説明

モータ

【課題】回転軸の軸方向へ移動可能なスライド軸受等の部品の精度が低くても、回転軸の軸方向に対するスライド軸受の倒れを抑制することが可能なモータを提供する。
【解決手段】モータ1は、回転軸2を有するロータ4と、ロータ4の外周側に配置されるステータ6と、回転軸2の出力側の端部2aを支持するとともに回転軸2の軸方向へ移動可能なスライド軸受8と、スライド軸受8を軸方向へ付勢する付勢部材10と、スライド軸受8を軸方向へ移動可能に保持する軸受保持部7cとを備えている。スライド軸受8には、軸方向に対するスライド軸受8の倒れを抑制する倒れ抑制部8tが形成され、スライド軸受8の周方向における少なくとも一部では、倒れ抑制部8tと軸受保持部7cとの間に軸方向の隙間が形成されている。このモータ1では、倒れ抑制部8tが軸受保持部7cに当接することで軸方向に対するスライド軸受8の倒れが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の端部を支持するとともに回転軸の軸方向へ移動可能なスライド軸受を備えるモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CD、DVDプレーヤ等に用いられる光ピックアップ装置やカメラに用いられるレンズ群等を移動させるモータとして、ステータから突出する回転軸の先端側にリードスクリューが形成されたステッピングモータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のモータは、回転軸の先端部を支持する出力側軸受と、回転軸の後端部を支持する反出力側軸受とを備えている。
【0003】
反出力側軸受は、ステータに固定されている。ステータには、出力側軸受を保持する軸受保持部が形成されたフレームが固定されている。フレームは、たとえば、0.6mm程度の薄鋼板によって形成されている。軸受保持部には、出力側軸受が配置される軸受孔が形成されており、出力側軸受は、軸受保持部に軸方向へ移動可能に保持されている。また、出力側軸受は、軸受保持部に固定される板バネによって、反出力側に付勢されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−16923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のモータでは、薄鋼板によって形成されるフレームに出力側軸受が軸方向へ移動可能に保持されているため、出力側軸受やフレーム等の部品の精度が低いと、出力側軸受が軸受孔の中で回転軸の軸方向に対して倒れる(傾く)おそれがある。出力側軸受が軸受孔の中で倒れると、回転軸の先端部と出力側軸受との接触面積が大きくなって、摺動抵抗が大きくなり、その結果、モータの出力トルクが低下するおそれがある。また、出力側軸受が軸受孔の中で倒れると、出力側軸受と反出力側軸受との同軸度が悪化し、その結果、モータの出力トルクが低下するおそれがある。
【0006】
特許文献1に記載のモータにおいて、出力側軸受等の部品の精度を高めれば、かかる問題を解消することが可能である。しかしながら、近年、モータは、ますます小型化する傾向にあり、出力側軸受等の部品の精度を高めることが困難な状況が生じつつある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、回転軸の軸方向へ移動可能なスライド軸受等の部品の精度が低くても、回転軸の軸方向に対するスライド軸受の倒れを抑制することが可能なモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のモータは、回転軸を有するロータと、ロータの外周側に配置されるステータと、回転軸の出力側の端部または回転軸の反出力側の端部を支持するとともに回転軸の軸方向へ移動可能なスライド軸受と、スライド軸受を軸方向へ付勢する付勢部材と、スライド軸受を軸方向へ移動可能に保持する軸受保持部とを備え、スライド軸受には、軸方向に対するスライド軸受の倒れを抑制するための倒れ抑制部がスライド軸受の径方向の外側へ突出するように形成され、スライド軸受の周方向における少なくとも一部では、倒れ抑制部と軸受保持部との間に軸方向の隙間が形成され、倒れ抑制部が軸受保持部に当接することで軸方向に対するスライド軸受の倒れが抑制されることを特徴とする。
