説明

ユニット型フィルタのフィルタ枠

【課題】濾材の交換作業時に軽量な状態で作業が可能であり、濾材交換に手間がかからず、しかも環境に優しく、フィルタの製造コストが削減可能となるユニット型フィルタのフィルタ枠を提供する。
【解決手段】濾材交換可能なフィルタ枠10であって、前記フィルタ枠は前記濾材の収納空間を有する内枠30と前記内枠の外側に配置された外枠40とからなり、前記外枠は前記内枠と、内枠の外周方向では離間しているが奥行き方向では連結しており、前記外枠の外周の形状が矩形であり、前記外枠の壁面に他のフィルタ枠及び/又は外部の構造体に取り付けるための取り付け穴42を有していることを特徴とするユニット型フィルタのフィルタ枠10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル空調、工場空調、病院空調などの空調設備に設置されるユニット型フィルタを構成するフィルタ枠に関し、濾材を交換することが可能なフィルタ枠に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル空調、工場空調、病院空調などの空調設備には、外気中の塵埃を除去するため、ユニット型フィルタからなるフィルタ装置が配置されている。このユニット型フィルタは濾材交換が可能なフィルタ枠に濾材を取り付けたフィルタ装置であり、このようなユニット型フィルタは単独でダクト内に設置された形態や、ユニット型フィルタ同士2〜9個が連結された一組の装置をさらに1〜12組配置したフィルタ装置の形態でブース内に設置されている。
【0003】
このようなユニット型フィルタとしては、例えば特許文献1の空気濾過装置が知られている。この特許文献1によれば、図15及び図16に示すように、内側ケース7と外側ケース8との間に濾過紙6を挟圧支持したエアマットフィルター(ユニット型フィルタ)を外枠1と中枠2とからなるフレームの中枠2内に装着することにより空気濾過装置を形成している。そして、このようなユニット型フィルタからなるフィルタ装置では、濾材の目詰まりが生じた際に濾材のみを交換することでフィルタ装置の性能が保たれるという利点がある。
【0004】
近年になって、ビル管理法などの制定により一般の空調設備に対しても、より微細な粒子を捕集することが求められるようになり、このユニット型フィルタが好適に使用されるようになった。すなわち、微細な粒子を捕集するためには、比色法で20〜98%の粒子除去効率を有する一般的に中高性能と呼ばれる濾材にプリーツを形成した後でこの濾材を剛性枠に固定した形態のフィルタ(以下、枠付きフィルタと称する場合がある)が必要であり、このような枠付きフィルタをフィルタ枠に着脱自在に取り付けたユニット型フィルタであれば、濾材の交換作業を効率的に行なうことができるからである。なお、クリーンルームなどではより高度な濾過性能が求められるためHEPAフィルタが用いられており、この分野ではフィルタ装置からのリークを完全に防ぐ必要がある。しかし、中高性能の分野ではフィルタ装置からのリークを完全に防ぐことは要求されず、この点からもリーク防止の特別な構造を必要としないユニット型フィルタの使用が好適といえる。
【0005】
このような中高性能濾材を用いたユニット型フィルタとしては、例えば特許文献2の従来技術に記載されるユニット型フィルタがある。この特許文献2によれば、図17に示すように、プリーツを形成した濾材4に剛性枠5を取り付けた枠付きフィルタや、袋状に形成した濾材4に剛性枠5を取り付けた枠付きフィルタをフィルタ取付枠3(フィルタ枠)に交換可能に取り付け金具等で取り付けることによりユニット型フィルタを形成している。
【0006】
しかし、このようなユニット型フィルタにあっては、フィルタ取付枠3を予め単独でダクト内に設置したり、あるいはフィルタ取付枠3同士複数個連結させた上でブース内に設置しておき、設置後に枠付きフィルタをこのフィルタ取付枠3に取り付ける必要があった。すなわち、プリーツが形成された濾材を、剛性枠無しに直接フィルタ取付枠3に取り付けることはできなかった。その結果、プリーツが形成された濾材を剛性枠に固定させた枠付きフィルタは、剛性枠の分だけ重くなるという問題や、濾材の交換に手間がかかるというメンテナンス上の問題があった。また、フィルタ使用後に剛性枠が廃棄されることになるので環境に優しくないという問題や、使い捨ての剛性枠を用いることになるので、製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭38−17889号公報
