説明

ユニット建物の防振構造

【課題】間取り調整用の隙間に隣接して防振部材を配置する際のユニット建物の防振構造を提供する。
【解決手段】建物ユニットを上下左右に複数、隣接させて構成されるユニット建物であるとともに、建物ユニット間に間取り調整用の隙間101が形成されるユニット建物の防振構造である。
そして、隙間を挟んだ両側における上階建物ユニットの床梁12,12と下階建物ユニットの天井梁13,13との間にそれぞれ配置される防振プレート3,3と、隙間を挟んだ両側の床梁の上面間に架け渡される上面部41と、隙間を挟んだ両側の天井梁の下面間に差し渡される下面部42と、上面部と下面部とを隙間において接続させる接続部43とを有する接続治具4とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の建物ユニットを上下左右に隣接させて構成されるユニット建物の防振構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場で製作された複数の建物ユニットを縦、横に積み重ねてユニット建物を構築するに際して、上下に積み重ねる建物ユニットの床梁と天井梁との間、又は左右に隣接させる建物ユニットの柱間に防振部材を介在させることが知られている(特許文献1−3など参照)。
【0003】
これらの文献に記載されたユニット建物においては、床梁や柱が撓むことによって発生する振動を抑えるために、梁間や柱間に鋼板やゴムと鋼板の積層構造の防振部材を介在させて、振動の発生を抑えるようにしている。
【0004】
一方、特許文献4には、建物ユニット間に間取り調整用の隙間を設けて連結させることによって、建物ユニットの倍数の制限を越えて建築面積を広げることができるユニット建物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−15785号公報
【特許文献2】特開2008−121318号公報
【特許文献3】特開2002−194817号公報
【特許文献4】特開2009−174247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1−3に開示されたユニット建物は、建物ユニット間に実質的な隙間を設けることなく近接させて構築されており、その僅かな隙間周辺に防振部材を配置する構造が開示されているに過ぎない。他方、特許文献4に開示されているような間取り調整用の隙間が形成されたユニット建物に防振部材を配置する構成について記載された先行技術文献は見当たらない。
【0007】
そこで、本発明は、間取り調整用の隙間に隣接して防振部材を配置する際のユニット建物の防振構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明のユニット建物の防振構造は、梁材と柱材とによって骨組みが形成される建物ユニットを上下左右に複数、隣接させて構成されるユニット建物であるとともに、平面視で少なくとも一箇所の建物ユニット間に間取り調整用の隙間が形成されるユニット建物の防振構造であって、前記隙間を挟んだ両側における上階建物ユニットの床梁と下階建物ユニットの天井梁との間にそれぞれ配置される平板型防振部材と、前記隙間を挟んだ両側の前記床梁の上面間に架け渡される上面部と、前記隙間を挟んだ両側の前記天井梁の下面間に差し渡される下面部と、前記上面部と前記下面部とを前記隙間において接続させる接続部とを有する接続治具とを備え、前記平板型防振部材の上下方向の投影範囲内に前記上面部及び前記下面部の一部が配置されることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記上面部又は前記下面部の少なくとも一方には、前記隙間の幅方向に延設された補強リブが形成される構成にするのが好ましい。また、前記補強リブの少なくとも一部が、前記隙間を挟んだ前記床梁間又は前記天井梁間に収容される構成とすることもできる。
【0010】
さらに、別のユニット建物の防振構造は、梁材と柱材とによって骨組みが形成される建物ユニットを上下左右に複数、隣接させて構成されるユニット建物であるとともに、平面視で少なくとも一箇所の建物ユニット間に間取り調整用の隙間が形成されるユニット建物の防振構造であって、前記隙間を挟んだ両側における上階建物ユニットの床梁と下階建物ユニットの天井梁との間にそれぞれ配置される平板型防振部材と、前記隙間を挟んだ前記床梁間又は前記天井梁間の少なくとも一方に介在されて両端部がそれぞれの床梁又は天井梁に固定される束部材とを備え、前記平板型防振部材の上下方向の投影範囲に近接して前記束部材が配置されることを特徴とする。
