説明

モータ駆動装置

【課題】低コストかつ簡易な構成であるモータ駆動装置を提供する。
【解決手段】1以上のモータを含む第1モータ群と、第1モータ群とは別に構成された、1以上のモータを含む第2モータ群と、第1モータ群に含まれるモータの第一端および第2モータ群に含まれるモータの第一端と、電源および接地との間にそれぞれ設けられる第1スイッチング素子および第2スイッチング素子、第1モータ群に含まれるモータの第二端および第2モータ群に含まれるモータの第二端と、電源および接地との間にそれぞれ設けられる第3スイッチング素子および第4スイッチング素子、および、第1モータ群に含まれるモータの第二端と接地との間に設けられる第5スイッチング素子、を含むスイッチング回路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを駆動制御するためのモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両のドアロック機構を構成するアクチュエータをワイヤレス・リモコン作動させることで、車両から離れた場所にてドアのロック/アンロックを行うことのできるキーレスエントリシステムが知られている。このシステムにおいては利用者が送信機に設けられた操作スイッチを操作すると、送信機から電波が送信される。このとき、ドアのロック/アンロックはモータを駆動制御することにより、ドアロック機構を施錠状態/解錠状態のいずれかに変化させている。
【0003】
例えば、ドアをアンロックする場合、受信機がアンロックを指示する信号を受信した場合に、通常は運転席のドアのみアンロックさせ、最初の信号を受信してから所定時間以内、例えば3秒以内に同じアンロックを指示する信号を受信した場合には運転席以外のドアをアンロックさせる機能(以降、「運転席2回操作アンロック機能」と称することもある)も実現されている。このようにすれば、利用者は、運転席のドアのみ解錠させたい場合には送信機のアンロック用の操作スイッチを1回だけ操作すればよいし、全席のドアを解錠させたい場合には送信機のアンロック用の操作スイッチを例えば3秒以内に2回操作すればよい。
【0004】
しかし、利用者が短時間に2回操作を行ったとき、その操作が、2回連続した操作に意味があるものなのか、異なる機能を連続して実現させるものかを正しく判断しないと、利用者の意図した結果にならないという問題がある。そこで、操作スイッチに対する複数回の操作が短時間になされても、各操作に対応するコード送信処理を確実に実現することができるキーレスエントリシステムが考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−081764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図7,図8に、特許文献1の技術によりモータ駆動装置を構成して、最初のアンロックの指示を受けた場合に、運転席のドアのみアンロックさせ、最初のアンロックの指示を受けてから所定時間以内に同じアンロックの指示を受けたした場合には運転席以外のドアをアンロックさせる運転席2回操作アンロック機能を実現する車両用ドアロック装置の回路構成を示す。モータ駆動装置3は周知のマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と略称)10と、例えば周知のMOSFETであるトランジスタTr1〜Tr6を含むスイッチング回路22と、例えばDCモータであるモータM1を含む第1モータ群13と、同じく例えばDCモータであるモータM2〜M4を含む第2モータ群14と、を有している。
【0007】
図7では、マイコン10とスイッチング回路22との接続の詳細を示し、図8では、スイッチング回路22と各モータ群(13,14)との接続の詳細を示している。また、マイコン10の内部あるいはマイコン10とスイッチング回路22との間に、各モータを駆動するためのドライバ回路を有しているが、ここでは図示を省略してある。
【0008】
各トランジスタ(Tr1〜Tr6)のゲート端子には、トランジスタ毎にマイコン10からの制御線(図の出力ポートP1〜P6)が接続されている。そして、マイコン10からのオン/オフ指令信号に基づいて、対応するトランジスタのオン/オフ状態を変化させる。
【0009】