【0009】
本発明のモータでは、スライド軸受に、回転軸の軸方向に対するスライド軸受の倒れを抑制するための倒れ抑制部が形成され、倒れ抑制部が軸受保持部に当接することで軸方向に対するスライド軸受の倒れが抑制されている。そのため、スライド軸受等の部品の精度が低くても、倒れ抑制部によって、回転軸の軸方向に対するスライド軸受の倒れを抑制することが可能になる。また、本発明では、スライド軸受の周方向における少なくとも一部では、倒れ抑制部と軸受保持部との間に軸方向の隙間が形成されており、倒れ抑制部が軸受保持部に完全には当接していない。そのため、スライド軸受に倒れ抑制部が形成されていても、付勢部材の付勢力をスライド軸受に適切に作用させることが可能になる。
【0010】
本発明において、たとえば、モータは、回転軸の出力側でステータに固定されるフレームを備え、スライド軸受は、回転軸の出力側の端部を支持する出力側軸受であり、軸受保持部は、フレームに形成され、軸受保持部には、軸受保持部を貫通するとともにスライド軸受が配置される軸受孔が形成され、付勢部材は、スライド軸受を回転軸の反出力側に向かって付勢している。
【0011】
本発明において、付勢部材には、スライド軸受に当接して、軸受孔から回転軸の出力側へスライド軸受が抜けるのを防止する抜け防止部が形成され、抜け防止部がスライド軸受に当接している状態であっても、スライド軸受の周方向における少なくとも一部では、倒れ抑制部と軸受保持部との間に軸方向の隙間が形成されていることが好ましい。このように構成すると、軸受孔からのスライド軸受の抜けを防止しつつ、付勢部材の付勢力をスライド軸受に適切に作用させることが可能になる。
【0012】
本発明において、倒れ抑制部は、軸方向におけるスライド軸受の反出力端側に形成され、軸方向における軸受保持部の反出力側に配置されていることが好ましい。また、本発明において、倒れ抑制部は、軸方向におけるスライド軸受の出力端側に形成され、軸方向における軸受保持部の出力側に配置されていても良い。このように構成すると、モータの組立時に、倒れ抑制部を目印にして、スライド軸受を軸受孔に配置することが可能になる。したがって、たとえば、スライド軸受が非常に小さくても、スライド軸受が軸受孔へ逆方向に組み込まれるのを防止することが可能になる。
【0013】
本発明において、倒れ抑制部は、たとえば、スライド軸受の全周から径方向へ広がる鍔状に形成されている。この場合には、スライド軸受の周方向に所定の間隔をあけた状態で複数の倒れ抑制部が形成されている場合と比較して、倒れ抑制部の強度を高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明のモータでは、回転軸の軸方向へ移動可能なスライド軸受等の部品の精度が低くても、回転軸の軸方向に対するスライド軸受の倒れを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態にかかるモータの側面断面図である。
【図2】図1のE−E方向からモータを示す図である。
【図3】図1のE−E方向からフレームを示す図である。
【図4】図1に示す出力側軸受を示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)のH−H断面の断面図、(C)は背面図、(D)は底面図である。
【図5】図1に示す板バネを示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は(A)のJ−J断面の断面図である。
【図6】図1のK部の拡大図であり、(A)は出力側軸受等の部品精度が出ているときの状態を示す図、(B)は出力側軸受等の部品精度が出ていないときの状態を示す図である。
【図7】従来技術にかかる出力側軸受を軸受孔に配置したときの状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
(モータの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるモータ1の側面断面図である。
【0018】
