、上位装置から回転子SFの目標角速度を取得する(ステップS101)。この目標角速度には、回転子SFが回転する速度と、回転子SFの回転方向とが含まれている。なお、本実施形態においては、角速度が正の値の場合は上述した図10に示す方向に回転子SFを回転させる正回転を、角速度が負の値の場合は上述した図10に示す方向と逆の方向に回転子SFを回転させる逆回転を表している。
【0045】
次に、検出部58は、回転子SFの角速度を検出する(ステップS102)。上述したように、検出部58は、エンコーダ581が出力する2つのパルス波の周期と位相差とによって回転子SFが回転する速度と、回転子SFの回転方向とを検出する。
【0046】
次に、比較部52は、取得部51によって取得された回転子SFの目標角速度と、検出部58によって検出された回転子SFの角速度とを比較する(ステップS103)。ここで、比較部52は、取得された回転子SFの目標角速度と検出された回転子SFの角速度との差分を比較の結果として求める。
【0047】
次に、算出部53は、ステップS103において求められた取得された回転子SFの目標角速度と検出された回転子SFの角速度との差分に基づいて、駆動部ACの操作量を算出する(ステップS104)。上述したように、この操作量には、駆動部ACの電歪素子32を駆動する速度と、電歪素子32を駆動する周期とが含まれている。
【0048】
次に、読み出し部54は、記憶部55に記憶されている複数の駆動条件のうちから、算出された駆動部ACの操作量に関連付けられている駆動条件を、各電歪素子32を駆動する駆動条件として読み出す。また、読み出し部54は、記憶部55に記憶されている複数の切換えタイミング情報から、算出された駆動部ACの操作量に関連付けられている切換えタイミング情報を、切り替え部651を切換える切換えタイミング情報として読み出す(ステップS105)。ここで、予め記憶部55に記憶されている複数の駆動条件は、上述したように、電歪素子32を駆動する速度と、電歪素子32を駆動する周期とに関連付けられている。つまり、読み出し部54は、ステップS104において算出された駆動部ACの電歪素子32を駆動する速度と、電歪素子32を駆動する周期と関連付けられている駆動条件を、記憶部55から読み出す。これにより、各電歪素子32の駆動電圧及び駆動時間と、切り替え部651を切換える切換えタイミング情報とが記憶部55から読み出される。
【0049】
次に、生成部56は、ステップS105において読み出された各電歪素子32の駆動条件に基づいて、各電歪素子32に対応する電圧波形をそれぞれ生成するとともに、読み出された切換えタイミング情報に基づいて、切り替え部651を切換える制御信号を生成する(ステップS106)。本実施形態において、生成部56は、電歪素子32AUと、電歪素子32BUと、電歪素子32AVと、電歪素子32BVと、電歪素子32AWと、電歪素子32BWとの6つの電歪素子32に対応する電圧波形として、例えば図14に示す電圧波形W5と、電圧波形W8とをそれぞれ生成する。また、本実施形態において、生成部56は、切り替え部651を切換える制御信号として、例えば図14に示す制御信号の電圧波形W7を生成する。
【0050】
次に、出力部57は、生成された電圧波形を増幅して、増幅した電圧波形を対応する電歪素子32に出力するとともに、ステップS105において読み出された制御信号を切り替え部651に出力する(ステップS107)。
【0051】
図14は、制御部50が上述した各ステップを実行した結果、各電歪素子32に供給される電圧波形と、制御部50から出力される電圧波形との一例を示している。本実施形態においては、例えば図14に示すように、制御部50から出力される制御信号の電圧は、時刻t3〜t4において電圧Vonとなる(電圧波形W7)。この制御信号の電圧波形W7によって、時刻t3〜t4において、切り替え部651は導通状態とされる。したがって、時刻t3〜t4において、電歪素子32に供給される駆動信号の電圧波形と同期して出力される制御信号に基づいて、上述したように電歪素子32AUに蓄積されている電荷に相当する電荷が、トランス部63を介して電歪素子32AVに供給される。
上述したように、制御部50は、電歪素子32AUに蓄積されているエネルギのうち、トランス部63などの損失によって失われるエネルギに相当する分の電荷を、増幅部571AVからダイオード572AVを介して、電歪素子32AVに供給する。この結果、制御部50から電歪素子32AVに出力される電圧波形は、例えば図14に示すように、時刻t3〜t3.1において単調増加する波形になる(電圧波形W81)。また、制御部50から電歪素子32AVに出力される電圧波形は、時刻t3.1〜t3.2において単調減少する波形になる(電圧波形W82)。また、制御部50から電歪素子32AVに出力される電圧波形は、時刻t3.2〜t6において一定の電圧Vになる(電圧波形W83〜W86)。ここで、時刻t3〜t3.2において電圧波形W81〜W82によって電歪素子32AVに供給されるエネルギは、電歪素子32AUに蓄積されているエネルギのうち、トランス部63などの損失によって失われるエネルギに相当する。