【0011】
また、梁材と柱材とによって骨組みが形成される建物ユニットを上下左右に複数、隣接させて構成されるユニット建物であるとともに、平面視で少なくとも一箇所の建物ユニット間に間取り調整用の隙間が形成されるユニット建物の防振構造であって、前記隙間を挟んだ両側における上階建物ユニットの床梁と下階建物ユニットの天井梁との間にそれぞれ配置される平板型防振部材と、前記隙間を挟んだ両側の前記床梁の上面にそれぞれ固定される係合部と、それらの係合部からそれぞれ垂下されて前記隙間に面する前記床梁及び前記天井梁に固定される直立面部と、それらの直立面部の下部間を繋ぐ底面部とを有する接続金具とを備え、前記平板型防振部材の上下方向の投影範囲に近接して前記接続金具が配置されることを特徴とする。
【0012】
そして、上記いずれかに記載のユニット建物の防振構造において、前記隙間に隣接しない上階建物ユニットの床梁と下階建物ユニットの天井梁との間に、上方に向けた突出部が形成された凸型防振部材を介在させる構造であって、前記凸型防振部材は、前記突出部の一部が前記天井梁から側方に張り出すように取り付けられるとともに、その張り出した部分によって前記床梁に接続される床小梁が支持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このように構成された本発明のユニット建物の防振構造は、間取り調整用の隙間を挟んだ両側の上側建物ユニットの床梁と下階建物ユニットの天井梁との間にそれぞれ平板型防振部材が配置される。また、それらの上下方向の投影範囲内に、平板型防振部材を間接的に挟持させるための接続治具の一部が配置される。
【0014】
このため、隙間としては比較的に広い間取り調整用の隙間に隣接している場所にも、防振部材を配置することができる。特に、接続治具の上面部及び下面部の一部を平板型防振部材の投影範囲に重ねることで、床梁と天井梁との間隔が広がるような変形の発生を抑えて、平板型防振部材を機能させ続けることができる。
【0015】
また、上面部又は下面部に隙間の幅方向に延設される補強リブを設ける場合は、曲げ剛性を高めることができるので、隙間が広くなっても板厚を薄くしてコストを削減することができる。
【0016】
さらに、補強リブを隙間の床梁間に収容させる構成であれば、補強リブを高くしても床梁の上方に突出する高さを抑えることができ、上階の床面の構築に影響を与えることがない。
【0017】
また、隙間に束部材を介在させる構成とすれば、隙間に面した床梁や天井梁が隙間に向かって倒れこむような変形を抑えることができる。
【0018】
さらに、隙間を挟んだ両側の床梁と天井梁とに固定されるとともに、それらを繋ぐ接続金具を平板型防振部材に近接して配置することで、振動時に平板型防振部材が床梁の下面や天井梁の上面から離隔することを防ぐことができる。
【0019】
また、間取り調整用の隙間に隣接しない箇所の床梁と天井梁との間には、凸型防振部材を介在させるようにすれば、簡易な構造の防振部材を有効に活用することによって、ユニット建物全体において床振動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態のユニット建物の防振構造の構成を説明する分解斜視図である。
【図2】防振部材の配置箇所を説明するための1階の平面図である。
【図3】建物ユニットの構成を説明する斜視図である。
【図4】間取り調整用の隙間周辺のユニット建物の防振構造の構成を説明する断面図である。
【図5】凸型防振部材の構成を説明する斜視図である。
【図6】凸型防振部材を介在させたユニット建物の防振構造の構成を説明する断面図である。
【図7】実施例1の間取り調整用の隙間周辺のユニット建物の防振構造の構成を説明する断面図である。
【図8】実施例2の間取り調整用の隙間周辺のユニット建物の防振構造の構成を説明する断面図である。
【図9】実施例3の間取り調整用の隙間周辺のユニット建物の防振構造の構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態のユニット建物の防振構造の構成を説明するための分解斜視図、図2は防振部材の配置箇所を説明するための1階の平面図、図3はユニット建物を構成する建物ユニット1を説明する斜視図である。
【0022】
まず、図2,3を参照しながらユニット建物の構成から説明すると、このようなユニット建物は、工場で製作される複数の建物ユニット1,1A,1Bを現場に搬送し、横方向に並べて1階部を構築するとともに、それらの(下階)建物ユニット1A,1Bの上に別の(上階)建物ユニット1を積み上げることで上層階を構築していく。