本形態のモータ1は、いわゆるPM型のステッピングモータである。モータ1は、図1に示すように、回転軸2と略円筒状の永久磁石3とを有するロータ4と、永久磁石3の径方向の外側に配置される極歯5を有するステータ6と、回転軸2の出力側でステータ6に取り付けられたフレーム7とを備えている。また、モータ1は、回転軸2の出力側の端部2a(図1の左端部)を支持する出力側軸受8と、回転軸2の反出力側の端部2b(図1の右端部)を支持する反出力側軸受9と、回転軸2を反出力側へ付勢するための付勢部材としての板バネ10とを備えている。
【0019】
なお、以下の説明では、回転軸2の出力側となる図1の左側を「先端側」、回転軸2の反出力側となる図1の右側を「後端側」とする。また、以下の説明では、図1のY方向を「上下方向」、図1のX方向(紙面垂直方向)を「左右方向」とする。また、以下では、回転軸2の出力側の端部2aを「先端部2a」、回転軸2の反出力側の端部2bを「後端部2b」とする。
【0020】
回転軸2は、ステンレス鋼、アルミニウムあるいは黄銅等の金属で形成されている。回転軸2の先端部2aの先端および後端部2bの後端は、半球面状に形成されている。また、先端部2aおよび後端部2bの径は、回転軸2の他の部分の径よりも小さくなっている。回転軸2の後端部2b側には、永久磁石3が固定されている。また、回転軸2の先端部2a側は、ステータ6から突出する突出部2cとなっている。この突出部2cには、リードスクリュー2dが形成されている。リードスクリュー2dは、たとえば、光ピックアップ装置等の移動体と螺合して、移動体を移動させる。
【0021】
ステータ6は、第1のステータ組12と第2のステータ組13とを備えている。第1のステータ組12と第2のステータ組13とは、軸方向で重なるように配置されている。
【0022】
第1のステータ組12は、外ステータコア14と、コイル15が巻回されたボビン16と、ボビン16を外ステータコア14との間に挟む内ステータコア17とを備え、永久磁石3の先端側部分の外周側に配置されている。ボビン16の内周側には、外ステータコア14および内ステータコア17のそれぞれに形成された複数の極歯5が周方向に隣接するように配置されている。また、ボビン16の内周側には、外ステータコア14に形成された極歯5と、内ステータコア17に形成された極歯5とが交互に入り込むように配置されている。
【0023】
第2のステータ組13は、外ステータコア18と、コイル15が巻回されたボビン19と、ボビン19を外ステータコア18との間に挟む内ステータコア20とを備え、永久磁石3の後端側部分の外周側に配置されている。ボビン19の内周側には、外ステータコア18および内ステータコア20のそれぞれに形成された複数の極歯5が周方向に隣接するように配置されている。また、ボビン19の内周側には、外ステータコア18に形成された極歯5と、内ステータコア20に形成された極歯5とが交互に入り込むように配置されている。
【0024】
本形態では、外ステータコア14の外周側部分がコイル15の外周を覆うケース部として機能している。同様に、外ステータコア18の外周側部分がコイル15の外周を覆うケース部として機能している。
【0025】
軸方向におけるボビン16とボビン19との間の一部には、径方向外側に張り出す端子台21がボビン16およびボビン19と一体で形成されている。端子台21には、コイル15に電流を供給するための端子ピン22が固定されている。端子ピン22には、コイル15の端部が巻回されている。
【0026】
反出力側軸受9は、樹脂で形成されるとともに、後端側に配置される鍔部9aを有する有底円筒状に形成されている。反出力側軸受9には、回転軸2の後端部2bが挿入される軸受凹部9bが反出力側軸受9の先端から後端側に向かって窪むように形成されている。軸受凹部9bは、軸方向から見たときの形状が円形状となるように形成されている。軸受凹部9bの内径は、後端部2bの外径よりもわずかに大きくなっており、後端部2bの外周面と軸受凹部9bの内周面との間にわずかな隙間が形成されている。また、軸受凹部9bの底面9cは、円錐状あるいは角錘状に形成されている。
【0027】
図1に示すように、板バネ10によって後端側に付勢された回転軸2の後端(具体的には、半球面状に形成された後端部2bの後端)は、軸受凹部9bの底面9cに接触しており、回転軸2の後端は、底面9cによって径方向および軸方向で反出力側軸受9に支持されている。また、軸受凹部9bの底面9cは、円錐状あるいは角錘状に形成されているため、反出力側軸受9は回転軸2の調芯機能を有する。すなわち、本形態のモータ1では、反出力側軸受9によって回転軸2の調芯が行われている。なお、本形態では、軸受凹部9bの底面9cが、円錐状あるいは角錘状に形成されており、回転軸2の後端は、底面9cに対して線接触している。そのため、回転軸2の後端と反出力側軸受9との間の摺動ロスを軽減することが可能となっている。