トランジスタTr1は、モータM1〜M4の第一端(図8では左端)とバッテリBが供給する電源(Vcc)との間に接続され、トランジスタTr2は、モータM1〜M4の第一端(図8では左端)と接地(GND)との間に接続され、トランジスタTr3は、モータM2〜M4の第二端(図8では右端)と電源(Vcc)との間に接続され、トランジスタTr4は、モータM2〜M4の第二端(図8では右端)と接地(GND)との間に接続され、トランジスタTr5は、モータM1の第二端(図8では右端)と電源(Vcc)との間に接続され、トランジスタTr6は、モータM1の第二端(図8では右端)と接地(GND)との間に接続されている。
【0010】
つまり、トランジスタTr1,Tr2のペア、トランジスタTr3,Tr4のペア、およびトランジスタTr5,Tr6のペアの、3組のハーフブリッジ回路を用い、2つのモータ群の駆動制御を行っている。このような、3組のハーフブリッジ回路を用いたモータ駆動回路は、例えば、アトメル社のATA6829のようなモータ駆動用ドライバICが知られている。また、インフィニオン テクノロジーズ社では、この3組のハーフブリッジ回路を、「Sharing Half−bridge」と称している。
【0011】
各モータ(M1,M2,M3,M4)は、マイコン10からの制御指令により、それぞれ、運転席のドア,助手席のドア,後部右側席のドア,後部左側席のドアのロック/アンロックを行うようになっている。
【0012】
図8では、アンロックを指示する信号を受信して運転席のドアのみをアンロックした状態を示している。このとき、トランジスタTr1およびTr6のみオン状態(図では「ON」と表記,以下も同じ)とし、他のトランジスタ(Tr2〜Tr5)をオフ状態(図では「OFF」と表記,以下も同じ)としている。これにより、モータM1のみがアンロック方向(すなわち、第1回転方向)に回転駆動し、運転席のドアのみアンロック状態となる。
【0013】
図9に、運転席以外のドアをアンロックした状態を示す(運転席のドアは既にアンロック状態)。このとき、トランジスタTr1およびTr4をオン状態とし、他のトランジスタTr2,Tr3,Tr5,Tr6をオフ状態としている。これにより、モータM2〜M4がアンロック方向(すなわち、第1回転方向)に回転駆動し、全席のドアがアンロック状態となる。なお、運転席のドアが既にアンロック状態であることを前提としているので、トランジスタTr6をオフ状態としているが、オン状態としてもよい。
【0014】
図10に、全席のドアをロックした状態を示す。このとき、トランジスタTr2,Tr3,およびTr5をオン状態とし、他のトランジスタTr1,Tr4,Tr6をオフ状態としている。これにより、全モータがロック方向(すなわち、第2回転方向)に回転駆動し、全席のドアがロック状態となる。
【0015】
なお、各モータが、所定角度あるいは所定時間回転駆動した後(つまり、ロック状態あるいはアンロック状態のいずれかに遷移した後)は、オン状態であったトランジスタはオフ状態となり、モータの駆動を停止させる。
【0016】
図11に、上述の各ドアのロック状態における、各トランジスタ(Tr1〜Tr6)のオン(ON)/オフ(OFF)の状態を表として示す(運転席を「D席」と表記)。このように、マイコン10から各トランジスタのオン/オフを制御するときには、トランジスタ毎にマイコンからの制御線(図の出力ポートP1〜P6)が必要となる。このため、他の機能との兼ね合いから、出力ポートの数に余裕のある高価なマイコンを選定せざるを得ないという問題がある。また、ここで、トランジスタTr3とトランジスタTr5が同じ動作を行っていることが分かる。本発明はここに着目している。
【0017】
上述のATA6829では、マイコンからはシリアル通信を用いて駆動制御を行っているが、それでもマイコンのポートを5本使用しており、マイコンの使用ポート数削減に寄与しているとはいい難い。
【0018】
また、MOSFETも比較的高価である。さらに、抵抗部品に比べて大型で発熱しやすいMOSFETは、プリント基板上での実装にも制約があり、基板が大型化してしまう。
【0019】
上記問題点を背景として、本発明の課題は、低コストかつ簡易な構成であるモータ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0020】
上記課題を解決するためのモータ駆動装置は、1以上のモータを含む第1モータ群と、第1モータ群とは別に構成された、1以上のモータを含む第2モータ群と、第1モータ群に含まれるモータの第一端および第2モータ群に含まれるモータの第一端と、電源および接地との間にそれぞれ設けられる第1スイッチング素子および第2スイッチング素子、第1モータ群に含まれるモータの第二端および第2モータ群に含まれるモータの第二端と、電源および接地との間にそれぞれ設けられる第3スイッチング素子および第4スイッチング素子、および、第1モータ群に含まれるモータの第二端と接地との間に設けられる第5スイッチング素子、を含むスイッチング回路と、を備えることを特徴とする。
