説明

モールド

【課題】 水タンクの壁面の内側とモールドチューブ(1)の外側(2)の間に水の隙間が形成されている、水タンク内に配置されたモールドチューブ(1)を用いて、金属を連続鋳造するためのモールドである。
【解決手段】 水の隙間には、少なくとも一つの水誘導板(3)が配置されており、モールドチューブ(1)は、少なくとも一つの横方向に自由にシフト可能な形で水タンクと対向して支持されるとともに、モールドチューブ(1)の動作位置が、水の隙間内におけるフロー状態によって調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1の上位概念の特徴を有する、金属を連続鋳造するためのモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
輪郭を持った鋼鉄及びその他の融点の高い金属を鋳造するための銅又は銅合金から成るチューブ形状のモールドは、従来技術において度々記述されている。その場合、モールドチューブは、モールドチューブを取り囲む水タンクの壁面の内側とモールドチューブの外側の間の水の隙間を貫流する冷水によって冷却される。通常モールドチューブは、調整用ねじによって、モールドチューブの周囲側に所望の幅の水の隙間が生じるように、水タンク内において位置調整されている(特許文献1)。モールドチューブは、極端に大きな熱負荷に曝されるので、水タンク内におけるモールドチューブの精確な位置調整を非常に綿密に行って、水の隙間の幅が異なるために、流速が相違したり、そのため熱流束が大きく異なることのないようにしなければならない。そのような相違の結果として、ストランドの外被の成長が相違するとともに、収縮が大きく異なることとなる。また、そのことは、ストランドの外被における材料の緊張とひび割れに繋がる可能性が有り、それによって、ストランドが破れるリスクが高まることとなる。
【特許文献1】特開2004−74284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述したことを出発点として、この発明の課題は、水タンク内での負担のかかるモールドの位置調整を簡単化した、金属を連続鋳造するための液体冷却式モールドを提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題の解決策は、請求項1の特徴を持つモールドによって規定される。この発明の技術思想の有利な実施形態は、従属請求項の対象として規定されている。
【0005】
この発明によるモールドでは、水の隙間内に少なくとも一つの水誘導板を配置するものと規定する。この水誘導板は、水の隙間の横断面を変化させるものであり、横断面の変化は、流速の変化を生じさせる。モールドチューブは、少なくとも一つの方向に自由にシフト可能な形で水タンクに対向して支持されているので、モールドチューブの動作位置は、水の隙間内におけるフロー状態によって自然に調整することが可能である。そうすることによって、モールドチューブは、水タンク内において自動的に中心位置を占める形で位置調整されることとなる。この自動的に中心位置を占めることは、流体力学的な力が水の隙間内において互いに平衡することによって達成される。例えば、モールドチューブの片側における水の隙間の幅が大きくなる場合、その領域では、流速が低下する。その領域では、モールドチューブの外壁に作用する流体力学的な力も同様に低下する。同じく、モールドチューブの反対側における水の隙間の幅の低下は、流速を増大させることとなり、そのことによって、その領域では、流体力学的な力が大きくなり、その力は、モールドチューブが横方向に自由にシフト可能であるために、力の平衡が再び得られるまで、モールドチューブを僅かにシフトさせるように作用する。従って、水誘導板は、それぞれモールドチューブ又は水の隙間の対向する領域に配置される。
【0006】
特に、モールドチューブの外面の少なくとも一つの部分領域に冷却用溝を配備して、この冷却用溝の領域に水誘導板を配置するのが、この発明の目的に適ったことであると考える。水の隙間の横断面が一定の場合、冷却用溝の領域において、流れの横断面が拡大され、そのことは、流速を低下させることとなる。冷却水をより速い速度で冷却用溝を通して誘導するために、水誘導板は、冷却用溝の領域において、流れの横断面を少なくとも部分的に縮小させるものと規定する。そのために、水誘導板は、端部側に湾曲部分を有し、その湾曲部分は、冷却水を水の隙間から目的通り冷却用溝に誘導するように構成される。この湾曲部分は、冷媒の隙間において、出来る限り乱流が起こらないように、流れに対して有利になるように構成される。この発明の目的に適うこととして、この湾曲部分は、アーチ形状に構成される。
【0007】
請求項6の実施構成にもとづき、流速は、冷却用溝の流入領域と流出領域において、水誘導板によって増大される。流速の局所的な増大は、その領域において、流体力学的な力を増大させることともなる。流速の増大された領域が、モールドチューブの同じ高さで対蹠点となる位置に配置するのが有利である。従って、有利には、すべての水誘導板は、同じ形に構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下において、図1と2の模式図に図示した実施例にもとづき、この発明を詳しく説明する。
【0009】
