説明

ユーティリティガスストリームから油を除去するための方法および装置

本出願は、ガスプロセスストリ−ムからガスユーティリティストリ−ムを製造し、特に、乾燥ガス密封部に使用する前に、ストリ−ムから油汚染物除去する方法およびシステムに関する。該方法およびシステムは、圧縮器、タービン、およびポンプなどの回転機器および他の設備の乾燥ガス密封部に使用するガスストリ−ムを処理するために、圧力スイング吸着プロセス、温度スイング吸着プロセス、か焼プロセス、および不活性ガスパージプロセスを含む少なくとも一つの動的スイング吸着プロセスを含む。使用される吸着材料は、マイクロポーラス材料およびメソポーラス材料で構造化された表面積が大きい固体を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は2008年4月30日に出願された、米国仮特許出願第61/125,939号の利益を主張する。
【0002】
本発明は一般にガススリップストリ−ムの処理方法に関する。特に、本発明はユーティリティ要素でユーティリティガスとして使用されるプロセススリップストリ−ムから油を除去するプロセスおよび装置に関する。
【背景技術】
【0003】
このセクションでは、読者に、以下に記述および/または特許請求の範囲に記述される本発明の例示的な実施形態に関連するさまざまな技術の態様を紹介することが意図される。この議論は、本発明の特定の技術の理解をより容易にするための情報を読者に提供することに役立つと信じる。したがって、これらの記述はこの観点から読まれるべきであり、必ずしも従来技術の承認ではないことを理解するべきである。
【0004】
炭化水素容器から環境を意識して、効率的な油およびガスの回収をすることは多次元の問題であり、世界的に最も難しいエネルギー問題の1つになった。さまざまなガスの該容器への注入は、隔離、圧力維持、または改良された油回収作業に現在利用されている。近年、注入圧縮器技術は進歩し、いくつかの油およびガス分野の開発計画では隔離または油増進回収(EOR)作業のために、地下層に酸または酸性ガスを注入する注入圧縮器技術を取り入れている。圧縮器シャフトは、一般には、ガス流体フィルムを使用して回転面と固定面の間を密封する原理を利用する、乾燥ガス密封器(DGS)を使用して密封されている。この「密封ガス」は、長い期間の信頼性のある運転のために、密封部に要求される潤滑特性および冷却特性を提供する。密封ガスは、微粒子、液体、および密封面間で膨張した場合に密封ガスから凝結する重質成分を含むべきではない。
【0005】
一般に、乾燥密封圧縮器は注入ガスストリ−ム(たとえば酸または酸性ガスストリ−ム)を、1億スタンダード立方フィート毎日(SCFD)を超えるストリ−ム流速で約4、000重量ポンド毎平方インチ絶対圧(psia)を超える圧力で加圧する。失敗無く運転するために、圧縮器の中の密封部は、密封面の間で膨張して圧力が降下する場合に、液相を凝結しないガスストリ−ムで潤滑化されるべきである。密封ガス圧力は圧縮器の吸気圧力より大きいが、圧縮器の排気圧力未満である。
【0006】
非凝結密封ガスを製造する1つの方策は、精製した低圧力(たとえば約800psia未満)メタンまたは窒素ストリ−ムを往復圧縮器の中で圧縮することである。往復圧縮器は、特に高圧力(たとえば約2,000psiaより大きい)で、いくらかのガスと混合するシリンダー油で潤滑される。圧縮後に、ガスストリ−ムは、蒸気または同伴液滴の形態で油を含む。蒸気は一般に濾過して除去することができず、高圧での同伴液滴の濾過は概して能率的でない。従って高圧メタンストリ−ムの中の油は、密封部を通過して、または密封部の圧力を制御する圧力調整器で圧力が降下すると、混入される液相またはガスから「滴下する」液相を有する。密封ガスの中に「持ち越される」このシリンダー油は、標準乾燥密封圧縮器の損傷および早期故障を引き起こすことが予期され、重大な影響のある動作停止時間を生じさせ、生産が低下する。
【0007】
高圧酸性ガスサービスなどのいくつかの場合には、密封ガスは燃料ガスシステムなどのユーティリティ供給源から得られてきた。燃料ガスは主にメタンを含むが、若干の重質炭化水素、CO2、N2および少量のH2Sを含む。圧縮器を応用した燃料ガスの一般的な供給源は、乾燥密封圧縮器に供給されるプロセスガスから取り込まれるスリップストリ−ムである。低圧力(たとえば乾燥密封圧縮器の吸気圧力と同様)では、燃料ガスとして使用するためのスリップストリ−ムを調節するために、吸収、ガス/液相分離、およびグリコール脱水などの多種多様な技術が使用される。
【0008】
乾燥密封圧縮器の高圧排気から取り込んだスリップストリ−ムを精製することは、技術的な課題である。燃料ガスまたは別のユーティリティガス供給源からのガスは、圧縮されて密封ガスとして使用される。プロセスガスの使用によって遭遇する液体汚染物または液体滴下を避けるために、該ガスが使用される。これは追加のプロセス、燃料ガスを生成するための分離ユニットおよび分離された密封ガス昇圧圧縮器(たとえば往復圧縮器)を必要とするが、それ自体が油および微粒子汚染物の供給源となり得る。高圧縮率および低流量のために、往復圧縮器はこのサービスに通常使用される。この種の往復圧縮器は、一般に、特に高圧でガスといくらか混合するシリンダー油で潤滑される。従って、高圧で濾過して除去することができないが、密封部を通過して、または密封部の圧力を制御する圧力調整器で圧力が降下すると、ガスは凝結または「滴下」する。密封ガスの中に「持ち越される」このシリンダー油は、標準DGSの損傷および早期故障を引き起こす可能性がある。
【0009】
米国特許第5,976,221号はポリマー吸着を使用して蒸気から油を除去する方法を開示する。該方法では約99.9%の油だけを除去する。この結果は良好であるが、少量の油ですらDGSを損傷させ、重大な影響のある動作停止時間を生じる。
【0010】
米国特許第4,325,565号は油を吸着する前にストリ−ムの中の油を完全に気化するために、ガスストリ−ムを加熱することを含む油の除去方法を開示する。この技術は効率的であるように見られるが、有益な結果を達成するには、追加のエネルギーの使用およびプロセシング機器が要求される。
【0011】
したがって、乾燥密封部に使用するためにプロセスガスから油を除去する改良された方法が必要となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの実施形態では、ガス供給ストリ−ムを処理するシステムが提供される。該システムは、少なくとも一つの構造化吸着床を含むスイング吸着ユニットの中にガス供給ストリ−ムを通過させるように構成される、ガス供給ストリ−ムインレットを含む選択的成分除去システムを含む。該システムでは、ガス供給ストリ−ムは、多量の油滴と多量の油蒸気とを含み、少なくとも圧力が約1,000重量ポンド毎平方インチである。実質的に油を含まないガスアウトレットストリ−ムを供給するために、少なくとも一つの構造化吸着床は、少なくとも前記多量の油滴の一部および前記多量の油蒸気の一部を除去するように構成される。少なくとも一つの構造化吸着床は動的スイング吸着プロセスで再生される。
【0013】
本発明の別の実施形態では、ガス供給ストリ−ムを処理する方法が提供される。該方法は、その中に多量の油を含むガス供給ストリ−ムを提供するステップと、ユーティリティ要素で使用するためのユーティリティストリ−ムを形成するために、少なくとも一つのスイング吸着プロセスユニットを含む選択的成分除去システムを使用して、ガス供給ストリ−ムを処理するステップであって、少なくとも一つのスイング吸着プロセスユニットが少なくとも前記多量の油の一部を除去するように構成される構造化吸着床を含むステップと、か焼プロセスでスイング吸着プロセスユニットを再生するステップと、ユーティリティストリ−ムをユーティリティ要素に供給するステップであって、ユーティリティストリ−ムが前記ユーティリティ要素に適合しているステップと、ユーティリティ要素の中でユーティリティストリ−ムを利用するステップとを含む。
【0014】
本発明の第3の実施形態では、構造化吸着接触器が提供される。接触器は、インレット端部と、アウトレット端部と、インレット端部からアウトレット端部に延在する複数の開口フローチャネルを含む。複数の開口フローチャネルの一部がインレット端部で密封され、残りの複数のフローチャネルがアウトレット端部で密封される。開口フローチャネルの表面は、混合物の第1の成分に対する選択性が混合物の第2の成分に対する選択性よりも大きい吸着材料を含む。
