説明

ユニット型金属製地下室

【課題】 内部容積の割に圧迫感がなく十分な開放感を有するとともに、浮き上がり防止対策に要する費用の低減を図れ、しかも、上部建物に対する耐震性の向上にも寄与することができるユニット型金属製地下室を提供する。
【解決手段】 複数の芯材鉄骨の外側に鋼板が固定されてなる天井構造体1及び上半部壁構造体2Uをラーメン構造、耐震パネル構造に組立固定してなる上部の金属製ユニット躯体3と、同様な構成の床構造体4及び下半部壁構造体2Dをーメン構造、耐震パネル構造に組立固定してなる下部の金属製ユニット躯体5とを一体に固定接合して構築される金属製地下室Aであって、上部の金属製ユニット躯体3における上半部壁構造体2Uが下半部壁構造体2Dよりも外方へ膨出されているとともに、地下室Aの全外周部には外周面が面一の状態で補強用コンクリート壁11が一体に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形鋼等の鉄骨を芯材とし、その複数の芯材鉄骨を同一面上に所定間隔を隔てて並列配置し、それら複数の芯材鉄骨の外側に鋼板等の金属製外板を固定してなる天井構造体、壁構造体及び床構造体を工場製作の段階、つまり、地下室施工現場への出荷前に組立固定して梁間方向にラーメン構造で、かつ、桁行方向に耐震パネル構造の金属製ユニット躯体を構成し、この金属製ユニット躯体を施工現場に搬入し掘削穴底部のコンクリート基礎上に据付け固定することにより、施工工期の短縮並びに工費の節減を達成可能としたユニット型金属製地下室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のユニット型金属製地下室として、従来、前記した天井構造体、壁構造体及び床構造体を組立固定して縦断面形状が□型の単一の金属製ユニット躯体を構成し、この縦断面形状□型の単一金属製ユニット躯体を施工現場に搬入しコンクリート基礎上に据付け固定することによって、所定高さ及び所定容積の金属製地下室を構築するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、上記特許文献1の金属製地下室の場合は、居住性を良くするために天井高を高くすると、縦断面形状□型の単一金属製ユニット躯体自体の背丈が非常に大きいものとなり、施工現場までの運搬経路によっては道路運搬上の制限高さ(一般的には、車上から3800mm程度)の問題から搬入できない場合があり、また、搬入できるとしても、非常に大型の運搬車を必要とするだけでなく、施工現場での荷卸しや建て方工事に大型のクレーン等を用いる必要があり、さらに、荷卸しや建て方工事時に施工現場周辺に存在する障害物に干渉したり、風の影響を受けて振れたりすることがあって、一連の現場作業が困難になるという難点があり、このような難点を解消するために、縦断面形状□型の金属製ユニット躯体を高さ方向の中間部で水平に分断して上下二つの金属製ユニット躯体に分割し、これら上下に分割されて背丈が半減された二つの金属製ユニット躯体を個別に施工現場に搬入し、その施工現場で上下二つの金属製ユニット躯体同士を一体に固定接合して最終的に縦断面形状□型の金属製ユニット躯体からなる地下室を構築するようにしたものを本出願人は既に提案している(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】 特許第3149019号公報
【特許文献2】 特開2003−313884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1,2に示された従来の金属製地下室は、いずれも完工された地下室内部の全周が縦断面形状□型の金属製ユニット躯体を構成する天井、壁及び床構造体により取り囲まれているために、容積的には大きくても水平方向での視覚において圧迫感があり、さらに内部の床部分にテレビ台を置いたり、収納部を確保したりした場合、一層強い圧迫感があって、居住性を損ねやすい。また、ユニットタイプの地下室の場合は、地下水位が上昇したとき、その浮力に十分に対抗して浮き上がりを防止する必要があり、その浮き上がり防止対策として、従来のユニット型金属製地下室では、縦断面形状□型の金属製ユニット躯体の外周全域に該金属製ユニット躯体の防錆、耐蝕性の確保を兼ねて浮力に対抗するに足りるカウンターウェイト用のコンクリート壁を形成していたが、この場合は、地下室の内部容積の割に肉厚の大きいコンクリート壁を形成しなければならず、そのコンクリート壁の形成、つまりは、浮き上がり防止対策のために要する費用が嵩むという問題がある。