【0028】
ステータ6の後端面(具体的には、外ステータコア18の後端面)には、ステンレス鋼板等の薄い金属板によって形成された端板23が固定されている。たとえば、端板23は溶接でステータ6の後端面に固定されている。反出力側軸受9は、この端板23によってステータ6に固定されている。具体的には、外ステータコア18の後端面の一部と端板23とによって鍔部9aの一部が軸方向で挟まれることで、反出力側軸受9がステータ6に固定されている。
【0029】
(フレーム、出力側軸受および板バネの構成)
図2は、図1のE−E方向からモータ1を示す図である。図3は、図1のE−E方向からフレーム7を示す図である。図4は、図1に示す出力側軸受8を示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)のH−H断面の断面図、(C)は背面図、(D)は底面図である。図5は、図1に示す板バネ10を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は(A)のJ−J断面の断面図である。図6は、図1のK部の拡大図であり、(A)は出力側軸受8等の部品精度が出ているときの状態を示す図、(B)は出力側軸受8等の部品精度が出ていないときの状態を示す図である。
【0030】
フレーム7は、電気亜鉛メッキ鋼板(SECC)あるいは冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属の薄板によって形成された金属フレームである。フレーム7の厚さは、たとえば、0.6mmであり、フレーム7の厚さは非常に薄くなっている。このフレーム7は、底面部7aと、底面部7aから起立するように形成され互いに対向配置される2枚の側面部7b、7cとを備える角溝形状(断面コの字形状)に形成されている。なお、フレーム7は、ステンレス鋼板等の他の金属の薄板によって形成されても良い。
【0031】
側面部7bは、後端側に配置され、ステータ6に固定されている。側面部7bには、図1に示すように、回転軸2が挿通される挿通孔7dが側面部7bを貫通するように形成されている。挿通孔7dの内径は、回転軸2の外径よりも大きく形成されており、挿通孔7dの内周面と回転軸2との間には隙間が形成されている。
【0032】
側面部7cは、先端側に配置され、出力側軸受8を保持している。側面部7cには、図3に示すように、出力側軸受8が配置される円形の軸受孔7eが側面部7cを貫通するように形成されている。軸受孔7eの内径は、後述の倒れ抑制部8tを除く出力側軸受8の外径よりもわずかに大きく形成されており、軸受孔7eに配置された出力側軸受8は、軸受孔7eの内周面7fに沿って軸方向へ移動可能となっている。本形態では、軸受孔7eの内周面7fによって出力側軸受8が支持されており、出力側軸受8は、軸方向において側面部7cの板厚分だけ支持されている。本形態の出力側軸受8は、軸方向へ移動可能なスライド軸受であり、側面部7cは、スライド軸受である出力側軸受8を軸方向へ移動可能に保持する軸受保持部である。
【0033】
本形態のフレーム7は、プレス加工で形成されている。具体的には、プレス打ち抜き加工とプレス曲げ加工とによってフレーム7が形成されている。たとえば、プレス打ち抜き加工によって、底面部7aおよび側面部7b、7cの外形が形成され、その後に、プレス曲げ加工によって、側面部7b、7cが底面部7aに対して略90°折り曲げられて、フレーム7が形成されている。
【0034】
出力側軸受8は、樹脂で形成されている。たとえば、出力側軸受8は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、LCP(液晶ポリマー)、POM(ポリアセタール)あるいはPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂で形成されている。また、出力側軸受8は、反出力側(後端側)が開口する鍔付きの有底円筒状に形成されている。この出力側軸受8は、軸方向へ移動可能な状態で、フレーム7の軸受孔7eに挿入されている。具体的には、軸方向における出力側軸受8の両端側が側面部7cの出力側面7hおよび反出力側面7jから突出した状態で、出力側軸受8は、軸受孔7eに配置されている。すなわち、本形態では、出力側軸受8の軸方向の長さは、フレーム7の板厚よりも長くなっている。なお、出力側軸受8は、摺動性に優れた金属材料(たとえば、銅系の焼結金属材料)で形成されても良い。