【0015】
本発明の技術の前述の利点および他の利点は、以下の詳細な説明および図面を参照することによって明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ガス供給ストリ−ムから密封ガスを調製する従来のシステムを示す。
【図2】本発明によるガス供給ストリ−ムから密封ガスを調製する選択的成分除去システムを示す。
【図3】図2のシステムを使用してガス供給ストリ−ムから密封ガスを調製するプロセスのフローチャートである。
【図4】図3の方法により動作する図2のSCRS概略プロセスの例示的な実施形態を示す。
【図5A】図2および図4のシステム、および図3のプロセスに使用するための平行チャネル接触器の構造化吸着床構造の例示的な実施形態を示す。
【図5B】図2および図4のシステム、および図3のプロセスに使用するための平行チャネル接触器の構造化吸着床構造の例示的な実施形態を示す。
【図6】図2および図5A〜図5Bに開示された吸着床と組み合わせて使用される、例示的なセグメント化された接触器を示す。
【図7】処理済み密封ガスと、未処理密封ガスとの相エンベロープを比較する例示的なグラフを示す。
【図8】ラングミュアの等温式のモデリングに基づいて、吸着剤チャネルを通って進む油先端の例示的なグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の詳細な説明および実施例では、本発明は好ましい実施形態と関連して記述される。しかしながら、以下の記述は本発明の特定の実施形態または特定の使用の範囲であり、以下の記述は例示だけを目的としている。したがって、本発明は以下に記述される特定の実施形態に限定されるわけではなく、むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲の真の範囲に含まれる、すべての代替的形態、変更形態、および均等物を含む。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「構造化吸着床」はお互いに構造的関係を有する多量の吸着材料を意味し、材料が入れ物に収容されない場合であっても、構造的関係は維持される。この用語は入れ物に単に入れられた吸着剤粒子を含む床を除外する。例示的な構造的関係には、例えば、モノリシック「れんが」層表面、チャンネル化されたモノリス、および同種のものが含まれる。構造化吸着剤は、少なくとも選択的吸着材料と複数の実質的に平行なフローチャネルを含む。選択的吸着材料は表面積が大きい固体を含み、ポリマーまたは無機材料を除外する。しかしながら、構造化吸着床は、吸着剤粒子を結びつけるための「バインダー」を含んでもよい。このバインダーはポリマーまたは無機材料であってもよい。構造化吸着床は、また、分子が選択的に吸着される場合に、構造化吸着床の温度上昇を制限する熱質量としての機能を果たす材料を含んでもよい。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「選択的成分除去システム(SCRS)」は第2の成分よりも第1の成分の選択性が大きくなるように(例えば、メタンよりも油を多く吸着する)構成される(成分の1つは典型的にはガス成分である)システムまたは要素の群を意味する。SCRSは、特別の定めがない限り、選択性を有するどのような手段を含んでもよく、圧縮器、フィルター、および、特に第2の成分から第1の成分を選択的に除去することに関連する他の機器を含んでもよい。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「表面積が大きい固体」はメソポーラス固体およびマイクロポーラス固体から本質的になる多量の固体を意味する。
【0021】
用語「動的スイング吸着プロセス」は、圧力スイング吸着(PSA)プロセス、温度スイング吸着(TSA)プロセス、か焼プロセス、および分圧スイングプロセスまたは置換パージ吸着(PPSA)プロセスなどのプロセスを含み、これらのプロセスの組み合わせも含む。これらのスイング吸着プロセスは高速サイクルで実施することができ、この場合には高速サイクル温度スイング吸着(RCTSA)、高速サイクル圧力スイング吸着(RCPSA)、および高速サイクル分圧スイングまたは高速置換パージ吸着(RCPPSA)と称する。用語、スイング吸着は、これらの高速サイクルプロセスをも含む。スイング吸着プロセスおよびそれらの天然ガス分離への応用のいくつかの例が、参照によって本明細書に援用する、米国特許出願第60/930,827号、米国特許出願第60/930,826号、米国特許出願第60/931,000号、米国特許出願第60/930,993号、および米国特許出願第60/930,998号に記載されている。
【0022】
圧力スイング吸着(PSA)プロセスは、圧力が加わると、マイクロポーラスまたはメソポーラス吸着材料の細孔構造、またはポリマー材料の自由体積の中でガスが吸着される傾向があるという原理に基づいて動作する。圧力が高くなるほど、ガスがより多く吸着される。圧力が減少すると、ガスは放出され、または脱着される。異なるガスは吸着剤のミクロ細孔すなわち自由体積を異なる範囲で充填する傾向があるので、PSAプロセスは混合物の中のガスを分離するために使用することができる。天然ガスなどのガス混合物の場合には、例えば、メタンよりも多くの窒素で充填されるポリマーまたはマイクロポーラス吸着剤を含む、圧力が印加された入れ物を通過すると、窒素の一部または全部が吸着剤床の中に留まり、入れ物から排出されるガスはメタンで濃縮される。床が窒素を吸着する能力の限界に達すると、圧力を減圧して床を再生することができ、それによって吸着窒素を放出する。そして別のサイクルの準備が整う。
【0023】
温度スイング吸着(TSA)プロセスはPSAプロセスと同一原理で動作する。吸着剤の温度が上昇すると、ガスが放出され、または脱着される。ガス混合物の中から一つ以上の成分を選択的に抽出する吸着剤が使用される場合に、吸着床の温度を周期的にスイングさせることによって、TSAプロセスを混合物の中のガスを分離するために使用することができる。
【0024】
高速サイクル圧力スイング吸着(RCPSA)プロセスは、多くの分離された吸着床区画すなわち「チューブ」を含む回転式の吸着モジュールを通過するガスの流れを導くために、動的な(たとえば回転式の)弁システムで構成することができ、回転式のモジュールがサイクル動作を完了するたびに、回転式の吸着モジュールのそれぞれは吸着ステップと脱着ステップを連続的に繰り返す。回転式の吸着モジュールは、通常は、回転式の吸着モジュールの両端部にある、2つの密封プレートの間で保持される多重チューブを含み、密封プレートは分離したマニホールドを含む固定子と接触し、インレットガスはRCPSAチューブに導かれ、RCPSAチューブを出る精製処理された生成ガスおよび排ガスは回転式の吸着モジュールから排出される。密封プレートおよびマニホールドの好適な配置によって、多くの別々の区画、すなわちチューブはどんなときでも完全なサイクルの特徴的なステップを通過させることができる。それにひきかえ、従来のPSAでは、RCPSA吸着/脱着サイクルに要求される流れおよび圧力の変動が、1サイクル当たり秒の単位で大きく個別に増加して変化することで、圧縮および弁機構によってもたらされる圧力および流速の脈動を取り除く。この形態では、RCPSAモジュールは、回転吸着モジュールの円径路の周囲に、角度を付けて間隔を取って配置された弁要素を含むので、完全なRCPSAサイクルの中の次の圧力/流れ方向ステップを実施するために、それぞれの区画は適切な方向と圧力で連続的にガスフロー流路と繋がる。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「スイング吸着ユニット」は、少なくとも吸着ステップおよび再生ステップに耐えることができる構造化吸着床を含むシステムを意味し、少なくとも温度または圧力の一つの大きさが著しく(たとえば低値から高値に)変化する(すなわち「スイング」する)。ある種の実施形態では、スイング吸着ユニットはスイング吸着プロトコル(PSA、RCPSA、TSA、RCTSA、PPSA、RCPPSA、またはこれらの組み合わせ)の1つを実施してもよい。
【0026】