【0021】
上記構成によって、従来の構成よりもスイッチング素子を1個減らすことができ、低コストかつ簡易な構成であるモータ駆動装置を実現できる。
【0022】
また、本発明のモータ駆動装置は、各スイッチング素子のオン/オフの状態を切り替えることで、モータをモータ群毎に一括して駆動制御する制御部を備える。
【0023】
上記構成によって、現状よりも少ない最低限のスイッチング素子によって、モータ群に含まれる複数のモータを一括して駆動制御することができる。
【0024】
また、本発明のモータ駆動装置における制御部は、第1スイッチング素子および第5スイッチング素子をオン状態とし、かつ第2スイッチング素子、第3スイッチング素子、および第4スイッチング素子をオフ状態として、第1モータ群に含まれるモータのみを予め定められた第1回転方向に駆動する。
【0025】
上記構成によって、第1モータ群に含まれるモータのみを一括して第1回転方向に駆動制御することができる。
【0026】
また、本発明のモータ駆動装置における制御部は、第1スイッチング素子および第4スイッチング素子をオン状態とし、かつ第2スイッチング素子および第3スイッチング素子をオフ状態として、第2モータ群に含まれるモータを予め定められた第1回転方向に駆動する。
【0027】
上記構成によって、第2モータ群に含まれるモータのみを一括して第1回転方向に駆動制御することができる。
【0028】
また、本発明のモータ駆動装置における制御部は、第2スイッチング素子および第3スイッチング素子をオン状態とし、かつ第1スイッチング素子、第4スイッチング素子、および第5スイッチング素子をオフ状態として、第1モータ群および第2モータ群に含まれるモータを、第1回転方向とは逆方向の第2回転方向に駆動する。
【0029】
上記構成によって、第1モータ群および第2モータ群に含まれるモータの全てを一括して第2回転方向に駆動制御することができる。
【0030】
また、本発明のモータ駆動装置における制御部は、マイクロコンピュータと論理回路とを含み、マイクロコンピュータは、論理回路に制御指令情報を出力し、論理回路は、マイクロコンピュータからの制御指令情報に基づいて、各スイッチング素子のオン/オフの状態を切り替える。
【0031】
上記構成によって、マイクロコンピュータの処理負荷を低減することができる。これにより、より低コストのマイクロコンピュータを使用することが可能となる。また、論理回路はマイクロコンピュータよりも安価に構成できるので、装置全体のコストを低減できる。また、制御指令情報を出力するためのポートは、制御指令が2種以下なら1本、3〜4種なら2本、5〜8種なら3本で済み、従来の6本に比べて、使用ポート数を大幅に減らすこともできる。この場合は、余った出力ポートを他の用途に転用できるため、装置に新たな機能を追加することができる。
【0032】
また、本発明のモータ駆動装置における各モータ群に含まれるモータは、車両のドアロック機構を施錠状態および解錠状態の間で切り替えるドアロックモータとして用いられる。
【0033】
上記構成によって、車両のドアロック機構を個別あるいは一括して施錠/解錠することが可能となる。
【0034】
また、本発明のモータ駆動装置は、第1モータ群に含まれるモータのみを予め定められた第1回転方向に駆動したときに、車両の運転席のドアロック機構を解錠状態とし、第2モータ群に含まれるモータを第1回転方向に駆動したときに、車両の運転席以外のドアロック機構を解錠状態とし、第1モータ群および第2モータ群に含まれるモータを、第1回転方向とは逆方向の第2回転方向に駆動したときに、車両の全てのドアロック機構を解錠状態とする。
【0035】
上記構成によって、上述の、運転席2回操作アンロック機能を低コストかつ簡易な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のモータ駆動装置の構成を示す図。
【図2】本発明のモータ駆動装置の構成の別例を示す図。
【図3】本発明のモータ駆動装置の、運転席のみアンロック時のトランジスタの動作状態を示す図。
【図4】本発明のモータ駆動装置の、運転席以外アンロック時のトランジスタの動作状態を示す図。
【図5】本発明のモータ駆動装置の、全席ロック時のトランジスタの動作状態を示す図。