【0035】
出力側軸受8には、図4に示すように、回転軸2の先端部2aが挿入される軸受凹部8aが出力側軸受8の後端面8bから先端側に向かって窪むように形成されている。また、出力側軸受8には、板バネ10の一部が配置される配置凹部8cが先端面8dから後端側に向かって窪むように形成されている。また、出力側軸受8には、回転軸2の軸方向に対する出力側軸受8の倒れ(傾き)を抑制するための倒れ抑制部8tが形成されている。
【0036】
軸受凹部8aは、図4(C)に示すように、軸方向から見たときの形状が円形状となるように形成されており、軸受凹部8aの内径は、先端部2aの外径よりもわずかに大きくなっている。また、軸受凹部8aの底面8eは、平面状に形成されている。本形態では、軸受凹部8aの内周面8fが回転軸2の先端部2aを径方向で支持している。また、本形態では、板バネ10によって出力側軸受8が後端側に付勢されており、底面8eが回転軸2の先端部2aを軸方向で支持している。
【0037】
配置凹部8cは、図4(A)に示すように、略T形状に形成されている。すなわち、出力側軸受8の先端側の外周部分には、先端側に向かって突出する3個の突起部8g、8h、8jが円周方向に所定の間隔をあけた状態で形成されている。具体的には、略120°ピッチで、3個の突起部8g〜8jが形成されている。また、円周方向における突起部8g〜8jの間には、軸方向に直交する平面部8x、8y、8zが形成されている。なお、突起部8g〜8jの外周面は、出力側軸受8の外周面の一部を構成している。
【0038】
図4(A)に示すように、突起部8gは、出力側軸受8の上端側に配置されている。突起部8hは、出力側軸受8の下端側の左側に配置されている。突起部8jは、出力側軸受8の下端側の右側に配置されている。突起部8hと突起部8jとは、左右対称に形成されている。また、平面部8xは、突起部8gと突起部8hとの間に形成され、平面部8yは、突起部8gと突起部8jとの間に形成され、平面部8zは、突起部8hと突起部8jとの間に形成されている。
【0039】
配置凹部8cの径方向の中心位置には、板バネ10が当接するバネ当接部8rが形成されている。バネ当接部8rは、出力側軸受8の先端側に向かって膨らむ略円錐状に形成されている。バネ当接部8rの膨らみ量は、突起部8g〜8jの突出量よりも小さくなっている。バネ当接部8rの先端8sは、滑らかな曲面状に形成されている。なお、本形態では、軸方向において、平面部8x〜8zおよびバネ当接部8rと、出力側軸受8の先端面8dとの間に形成された空間が配置凹部8cとなっている。
【0040】
倒れ抑制部8tは、出力側軸受8の全周から出力側軸受8の径方向の外側へ広がる鍔状に形成されている。本形態の倒れ抑制部8tは、円環状に形成されている。倒れ抑制部8tの外径は、側面部7cの軸受孔7eの内径よりも大きくなっている。また、倒れ抑制部8tは、出力側軸受8の後端部に形成されており、図1に示すように、側面部7cよりも後端側に配置されている。
【0041】
板バネ10は、ステンレス鋼板等の金属の薄板によって形成されている。たとえば、板バネ10の厚さは、0.1mmである。図5(A)に示すように、板バネ10は略円形に形成されるとともに、板バネ10の中心側には貫通孔10aが形成されている。また、板バネ10には、出力側軸受8のバネ当接部8rに当接して出力側軸受8を反出力側(後端側)に向かって付勢する軸受当接部10bと、フレーム7の軸受孔7eからの出力側軸受8の抜けを防止する抜け防止部としての2個の突出部10cとが形成されている。
【0042】
軸受当接部10bは、貫通孔10aの下端側の縁10dから貫通孔10aの中心側に向かって突出するように形成されている。また、軸受当接部10bは、図5(B)に示すように、下端側を支点として先端側に撓むように形成されている。軸受当接部10bの左右両端側では、軸受当接部10bの付勢力を確保するため、貫通孔10aは、下方向に向かってスリット状に広がっている。すなわち、軸受当接部10bの左右両端側には、貫通孔10aの一部を構成するスリット部10eが形成されている。