乾燥ガス密封(DGC)圧縮器などの設備に使用するためのガス供給ストリ−ムを調製するために、実行されなければならない分離応用の分野には、露点制御、無毒化/無害化、腐食保護/制御、脱水、加熱値、調節、および精製が含まれる。一つ以上の応用を包含する設備のいくつかの実施例には、燃料ガス、密封ガス、非飲料水、ブランケットガス、計測器用ガスおよび制御用ガス、冷却剤、不活性ガスの生成、および炭化水素の回収がある。
【0027】
本発明は、密封面間の凝結および標準乾燥密封圧縮器の早期故障を防ぐために、密封ガスから油を除去するためのスイング吸着ユニットおよびプロセスに関する。スイング吸着ユニットは、構造化吸着床を含む。吸着サイクルの間に、スイング吸着床の中の選択的吸着材料が高圧密封ガスから同伴油滴および油蒸気を除去する。選択的吸着材料に好適な材料には、アルミナ、メソポーラス固体、またはマイクロポーラス固体などの表面積が大きい固体が含まれる。バインダー、充填剤、熱吸着材料、またはこれらの組み合わせも選択的吸着材料と組み合わされてもよい。吸着の効率を高め、密封ガス純度の要求を満たすために、選択的吸着材料(「吸着剤」)が構造化吸着床としてと組み合わされることが好ましい。本発明に使用可能な構造化吸着剤は平行チャネル接触器またはモノリスに類似する「煤煙フィルター」またはこれらの組み合わせとして形態を合わせてもよい。これらの構造は、選択的吸着材料に取り囲まれる多数の実質的に平行なフローチャネルを含む。吸着先端が構造化吸着床の端部を突破する前に再生サイクルが開始される。油は強力に吸着している(たとえばキャリア流体(天然ガスであってもよい)よりも油の選択性の比が高い)ので、好ましい再生技術には、吸着剤の加熱、吸着油を置換する吸着剤にパージ材料を通過させること、および、か焼が含まれる。
【0028】
構造化吸着床を熱的に再生する、つまり、か焼する場合には、加熱器および熱交換器を組み合わせることが可能であるので、構造化吸着床の中への流れ、および構造化吸着床からの流れを制御するバルブに高温ガスを通過させないことができる。いくつかの高圧バルブは、約250摂氏温度(℃)を超える温度では機能できないエラストマー密封部、すなわちエラストマー成分を含むので、多くの場合この配置は好都合である。
【0029】
シリンダー油は、往復圧縮器などの別々に潤滑されたシリンダーのための潤滑剤として機能する。シリンダー油はバルブ、ピストンリング/シリンダーライナ壁界面を円滑にし、動的にガスを密封する。摩擦を防ぎ、腐食を減らし、コロイド状材料を分散させ、酸化を防ぐ異なる粘度、異なる粘度指数(すなわち温度依存性粘度)および異なる添加剤パッケージのグレードの範囲でシリンダー油を利用できる。ASTM試験法D445/446によって決定される40℃でのシリンダー油の粘度は75CStから300CStの範囲であり、100℃での粘度は15CStから60CStの範囲が好ましい。ISO試験法3448によって決定されるISO粘度グレードは70から300の範囲が好ましい。ASTM D2270によって決定される粘度指数の215から250の範囲も望ましい。シリンダー油が作製されるベースストックは天然(すなわち鉱物)、合成、または天然および合成の材料の混合物であってもよい。天然および合成材料の混合物であるシリンダー油の例には、オリゴマーポリイソブチレン粘性化剤を含む鉱油ベースストックから作製される油がある。
【0030】
好ましい実施形態では、シリンダー油はエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのランダムコポリマーを含む合成物である。これらのエチレンオキシド/プロピレンオキシドランダムコポリマーはしばしばポリグリコールと称し、冷水で溶解性を有する。より好ましい実施形態では、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されるポリグリコールの平均分子量は500グラム/モルから10,000グラム/モルの範囲である。さらにより好ましい実施形態では、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されるポリグリコールの平均分子量は、1,200グラム/モルから2,500グラム/モルの範囲である。
【0031】
多くの種類の油が本発明で使用されるが、低灰または無灰シリンダー油を使用することが好ましい。例えば熱重量分析(TGA)による油の燃焼および残留物の秤量によって、油の灰分を評価することができる。低灰油とは完全酸化(すなわち燃焼)後の残留物が、製造されたシリンダー油の0.5重量パーセント(質量%)未満であるものであり、好ましい実施形態では灰分は製造されたシリンダー油の0.01質量%未満である。0.01質量%未満の灰分を含む合成シリンダー油の例には、エチレンおよびプロピレンオキシドのオリゴマーがある。
【0032】
次に図を参照すると、図1はガス供給ストリ−ムから密封ガスを調製する従来のシステムを示す。システム100は、インレットガスとして低圧力ガスストリ−ム102、および、アウトレットガスとして濾過された密封ガスストリ−ム110を製造するためのフィルターユニット108(たとえば合体フィルター)用の加圧密封ガスストリ−ム106を製造する密封ガス圧縮器104を含む選択的成分除去システム(SCRS)101を含む。濾過された密封ガスストリ−ム110は密封ガス制御パネル112に送出され、ストリ−ム110は低圧力密封ガス114、中圧力密封ガス116、および高圧密封ガス118に分離される。システム100は、ウェル130に注入する加圧酸性ガスストリ−ム128を製造する低圧力酸性ガス注入圧縮器122、中圧力酸性ガス注入圧縮器124、および高圧酸性ガス注入圧縮器126に、供給される酸性プロセスガスストリ−ム120をさらに含む。注入圧縮器122、124、および126は、それぞれ低圧密封ガス114、中圧密封ガス116、および高圧密封ガス118を使用して動作する。
【0033】
低圧力(LP)ストリ−ム102は約800重量ポンド毎平方インチ絶対圧(psia)未満であるが、加圧ストリ−ム106は約1,500psiaを超えて約3,500psiaまでの圧力を有する。LPガスストリ−ム102はさまざまな成分パーセントであってもよい。1つの例示的な実施形態では、LPストリ−ム102は、メタン(たとえば約60モル%から約90モル%)、他の軽質炭化水素成分(たとえばエタン、プロパン、ブタンなど)、および窒素を実質的に含む燃料ガスストリ−ムであり、非常に低量の、水、二酸化炭素、および硫化水素などの「汚染物質」も含む(たとえば約0モル%から約0.001モル%)。他の実施形態では、LPストリ−ム102は、酸性プロセスガスストリ−ム120から処理されるスリップストリ−ム、高純度の窒素ストリ−ム、または汚染物質の含有量が少ない他のガスストリ−ムであってもよい。加圧ストリ−ム106はLPストリ−ム102と実質的に同一組成であるが、さらに油蒸気および油滴(たとえばミスト)を含む。
【0034】
合体フィルター108はミストだけを除去でき、ガスストリ−ム中の油の飽和蒸気を十分に減らすことができない。従って、油飽和ガスストリ−ム110が(圧縮器122、圧縮器124、または圧縮器126の中の)密封面を通過する場合には、いくらかの量の液体(油)が滴下する。このように、完全な合体フィルター108であっても、いくらかの量の液体が密封部で滴下し、圧縮器122、圧縮器124、および圧縮器126は乾燥密封圧縮器として適切に動作しない。特に高圧では、合体フィルターの動作は理想からは、ほど遠く、油ミストの一部がフィルターを通過して圧縮器の密封部に入ることが予想される。密封部に入る液体油の量は蒸気として運ばれる量よりも非常に多いことが予想される。これらの量は密封部の摩擦を増加させて、密封部の摩損および早期故障を発生させるのに十分な量である。
【0035】
図2は本発明によるガス供給ストリ−ムから密封ガスを調製する選択的成分除去システムを示す。システム100およびシステム200の機能的に同等の要素は便宜のために同一の参照番号を付す。選択的成分除去システム(SCRS)202は、インレットガスとしての低圧力ガスストリ−ム102、アウトレットガスとして実質的に油を含まない密封ガスストリ−ム208を製造するための構造化吸着床206を含むスイング吸着ユニット204のための加圧密封ガスストリ−ム106を製造する密封ガス圧縮器104を含む。本発明を使用するためには、低圧力ストリ−ム102の組成は、密封面間で加圧または膨張させた場合に、ストリ−ム中の成分が液体として滴下しないことが好ましい。
【0036】
