説明

ユビキノールを富化した油脂含有食品

【課題】日常生活で通常の食品と同様に摂取することにより、生体に必要不可欠であるにも関わらず、減少・不足しがちなユビキノールを好適に補給することができる食品を提供する。
【解決手段】ユビキノールを富化した油脂含有食品。ユビキノンを更に含有する油脂含有食品。ユビキノール/ユビキノン=1/2(重量比)以上である油脂含有食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日常生活で通常の食品と同様に摂取することにより、生体に必要不可欠なユビキノールを容易に補給することができる、ユビキノールを富化した油脂含有食品及びその用途、その製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユビキノールは、広く生物界に分布するベンゾキノン誘導体であるユビキノンの2電子還元体である。ユビキノール及びユビキノンは、ミトコンドリア、リソゾーム、ゴルジ体、ミクロソーム、ペルオキシソーム、或いは細胞膜などに局在し、電子伝達系の構成成分としてATP産生賦活、生体内での抗酸化作用、膜安定化に関与している事が知られている生体の機能維持に必要不可欠な物質である。ユビキノンについては、そのビタミン様の機能からビタミンQとも呼ばれており、弱った細胞活性を健康な状態に戻す栄養源として身体を若返らせる成分である。
【0003】
生体内でユビキノールとユビキノンはある種の平衡関係にあり、生体内に吸収されたユビキノール/ユビキノンは、相互に酸化/還元される事が知られている。通常、生体内では、ユビキノールとユビキノンの総重量当たり60〜90%がユビキノールとして存在していると言われている。
【0004】
ユビキノンについては食事によって補給される一方、生体内でも生合成されている事より、正常な状態ではユビキノン及びユビキノールの必要量は充足されているかに見えるが、これらの生体内での含量は加齢や生体が受ける種々のストレスにより顕著に減少することが知られている。
【0005】
例えば、ヒト心臓中ユビキノン含量は、19歳〜21歳の場合110.0μg/gであるのに対し、77歳〜81歳では47.2μg/gと半減することが報告されている(非特許文献1)。また、尿毒症及び慢性の血液透析患者、種々のアレルギー患者の血漿中ユビキノン含量は健常人に比較し減少している(非特許文献2)、(非特許文献3)。高脂血症患者では、LDLコレステロール画分のユビキノン含量が減少している(非特許文献4)。更に、昨今高コレステロール血漿治療剤として汎用されているコレステロール合成阻害剤の投与が、ユビキノンの生合成をも阻害し、組織でのユビキノン濃度の低下をもたらしていることが指摘されている(非特許文献5)。更に、激しい運動や過労時等、生体内で過酸化物が生成しやすい条件下においても、組織内濃度の減少が推定されている。
【0006】
生体内ユビキノール及びユビキノン含量の低下は、その特性上、ATP産生力の減退、心機能の減退、酸化ストレスに対する抵抗性の減退、生体膜の不安定化をもたらし、健康上好ましくない。不足しているユビキノール及びユビキノンを補給することは、ミトコンドリアでのエネルギー産生促進及び生体の抗酸化能を向上し恒常性を維持するために有益である。
【0007】
ユビキノンには、例えば、心疾患、高血圧、肥満、糖尿病、癌、パーキンソン病、歯周病、神経疾患、アレルギー、生殖能、運動能、免疫機能、疲労等の改善や予防の効果が期待されている。
【0008】
例えば、ユビキノン投与による心機能の亢進が報告されており(非特許文献6)、ユビキノンによる鬱血性心不全、狭心症、心筋梗塞などの心疾患の改善効果(非特許文献7、非特許文献8)、動脈硬化・高血圧・糖尿病・癌・歯周病・アレルギーの予防・改善効果(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12)、生殖能向上効果、LDLコレステロールの酸化抑制、腎透析患者での透析回数の減少効果、非特異的免疫能の増強効果等が知られている(非特許文献13、非特許文献14)。また、ユビキノンは既に、鬱血性心不全或いは軽度な心疾患による動悸、息切れ、むくみの治療薬として利用されている。
【0009】
日々の生活において低下する生体内ユビキノール及びユビキノン含量を補うためは適度にユビキノンを補給することが必要である。中高年はもとより、若い人でも、過度の運動時に指摘されるような酸化ストレス障害の場合は、ユビキノール含量が低下するので、ユビキノールを補給して生体の抗酸化能を上げておくことは大切である。生体内のユビキノール含量を向上させるために、外来的にユビキノンを補給する方法が従来より用いられてきた。
【0010】
上記の様に生体の機能維持に必要不可欠で、日々の生活において減少・不足しがちなユビキノンを補給する方法として、錠剤、カプセル剤の形態で医薬として、或いはサプリメントとして補給する方法が既に実施されているが、不足の度合いが軽度で医療の対象とならない健康人、或いは半健康人等にとって、錠剤やカプセル剤として摂取するよりも、通常の食品と同様に摂取する方が簡便である。
【0011】
食品中のユビキノール及びユビキノンの含量は通常測定が容易なユビキノン含量として測定されている。その結果によると、ユビキノンは、肉類、魚類、穀物、野菜、果物、卵など通常の多くの動植物由来食品に広く含有されている事が知られているが、その含量は、牛肉などで30μg/gと高い場合を除き一般に低い。例えば、鶏卵で1.5μg/g、小麦粉パンで1.1μg/g、ジャガイモで0.52μg/g程度でしかなく、通常の食事で摂取出来る量は、1日当たり3〜5mg程度である。更に、ユビキノンの経口摂取時の吸収率は低く、一般的な食品を通常に摂取していたのでは、ユビキノール及びユビキノンを十分に補充する事は容易でない。
【0012】
この様な場合、ユビキノンを富化した食品を利用すれば、生体内でユビキノンとユビキノールは平衡関係にあるので、不足しがちなユビキノール及びユビキノンの補給が容易に可能になると考えられるが、昨今まで、ユビキノール或いはユビキノンを富化した食品の例は殆どない。ユビキノンを含有する食品として、わずかに、特許文献1「血液凝固を阻害する食事療法食品及び医薬」等を認めるのみで、ユビキノールを食品に添加した例はない。特許文献1では、ユビキノン含量の高いコーン胚芽油を用い血液凝固を阻害する食事療法食品が開示されているが、この場合、本来コーン胚芽油が含有しているユビキノンを利用するものであり、ユビキノンを富化する概念は記載されていない。
【0013】
ところで、ユビキノールは、生体内でユビキノンとある種の平衡関係にあることから、これまであまり注目されていなかったが、近年、種々の用途においてユビキノンよりも有効であるとの報告がなされている。例えば、ユビキノールがユビキノンよりも経口吸収性に優れていること(特許文献2)や高コレステロール血症、高脂血症や動脈硬化症の改善・予防に効果があること(特許文献3)が報告されている。しかしながら、ユビキノールを富化した食品の摂取例はこれまで知られていない。
【0014】
このように、生体に必要不可欠であるにも関わらず、減少・不足しがちなユビキノール及びユビキノンを補給することは非常に重要であるが、ユビキノール或いはユビキノンを富化した食品が普及しない又は普及しにくい理由として、以下の点に特に注目すべきである。
【0015】
(1)ユビキノールは経口吸収性が高く、また、ユビキノンよりも有効であるが、ユビキノールは不安定な化合物で、空気酸化を受けて容易にユビキノンに変化するため、ユビキノールとして安定に食品に富化しにくい。
(2)ユビキノンの経口吸収性が低い。
(3)抗酸化作用の源はユビキノールである。即ち、ユビキノールがユビキノンに酸化されるため、酸化ストレス障害においては、ユビキノン不足というよりむしろユビキノール不足となる。
(4)ユビキノンやユビキノールを単に食品に添加した場合、これらを均一に溶解或いは分散し難く、また、一度均一に溶解・分散した場合でも、保存中に析出したり、食品中での局在化が起こったりして、食品の風味、食感及び外観面で問題となる事が多く、満足のいく食品は得難かった。
このような状況下、上記(1)及び(4)における難点が克服されれば、ユビキノールを容易に且つ効率良く補給できる優れた食品を開発・提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平10−45614
【特許文献2】特開平10−109933
【特許文献3】特開平10−330251
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Kalen.A.et al.、Lipids,24,579−584(1989)
【非特許文献2】Triolo、L.,Nephron,66,153−156(1994)
【非特許文献3】Folkers,K.,BioFactors,1,303−306(1988)
【非特許文献4】Kontush,A.,et al.,Atherosclerosis,129,119−126(1997)
【非特許文献5】E.L.Appelkvist et al.,Clinical Investigator,71,S97−S102(1993)
【非特許文献6】Kishi,T.et al.,Clin.Investg.,71,S71−S75(1993)
【非特許文献7】Singh,R.B.et al.,Inter.J.Cardiology,68,23−29(1999)
【非特許文献8】Singh,R.B.et al.,Cardiovasc.Drugs Ther.,12,347−353(1998)
【非特許文献9】Singh,RB.et al.,Atherosclerosis,148,275−282(1999)
【非特許文献10】Digiesi,V.,et al.,Curr.Therap.Res.,51,668−672(1992)
【非特許文献11】紀氏建雄ら、口腔衛生学会誌,43,667−672(1993)
【非特許文献12】Shimura Y.,et al.,臨床と研究,58,1349−1352(1981)
【非特許文献13】Stocker,et al.,Mol.Aspects Med.,18,S85−S103(1997)
【非特許文献14】Lippa,S.,Mol.Aspects Med.,15,S213−S219(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、日常生活で通常の食品と同様に摂取することにより、生体に必要不可欠であるにも関わらず、減少・不足しがちなユビキノールを容易に且つ効率良く補給することができる好ましい食品、更に好ましくは、食品の風味、食感及び外観面で消費者に違和感をも与えない優れた食品及びその用途、その製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、従前よりユビキノールの機能に興味を持ち、ユビキノールを容易に補給できる食品について鋭意検討を続けてきたが、この度、油脂の存在下においては、ユビキノールを酸化から好適に防護できるとともに、食品中に均一に分散できて保存中の局在化を抑えることができるとの知見を得、そして、更に検討を重ねた結果、ユビキノールを富化した油脂含有食品が、ユビキノールを十分に富化できるとともに、ユビキノールの安定性や吸収性も高く、非常に優れた食品となること、更に好ましくは、外観、風味、食感において消費者に違和感を与えない食品にもなりうることをも見出し、本発明を完成させた。外観、風味、食感において消費者に違和感を与えないことは、食品本来の外観、風味、食感を損なわないことを含み、消費者が継続して利用できるメリットが大きい。