一方、時刻t3〜t4において電歪素子32AVに供給される電圧波形は、図14に示す電圧波形W61である。また、時刻t4〜t5において電歪素子32AVに供給される電圧波形は、図14に示す電圧波形W62である。また、時刻t5〜t6において電歪素子32AVに供給される電圧波形は、図14に示す電圧波形W63である。つまり、制御部50は、電圧波形W61〜W63よりもエネルギが少ない電圧波形W81〜W86を電歪素子32AVに供給して、電歪素子32AVを駆動する。
【0052】
以上説明したとおり、本実施形態のモータ装置MTRは、回転子SFの少なくとも一部に掛けられる伝達部BTと、少なくとも複数の電歪素子32を有し、電歪素子32によって伝達部BTを移動させる駆動部ACを備えている。また、モータ装置MTRは、回転子SFと伝達部BTとの間を回転力伝達状態にして伝達部BTを移動させる駆動動作と、回転子SFと伝達部BTとの間を回転力非伝達状態にして伝達部BTを所定の位置に戻す復帰動作とを、駆動部ACに行わせる制御部50を備えている。また、モータ装置MTRは、複数の電歪素子32のうち少なくとも1つの電歪素子32に放出させた電荷を電歪素子32に供給する電荷受け渡し部60とを備えている。
これにより、本実施形態のモータ装置MTRは、電歪素子32が有する電荷を他の電歪素子32に移動させて電歪素子32を駆動することができるため、供給された電力の使用効率を高くすることができる。つまり、本実施形態のモータ装置MTRは、消費電力を低減することができる。
【0053】
また、本実施形態のモータ装置MTRが備える電荷受け渡し部60は、第1の電歪素子32AUと第2の電歪素子32AVとに接続され、第1の電歪素子32AUに蓄積された電荷を放出させ、第1の電歪素子32AUから放出させた電荷に相当する電荷を第2の電歪素子32AVに供給する。
これにより、本実施形態のモータ装置MTRは、電歪素子32が有する電荷を他の電歪素子32に移動させて電歪素子32を駆動することができるため、供給された電力の使用効率を高くすることができる。つまり、本実施形態のモータ装置MTRは、消費電力を低減することができる。
【0054】
また、本実施形態のモータ装置MTRが備える電荷受け渡し部60は、第1の電歪素子32AUに蓄積された電荷を放出させて生じるエネルギを、第2の電歪素子32AVに電荷を供給する起電力に変換するトランス部63を備えている。
これにより、本実施形態のモータ装置MTRは、電歪素子32が有する電荷を、電歪素子32が有する電荷のエネルギを利用して他の電歪素子32に供給させることができる。このため、供給された電力の使用効率をさらに高くすることができる。つまり、本実施形態のモータ装置MTRは、消費電力を低減することができる。
【0055】
また、本実施形態のモータ装置MTRが備える制御部50は、駆動動作において、電歪素子32に電荷を放出させる制御信号を電荷受け渡し部60に出力する。
これにより、本実施形態のモータ装置MTRは、電歪素子32が有する電荷を、制御部50が定めるタイミングによって他の電歪素子32に供給させることができる。このため、電歪素子32の駆動条件に応じて、供給された電力の使用効率を高くすることができる。つまり、本実施形態のモータ装置MTRは、消費電力を低減することができる。
【0056】
また、本実施形態のモータ装置MTRが備える制御部50は、少なくとも駆動動作における駆動信号と同期して、電歪素子32から電荷を放出させる制御信号を電荷受け渡し部60に出力する。これにより、本実施形態のモータ装置MTRは、電歪素子32が有する電荷を、制御部50が電歪素子32を駆動するタイミングに同期させて他の電歪素子32に供給させることができる。このため、電歪素子32の駆動条件に応じて、供給された電力の使用効率を高くすることができる。つまり、本実施形態のモータ装置MTRは、消費電力を低減することができる。
【0057】
また、本実施形態のモータ装置MTRが備える電荷受け渡し部60は、制御信号に基づいて電荷を電歪素子32に供給するための切り替え部651を備える。
これにより、本実施形態のモータ装置MTRは、電歪素子32が有する電荷を、制御部50が他の電歪素子32に供給させるか否かを選択することができる。このため、モータ装置MTRは、電歪素子32の駆動タイミングに応じて、電歪素子32が有する電荷を、他の電歪素子32供給することができるため、電力の使用効率を高くすることができる。つまり、本実施形態のモータ装置MTRは、消費電力を低減することができる。また、本実施形態のモータ装置MTRは、オイラーの摩擦ベルト理論により、高いトルクを回転子SFに付加することが可能である。
