説明

モータ

【課題】 安定したバネ力により、ロータの叩き音を防止するとともに、簡便なクラッチ手段を備えたモータを提供する。
【解決手段】 ロータ2は外周にロータマグネット4bが設けられ、かつ一端部に円筒状の凹部4aが穿設された円筒状のロータサポータ4と、凹部4aに基端3a側が挿入され、他端3b側にピニオン3cが形成されたロータ軸3とを有し、ケーシング11の底部11aと仕切り板10とに固定されたロータポスト14に挿通されて回転自在かつ移動自在に設けられてなり、ロータ軸3は基端3a側にロータ軸3とロータサポータ4との接続を着脱可能にするクラッチ手段6がコイルスプリング5を介して設けられ、コイルスプリング5の付勢によりロータ2の軸線方向の移動が規制され、かつクラッチ手段6が噛み合ってロータ軸3とロータサポータ4とが伴回りし、外部トルクがコイルスプリング5の付勢を超えた際にクラッチ手段6が離脱してロータサポータ4が空転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ手段を備えたモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クラッチ手段を備えたモータ100は、図4に示すように、蓋板110により封止されたケーシング111内に、円筒状のステータ109と、このステータ109内に間隙を介して回転自在に収納されたロータ102と、このロータ102の回転を出力ギヤ115を介して外部機器に伝える出力軸113とを備えて概略構成されている。
【0003】
そして、ロータ102は、ロータマグネット104aを一体的に設けたロータサポータ104が、蓋板110とケーシング111に各々の端部が固定されたロータポスト114に回転自在に設けられ、さらに、ロータサポータ104のロータマグネット104aの外周面には、周方向に交互に異極となるように着磁が施されている。また、ステータ109は、2対のフィールドプレート119の外周に、合成樹脂からなるボビン121が一体的に形成され、このボビン121の外周にコイル122が巻回されており、各々のフィールドプレート119の内周面には、複数の極歯120が交互に等間隔に配列されている。
【0004】
また、金属製の出力軸113側には、合成樹脂製の出力ギヤ115が一体的に設けられているとともに、当該出力ギヤ115にクラッチ手段106が設けられている。このクラッチ手段106は、外部から出力軸113に強制的かつ急激な回転トルクが作用した際に、内部ギヤの破損を防ぐ働きをしている。なお、このクラッチ手段106に、板バネが用いられている。
【0005】
この従来のモータ100は、フィールドプレート119の極歯120が、コイル122にステップ信号が入力されることにより、極歯120がN極、S極となって回転磁界が発生する。そして、ロータマグネット104aは、N極とS極が交互に着磁されているため、上記ステップ信号により発生する回転磁界に同期し、ロータ102の回転を継続させることになる。
【0006】
このときに、上記ステップ信号はA相、B相に交互に入力されるため、ロータ102をロータポスト114の軸線方向に沿って、一端側と他端側とに動かす力が発生する。そのため、ロータ102がロータポスト114の軸線方向の一端側と他端側に移動することにより、当該ロータ102の回転時に叩き音が発生してしまう。
【0007】
そこで、ロータ102の叩き音の発生を防止するために、従来のモータ100においては、ロータ102の底部とケーシング111との間に、ロータ押さえとして板バネ108を設置して、ロータ102の動きを押さえる方法が提案されている。
【0008】
しかしながら、上記ロータ押さえに用いられる板バネ108は、品質のバラツキにより、板バネ発生荷重が少ない場合に音が発生し、板バネ発生荷重が大きい場合に仕切り板110との摩擦が増加して、トルクロスに繋がる。そのため、板バネ108の精度管理に問題があると、音響検査での音不具合の発生に繋がってしまうという問題がある。
【0009】
一方、上記従来のモータ100に用いられるクラッチ手段106は、板バネの摩擦力を利用する摩擦クラッチが用いられている。この摩擦クラッチは、0.1Nmのクラッチ力を得るために、バネ力が30N以上必要である。そのため、クラッチ手段106が、出力軸113側の出力ギヤ115に設けられた場合には、ロータ102の回転が減速歯車列112を介して出力軸113に伝達されるため、大きな回転トルクが発生し、クラッチを解除するために、強大なトルクが必要になる。このため、板バネのロットによるバネ力のバラツキや、板バネ取付時のかしめ作業のバラツキなどの要因により、クラッチ力にバラツキが生じる可能性を考慮して、クラッチ力を全数選別する必要があり、手間が掛かるという問題がある。
【0010】