【特許文献2】特開平7−241425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を解決して、濾材の交換作業時に軽量な状態で作業が可能であり、濾材交換に手間がかからず、しかも環境に優しく、フィルタの製造コストが削減可能となるユニット型フィルタのフィルタ枠を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明では、濾材交換可能なフィルタ枠であって、前記フィルタ枠は前記濾材の収納空間を有する内枠と前記内枠の外側に配置された外枠とからなり、前記外枠は前記内枠と、内枠の外周方向では離間しているが奥行き方向では連結しており、前記外枠の外周の形状が矩形であり、前記外枠の壁面に他のフィルタ枠及び/又は外部の構造体に取り付けるための取り付け穴を有していることを特徴とするユニット型フィルタのフィルタ枠をその解決手段とした。
【0010】
また、請求項2に係る発明では、前記内枠の気体流入側の端部にフランジ部を有しており、前記フランジ部に掛止可能な濾材押さえ部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のユニット型フィルタのフィルタ枠である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、濾材の交換作業時に軽量な状態で作業が可能であり、濾材の交換に手間がかからず、しかも環境に優しく、フィルタの製造コストが削減可能となるユニット型フィルタのフィルタ枠を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のフィルタ枠の一例を示す図である。(a)は斜視図であり、(b)はB−B’における断面図である。
【図2】本発明のフィルタ枠の別の例を示す図である。(a)は斜視図であり、(b)はB−B’における断面図である。
【図3】本発明のフィルタ枠に濾材と濾材押さえ部材を取付ける一例を説明する図である。
【図4】本発明のフィルタ枠に濾材と濾材押さえ部材を取付けた一例を示す斜視図である。
【図5】本発明のフィルタ枠に濾材、プレフィルタ、及び濾材押さえ部材を取付ける一例を説明する図である。
【図6】本発明のフィルタ枠に濾材、プレフィルタ、及び濾材押さえ部材を取付けた一例を示す斜視図である。
【図7】本発明のフィルタ枠に取り付ける濾材押さえ部材の一例を示す図である。(a)は正面図であり、(b)は側面図であり、(c)はC部分の拡大図である。
【図8】本発明のフィルタ枠に取り付ける濾材押さえ部材の別の例を示す図である。(a)は正面図であり、(b)は側面図であり、(c)はC部分の拡大図であり、(d)は濾材押さえ部材を備えることが可能なフィルタ枠の部分斜視図である。
【図9】本発明のフィルタ枠に取り付ける濾材押さえ部材の別の例を示す図である。(a)は正面図であり、(b)は側面図であり、(c)は下面図である。
【図10】本発明のフィルタ枠に濾材押さえ部材を取り付けた別の例を示す斜視図である。
【図11】本発明のフィルタ枠に濾材、プレフィルタ、及び濾材押さえ部材を取付ける別の例を説明する図である。
【図12】本発明のフィルタ枠に濾材、プレフィルタ、及び濾材押さえ部材を取付けた別の例を示す斜視図である。
【図13】本発明のフィルタ枠を連結して形成したフィルタ枠組み立て体の一例を示す図である。
【図14】本発明のフィルタ枠を連結して形成したフィルタ枠組み立て体の別の例を示す図である。
【図15】従来の空気濾過装置のフレームを示す図である。
【図16】従来の空気濾過装置のユニット型フィルタを示す図である。
【図17】従来のユニット型フィルタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るユニット型フィルタのフィルタ枠の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