【0006】
さらに、従来の縦断面形状□型の金属製ユニット躯体では、その重心が地下室の高さ方向の中間部またはほぼ中間部という比較的高い位置にあるために、当該地下室を上部建物の直下位置に構築した状態で地震などが発生したとき、地下室自身の耐震性は確保できても上部建物自体の揺れが大きくなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上記のような諸実情に鑑みてなされたもので、内部容積の割に圧迫感がなくて十分な開放感が得られるとともに、浮き上がり防止対策に要する費用の低減を図れ、しかも、上部建物に対する耐震性の向上にも寄与することができるユニット型金属製地下室を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るユニット型金属製地下室は、同一面上に所定間隔を隔てて並列配置させた複数の芯材鉄骨の外側に金属製外板を固定してなる天井構造体及び地下室の高さ方向の中間部又はほぼ中間部よりも上方部に位置し前記天井構造体と同様に複数の芯材鉄骨及び金属製外板からなる4つの上半部壁構造体を組立固定して梁間方向にラーメン構造で、かつ、桁行方向に耐震パネル構造の縦断面形状が下向き開放略コ字型に構成された上部の金属製ユニット躯体における前記上半部壁構造体の下端部と、前記天井構造体と同様に複数の芯材鉄骨及び金属製外板からなる床構造体及び地下室の高さ方向の中間部又はほぼ中間部よりも下方部に位置し前記天井構造体と同様に複数の芯材鉄骨及び金属製外板からなる4つの下半部壁構造体を組立固定して梁間方向にラーメン構造で、かつ、桁行方向に耐震パネル構造の縦断面形状が上向き開放の略コ字型に構成された下部の金属製ユニット躯体における前記下半部壁構造体の上端部とを一体に固定接合することにより、所定高さ及び所定容積に構築されるユニット型金属製地下室であって、前記上部の金属製ユニット躯体における4つの上半部壁構造体のうち、少なくとも相対向位置する2つの上半部壁構造体は、下部の金属製ユニット躯体における4つの下半部壁構造体のうち、少なくとも相対向位置する2つの下半部壁構造体よりもそれぞれ外方へ膨出するように構成されており、また、構築されたユニット型金属製地下室の全外周部には、その外周面が面一又はほぼ面一となる状態で補強用コンクリート壁が形成されていることを特徴としている。
【0009】
上記構成の本発明によれば、金属製ユニット躯体が高さ方向の中間部またはほぼ中間部で分断されて上下二つのユニット躯体に分割されているので、既述の特許文献2で示したものと同様に、完工された地下室の天井高は居住性がよくなるように高く設定したとしても、上下二つのユニット躯体自体の背丈は小さいために、施工現場までの運搬経路中に道路運搬上の制限高さが存在してもなんらの問題も生じることなく、かつ、小型の運搬車を用いて搬入することができるとともに、施工現場での荷卸しや建て方工事も小型のクレーン等を用いて施工現場周辺に存在する障害物に干渉したり、風の影響を受けて振れたりすることなく一連の現場作業を容易かつ安全に行うことができる。
【0010】