図1は、詳しく図示されていない水タンク内に配置された、横断面が長方形のモールドチューブ1を図示している。モールドチューブ1は、外側から液体によって冷却されており、水タンクの壁面の内側とモールドチューブ1の外側2との間には、水の隙間が形成されている。この水の隙間内には、図示された水誘導板3が配置されている。
【0010】
水誘導板3は、図2の模式図により、その立体的な構造が良く分かる。この実施例では、四つの水誘導板3が配備されており、常に二つの水誘導板3が同じ高さで向き合っている。水誘導板3は、同じ形に構成され、モールドチューブ1の側壁5のほぼ幅全体に渡って延びており、隅領域6は開けられている。
【0011】
図1では、モールドチューブの外側2の部分領域には、流れの方向に延びる冷却用溝7が配備されているのが分かる。冷却用溝7は、モールドチューブ1の縦全体に渡って延びているのではなく、専ら湯面の目標位置の領域に延びており、それは、そこでは最も大きな熱流束密度が生じており、それに対応してモールドチューブ1を集中的に冷却する必要があるからである。冷却用溝7は、冷却面積を拡大して、冷却水への熱伝導を容易にするものである。冷却用溝7の領域には、水誘導板3が配置されており、水誘導板3は、冷却用溝7よりも少し短くなっている。即ち、冷却用溝7は、その流入領域と流出領域の両方において、水誘導板3の下で食み出している。更に、図1では、案内用切欠8がモールドチューブ1の上方端部4に有るのが分かり、その案内用切欠によって、モールドチューブ1が、高さ方向に対して、詳しく図示されていない水タンク上に保持されている。案内用切欠8は、冷却水が流れる方向と交差する方向への移動を可能とするように構成されている。
【0012】
水誘導板3は、長方形に構成されており、平坦な中央部分9を有し、その中央部分には、それぞれ端部側に、即ち流れの方向に配備された湾曲部分10,11が繋がっている。湾曲部分10,11は、モールドチューブ1の方向に膨らんでおり、ここではアーチ形状に構成されている。この実施例では、湾曲部分10,11は、同じ形である、即ち、樋の形状に形成されている。有利には、樋形状の部分の精確な輪郭又は半径は、冷却用溝7の深さ方向の推移と一致する。冷却用溝7は、流入領域と流出領域において、冷却用溝7への流入時に冷却水の流れに乱流が生じるのを防止するような半径を有する。このような半径は、アーチ形状の湾曲部分においても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】横断面が長方形のモールドチューブ1の実施例の模式図
【図2】水誘導板3の立体的な構造を示す模式図
【符号の説明】
【0014】
1 モールドチューブ
2 モールドチューブ1の外側
3 水誘導板
4 モールドチューブ1の上方端部
5 モールドチューブ1の側壁
6 モールドチューブ1の隅領域
7 冷却用溝
8 案内用切欠
9 水誘導板3の中央部分
10 水誘導板3の湾曲部分
11 水誘導板3の湾曲部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水タンクの壁面の内側とモールドチューブ(1)の外側(2)の間に水の隙間が形成されている、水タンク内に配置されたモールドチューブ(1)を用いて、金属を連続鋳造するためのモールドにおいて、
水の隙間には、少なくとも一つの水誘導板(3)が配置されており、モールドチューブ(1)は、少なくとも一つの横方向に自由にシフトすることが可能な形で水タンクと対向して支持されるとともに、モールドチューブ(1)の動作位置が、水の隙間内におけるフロー状態によって調整されることを特徴とするモールド。
【請求項2】
モールドチューブ(1)が、水タンク内において、自動的に中心位置を占める形に位置調整されることを特徴とする請求項1に記載のモールド。
【請求項3】
モールドチューブ(1)の外側(2)の少なくとも一つの部分領域に、冷却用溝(7)が配備されており、その冷却用溝(7)の領域に、水誘導板(3)が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のモールド。
【請求項4】
水誘導板(3)は、その端部側に湾曲部分(10,11)を備えており、その湾曲部分が、冷却水を水の隙間から目的通り冷却用溝(7)に誘導すように構成されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載のモールド。
【請求項5】
湾曲部分(10,11)が、アーチ形状に構成されていることを特徴とする請求項4に記載のモールド。
【請求項6】
冷却用溝(7)の流入領域と流出領域における流速が、湾曲部分(10,11)によって増大されることを特徴とする請求項3から5までのいずれか一つに記載のモールド。
【請求項7】
水誘導板(3)が、モールドチューブ(1)の対向する領域に配置されていることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載のモールド。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−160402(P2007−160402A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327920(P2006−327920)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(391011951)カーエム・オイローパ・メタル・アクチエンゲゼルシヤフト (9)
【Fターム(参考)】