説明

ユニットバスの設置構造

【課題】 ユニットバスの防水パンの下面に固定される脚フレームを簡易化するとともに、ユニットバスの設置作業性を向上すること。
【解決手段】 ユニットバス20の設置構造において、ユニットバス20が防水パン21の下面に固定した直線状の脚フレーム30を建物ユニット10の床枠11の上面からバス設置面Aに送り込まれて設置されるものであり、ユニットバス20をバス設置面Aに送り込む方向に沿う脚フレーム30の前端部30Aを防水パン21の前縁部より前方側に延長させてなるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はユニットバスの設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ユニット建物を構成する建物ユニットの床枠内に区画されて該床枠の上面より低段差をなすバス設置面にユニットバスを設置するユニットバスの設置構造として、特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載のユニットバスの設置構造は、ユニットバスが防水パン(洗い場パン及び浴槽パン)の下面に固定した折れ曲がり状の脚フレームを建物ユニットの床枠の上面からバス設置面に送り込まれて設置される。脚フレームは洗い場パンを支持する上段部と浴槽パンを支持する下段部を折れ曲がり部で接続し、洗い場パンが浴槽パンに対して高段差をなす段差構造を備える。脚フレームの上段部は建物ユニットの床フレームにアジャストボルトを介して支持され、脚フレームの下段部は建物ユニットの床フレームに直接支持される。
【特許文献1】特開2004-116159
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載のユニットバスの設置構造には以下の問題点がある。
(1)防水パンの下面に固定される脚フレームが複雑な折れ曲がり状をなしていて製作困難である。
【0004】
(2)ユニットバスをバス設置面に送り込む方向に沿う脚フレームの前端部(下段部)を防水パンの前縁部より後方側に短縮させている。このため、脚フレームの前端部を建物ユニットの床枠の上面からバス設置面に投入するとき、ユニットバスの前壁面が前方に大きく傾き、建物ユニットの前方の壁面に干渉し易くなり、ユニットバスの設置作業性を損なう。
【0005】
(3)ユニットバスをバス設置面に送り込む方向に沿う脚フレームの後端部(上段部)に、建物ユニットの床フレームに支持させるアジャストボルトを設けている。このため、脚フレームの後端部を建物ユニットの床枠の上面からバス設置面に落とし込むとき、アジャストボルトが脚フレームのスムースな投入の障害になり、ユニットバスの設置作業性を損なう。
【0006】
本発明の課題は、ユニットバスの防水パンの下面に固定される脚フレームを簡易化するとともに、ユニットバスの設置作業性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ユニット建物を構成する建物ユニットの床枠内に区画されて該床枠の上面より低段差をなすバス設置面にユニットバスを設置するユニットバスの設置構造において、ユニットバスが防水パンの下面に固定した直線状の脚フレームを建物ユニットの床枠の上面からバス設置面に送り込まれて設置されるものであり、ユニットバスをバス設置面に送り込む方向に沿う脚フレームの前端部を防水パンの前縁部より前方側に延長させてなるようにしたものである。
【0008】
請求項2の発明は、ユニット建物を構成する建物ユニットの床枠内に区画されて該床枠の上面より低段差をなすバス設置面にユニットバスを設置するユニットバスの設置構造において、ユニットバスが防水パンの下面に固定した直線状の脚フレームを建物ユニットの床枠の上面からバス設置面に送り込まれて設置されるものであり、ユニットバスをバス設置面に送り込む方向に沿う脚フレームの後端部を防水パンの後縁部より前方側に短縮させてなるようにしたものである。
【0009】
請求項3の発明は、ユニット建物を構成する建物ユニットの床枠内に区画されて該床枠の上面より低段差をなすバス設置面にユニットバスを設置するユニットバスの設置構造において、ユニットバスが防水パンの下面に固定した直線状の脚フレームを建物ユニットの床枠の上面からバス設置面に送り込まれて設置されるものであり、ユニットバスをバス設置面に送り込む方向に沿う各フレームの前端部を防水パンの前縁部より前方側に延長させるとともに、ユニットバスをバス設置面に送り込む方向に沿う各フレームの後端部を防水パンの後縁部より前方側に短縮させてなるようにしたものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1又は3の発明において更に、前記ユニットバスをバス設置面に送り込む方向に沿う脚フレームの前端部の下面角部を面取り部にしてなるようにしたものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの発明において更に、前記防水パンが洗い場パンと浴槽パンに分割され、これらの洗い場パンと浴槽パンが脚フレームに固定されてなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