【0043】
また、軸受当接部10bは、図5(C)に示すように、後端側に向かって2箇所で折り曲げられており、下端側に配置される下端部10fと、上端側に配置される上端部10gと、下端部10fと上端部10gとの間に配置される中間部10hとから構成されている。本形態では、モータ1に板バネ10が組み込まれると、図1に示すように、下端部10fが撓んで、中間部10hがバネ当接部8rの先端8sに当接する。また、上端部10gの上端は、出力側軸受8のバネ当接部8rの先端8sよりも後端側の配置凹部8c内に配置される。
【0044】
突出部10cは、貫通孔10aの左右両端側の縁10jから貫通孔10aの中心側に向かって突出するように形成されている。突出部10cは、図5(A)に示すように、略台形状に形成されている。また、2個の突出部10cは左右対称に配置されている。
【0045】
板バネ10は、プロジェクション溶接等の溶接によって、フレーム7の出力側面7hに固定されている。図2に示すように、出力側面7hに固定された板バネ10の軸受当接部10bおよび突出部10cは、フレーム7の軸受孔7eに配置された出力側軸受8の配置凹部8cに配置されている。具体的には、配置凹部8cの、突起部8gと突起部8hとの間、および、配置凹部8cの、突起部8gと突起部8jとの間に各々の突出部10cが配置され、配置凹部8cの、突起部8hと突起部8jとの間に軸受当接部10b(具体的には、中間部10hおよび下端部10fの一部)が配置されている。
【0046】
突出部10cは、平面部8x、8yに当接して、軸受孔7eからの先端側への出力側軸受8の抜けを防止する機能を果たしている。また、突出部10cは、突起部8g〜8jの側面に当接して、側面部7cに対する出力側軸受8の回転を防止する回り止めの機能を果たしている。
【0047】
本形態では、図6に示すように、出力側軸受8の周方向における少なくとも一部で、倒れ抑制部8tと側面部7cの反出力側面7jとの間に軸方向の隙間Sが形成されている。具体的には、出力側軸受8等の部品精度が出ているとき(具体的には、出力側軸受8等の幾何精度や寸法精度(より具体的には、出力側軸受8の外周面および内周面の円筒度や、出力側軸受8の外径および内径の寸法精度等)が出ているとき)には、図6(A)に示すように、出力側軸受8の周方向の全域で、倒れ抑制部8tと反出力側面7jとの間に軸方向の隙間Sが形成されている。また、出力側軸受8等の部品精度が出ていないときには、図6(B)に示すように、倒れ抑制部8tの一部が反出力側面7jに当接するまで、回転軸2の軸方向に対して出力側軸受8がわずかに倒れるため、出力側軸受8の周方向の一部で、倒れ抑制部8tと反出力側面7jとの間に軸方向の隙間Sが形成されている。なお、本形態では、突出部10cが平面部8x、8yに当接している状態であっても、出力側軸受8の周方向における少なくとも一部で、倒れ抑制部8tと反出力側面7jとの間に軸方向の隙間Sが形成されている。
【0048】
また、本形態では、図6(B)に示すように、倒れ抑制部8tが反出力側面7jに当接することで、回転軸2の軸方向に対する出力側軸受8の倒れが抑制されている。なお、本形態では、軸受当接部10bは、バネ当接部8rの先端8sの中心よりもわずかに上側に当接しており、出力側軸受8には、図6の時計回りの方向へモーメントが生じている。そのため、出力側軸受8等の部品精度が出ていないときには、図6(B)に示すように、倒れ抑制部8tの下端側が反出力側面7jに当接する。
【0049】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、出力側軸受8に倒れ抑制部8tが形成され、倒れ抑制部8tが反出力側面7jに当接することで軸方向に対する出力側軸受8の倒れが抑制されている。そのため、出力側軸受8等の部品精度が低くても、倒れ抑制部8tによって、回転軸2の軸方向に対する出力側軸受8の倒れを抑制することができる。すなわち、図7に示すように、倒れ抑制部8tが形成されていない出力側軸受58の場合、出力側軸受58の部品精度が低いと、出力側軸受58が大きく倒れるが、本形態では、出力側軸受8等の部品精度が低くても、倒れ抑制部8tが反出力側面7jに当接するため、図6(B)に示すように、出力側軸受8の倒れを抑制することができる。