しかも、下部の金属製ユニット躯体及び上部の金属製ユニット躯体の壁構造体の上下端部同士を一体に固定接合して所定高さ及び所定容積に構築された地下室内部で、壁構造体の高さ方向の中間部またはほぼ中間部の上方には外方へ膨出した出窓状の空間部が形成され、この空間部の存在によって、内部容積の割に居住者に対して十分な広がり感、開放感を与えることができる。また、壁構造体の中間部の上方に形成される出窓状の空間部を、例えばテレビ台や各種物品の収納部、本棚などに多目的利用することができる。加えて、上部の金属製ユニット躯体は、該躯体における少なくとも相対向位置する2つの上半部壁構造体が外方へ膨出した構造形態であるので、ユニット型金属製地下室の全外周部に、その外周面が面一又はほぼ面一となる状態で補強用コンクリート壁を形成するだけで、地下水位の上昇による浮力に対抗するに十分なカウンターウェイトを従来に比べて少ないコンクリート材料の使用量で形成することが可能で、それだけ地下室の浮き上がり防止対策に要する費用を低減することができる。
【0011】
さらに、上下二つの金属製ユニット躯体の構造形態の違いによって、躯体全体の重心位置を地下室の高さ方向の中間部よりも下方へ移動させて低重心の地下室とすることができるので、当該地下室を上部建物の直下位置に構築した状態で地震などが発生したとき、地下室自身の耐震性はもとより上部建物自体の揺れも抑制して耐震性の向上にも資することができるという効果を奏する。
【0012】
特に、本発明に係るユニット型金属製地下室において、請求項2に記載のように、前記下部の金属製ユニット躯体を、その下端部においてコンクリート基礎にホールインアンカーを介して固定接合することにより、重心位置をより低くして耐震性の一層の向上を図ることができる。
【0013】
また、本発明に係るユニット型金属製地下室において、請求項3に記載のように、前記下部の金属製ユニット躯体における下半部壁構造体の金属製外板と内装材との間に形成される空間を通じて給入した外気を地下室内の底部付近に吹き出すとともに、前記上部の金属製ユニット躯体における天井構造体の金属製外板と内装材との間に形成される空間を通じて地下室内の空気を外部に排出する強制給排気手段を備えることが望ましい。
このような強制給排気手段を設けることにより、壁構造体内部に形成の空間に外気を通風させて湿度の減少を図れるとともに、その外気をショートサーキットさせることなく地下室内の底部付近から吹き出して上昇させ天井構造体内部の空間を通して外部に排出させるといった良好かつ万遍ない換気作用が得られ、地下室内の居住性を快適なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係るユニット型金属製地下室の完工状態での縦断正面図、図2は図1のX−X線での縦断側面図である。このユニット型金属製地下室Aは、天井構造体1及び地下室Aの高さ方向のほぼ中間部よりも上方に位置する4つの上半部壁構造体2Uを工場製作の段階で組立固定して梁間方向にラーメン構造で、かつ、桁行方向に耐震パネル構造として下向き開放の略コ字型に構成された上部の金属製ユニット躯体3と、床構造体4及び地下室Aの高さ方向のほぼ中間部よりも下方に位置する4つの下半部壁構造体2Dを工場製作の段階で組立固定して梁間方向にラーメン構造で、かつ、桁行方向に耐震パネル構造として上向き開放の略コ字型に構成された下部の金属製ユニット躯体5とからなる。
【0015】
前記上部の金属製ユニット躯体3は、図3及び図4に示すように、その4つの上半部壁構造体2Uが、図5及び図6に示す下部の金属製ユニット躯体5における4つの下半部壁構造体2Dよりもそれぞれ外方へ等しい距離lだけ膨出した位置に配置され、それに伴って上部の金属製ユニット躯体3における天井構造体1の直角二辺の寸法L1a,L1bが下部の金属製ユニット躯体5における床構造体4の直角二辺の寸法L4a,L4bよりも前記膨出距離lに相当する寸法だけ大きく、即ち、L1a=L4a+l,L1b=L4b+lに構成されている。
【0016】
前記上部の金属製ユニット躯体3における天井構造体1の一部には、地下室A内への出入口6が設けられているとともに、4つの上半部壁構造体2Uの下端部には、それぞれ前記膨出距離lに相当する長さで内方へ向けて水平に延出する水平延長構造体7が固定連結されており、これら上部,下部の金属製ユニット躯体3,5をトラック等により施工現場に搬入し、そのうち下部の金属製ユニット躯体5を、掘削穴底部に敷均された栗石8上に形成されたコンクリート製基礎9上に設置し、その下端部においてホールインアンカー10を介して前記コンクリート製基礎9に据付固定するとともに、この下部の金属製ユニット躯体5上に上部の金属製ユニット躯体3を積み重ね、かつ、この上部の金属製ユニット躯体3における前記水平延長構造体7の内端部を前記下部の金属製ユニット躯体5における4つの下半部壁構造体2Dの上端部に固定接合することにより、梁間方向にはラーメン構造で、かつ、桁行方向には耐震パネル構造であって、その上半部全周には外方へ膨出した出窓状の空間部aが形成された所定高さ、具体的には全高Hが2800mmで所定容積のユニット型金属製地下室Aが現場施工にて構築されている。