【0020】
本発明は、以下に示すユビキノールの特徴・特性を利用した食品、すなわち、ユビキノールを富化した油脂含有食品である。
(1)ユビキノールは無味無臭であり、食品の本来有する風味を損なわない。
(2)ユビキノールはユビキノンよりも経口吸収性が優れている。
(3)ユビキノールはユビキノンと同様の効果を有するのに加えて、ユビキノンよりも、抗酸化作用、高コレステロール血症、高脂血症や動脈硬化症の改善・予防等、種々の有効性がある。
(4)ユビキノールは、油脂の存在下、食品中に均一に分散できて保存中の局在化を抑えることができる。
(5)ユビキノールは空気中で容易にユビキノンに酸化されるが、油脂の存在下、酸化から好適に防護される。そして、更に好ましくは、所望により、以下の特徴・特性をも利用しうる。
(6)ユビキノールは白色の固相或いは無色の液相を形成する。従って、食品の外観(色調)を損ないにくく、無色又は白色〜淡黄色、好ましくは無色又は白色〜乳白色、より好ましくは無色又は白色の食品に対して異なる色合いを付加しない、又は、付加しにくい。
【0021】
即ち、本発明の第1は、ユビキノールを富化した油脂含有食品に関し、好ましい実施態様としては、
(1)更にユビキノンを含有する、
(2)ユビキノール/ユビキノン=1/2(重量比)以上である、
(3)ユビキノール及びユビキノンをユビキノン換算で、油脂含有食品の総重量に対して0.0001〜50重量%富化した、
(4)油脂含有量が0.5重量%以上である、
(5)油脂に対するユビキノールの重量比が1以下である、
(6)油脂含有食品が、食品用油脂類、乳、乳製品類、ソース類、パン類、パイ類、ケーキ類、菓子類、ルウ類、調味液類、氷菓類、麺類、加工食品、米飯類、ジャム類、缶詰類及び飲料類からなる群より選択される1種以上である、
(7)更に抗酸化性物質及び/又は可食性色素を含有する、
(8)抗酸化性物質及び/又は可食性色素が、アスコルビルパルミテート、アスコルビルステアレート、カテキン、レシチン、トコフェロール、トコトリエノール、リグナン及びカロチノイドからなる群より選択される1種以上である、
(9)無色又は白色〜淡黄色の食品である、
(10)無色又は白色〜淡黄色の食品は、食品用油脂類、乳、乳製品類及び飲料類からなる群より選択される1種以上である、
(11)ユビキノールは、(all−E)−異性体である、
(12)ユビキノールは、その製造法が発酵法に由来するものである、
上記記載の油脂含有食品に関する。
【0022】
本発明の第2は、上記記載の油脂含有食品を摂取することを特徴とするユビキノールの補給方法に関する。
本発明の第3は、乳化剤及び/又は油脂を含有する食材と共にユビキノールを食品原料に添加する事を特徴とする上記記載の油脂含有食品の製造法に関し、好ましい実施態様としては、純度0.01%超のユビキノールを添加する事を特徴とする上記記載の油脂含有食品の製造法に関する。
【0023】
本発明は、ユビキノールを富化した油脂含有食品である。
本発明でいう「富化する」とは、本来油脂含有食品は微量のユビキノール或いはユビキノンを含有しているがこの態様を意図するものではなく、有効量のユビキノールを人為的に油脂含有食品に添加することによりユビキノールの有する効果・効用を油脂含有食品に付け加えることをいう。
【0024】
上記油脂含有食品は、例えば、油脂又は油脂を含有する食品にユビキノールを添加したものであっても良く、油脂を含有しない食品に油脂とユビキノールを添加したもの等であっても良い。
【0025】
本発明においては、富化するユビキノールは、実質的にユビキノール単独であってもよく、又、ユビキノンとユビキノールの混合物としても与えられうる。
【0026】
ユビキノンは、ユビキノールと同様に、無味無臭であり、食品の本来有する風味を損なわず、又、油脂の存在下、食品中に均一に分散できて保存中の局在化を抑えることができる。ユビキノンとユビキノールの混合物として与えられる場合は、ユビキノールとユビキノンの比率としては、特に制限されないが、重量比で、好ましくは1/2以上、より好ましくは1/1以上、更により好ましくは2/1以上、最も好ましくは3/1以上の割合でユビキノールを含有するものであるのが推奨される。ユビキノールの上述の吸収性や有効性を活かす点からも、上記比率が推奨される。また、ユビキノンはユビキノールとは異なり、黄色〜橙色の固相、或いは、黄色〜橙色の液相を形成することから、富化する量にも依るが、食品に黄色系統の色を付加する場合があるため、上記比率であると、無色又は白色〜淡黄色、好ましくは無色又は白色〜乳白色、より好ましくは無色又は白色の油脂含有食品への好適な適用も可能となり、消費者に違和感を与えない、又は、与えにくいという機能性の付加効果がある。
【0027】
本発明の油脂含有食品は、ユビキノール及びユビキノンをユビキノン換算で、上記油脂含有食品の総重量当たり、下限が好ましくは0.0001重量%、より好ましくは0.001重量%、更により好ましくは0.01重量%、最も好ましくは0.1重量%、上限が好ましくは50重量%、より好ましくは10重量%、更により好ましくは5重量%、最も好ましくは2重量%富化したものである。上記富化量が総重量当たり0.0001重量%未満では補給目的には充分ではない場合があり、50重量%を超えての添加は、実質的に均一に溶解又は分散させることが難しくなる場合がある。
【0028】
本発明で用いる油脂は、融点20℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは25℃以上である。融点が20℃未満の場合には、保存中に固液分離が生じてユビキノールを均一にさせることが困難となる場合がある。しかし融点が20℃未満の油脂も好適に使用することができ、その場合には、ユビキノールを含有する油脂組成物を水中油型乳化物とすることが好ましい。
【0029】
本明細書においては、融点20℃以上の油脂(すなわち20℃で固体の油脂)を「固体脂」、融点20℃未満の油脂(すなわち20℃で液体の油脂)を「液体脂」ともいう。
本発明においては、本発明の食品における油脂が2種類以上の混合物である場合、当該混合物の融点が20℃以上の場合は固体脂、当該混合物の融点が20℃未満の場合は液体脂とする。
油脂の融点は上昇融点を意味する。上昇融点は基準油脂分析法((社)日本油化学会、1996年度版)に記載の方法で測定することが出来る。
【0030】
本発明において、ユビキノール及びユビキノンの含量は、これらを含有する物をそのまま或いは粉砕、乾燥等の適切な前処理を行った後、その乾燥重量当たり、例えば約10倍容の、適切な有機溶媒、例えば、クロロホルム/メタノール(2/1:容量比)などを用いて約1時間程度の攪拌溶解を2〜3回行った後、抽出液の溶媒を溜去して抽出油を得、該抽出油をヘキサン、或いはエタノールなどに溶解後、第13改訂日本薬局方解説書(廣川書店、1996年)記載のユビデカレノン(ユビキノンの別称)の定量法を参照して、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC分析)により測定することにより定量する事ができる。
【0031】
本発明のユビキノールを富化した油脂含有食品としては、元来油脂を含有している、或いは、油脂を添加しうる食品であれば、その成分、組成、製造法、形態、用途等において特に制限を受ける事は無く、任意に選択し得る。油脂含有食品中の油脂量としては、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更により好ましくは2重量%以上、最も好ましくは3重量%以上であることがユビキノールを高含量でしかも均一に富化させ易く有利であり、また、ユビキノールの効果をより良く発揮する点でも好ましい。
【0032】
本発明の油脂含有食品において、油脂に対するユビキノールの重量比は、特に制限されないが、好ましくは1以下、より好ましくは1/2以下、更により好ましくは1/3以下、最も好ましくは1/4以下である。この範囲であれば、ユビキノール及びユビキノンを安定的に食品中に富化することが出来る。
【0033】
なお、ユビキノールとユビキノンの比率は、HPLC分析により次式で表されるものである。
ユビキノール/ユビキノンの比率=ユビキノールの重量/ユビキノンの重量
【0034】
本発明の油脂含有食品において用いうる油脂としては、食用油脂であれば特に制限されず、例えば、菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、小麦胚芽油、エゴマ油等の植物性油脂並びに乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂、これらを分別あるいは、水添、エステル交換等により加工した食用油脂等を挙げることができ、例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT):例えば、6〜12、好ましくは8〜12の炭素原子を有する脂肪酸のトリグリセリド、脂肪酸の部分グリセリド(モノグリセリドやジグリセリド):例えば、6〜18、好ましくは6〜12の炭素原子を有する脂肪酸のモノグリセリドやジグリセリド等も上記油脂に含まれる。これらの油脂は未精製油であれ精製油であれ特に制限は受けない。調理或いはフライ用への適用を考慮する場合、170℃以上の発煙点を有する油脂を用いても良い。
【0035】
本発明において、ユビキノールを富化しうる油脂含有食品の例としては、食品用油脂類、乳又は乳製品類、ソース類、パン類、パイ類、ケーキ類、菓子類、ルウ類、調味液類、氷菓類、麺類、加工食品、米飯類、ジャム類、缶詰類、飲料類などが挙げられる。
【0036】
本発明にいう「食品用油脂類」とは、トリグリセリド、ジグリセリド、リン脂質等を主成分とする植物由来、動物由来、微生物由来、魚貝類由来等の油脂、及び、これらの油脂を硬化、分別、エステル交換又はこれらを適宜組み合わせて加工した食用精製加工油脂、マーガリン、調製マーガリン、ファットスプレッド等のマーガリン類、バター類、ショートニング類等が挙げられる。これらの油脂の用途としては、そのまま食する、他の食品の加工用に使用する、或いは、他の食材と共に食する形態等が挙げられる。例えば、フライ用調理油、炒め用調理油、サラダ用調理油等の調理油類、スプレー油類といった形態が挙げられる。食品用油脂類の中でも、より加工度の高いマーガリン類、バター類、ショートニング類が食品として利用しやすい形態であるため好ましい。