【0058】
以上、第1の実施形態のモータ装置MTRについて説明したが、駆動部ACは、例示した3個に限られない。例えば、モータ装置MTRは、6個の駆動部ACを備えていてもよい。この場合、モータ装置MTRに要求される回転子SFのトルクなどの制約によって、モータ装置MTRの構成を変えることができる。
【0059】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。
図15は、本実施形態に係るモータ装置MTRの一例を示す概略構成図である。なお、第1の実施形態と同じ構成及び動作については説明を省略する。
本実施形態のモータ装置MTRは、第1の実施形態において説明した電歪素子32AUから電歪素子(容量性駆動素子)AVに電荷を移動させることに加え、電歪素子32AVから電歪素子32AUに電荷を移動させることができる構成になっている。以下、その構成について説明する。
【0060】
本実施形態のモータ装置MTRは、制御部50−2と電荷受け渡し部60−2とを備えている。
制御部50−2は、出力部57−2を備えている。
出力部57−2は、後述する電荷受け渡し部60−2が備えている電荷放出部65−2の切り替え部651−2に接続されており、切り替え部651−2を切換える制御信号を切り替え部651−2に出力する。
電荷受け渡し部60−2は、電荷放出部65−2と、電荷供給部66−2とを備えている。
電荷放出部65−2は、制御部50−2から出力される制御信号に基づいて、電歪素子32AVに蓄積されている電荷を放出させる切り替え部651−2を備えている。
切り替え部651−2は、切り替え部651と同様に例えば半導体スイッチであり、電歪素子32AVに接続されている第1の端子TM1−2と、二次側の巻線63Bに接続されている第2の端子TM2−2との間を、制御部50−2に接続された制御端子TM3−2の電圧によって導通状態又は非導通状態にさせる。
電荷供給部66−2は、一方向にのみ電流を流す、例えばダイオード661−2を備えている。
ダイオード661−2は、電歪素子32AUに接続されている第1の端子TM4−2から、一次側の巻線63Aに接続されている第2の端子TM5−2にのみ電流を流す。
【0061】
上述した構成により、制御部50−2は、制御信号により切り替え部651を非導通状態にするとともに、制御信号により切り替え部651−2を非導通状態にして、電歪素子32AVに電荷を供給する。これにより制御部50−2は、電歪素子32AVを伸張させる。次に、制御部50−2は、制御信号により切り替え部651−2を導通状態にする。これにより制御部50−2は、二次側の巻線63Bに電荷を供給する。このようにして、制御部50−2は、電歪素子32AVに蓄積されている電荷に相当する電荷を、トランス部63を介して電歪素子32AUに供給する。また、制御部50−2は、電歪素子32AVに蓄積されているエネルギのうち、トランス部63などの損失によって失われるエネルギに相当する分の電荷を、電歪素子32AUに供給する。このとき、電荷放出部65−2は、一次側の巻線63Aに電荷が流れ込むことを、ダイオード661−2によって防止する。
このようにして、制御部50−2と電荷受け渡し部60−2とは、電歪素子32に供給される駆動信号の電圧波形と同期して出力される制御信号に基づいて、電歪素子32AVに蓄積されている電荷に相当する電荷を電歪素子32AUに供給して、電歪素子32AVを変形させるとともに、電歪素子32AUを変形させる。つまり、本実施形態のモータ装置MTRは、電歪素子32AUから電歪素子32AVに電荷を移動させることが可能であるし、電歪素子32AVから電歪素子32AUに電荷を移動させることが可能である。
【0062】
以上説明したように、本実施形態のモータ装置MTRが備える電荷受け渡し部60は、一次側の巻線(一次側)63Aと二次側の巻線(二次側)63Bとが相互インダクタンスによって磁気結合されているトランス部63を備えている。またこのトランス部63は、一次側の巻線(一次側)63Aの一端が第1の電歪素子(容量性駆動素子)32AUの一端と接続され、二次側の巻線(二次側)63Bの一端が第2の電歪素子(容量性駆動素子)32AVの一端とに接続され、第1の電歪素子32AUに蓄積されている電荷を放出させて生じるエネルギを、第2の電歪素子32AVに電荷を供給する起電力に変換する。また、電荷受け渡し部60は、第1の電歪素子32AUの他端とトランス部63の一次側の巻線(一次側)63Aの他端とに接続され、第1の電歪素子32AUに蓄積されている電荷を放出させ、当該放出させた電荷をトランス部63に供給する第1の電荷放出部65を備えている。また、電荷受け渡し部60は、第2の電歪素子32AVの他端とトランス部63の二次側の巻線(二次側)63Bの他端とに接続され、第2の電歪素子32AVに蓄積されている電荷を放出させ、当該放出させた電荷をトランス部63に供給する第2の電荷放出部65Bを備えている。また、電荷受け渡し部60は、トランス部63の一次側の巻線(一次側)63Aの他端と第1の電歪素子32AUの他端とに接続され、第2の電荷放出部65Bによって電荷を放出させて生じたエネルギを、トランス部63を介して変換された起電力によって第1の電歪素子32AUに電荷を供給する第1の電荷放出部65を備えている。また、電荷受け渡し部60は、トランス部63の二次側の巻線(二次側)63Bの他端と第2の電歪素子32AVの他端とに接続され、第1の電荷放出部65によって電荷を放出させて生じたエネルギを、トランス部63を介して変換された起電力によって第2の電歪素子32AVに電荷を供給する第2の電荷供給部66−2を備えている。