(請求項1〜3)
(a)防水パンの下面に固定される脚フレームが単純な直線状をなすものであり、製作容易である。防水パンにおける、洗い場側と浴槽側の段差は、防水パンの洗い場側の下面と脚フレームとの間にパイプ状スペーサ等を挟むことにて吸収される。
【0013】
(請求項1、3)
(b)ユニットバスをバス設置面に送り込む方向に沿う脚フレームの前端部を防水パンの前縁部より前方側に延長させた。従って、脚フレームの前端部を建物ユニットの床枠の上面からバス設置面に投入するとき、ユニットバスの前壁面の前方への傾きを緩和する。ユニットバスの前壁面が建物ユニットの前方の壁面に干渉し難くなり、ユニットバスの設置作業性が向上する。
【0014】
(請求項2、3)
(c)ユニットバスをバス設置面に送り込む方向に沿う脚フレームの後端部を防水パンの後縁部より前方側に短縮させた。従って、脚フレームの後端部を建物ユニットの床枠の上面からバス設置面に落とし込むとき、脚フレームの後端部はスムースに、しかも早く落ち、ユニットバスの設置作業性が向上する。
【0015】
(請求項4)
(d)ユニットバスをバス設置面に送り込む方向に沿う脚フレームの前端部の下面角部を面取り部にした。従って脚フレームの前端部をスムースにバス設置面に導入でき、ユニットバスの設置作業性が向上する。
【0016】
(請求項5)
(e)防水パンが洗い場パンと浴槽パンに分割され、これらの洗い場パンと浴槽パンが脚フレームに固定されることにより、洗い場パンと浴槽パンを脚フレームの利用により連結、補強して簡易に一体結合できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は建物ユニットへのユニットバスの設置構造を示す側断面図、図2はユニットバスを示す側面図、図3は防水パンを示す斜視図、図4は防水パンへの脚フレームの固定構造を示す斜視図、図5は脚フレームの洗い場パンとの固定部を示す斜視図、図6は脚フレームの浴槽パンとの固定部を示す斜視図、図7は建物ユニットのバス設置面への脚フレームの固定構造を示す断面図、図8は建物ユニットのバス設置面へのユニットバスの送り込み状態を示す側面図である。
【実施例】
【0018】
図1に示したユニットバスの設置構造は、ユニット建物を構成する建物ユニット10の床枠11内に区画されて該床枠11の上面より低段差をなすバス設置面Aにユニットバス20を設置するものである。
【0019】
建物ユニット10は、床枠11と不図示の天井枠の相対応するコーナー部間に不図示の柱を立設した骨組構造体である。建物ユニット10は、4本の床大梁11Aを四角枠状に接合し、相対する床大梁11Aに床小梁11Bを架け渡して床枠11を形成し、複数本の床小梁11Bの上に支持される床根太12の上に床面13を設ける。また、建物ユニット10は、相隣る柱の間に壁面14を設ける。
【0020】
建物ユニット10は、床枠11の相対する床大梁11Aと床小梁11Bにより上述のバス設置面Aを区画し、床大梁11Aの下部と床小梁11Bの下部の間に、2本の平行をなすC字状溝形鋼15を架け渡す。各溝形鋼15の高さは床大梁11A、床小梁11Bの高さより十分低く、バス設置面A内の溝形鋼15を除く範囲には溝形鋼15の上面に載る合板16が敷き設けられる。各溝形鋼15の溝内面(溝底面及び溝両側面)には合板17を貼り設け、この溝を後述するようにユニットバス20の防水パン21に固定した脚フレーム30がバス設置面A内で落とし込まれる落とし込み溝18とする(図7)。
【0021】
ユニットバス20は、図2に示す如く、防水パン21(洗い場パン22と浴槽パン23の結合体)の外周に壁パネル24を立て、壁パネル24の上部に天井パネル25を設けて構成される。本実施例の防水パン21は、図3、図4に示す如く、洗い場パン22と浴槽パン23に分割され、洗い場パン22の嵌合部と浴槽パン23の嵌合部を互いに嵌合し、洗い場パン22と浴槽パン23が2本の平行配置される、直線状の脚フレーム30、30に固定される。
【0022】