【0023】
このようにして上下左右に複数の建物ユニット1を隣接配置して構築されるユニット建物の中から、間取り調整用の隙間101に隣接して配置される建物ユニット1A,1B周辺を上から見た平面図が図2である。
【0024】
この隙間101は、20−30cm程度の広さに形成され、通常、建物ユニット1,1を左右に隣接させた場合に発生してしまう数mmから十数mmの隙間に比べて広い間隔になる。
【0025】
そして、ユニット建物を構成する建物ユニット1(1A,1B)は、図3に示すように、四隅に配置される柱材としての柱11,・・・と、その柱11,・・・の下端間に差し渡される梁材としての床梁12,12A,・・・と、柱11,・・・の上端間に架け渡される梁材としての天井梁13,13A,・・・とによってボックス形のラーメン構造体(骨組構造体)に形成される。
【0026】
ここで、柱11は角形鋼管、床梁12及び天井梁13は断面視コ字形の溝形鋼材によって形成されており、柱11と床梁12(12A)及び天井梁13(13A)は接合枠材14を介して接合される。
【0027】
また、天井梁13,13間には、平行に天井根太16,・・・が架け渡され、天井根太16,・・・の下面には天井板18が張り付けられる。さらに、床梁12,12間には、平行に床小梁15,・・・が差し渡され、床小梁15,・・・の上面には床板17が張り付けられる。ここで、床小梁15は、図3,4に示すように取付金具15aを介して床梁12に固定される。
【0028】
また、図2に示すように、間取り調整用の隙間101には、建物ユニット1A,1B間を連結させる連結部材2,2が配置される。この連結部材2は、柱11と天井梁13の接合部の近傍の対向する天井梁13,13間に配置される。
【0029】
詳細には、連結部材2は、隙間101に面する接合枠材14,14間に架け渡されるので、一対の並設された建物ユニット1A,1B間の隙間101においては、天井梁13の長手方向の両端付近の2箇所に連結部材2,2が配置される。そして、連結部材2,2間には、天井梁13の長手方向に沿って空間が形成される。
【0030】
この連結部材2は、例えば断面視コ字状の溝形鋼材と、その溝形鋼材の両側の開口を塞ぐ形状に鋼板によって成形された一対のエンドプレートとによって主に構成される。そして、ボルトを使って連結部材2のエンドプレートを接合枠材14及び天井梁13に接合する。
【0031】
そして、図2に示すように、隙間101を挟んだ両側の天井梁13,13の長手方向の略中央に、平板型防振部材としての防振プレート3,3をそれぞれ配置する。
【0032】
この防振プレート3は、本実施の形態のユニット建物の防振構造を構成する平板状の防振部材である。この防振プレート3には、一般構造用圧延鋼材などの鋼板、鋼板と粘弾性体との積層板などが使用できる。また、積層板の粘弾性体には、ゴム系、アスファルト系、シリコン系、アクリル系などの材料が使用できる。
【0033】
また、防振プレート3は、図1に示すように、1階の建物ユニット1A(1B)の天井梁13の上面と、2階の建物ユニット1の床梁12の下面との間に介在させる。
【0034】
この防振プレート3は、天井梁13の上面を形成するフランジの幅と同程度の幅の帯板であり、上下に積み重ねられる天井梁13と床梁12との間隙には配置されるが、隙間101には配置されない。
【0035】
また、この防振プレート3には、位置合わせ用の目印穴3a,3aが2箇所に設けられている。この目印穴3a,3aは、天井梁13の上フランジに開けられた穴(図示省略)などの梁側の目印に合わせるためだけに使用しても良いが、この目印穴3a,3aにボルトなどを通して天井梁13に防振プレート3を固定しても良い。
【0036】
そして、図1,4に示すように、防振プレート3,3の上下方向の投影範囲内に収まるように接続治具4を配置する。この接続治具4は、隙間101を挟んだ両側の床梁12,12の上面間に架け渡される上面部41と、隙間101を挟んだ両側の天井梁13,13の下面間に差し渡される下面部42と、上面部41と下面部42とを隙間101において接続させる接続部43とを主に有している。
【0037】
この接続治具4は、本実施の形態では、防振プレート3の長手方向の略中央の真上方向に上面部41の端部が配置され、その上面部41の真下方向に下面部42の端部が配置される。
【0038】
この上面部41は、帯板状の底板部41bと、底板部41bの両側縁から上方に向けて壁状に突出される補強リブとしての上向きリブ41a,41aと、底板部41bの長手方向の略中央に穿孔される中央孔41cと、底板部41bの長手方向の両端付近に穿孔される取付孔41d,41dとによって主に構成される。