本発明のユニット型フィルタのフィルタ枠10は、図1及び図3に例示するように、濾材交換可能なフィルタ枠10であって、前記フィルタ枠10は前記濾材20の収納空間を有する内枠30と前記内枠30の外側に配置された外枠40とからなり、前記外枠40は前記内枠30と、内枠30の外周方向では離間しているが奥行き方向では連結しており、前記外枠40の外周の形状が矩形であり、前記外枠40の壁面に他のフィルタ枠及び/又は外部の構造体に取り付けるための取り付け穴42を有していることを特徴とするユニット型フィルタのフィルタ枠10である。なお、上記の内枠30の外周方向は、図1に矢印Aで示される気体の流れ方向に対して垂直な方向と言い換えることができ、内枠30の奥行き方向とは、矢印Aで示される気体の流れ方向と言い換えることができる。
【0015】
前記内枠30は濾材20の収納空間を有しており、このため濾材20を着脱自在に取り付けることが可能であり、濾材が目詰まりした際に新品の濾材と交換可能である。濾材20としては、図3に例示するように、比色法で20〜98%の粒子除去効率を有する一般的に中高性能と呼ばれるシート状濾材にプリーツを形成した後、プリーツに垂直な面にシート状材料22などを付着させてプリーツの形状を保持させたフィルタエレメント20を用いることが可能である。このシート状材料としては、例えば不織布、発泡シート、織物、編物、フィルムなどが適用可能であるが、特に不織布又は発泡シートは弾力性があり好ましい。また、図3では、プリーツに平行な面21はシート状濾材そのものからなっている。
【0016】
また、内枠30の大きさは、外寸で縦、横がそれぞれ250〜750mmであることが好ましく、450〜650mmであることがより好ましく、570〜590mmがさらに好ましい。また、縦と横の寸法が同じであることが好ましい。また、外寸で奥行きが75〜300mmであることが好ましく、120〜230mmであることがより好ましい。
【0017】
また、内枠30は気体の流出側の端部に濾材を支持するための支持部31を有することが好ましい。また、この支持部31にパッキンを貼り付けておくことも可能である。図1では、この支持部31は内枠30の気体流出側の端部分を内側に折り曲げることによって形成している。支持部31の巾は8〜30mmであることが好ましく、10〜20mmであることがより好ましい。8mm未満では濾材の支持が不十分になる場合があり、30mmを超えると圧力損失が上昇する場合がある。
【0018】
また、内枠30は気体流入側の端部にフランジ部33を有していることが好ましい。フランジ部33があれば、フィルタ枠10の気体流入側に後述する濾材押さえ部材50を掛止などにより取り付けることが容易となる。図1では、このフランジ部33は内枠30の気体流入側の端部分を外側に折り曲げることによって形成している。フランジ部33の巾は内枠30と、外枠40との外周方向の離間距離にもよるが、8〜30mmであることが好ましく、10〜20mmであることがより好ましい。
【0019】
また、内枠30は外枠40の壁面に開けられた後述する取り付け穴42に対応した位置に、取り付け穴42よりも大きな径の作業穴32を有することが好ましい。この作業穴32を設けることによって、この作業穴32にドライバーなどを入れて取り付け穴42に挿入したボルトなどを締め付けることが可能であり、内枠30の内部から外枠40を他のフィルタ枠や外部の構造体に取り付けることが可能となる。
【0020】
本発明では、内枠30の外側に外枠40が配置されており、この外枠40は他のフィルタ枠及び/又は外部の構造体に取り付けることが可能となるように、前記外枠40の外周の形状が矩形であり、また外枠40の壁面に他のフィルタ枠及び/又は外部の構造体に取り付けるための取り付け穴42を有している。ここで構造体とは、フィルタ枠を支持するための角材やチャンネル鋼が枠状に組まれた据付用の枠組みを意味している。具体的には、例えば図13または図14に例示するフィルタ枠組み立て体70を構成する据付用の枠組み71からなる構造体を挙げることができる。図13のフィルタ枠組み立て体70の例では、本発明のフィルタ枠10を横に3列、縦に3段配置して、これらのフィルタ枠10を互いに連結してから更にこれらのフィルタ枠10を、これらのフィルタ枠10の外側に配置した据付用の枠組み71からなる構造体に取り付けることによってフィルタ枠組み立て体70を形成している。また、図14のフィルタ枠組み立て体70の例では、本発明のフィルタ10を横に2個配置して、これらのフィルタ枠10を互いに連結してから、更にこれらのフィルタ枠10を、これらのフィルタ枠10の外側に配置した据付用の枠組み71からなる構造体に取り付けることによってフィルタ枠組み立て体70を形成している。