また、上記かしめ作業時に用いられる、かしめパンチの保持を保守するために、一定数量にて交換が必要となる。さらに、クラッチ用板バネをかしめ工法を用いて取り付けた場合、30N以上のかしめ力が必要になるため、出力軸は、金属製のものを使用することになり、モータ自体の軽量化を図ることが難しいという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、安定したバネ力により、ロータの叩き音を防止するとともに、簡便なクラッチ手段を備えたモータを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、仕切り板により封止されたケーシング内に、筒状のステータと、このステータ内に間隙を介して回転自在に収納されたロータとを備えたモータにおいて、上記ロータは、外周にロータマグネットが一体的に設けられ、かつ一端部に円筒状の凹部が軸線方向を一致させて穿設された円筒状のロータサポータと、当該ロータサポータの上記凹部に基端側が回転自在に挿入されているとともに、他端側に上記ロータサポータの回転を減速歯車列を介して出力軸に伝達するピニオンが形成されたロータ軸とを有し、上記ケーシングの底部と上記仕切り板とに各々の端部が固定されたロータポストに挿通されて軸線回りに回転自在かつ軸線方向に移動自在に設けられてなり、上記ロータ軸は、上記基端側に当該ロータ軸と上記ロータサポータとの接続を着脱可能にするクラッチ手段がコイルスプリングを介して設けられているとともに、当該コイルスプリングの付勢により上記ロータの軸線方向の移動が規制され、かつ上記クラッチ手段が噛み合って当該ロータ軸と上記ロータサポータとが伴回りするとともに、上記クラッチ手段に加わる外部トルクが上記コイルスプリングの付勢を超えた際に、当該クラッチ手段が離脱して上記ロータサポータが空転することを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記クラッチ手段は、上記ロータ軸の上記基端側に、軸線方向に摺動自在かつ軸線回りの回転が規制されて設けられた円筒状のクラッチ駒と、このクラッチ駒の上記凹部内の底部との当接側に、周方向に間隔を置いて複数形成された台形状のクラッチ歯と、上記凹部内の底部の上記クラッチ駒との当接側に、上記クラッチ歯と対応する位置に間隔を置いて複数形成された台形状の傾斜歯とを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜2に記載の本発明によれば、ロータは、円筒状に形成されたロータサポータの一端部の軸線方向を一致させて穿設された円筒状の凹部内に、ロータ軸の基端側に当該ロータ軸と上記ロータサポータとの接続を着脱可能にするクラッチ手段を、荷重変動の少ないコイルスプリングを介して挿入し、当該コイルスプリングの付勢により、ロータポストの軸線方向の移動が規制されているため、モータのコイルにステップ信号が入力されることにより回転する上記ロータに、ロータポストの軸線方向に沿って、一端側および他端側に移動しようとする力が働いたとしても、上記コイルスプリングの安定したロータ押さえ力により、上記ロータの移動を押さえることができ、上記ロータの叩き音の発生を抑えることができる。
【0015】
また、上記コイルスプリングの付勢により、上記ロータ軸と上記ロータサポータとを接続して伴回りするとともに、外部トルクが上記コイルスプリングの付勢を超えた際に、上記ロータ軸と上記ロータサポータとの接続を解除するクラッチ手段が、上記ロータサポータ側に設けられているため、上記ロータ押さえ力ととともに、上記クラッチ手段の着脱を一つの上記コイルスプリングにより行うことができる。これにより、製造コストを抑えることができる。
【0016】
そして、上記ロータ軸は、高速回転しているために、減速歯車列によって減速された出力軸よりも回転トルクが小さい。したがって、クラッチの解除に強大なトルクを必要としないため、上記クラッチ手段の着脱を弾性力が小さく、かつ荷重変動の少ない上記コイルスプリングの付勢により簡便に行うことができる。この結果、上記コイルスプリングのスプリング力に多少のバラツキが生じたとしても、上記クラッチ手段の着脱に与える影響を少なくすることができる。
【0017】