【0039】
この底板部41bは、隙間101の幅にその両側の床梁12,12のフランジの幅を足した長さに成形される。また、取付孔41d,41dは、床梁12の上フランジに設けられた孔121の位置に合わせて穿孔される。そして、上面部41の取付孔41dと床梁12の孔121にドリルねじ41eを螺入して締め付けることで上面部41を床梁12に固定する。
【0040】
一方、下面部42は、底板部41bと上下方向の投影形状が略一致する長方形に鋼板などが成形された帯板42aと、帯板42aの長手方向の両端付近に貼り付けられるブチルテープ42b,42bとによって主に構成される。
【0041】
このブチルテープ42bは、両面に粘着性を帯びた加硫ゴムシートで、下面部42を天井梁13の下面(下フランジ)に密着させる機能と、振動を吸収する緩衝材としての機能とを有している。
【0042】
また、下面部42の略中央には接続部43としての長ボルト43aが取り付けられる。この長ボルト43aは、先端が上面部41の中央孔41cに挿通される。
【0043】
そして、底板部41bより上方に突出した長ボルト43aのネジ溝には、座金43cとナット43bが装着される。このナット43bを締め付けると、上面部41は床梁12,12に押し付けられ、下面部42は天井梁13,13に押し付けられる。すなわち、隙間101を挟んで配置された防振プレート3,3周辺が接続治具4によって連結されて、一体に変動する構造となる。
【0044】
一方、間取り調整用の隙間101に隣接しない箇所の床梁12と天井梁13との間には、図2,5,6に示すように、凸型防振部材としての凸型防振プレート5を介在させる。
【0045】
この凸型防振プレート5は、図5に示すように、長方形の鋼板の略中央を面外方向に突出させた突出部51と、その両側に残る平坦部52,52と、突出部51の内空側(裏側)に差し渡される補強板53と、突出部51の側縁にそりよりも突出量が高くなるように取り付けられる支持板56とから主に構成される。
【0046】
この突出部51は、天井梁13の上フランジに取り付けた際に上方に向けて突出する部分で、本実施の形態では断面視台形状で説明するが、これに限定されるものではなく、断面視半円状、断面視矩形状、ドーム状などいずれの形状に成形されていてもよい。
【0047】
また、平坦部52には、突出部51の突出方向とは反対となる下方に向けて延伸されるボルト部57aが取り付けられている。このボルト部57aを天井梁13の上フランジの固定孔57eに挿し込み、平座金57c、ばね座金57d及びナット57bを装着して締め付けることで、凸型防振プレート5を天井梁13に容易に固定することができる。
【0048】
また、突出部51の上面と床梁12の下面との間には、図6に示すようにブチルテープなどの緩衝材58を介在させる。さらに、突出部51の裏側の補強板53の上下に空いた空間には、シリコン樹脂などの充填材54を充填する。ここで、補強板53は、突出部51の上方から作用する鉛直荷重によって突出部51が広がって変形するのを抑える機能を有している。
【0049】
そして、天井梁13の上フランジから張り出された位置にある支持板56は、図6に示すように床小梁15の下面に緩衝材55を介して当接される。この緩衝材55には、ブチルテープなどが使用できる。
【0050】
また、この支持板56の上面は、床小梁15の下面が配設される予定の高さより上方に配置可能な高さに形成される。このように形成することで、床小梁15の下面に当接させた際に、緩衝材55を介して支持板56が押し下げられ、突出部51が弾性変形することになる。そして、弾性変形させることで、支持板56の床小梁15に対する密着性を高めることができる。なお、緩衝材55の厚さ及び変形量によっては、支持板56の上面の高さをこれよりも低くすることができる。
【0051】
次に、本実施の形態のユニット建物の防振構造の作用について説明する。
【0052】
このように構成された本実施の形態のユニット建物の防振構造は、図4に示すように、間取り調整用の隙間101を挟んだ両側の上側建物ユニットの床梁12,12と下階建物ユニットの天井梁13,13との間にそれぞれ防振プレート3,3が配置される。
【0053】
また、図1に示すように、防振プレート3,3の上下方向の投影範囲の略中央に接続治具4が配置される。すなわち、防振プレート3,3の長手方向の略中央を、防振プレート3の長手方向に略直交する方向に向けた上面部41及び下面部42の両端部によって上方と下方から間接的に押え付ける。
【0054】