【0063】
これにより、本実施形態のモータ装置MTRは、第1の電歪素子(容量性駆動素子)32AUが有する電荷を、第1の電歪素子32AUが有する電荷のエネルギを利用して第2の電歪素子(容量性駆動素子)32AVに供給させることができる。さらに、本実施形態のモータ装置MTRは、第2の電歪素子32AVが有する電荷を、第2の電歪素子32AVが有する電荷のエネルギを利用して第1の電歪素子32AUに供給させることができる。このため、回転子SFを第1の実施例において説明した回転方向とは逆に回転させる場合にも、供給された電力の使用効率を高くすることができる。つまり、本実施形態のモータ装置MTRは、回転子SFの回転方向によらず消費電力を低減することができる。
【0064】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
図16は、本実施形態に係るモータ装置MTRの一例を示す概略構成図である。なお、上述した実施形態と同じ構成及び動作については説明を省略する。
本実施形態のモータ装置MTRは、第2の実施形態において説明した駆動部ACUの電歪素子32と駆動部ACVの電歪素子(容量性駆動素子)32との間において電荷を移動させることに加え、駆動部ACVの電歪素子32と駆動部ACWの電歪素子32との間においても電荷を移動させることができる構成になっている。また、モータ装置MTRは、駆動部ACUの電歪素子32と駆動部ACWの電歪素子32との間においても電荷を移動させることができる構成になっている。以下、その構成について説明する。
【0065】
本実施形態のモータ装置MTRは、制御部50−3と、駆動部ACの数に対応した複数の電荷受け渡し部60−2を備えている。本実施形態においては、モータ装置MTRは、第1の電荷受け渡し部60−2−1と、第2の電荷受け渡し部60−2−2と、第3の電荷受け渡し部60−2−3とを備えている。
制御部50−3は、各電歪素子32に接続されるとともに、各電荷受け渡し部60−2が備えている切り替え部651(本実施形態では、切り替え部651−1、651−2、651−3)及び切り替え部651−2(本実施形態では、切り替え部651−2−1、651−2−2、651−2−3)に接続されている。
第1の電荷受け渡し部60−2−1が備えている二次側の巻線63B−1は、第2の電荷受け渡し部60−2−2が備えている一次側の巻線63A−2と、切り替え部651−2と、ダイオード661−2−2とに接続されている。第2の電荷受け渡し部60−2−2が備えている二次側の巻線63B−2は、第3の電荷受け渡し部60−2−3が備えている一次側の巻線63A−3と、切り替え部651−3と、ダイオード661−2−3とに接続されている。第3の電荷受け渡し部60−2−3が備えている二次側の巻線63B−3は、第1の電荷受け渡し部60−2−1が備えている一次側の巻線63A−1と、切り替え部651−1と、ダイオード661−2−1とに接続されている。つまり、3つの電荷受け渡し部60−2が環状に連続的に接続されている。
制御部50−3は、各駆動部ACの駆動条件に応じて、各電荷受け渡し部60−2が備えている各切り替え部に対して所定の順序(切り替え順序)で制御信号を出力する。一例として、図12及び図16を用いて、この切り替え順序を以下に説明する。図12において、時刻t2〜t3の期間では、電歪素子32AUは電荷が蓄積されている状態であり、電歪素子32AV及び32AWは放電されている状態である。次に、時刻t3〜t4の期間では、制御部50−3は、切り替え部651−1に制御信号を出力して、電歪素子32AUに蓄積されている電荷を電歪素子32AVに電荷を移動させる。時刻t4〜t5の期間では、電歪素子32AVのみが電荷を蓄えている状態であり、電歪素子32AW及びAUは電荷を放電している状態である。続いて、時刻t5〜t6の期間では、制御部50−3は、切り替え部651−2に制御信号を出力して、電歪素子32AVに蓄積されている電荷を電歪素子32AWに移動させる。同様に、次のサイクルのt1〜t2の期間において、制御部50−3は、切り替え部651−3に制御信号を出力して、電歪素子32AWに蓄積されている電荷を電歪素子32AUに移動させる。このように、電荷は、電歪素子32AUから電歪素子32AV、32AWへと順次移動される。