【0021】
取り付け穴42は外枠40の4つの壁面に設けられていることが望ましく、図1の例では気体の出口側に2個、入口側に3個設けられている。取り付け穴42を有することで、例えばこの取り付け穴42と他のフィルタ枠の取り付け穴にボルトを挿入してからナットで締め付けることによりフィルタ枠同士を連結することができる。
【0022】
また、外枠40の大きさは、外寸で縦、横がそれぞれ300〜800mmであることが好ましく、500〜700mmであることがより好ましく、620〜640mmがさらに好ましい。また、縦と横の寸法が同じであることが好ましい。また、外寸で奥行きが50〜200mmであることが好ましく、75〜150mmであることがより好ましい。
【0023】
また、本発明フィルタ枠は、気体の流出側に濾材を支持するための支持部材43を有していることが好ましく、図1の例では、外枠40の流出側に断面L字の鋼材からなる支持部材43が設けられている。
【0024】
本発明では、外枠40は内枠30と、内枠30の外周方向では離間しているが奥行き方向では連結している。内枠30の外周方向で離間しているということは、外枠40の壁と内枠30の壁との間に隙間があることを意味しており、この隙間に工具を入れて外枠40の取り付け穴42に挿入したボルトなどの連結子を操作してフィルタ枠10を他のフィルタ枠又は外部の構造体と連結することができるという利点がある。また、隙間があることにより、内枠30の気体流入側の端部にフランジ部33を設けることができるという利点もある。また、外枠40の4個の壁とこれらの壁と対応する内枠30の4個の壁との間のそれぞれの離間距離または隙間は等間隔であることが好ましい。また、外枠40の中心線と内枠30の中心線との離間距離は15〜50mmであることが好ましく、20〜30mmであることがより好ましい。離間距離が15mm未満であると、他のフィルタ枠又は外部の構造体と連結することが困難になる場合がある。また、離間距離が50mmを超えると濾材の表面積が少なくなり過ぎてユニット型フィルタとしての濾過性能が低下する場合がある。なお、内枠の奥行き寸法は、70〜250mmであることが好ましく、90〜170mmであることがより好ましい。
【0025】
外枠40が内枠30と奥行き方向で連結している形態としては、図1に例示するように、外枠40の壁と内枠30の壁との間に連結部41を有する形態が好ましい。図1では、この連結部41は外枠40の壁の気体流出側の端部分が内側に折り曲げられて形成しており、折り曲げた部分の先端部分は内枠30の気体流出側の端部分を内側に折り曲げることによって形成した支持部31と重なり合っており、この重なった部分で溶接等によって外枠40と内枠30とが接合している。したがって、連結部41から気体が漏れない気密な構造となっている。このように、図1では、外枠40が内枠30と奥行き方向で気密に連結している。なお、本発明では連結部41は、外枠40の壁や内枠30の壁と異なる材料とすることも可能である。
【0026】
図1の例では、内枠30の気体流入側の端部にフランジ部33を有しているが、図2の例では、フランジ部33を有しておらず、図1よりも簡素な構造となっている。簡素な構造のため製造コストも低減可能という利点がある。この構造のフィルタ枠は、後述する濾材押さえ部材50を必要としないか又は図10に例示するような簡易な濾材押さえ部材を用いることが許される場合、例えばユニット型フィルタの運転中に、濾材20が気体流入側に移動する恐れのない場合などに好適に使用することができる。また、図2の例では内枠30の気体流出側の端部が外枠40の気体流出側の端部よりも、気体流入側に寄って配置されており、上げ底のような形態になっている。この形態は、濾材の厚さが小さい場合などに好適に使用することができる。なお、図2の例においても、気体の流出側に濾材を支持するための支持部材35を有していることが好ましく、内枠30の流出側に断面L字の鋼材からなる支持部材35が設けられている。