【0017】
そして、上記のように構築されたユニット型金属製地下室Aの上部,下部の金属製ユニット躯体3,5の全外周部には、現場打ちコンクリートにより各辺の外周面が面一になる状態で、つまり、下部の金属製ユニット躯体5側が厚肉となる状態で前記コンクリート製基礎9に連なるように無筋あるいは鉄筋入りの補強用コンクリート壁11が被覆形成されており、この補強用コンクリート壁11によって、各金属製ユニット躯体3,5の地下埋設部分に対する防錆防食処理が施されているとともに、該補強用コンクリート壁11のうち、下部の金属製ユニット躯体5の外周を被覆する厚肉のコンクリート壁部分11aが、地表面から約1500mmを上限とする地下水位の上昇に伴う浮力に十分に対抗して地下室Aの浮き上がりを防止するカウンターウェイトに構成されている。また、下部の金属製ユニット躯体5における床構造体4の後述する芯材鉄骨間には浮き上がり防止用のカウンターウェイトの一部となるコンクリート12が前記補強用コンクリート壁11と同時に打設形成されている。
【0018】
前記上部の金属製ユニット躯体3における天井構造体1、上半部壁構造体2U及び水平延長構造体7、並びに、下部の金属製ユニット躯体5における下半部壁構造体2Dは、図7にその要部の断面を示すように、同一面上に所定間隔を隔てて並列配置されたチャンネルやH型鋼などの複数の芯材鉄骨13の各外側フランジ部13aに鋼板等の金属製外板14を固定して構成されているとともに、前記複数の芯材鉄骨13の各内側フランジ部13bに木製下地15を介して天井材や壁材、棚材などの内装板16を固定し、かつ、内装板16と金属製外板14との間の空間Bで芯材鉄骨13を取り囲む箇所及び金属製外板14の内面に発泡ウレタン等の発泡性樹脂材料の現場吹き付けによる断熱層17が形成されている。
【0019】
また、下部の金属製ユニット躯体5における床構造体4は、図7に示したと同様に、同一面上に所定間隔を隔てて並列されたチャンネルやH型鋼などの複数の芯材鉄骨13の外側フランジ部13aに鋼板等の金属製外板14を固定して構成されているとともに、前記コンクリート12の表面上に分散配置したレベルアジャスター(図示省略する。)を介して水平レベル調整可能な状態でパーティクルボードや合板など内装材としてのフローリング材19が敷設固定されている。
【0020】
さらに、図1の仮想線に示すように、下部の金属製ユニット躯体5には、上部の金属製ユニット躯体3における上半部壁構造体2U、水平延長構造体7及び下部の金属製ユニット躯体5における下半部壁構造体2Dの金属製外板14と内装板16との間に形成される空間Bを通じて給気カウンターローファン20により給入した外気を地下室A内の底部、すなわち、フローリング材19の表面近くで吹き出す給気グリル21が取付けられているとともに、上部の金属製ユニット躯体3には、前記給気グリル21から吹き出されて地下室A内を上昇する室内空気を天井構造体1の金属製外板14と内装板16との間に形成される空間Bを通じて排気カウンターローファン22及び排気ダクト23により外部に排出する排気グリル24が取付けられており、これによって、壁構造体2U,2D内部の空間Bに外気が通風されて湿度の減少が図れるとともに、その外気をショートサーキットさせることなく地下室A内の底部付近から吹き出して上昇させ天井構造体1内部の空間Bを通して外部に排出させるといった強制換気作用が得られるように構成している。
【0021】