【0050】
したがって、本形態では、回転軸2の先端部2aと出力側軸受8の軸受凹部8aとの接触面積を小さくして、回転軸2の先端部2aと出力側軸受8の軸受凹部8aとの摺動抵抗が小さくすることが可能になる。また、出力側軸受8と反出力側軸受9との同軸度を確保することが可能になる。その結果、本形態では、モータ1の出力トルクの低下を抑制することが可能になる。
【0051】
本形態では、出力側軸受8の周方向における少なくとも一部で、倒れ抑制部8tと反出力側面7jとの間に軸方向の隙間Sが形成されており、倒れ抑制部8tが反出力側面7jに完全に当接していない。そのため、出力側軸受8に倒れ抑制部8tが形成されていても、先端側への力がロータ4に作用したときには、ロータ4が出力側軸受8とともに先端側へ移動する。したがって、本形態では、板バネ10の付勢力を出力側軸受8に適切に作用させることが可能になり、その結果、板バネ10の付勢力をロータ4に適切に作用させることが可能になる。
【0052】
また、本形態では、突出部10cが平面部8x、8yに当接している状態であっても、出力側軸受8の周方向における少なくとも一部で、倒れ抑制部8tと反出力側面7jとの間に軸方向の隙間Sが形成されており、倒れ抑制部8tが反出力側面7jに完全に当接していない。そのため、本形態では、軸受孔7eからの先端側への出力側軸受8の抜けを防止しつつ、板バネ10の付勢力を出力側軸受8に適切に作用させて、板バネ10の付勢力をロータ4に適切に作用させることが可能になる。
【0053】
本形態では、倒れ抑制部8tは、出力側軸受8の後端部に形成されている。そのため、モータ1の組立時に、倒れ抑制部8tを目印にして、出力側軸受8を軸受孔7eに配置することができる。したがって、本形態では、たとえば、出力側軸受8が非常に小さくても、出力側軸受8が軸受孔7eへ逆方向に組み込まれるのを防止することが可能になる。
【0054】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0055】
上述した形態では、倒れ抑制部8tは、出力側軸受8の後端部に形成され、側面部7cよりも後端側に配置されている。この他にもたとえば、倒れ抑制部8tは、出力側軸受8の先端部に形成され、側面部7cよりも先端側に配置されても良い。この場合には、倒れ抑制部8tの分だけ、出力側軸受8の後端側を短くして、リードスクリュー2dの長さを長くすることが可能になる。なお、この場合には、出力側軸受8の周方向における少なくとも一部で、倒れ抑制部8tと側面部7cの出力側面7hとの間に軸方向の隙間Sが形成される。
【0056】
上述した形態では、倒れ抑制部8tは、円環状に形成されているが、倒れ抑制部8tは、四角環状や六角環状等の多角環状に形成されても良いし、楕円環状に形成されても良い。また、上述した形態では、倒れ抑制部8tは、出力側軸受8の全周から出力側軸受8の径方向の外側へ広がる鍔状に形成されているが、出力側軸受8の周方向に所定の間隔をあけた状態で出力側軸受8の径方向の外側へ突出する複数の倒れ抑制部8tが出力側軸受8に形成されても良い。なお、出力側軸受8の周方向に所定の間隔をあけた状態で複数の倒れ抑制部8tが形成される場合と比較して、倒れ抑制部8tが鍔状に形成されている場合には、倒れ抑制部8tの強度を高めることが可能になる。
【0057】
上述した形態では、出力側軸受8が軸方向へ移動可能なスライド軸受であるが、反出力側軸受9が軸方向へ移動可能なスライド軸受であっても良い。この場合には、反出力側軸受9は、たとえば、樹脂材料等によって形成される円筒状の軸受保持部材(軸受保持部)によって軸方向へ移動可能に保持され、出力側軸受8は、側面部7cに固定される。また、この場合には、反出力側軸受9に、回転軸2の軸方向に対する反出力側軸受9の倒れを抑制するための倒れ抑制部が形成され、この倒れ抑制部が軸受保持部材に当接することで、回転軸2の軸方向に対する反出力側軸受9の倒れが抑制される。なお、この場合の倒れ抑制部は、反出力側軸受9の後端部に形成されても良いし、反出力側軸受9の先端部に形成されても良い。
【0058】
上述した形態では、突出部10cおよび突起部8g〜8jが、側面部7cに対する出力側軸受8の回転を防止する機能を果たしている。この他にもたとえば、倒れ抑制部8tに軸方向へ突出する突起が形成され、この突起が係合する凹部が側面部7cの反出力側面7jに窪むように形成されるとともに、この突起と凹部とによって、側面部7cに対する出力側軸受8の回転が防止されても良い。