【0037】
本発明にいう「乳又は乳製品類」とは、牛乳、特別牛乳、殺菌山羊乳、部分脱脂粉乳、加工乳等の乳や、クリーム、ホイップクリーム、バター、バターオイル、チーズ、チーズフード等のチーズ類、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、ホワイトナー、無糖練乳、加糖練乳、全粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、発酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料等の乳製品やヨーグルト等の酸乳、ケフィールやクーミス等のアルコール発酵乳等の発酵乳類等のいわゆる乳等省令に定められた「乳」、「乳製品」、「乳または乳製品を主原料とする食品」はもとより、合成クリーム、チーズ様食品をも包含する。
【0038】
本発明にいう「ソース類」としては、ホワイトソース、クリームソース等の温製ソースやマヨネーズ、サラダドレッシング等の冷製ソースが挙げられる。
【0039】
本発明にいう「パン類」としては、食パン、ロールパン、菓子パン、調理パン、蒸しパン、ドーナッツ等が挙げられる。
【0040】
本発明にいう「パイ類」としては、アップルパイ、マロンパイ、パンプキンパイ、ミートパイ等が挙げられる。
【0041】
本発明にいう「ケーキ類」とは、ショートケーキ、ロールケーキ等のスポンジケーキ類やパウンドケーキ、フルーツケーキ等のバターケーキ類や、シュークリーム、エクレア等のシュー菓子類やサバラン等の発酵菓子類やレアチーズケーキ等のクリームゼリーケーキ類やプデイング、ブラマンジェ等のデザート菓子類等を包含する。
【0042】
本発明にいう「菓子類」とは、和菓子類、スナック菓子類、チョコレート及びチョコレート菓子類、油菓子類、ガム類、キャンディー類を包含し、更に具体的に、和菓子類としては、もち、おはぎ等のもち物や、蒸しまんじゅう、蒸しようかん、ういろう等の蒸しものや、どら焼き、きんつば、まんじゅう、月餅、カステラ等の焼き物や、ようかん等の流し物や、ねりきり、ぎゅうひ等の練り物等の生菓子類や、石衣等のあん物や、もなか等のおか物や、ちゃつう等の焼き物等の半生菓子類や、らくがん等の打ち物や、甘納豆等の干菓子類等が挙げられ、スナック菓子類としては、クッキー、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、コーンチップ、プレッツエル、ナッツ、ポップコーン、シリアル、あられ、おかき、煎餅等の米菓類等が挙げられ、油菓子類としてはかりんとう等が挙げられ、ガム類としては、板ガム、風船ガム、糖衣ガム、シュガーレスガム等が挙げられ、キャンディー類としては、ドロップ、ブリットル等のハードキャンデイー、キャラメル、ヌガー等のソフトキャンデイー、コンペイトウ、ゼリービーンズ等の掛け物、ラムネ菓子等の清涼菓子等が挙げられる。
【0043】
本発明にいう「ルウ類」としては、ルウブラン(白色ルウ)、ルウブロン(クリーム色のルウ)、ルウブラン(褐色ルウ)等が挙げられる。
【0044】
本発明にいう「調味液類」とは、食品の調理・加工時に風味、保存性、加工性等を改善するために用いる液全般を指し、具体的には、ごまだれ、ウナギのたれ、焼き肉のたれ等のたれ類やピックル液類等が挙げられる。
【0045】
本発明にいう「氷菓類」としては、アイスクリーム、シャーベット、ソルベ、アイスキャンデー等が挙げられる。
【0046】
本発明にいう「麺類」とは、穀粉を水等と捏ねた生地を成型したものを言い、具体的には、小麦粉を主原料としたうどん、そうめん、ひやむぎ、中華麺等やデュラムセモリナを用いたスパゲッティーやマカロニ等のパスタ、蕎麦粉を用いたそば、米粉を用いたビーフン、澱粉を使用したはるさめ等が挙げられる。
【0047】
本発明にいう「加工食品」としては、ハム、ソーセージ、ベーコン等の加工肉製品類、蒲鉾、ちくわ等の水産練り製品類、コロッケ、トンカツ、フライドポテト、エビフライ等のフライ食品類、冷凍アントレ類、畜産冷凍食品、農産冷凍食品等の冷凍食品類等が挙げられる。
【0048】
本発明にいう「米飯類」としては、いわゆる飯をはじめ、炊き込みご飯、炒飯、すし飯等が挙げられる。
【0049】
本発明にいう「ジャム類」とは、ミカン、イチゴ、リンゴ、ブドウ、キウイ、イチジク等の果物、カボチャ等の野菜、バラアドの花弁等を原料とし、糖類と共に適度な濃度まで煮詰めたものを言う。
【0050】
本発明にいう「缶詰類」としては、肉、魚肉、果物、野菜やこれらの加工品等を缶やビンに詰めたものが挙げられる。
【0051】
本発明にいう「飲料類」としては、豆乳、ココナッツミルク、ミルクコーヒー、カフェオレ等のコーヒー系飲料、ミルクティー、チャイ等の紅茶系飲料、クリームソーダ、コーラ飲料等の炭酸飲料、レモン果汁入りミネラルウォーター等のフレーバードウォーター、スポーツ飲料、各種野菜や果物を原材料とした野菜ジュース、果汁飲料等が挙げられる。
【0052】
本発明においては上記に例示した油脂含有食品の他に、該油脂含有食品をそのまま或いは、塗布、トッピング、挟む、包餡、練り込み等を含む多次加工したものをも包含する。
上記油脂含有食品の中でも、より加工度の高い、即ち、食する態様に近い食品の方が好ましく、例えば、食品用油脂類の中では、油脂、及び、これらの油脂を硬化、分別、エステル交換又はこれらを適宜組み合わせて加工した食用精製加工油脂より、加工度の高いマーガリン類、バター類、ショートニング類が食品として利用しやすい形態であるため好ましく、また、乳又は乳製品類、ソース類、パン類、パイ類、ケーキ類、菓子類、ルウ類、調味液類、氷菓類、麺類、加工食品、米飯類、ジャム類、缶詰類、飲料類が好ましい。
【0053】
また、本発明の油脂含有食品としては、先述の如く、油脂含量の高いものが好ましい。
また、上記食品の中でも、一般に、無色又は白色〜淡黄色、好ましくは無色又は白色〜乳白色、より好ましくは無色又は白色の食品が推奨され、この点から食品用油脂類、乳、乳製品類、飲料類において本発明の効果を最大限に発揮しうる。また、日々の生活において簡便に摂取できる点からは、飲料類が推奨される。
【0054】
本発明の油脂含有食品は、ユビキノールと共に抗酸化性物質及び/又は可食性色素が富化されても良い。抗酸化性物質及び/又は可食性色素の富化は、油脂含有食品中でのユビキノールの熱安定性や光安定性を向上すると共に食品の風味の維持に寄与しうる。本発明において、富化に適した抗酸化性物質及び/又は可食性色素の例としては、アスコルビルパルミテート、アスコルビルステアレート、カテキン、レシチン、トコフェロール、トコトリエノール、リグナン;アスタキサンチン、リコピン等のカロチノイド等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることが出来る。これらは、勿論、市販の抗酸化剤や可食性色素製剤を用い得る。本発明において、抗酸化性物質及び/又は可食性色素の富化量は、特に制限されないが、一般に油脂含有食品の総重量当たり、好ましくは0.001〜10重量%、更に好ましくは0.005〜1重量%が良い。0.001重量%未満では抗酸化性物質や可食性色素の添加効果が十分でない場合があり、10重量%を超えての添加は、油脂含有食品の風味や外観に問題が生じる場合がある。
【0055】
本発明に使用するユビキノールは、合成法もしくは発酵法など、いかなる公知の方法で製造されたものでもよいが、生体に対する安全性を慎重に配慮すれば、肉、魚等の食品に含まれるものと同じ(all−E)−異性体が好ましく、この場合、その製造法が発酵法に由来するものが好ましい(Biomedical and clinical aspect of coenzyme Q,3,19(1981))。ここで、「発酵法に由来する」とは、好ましい上記立体異性が発酵法に基づき得られることを意味しており、例えば、発酵法により得られた(all−E)−異性体のユビキノン及び/又はユビキノールを、その立体を保持したまま、酸化、還元等の処理により、所望の比率のユビキノールに変換することを妨げない。尚、立体異性体は常法によりHPLCにて分析される。
【0056】
また、本発明に使用するユビキノールの製造は、常法で製造されたユビキノンを水素化ほう素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム(ハイドロサルファイトナトリウム)、亜鉛等の一般的な還元剤を用いて、常法により還元することにより行うことができる。上記還元後は、晶析やクロマトグラフィーによる濃縮を行っても良い。ユビキノールは、固体状であれ液状であれ、結晶状であれ、アモルファス状であれ使用し得る。
【0057】
本発明の油脂含有食品は、通常の油脂含有食品と同様に摂取することにより、生体に必要不可欠で減少・不足しがちなユビキノールを容易に補給することができる。本発明の油脂含有食品の摂取量は特に制限はなく、例えば、対象となるヒトの性、体重、年齢などを勘案し、更には、医薬品及びサプリメントとしての摂取実績を参考に決定するのが好ましい。目安となる摂取量は、通常、ユビキノン換算で、一日当たり、0.1〜500mg、好ましくは1〜200mg程度摂取できる量の油脂含有食品を摂取するのが好ましい。0.1mg未満では期待する効果が弱い場合があり、500mgを超えての摂取は効果の面では問題ないが経済的でない場合がある。
【0058】
本発明の方法は、ヒトのほか、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ネズミ等の哺乳類や、ニワトリ等の鳥類にも適用できる。
【0059】
本発明においては、ユビキノールを油脂含有食品の形態で摂取する以外、その摂取の方法、容量、摂取の頻度により特に制限を受ける事はない。本発明の補給方法は、従来の医薬品やサプリメントなどによる方法に比較し、消費者に違和感を与えず、簡便で、摂取の持続が容易な事、摂取量を状況に応じ適宜調整できる事、多様な個々人の味覚等に関する好みに対応可能な事等が優れている。また、ユビキノールはこれを単独で摂取するよりも油脂成分と同時に摂取することにより吸収性が良くなる傾向があり、その点でもユビキノールを富化した油脂含有食品を摂取することは非常に優れた方法である。
【0060】
本発明は、更に、ユビキノールを富化した油脂含有食品の製造法にも関する。
本発明のユビキノールを富化した油脂含有食品の製造は、特に制限を受ける事は無く、その製造工程において必要量のユビキノールを添加することにより実施し得る。
【0061】