以上のように構築し構成されるユニット型金属製地下室Aは、工場製作の段階でその高さ方向の中間部またはほぼ中間部で上部、下部の二つのユニット躯体3,5に分割されているので、完工された地下室Aの天井高を居住性がよくなるように高く設定したとしても、上下二つのユニット躯体3,5自体の背丈は小さいために、施工現場までの運搬経路中に道路運搬上の制限高さの存在にかかわらず小型の運搬車を用いて現場に容易に搬入することができるとともに、施工現場での荷卸しや建て方工事も小型のクレーン等を用いて施工現場周辺に存在する障害物に干渉したり、風の影響を受けて振れたりすることなく一連の現場作業を容易かつ安全に行うことができる。
【0022】
また、下部の金属製ユニット躯体5における下半部壁構造体2Dの上端部と上部の金属製ユニット躯体3における上半部壁構造体2Uの下端部に連なる水平延長構造体7の内端部を一体に固定接合することにより、地下室A内部の高さ方向の中間部またはほぼ中間部の上方には外方へ膨出した出窓状の空間部aを形成することが可能で、この出窓状空間部aの存在によって、内部容積の割に居住者に対して十分な広がり感、開放感を与えることができるとともに、その出窓状の空間部aを、例えばテレビ台や各種物品の収納部、本棚などとして多目的に利用することができる。
【0023】
また、上部の金属製ユニット躯体3は、該躯体3における4つの上半部壁構造体2Uが外方へ膨出した構造形態であるので、ユニット型金属製地下室Aの全外周部に、その外周面が面一又はほぼ面一となる状態で補強用コンクリート壁11を形成するだけで、下部の金属製ユニット躯体5下部の金属製ユニット躯体5外周に形成される厚肉のコンクリート壁部分11aが地下水位の上昇による浮力に対抗するに十分なカウンターウェイトとして働き、従来に比べて少ないコンクリート材料を使用して地下室Aの浮き上がり防止対策に要する費用の低減を図ることができる。
【0024】
さらに、上部、下部の二つの金属製ユニット躯体3,5の構造形態の違いによって、躯体全体の重心位置を地下室Aの高さ方向の中間部よりも下方へ移動させて低重心化することができるので、当該地下室を上部建物の直下位置に構築した状態で地震などが発生したとき、地下室自身の耐震性はもとより上部建物自体の揺れも抑制して耐震性の向上にも資することができる。
【0025】
さらにまた、上述したような強制換気作用が得られる強制給排気手段を設けることによって、湿度の減少を図れるとともに、外気をショートサーキットさせることなく地下室内の底部付近から吹き出して上昇させ天井構造体内部の空間を通して外部に排出させるといった良好かつ万遍ない換気作用が得られ、地下室内の居住性を快適なものとすることができる。
【0026】
なお、上記実施の形態では、上部の金属製ユニット躯体3における4つの上半部壁構造体2Uの全てを下部の金属製ユニット躯体5における4つの上半部壁構造体2Dよりもそれぞれ外方へ等しい距離lだけ膨出した位置に配置して地下室A内部の全周囲に出窓状の空間部aを形成したものについて説明したが、図8に示すように、相対向位置する2つの上半部壁構造体2Uのみを外方へ膨出した位置に配置して地下室A内部の一方の相対向する両側にのみ出窓状の空間部aを形成したものでもよい。
【0027】
また、図9に示すように、上部の金属製ユニット躯体3における4つの上半部壁構造体2Uを上記実施の形態で示すものよりも上方に延長して背丈の高いものに構成し、その延長上半部壁構造体部分2uが地表面GLよりも突出するように埋設するとともに、この突出する延長上半部壁構造体部分2uに窓24を形成してもよい。
【0028】
この場合は、前記窓24が出窓状の空間部aに形成されるために、この窓24を緊急脱出口として活用できるとともに、通常は採光性・通風性を確保でき、居住性を一段と高めることができる。
【0029】
また、上記実施の形態では、上部、下部の二つの金属製ユニット躯体3,5が共にその梁間方向にも桁行方向にも一体化されたもので説明したが、図3,4及び図5,6中の点線で示した位置で二分割して製作し、施工現場で縦断面形状略コ字型に組立固定するようにしてもよい。この場合は、運搬や現場での荷卸しなどをより一層容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】 本発明に係るユニット型金属製地下室の実施の形態を完工状態で示す縦断正面図である。