【0059】
上述した形態では、フレーム7は、金属の薄板によって形成されているが、フレーム7は、樹脂で形成されても良い。また、上述した形態では、フレーム7の側面部7cに出力側軸受8が直接、保持されているが、側面部7cに、たとえば、樹脂材料等で形成された円筒状の軸受保持部材(軸受保持部)が固定されるとともに、この軸受保持部材に出力側軸受8が軸方向へ移動可能に保持されても良い。
【0060】
上述した形態では、出力側軸受8は、板バネ10によって反出力側へ付勢されている。この他にもたとえば、出力側軸受8は、圧縮コイルバネや皿バネ等によって反出力側へ付勢されても良い。この場合には、バネ当接部8rの先端8sに当接するように圧縮コイルバネや皿バネ等が配置される。また、この場合には、たとえば、圧縮コイルバネや皿バネ等を保持する保持部材がフレーム7の出力側面7hに固定される。
【符号の説明】
【0061】
1 モータ
2 回転軸
2a 先端部(出力側の端部)
2b 後端部(反出力側の端部)
4 ロータ
6 ステータ
7 フレーム
7c 側面部(軸受保持部)
7e 軸受孔
8 出力側軸受(スライド軸受)
8t 倒れ抑制部
10 板バネ(付勢部材)
10c 突出部(抜け防止部)
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するロータと、前記ロータの外周側に配置されるステータと、前記回転軸の出力側の端部または前記回転軸の反出力側の端部を支持するとともに前記回転軸の軸方向へ移動可能なスライド軸受と、前記スライド軸受を前記軸方向へ付勢する付勢部材と、前記スライド軸受を前記軸方向へ移動可能に保持する軸受保持部とを備え、
前記スライド軸受には、前記軸方向に対する前記スライド軸受の倒れを抑制するための倒れ抑制部が前記スライド軸受の径方向の外側へ突出するように形成され、
前記スライド軸受の周方向における少なくとも一部では、前記倒れ抑制部と前記軸受保持部との間に前記軸方向の隙間が形成され、
前記倒れ抑制部が前記軸受保持部に当接することで前記軸方向に対する前記スライド軸受の倒れが抑制されることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記回転軸の出力側で前記ステータに固定されるフレームを備え、
前記スライド軸受は、前記回転軸の出力側の端部を支持する出力側軸受であり、
前記軸受保持部は、前記フレームに形成され、
前記軸受保持部には、前記軸受保持部を貫通するとともに前記スライド軸受が配置される軸受孔が形成され、
前記付勢部材は、前記スライド軸受を前記回転軸の反出力側に向かって付勢していることを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項3】
前記付勢部材には、前記スライド軸受に当接して、前記軸受孔から前記回転軸の出力側へ前記スライド軸受が抜けるのを防止する抜け防止部が形成され、
前記抜け防止部が前記スライド軸受に当接している状態であっても、前記スライド軸受の周方向における少なくとも一部では、前記倒れ抑制部と前記軸受保持部との間に前記軸方向の隙間が形成されていることを特徴とする請求項2記載のモータ。
【請求項4】
前記倒れ抑制部は、前記軸方向における前記スライド軸受の反出力端側に形成され、前記軸方向における前記軸受保持部の反出力側に配置されていることを特徴とする請求項2または3記載のモータ。
【請求項5】
前記倒れ抑制部は、前記軸方向における前記スライド軸受の出力端側に形成され、前記軸方向における前記軸受保持部の出力側に配置されていることを特徴とする請求項2または3記載のモータ。
【請求項6】
前記倒れ抑制部は、前記スライド軸受の全周から前記径方向へ広がる鍔状に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−235662(P2012−235662A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104304(P2011−104304)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】