このように、本実施形態のモータ装置MTRは、それぞれの電歪素子32の間において電荷を移動させる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態のモータ装置MTRにおいて、複数の電歪素子32は少なくとも2つの異なる電荷受け渡し部60−2に接続され、制御部50−3は、電荷受け渡し部60−2のうち、いずれかの電荷受け渡し部60−2を介して供給される電荷を、電荷が供給される電荷受け渡し部60−2とは異なる他の電荷受け渡し部60−2に放出させる。
これにより、本実施形態のモータ装置MTRは、電歪素子32が有する電荷を、他の電歪素子32に供給させた後、該電荷を供給された電歪素子32が有する電荷を、所定の順序でさらに他の電歪素子32に供給させることができる。このため、複数の電歪素子32間において電荷を所定の順序(切り替え順序)で連続的に循環させて受け渡すことができ、供給された電力の使用効率をさらに高くすることができる。つまり、本実施形態のモータ装置MTRは、消費電力を低減することができる。
【0067】
なお、図17に示すように、モータ装置MTRは、例えば6個の電荷受け渡し部60−2を備えていてもよい。この場合、モータ装置MTRは、例えば3つの駆動部ACが備えているすべての電歪素子32の間において所定の順序で電荷を受け渡すことが可能になり、供給された電力の使用効率をさらに高くすることができる。一例として、図12及び図17を用いて、この切り替え順序を以下に説明する。例えば、図16の例と同様に、電歪素子32AU、32AV及び32AWの組み合わせについては、制御部50−4は、電歪素子32AU→電歪素子32AV→電歪素子32AWの順に電荷を移動させる。同時に、電歪素子32BU、32BV及び32BWの組み合わせについては、制御部50−4は、電歪素子32BW→電歪素子32BU→電歪素子32BVの順に電荷を移動させる。これらによって、図17のようなモータ装置MTRの構成においても図12のシーケンスを実現することができる。つまり、本実施形態のモータ装置MTRは、全ての電歪素子(容量性駆動素子)の駆動消費電力を低減することができる。
【0068】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。
図18は、本実施形態に係るモータ装置MTRの一例を示す概略構成図である。なお、上述した実施形態と同じ構成及び動作については説明を省略する。
本実施形態のモータ装置MTRは、上記の実施形態において説明した2つの電歪素子32において電荷を移動させる構成とは異なる構成を有している。つまり、本実施形態のモータ装置MTRは、駆動部ACが備える電歪素子(容量性駆動素子)32と、電荷受け渡し部60−4が備える容量素子71との間において電荷を移動させることができる構成になっている。以下、その構成について説明する。
【0069】
本実施形態のモータ装置MTRは、制御部50−4と、電荷受け渡し部60−4を備えている。
制御部50−4は、各電歪素子32に接続されるとともに、電荷受け渡し部60−4が備えている切り替え部651及び切り替え部651−4に接続されている。
電荷受け渡し部60−4は、電荷放出部65と、電荷放出部65−4と、電荷供給部66−2と、電荷供給部66−4と、容量部70とを備えている。
容量部70は、例えばコンデンサなどの容量素子71を備えており、供給された電荷を蓄電する。
電荷放出部65−4は、制御部50−4から出力される制御信号に基づいて、容量素子71に蓄積されている電荷を放出させる切り替え部651−4を備えている。
切り替え部651−4は、切り替え部651と同様に例えば半導体スイッチであり、容量素子71に接続されている第1の端子TM1−4と、二次側の巻線63Bに接続されている第2の端子TM2−4との間を、制御部50−4に接続された制御端子TM3−4の電圧によって導通状態又は非導通状態にさせる。
電荷供給部66−4は、一方向にのみ電流を流す、例えばダイオード661−4を備えている。
ダイオード661−4は、容量素子71に接続されている第1の端子TM4−4から、二次側の巻線63Bに接続されている第2の端子TM5−4にのみ電流を流す。
【0070】
図19は、電荷受け渡し部60−4の構成を示している。
電歪素子32AUは、制御部50−4の出力部57−4が備えている増幅部571AUからダイオード572AUを介して電荷が供給される。電荷放出部65−2は、制御部50−4によって切り替え部651−2が導通状態にされると、電歪素子32AUに蓄積されていた電荷をトランス部63の一次側の巻線63Aを介して放出させる。電荷供給部66−4は、一次側の巻線63Aを流れる電荷によって生じる起電力により、二次側の巻線63Bを介して容量素子71に電荷を供給する。このようにして、電歪素子32AUに蓄積されていた電荷に相当する電荷を、容量素子71に供給して、容量素子71に電荷を蓄積させる。