油脂含有食品にユビキノールを添加する場合、ユビキノールは、固体状態であれ、分散状態を含む液体状態であれ用いうるが、ハンドリングの容易さから液体状態がより好ましく、例えば、溶媒や分散媒を用いて、好ましくは食用の乳化剤及び/又は油脂を含む食材、より好ましくは油脂を含む食材と共に、必要に応じて適宜加温して、ユビキノールをダマにならないように注意しながら、添加攪拌することが好ましい。添加、十分攪拌したものを油脂含有食品に添加するのが良い。この様にして調製されたユビキノール含有組成物を用いて本発明の油脂含有食品を製造する場合は、当該食品の製造の何れかの過程において、上記組成物を添加・混合すればよい。本発明の油脂含有食品が飲料である場合は、ユビキノールを乳化物、例えば、W/O乳化物やO/W乳化物として加え入れるのが好ましい。このようにする事により容易にユビキノールを高含量で、均一に含有する油脂含有食品を製造し得る。
【0062】
本発明の油脂含有食品の製造に使用する、ユビキノールを添加した乳化剤及び/又は油脂を含む食材において、ユビキノールが完全に溶解している事は必須ではないが、最終的に得られる油脂含有食品の好ましい風味、食感、外観及びより高い吸収性を得る、或いは、通常、保存中に起こりうるユビキノールやユビキノンの析出や局在化を避けるために、ユビキノールが完全に溶解している、或いは、マイクロエマルジョン化されている事が好ましい。
【0063】
また、固体状態のユビキノールを用いて本発明の油脂含有食品を製造する場合、何れの工程でユビキノールを添加しても良いが、油脂含有食品中におけるユビキノールの分布が均一で、風味、食感、外観が良いものとするためには、乳化剤及び/又は油脂を含有する材料を添加する工程もしくはそれ以降の工程において、ユビキノールを添加・混合することにより製造しても良い。
【0064】
上記油脂を含む食材としては、油脂含量の高いものが好ましく、具体的には、食品用油脂類、乳及び乳製品類等が挙げられる。
【0065】
上記乳化剤としては、特に制限されず、以下の合成又は天然のものを挙げることができ、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステルや酵素分解レシチン、水添レシチンを含むレシチンを挙げることができる。
【0066】
本発明の油脂含有食品にユビキノールと共に上記抗酸化性物質及び/又は可食性色素を富化する場合、その方法には特に制限は受けず、ユビキノールを含有する上記組成物と共に混合攪拌し均一化しても良い。また、抗酸化性物質や可食性色素を予め、溶媒や分散媒、好ましくは乳化剤及び/又は油脂を含む食材、より好ましくは油脂を含む食材、更により好ましくは乳化剤及び/又は油脂、最も好ましくは、油脂に添加・攪拌することにより均一化させた後、そのまま或いは油脂含有食品に添加することにより富化しても良い。
【0067】
本発明の好ましい態様においては、ユビキノールを油脂類に加熱溶解後、冷却して均一化した油脂組成物を用いて食品を製造することにより、ユビキノールの局在化を完全に防止することが出来る。
油脂への溶解度以上にユビキノールを富化する場合において、固体脂を用いる場合は、加熱溶解した後に冷却操作によって固化または捏和による可塑化、あるいは水中油型乳化物とすることが好ましい。加熱温度は、固体脂およびユビキノールの融点以上が好ましく、より好ましくは50〜70℃である。冷却操作は、均一性を高める為に、急冷条件下で20℃以下に冷却することが好ましい。また、上記固化及び可塑化した油脂組成物は、無水物であってもよく、油中水型乳化物であってもよい。いずれでも、連続相である固体脂中にユビキノールを偏りなく含有させることが可能となる。また、通常用いられる乳化剤等を添加してもよい。
【0068】
一方、油脂への溶解度以上にユビキノールを富化する場合において、液体脂を用いる場合は、加熱溶解した後に冷却操作によって水中油型乳化物とすることが好ましい。加熱温度は、ユビキノールの融点以上が好ましく、より好ましくは50〜70℃であり、冷却操作によって速やかに10℃以下に冷却するのが好ましい。水中油型乳化物とすることで、連続相である水中に均一に分散した油滴中にユビキノールを偏りなく含有させることが可能となる。また、水中油型乳化物に通常用いられる乳化剤や増粘剤等を添加しても良い。水中油型乳化物ではなく液体脂単独の油脂組成物の場合、冷却直後においてはユビキノールは均一に分散しているが、時間の経過とともに固液分離が進行し、ユビキノールの偏りが生じてしまう可能性が高い。
【0069】
特に、パン、焼き菓子等の小麦粉利用食品の製造においては練り込み特性が必要であるため、固体脂を用いて得られる可塑性油脂組成物が好ましい。また、水中油型乳化組成物を水相側へ添加しても良く、この場合は液体脂を用いることが可能となる。
【0070】
本発明の油脂含有食品は、ユビキノール、並びに、上記の抗酸化性物質及び/又は可食性色素以外に、ユビキノールの溶解性、安定性、吸収性等に悪影響を与えない範囲で、通常の食品に添加される添加物を任意に加えうる。例えば、ビタミンA、ビタミンD等のビタミン類、食塩等の無機塩、砂糖、アスパルテーム等の人工又は合成甘味料、乳タンパクなどの食用タンパク質、CMC等の増粘剤、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)などの抗酸化剤、ソルビン酸及びそのカリウム塩、安息香酸及びそのナトリウム、カリウム塩等の保存料、果実、チョコレート等の添加物を挙げることができる。
【0071】
本発明の食品の製造に使用するユビキノールは、その純度により特に制限を受ける事はなく、純度0.01%超、好ましくは1%超、更に好ましくは10%超であって良い。また、精製品の他に、粗精製品でも使用しうる。富化するユビキノールが安全であれば精製品である必要は無い。
【0072】
粗精製品の例としては、晶析、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィーなどにより部分精製された製品が挙げられる。または、粗精製品の一例として、微生物菌体に含まれるユビキノールを用いても良い。ユビキノールを含有する微生物の例としては、酵母、糸状菌、細菌、藻類原生動物などが挙げられる。更に詳しくは、キャンデイダ属(Candida)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、トリコスポロン属(Trichosporon)、アスペルギルス属(Aspergillus)、モナスカス属(Monascus)、ロイコスポリディウム属(Leucosporidium)、ゲオトリカム属(Geotrichum)、シユードモナス属(Pseudomonas)、アクロモバクター属(Acromobacter)、グルコノバクター属(Gliconobacter)、ペキロマイセス属(Paecilomyces)、アクレモニウム属(Acremonium)、ウスチラゴ属(Ustilago)、カエトミウム属(Chaetomium)、フラボバクテリウム属(Flabobacterium)、ロドスピリラム属(Rhodospilum)、ロドシユードモナス属(Rhodopseudomonas)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、アセトバクター属(Acetobacter)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、プロトモナス属(Protomonus)、ハイホモナス属(Hyphomonus)、オリゴモナス属(Oligomous)、プロタミノバクター属(Protaminobacter)、スピルリナ属(Supirulina)等に属する微生物が挙げられる。
【0073】
本発明に用いるユビキノールは、動植物をはじめ多くの食品中に含まれている物質であり安全性は確認されている。粗精製品或いはユビキノールを含有する菌体を用いる場合は、殺菌などを行い、安全衛生上食品として有害な物が混入しない手だてを講じたり、菌体を破砕するなど吸収性向上の手だてを講じても良い。
【0074】
以下に、本発明の代表的な油脂含有食品の製造法を概説する。言うまでもなく、本発明の油脂含有食品の製造法はこれらに限定されるものではない。
本発明の調理油は、食用油脂として一般に調理油として用いられている油脂、例えば菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂並びに乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂、これらを分別、水添、エステル交換等により加工した油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT):例えば、6〜12、好ましくは8〜12の炭素原子を有する脂肪酸のトリグリセリド、脂肪酸の部分グリセリド(モノグリセリドやジグリセリド):例えば、6〜18、好ましくは6〜12の炭素原子を有する脂肪酸のモノグリセリドやジグリセリド及びこれらの混合物などをその融点以上の温度で加温溶解し、撹拌しながら所望量のユビキノールをだまにならないようゆっくりと添加溶解した後、冷却することにより製造しても良い。
【0075】
本発明のスプレー油は、上記の調理油の製造に用いる油脂と同様の食用油脂を用い、同様の方法で製造しうる。また、更に必要に応じ、スプレー油に風味を付与するため、油溶性香料、油溶性ビタミン、シーズニングオイル、保存料及び他の食材例えば、塩、畜肉、鳥肉、魚介類、クリーム、バター、チキン、オニオン、ガーリック、バジル等を通常のミキサーで混合或いは溶解することにより製造しても良い。本発明のスプレー油を使用する場合は、一般的なスプレー油と同様に使用しても良い。
【0076】
本発明のバターの製造は、牛乳より常法により調製されたクリーム分を常法によりチャーニングしながら、所望量のユビキノール粉末、或いは食用油脂に均一に溶解或いは分散したユビキノールを徐々に添加攪拌した後、得られたバター粒を冷水で洗浄後、食塩を2.5%程度加え、更に練り合わせる事により製造しても良い。
【0077】
本発明のマーガリン類やショートニング類は、一般的なマーガリン類、ショートニング類の製造において用いられる油脂とユビキノールを共に混合・溶解・攪拌し、必要により乳化することにより製造し得る。例えば、通常の食用油脂とユビキノールを溶解した食用油脂と水、乳化剤、必要に応じて各種添加剤を加え、乳化タンクで60℃で乳化した後、15℃まで急冷捏和を行うことでマーガリンを得ることができる。また、例えば、通常の食用油脂と同時に微粉末化した精製ユビキノール、或いは粗精製のユビキノールを加え上記と同様に操作することによりマーガリンを得ることもできる。一方、例えば、通常の食用油脂にユビキノールを富化した油脂を添加し、60℃で、ホモミキサーを用いて約20分間乳化したのち、15℃に急冷捏和しすることでショートニングを得ることができる。
【0078】
本発明の合成クリームの製造は、所望量の上記のユビキノールを溶解・分散した食用油脂とナタネ硬化油、ヤシ硬化油等の高融点油脂、乳化剤を70℃程度で攪拌して加温溶解した油相部を、脱脂乳、溶解塩、乳化剤等を加え70℃程度に加温乳化した水相部に加え、65℃程度に保持しつつ予備乳化し、この混合物をホモジナイザーに通し、加圧ホモジナイズし、殺菌処理した後圧力にて均質化した後、5℃程度まで冷却した後、5℃、24時間程度エージングすることにより実施しうる。