尚、洗い場パン22と脚フレーム30の固定構造は、図4、図5に示す如く、洗い場パン22を裏返し、ボルト31及びスプリングワッシャ32を直線状角パイプからなる脚フレーム30の下面に設けた大径孔に通し、ボルト31を該脚フレーム30の上面(洗い場パン22と接する面)に設けたボルト挿通孔に通し、ボルト31の挿通端に挿着したワッシャ33A、パイプ状スペーサ34、ワッシャ33Bを介して、ボルト31を洗い場パン22の下面に螺着する。また、浴槽パン23と脚フレーム30の固定構造は、図4、図6に示す如く、浴槽パン23を裏返し、ボルト35及びスプリングワッシャ36を直線状角パイプからなる脚フレーム30の下面に設けた大径孔に通し、ボルト35を該脚フレーム30の上面(浴槽パン23に接する面)に設けたボルト相通孔に通し、ボルト35を浴槽パン23の下面に螺着する。脚フレーム30の側面にはL形固定板37の垂直板がネジ止めされ、脚フレーム30にネジ止めされた固定板37の水平板は該脚フレーム30が溝形鋼15の落とし込み溝18に落とし込まれたバス設置面Aの合板16に固定される(図7)。
【0023】
ユニットバス20は、図3に示す如く、洗い場パン22にヘアキャッチャー22A等が設けられる排水口22Bを備える。ユニットバス20は、浴槽パン23の上に浴槽26を載置し、浴槽パン23にはフロート目皿23A等が設けられる排水口23Bを備える。ユニットバス20は、防水パン21の下側に、洗い場パン22の排水口22Bと浴槽パン23の排水口23Bが接続される排水トラップ27を備える。排水トラップ27は建物ユニット10のバス設置面A上で、バス設置面Aに設置される脚フレーム30の側傍に配置される。脚フレーム30は排水トラップ27を予め取付けできる高さを確保するものとされる。
【0024】
しかるに、ユニットバス20は、図8に示す如く、防水パン21の下面に固定された直線状の脚フレーム30を、建物ユニット10の床枠11(床大梁11A、床小梁11B)の上面(床面13)から、該床枠11の上面より低段差をなすバス設置面A内の落とし込み溝18に送り込まれて設置される。これにより、ユニットバス20の全体を建物ユニット10の床面13に対して低く設置し(脚フレーム30をバス設置面A内の落とし込み溝18に入れた分、ユニットバス20を一層低く設置できる)、建物ユニット10の床面13と、防水パン21を構成する洗い場パン22の洗い場面の段差を低減できる。
【0025】
尚、建物ユニット10において、床枠11の上面(床面13)とバス設置面Aの合板16との境界部には、脚フレーム30が滑落するスロープを形成するための投入用治具40が配置される。
【0026】
このとき、ユニットバス20をバス設置面Aに送り込む方向に沿う脚フレーム30の前端部30Aは、図2、図8に示す如く、防水パン21の前縁部である浴槽パン23の前縁部より前方側に延長されている。また、脚フレーム30の前端部30Aの下面壁部は面取り部38とされている。
【0027】
また、ユニットバス20をバス設置面Aに送り込む方向に沿う脚フレーム30の後端部30Bは、図2、図8に示す如く、防水パン21の後縁部である洗い場パン22の後縁部より前方側に短縮されている。
【0028】
従って、建物ユニット10のバス設置面Aへのユニットバス20の送り込み設置作業は以下の如くになされる(図8)。
(1)建物ユニット10のバス設置面A内で、落とし込み溝18に合わせて投入用治具40を配置する。
【0029】
(2)建物ユニット10のバス設置面Aの落とし込み溝18に、ユニットバス20の防水パン21の下面に固定した脚フレーム30を位置合わせする。脚フレーム30をその長手方向に沿って治具40の上に滑らせながら落とし込み溝18に入れる。
【0030】
(3)防水パン21の浴槽パン23に設けてある点検口Kより、脚フレーム30に設けてあるL形固定板37の水平板をバス設置面Aの合板16にネジ止めする。
【0031】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)防水パン21の下面に固定される脚フレーム30が単純な直線状をなすものであり、製作容易である。防水パン21における、洗い場側と浴槽側の段差は、防水パン21の洗い場側の下面と脚フレーム30との間にパイプ状スペーサ34等を挟むことにて吸収される。
【0032】
(b)ユニットバス20をバス設置面Aに送り込む方向に沿う脚フレーム30の前端部30Aを防水パン21の前縁部より前方側に延長させた。従って、脚フレーム30の前端部30Aを建物ユニット10の床枠11の上面からバス設置面Aに投入するとき、ユニットバス20の前壁面(壁パネル24)の前方への傾きを緩和する。ユニットバス20の前壁面(壁パネル24)が建物ユニット10の前方の壁面14に干渉し難くなり、ユニットバス20の設置作業性が向上する。
【0033】