【0027】
以上説明したように、本発明のフィルタ枠10は内枠30と外枠40とからなるが、製作に際しては、例えば鋼板を折り曲げ更に部分的に溶接で接合して内枠30と外枠40とを形成しておき、さらに前述のように内枠30と外枠40とを支持部31において重ね合わせ、ついでこの重なった部分を溶接によって接合することで、フィルタ枠10を製作することが可能である。また、鋼板の折り曲げ加工によらない方法としては、例えば図1(b)又は図2(b)の断面図に示す形状をしたアルミの引き抜き材を製作して、この引き抜き材の4個のピースを、コーナー部材や、リベット、かしめ、ビスなどの手段で連結することによって、フィルタ枠10を製作することが可能である。
【0028】
本発明のフィルタ枠は、図3又は図5に例示するように、内枠30の気体流入側の端部に濾材押さえ部材50を備えていることが好ましい。濾材押さえ部材を備えることにより、濾材20を内枠30に確実に収納することができるという利点がある。また、図5に示すように濾材20とプレフィルタ25を積層して収納する場合は、プレフィルタ25を介して濾材20を内枠30に確実に収納することができるという利点がある。なお、本発明では、濾材押さえ部材は濾材を内枠30の中へ押さえ込むことができる限り、その形態や材質は特に限定されず、図3又は図5以外にも、図8〜図11に例示する形態なども可能である。
【0029】
図3又は図5では、本発明のフィルタ枠10は内枠30の気体流入側の端部にフランジ部33を有しており、このフランジ部33に掛止可能な濾材押さえ部材50をさらに備えている。図3では、この濾材押さえ部材50は横枠部51、52と縦枠部53、54とからなる枠状の部材となっており、横枠部51及び52にはそれぞれ掛止部51a及び52aが延設されている。この掛止部51a及び52aは互いに反対側に向くように鉤状になっており、図3ではこの掛止部51aを内枠30のフランジ部33に引掛けることにより、濾材押さえ部材50をフランジ部33に掛止可能となっている。また、横枠部51及び52はそれぞれ止め穴51c、52cを有しており、この穴を用いて止めネジなどにより濾材押さえ部材50をフランジ部33に固定することが可能となっている。また、縦枠部53及び54にはそれぞれ突出部53b及び54bが延設されており、図3では、突出部53b及び54bが濾材20に向けられているので、濾材20を内枠30内に押し込むようにして収納することが可能となっている。この突出部53b及び54bの突出高さは濾材の厚さに応じて適宜設計することが可能である。
【0030】
図3では、内枠30の中に濾材20を挿入した後で、濾材押さえ部材50の一方の横枠部51の掛止部51aを内枠30のフランジ部33に引掛け、さらに他方の横枠部52の止め穴52cに挿入した止めネジにより、濾材押さえ部材50をフランジ部33に固定することで、濾材押さえ部材50の突出部53b及び54bが濾材20を内枠30内に押し込むように働き、その結果、図4に示すように濾材20をフィルタ枠10内に確実に収納することができる。
【0031】
図7は、図3の濾材押さえ部材50を高さ方向の中間に位置する中心線D−D’を軸にして180°回転させて表した詳細図である。押さえ部材50の掛止部51a及び52aの形状はフランジ部33に掛止可能な形状であれば、特に限定されず、図7(c)に示すように断面U字形または断面V字形の鉤状であることが好ましい。
【0032】
図5は、図7の状態の濾材押さえ部材50を用いて、濾材20とプレフィルタ25を積層させた状態で、フィルタ枠10内に収納する方法を示している。図5では、内枠30の中に濾材20とプレフィルタ25を重ねて挿入した後で、濾材押さえ部材50の一方の横枠部52の掛止部52aを内枠30のフランジ部33に引掛け、さらに他方の横枠部51の止め穴51cに挿入した止めネジにより、濾材押さえ部材50をフランジ部33に固定することで、濾材押さえ部材50の縦枠部53及び54の平面がプレフィルタ25と濾材20を内枠30内に押し込むように働き、その結果、図6に示すようにプレフィルタ25と濾材20をフィルタ枠10内に確実に収納することができる。なお、プレフィルタ25としては質量法効率で評価される粗塵除去用のフィルタを用いることが好ましい。