【図2】 図1のX−X線での縦断側面図である。
【図3】 上部の金属製ユニット躯体の底面図である。
【図4】 上部の金属製ユニット躯体の平面図である。
【図5】 下部の金属製ユニット躯体の底面図である。
【図6】 上部の金属製ユニット躯体の平面図である。
【図7】 上部、下部の金属製ユニット躯体における天井及び壁構造体の構成を示す要部の拡大縦断面図である。
【図8】 本発明に係るユニット型金属製地下室の他の実施の形態を示す上部の金属製ユニット躯体の底面図である。
【図9】 本発明に係るユニット型金属製地下室のもう一つの実施の形態を完工状態で示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 天井構造体
2U 上半部壁構造体
2D 下半部壁構造体
3 上部の金属製ユニット躯体
4 床構造体
5 下部の金属製ユニット躯体
9 コンクリート製基礎
10 ホールインアンカー
11 補強用コンクリート壁
13 芯材鉄骨
14 金属製外板
16 内装板(内装材)
A ユニット型金属製地下室
B 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一面上に所定間隔を隔てて並列配置させた複数の芯材鉄骨の外側に金属製外板を固定してなる天井構造体及び地下室の高さ方向の中間部又はほぼ中間部よりも上方部に位置し前記天井構造体と同様に複数の芯材鉄骨及び金属製外板からなる4つの上半部壁構造体を組立固定して梁間方向にラーメン構造で、かつ、桁行方向に耐震パネル構造の縦断面形状が下向き開放略コ字型に構成された上部の金属製ユニット躯体における前記上半部壁構造体の下端部と、前記天井構造体と同様に複数の芯材鉄骨及び金属製外板からなる床構造体及び地下室の高さ方向の中間部又はほぼ中間部よりも下方部に位置し前記天井構造体と同様に複数の芯材鉄骨及び金属製外板からなる4つの下半部壁構造体を組立固定して梁間方向にラーメン構造で、かつ、桁行方向に耐震パネル構造の縦断面形状が上向き開放の略コ字型に構成された下部の金属製ユニット躯体における前記下半部壁構造体の上端部とを一体に固定接合することにより、所定高さ及び所定容積に構築されるユニット型金属製地下室であって、
前記上部の金属製ユニット躯体における4つの上半部壁構造体のうち、少なくとも相対向位置する2つの上半部壁構造体は、下部の金属製ユニット躯体における4つの下半部壁構造体のうち、少なくとも相対向位置する2つの下半部壁構造体よりもそれぞれ外方へ膨出するように構成されており、
また、構築されたユニット型金属製地下室の全外周部には、その外周面が面一又はほぼ面一となる状態で補強用コンクリート壁が形成されていることを特徴とするユニット型金属製地下室。
【請求項2】
前記下部の金属製ユニット躯体は、その下端部においてコンクリート基礎にホールインアンカーを介して固定接合されている請求項1に記載のユニット型金属製地下室。
【請求項3】
前記下部の金属製ユニット躯体における下半部壁構造体の金属製外板と内装材との間に形成される空間を通じて給入した外気を地下室内の底部付近に吹き出すとともに、前記上部の金属製ユニット躯体における天井構造体の金属製外板と内装材との間に形成される空間を通じて地下室内の空気を外部に排出する強制給排気手段が備えられている請求項1または2に記載のユニット型金属製地下室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−261200(P2008−261200A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128609(P2007−128609)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(506380994)
【出願人】(506355062)
【Fターム(参考)】