このため、隙間としては比較的に広い間取り調整用の隙間101に隣接している場所にも、接続治具4を使って防振プレート3,3を取り付けることができる。
【0055】
また、接続治具4の上面部41及び下面部42によって防振プレート3,3の略中央を間接的に挟持しているので、床梁12の下面と天井梁13の上面との間隔が広がるような変形が防振プレート3の周辺で起きにくく、床振動などが発生した際に防振プレート3を床梁12に密着させて機能させ続けることができる。
【0056】
すなわち、上階建物ユニットの床を走ったり、物を落下させたりして鉛直荷重が床面に作用すると、床小梁15や床梁12が撓むことになる。この撓みは、床梁12であれば、長手方向の略中央が最も大きくなる。このような挙動に対して、床梁12の長手方向の略中央に防振プレート3を配置し、接続治具4によって床梁12とその下の下階の天井梁13との間で挟持させることで、床梁12の振動や振動伝達機能を抑えることができる。
【0057】
また、上面部41に隙間101の幅方向に延設される上向きリブ41a,41aを設けることで、曲げ剛性を高めることができるので、隙間101が広くなっても底板部41bの板厚を過剰に厚くしなくても良く、コストを削減することができる。
【0058】
さらに、間取り調整用の隙間101に隣接しない箇所の床梁12と天井梁13との間には、凸型防振プレート5を介在させる。この凸型防振プレート5には、床小梁15を支持させる支持板56が取り付けられており、上階で床振動が発生すると、その振動は床小梁15から緩衝材55で減衰された後に支持板56に伝達される。
【0059】
また、支持板56は、突出部51の天井梁13から張り出された部分に取り付けられており、突出部51は弾性変形した状態で支持板56を介して床小梁15を支持しているため、床小梁15が上下に振動しても常に支持板56が床小梁15に接触した状態が続き、振動をさらに減衰させることができる。
【0060】
このように緩衝材55による減衰と、突出部51の弾性変形を利用した減衰とによって、下階の天井梁13には上階の床振動が減衰されて伝達されるため、下階の騒音のレベルを抑えることができる。
【0061】
そして、このように簡易な構造の凸型防振プレート5を適所に配置することによって、ユニット建物全体において床振動を抑えることができる。また、天井梁13に凸型防振プレート5が取り付けられた下階建物ユニットであれば、その上に上階建物ユニットを積み重ねるだけで防振部材の取り付けが完了するので、従来のように上階の床を開口して作業をおこなう必要がなく、効率的である。
【実施例1】
【0062】
以下、前記した実施の形態のユニット建物の防振構造とは別の形態の実施例1について、図7を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0063】
この実施例1で説明するユニット建物の防振構造を構成する接続治具4Aは、前記実施の形態で説明した接続治具4とは異なり、上面部41Aの補強リブとして隙間101に垂下される垂下リブ411が設けられる。
【0064】
この接続治具4Aの上面部41Aは、図7に示すように、長手方向の両端部における両側縁には補強リブとして上方に突出される端リブ412,412が設けられ、隙間101を跨ぐ端リブ412,412間には垂下リブ411,411が設けられる。
【0065】
この垂下リブ411は、隙間101の幅よりも短い長さに形成され、端面と床梁12の隙間101に面する側面との間に離隔が確保される。よって、接続部43を締め付けた際や、床梁12が振動した際に、垂下リブ411の端面が床梁12,12に押し当てられて変形することがない。
【0066】
また、垂下リブ411は、端リブ412に比べて高く形成されている。このように垂下リブ411を高くすることによって、隙間101に跨る上面部41Aの曲げ剛性を高めることができる。
【0067】
さらに、垂下リブ411を隙間101に垂下させて床梁12,12間に収容させる構成であれば、垂下リブ411を高くしても床梁12の上方に余計なものが突出しないので、上階の床面の構築に影響を与えることがない。
【0068】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0069】
以下、前記した実施の形態及び実施例1のユニット建物の防振構造とは別の形態の実施例2について、図8を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0070】
この実施例2では、上述した接続治具4,4Aに代えて隙間101に束部材を介在させる構成について説明する。すなわち、図8に示すように、隙間101を挟んだ床梁12,12間に介在される上部束部材としての鋼製束6Aと、隙間101を挟んだ天井梁13,13間に介在される下部束部材としての鋼製束6Bとが配置される。