【0033】
図8に例示する濾材押さえ部材50は、図7に例示する濾材押さえ部材50の横枠部51及び52に止め穴51c及び52cを設ける代わりに、小掛止部51d及び52dを設けた点で図7と異なっている。これらの小掛止部51d及び52dは横枠部51及び52の一部分に切り込みを入れて、切り込んだ部分を鉤状に折り曲げることで形成している。例えば、一方の横枠部52の掛止部52aに対して、他方の横枠部51に切り込んだ部分を掛止部52aと同じ方向に鉤状に折り曲げることで小掛止部51dを形成している。また、他方の横枠部51の掛止部51aに対して、一方の横枠部52に切り込んだ部分を掛止部51aと同じ方向に鉤状に折り曲げることで小掛止部52dを形成している。したがって、これらの小掛止部51d及び52dの折り曲げの方向はそれぞれ掛止部51a及び52aと反対側に向くように、しかもそれぞれ掛止部51a及び52aとは反対面に形成されている。図8(d)は、小掛止部51dの先端を挿入することが可能なようにスリット状の受け入れ穴36を内枠30の下面の気体流入側に設けたフィルタ枠10の部分斜視図である。前述の小掛止部51d及び52dの形状は、このような受け入れ穴36に小掛止部の先端を挿入することが可能な形状であれば、特に限定されず、図8(c)に示すように断面U字形または断面V字形の鉤状であることが好ましい。また、小掛止部51d及び52dは横枠部51及び52とは異なる部材で製作したものを横枠部51及び52に取り付けて形成することも可能である。
【0034】
図8に例示する濾材押さえ部材50を用いて、図5と同様に、濾材20とプレフィルタ25を積層させた状態で、フィルタ枠10内に収納することが可能である。図5で示すように、内枠30の中に濾材20とプレフィルタ25を重ねて挿入した後で、図8に示す濾材押さえ部材50の掛止部52aを内枠30のフランジ部33に引掛けるとともに小掛止部51dの先端を内枠30の下面の気体流入側に設けたスリット状の受け入れ穴36に挿入して、濾材押さえ部材50をフランジ部33に固定することで、濾材押さえ部材50の縦枠部53及び54がプレフィルタ25と濾材20を内枠30内に押し込むように働き、その結果、図6に示すようにプレフィルタ25と濾材20をフィルタ枠10内に確実に収納することができる。
【0035】
以上説明したように、図7又は図8に例示する濾材押さえ部材50を用いることにより、濾材押さえ部材50を高さ方向の中心線D−D’を軸にして180°回転させるだけで、プレフィルタ25がない場合であっても、またプレフィルタ25を有する場合であっても、濾材20を本発明のフィルタ枠10内に収納させることができる。このように、本発明では、濾材押さえ部材50が、内枠30のフランジ部に接することが可能な横枠部51、52と縦枠部53、54とからなる枠状の部材からなり、少なくとも1つの枠部の表側と少なくとも1つの枠部の裏側にフランジ部33に掛止可能な断面U字形または断面V字形の掛止部が設けられており、少なくとも1組の対向する枠部においてそれぞれ高さの等しい突出部が設けられている濾材押さえ部材50であることが好ましい。
【0036】
図9に例示する濾材押さえ部材50は、図8に例示する濾材押さえ部材50の縦枠部53及び54に突出部53b及び54bを延設する代わりに、断面コ字部材53e及び54eを設けた点、及び掛止部(51a)と小掛止部(52d)を一組のみ設けた点で図8と異なっている。これらの断面コ字部材53e及び54eの開口は濾材押さえ部材50の中芯部を向いているので、濾材20を内枠30内に押し込むようにして収納することが可能になっていると共に断面コ字部材53e及び54eの開口部にプレフィルタ25を挿入することで、プレフィルタ25を収納することも可能になっている。なお、断面コ字部材53e及び54eを設けた面側を、掛止部(51a)と小掛止部(52d)の曲げ方向として、掛止部(51a)と小掛止部(52d)を一組のみ設けることで、プレフィルタ25がない場合であっても、またプレフィルタ25を有する場合であっても、濾材20を本発明のフィルタ枠10内に収納させることができる。このように、図9に例示する濾材押さえ部材50は、図7に例示する濾材押さえ部材とは異なり、気体流入側に突出物がないため、この突出物によって物が引っ掛かる等のリスクを防止できるという利点がある。なお、これらの断面コ字部材53e及び54eの突出高さは濾材の厚さに応じて適宜決定することが可能である。