成分が液体として滴下するか否かを判定するために、燃料ガス組成ための相エンベロープが演算されてもよい。この演算は、一般に認められているペンロビンソンの状態方程式などの状態方程式を使用して実行される。モデル化されるガス組成にも、密封ガス圧縮器104から抽出されるどのような圧縮器油も含むべきではない。この相エンベロープを予測するために使用できる例示的な市販のソフトウェアパッケージは、アスペン・テクノロジー社から入手できるHysys2004.1である。この相エンベロープは、Y軸の圧力とx軸のエンタルピーとのプロットによって表示させることができる。密封面間の膨張は、膨張弁の動作に似たものとして取り扱われ、このようなプロットでは縦線である。縦線のx軸の切片は、密封ガスとして利用される温度および圧力での圧縮燃料ガスのモルエンタルピーである。縦線に沿った組成が完全にガスであり、この線が二相領域を横断しない限り、低圧力ストリ−ムは使用に好適な組成を有する。
【0037】
膨張によって二相領域に入る場合には、低圧力ストリ−ム102はプロセスで使用される前に調節されなけらばならない。この場合、圧縮器104へ供給するための調節されたガスストリ−ム205を製造するために、調節ユニット203が低圧力プロセスストリ−ム102を調節するために利用されてもよい。この調節ユニット203は凝結成分を除去するので、密封面間でガスが膨張した場合に二相領域に遭遇しない。1つの例では、低圧力プロセスストリ−ム102が、過剰量の重質炭化水素を含む燃料ガスの場合には、重質炭化水素除去装置を含む調節ユニット203が、調節されたガスストリ−ム205を形成するために利用される。重質炭化水素除去装置は、気相/液相分離を誘導するための吸着ユニットまたは冷却ユニットを含む。別の例では、低圧力プロセスストリ−ム102は、ほとんど水で飽和した燃料ガスである。この場合には、調節ユニット203は温度スイング吸収装置またはグリコール脱水機などの装置として水を除去するように構成される。相エンベロープのより詳細な例が下記の図7に関連して提供される。
【0038】
スイング吸着ユニット204および吸着床206は、ガス106から油ミストおよび油蒸気の少なくとも一部を除去するように構成されるので、凝結をせずに、乾燥密封圧縮器122、124、126の早期故障を発生させない。構造化吸着床206は充填床、構造化吸着剤、構造化吸着接触器または吸着剤を含む接触器であってもよい。構造化吸着床206はスイング吸着プロセスの中で再生される。
【0039】
SCRS202はシステム100と類似しているシステムで使用されもよいが、乾燥密封圧縮器を使用する、ガスストリ−ムから油を除去するためのどのようなシステムに使用されてもよい。1つの特定の実施形態では、システムは蓄圧器を密封ガス制御パネル112と一体化し、または、制御パネル112を蓄圧器で置き換えてもよい。さらに、乾燥密封圧縮器122、124、および126はどのような数および組み合わせで使用されてもよく、低圧ガスストリ−ム114、中圧ガスストリ−ム116、および高圧ガスストリ−ム118はどのように組み合わされてもよい。さらにもう一つの実施形態では、乾燥密封圧縮器122、124、126は油の回収または隔離を強化するためにかなりの量の二酸化炭素ストリ−ムを圧縮するように使用されてもよい。圧縮器122、124、および126は、動作させるために乾燥ガスストリ−ムを利用するどのような装置または一群の装置でもよく、少なくとも圧縮器、圧縮器群、ターボエキスパンダ圧縮器、ターボエキスパンダ発電機、ポンプ、燃焼式蒸気ボイラー、燃焼式プロセス加熱器、ガス機関、密封された直接駆動電動機、磁気軸受を備えるターボ機械、およびガスタービンを含むことに留意されたい。
【0040】
上術したように、インレットガスストリ−ム102は、多くの組成物を含有してもよく、さまざまな供給源から供給されてもよい。たとえば、インレットガスストリ−ム102は、少なくとも一つの炭化水素成分を含有してもよい。インレットガスストリ−ム102が天然ガスまたは随伴ガスを含有する場合には、生成物ストリ−ムが製造されてもよい。このような生成物ストリ−ムは、少なくとも、パイプラインによって市場に移送される精製されたガスストリ−ム、または液化天然ガス、または液体天然ガス、または採掘油田、地下の帯水層、別の地層などの地下の場所に注入されるガスストリ−ム、またはこれらの異なる生成物および場所の組み合わせである。1つの代替的な実施形態では、スリップストリ−ム212Aまたは212Bは、それぞれ、ガスストリ−ム120または注入ストリ−ム128から供給され、浄化のためにフィルターユニット214に向かい、インレットストリ−ム102に供給され、乾燥ガス密封ストリ−ム114、116、または118として使用される。
【0041】
注入動作などの高圧用途では、圧縮器の吸引力または密封圧力によって決まるが、少なくとも約100バールから少なくとも約500バールの範囲、一層好ましくは約200バールから約400バールの範囲、より一層好ましくは約250バールから少なくとも約350バールの範囲のインレットストリ−ム106で、スイング吸着ユニット204を動作させることが好ましい。これらの圧力は従来のスイング吸着ユニットで使用される圧力を上回っている。
【0042】
図3は、図2のシステムを使用してガス供給ストリ−ムから密封ガスを調製するプロセスのフローチャートである。このように、図3は図2を参照することで理解を深められる。方法300はブロック302で開始され、さらに、油を含むガスストリ−ム106を供給するステップ304と、多量の油の少なくとも一部を除去するために構造化吸着床206を使用してスイング吸着プロセスユニット204の中でガス供給ストリ−ム106を処理するステップ306と、ユーティリティガスストリ−ム210を製造するために、か焼プロセス中に構造化吸着床206を再生するステップ308と、ユーティリティガスストリ−ム210をユーティリティ要素(たとえば圧縮器122、124、または126)に供給するステップ310と、ユーティリティ要素の中の処理されたガスストリ−ム210を(たとえば乾燥密封圧縮器の中で乾燥密封ガスとして)利用するステップ312とを含む。プロセス300はブロック314で終了する。
【0043】
吸着プロセス306では、ガス供給102(あるいは105)は固体吸着材料206の床を通過する。このプロセスのための例示的な好適な吸着材料は、充填床、構造化吸着剤、構造化吸着接触器または吸着剤を含む接触器であってもよい。供給102の中の分子は固体吸着材料に吸着する。より強く吸着されるガス供給の成分がストリ−ムから除去され、すなわち、少なくともガス供給濃度は、ガス供給の初期濃度未満に大幅に減少する。
【0044】
燃料ガスまたは酸性ガスが乾燥密封ガスの供給源として使用される場合には、メタン、エタン、N2、CO2およびH2Sなどのガス供給中の軽い成分と比較して、油は高分子量であり固体吸着材料と強い相互作用があるために、油は最も強く吸収される成分である。油蒸気および同伴油滴の両方とも固体吸着材料に吸着される。従って、吸着プロセスでは、実質的に油を含まないガスアウトレットストリ−ムを供給するために、油の大部分はより軽い成分のストリ−ムから効率的に除去される。吸着プロセスは小分子と大分子との拡散時間の違いを利用する非平衡領域で実施される。ガス入力ストリ−ムの中の小さい成分は大きい油分子よりも速く拡散する。この結果、アウトレットストリ−ムから油を効果的に除去する。吸着は発熱プロセスであり、固体吸着材料の脱着または再生には、温度スイングプロセス、高温か焼、圧力スイングプロセス、不活性物質によるパージ、または、これらの任意の組み合わせを含んでもよい。これらの動的スイング吸着/脱着プロセスは高速サイクルで実施される。
【0045】
図4は、図3の方法により動作する図2のSCRS概略プロセスの例示的な実施形態を示す。このように、図4は図2および図3を参照して理解を深められる。システム400は、動的スイング吸着ユニット204、ガスインレットストリ−ム102、スイング吸着ユニット(SAU)204のためのインレットバルブ402bを通るインレットガスストリ−ム402を製造するフィルター108(任意要素)への加圧ガスストリ−ム106を製造する往復圧縮器104を含む選択的成分除去システム202を含む。調節ユニット203は示されないが、該ユニットはオプション機能であることに留意されたい。SAU204は、収容部404、パージインレットバルブ406bを含むガスパージストリ−ムインレット406、再生ステップ308のために床206を加熱するように構成される加熱器408を含む構造化吸着床206を含む。SAU204は、さらに冷却流体410、アウトレット熱交換器412、ベントストリ−ムアウトレット414およびバルブ414b、ユーティリティガスストリ−ムアウトレット416およびバルブ416bを含む。