【0079】
本発明の濃縮乳の製造は、所望量の上記のユビキノールを溶解・分散した食用油脂と無脂肪乳固形成分、呈味性無脂肪乳成分、増粘剤、乳化剤を水に溶解した水相部を合わせホモジナイザーにて乳化させた後、滅菌処理し、均質化することにより実施しうる。
【0080】
本発明のホワイトナー類の製造は、所望量の上記のユビキノールを溶解・分散した食用油脂と乳化剤を混合、乳化し油相部と脱脂粉乳、溶解塩、増粘剤、乳化剤、甘味剤、ビタミン類、抗酸化剤等を加えて溶解した水相部を撹拌して予備乳化した後、加圧下でホモジナイズすることにより実施しても良い。
【0081】
本発明のサラダドレッシングの製造は、添加する油脂として、所望量の上記のユビキノールを溶解・分散した食用油脂を用いる事により実施しうる。例えば、マヨネーズの場合、食酢、食塩、砂糖、調味料、水の適量を混合器等で攪拌混合して得られる水相部に、上記のユビキノールを溶解・分散した食用油脂と卵黄等の乳化剤を添加し混合した油相部を少しずつ加えながら攪拌し予備乳化した後、コロイドミル等を用いて仕上げ乳化を行う事により製造し得る。また、通常のドレッシングに使用される食用油脂と他の成分と一緒に固体状のユビキノールを添加し、攪拌乳化することにより実施し得る。
【0082】
本発明のピックル液の製造は、添加される油脂として、上記のユビキノールを溶解・分散した食用油脂を用いる事により製造しうる。また、通常のピックル液製造に使用される食用油脂及び他の成分と一緒に固体状のユビキノールを添加することにより実施し得る。例えば、60℃まで加温・攪拌した乳化剤を溶解した水相部に、上記のユビキノールを溶解・分散した食用油脂と乳化安定剤を60℃で加温攪拌して調製した油相部を徐々に添加して粗乳化した後、乳化液の品温を50℃以下に下げてから、圧力式ホモジナイザー等の均質機で微細乳化する。その後プレートクーラー等の熱交換機で急速冷却して実施し得る。
【0083】
本発明のチョコレートの製造は、菓子用チョコレートと所望量の固体又は上記食用油脂に溶解したユビキノールを混合後、湯煎でゆっくりと40〜50℃に攪拌し完全に溶解後、30〜32℃まで冷却し、型に流して固化させても良い。
【0084】
本発明のパン類、ケーキ類、パイ類、クッキー類の製造は、その製法に特に限定はなく、一般的なパン類、ケーキ類、パイ類、クッキー類の製造において、油脂を加える過程で、所望量の上記のユビキノールを溶解・分散した食用油脂を一部或いは全量置き換えて添加することにより、或いは上記のユビキノールを富化したマーガリン、ショートニングを一部或いは全量置き換えて添加することにより、或いは一般的な油脂と同時に、或いは油分を含有する食材と一緒に、固体状、或いは菌体に含まれるユビキノールを添加することにより製造しても良い。また、本発明のユビキノールを富化したパン類の油脂含量は、パンの総重量当たり油脂として0.5〜40%の添加が好ましい。0.5%未満及び40%超ではパンとしての風味、食感が劣る場合がある。
【0085】
本発明のルウ類の製造は、一般的なルウの製造において、油脂を加える過程で、所望量の上記のユビキノールを溶解・分散した食用油脂を一部或いは全量置き換えて添加することにより、或いは上記のユビキノールを富化したマーガリン類、ショートニング類を一部或いは全量置き換えて添加することにより、或いは一般的な油脂と同時に、或いは油分に富む食材と一緒に、固体状或いは菌体に含まれるユビキノールを添加し、他の食材、添加剤を用い、これらを混合した形態として加熱処理することにより行う事ができる。加熱処理の方法としては、飽和水蒸気による処理、加圧加熱処理、焙煎処理、油を用いた焙煎処理を含む常圧による加熱処理等、いずれの方法により行ってもよいが、油を用いた焙煎処理が簡便であるため好ましく、ルウに色を付けない時は110℃〜120℃、短時間、クリーム色に着色させる場合は、最終温度140〜150℃を目処に、褐色ルウを調製する場合は最終温度190℃になるように十分炒める事により実施しても良い。
【0086】
本発明の麺類の製造は、一般的麺類の製造において、油脂を加える過程で、所望量の上記のユビキノールを溶解・分散した食用油脂を一部或いは全量置き換えて添加することにより、或いは上記のユビキノールを富化したマーガリン類、ショートニング類を一部或いは全量置き換えて添加することにより、或いは一般的な油脂と同時に、或いは油分を含有する食材と一緒に、固体状、或いは菌体に含まれるユビキノールを添加し実施し得る。例えば、まず、本発明のユビキノールを溶解・分散した食用油脂に乳化剤を添加し、加熱、溶解し油相部を調製し、別途、水、糖類などを添加し、加熱して調製した水相部を混合後、ホモミキサー等の混合機で乳化し、更に攪拌・混合しながら冷却し乳化して得られる乳化液を、小麦粉類と混合後、生地をねかし、ロール圧延後、切歯し生麺を得、それを乾燥或いはゆでる事により得られる。
【0087】
本発明のフライ食品類の製造は、本発明のユビキノールを溶解・分散した食用油脂或いは本発明のユビキノールを富化した調理油、或いは本発明のユビキノールを富化したショートニング類を高温、例えば、150℃〜220℃で、例えば、コロッケ、エビ、トンカツ等の食材をフライすることにより実施しても良い。
【0088】
本発明のチーズフード及びチーズ様食品の製造は、本発明のユビキノールを溶解・分散した食用油脂を用いる以外、一般的なチーズフード及びチーズ様食品の製造法により製造することができる。その場合、通常の製造法で油脂を添加する時期に本発明のユビキノールを溶解・分散した食用油脂を単独或いは他の一般的な油脂と配合して添加して実施しても良い。例えば、ナチュラルチーズ、或いはプロセスチーズと本発明のユビキノールを富化した食用油脂組成物と食塩、溶解塩、水の所定量をステファンクッカー等の容器に投入し、蒸気を投入しながら加温混捏した後、冷却することにより、ユビキノールを富化したチーズフードを得ることができる。また、例えば、チーズ加工食品の場合、食品総重量に対し51%未満のナチュラルチーズ或いはプロセスチーズと本発明のユビキノールを溶解・分散した食用油脂、食塩、ポリリン酸ナトリウム等の溶解塩、及び水の所定量をステファンクッカー等の釜に投入し、攪拌しながら直接蒸気を投入して加温、溶融、混捏した後、容器に入れ冷却することにより得ることができる。また、イミテーションチーズの場合、釜に水、溶解塩、食塩を加温溶解後、レンネットカゼイン、脱脂粉乳等の脱脂蛋白、米澱粉、コーンスターチ、アラビアゴム、カラギーナン等の増粘剤を加え加熱攪拌し、更に酸味剤等と水を加え加熱攪拌した後、本発明のユビキノールを富化した食用油脂組成物を加え、更に加熱攪拌し、チーズフレーバー、着色料、抗酸化剤等を加え混練りし、最後に、高圧ホモジナイザーにかける事により得ることができる。
【0089】
本発明の飲料類の製造は、本発明のユビキノールを溶解・分散した乳化剤及び/又は食用油脂を均一に分散、乳化、或いは溶解させた後、飲料原料に添加する事により製造し得る。飲料原料としては、牛乳、特別牛乳、殺菌山羊乳、加工乳、コーヒー飲料、紅茶飲料、果汁飲料、炭酸飲料、果実飲料、乳性飲料、野菜ジュース、豆乳、ココナッツミルク、クリーム等が挙げられる。また、本発明の飲料において、ユビキノールを溶解・分散した食用油脂を用いる場合、W/O型乳化物とした後、そのまま、或いは、飲料原料に添加することにより製造することができるし、ユビキノールを溶解・分散した乳化剤を用いる場合、O/W型乳化物とした後、そのまま、或いは、飲料原料に添加することにより製造することもできる。乳化物の調製に際しては、好適な乳化物を調製するために、適宜、グリセリン等の他成分を添加することができる。乳化物の調製法を具体的に述べると、例えば、水に、乳化剤、乳化安定剤、親水性酸化防止剤を添加し、攪拌により水中に分散させた後、加温溶解する。他方、本発明のユビキノールを溶解・分散した食用油脂の中に乳化剤と親油性抗酸化剤を添加し、攪拌により油中に分散させた後、加温溶解する。乳化の方法については特に限定はなく、一般的に用いられている、水相に油相を流加し攪拌や圧力により機械的に乳化する方法や、膜の微細な空隙から水相中に油相を押し出し乳化する膜乳化法等が挙げられ、どちらの方法でも十分な性能を持つ乳化物を得ることができる。このようにして得られた乳化物は、そのまま乳化物含有飲料に使用しても良いが、乳化物の状態で長期間保存する必要がある場合は殺菌を行っても良い。殺菌に要する温度、保持時間等の条件は特に限定されるものではないが、pHが中性の場合には120〜140℃、4〜30秒のUHT殺菌を行うことが望ましい。殺菌された乳化物は無菌容器に無菌的に充填し、冷蔵状態で保存される。飲料原料への、乳化物の混合量は特に限定されるものではないが、乳化物含有飲料中に、1〜80%、好ましくは2〜50%含有される。1%未満では均一系の維持が難しく、また、80%を超えると風味やコストの点で現実的ではない。このようにして得られた乳化物含有飲料は、必要に応じpHを調節し、抗菌剤、甘味料を添加した後、缶、瓶、パウチ等の加熱殺菌可能な容器に充填、密封した後、120〜126℃、15〜60分のレトルト殺菌を行うことができる。
【0090】
本発明のその他の食品においても、その製法に特に限定はなく、一般的な製造において、油脂を加える過程で、所望量の上記のユビキノールを溶解・分散した食用油脂を一部或いは全量置き換えて添加することにより、或いは上記のユビキノールを富化したマーガリン類、ショートニング類を一部或いは全量置き換えて添加することにより、或いは一般的な油脂と同時に固体状、或いは菌体に含まれるユビキノールを添加することにより製造しても良い。所望量の上記のユビキノールを溶解・分散した乳化剤及び/又は食用油脂を一部或いは全量置き換えて添加することにより、或いは上記のユビキノールを富化したマーガリン、ショートニングを一部或いは全量置き換えて添加することにより、或いは一般的な油脂と同時に固体状、或いは菌体に含まれるユビキノールを添加することにより製造しても良い。
【0091】
本発明の油脂含有食品の製造及び保管は、窒素雰囲気下や脱酸素剤の共存など、脱酸素雰囲気下で実施されることが好ましい。
【発明の効果】
【0092】
本発明のユビキノールを富化した油脂含有食品は通常の油脂含有食品と同様に摂取することにより、生体に必要不可欠であるにも関わらず減少・不足しがちなユビキノールを補給することができる食品であり、ユビキノール不足により引き起こされる疲労や種々の不健康状態の予防・改善用食品として有用である。本発明のユビキノールを富化した油脂含有食品は、通常の生活をしながら、飽きることなく、継続的にユビキノール不足を改善できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下に製造例、実施例、参考例を揚げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。尚、「部」「%」は、断りのない限り、全て重量基準である。