(c)ユニットバス20をバス設置面Aに送り込む方向に沿う脚フレーム30の後端部30Bを防水パン21の後縁部より前方側に短縮させた。従って、脚フレーム30の後端部30Bを建物ユニット10の床枠11の上面からバス設置面Aに落とし込むとき、脚フレーム30の後端部30Bはスムースに、しかも早く落ち、ユニットバス20の設置作業性が向上する。
【0034】
(d)ユニットバス20をバス設置面Aに送り込む方向に沿う脚フレーム30の前端部30Aの下面角部を面取り部38にした。従って脚フレーム30の前端部30Aをスムースにバス設置面Aに導入でき、ユニットバス20の設置作業性が向上する。
【0035】
(e)防水パン21が洗い場パン22と浴槽パン23に分割され、これらの洗い場パン22と浴槽パン23が脚フレーム30に固定されることにより、洗い場パン22と浴槽パン23を脚フレーム30の利用により連結、補強して簡易に一体結合できる。
【0036】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば本発明において、洗い場パンと浴槽パンは分割されずに一体成形されるものでも良い。また、浴槽パンと浴槽を一体成形するものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は建物ユニットへのユニットバスの設置構造を示す側断面図である。
【図2】図2はユニットバスを示す側面図である。
【図3】図3は防水パンを示す斜視図である。
【図4】図4は防水パンへの脚フレームの固定構造を示す斜視図である。
【図5】図5は脚フレームの洗い場パンとの固定部を示す斜視図である。
【図6】図6は脚フレームの浴槽パンとの固定部を示す斜視図である。
【図7】図7は建物ユニットのバス設置面への脚フレームの固定構造を示す断面図である。
【図8】図8は建物ユニットのバス設置面へのユニットバスの送り込み状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 建物ユニット
11 床枠
18 落とし込み溝
20 ユニットバス
21 防水パン
22 洗い場パン
23 浴槽パン
30 脚フレーム
30A 前端部
30B 後端部
A バス設置面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニット建物を構成する建物ユニットの床枠内に区画されて該床枠の上面より低段差をなすバス設置面にユニットバスを設置するユニットバスの設置構造において、
ユニットバスが防水パンの下面に固定した直線状の脚フレームを建物ユニットの床枠の上面からバス設置面に送り込まれて設置されるものであり、
ユニットバスをバス設置面に送り込む方向に沿う脚フレームの前端部を防水パンの前縁部より前方側に延長させてなることを特徴とするユニットバスの設置構造。
【請求項2】
ユニット建物を構成する建物ユニットの床枠内に区画されて該床枠の上面より低段差をなすバス設置面にユニットバスを設置するユニットバスの設置構造において、
ユニットバスが防水パンの下面に固定した直線状の脚フレームを建物ユニットの床枠の上面からバス設置面に送り込まれて設置されるものであり、
ユニットバスをバス設置面に送り込む方向に沿う脚フレームの後端部を防水パンの後縁部より前方側に短縮させてなることを特徴とするユニットバスの設置構造。
【請求項3】
ユニット建物を構成する建物ユニットの床枠内に区画されて該床枠の上面より低段差をなすバス設置面にユニットバスを設置するユニットバスの設置構造において、
ユニットバスが防水パンの下面に固定した直線状の脚フレームを建物ユニットの床枠の上面からバス設置面に送り込まれて設置されるものであり、
ユニットバスをバス設置面に送り込む方向に沿う各フレームの前端部を防水パンの前縁部より前方側に延長させるとともに、
ユニットバスをバス設置面に送り込む方向に沿う各フレームの後端部を防水パンの後縁部より前方側に短縮させてなることを特徴とするユニットバスの設置構造。
【請求項4】
前記ユニットバスをバス設置面に送り込む方向に沿う脚フレームの前端部の下面角部を面取り部にしてなる請求項1又は3に記載のユニットバスの設置構造。
【請求項5】
前記防水パンが洗い場パンと浴槽パンに分割され、これらの洗い場パンと浴槽パンが脚フレームに固定されてなる請求項1〜4のいずれかに記載のユニットバスの設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−287297(P2009−287297A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141691(P2008−141691)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】