さらに、上記クラッチ手段が、上記ロータサポータ側に設けられているとともに、上記コイルスプリングが上記ロータサポータの上記凹部に配設されているため、上記ロータの回転が減速歯車列を介して伝達される上記出力軸および上記ロータ軸を、合成樹脂により製作することができる。これにより、モータの軽量化を図ることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、上記クラッチ手段が、上記ロータ軸の上記基端側に軸線方向に摺動自在、かつ軸線回りの回転が規制されて設けられた円筒状のクラッチ駒と、このクラッチ駒の上記ロータサポータとの当接側に、周方向に間隔を置いて複数形成された台形状のクラッチ歯と、上記ロータサポータの上記クラッチ駒との当接側に、上記クラッチ歯と対応する位置に間隔を置いて複数形成された台形状の傾斜歯とを備えて構成されているため、上記コイルスプリングの付勢により、確実に上記クラッチ駒と上記傾斜歯とを噛み合わせることができるとともに、上記クラッチ手段に過大な外部トルクが加わり、この外部トルクが上記コイルスプリングの付勢を超えた際に、上記クラッチ歯が上記傾斜歯の傾斜面に沿って滑ることによって、上記クラッチ駒が上記凹部の底部と離間する方向に移動して、上記ロータ軸と上記ロータサポータとの接続を解除することができる。この結果、上記クラッチ手段の着脱を簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のモータの一実施形態を示す右側面断面図である。
【図2】本発明のモータの一実施形態に用いられるロータの部分断面図を示し、(a)は平常時、(b)は過大トルクがクラッチ手段に加わった時の状態を示す。
【図3】クラッチ駒側のクラッチ歯とロータサポータ側の傾斜歯の歯角度を算出するのに用いる力のつり合い図である。
【図4】従来のクラッチ手段が設けられたモータの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、本発明のモータ1は、蓋板(仕切り板)10により封止されたケーシング11内に、筒状のステータ9と、このステータ9内に間隙を介して回転自在に収納されたロータ2と、このロータ2の回転を減速歯車列12および出力ギヤ15を介して外部機器に伝達する出力軸13とを備えて概略構成されている。
【0021】
ここで、ロータ2は、外周にロータマグネット4bが一体的に設けられ、かつ一端部に円筒状の凹部4aが軸線方向を一致させて穿設された円筒状のロータサポータ4と、このロータサポータ4の凹部4aの同軸上に基端3a側が回転自在に挿入されているとともに、他端3b側にロータサポータ4の回転を減速歯車列12を介して出力軸13に伝達するピニオン3cが形成されたロータ軸3とを有して、ケーシング11と一体的に設けられたステータカップ(底部)11aと蓋板10とに、各々の端部が固定されたロータポスト14に挿通されて軸線回りに回転自在、かつ軸線方向に移動自在に設けられている。
【0022】
また、ロータ軸3の基端3a側には、当該ロータ軸3と、ロータサポータ4との接続を着脱可能にするクラッチ手段6が、コイルスプリング5を介して設けられている。このロータ軸3の基端3a側は、断面形状が六角形状に形成されている。一方、ロータ軸3の他端3b側に形成されたピニオン3cは、第一ピニオン付ギヤ16と第二ピニオン付ギヤ17および第三ピニオン付ギヤ18から構成された減速歯車列12を介して、合成樹脂からなる出力軸13と一体成形された出力ギヤ15に接続されている。
【0023】
そして、クラッチ手段6は、ロータ軸3の基端3a側に、軸線方向に摺動自在かつ軸線回りの回転が規制されたクラッチ駒7が設けられている。このクラッチ駒7は、円筒状に形成されているとともに、内壁が平面視において六角形状に形成されて、ロータ軸3の基端3aの軸線方向に摺動自在かつ軸線回りの回転が規制されて係合されている。
【0024】
さらに、クラッチ駒7は、ロータサポータ4との当接側に、台形状のクラッチ歯7aが周方向に間隔を置いて複数形成されている。また、ロータサポータ4のクラッチ駒7との上記当接側に、クラッチ駒7のクラッチ歯7aと対応する位置に、台形状の傾斜歯8が間隔を置いて複数形成されている。そして、クラッチ歯7aと傾斜歯8とが、コイルスプリング5の付勢により歯合され、ロータ軸3とロータサポータ4とが接続されている。
【0025】
また、ステータ9は、2対のフィールドプレート19の外周に、合成樹脂からなるボビン21が一体的に形成され、このボビン21の外周にコイル22が巻回されている。また、各々のフィールドプレート19の内周面には、複数の極歯20が交互に等間隔に配列されている。なお、符号23は、コイル22の銅線の端部が接続されている端子である。
【0026】
以上の構成によるモータ1が駆動した際のロータ2のロータ押さえ、および外部トルクが加わった際のクラッチ手段6の作用について説明する。
まず、モータ1に電気を流すことにより、コイル22にステップ信号が入力される。この入力により、フィールドプレート19の極歯20が、N極、S極となって回転磁界が発生する。そして、ロータマグネット4bが、N極とS極とに交互に着磁されているため、上記ステップ信号により発生する回転磁界に同期し、ロータ2の回転が継続される。
【0027】