ユビキノールとユビキノンは下記HPLC分析により定量した。
(HPLC分析条件)
カラム :SYMMETRY C18(Waters製)
250mm(長さ)4.6mm(内径)
移動相 :COH:CHOH=4:3(v:v)
検出波長:210nm
流速 :1ml/min
ユビキノールの保持時間: 9.1min
ユビキノンの保持時間 :13.3min
【0094】
(製造例1)
100gのユビキノン((株)カネカ製)を25℃で1000gのヘプタンに溶解させた。攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m)しながら、還元剤として次亜硫酸ナトリウム(純度75%以上)100gに1000mlの水を加えて溶解させた水溶液を、徐々に添加し、25℃、pH4〜6で還元反応を行った。2時間後、反応液から水層を除去し、脱気した飽和食塩水1000gでヘプタン層を6回水洗した。このヘプタン層を攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m)しながら2℃まで冷却し、白色のスラリーを得た。なお、以上すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を冷ヘプタン、冷エタノール、冷水、冷エタノール、冷ヘプタンで順に洗浄(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)して、さらに、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、133〜4000Pa)することにより、白色の乾燥結晶93gを得た(収率92.8モル%、純度99.3%)。得られた結晶のユビキノール/ユビキノンの比率は99.6/0.4であった。また、得られたユビキノール及びユビキノンの立体を常法によりHPLCで分析したところ、何れも、(all−E)−異性体であった。
【0095】
(製造例2)
サイトエラ・コンプリカタ(Saitoella complicata)IFO 10748を培地(ペプトン5g、酵母エキス3g、マルトエキス3g、グルコース20g/L、pH6.0)で25℃で72時間好気的に培養した。得られた菌体を、窒素ガスで密閉したラニー社製圧力式ホモジナイザーにより破砕圧力80MPaで2回破砕し、菌体破砕液を調製した。この菌体破砕液からイソプロパノール30容量部、ヘキサン40容量部の割合で抽出を3回繰り返すことにより、抽出液を得た。得られた抽出液をヘキサン溶液に置換し、シリカゲルを充填したカラムに吸着させ、n−ヘキサン/ジエチルエーテル(9/1)溶液で展開、溶出してユビキノールを含む画分を得た。さらに、本画分を攪拌しながら2℃まで冷却し、スラリーを得た。以上すべての操作は窒素雰囲気下で行った。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を上記展開液で洗浄し(洗浄に用いた溶媒の温度は2℃)、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、133〜4000Pa)することにより、乾燥結晶を得た。得られた結晶のユビキノール/ユビキノンの比率は9/1、純度は89%であった。また、得られたユビキノール及びユビキノンの立体を常法によりHPLCで分析したところ、何れも、(all−E)−異性体であった。
【0096】
(実施例1)ユビキノールを富化した調理油の製造
5L容ビーカー内に大豆油(商品名:大豆ゴールデンサラダ油、吉原精油(株)製)999gを取り、室温でゆっくり攪拌しながら、製造例1で得たユビキノール1gをだまにならないように少しずつ添加し引き続きゆっくり攪拌・溶解することにより、ユビキノールを約1%富化した調理油を得た。得られた油は、透明の油で、風味も良く、フライ油、炒め油として使用しても何ら問題無かった。また、大豆油の代わりに、菜種油、大豆硬化油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、小麦胚芽油、エゴマ油、乳脂、牛脂、豚脂、魚油、及び鯨油を用いる事により、それぞれ、ユビキノールを富化した調理油を得た。
【0097】
(実施例2)マーガリンの製造
5L容ビーカー内に、硬化綿実油組成物(商品名:スノーライト、(株)カネカ製)98部と製造例1で得たユビキノール2部を60〜65℃で加温しながらゆっくりと攪拌溶解して得た油脂組成物83.5部と水16.5部を60〜65℃で、乳化タンクで15分間、攪拌乳化したのち、15℃に急冷捏和し、風味的にも物性的にも問題のないユビキノールを富化したマーガリンを得た。また、10℃急冷捏和を行った後、レストチューブを通し、シート成型器にてユビキノールを富化した折り込み用マーガリンを得た。
【0098】
(実施例3) ファットスプレッドの製造
水相成分として、ゼラチン2部、食塩1.5部、水44部を60℃に加温した。油相成分として60℃に加温した大豆硬化油25部、大豆油15部、製造例1で得たユビキノール0.5部、モノステアレート0.3部、レシチン0.2部、ビタミンA0.02部、β−カロチン0.002部、トコフェロール0.3部を混合し、60℃に加温した後、攪拌しつつ水相成分を徐々に添加し、乳化物を得た。さらにこの乳化物をコンビーネーターで急速に冷却した後、ユビキノールを富化したファットスプレッドを得た。このファットスプレッドは、通常のファットスプレッドと比べて、性状、安定性とも大きな違いはなく、さらには口あたりもなめらかで風味も良好であった。
【0099】
(実施例4) ショートニングの製造
硬化ダイズ油(mp40℃)60%、パーム油20%、コーン油20%からなる油脂組成物40部、ナタネ油40部、製造例1で得たユビキノール0.5部、レシチン0.3部、モノステアレート0.3部を加え60℃で、ホモミキサーを用いて15分間乳化したのち、15℃に急冷捏和し、風味的に問題のないユビキノールを富化したショートニングを得た。又、製造例1で調製したユビキノールの代わりに、製造例2で調製したユビキノール(ユビキノール/ユビキノンの比率9/1)を用いる事により、同様にしてユビキノールを富化したショートニングを得た。
【0100】
(実施例5) 食パンの製造
小麦粉70部にイースト2部、イーストフード0.1部次いで水40部を加えてミキサーで混合し中種生地を作り(捏上温度24℃)、4時間予備発酵をさせた後、小麦粉30部、砂糖5部、実施例2で得たユビキノールを強化したマーガリン6部、食塩2部、脱脂粉乳3部、水23部を加え本捏生地を作製した後、フロアタイム25分後分割し、ベンチタイム25分後、成形し、ホイロ38℃・50分、焼成180℃・35分で食パンを製造した。得られた食パンは、風味、色合ともに良好であった。
【0101】
(実施例6) 食卓ロールパンの製造
強力粉70部、上白糖2部、イースト2.5部、イーストフード0.1部、水40部を混合し、4分、捏上温度24.5℃でこね上げた後、30℃下3時間発酵させ中種を製造した。次いで、強力粉20部、薄力粉10部、上白糖10部、食塩1.6部、脱脂粉乳3部、実施例2で得たユビキノールを強化したマーガリン15部を加え、全卵12部、水6部を加え、6分28℃になるように捏上げ、実施例2で得たユビキノールを強化したマーガリン15部を加え、更に5分捏上げた後、室温でフロアタイム40分で発酵を行い、分割し、ベンチタイム10分の後成形し、ホイロ38℃・50分、焼成245℃・11分で食卓ロールパンを製造した。得られた食卓ロールパンは、風味も、色合いも良好であった。
【0102】
(実施例7) クロワッサンの製造
ミキサーボールに強力粉80部、薄力粉20部、上白糖5部、食塩1.8部、全卵5部、脱脂粉乳3部、イースト5部、イーストフード0.1部、水58部を加え低速2分間、中高速3分間ミキシングした。これにショートニング5部と、製造例2で得られたユビキノール5部を加え、低速2分間、中高速5分間ミキシングした。生地のこね上げ温度は25℃とした。フロアタイムを30分間取った後、1℃の恒温槽に生地を入れ3時間リードタイムを取った。実施例2で得た折り込み用ユビキノールを富化したマーガリン60部を加え、4つ折りを2回行い、1℃の恒温槽で3時間寝かせて中間リタードを取った。中間リタード後、シーターでゲージ2.5mmまで伸ばしてクロワッサン形状に成型した。35℃のホイロに50分間入れた後、200℃のオーブンで12分間焼成し、味も良く、食感も良好なクロワッサンを得た。
【0103】
(実施例8) パウンドケーキの製造
実施例2で得たユビキノールを強化したマーガリン405gと上白糖405gを入れ比重0.65までホイップし、全卵405gを5回に分けて加え混合した。その上に篩いにかけた薄力粉450gを加え混合後、パウンド型に生地を500g入れ、240℃、33分焼成し、パウンドケーキを製造した。得られたパウンドケーキの味、食感は良好であった。
【0104】
(実施例9) パイの製造
ミキサーボールに強力粉55部、薄力粉45部、食塩1.8部、水50部を入れ低速2分、中高速8分ミキシングした。それに、ショートニング5部と製造例1で得たユビキノール0.2部を加え、低速2分、中高速5分ミキシングし、生地こね上げ温度20℃でこね上げた。フロアタイムを30分取った後、1℃の恒温槽に生地を入れ、3時間リードを取った。折り込み用油脂を加えて、4つ折りを1回、3つ折りを1回行い、1℃の恒温槽で2時間寝かせて中間リタードを取った。中間リタード後、更に4つ折りを1回、3つ折りを1回行い、生地を1℃の恒温槽で休ませた後、成型を行った。成型はシーターでゲージ3.5mmまで伸ばして10cm角の正方形状とし、ピケを入れた。次に、ラックタイムを30分程度後、200℃のオーブンで20分間焼成しパイを製造した。又、製造例1で得たユビキノールの代わりに、製造例2で得た菌体破砕液を用いる事により、同様にしてユビキノールを富化したパイを得た。
【0105】
(実施例10) クッキーの製造
薄力粉600g、上白糖250g、実施例2で得たユビキノールを強化したマーガリン240g、加糖練乳30g、食塩3gを適当な柔らかさになるまで攪拌乳化した後、炭酸アンモニウム4gを水30gに溶き加え中速で徐々に乳化し、次いで、篩った薄力粉600gを加え撹拌し、生地をまとめ、1昼夜寝かした後、シーターで5mm厚に延ばし直径4cmの菊型で抜き取り天板に並べ、220℃10分で焼成してクッキーを製造した。得られたクッキーの味、食感はいずれも良好であった。
【0106】
(実施例11) ホイップクリームの製造
上昇融点34℃のナタネ硬化油70部と上昇融点32℃のヤシ硬化油30部からなる混合油脂に乳化剤として合成ジグリセロールステアレート0.8部、大豆レシチン0.6部、ナタネ油30部、製造例1で得たユビキノールを油温70℃において添加溶解して油脂組成物を得た。別に脱脂乳54.9部にヘキサメタリン酸ナトリウム0.1部を加え55℃まで攪拌しつつ加温した。この脱脂乳中に前記の乳化剤添加油脂組成物45部を加え攪拌溶解、65℃に保持しつつ予備乳化し、この混合物をホモジナイザーに通し、1回目80kg/cm、2回目20kg/cmの圧力にて均質化した後95℃、15秒間殺菌処理を行い、更にプレート式冷却機を用いて5℃まで冷却した後、5℃の恒温器中に24時間エージングしてユビキノールを富化した起泡性合成クリームを得る事が出来た。得られたクリームは風味に問題は無かった。得られた起泡性合成クリームを予め準備したスポンジケーキに塗布しデコレーションケーキを作製出来た。