【図6】ロック/アンロック時のトランジスタの動作状態を示す図。
【図7】従来技術のモータ駆動装置の構成を示す図。
【図8】従来技術のモータ駆動装置の、運転席のみアンロック時のトランジスタの動作状態を示す図。
【図9】従来技術のモータ駆動装置の、運転席以外アンロック時のトランジスタの動作状態を示す図。
【図10】従来技術のモータ駆動装置の、全席ロック時のトランジスタの動作状態を示す図。
【図11】従来技術のモータ駆動装置の、ロック/アンロック時のトランジスタの動作状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明のモータ駆動装置について、図面を用いて説明する。まず、図1,図3を用いて、本発明のモータ駆動装置を車両用ドアロック装置へ適用した例を説明する。なお、図1,図3は、それぞれ上述の図7,図8を基としたものであるため、同一の構成のものには同一の符号を付与し、ここでは、本発明に特有の動作についてのみ述べる。モータ駆動装置1は周知のマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と略称)10と、周知のMOSFETであるトランジスタTr1〜Tr4,Tr6を含むスイッチング回路12と、モータM1を含む第1モータ群13と、モータM2〜M4を含む第2モータ群14と、を有している。
【0038】
なお、マイクロコンピュータ10が本発明の制御部に相当する。また、トランジスタTr1〜トランジスタTr4が、それぞれ本発明の第1スイッチング素子〜第4スイッチング素子に相当し、なお、トランジスタTr6が本発明の第5スイッチング素子に相当する。
【0039】
図1では、マイコン10とスイッチング回路12との接続の詳細を示し、図3では、スイッチング回路12と各モータ群(13,14)との接続の詳細を示している。また、マイコン10の内部あるいはマイコン10とスイッチング回路12との間に、各モータを駆動するためのドライバ回路を有しているが、ここでは図示を省略してある。また、各モータ群に含まれるモータの個数は、1以上であれば何個でもよい。
【0040】
図1のように、各トランジスタ(Tr1〜Tr4,Tr6)のゲート端子には、トランジスタ毎にマイコン10からの制御線(図の出力ポートP1〜P4,P6)が接続されている。そして、マイコン10からのオン/オフ指令信号に基づいて、対応するトランジスタのオン/オフ状態を変化させる。
【0041】
各トランジスタは、上述のようにMOSFETを用いているが、バイポーラトランジスタ、リレー回路のような他のスイッチング素子あるいはスイッチ回路を用いてもよい。
【0042】
図3のように、トランジスタTr1は、モータM1〜M4の第一端(図では左端)とバッテリBが供給する電源(Vcc)との間に接続され、トランジスタTr2は、モータM1〜M4の第一端(図では左端)と接地(GND)との間に接続され、トランジスタTr3は、モータM1〜M4の第二端(図では右端)と電源(Vcc)との間に接続され、トランジスタTr4は、モータM1〜M4の第二端(図では右端)と接地(GND)との間に接続されている。
【0043】
さらに、トランジスタTr6が、モータM1の第二端(図では右端)と接地(GND)との間に接続されている。そして、モータM1の第二端とモータM2の第二端との間、すなわち、第1モータ群13と第2モータ群14との接続部に、逆流防止用ダイオード(以下、単に「ダイオード」と称することもある)D1が接続されている。ダイオードD1は、第2モータ群14からトランジスタTr6への電流の流れを阻止している。
【0044】
上述の構成では、トランジスタTr1,Tr2のペア、およびトランジスタTr3,Tr4のペアの、2組のハーフブリッジ回路を用いた構成、あるいは、トランジスタTr1〜Tr4による1個のH−ブリッジ回路を用いた構成に、トランジスタTr6を加えて、2つのモータ群の駆動制御を行っている。つまり、従来技術の構成から、トランジスタTr5を減らした構成となっている。
【0045】
図2を用いて、本発明のモータ駆動装置を車両用ドアロック装置へ適用した別例を説明する。なお、図2は図1の変形例であり、スイッチング回路12と各モータ群(13,14)との接続の詳細は、図3と同様である。図2のモータ駆動装置2は、図1のようにマイコン10が直接各トランジスタのオン/オフ状態を変化させるのではなく、マイコン10が出力ポートA,Bを介して論理回路11に制御指令情報を出力し、論理回路11は、マイコン10からの制御指令情報に基づいて、各トランジスタのオン/オフの状態を切り替えるように出力端子Out1〜Out4,Out6の状態を切り替える。