【0037】
図10に例示するフィルタ枠10は、内枠30の気体流入側に濾材押さえ部材としての柵状体60を備えている。図10に示す例では、鉄製の丸棒をV字形状に折り曲げたものを2個対称に重ねて交点を接合することで、柵状体60を形成している。内枠30の気体流入側には、柵状体60の端部を受け入れるための受け入れ穴34が設けられており、この受け入れ穴34に柵状体60の端部を差込むことで、内枠30の気体流入側に柵状体60を固定することができる。この際には、柵状体60を撓めてから柵状体60の端部を受け入れ穴34に差込み、その後柵状体60の撓みを解消することで、容易に柵状体60を固定することができる。なお、この柵状体としては、図10に示す例に限定されることはなく、気体の抵抗の少ない材料を柵状に形成したものを適用することができる。濾材の構造が比較的強固でフィルタ枠からの脱離の恐れがない場合は、フィルタ枠にこのような柵状体からなる濾材押さえ部材を備えることが好ましい。このような柵状体を備えたフィルタ枠であれば、簡易な構造で製作できるという利点や、濾材交換作業に手間がかからないという利点がある。
【0038】
図5では、図7の状態の濾材押さえ部材50を用いて、濾材20とプレフィルタ25を積層させた状態で、フィルタ枠10内に収納する方法を示したが、これに対して、図11では、図7の状態の濾材押さえ部材50と図10に示したような柵状体60とを併用して、濾材20とプレフィルタ25を積層させた状態で、フィルタ枠10内に収納する方法を示している。このように、濾材押さえ部材50と柵状体60とを併用することでより確実にフィルタ枠10内にプレフィルタ25と濾材20を収納することができる。図11では濾材押さえ部材50と柵状体60とを単に重ねているだけであるが、濾材押さえ部材50に柵状体60を接合した濾材押さえ部材を用いることも可能である。
【0039】
図11では、内枠30の中に濾材20とプレフィルタ25と柵状体60をこの順で重ねて挿入した後で、濾材押さえ部材50の一方の横枠部52の掛止部52aを内枠30のフランジ部33に引掛け、さらに他方の横枠部51の止め穴51cを用いて止めネジにより、濾材押さえ部材50をフランジ部33に固定することで、濾材押さえ部材50の縦枠部53及び54の平面及び/又は柵状体60がプレフィルタ25と濾材20を内枠30内に押し込むように働き、その結果、図12に示すようにプレフィルタ25と濾材20をフィルタ枠10内に確実に収納することができる。
【0040】
図13は本発明のフィルタ枠10を連結して形成したフィルタ枠組み立て体70の一例を示す図である。図13に示すように、まずチャンネル鋼を利用して据付用の枠組み71からなる構造体を製作しておき、次いで本発明のフィルタ10を横に3列、縦に3段配置して、これらのフィルタ枠10を互いに連結すると共にこれらのフィルタ枠10を、これらのフィルタ枠10の外側に配置した据付用の枠組み71からなる構造体に取り付けることによってフィルタ枠組み立て体70を形成することができる。なお、このフィルタ枠組み立て体70はこの後ろ側に配置したチャンバーの1側面となるように形成されている。
【0041】
また、図14は本発明のフィルタ枠10を連結して形成したフィルタ枠組み立て体70の別の例を示す図である。図14に示すように、横のチャンネル鋼71a及び縦のチャンネル鋼71bを溶接にて接合することによって据付用の枠組み71からなる構造体を製作しておき、次いで本発明のフィルタ10を横に2個配置して、これらのフィルタ枠10を互いにボルトとナットを用いて連結してから、更にこれらのフィルタ枠10を、これらのフィルタ枠10の外側に配置した据付用の枠組み71からなる構造体に取り付けることによってフィルタ枠組み立て体70を形成することができる。詳細には、フィルタ枠10は横のチャンネル鋼71a及び縦のチャンネル鋼71bにボルトとナットによって取り付けられている。なお、このフィルタ枠組み立て体70はこの周囲にあるダクトの断面となるように形成されている。