このときに、上記ステップ信号は、A相とB相とに交互に入力されるため、ロータ2をロータポスト14の軸線方向に沿って、一端側と他端側とに移動する力が発生する。しかし、ロータ2は、図2(a)に示すように、ロータサポータ4の凹部4aに内設されたコイルスプリング5の付勢により、ロータポスト14の軸線方向の移動が規制されているため、ロータ2がロータポスト14の軸線上を移動することにより起こる叩き音の発生を抑えることができる。
なお、従来用いられていた板バネは、ストローク0.3mmで0.6N〜0.7Nの荷重が発生しており、コイルスプリング5は、ストローク1.4mmで、板バネと同じ荷重が発生する。このため、寸法公差内での荷重変動は、コイルスプリング5が、1/4.3となり、安定したロータ押さえ力を得ることができる。
【0028】
また、ロータ軸3は、基端3a側に当該ロータ軸3と、ロータサポータ4との接続を着脱可能にするクラッチ手段6が、コイルスプリング5を介して設けられているため、クラッチ駒7に形成されたクラッチ歯7aと、ロータサポータ4の凹部4aの底部に形成された傾斜歯8とが噛み合って、ロータ軸3とロータサポータ4とが伴回りする。この際、ロータ軸3には、減速歯車列12によって減速された出力軸13よりも、回転トルクが小さいため、クラッチ手段6の着脱を弾性力が小さく、かつ荷重変動の少ないコイルスプリン5を用いることにより簡便に行うことが可能となる。
【0029】
そして、ロータサポータ4と伴回りするロータ軸3の高速回転が、他端3b側に形成されたピニオン3cから、減速歯車列12である第一ピニオン付ギヤ16、第二ピニオン付ギヤ17、第三ピニオン付ギヤ18を介して、出力ギヤ15に伝達されて、この出力ギヤ15と一体成形されている出力軸13が減速回転する。
【0030】
このときに、出力軸13に外部から、強制的かつ急激な外部トルクが作用した場合、この外部トルクがクラッチ手段6に加わって、コイルスプリング5の付勢を超えると、図2(b)に示すように、クラッチ駒7に形成された台形状のクラッチ歯7aが、ロータサポータ4の凹部4aの底部に形成された傾斜歯8の傾斜面を滑り、クラッチ駒7が凹部4aの底部と離間する方向に移動して、ロータ軸3とロータサポータ4との接続が解除され、ロータサポータ4が空転して、出力軸への回転が停止する。
【0031】
なお、台形状に形成されたクラッチ歯7aの傾斜角度は、下記の式1および、図3に記載された力の釣り合い図から求められる。
F1=F/n ・・・・式1
F (外部負荷)
n (クラッチまでの減速比)
F1 (クラッチ歯にかかる負荷)
【0032】
また、図3の力の釣り合い図に示す、クラッチを外す力Pは、以下の式2および式3により求められる。
F1cosθ−μF1sinθ=Psinθ+μPcosθ ・・・・式2
P=F1(cosθ−μsinθ)/(sinθ+μcosθ)・・・・式3
μ (摩擦係数)
例えば、外部負荷(F)を1.25kgfcm、クラッチまでの減速比(n)を64としたときに、クラッチ歯に掛かる負荷(F1)は、上記式1より、
1.25/64=0.019kgfcm/0.5=0.038kgf
【0033】
そして、図3の釣り合いから、クラッチ歯7aの傾斜角度(θ)を25°とすると、クラッチを外す力(P)は、上記式3から、
0.038×(cos25−0.1sin25)/(sin25+0.1cos25)
従って、コイルスプリング5のスプリング力は、64gfとなり、この64gfを超える力が、クラッチ歯7aに加わった際に、ロータ軸3とロータサポータ4との接続が解除されることになる。
【0034】
上述の実施形態によるモータ1によれば、ロータ2は、円筒状に形成されたロータサポータ4の一端部の、軸方向を一致させて穿設された円筒状の凹部4a内に、ロータ軸3の基端3a側にロータ軸3とロータサポータ4との接続を着脱可能にするクラッチ手段6を、荷重変動の少ないコイルスプリング5を介して挿入し、当該コイルスプリング5の付勢により、ロータ2の軸線方向の移動が規制されているため、モータ1のコイル22にステップ信号が入力されることにより回転するロータ2に、ロータポスト14の軸線方向に沿って、一端側および他端側に移動しようとする力が働いたとしても、コイルスプリング5の安定したロータ押さえ力により、ロータ2の移動を押さえることができ、ロータ2の叩き音の発生を抑えることができる。
【0035】
また、コイルスプリング5の付勢により、ロータ軸3とロータサポータ4とを接続して伴回りするとともに、外部トルクがコイルスプリング5の付勢を超えた際に、ロータ軸3とロータサポータ4との接続を解除するクラッチ手段6が、ロータサポータ4側に設けられているため、上記ロータ押さえ力とともに、クラッチ手段6の着脱を一つのコイルスプリング5により行うことができる。これにより、製造コストを抑えることができる。
【0036】