【0046】
論理回路11は、周知のAND素子,OR素子のような論理素子の集合体として構成されている。そして、マイコン10の出力ポートA,Bに接続され、出力端子Out1〜Out4,Out6は、それぞれ対応するトランジスタ(Tr1〜Tr4,Tr6)のゲート端子に接続されている。なお、マイクロコンピュータ10および論理回路11が本発明の制御部に相当する。
【0047】
以下、図3〜図6を用いて、ドアロックの状態における各トランジスタおよび各モータの動作の詳細について述べる。
【0048】
図3では、アンロックを指示する信号を受信して運転席のドアのみをアンロックした状態を示している。このとき、トランジスタTr1およびTr6のみオン状態(図では「ON」と表記,以下も同じ)とし、他のトランジスタ(Tr2〜Tr4)はオフ状態(図では「OFF」と表記,以下も同じ)としている。これにより、モータM1のみがアンロック方向(すなわち、第1回転方向)に回転駆動し、運転席のドアのみアンロック状態となる。
【0049】
このとき、ダイオードD1が、トランジスタTr1→モータ(M2,M3,M4)つまり第2モータ群14→トランジスタTr6の経路を遮断しているので、モータM2〜M4には電流が流れないため、これらのモータは回転駆動しない。つまり、運転席以外のドアはアンロック状態とはならない。
【0050】
図4に、運転席以外のドアをアンロックした状態を示す(運転席のドアは既にアンロック状態)。このとき、トランジスタTr1およびTr4をオン状態とし、他のトランジスタTr2,Tr3,Tr6をオフ状態としている。これにより、全てのモータがアンロック方向(すなわち、第1回転方向)に回転駆動し、運転席以外のドアがアンロック状態となる。なお、運転席のドアが既にアンロック状態であることを前提としているので、トランジスタTr6をオフ状態としているが、オン状態としてもよい。
【0051】
図5に、全席のドアをロックした状態を示す。このとき、トランジスタTr2およびTr3をオン状態とし、他のトランジスタTr1,Tr4,Tr6をオフ状態としている。これにより、全モータがロック方向(すなわち、第2回転方向)に回転駆動し、全席のドアがロック状態となる。
【0052】
図6に、上述の各状態における、各トランジスタ(Tr1〜Tr4,Tr6)のオン(ON)/オフ(OFF)の状態を表として示す(運転席を「D席」と表記)。図1の、マイコン10が直接各トランジスタのオン/オフの制御を行う構成では、ドアのロックの状態(OFF,D席アンロック,D席以外アンロック,全席ロック)に応じて出力ポート(P1〜P4,P6)からオン/オフ指令信号を出力する。
【0053】
このように、マイコン10から各トランジスタのオン/オフを制御するための制御線(図の出力ポートP1〜P4,P6)が、従来よりも1本少ない。また、同じ5本の制御線を使用する上述のATA6829のようにシリアル通信を用いないため、マイコン10での制御処理を簡単なものにできるという利点がある。
【0054】
また、図2のように、マイコン10からの制御指令情報に基づいて、論理回路11が各トランジスタのオン/オフの状態を切り替える構成では、以下のようにマイコン10から制御指令情報を出力する。
・OFF(全モータ停止):出力ポートA,Bともに0(Lレベル)を出力。
・D席アンロック:出力ポートAは0,出力ポートBは1(Hレベル)を出力。
・D席以外アンロック:出力ポートAは1,出力ポートBは0を出力。
・全席ロック:出力ポートA,Bともに1を出力。
【0055】
そして、論理回路11では、マイコン10の出力ポートA,Bの内容に基づいて、図6の対応関係のようなトランジスタのオン/オフの状態となるように、出力端子Out1〜Out4,Out6の状態を切り替える。これにより、マイコン10で、ドアロック用モータの駆動のために必要とする出力ポートは、ロックの状態が4状態であるので2本あればよく、従来の構成(6本)から4本削減できる。
【0056】
上述の実施例では、ドアロック装置を例示しているが、以下のような装置にも適用可能である。
・車両のパワーウインドウ装置:運転席のみ全開,運転席以外の全席全開,全席全閉。
【産業上の利用可能性】
【0057】
車両以外の制御機器に用いられるモータ駆動装置にも適用可能である。
【0058】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 モータ駆動装置
2 モータ駆動装置