【0042】
このように、本発明のフィルタ枠10はチャンバーやダクトを構成する据付用の枠組み71以外にも、ダクト内の枠組みなどにも連結可能である。ダクト内の枠組みに連結する場合は1個のフィルタ枠10を用いることも可能である。
【0043】
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
図1に示すように、鋼板を折り曲げ更に部分的に溶接により接合することによって内枠30及び外枠40を作製した。この内枠30は外寸で縦、横がそれぞれ580mmで、奥行きが145mm、支持部31の巾が16mmであり、フランジ部33の巾は15mmであり、作業穴32の内径は20mmである。また、この外枠は外寸で縦、横がそれぞれ630mmで、奥行きが100mmであり、取り付け穴42の内径は8mmであり、外枠40の壁の気体流出側の端部分を内側に折り曲げて連結部41と支持部31を形成した。この連結部41の巾は25mmであり、支持部31の巾は16mmであり、連結部41と支持部31を合わせて41mmの巾で端部分を折り曲げた。次いで、内枠30の壁面と外枠40の壁面が等間隔に離間するようにして、内枠30の支持部31と外枠40の支持部31とを重ねて、この重なった部分を溶接して、内枠30と外枠40を接合した。また、外枠40の流出側に断面L字の鋼材からなる支持部材43を溶接により接合することにより、本発明のユニット型フィルタのフィルタ枠を作製した。
【0045】
(実施例2)
図7〜図9に示すように、鋼板を折り曲げ更に部分的に溶接により接合することによって、実施例1のフィルタ枠に用いる枠状の濾材押さえ部材50を作製した。
これらの濾材押さえ部材50の外寸は、横枠部51、52及び縦枠部53、54ともに610mmである。また、横枠部51、52及び縦枠部53、54ともに巾は30mmであり、突出部53b、54b、及び断面コ字部材53e及び54eの突出高さは20mmである。
【符号の説明】
【0046】
10 フィルタ枠
20 濾材
22 シート状材料
25 プレフィルタ
30 内枠
31 支持部
32 作業穴
33 フランジ部
34 受け入れ穴
35 支持部材
36 受け入れ穴
40 外枠
41 連結部
42 取り付け穴
43 支持部材
50 濾材押さえ部材
51、52 横枠部
51a、52a 掛止部
51c、52c 止め穴
51d、52d 小掛止部
53、54 縦枠部
53b、54b 突出部
53e、54e 断面コ字部材
60 柵状体(濾材押さえ部材)
70 フィルタ枠組み立て体
71 据付用の枠組み
71a、71b チャンネル鋼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾材交換可能なフィルタ枠であって、前記フィルタ枠は前記濾材の収納空間を有する内枠と前記内枠の外側に配置された外枠とからなり、前記外枠は前記内枠と、内枠の外周方向では離間しているが奥行き方向では連結しており、前記外枠の外周の形状が矩形であり、前記外枠の壁面に他のフィルタ枠及び/又は外部の構造体に取り付けるための取り付け穴を有していることを特徴とするユニット型フィルタのフィルタ枠。
【請求項2】
前記内枠の気体流入側の端部にフランジ部を有しており、前記フランジ部に掛止可能な濾材押さえ部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のユニット型フィルタのフィルタ枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−230057(P2011−230057A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102798(P2010−102798)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】