【0071】
鋼製束6A,6Bは、中央に配置される筒状のターンバックル61と、ターンバックル61の右ネジが刻設された穴に一端が捩じ込まれる正回転ボルト62と、ターンバックル61の左ネジが刻設された穴に一端が捩じ込まれる逆回転ボルト63と、正回転ボルト62及び逆回転ボルト63の他端にそれぞれ取り付けられるL型金具64,64とによって主に構成される。
【0072】
このL型金具64は、ビス65,・・・によって床梁12又は天井梁13に固定される。すなわち、鋼製束6A,6Bの端部は、床梁12又は天井梁13にL型金具64を介して固定される。
【0073】
また、鋼製束6A,6Bは、中央のターンバックル61を回すことによって長さを伸縮させることができる。このため、隙間101の幅に合わせて鋼製束6A,6Bの長さを調整し、両端を床梁12,12又は天井梁13,13に固定する。
【0074】
このように構成されたユニット建物の防振構造は、両端が床梁12,12又は天井梁13,13に固定された鋼製束6A,6Bが隙間101に介在されているので、隙間101に面した床梁12や天井梁13が隙間に向かって倒れこんだり、隙間101の幅が広がったりするような変形を抑えることができる。
【0075】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0076】
以下、前記した実施の形態及び実施例1,2のユニット建物の防振構造とは別の形態の実施例3について、図9を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0077】
この実施例3では、上述した接続治具4,4A又は鋼製束6A,6Bに代えて隙間101に接続金具7を介在させる構成について説明する。この接続金具7は、図9に示すように、隙間101を挟んだ両側の床梁12,12の上面にそれぞれ固定される係合部71,71と、それらの係合部71,71からそれぞれ垂下されて隙間101に面する床梁12及び天井梁13に固定される直立面部72,72と、それらの直立面部72,72の下部間を繋ぐ底面部73とを有している。
【0078】
この係合部71,71、直立面部72,72及び底面部73は、一枚の帯板状の鋼板を折り曲げ加工することによって形成することができる。すなわち、係合部71の下面を床梁12の上面に当接させて隙間101側で略直角に折り曲げ、床梁12及び天井梁13の側面に沿って垂下させる。そして、天井梁13の中ほどで略直角に折り曲げて反対側の天井梁13に向けて差し渡す。さらに、略直角に折り曲げて天井梁13及び床梁12に沿って立ち上げ、再度、略直角に折り曲げて床梁12の上面に当接させる。
【0079】
このようにして成形される逆Ω状の接続金具7の係合部71及び直立面部72をドリルねじ74,・・・によって床梁12及び天井梁13に固定することで、接続金具7によって隙間101間を連結させることができる。
【0080】
また、防振プレート3,3の長手方向の略中央の隙間101側の面に直立面部72,72が当接されるような配置にし、直立面部72を防振プレート3の上下に位置する床梁12と天井梁13とにドリルねじ74,74でそれぞれ固定することで、振動時に防振プレート3が床梁12の下面や天井梁13の上面から離隔することを防ぐことができる。
【0081】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0082】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0083】
例えば、前記実施の形態では、接続治具4の上面部41に上向きリブ41a,41aを設けたが、これに限定されるものではなく、上向きリブ41a,41aのような補強リブを設けずに底板部41bの板厚を厚くすることで剛性を高めてもよい。他方、下面部42に補強リブを設けて剛性を高めることもできる。
【0084】
また、前記実施の形態では、防振プレート3や凸型防振プレート5などの防振部材を天井梁13の長手方向の略中央にのみ配置したが、これに限定されるものではなく、天井梁13の長手方向に間隔を置いて複数の防振部材を配置することができる。
【0085】
さらに、前記実施の形態では、目印穴3a,3aが穿孔された防振プレート3について説明したが、これに限定されるものではなく、目印穴3a,3aはなくてもよい。
【0086】