【0046】
SCRS202は、さらに、冷却ジャケット420、電気予熱器422および蓄圧器418などのオプション機能を含んでもよい。1つの実施形態では、インレットガスストリ−ム106はフィルター108および制御バルブ402bを介して吸着ユニット204に注入される。フィルター108は合体フィルターまたは微粒子フィルターであってもよく、吸着床206を汚染しおよび不活性化するどのような外部からの粒子をも除去する。制御バルブ402bおよび406bはSAU204に供給される流体の流れを調節することができる。ストリ−ムは耐腐食合金、炭素鋼、または他の材料で構成される管で接続され、この管は好ましくは約100バールを超えるような高い圧力で流体を処理することができる管である。
【0047】
SCRS202の1つの例示的な実施形態では、SAU204は温度スイング吸着ユニットであり、ここでインレットガス102は吸着床206の中に供給されることによってステップ306で処理され、油などの汚染物質が床206に吸着される。再生ステップ308では、スイング吸着サイクルで床206を減圧し、床加熱器408で、か焼のために十分な温度(たとえば少なくとも約250℃から約500℃の間)に床206を熱的にスイングし、パージインレット406から低圧力空気ストリ−ムを流し、または、それらの組み合わせのいくつかを実施する。か焼の終了後に、別の吸着ステップ306が開始される前に、床206は冷却され、再加圧される。オプションの水冷却ジャケット420、またはインレットガス402(低圧力または高圧の何れか)を床206に流すこと、または冷却流体を接触器206として構成された床の中の分離された加熱/冷却チャネルに流すことの何れかによって、冷却を実施することができる。冷却後には、床206は別の油蒸気および油滴を含むインレットガス402の投入を受容する準備ができる。
【0048】
さらに、スイング吸着ユニット204から出てくる高温ガス416の温度を、バルブ416bを通過できる十分に低い温度に下げるために、熱交換器412は冷却流体410を利用するように構成される。選択的成分除去システム(SCRS)202は、構造化吸着床206から出てくるかもしれない塵または微粒子を捕えるために、フィルタ(図示せず)を下流に含んでもよい。
【0049】
ユーティリティ要素すなわち乾燥ガス密封圧縮器122、124、および126に向かうユーティリティ、すなわち密封ガス114、116、および118の流れを調節するために、アウトレットガスストリ−ム416は蓄圧器418および/またはガス制御パネル112に向かう。
【0050】
バルブ技術の選択は、インレットストリ−ム402または106の圧力、組成、および温度、および要求されるすべての加熱流体または冷却流体(たとえば410)の温度に部分的に左右される。すべての場合において、バルブ402b、406b、414b、および416bはバルブ本体から成分の漏出を防ぐ密封表面またはパッキングを含む。バルブ本体からの漏出量は、バルブ周囲の大気とバルブによって制御される1つストリ−ムまたは複数のストリ−ムとの間の差圧によって左右される。供給ストリ−ムが高圧(たとえば、70バールより大きい)で供給される場合には、バルブからの漏出速度は安全性および運用上の重要な懸念となり得る。たとえば、吸着ユニット204において酸性ガスを含有するH2Sを処理する場合には、少量の漏出であっても安全性および運用上の重要な懸念となり得る。本発明の1つの例示的な実施形態では、バルブまたはひと揃いのバルブ402b、406b、414b、および416bは供給ストリ−ム402または106の圧力の10%よりも高い圧力に加圧されて、別々の収容部に封入され、より好ましい実施形態では、収容部は供給ストリ−ム402または106の圧力の90%よりも高い圧力に加圧される。安全上の問題を防ぐために、H2Sが放出されるいかなる可能性をも検出するためのセンサーがあってもよい。
【0051】
例示的な実施形態では、スイング吸着ユニット204は、多重吸着床206A〜206X(1つだけ示す)を含む。好ましくは、少なくとも床206A〜206Xの一部が再生ステップ308を実施し、同時に他の吸着床では吸着ステップ306を実施する。多重床圧力スイング吸着構造および方法の一例が米国特許第7,276,107に開示され、多重床圧力スイング吸着(PSA)システムに関する教示内容を参照によって本明細書に援用する。PSAアプローチのシステムおよびステップは温度スイングアプローチに対して若干修正されている。多重吸着床206A〜206Xを有するユニットの例では、5〜10×106スタンダード立方フィート毎日(SCFD)の加圧された(たとえば約330バール)燃料、窒素、または原則的に無酸素の他のガスを処理する。
【0052】
多重構造化吸着床206A〜206Xを含むスイング吸着ユニット204の1つの例示的な設計では、それぞれの構造化吸着床は、直径が約2インチである約4メータの長さの単一チューブを内部に含み、スイング吸着ユニット204は6個の該チューブを含む。それぞれのチューブはそれ自体に制御バルブ402b、406b、414b、416b、加熱器408、冷却ジャケット420および熱交換器412を含む。吸着ステップ306は約6時間実施され、減圧、再生、床冷却、および再加圧のための合計時間は約6時間であってもよい。吸着ステップ306での吸着床の中のガス滞留時間は、約0.1秒から約100秒の間であり、好ましくは0.5秒から2秒の間である。
【0053】
高圧(330バール)吸着ステップ306の後に、床206は1気圧〜20気圧、好ましくは1気圧〜2気圧に減圧される。次に空気または加圧空気406を取り入れて、構造化吸着床206はチューブの外側の周囲を包む加熱器408によって約350℃に電気的に加熱される。内部の加熱器も使用することができ、床206に入る前に予熱器422の中で空気406を予熱することもできる。熱風406は構造化吸着剤に吸着される油をか焼させ、油をガスCO2ストリ−ムに変換し、場合によってはCOなどの他のガス生成物に変換する。高温アウトレットガス416は吸着床206を離れ、アウトレットバルブ416bに到達する前に、熱交換器412によって冷却される。か焼ステップ308後に、床206は冷却され、インレットガス402によって再加圧する前に窒素でパージされる。
【0054】
1つの例示的な実施形態では、か焼プロセスでは、熱波すなわちか焼波が構造化吸着床206の中を進むように設計されている。熱波は再生ステップ中の接触器または吸着床の中を移動する急峻な温度勾配または熱先端と見なされる。熱先端(すなわち急峻な温度勾配を有する領域)が移動する速さは、必ずしも定数ではない熱波速度と称する。熱波をか焼プロセスに導入する1つの例示的な方法は、吸着油を除去する、か焼反応が進行する温度に床206または接触器の入り口部だけを加熱することである。これは、急速に熱を床または接触器に伝達する速度で、熱風を床または接触器に通過させることで達成でき、床または接触器の質量と熱平衡させる。代替的な例示的な方法では、床206の入り口部の吸着剤だけを外部から加熱することを含む。一旦か焼反応が始まると、放出された熱が床206または接触器に伝えられ、急峻な反応先端が床206または接触器の中を進む。このように、吸着剤の中の油が先端の中で、か焼する(たとえば燃焼)。該先端は火の付いたタバコの中を進む反応先端と似た性質を持つ。いくつかの異なる代替的な再生方法も採用されてもよい。これらは、油をパージガスまたは洗浄媒体で置き換えることばかりではなく、油を脱着するために吸着床206を熱的スイングするステップも含む。高圧で油置換を実施すること、およびある構造では高圧で熱脱着を発生させることが可能である。すべての場合において、吸着ステップ306の後に再生ステップ308が続く。
【0055】