【0107】
(実施例12) 濃縮乳の製造
大豆油(商品名:大豆ゴールデンサラダ油、吉原精油(株)製)10部にレシチン0.15部、製造例1で得たユビキノール0.5部を添加し65℃で溶解して油相部とした。一方、トータルミルクプロテイン9部、ラクトアルブミン0.5部、ナチュラルクリームチーズ3.5部、発酵乳2部、及びソルビトール70%溶液7部、エリスリトール70%溶液7部、グリセリン脂肪酸エステル0.1部、ショ糖脂肪酸エステル0.1部を60℃の水60部に溶解し水相部とした。先の油相部と水相部を合わせホモジナイザーにて乳化させた。その後145℃、4秒間滅菌処理をしたのち、均質化圧200kg/cmにて処理したのち冷却して容器に充填し、油のうま味、こく味を保持した風味の良いユビキノールを含有する加工用濃縮乳を得た。
【0108】
(実施例13) ホワイトソース並びにピザ及びグラタンパンの製造
小麦粉100gと実施例2で得たユビキノールを富化したマーガリン100gを同時に炒めて作製したホワイトソース用ルウに、実施例12で得たユビキノールを富化した加工用濃縮乳400gを水で2倍に希釈した水溶液800gに食塩、香辛料1.0gを添加してルウを伸ばしながら85℃になるまで撹拌しながら加熱してホワイトソースを製造した。これを缶に充填しレトルト殺菌機により121℃、20分間加熱処理した後、室温まで冷やしレトルトホワイトソースを得た。得られたホワイトソースは風味、食感ともに良好であった。
更に、上記で作製したレトルト殺菌前のホワイトソース100部に鶏肉を湯がいて処理した物を10部、酵母エキス0.2部、チキンコンソメ0.6部を添加したチキングラタンを作製し、これをピザ用トッピング、調理パン用フィリング剤として使用したところ、それぞれ、従来品に遜色ないピザ及びグラタンパンを得た。
【0109】
(実施例14) ホワイトナーの製造
大豆油(商品名:大豆ゴールデンサラダ油、吉原製油(株)製)360重量部を65〜70℃に加温した後、大豆レシチン7.2重量部及び蔗糖脂肪酸エステル(HLB値1)4.5重量部、製造例1で得たユビキノール10部をそれぞれ加えて溶解し、油相を調製した。別途、65〜70℃の温水1212.3重量部に脱脂粉乳57.6重量部、カゼインナトリウム81重量部、トレハロース(商品名:トレハオース、林原商事販売)40重量部、蔗糖18重量部、親水性乳化剤としてのポリグリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエム0081H(HLB値14)、理研ビタミン販売)1.8重量部、蔗糖脂肪酸エステル(HLB値15)3.6重量部、第二燐酸ナトリウム5.4重量部及び第二燐酸カリウム3.6重量部をそれぞれ加えて溶解し、水相を調製した。このようにして調製した水相及び油相をそれぞれ均質機にとり、撹拌しながら65〜70℃で15分間加熱して予備乳化した後、印加する圧力を2段階(第一段階180kg/cm、第二段階50kg/cm)に変えて均質化した。次いで、UHT滅菌機に移し、145℃で2秒間加熱して滅菌した後、無菌均質機に移し、圧力を2段階(第一段階100kg/cm、第二段階50kg/cm)に変えつつ70℃でさらに均質化して、風味に問題のないユビキノールを富化したホワイトナーを得た。
【0110】
(実施例15) カスタードクリームの製造
鍋に卵黄2個をほぐし,実施例12で得たユビキノールを富化した濃縮乳100mlを2倍に希釈した溶液200mlの内大さじ2を加え、木べらで混ぜ、小麦粉大さじ2杯と砂糖40gを加えよく混ぜ合わせ、残りの濃縮乳の希釈液を徐々に加え全体にだまを作らないようによく混ぜ、90℃で30分間クリーム状になるまでに混ぜ煮上げ、粗熱をとりバニラエッセンスを加え良くかき混ぜる事により風味の良いユビキノールを富化したカスタードクリームを得た。
【0111】
(実施例16) シュークリームの製造
大豆油(商品名:大豆ゴールデンサラダ油、吉原製油(株)製)20%、硬化大豆油(mp40℃)60%、パーム油20%よりなる油脂組成物を50部、製造例1で得たユビキノールを1部、レシチンを0.3部、モノグリセリド0.3部、水16部、食塩2部を、60℃で、乳化タンクで15分間攪拌乳化したのち、15℃に急冷捏和し、ユビキノール含有マーガリンを得た。得られたマーガリン130g、実施例12で得たユビキノールを富化した濃縮乳65mlを水で2倍に希釈したもの130mlを鍋に入れ50℃でマーガリンを溶かし、マーガリンが完全に溶けて煮だってきたところで、ふるいにかけた薄力粉800gを加え混合して、澱粉をα化させた。200mlの全卵を数回に分けて添加し良く混合した。最後の全卵を添加する時に炭酸アンモニウム0.5gを良く全卵に溶解して添加した。次いで、直径10cmの丸い金口をつけた絞り袋を生地に詰め、ペーパーを敷いた鉄板の上に丸い形を作り、生地全体にきりふきで水をふきかけ、200℃に温めたオーブンの下段にいれて10分焼成し、十分ふくらんだ後、更に170℃で焼成しシュー生地を製造した。焼成後、網の上にのせてさまし、皮の上から1/3ぐらいのところを横に切り、その間に実施例15で調製したカスタードクリームを入れ、風味、食感に問題のないユビキノールを富化したシュークリームを作製した。
【0112】
(実施例17) チョコレートババロアの調製
鍋に実施例12で調製した濃縮乳の2倍希釈溶液250mlと砂糖20gを入れ火にかけ、沸騰直前に火を止め、予め用意した卵黄2個と砂糖20gを泡立てたものに、数回に分けて加え、かき混ぜ、弱火で加熱後、水でもどしたゼラチン6gをいれよくかき混ぜ、濾しながら、チョコレート50gを入れたボールに少しずつ入れかき混ぜた後、実施例11で得たクリーム100mlを泡立て、3回に分けて加え混ぜ、プリン型に流し入れ、冷蔵庫でよく冷やす事により、風味の良いユビキノールを富化したチョコレートババロアを得た。
【0113】
(実施例18) カレールウの製造
小麦粉20部と大豆油(商品名:大豆ゴールデンサラダ油、吉原製油(株)製)20部を用いて焙煎処理した小麦粉39部と食用油脂(豚脂と牛脂の混合脂)15部、製造例1で得たユビキノール1部、カレー粉20部、食塩10部、各種ブイヨン等の調味料15部を90℃で30分間加熱混合しユビキノールを富化したカレールウを調製した。何れも、風味、口当たりに問題無かった。又、製造例1で得たユビキノールの代わりに、製造例2で得たユビキノール(ユビキノール/ユビキノンの比率9/1)を用いる事により、同様にしてユビキノールを富化したカレールウを得た。
【0114】
(実施例19) ベジャメルソースの製造
まず、厚手の鍋に、大豆油(商品名:大豆ゴールデンサラダ油、吉原製油(株)製)100gを入れ、加熱しながら薄力粉100gと製造例1で得たユビキノール5gを1度に入れ、焦がさないよう注意しながら、90℃で20分間、木しゃもじで良くかき混ぜた。その後、火から下ろし、粗熱を取りホワイトルウを得た。更に冷たい牛乳1カップを入れ良くかき混ぜなめらかにし、10℃の牛乳1.5カップ加え、泡立て器にて、ツヤが出るくらいまで十分にかき混ぜ、10℃の牛乳2.5カップを加え良くかき混ぜた。その後、クローブを刺したタマネギ、月桂樹の葉を加え、とろ火で煮詰め、とろとろにした。月桂樹の葉、タマネギを取り出し、シノワで濾し、再び鍋に移し、弱火で焦げ付かない程度に火を入れ、風味、口当たりともに良好なユビキノールを富化したベジャメルソース550gを得た。
【0115】
(実施例20) マヨネーズの製造
食酢(酢酸濃度10%)5部、食塩2部、砂糖0.5部、マスタード粉末0.3部、水0.2部を混合器の中に加え、15℃〜20℃下で攪拌混合し水相を調製した後、米白絞油68部に卵黄7部、製造例1で得たユビキノール0.5部を加え攪拌乳化して得た乳化液(10℃〜15℃)を少しずつ加えながら15℃〜20℃下で攪拌し予備乳化した。次いで、コロイドミルを用いて仕上げ乳化を行いユビキノールを富化したマヨネーズを得た。得られたマヨネーズの旨味、こく味、口当たりは、市販のマヨネーズと同等であった。また、得られたマヨネーズよりユビキノールを抽出し、0.55重量%のユビキノールが含まれていることを確認した。
【0116】
(実施例21) フレンチドレッシングの製造
水33.1部に食酢(酢酸濃度10%)15部、砂糖8部、澱粉3部、胡椒0.5部、キサンタンガム0.4部を溶解後殺菌のため80℃、30分加温後、20℃まで冷却後、予め10〜15℃に保温した米白絞油40部、製造例1で得たユビキノール1部を加え、15〜20℃で攪拌し予備乳化を行い、その後コロイドミルを用いて仕上げ乳化を行いフレンチドレッシングを得た。得られたフレンチドレッシングの旨味、こく味、口当たりは良好であった。
【0117】
(実施例22) ポテトサラダの製造
皮をむいた馬鈴薯5部、人参1部を角切りにし、サランラップに包んだ後、電子レンジの根菜調理条件で加温し柔らかくした後冷却し、別途用意したさらしタマネギ2部を加え、最後に実施例20で調製したユビキノールを富化したマヨネーズを2部加え混ぜ合わせる事により風味と口触りの良好なユビキノールを富化したポテトサラダを得た。
【0118】
(実施例23) アイスクリームの調製
容器に卵黄10個分を溶きほぐし、砂糖250g、コーンスターチ10gをいれ良くかき混ぜ、実施例12で得たユビキノールを富化した濃縮乳の2倍希釈液1Lを75℃に加温し徐々に加え混ぜ合わせ、すいのうで濾し、90℃で45分間温め、焦げ付かさないようにゆっくりとどろりとなるまで混ぜた後、氷で冷却し、冷えた後、バニラエッセンス少々を加え、−20℃で攪拌冷凍し、固まって来たら、実施例11で調製したユビキノールを富化したホイップクリーム270gを泡立てた後加え、更に攪拌冷却し、容器に入れ冷凍し、風味と口当たりの良いバニラアイスクリームを得た。
【0119】
(実施例24) プリンの調製
実施例12で得たユビキノールを富化した濃縮乳の2倍希釈液1000mlを40℃程度まで温めて、砂糖250gと全卵250gを合わせたものに混合した。このプリン液を裏ごしした後プリン型に流し入れ150℃のオーブンで30〜40分湯煎焼きすることにより風味の良いカスタードプリンを得た。
【0120】
(実施例25) ピックル液及びトンカツの製造
大豆油(商品名:大豆ゴールデンサラダ油、吉原製油(株)製)5部、カゼインナトリウム0.1部、ピロリン酸4ナトリウム0.1部、食塩2部、製造例1で得たユビキノール0.2部を混合攪拌し、圧力ホモジナイザーを用い100kg/cmで乳化しユビキノールを富化したピックル液をえた。