10 マイクロコンピュータ(マイコン,制御部)
11 論理回路(制御部)
12 スイッチング回路
13 第1モータ群
14 第2モータ群
Tr1 トランジスタ(第1スイッチング素子)
Tr2 トランジスタ(第2スイッチング素子)
Tr3 トランジスタ(第3スイッチング素子)
Tr4 トランジスタ(第4スイッチング素子)
Tr6 トランジスタ(第5スイッチング素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のモータを含む第1モータ群と、前記第1モータ群とは別に構成された、1以上のモータを含む第2モータ群と、
前記第1モータ群に含まれるモータの第一端および前記第2モータ群に含まれるモータの第一端と、電源および接地との間にそれぞれ設けられる第1スイッチング素子および第2スイッチング素子、
前記第1モータ群に含まれるモータの第二端および前記第2モータ群に含まれるモータの第二端と、前記電源および接地との間にそれぞれ設けられる第3スイッチング素子および第4スイッチング素子、
および、前記第1モータ群に含まれるモータの第二端と接地との間に設けられる第5スイッチング素子、
を含むスイッチング回路と、
を備えることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記各スイッチング素子のオン/オフの状態を切り替えることで、前記モータを前記モータ群毎に一括して駆動制御する制御部を備える請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1スイッチング素子および前記第5スイッチング素子をオン状態とし、かつ前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、および前記第4スイッチング素子をオフ状態として、前記第1モータ群に含まれるモータのみを予め定められた第1回転方向に駆動する請求項2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1スイッチング素子および前記第4スイッチング素子をオン状態とし、かつ前記第2スイッチング素子および前記第3スイッチング素子をオフ状態として、前記第2モータ群に含まれるモータを予め定められた第1回転方向に駆動する請求項2または請求項3に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2スイッチング素子および前記第3スイッチング素子をオン状態とし、かつ前記第1スイッチング素子、前記第4スイッチング素子、および前記第5スイッチング素子をオフ状態として、前記第1モータ群および前記第2モータ群に含まれるモータを、前記第1回転方向とは逆方向の第2回転方向に駆動する請求項3または請求項4に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記制御部は、マイクロコンピュータと論理回路とを含み、
前記マイクロコンピュータは、前記論理回路に制御指令情報を出力し、前記論理回路は、前記マイクロコンピュータからの前記制御指令情報に基づいて、前記各スイッチング素子のオン/オフの状態を切り替える請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記各モータ群に含まれるモータは、車両のドアロック機構を施錠状態および解錠状態の間で切り替えるドアロックモータとして用いられる請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項8】
前記第1モータ群に含まれるモータのみを予め定められた第1回転方向に駆動したときに、前記車両の運転席のドアロック機構を解錠状態とし、
前記第2モータ群に含まれるモータを前記第1回転方向に駆動したときに、前記車両の運転席以外のドアロック機構を解錠状態とし、
前記第1モータ群および前記第2モータ群に含まれるモータを、前記第1回転方向とは逆方向の第2回転方向に駆動したときに、前記車両の全てのドアロック機構を解錠状態とする請求項7に記載のモータ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−27278(P2013−27278A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163048(P2011−163048)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】