また、電荷放出部65−4は、制御部50−4によって切り替え部651−4が導通状態にされると、容量素子71に蓄積されていた電荷をトランス部63の二次側の巻線63Bを介して放出させる。電荷供給部66−2は、二次側の巻線63Bを流れる電荷によって生じる起電力により、一次側の巻線63Aを介して電歪素子32AUに電荷を供給する。このようにして、容量素子71に蓄積されていた電荷に相当する電荷を、電歪素子32AUに供給して、電歪素子32AUに電荷を蓄積させる。
このように、本実施形態のモータ装置MTRは、駆動部ACが備える電歪素子32と、電荷受け渡し部60−4が備える容量素子71との間において電荷を移動させることができる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態のモータ装置MTRは、回転子SFの少なくとも一部に掛けられる伝達部BTと、少なくとも電歪素子(容量性駆動素子)32を有し、電歪素子32によって伝達部BTを移動させる駆動部ACを備えている。また、モータ装置MTRは、回転子SFと伝達部BTとの間を回転力伝達状態にして伝達部BTを移動させる駆動動作と、回転子SFと伝達部BTとの間を回転力非伝達状態にして伝達部BTを所定の位置に戻す復帰動作とを、駆動部ACに行わせる制御部50−4を備えている。また、モータ装置MTRは、電歪素子32から電荷を放出させて容量素子71に蓄積させ、容量素子71に蓄積させた電荷を電歪素子32に供給する電荷受け渡し部60−4とを備えている。
つまり、本実施形態のモータ装置MTRは、電荷を蓄積する容量素子71を備えている。モータ装置MTRは、電荷受け渡し部60は、電歪素子32と容量素子71とのうち、一方の素子に蓄積されている電荷を放出させ、当該電荷を放出させて生じるエネルギを含むエネルギによって、他方の素子に電荷を供給する。
これにより、本実施形態のモータ装置MTRは、電歪素子32が有する電荷に相当する電荷をトランス部63を介して容量素子71に供給させることができる。さらに、容量素子71が有する電荷を、トランス部63を介して当該電歪素子32に供給させることができる。このため、他の電歪素子32の駆動条件によらず、電歪素子32と容量素子71との間において電荷を往復させて受け渡すことができるため、供給された電力の使用効率を高くすることができる。つまり、本実施形態のモータ装置MTRは、消費電力を低減することができる。
【0072】
なお、モータ装置MTRは、駆動部ACの数に応じた複数の電荷受け渡し部60−4を備えていてもよい。例えば、図20に示すように、モータ装置MTRは、6個の電荷受け渡し部60−4を備えており、電荷受け渡し部60−4が6個の駆動部ACにそれぞれ接続されていてもよい。
これにより、本実施形態のモータ装置MTRは、複数の駆動部ACが備えているそれぞれの電歪素子32の駆動条件によらず、電歪素子32と容量素子71との間において電荷を往復させて受け渡すことができるため、供給された電力の使用効率をさらに高くすることができる。つまり、本実施形態のモータ装置MTRは、消費電力を低減することができる。
【0073】
なお、モータ装置MTRは、電荷受け渡し部60−4に加えて上記の各実施形態において説明した電荷受け渡し部を備えていてもよい。
これにより、本実施形態のモータ装置MTRは、複数の駆動部ACが備えているそれぞれの電歪素子32の駆動条件によらず、電歪素子32と容量素子71との間において電荷を往復させて受け渡すことができる。さらに、モータ装置MTRは、電歪素子32が有する電荷を他の電歪素子32に移動させて電歪素子32を駆動することができる。このため、モータ装置MTRは、電歪素子32の駆動条件に応じて容量素子71に電荷を供給するか、他の電歪素子32に電荷を供給するかを選択して、電歪素子32を駆動することができる。このため、供給された電力の使用効率をさらに高くすることができる。つまり、本実施形態のモータ装置MTRは、消費電力を低減することができる。
【0074】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態として、上記のモータ装置MTRを備えるロボット装置RBTへの適用例を説明する。
図15は、モータ装置MTRを例えばロボットアームARMに適用させた構成を示す図である。本実施形態のロボット装置RBTは、上記各実施形態において説明したモータ装置MTRを備える。
【0075】
図21に示すように、モータ装置MTRがカップリングCPLを介してロボットアームARMに接続されている。上記実施形態のモータ装置MTRは、上述した制御部と電荷受け渡し部とによって駆動部ACを駆動するため、ロボットアームARMを駆動する際の消費電力を低減することができる。また、上記実施形態のモータ装置MTRは、ロボットの関節部分や工作機械の駆動部ACなどにも応用することができる。これによって、モータ装置MTRは、ロボット装置RBTを駆動する際の消費電力を低減することができる。また、ロボット装置RBTとしては、産業用に用いられるアームロボットやハンドロボットであってもよく、サービスロボットに用いられるロボットでもよい。