そして、ロータ軸3は、高速回転しているために、減速歯車列12によって減速された出力軸13よりも回転トルクが小さい。したがって、クラッチの解除に強大なトルクを必要としないため、クラッチ手段6の着脱を弾性力が小さく、かつ荷重変動の少ないコイルスプリング5の付勢により簡便に行うことができる。この結果、スプリング力に多少のバラツキが生じたとしても、クラッチ手段6の着脱に与える影響を少なくすることができる。
【0037】
さらに、クラッチ手段6が、ロータサポータ4側に設けられているとともに、コイルスプリング5がロータサポータ4の凹部4aに配設されているため、ロータ2の回転が減速歯車列12を介して伝達される出力軸13およびロータ軸3を、合成樹脂により製作することができる。これにより、モータ1の軽量化を図ることができる。
【0038】
また、クラッチ手段6が、ロータ軸3の基端3a側に軸線方向に摺動自在、かつ軸線回りの回転が規制されて設けられた円筒状のクラッチ駒7と、このクラッチ駒7のロータサポータ4との当接側に、周方向に間隔を置いて複数形成された台形状のクラッチ歯7aと、ロータサポータ4のクラッチ駒7との当接側に、クラッチ歯7aと対応する位置に間隔を置いて複数形成された台形状の傾斜歯8とを備えて構成されているため、コイルスプリング5の付勢により、確実にクラッチ駒7と傾斜歯8とを噛み合わせることができるとともに、クラッチ手段6に過大な外部トルクが加わり、この外部トルクがコイルスプリング5の付勢を超えた際に、クラッチ歯7aが傾斜歯8の傾斜面に沿って滑ることによって、クラッチ駒7が凹部4aの底部と離間する方向に移動して、ロータ軸3とロータサポータ4との接続を解除することができる。この結果、クラッチ手段6の着脱を簡便に行うことができる。
【0039】
なお、上記実施の形態において、台形状のクラッチ歯7aを用いる場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、三角形状でも対応可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
減速歯車列を備えたモータに用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 モータ
2 ロータ
3 ロータ軸
3a 基端
3b 他端
3c ピニオン
4 ロータサポータ
4a 凹部
4b ロータマグネット
5 コイルスプリング
6 クラッチ手段
7 クラッチ駒
7a クラッチ歯
8 傾斜歯
9 ステータ
10 蓋板(仕切り板)
11 ケーシング
11a ステータカップ(底部)
12 減速歯車列
13 出力軸
14 ロータポスト
15 出力ギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切り板により封止されたケーシング内に、筒状のステータと、このステータ内に間隙を介して回転自在に収納されたロータとを備えたモータにおいて、
上記ロータは、外周にロータマグネットが一体的に設けられ、かつ一端部に円筒状の凹部が軸線方向を一致させて穿設された円筒状のロータサポータと、当該ロータサポータの上記凹部に基端側が回転自在に挿入されているとともに、他端側に上記ロータサポータの回転を減速歯車列を介して出力軸に伝達するピニオンが形成されたロータ軸とを有し、上記ケーシングの底部と上記仕切り板とに各々の端部が固定されたロータポストに挿通されて軸線回りに回転自在かつ軸線方向に移動自在に設けられてなり、
上記ロータ軸は、上記基端側に当該ロータ軸と上記ロータサポータとの接続を着脱可能にするクラッチ手段がコイルスプリングを介して設けられているとともに、当該コイルスプリングの付勢により上記ロータの軸線方向の移動が規制され、かつ上記クラッチ手段が噛み合って当該ロータ軸と上記ロータサポータとが伴回りするとともに、上記クラッチ手段に加わる外部トルクが上記コイルスプリングの付勢を超えた際に、当該クラッチ手段が離脱して上記ロータサポータが空転することを特徴とするモータ。
【請求項2】
上記クラッチ手段は、上記ロータ軸の上記基端側に、軸線方向に摺動自在かつ軸線回りの回転が規制されて設けられた円筒状のクラッチ駒と、このクラッチ駒の上記凹部内の底部との当接側に、周方向に間隔を置いて複数形成された台形状のクラッチ歯と、上記凹部内の底部の上記クラッチ駒との当接側に、上記クラッチ歯と対応する位置に間隔を置いて複数形成された台形状の傾斜歯とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−99073(P2013−99073A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238768(P2011−238768)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(594111292)三菱マテリアルシーエムアイ株式会社 (54)