構造化吸着床206で使用される構造化吸着材料としては、アルミナ、チタニアまたはジルコニアなどの広い表面積(1グラム当たり約10平方メートル(m2/gm)より広く、好ましくは75m2/gmより広い)を有する固体、マイクロポーラスゼオライト(好ましくは約1マイクロメートル(μm)未満の粒度を有するゼオライト)、他のマイクロポーラス材料、メソポーラス材料、規則性メソポーラス材料、および、粘土、層状ケイ酸塩、層状酸化物などの層間特性を有する層状固体が挙げられる。これに限定されるわけではないが、これらの材料の例としては、炭素、活性炭、炭、カチオン性のゼオライト、高シリカ質のゼオライト、高シリカ質の規則性メソポーラス材料、ゾルゲル材料、アルミノホスフェート(ALPO)材料(主にアルミニウム、リンおよび酸素を含むマイクロポーラスおよびメソポーラス材料)、シリコアルミノホスフェート(SAPO)材料(主にシリコン、アルミニウム、リンおよび酸素を含むマイクロポーラスおよびメソポーラス)、MOF材料(金属有機骨格を含むマイクロポーラスおよびメソポーラス材料)およびZIF材料(ゼオライト型イミダゾレート骨格を含むマイクロポーラスおよびメソポーラス材料)が挙げられる。
【0056】
1つの好ましい実施形態では、ゼオライトは高シリカ質であり、その骨格の構造には12員環または14員環、およびより大きい員環が含まれる。高シリカ質のゼオライトとは、シリコンとアルミニウムの比(Si/Al)が50:1より大きい、好ましくは200:1より大きいゼオライトであると見なされる。骨格に12員環を有する該高シリカ質のモレキュラーシーブの例としては、ゼオライトベータ、BEC(ベータ多形C)、EMT(六角形のフォージャサイト)、IFR(MCM−58)、IWR(ITQ−24)、IWV(ITQ−27)、IWW(ITQ−22)、MEI(ZSM−18)、MOR(モルデナイト)、MOZ(ZSM−IO)、MSE(MCM−68)、MTW(ZSM−12)、SFE(SSZ−48)、SFO(SSZ−51)、SSY(SSZ−60)、VET(VPI−8)およびITQ−21、が挙げられる。14員環およびより大きい員環を有する高シリカ質のモレキュラーシーブの例としては、ETR(EST−34、Ga−シリカート)、CFI(CIT−5)、DON(UTD−I)、SFH(SSZ−53)、SFN(SSZ−59)、およびUTL(IM−12)、が挙げられる。規則性メソポーラス材料としては、例えば、M41Sファミリー−MCM−41、MCM−48、MCM−50、SBA材料−15、16、−11、−1およびMSUが挙げられる。M41Sファミリーの規則性メソポーラス材料は、特にガスストリ−ムから油を吸着することに好適である。さらに具体的には、直径4nm〜10nmの均一円筒状チャネルを有し、100m2/g〜1、500m2/gの比表面積を有し、0.1マイクロメートル〜10マイクロメートル、好ましくは1マイクロメートル未満の範囲の粒度を有する高シリカ質のMCM−41材料は、油蒸気および油滴に対して好ましい吸着特性を有することが期待される。約300バールを超える圧力のガスストリ−ムで油が運ばれてきたとしても、高シリカ質のモレキュラーシーブは約100℃未満の温度で非常に強い吸着特性を有することが期待される油吸着等温線を有する。
【0057】
1つの好ましい実施形態では、構造化吸着床206には、規則性メソポーラス材料が含まれる。規則性メソポーラス材料の例としては、M41Sファミリーの材料、SBA材料、MSU材料、およびカネマイトなど層状ケイ酸塩に由来するメソポーラス材料、メソポーラス材料の炭素レプリカ、および有機−無機メソポーラス複合物が挙げられる。これらの種類の規則性メソポーラス材料の記述は「Studie in Surface Science and Catalyi」vol148(エルゼビア社2004年)に示され、規則性メソポーラス材料の例を記載する部分は参照によって本明細書に援用する。
【0058】
例示的な実施形態では、吸着床206は、M41Sファミリーの材料(たとえばMCM−41、MCM−48、およびMCM−50)から選択される材料を含む。これらの材料は、容易に合成され、500℃を超える温度で熱的に安定であり、約20オングストロームから約100オングストローム(10-10m)の範囲に調整された明確な均一細孔サイズを有するので、好ましい。この熱安定性によって、吸着剤を再生するために使用される、か焼プロセス中の吸着剤の劣化量を減少させる。M41Sファミリーの材料のSi/Al比は5:1から100,000:1(事実上アルミニウムが無い)の範囲である。Si/Alの比が大きい(たとえば約200:1より大きい)M41Sファミリーに由来する材料を使用することが好ましい。これらの材料の中のチャネルシステムは一次元(たとえばMCM−41)または三次元(たとえばMCM−48)であってもよい。一次元または三次元チャネルの何れかの材料が吸着床206に使用できる。SBA材料(たとえば、SBA−15,16,−11,−1)も、MSU材料、およびカネマイトなど層状ケイ酸塩に由来するメソポーラス材料と同様に、500℃より高い温度で熱的に安定である。吸着剤を再生するために使用される高温度か焼プロセスの場合には、有機−無機メソポーラス複合物はあまり好ましくない。
【0059】
別の好ましい実施形態では、アルミナ、高シリカ質のモレキュラーシーブ、または高シリカ質のメソポーラス材料などの低酸性度マイクロポーラスまたはメソポーラス材料が使用できる。アルミナ、高シリカ質のモレキュラーシーブ、および高シリカ質のメソポーラス材料を、油を除去するスイング吸着システム204に使用することが好ましい理由の1つは、それらが低酸性度であり、熱再生、または、か焼ステップ308中にスイング吸着ユニットを加熱する場合に、割れにくく、吸着油を炭化させにくいからである。
【0060】
上述の材料は一般に細孔サイズが約10nm(100オングストローム(Å))未満であり、材料の全ての細孔サイズは約0.4nm(4Å)より大きいことに留意されたい。このように、0.4nmから10nmの範囲の細孔構造を有する構造化吸着材料でこのプロセスを実施することが好ましい。1つの好ましい実施形態では、吸着材料の細孔構造は0.5nmから100nmの範囲であり、さらにより好ましい実施形態では細孔構造は0.5nmから90nmの範囲である。これらの吸着材料のすべてで、重質炭化水素(2炭素原子よりも多くの炭素原子を含む炭化水素)に対するメタンに対して選択性が1よりも高い。
【0061】
スイング吸着ユニット204は、好ましくはビーズまたはペレット化した吸着剤粒子の何れかを含む吸着床206、平行チャネル接触器として形成される構造化吸着剤、吸着剤を通過する構造化された流れとして形成される吸着剤、またはこれらの組み合わせを含む。使用される吸着床または接触器206の物理的構造は、再生プロセス中に接触器が内部から加熱されるか、または外部から加熱されるかによって異なる。内部から加熱される床または接触器の場合には、再生ステップ中に接触器を加熱するために使用されるガスまたは流体は、吸着材料と直接接触する。このように、再生中に床または接触器を加熱するために使用されるガスまたは流体は、圧縮ガスストリ−ム106が吸着ステップ中に通過する同一のマクロ孔体積を通過する。吸着剤を加熱し、再生するために使用されるガスまたは流体は、圧縮ガスストリ−ム106が吸着ステップ中に流れる方向に対して、並流し、向流し、または直交して(すなわち、交差する)流れる。外部から加熱される接触器は、接触器206を加熱および冷却するために使用されるガスまたは流体を運ぶ分離された一連のチャネルを備える。1つの好ましい実施形態では、分離された一連のチャネルは密封され、接触器を加熱および冷却するために使用されるガスは、再生ステップ308中に放出される油または反応生成物とは混合しない。
【0062】
別の好ましい実施形態では、スイング吸着ユニット204の中の吸着床206は、構造化吸着剤を含む平行チャネル(すなわち平行通路)接触器を使用して形成される。平行チャネル接触器には、実質的に平行な、少なくとも一つの一連のフローチャネルが存在する。構造化吸着剤を含む平行チャネル(すなわち平行通路)接触器によって、最小の圧力降下で効率的な物質移動ができるようになる。ガスストリ−ムと吸着剤との間の効率的な物質移動は、低濃度の油を除去するには極めて重要である。構造化吸着剤を含む平行通路接触器を構成するアプローチは、米国特許出願公報第2006/0169142号、米国特許出願公報第2006/0048648号、国際特許出願公報WO2006/074343号、国際特許出願公報WO2006/017940号、国際特許出願公報WO2005/070518号、および国際特許出願公報WO2005/032694号に開示されている。
【0063】