【0076】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【0077】
上記の実施形態では、電歪素子32は例えばピエゾ素子などの構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、例えば電荷を蓄えられる容量性素子など、他のアクチュエータを用いる構成であっても構わない。例えば、電歪素子(容量性駆動素子)32は、容量性の駆動素子として、磁歪材料と圧電材料とを組み合わせた複合素子であっても構わない。
【0078】
以下、上記の各実施形態において説明した制御部50と、制御部50−2と、制御部50−3と、制御部50−4とをまとめて制御部CONTとして説明する。
なお、上記の実施形態では、モータ装置MTRは、予め記憶部55に記憶されている電歪素子32の駆動条件に基づいて電歪素子32を駆動する電圧波形を生成しているが、これに限られない。例えば、制御部CONTは、実時間処理によって電歪素子32の駆動条件を生成し、生成した駆動条件に基づいて電歪素子32を駆動する電圧波形を生成してもよい。これにより、回転子SFに加わる負荷トルクが変動したような場合においても、制御部CONTは、電歪素子32を駆動する電圧波形と、制御信号とを生成することができる。つまり、外乱が発生した場合でも、モータ装置MTRは、消費電力を低減することができる。
【0079】
なお、上記の各実施形態における制御部CONT、又はこの制御部CONTが備える各部は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリおよびマイクロプロセッサにより実現させるものであってもよい。
【0080】
なお、この制御部CONT、又はこの制御部CONTが備える各部は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、この制御部CONT、又はこの制御部CONTが備える各部はメモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、制御部CONT、又はこの制御部CONTが備える各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0081】
また、制御部CONT、又はこの制御部CONTが備える各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、制御部CONT、又はこの制御部CONTが備える各部による処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0082】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0083】
MTR…モータ装置、SF…回転子、AC…駆動部、BT…伝達部、RBT…ロボット装置、32…電歪素子(容量性駆動素子)、50…制御部、50−2…制御部、50−3…制御部、50−4…制御部、60…電荷受け渡し部、60−2…電荷受け渡し部、60−3…電荷受け渡し部、60−4…電荷受け渡し部、63…トランス部、63A…一次側の巻線(一次側)、63B…二次側の巻線(二次側)、65…電荷放出部(第1の電荷放出部)、65−2…電荷放出部(第2の電荷放出部)、66…電荷供給部(第1の電荷供給部)、66−2…電荷供給部(第2の電荷供給部)、70…容量部、71…容量素子、651…切り替え部、651−2…切り替え部、651−3…切り替え部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子の少なくとも一部に掛けられる伝達部と、
少なくとも複数の容量性駆動素子を有し、前記容量性駆動素子によって前記伝達部を移動させる駆動部と、
前記回転子と前記伝達部との間を回転力伝達状態にして前記伝達部を移動させる駆動動作と、前記回転子と前記伝達部との間を回転力非伝達状態にして前記伝達部を所定の位置に戻す復帰動作とを、前記駆動部に行わせる制御部と、
前記複数の容量性駆動素子のうち少なくとも1つの前記容量性駆動素子に放出させた電荷を前記容量性駆動素子に供給する電荷受け渡し部と
を備えることを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
前記複数の容量性駆動素子は、第1の容量性駆動素子と、第2の容量性駆動素子とを含み、