トンカツ用ロース肉に対しピックル液を肉重量の20%相当インジェクションした後マッサージをかけ、一口サイズにカットし、バッター液に潜らせた後、パン粉を付けてフライし、ジューシーで風味のよいユビキノールを富化したトンカツを得た。
【0121】
(実施例26) 塗布用油脂組成物及びバターロールの製造
水68部に溶き卵2部を徐々に添加しながらホモミキサーで分散させ、70℃に加温した。次いで予め大豆油(商品名:大豆ゴールデンサラダ油、吉原製油(株)製)30部に製造例1で得たユビキノール1部を溶解させた油脂を徐々に添加し、更に10分間攪拌した後、142℃、2秒間殺菌し、圧力ホモジナイザーを用い100kg/cmで乳化しユビキノールを富化した塗布用油脂組成物を得た。
得られた塗布用油脂組成物を、発酵させたバターロール生地1個分当たり0.5g塗布し、200℃、9分間焼成し、艶と風味の良いユビキノールを富化したバターロールを得た。
【0122】
(実施例27) コロッケの製造
常法により調製したコロッケ中種にバッターミックス粉(商品名:バッターミックスU−869、理研ビタミン(株)製)、菜種油、水を1:2:4で混合したバッターを付け、パン粉を付け170℃でフライ後、コロッケを得た。得られたコロッケ1個(約40g)の表裏に実施例26で得た塗布用組成物を1g噴霧した。この様にして得られたユビキノールを富化したコロッケは、冷凍保存後電子レンジで調理しても、食感が良好で、風味も良かった。
【0123】
(実施例28) スナック菓子の製造
コーンフラワー55部、馬鈴薯澱粉13部、グラニュー糖3部、食塩0.5部及び水22部を二軸エクストルーダーに供給してバレル温度140℃で7秒間処理し、螺旋状に押し出し、これを30mm間隔で切断して、厚みが0.8mmのスナック生地を得た。得られたスナック生地を40℃、16時間予備乾燥後、コンベヤドライヤーにて、260℃、26秒間膨化処理した。得られた膨化処理後の生地100gに対して、実施例26で得た塗布用油脂組成物3gを噴霧して、風味、色艶の良いユビキノールを富化したスナック菓子を得た。
【0124】
(実施例29) うどんの製造
まず、大豆油(商品名:大豆ゴールデンサラダ油、吉原製油(株)製)20部、グリセリンモノ飽和脂肪酸エステル(商品名:エマルジーMS、理研ビタミン(株)製)2.5部、グリセリンモノ不飽和脂肪酸エステル(商品名:ポエムOL―200、理研ビタミン(株)製)0.8部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエムOL―100A、理研ビタミン(株)製)0.05部、蔗糖脂肪酸エステル(HLB−1)(商品名:DKF−10、第一工業製薬(株)製)1.5部、レシチン0.4部、製造例1で得たユビキノール1部よりなる油相部を混合、加熱、溶解し、油相とした。一方、水30部、還元澱粉糖化物(商品名:エスイー57(固形分75%)、日研化学(株)製)13部、ソルビトール(商品名:ソルビトールF(固形分70%)、日研化学(株)製)25部、配合の水相部組成物を混合、加熱し、水相とした。次に、上記油相と水相とを混合し、ホモミキサーで乳化し、更に攪拌、混合しながらユビキノールを富化した乳化油脂組成物を得た。次いで、上記で得た各油脂乳化物それぞれ3部に対し、小麦粉100部、水32部を加え常法により、混捏、成型、ロール圧延を行って得た、厚さ2.5mmの麺帯をNo.10の切刃で切り出し、生うどんを得た。得られた生うどんを沸騰水中で7分間ゆで、ゆでたうどんの状態および食感を判定したが、コシが十分にあるうどんであった。また、生麺を10日間冷蔵保存後、ゆで麺と同様に評価したところ風味、食感とも問題なかった。
【0125】
(実施例30) ミルクティーの製造
紅茶の葉の熱水抽出物50g、グラニュー糖60g、蔗糖脂肪酸エステル0.5g、重炭酸ナトリウム1gを加え溶解した後、実施例12で得たユビキノールを富化した加工用濃縮乳50gを添加し、水を加えて1000mlの風味の良い乳化物を得た。80℃に加熱後、缶容器(190ml)に充填し124℃、20分のレトルト殺菌を行い、油脂風味特有のこく味のあるユビキノールを富化したミルクティー缶飲料を得た。
【0126】
(実施例31) カフェオレの製造
実施例12で得たユビキノールを富化した加工用濃縮乳50gを、コーヒー抽出物50g、グラニュー糖60g、蔗糖脂肪酸エステル0.5g、重炭酸ナトリウム1gに配合攪拌乳化し、風味とこく味の良いユビキノールを富化したカフェオレを得た。
【0127】
(実施例32) 酸性飲料の製造
米白絞油100g取り、それぞれに、シュークロース・ジアセテート・ヘキサイソブチレート130g、製造例1で得たユビキノール2g及び天然ビタミンE1gを混合溶解して均一な油性材料混合物を得た。この混合物をグリセリン615g、デカグリセリンモノオレート(HLB12)60g及び水135gを混合溶解した溶液に加えて予備撹拌して分散させた後、T.K.ホモミキサー(特殊機化工業製)を用い5000rpmにて10分間乳化し、均一な乳化組成物を得た。別途、グラニュー糖200g、クエン酸5g、ビタミンC0.5gを適量の水に溶解し、クエン酸ナトリウムを用いてpH3.0に調整した後、2Lとして酸性飲料用シロップを調製した。このシロップ各180mlに上記で調製した乳化物をそれぞれ20mlを添加混合した後、ビンに充填後打栓し、85℃にて15分間殺菌後冷却し、ユビキノールを富化した酸性飲料を得た。
【0128】
(実施例33) コーヒー飲料の製造
蔗糖脂肪酸エステル(HLB16)6g、ソルビタン脂肪酸エステル(HLB7)8g、リン酸塩1g、カラギーナン0.5g、カゼインナトリウム65g、アスコルビン酸ナトリウム38g、水550gを混合し60℃に加温し溶解した。別途、米白絞油200g、硬化大豆油100g、蔗糖脂肪酸エステル(HLB1)2g、製造例1で得たユビキノール5g、天然ビタミンE0.5g、β−カロテン0.5g、レシチン0.3g、ゴマリグナン0.1gを混合し60℃にて溶解した。60℃に保温された水相部に、同じく60℃に保温された油相部を攪拌しながら流加し予備乳化した。次いで180kg/cmの圧力にてホモジナイズして乳化液を得た後、120℃、20秒のUHT殺菌を行い容器に充填することで、無菌乳化液を得た。次いで、焙煎コーヒー豆の熱水抽出物50g、グラニュー糖60g、蔗糖脂肪酸エステル0.5g、重炭酸ナトリウム1gを加え溶解した後、上記で得た無菌乳化液20gを添加し、水を加えて1000mlの乳化物含有コーヒー抽出液を得た。80℃に加熱後、缶容器(190ml)に充填し124℃、20分のレトルト殺菌を行い、風味の良いユビキノールを富化したコーヒー缶飲料を得た。
【0129】
(実施例34) チーズによる血中ユビキノール濃度の上昇
プロセスチーズ998重量部を加熱溶解し、製造例1で得たユビキノール2重量部、ユビキノン((株)カネカ製、純度99.2%)2重量部、製造例1で得たユビキノール4重量部とユビキノン((株)カネカ製、純度99.2%)6重量部の混合物2重量部をそれぞれ添加した後、冷却することにより、ユビキノール及び/又はユビキノンをこれらの総量として0.2重量%富化したプロセスチーズを得た。
【0130】
Crj:CD(SD)ラット雄性(体重260g〜300g)16匹を4匹毎4群群に分けた。第1群(ユビキノール群)はチーズにユビキノールを富化したもの、第2群(ユビキノン群)はチーズにユビキノンを富化したもの、第3群(ユビキノール/ユビキノン)はチーズにユビキノール4重量部とユビキノン6重量部の混合物を富化したもの、そして、第4群(対照群)はユビキノール及びユビキノンを添加しないチーズを、それぞれ、1日10gずつ与え、水は自由摂取として1週間飼育した。1週間目の朝、エーテル麻酔下、腹部大動脈より採血した。採取した血漿1.0mlに水2.0ml、エタノール4.0ml、n−ヘキサン10.0mlを順次加え、約5分間激しく振盪し、遠心分離して二層に分離した。有機溶媒層を分取し、残りの水層にn−ヘキサン10.0mlを加え同様の抽出操作を2回繰り返し、得られた有機溶媒層を合一し、減圧下溶媒を溜去し乾固物を得た。得られた乾固物を250μlのエタノール:1N塩酸(99:1、v/v)に溶解後、その10μlを高速液体クロマトグラフィーを用いて分析(高速液体クロマトグラフィーの条件は、カラム:YMC−PacKR&D ODS、250×4.6mm(YMC社製)、移動相:0.5M NaClO/COH:CHOH:CHCN:70%HClO(400:300:300:1、v:v)、検出波長:275nm、流速:1ml/min)し、血中のユビキノール及びユビキノンの濃度(ユビキノンとして評価)を求めた。その結果、対照群の上記血中濃度は4匹平均0.01μg/mlであったのに対し、ユビキノン群では0.41μg/ml、ユビキノール/ユビキノン群では0.50μg/ml、ユビキノール群では0.63μg/mlであった。ユビキノールを富化したチーズの摂取により上記血中濃度が有意に高くなっており、不足しがちなユビキノールを好適に補給できることが確認できた。
【0131】
(参考例1)
製造例1で得られたユビキノール(結晶)と、表1に示した油脂に6%濃度となるようにユビキノール(結晶)を添加し、空気中、遮光下、40℃で保存した。3日後のユビキノール/ユビキノンの比率を測定した結果を表1に示す。なお、中鎖脂肪酸トリグリセリドは炭素数8の比率が6割、炭素数10の比率が4割のものを用いた。
【0132】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明のユビキノールを富化した油脂含有食品は通常の油脂含有食品と同様に摂取することにより、生体に必要不可欠であるにも関わらず減少・不足しがちなユビキノールを補給することができる食品であり、ユビキノール不足により引き起こされる疲労や種々の不健康状態の予防・改善用食品として有用である。本発明のユビキノールを富化した油脂含有食品は、通常の生活をしながら、飽きることなく、継続的にユビキノール不足を改善できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユビキノールを富化した油脂含有食品。
【請求項2】
ユビキノンを更に含有する請求項1記載の油脂含有食品。
【請求項3】
ユビキノール/ユビキノン=1/2(重量比)以上である請求項1又は2記載の油脂含有食品。

【公開番号】特開2009−278994(P2009−278994A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170499(P2009−170499)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【分割の表示】特願2003−561351(P2003−561351)の分割
【原出願日】平成15年1月20日(2003.1.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サランラップ
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】