平行チャネル接触器の幾何学的形態の例には、モノリスの1つの端部から他の端部に延在する複数の実質的に平行なチャネル;複数の管状部材、それぞれのシートの間にスペーサーを含む、または含まない積層の吸着剤シート;多層の螺旋状のロール部、螺旋状に巻き付けらた吸着剤シート、中空ファイバーの束の他に実質的に平行な固体ファイバーの束を含むさまざまな形態のモノリスを含まれるが、これらに限定されない。吸着剤はこれらの幾何学的形態にコーティングすることができる。また、多くの場合に、吸着材料、または吸着材料、バインダー、および吸着熱の温度変化を制限する材料の組み合わせから、直接、その形態を形成することができる。
【0064】
吸着剤から直接形成された幾何学的形態の例は、ゼオライト/ポリマー複合物をモノリスに押し出したものである。吸着剤から直接形成された幾何学的形態の別の例では、ゼオライト/ポリマー複合物から製造される、押し出された、または紡がれた中空ファイバーがある。吸着剤がコーティングされた幾何学的形態の例には、ゼオライトフィルムなどのマイクロポーラスで、低メソポアな、吸着剤フィルムでコーティングされる薄くて平らな鋼シートがある。直接形成される、またはコーティングされる吸着剤層はそれ自体が同一または異なる吸着材料の多層で構造化される。多層状吸着剤シート構造は参照によって本明細書に援用する米国特許出願公開第2006/0169142号に教示される。平行チャネルを形成するために平行プレートが使用される場合には、スペーサーが平行チャネル間の空間に存在してもよい。スペーサーの無い平行通路接触器の例は米国特許出願公報第2004/0197596号に記述され、高密度吸着剤構造を有する平行通路接触器の例は米国特許出願公報第2005/0129952号に記述される。
【0065】
平行チャネル接触器も、油を除去するために使用されるメソポーラス吸着剤またはマイクロポーラス吸着剤の何れかを含む。平行チャネル接触器は、接触器を形成するために使用される粒子(吸着剤、バインダー粒子、および加熱制御粒子または材料)の間の空間によって結果として生じる、メソポアおよびマクロポアの両方をも含む。メソポアおよびマクロポアは、平行チャネル接触器または従来の充填床接触器のどちらかに使用される、吸着剤の物質移動特性を改良することが、当該技術分野において知られている。従来の充填床接触器の中のメソポアおよびマクロポアの存在による物質移動特性の改良については、幅広く議論されてきた。例えば米国特許第6,436,171号および米国特許第6,284,021号参照。平行チャネル接触器の中のメソポアおよびマクロポアの存在による物質移動特性の改良は欧州特許第1413348号で論述されている。この分野の教示内容は、スイング吸着サイクルを動作させるのに十分良好な物質移動特性を得るためには、多くのメソポアおよびマクロポアが、吸着剤粒子または吸着剤の層に必要だということであった。選択的分離が発生する吸着剤の中のミクロ細孔構造に、簡単にアクセスできる相当量のメソポアおよび/またはマクロポアが無ければ、十分な物質移動特性が達成されることは期待できない。
【0066】
しかしながら、小量のメソポアおよびマクロポアによって、良好な物質移動特性を有する平行チャネル接触器を形成することができることが近年見出され、参照によって本明細書に援用する国際特許出願番号PCT/US2008/06071号、国際特許出願番号PCT/US2008/06076、国際特許出願番号PCT/US2008/06068、国際特許出願番号PCT/US2008/06073、および国際特許出願番号PCT/US2008/06067の出願に開示されている。
【0067】
構造化吸着床206の構造も、吸着剤を再生するために使用される方法によって異なる。か焼または温度スイングプロセス中に構造化吸着剤が再生される場合には、加熱器408によって間接的に熱が供給され、または、構造化吸着床206を通る予熱器422を通じて流れるガスまたは流体402または406によって、直接熱が供給されてもよく、または、構造化吸着床206(適切な電気伝導率で作製された)を直接電気的に加熱(図示せず)してもよい。熱が電気的に(外部からまたは内部から)供給される場合には、構造化吸着床206の長さ方向に沿った熱波の通過を促進するために、加熱要素に区分することは都合がよい。分離された通路を有する平行チャネル接触器を構成することもでき、その結果、加熱および冷却流体またはガスが吸着剤とは接触しないで流れることができる。たとえば、平行チャネル接触器は熱交換器の管壁に吸着剤がコーティングされたシェルアンドチューブ熱交換器に類似した構成とすることができる。別の例示的な構造は、処理されるガスを運ぶ加熱通路および冷却通路を不透過性コーティングによって分離する、膜状モジュール形態の中空繊維が螺旋状に巻き付けらた接触器または中空繊維のモノリシック接触器を含む。
【0068】
図5A〜図5Bは、図2および図4のシステム、および図3のプロセスに使用するための、平行チャネル接触器の構造化吸着床構造の例示的な実施形態を示す。このように、図5A〜図5Bは図2〜図4を参照することで理解を深められる。図5Aはモノリシック平行チャネル接触器500Aを、等角図502A、断面図502B、および詳細図502Cで示す。円筒状モノリス500Aは、複数の平行フローチャネル504A〜504Xを含む。これらのフローチャネル504A〜504X(これらはまとめてフローチャネル504と称する)の直径(チャネル間隔)は、供与される接触器のすべてのチャネル504のチャネル間隔が実質的に同じ寸法である場合には、約5マイクロメートルから約1、000マイクロメートルであり、好ましくは約50マイクロメートルから約250マイクロメートルである。チャネルは、これに限定されるものではないが、円形、四角形、三角形、および六角形を含むさまざまな形状に形成することができる。チャネル間の空間は、構造化吸着剤505によって占められている。図に示されるように、チャネル504はモノリス500Aの体積の約25%を占め、吸着剤505はモノリス500Aの体積の約75%を占める。吸着剤505はモノリス500Aの体積の約50%から約98%を占めることができる。吸着剤層506の厚さも変化させることができる。たとえば、チャネル直径が約50マイクロメートルから約250マイクロメートルの範囲である場合には、吸着剤層506の厚さは、接触器の全体が吸着剤から構成されていない場合には、約25マイクロメートルから約2,500マイクロメートルの範囲であることが好ましい。チャネル直径が50マイクロメートルの場合には、吸着剤層506の厚さは約25マイクロメートルから約300マイクロメートルの範囲が好ましく、約50マイクロメートルから約250マイクロメートル範囲がより好ましい。
【0069】
縦軸に沿った断面図502Bは、モノリスの長さ方向に延在する供給チャネル504を示し、フローチャネル504の壁はすべてバインダーを含む吸着剤505から形成される。断面図502Cは、固体吸着剤(たとえばマイクロポーラスまたはメソポーラス)粒子510A〜510X(510)および放熱版として機能する固体粒子(熱質量)508A〜508X(508)を含む吸着剤層506を示す。吸着剤層506は、さらに、粒子510および粒子508との間に遮断剤(図示せず)および開口メソポアおよび開口マイクロポア512A〜512X(512)を含む。図に示されるように、マイクロポーラス吸着剤粒子510は吸着剤層506の体積の約60%を占め、熱質量の粒子508は体積の約5%を占める。この組成物では、空隙率(たとえばフローチャネル)はマイクロポーラス吸着剤粒子510が占める体積の約55%である。吸着剤510(たとえばマイクロポーラスまたはメソポーラス)の体積は吸着剤層506の体積の約25%から吸着剤層506の体積の約98%の範囲であってもよい。実際に、加熱制御のために使用される固体粒子508の体積分率は約0%から約75%の範囲であり、好ましくは約5%から約75%の範囲であり、一層好ましくは吸着剤層506の体積の約10%から約60%の範囲である。遮断剤は粒子508と粒子510との間に残った所望の量の空間または空隙を充填し、その結果、吸着剤層506の開口メソポアおよび開口マクロポア512の体積分率は約20%未満となる。
【0070】
図5Bは代替的なモノリシック平行チャネル接触器500Bの例示的な実施形態を、等角図502A、断面図502B、および詳細図502Cで示す。接触器500Bは、接触器500Aと類似している平行チャネル504A〜504X(504)を含む吸着接触器を通過する構造化された流れを有するが、代替チャネルはプラグ503A〜503X(503)によって一端が閉じられている。モノリス500Bを通り抜けるフローパターン507は、自動車産業でよく使用されるモノリシック煤煙フィルターのフローパターンと類似している。開口フローチャネル504に流入したガスは、細孔512を介して吸着剤層506を通り抜けて流れ、隣接チャネル503を介して排出される。