前記電荷受け渡し部は、前記第1の容量性駆動素子と前記第2の容量性駆動素子とに接続され、前記第1の容量性駆動素子に蓄積された電荷を放出させ、前記第1の容量性駆動素子から放出させた前記電荷に相当する電荷を前記第2の容量性駆動素子に供給する
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ装置。
【請求項3】
前記電荷受け渡し部は、前記第1の容量性駆動素子に蓄積された電荷を放出させて生じるエネルギを、前記第2の容量性駆動素子に電荷を供給する起電力に変換するトランス部を備える
ことを特徴とする請求項2に記載のモータ装置。
【請求項4】
前記電荷受け渡し部は、
一次側と二次側とが相互インダクタンスによって磁気結合されているトランス部であって、前記一次側の一端が前記第1の容量性駆動素子の一端と接続され、前記二次側の一端が前記第2の容量性駆動素子の一端とに接続され、前記第1の容量性駆動素子に蓄積されている電荷を放出させて生じるエネルギを、前記第2の容量性駆動素子に電荷を供給する起電力に変換するトランス部と、
前記第1の容量性駆動素子の他端と前記トランス部の前記一次側の他端とに接続され、前記第1の容量性駆動素子に蓄積されている電荷を放出させ、当該放出させた電荷を前記トランス部に供給する第1の電荷放出部と、
前記第2の容量性駆動素子の他端と前記トランス部の前記二次側の他端とに接続され、前記第2の容量性駆動素子に蓄積されている電荷を放出させ、当該放出させた電荷を前記トランス部に供給する第2の電荷放出部と、
前記トランス部の前記一次側の他端と前記第1の容量性駆動素子の他端とに接続され、前記第2の電荷放出部によって電荷を放出させて生じたエネルギを、前記トランス部を介して変換された起電力によって前記第1の容量性駆動素子に電荷を供給する第1の電荷供給部と、
前記トランス部の前記二次側の他端と前記第2の容量性駆動素子の他端とに接続され、前記第1の電荷放出部によって電荷を放出させて生じたエネルギを、前記トランス部を介して変換された起電力によって前記第2の容量性駆動素子に電荷を供給する第2の電荷供給部と、
を備える
ことを特徴とする請求項2に記載のモータ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記駆動動作において、前記容量性駆動素子に前記電荷を放出させる制御信号を前記電荷受け渡し部に出力する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のモータ装置。
【請求項6】
前記制御部は、少なくとも前記駆動動作における駆動信号と同期して、前記容量性駆動素子から前記電荷を放出させる制御信号を前記電荷受け渡し部に出力する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のモータ装置。
【請求項7】
前記電荷受け渡し部は、前記制御信号に基づいて前記電荷を前記容量性駆動素子に供給するための切り替え部を備える
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のモータ装置。
【請求項8】
前記複数の容量性駆動素子は、
少なくとも2つの異なる前記電荷受け渡し部に接続され、前記電荷受け渡し部のうち、いずれかの電荷受け渡し部を介して供給された電荷を、当該電荷受け渡し部とは異なる他の電荷受け渡し部が放出させる
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のモータ装置。
【請求項9】
前記電荷を蓄積する容量素子を備え、
前記電荷受け渡し部は、前記容量性駆動素子と前記容量素子とのうち、一方の素子に蓄積されている前記電荷を放出させ、当該電荷を放出させて生じるエネルギを含むエネルギによって、他方の素子に電荷を供給する
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のモータ装置。
【請求項10】
回転子の少なくとも一部に掛けられる伝達部と、
少なくとも容量性駆動素子を有し、前記容量性駆動素子によって前記伝達部を移動させる駆動部と、
前記回転子と前記伝達部との間を回転力伝達状態にして前記伝達部を移動させる駆動動作と、前記回転子と前記伝達部との間を回転力非伝達状態にして前記伝達部を所定の位置に戻す復帰動作とを、前記駆動部に行わせる制御部と、
前記容量性駆動素子から電荷を放出させて容量素子に蓄積させ、前記容量素子に蓄積させた電荷を前記容量性駆動素子に供給する電荷受け渡し部と
を備えることを特徴とするモータ装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載のモータ装置を備えることを特徴とするロボット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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