また、前記実施の形態では、一方向に延設された隙間101を例示しながら説明したが、これに限定されるものではなく、隙間101に略直交する方向に延設される間取り調整用の隙間(図示省略)がある場合においても同様の防振構造を設けることができる。
【0087】
さらに、前記実施例2では、上部束部材(鋼製束6A)と下部束部材(鋼製束6B)の両方を配置する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、いずれか一方を束部材として配置するだけでもよい。
【符号の説明】
【0088】
1,1A,1B (上階又は下階)建物ユニット
101 (間取り調整用の)隙間
11 柱(柱材)
12,12A 床梁(梁材)
13,13A 天井梁(梁材)
3 防振プレート(平板型防振部材)
4 接続治具
41 上面部
41a 上向きリブ(補強リブ)
42 下面部
43 接続部
5 凸型防振プレート(凸型防振部材)
51 突出部
56 支持板
4A 接続治具
41A 上面部
411 垂下リブ(補強リブ)
412 端リブ(補強リブ)
6A 鋼製束(束部材)
6B 鋼製束(束部材)
7 接続金具
71 係合部
72 直立面部
73 底面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁材と柱材とによって骨組みが形成される建物ユニットを上下左右に複数、隣接させて構成されるユニット建物であるとともに、平面視で少なくとも一箇所の建物ユニット間に間取り調整用の隙間が形成されるユニット建物の防振構造であって、
前記隙間を挟んだ両側における上階建物ユニットの床梁と下階建物ユニットの天井梁との間にそれぞれ配置される平板型防振部材と、
前記隙間を挟んだ両側の前記床梁の上面間に架け渡される上面部と、前記隙間を挟んだ両側の前記天井梁の下面間に差し渡される下面部と、前記上面部と前記下面部とを前記隙間において接続させる接続部とを有する接続治具とを備え、
前記平板型防振部材の上下方向の投影範囲内に前記上面部及び前記下面部の一部が配置されることを特徴とするユニット建物の防振構造。
【請求項2】
前記上面部又は前記下面部の少なくとも一方には、前記隙間の幅方向に延設された補強リブが形成されることを特徴とする請求項1に記載のユニット建物の防振構造。
【請求項3】
前記補強リブの少なくとも一部が、前記隙間を挟んだ前記床梁間又は前記天井梁間に収容されることを特徴とする請求項2に記載のユニット建物の防振構造。
【請求項4】
梁材と柱材とによって骨組みが形成される建物ユニットを上下左右に複数、隣接させて構成されるユニット建物であるとともに、平面視で少なくとも一箇所の建物ユニット間に間取り調整用の隙間が形成されるユニット建物の防振構造であって、
前記隙間を挟んだ両側における上階建物ユニットの床梁と下階建物ユニットの天井梁との間にそれぞれ配置される平板型防振部材と、
前記隙間を挟んだ前記床梁間又は前記天井梁間の少なくとも一方に介在されて両端部がそれぞれの床梁又は天井梁に固定される束部材とを備え、
前記平板型防振部材の上下方向の投影範囲に近接して前記束部材が配置されることを特徴とするユニット建物の防振構造。
【請求項5】
梁材と柱材とによって骨組みが形成される建物ユニットを上下左右に複数、隣接させて構成されるユニット建物であるとともに、平面視で少なくとも一箇所の建物ユニット間に間取り調整用の隙間が形成されるユニット建物の防振構造であって、
前記隙間を挟んだ両側における上階建物ユニットの床梁と下階建物ユニットの天井梁との間にそれぞれ配置される平板型防振部材と、
前記隙間を挟んだ両側の前記床梁の上面にそれぞれ固定される係合部と、それらの係合部からそれぞれ垂下されて前記隙間に面する前記床梁及び前記天井梁に固定される直立面部と、それらの直立面部の下部間を繋ぐ底面部とを有する接続金具とを備え、
前記平板型防振部材の上下方向の投影範囲に近接して前記接続金具が配置されることを特徴とするユニット建物の防振構造。
【請求項6】
前記隙間に隣接しない上階建物ユニットの床梁と下階建物ユニットの天井梁との間に、上方に向けた突出部が形成された凸型防振部材を介在させる構造であって、
前記凸型防振部材は、前記突出部の一部が前記天井梁から側方に張り出すように取り付けられるとともに、その張り出した部分によって前記床梁に接続される床小梁が支持されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のユニット建物の防振構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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