【0071】
吸着接触器500Bを通過する構造化流れによって、非常に効率的な物質移動が供給されるが、一般に平行チャネル接触器500Aよりも圧力降下が大きいように構成される。ガスストリ−ム507と吸着剤505との間の、この極めて効率的な物質移動は油を除去して低濃度にするために重要である。多くの圧縮器油では、接触器から排出される精製されたストリ−ム208の油濃度を重量で10ppm未満、好ましくは重量で10ppb未満に下げることができる。
【0072】
動的分離(たとえばプロセス300)に依存するモノリス500Aまたはモノリス500Bが、ガス分離プロセスの中で使用される場合には、マイクロポーラス吸着剤粒子510が実質的に同じ寸法であることが役に立つ。それぞれのマイクロポーラス吸着剤粒子510の体積の標準偏差は、動的にプロセスを制御するために平均粒子体積の100%未満が好ましい。より好ましい実施形態では、それぞれのマイクロポーラス吸着剤粒子510の体積の標準偏差は平均粒子体積の50%未満である。ゼオライト吸着剤の粒度分布は、粒子を合成するために使用される方法で制御することができる。合成前のマイクロポーラス吸着剤粒子を、重力沈降カラムなどの方法を使用して大きさで分離することもできる。均一な大きさのマイクロポーラス吸着剤、すなわち平衡制御で分離されたポリマー粒子を使用することも有利である。
【0073】
モノリス500Aおよび500Bは、例えば、構造化マイクロポーラスまたはメソポーラス吸着剤505から直接形成されてもよい。マイクロポーラスまたはメソポーラス吸着剤505がゼオライトの場合には、例えば、固体バインダー、ゼオライトおよび吸着剤、固体熱制御粒子、およびポリマーの有効量を含む水性混合物を押し出し成形することでモノリスが得られる。固体バインダーは、ゼオライトと固体熱制御粒子を結合させるために使用されるコロイド状の大きさの揃ったシリカまたはアルミナである。固体バインダーの有効量は典型的には混合物で使用されるゼオライトおよび固体熱制御粒子の体積の約0.5%から約50%の範囲である。要望があれば、プロセシングステップの後に熱水合成法を使用してシリカバインダー材料をゼオライトに転換させることができ、このように、シリカバインダー材料は最終形態のモノリスにいつも存在するわけではない。ポリマーをレオロジー制御のために混合物に添加してもよく、押出物の強度が大きくなる。押し出しモノリス500を窯で焼成させて硬化させると、水が蒸発し、ポリマーが燃え尽きて、結果として所望の組成のモノリスができる。モノリス500の硬化後には、吸着剤層506は約20体積%から約40体積%だけのメソポアおよびマクロポアを含む。あらかじめ定められた量のこれらの細孔に、真空含浸などの次のステップで遮断剤を充填することができる。
【0074】
マイクロポーラスまたはメソポーラス吸着剤505からモノリス500を直接形成することができる別の方法では、ポリマーとマイクロポーラス吸着剤との混合物を押し出し成形する。押し出しプロセスに使用するための好ましいマイクロポーラス吸着剤は、炭素モレキュラーシーブとゼオライトである。押し出しプロセスに好適なポリマーの例には、これに限定されるわけではないが、エポキシ樹脂、熱可塑性樹脂、および添加溶媒を必要としないで押し出すことができるシリコーンゴムなどの硬化性ポリマーを含む。これらのポリマーが押し出しプロセスで使用された場合には、結果として生じる生成物の吸着剤層の中のメソポアおよびマクロポアの体積分率は好ましくは小さい。
【0075】
図6は例示的なセグメント化された接触器を示し、図2および図5A〜図5Bで開示された吸着床と組み合わせて使用される。このように、図6は図2および図5A〜図5Bを参照することで理解を深められる。セグメント化された接触器600は、密封部604A〜604Eによって分離される多重吸着床606A〜606Dを含む管状収容部602を含む。密封部604A〜604Eは、流れが、接触器500A〜500Bの何れかの組み合わせから選択される接触器606A〜606Dから迂回することを防ぐ。たとえば、接触器606Aは平行チャネルモノリシック接触器500Aであり、接触器606B〜606Dは構造化フロースルー吸着接触器500Bである。別の例では、接触器606A〜606Dの1つまたは全てはフロースルー吸着剤である。
【0076】
セグメント化された接触器600の配置は、平行チャネル接触器500Aまたは500Bの中のフローチャネル504の大きさの不一致の影響を都合よく緩和するように構成される。セグメント化された接触器600では、1つの平行チャネル接触器606Aから流出するガスは次の接触器606Bに入る。チャネルの大きさの不一致の影響を緩和することに加えて、この配置によって、異なる接触器606A〜606Dの中で異なる吸着材料の使用が可能になる。複数の吸着材料を使用することは、異なる分子量の油分子を最適に除去するために、異なる細孔サイズを有する吸着剤の使用を可能にするばかりではなく、油吸着を妨げる種を除去することにより、最適な油の除去を確保するために役に立つ。密封部604A〜604Eはグラファイトなどの密封材料から製造される。温度スイングまたは、か焼プロセスにおいてスイング吸着ユニット204が再生される場合には、該セグメント化された配置は熱膨張によって生じる応力の影響も緩和する。
【0077】
好ましい実施形態では、スイング吸着ユニットは、セグメント化された平行チャネル接触器とフロースルー吸着剤の両方を含む。この実施形態では、スイング吸着ユニット204を通過することによる非常に大きな圧力降下(たとえば200psiより大きい)を生じることなく、素晴らしい接触特性を示す。
【実施例】
【0078】
(実施例1)密封部の中で凝結しない燃料ガス組成物の実施例
密封ガスの供給源には、排気圧力が密封された圧縮器の吸気圧力(すなわち、圧縮器の中の乾燥ガス密封部を形成するために必要な圧力)より大きい限り、ガス生産プロセスまたは処理プロセス中の圧縮器の排気などのすべての好都合な抽出ポイントを含むことができる。ガスの圧力を低くする(たとえば、密封部の両端で調整する)場合には、密封ガスの一部が凝結するように温度を下げる。
【0079】
図7は処理済み密封ガスと未処理密封ガスとの相エンベロープを比較する例示的なグラフを示す。グラフ700はバール絶対圧(bara)の圧力702とキロカロリー毎キログラムモル(kcal/kgモル)のエンタルピー704との関係を示す。未処理ガス706の相エンベロープは、密封部の両端間の未処理ガス706の等エンタルピーの制限を示す線708と共に示される。例示的な密封ガス706は388baraの圧縮器の排気から得られ、以下に示す組成と類似している。
【表1】

【0080】
グラフ700に示すように、圧力が約70baraに達すると、ガスのある成分は凝結し始める(たとえば、ガスが相エンベロープ706によって示される露点に達する)。この「二相領域」は楕円形710で囲まれる。さらに膨張するとガスの多くが凝結する。これらの凝結した液体の形成によって密封部が損傷する。この問題を緩和するために、密封ガスのある成分が除去され(たとえば、H2Sの95%、C5+の90%)、結果として生じる処理済みガスは処理済み気相エンベロープ712を有し、相補的な線714は密封部の両端間の処理済みガス712の等エンタルピーの制限を意味する。図に示されるように、処理済みの場合には、ガス712は制限を超えて二相領域には入らないので、密封ガスが「乾燥」を維持することが確保される。この結果を達成するために、吸着材料はH2SおよびC5+材料が選択的に除去され、メタンでストリ−ムが濃縮される。この結果を達成するために、メタンに対するH2Sの選択性は5より大きくなければならず、メタンに対するC5+成分の選択性は5より大きくなければならない。
【0081】
(実施例2)
油吸着ステップ中に平行チャネル接触器500Aを移動する吸着先端の形状はモデル化される。このモデリングでは吸着剤505の中の油の負荷を予測するために競合ラングミュア等温式が使用される。目的の吸着剤に対しては、油の吸着強度(たとえば選択性)が大きいことが予期されるので、吸着先端に類似する急峻な波、つまり衝撃波が接触器500Aの中を移動する。この種の動作によって接触器500Aの中の吸着剤の体積を効率的に使用することができ、要求される吸着剤の体積を最小化し、吸着サイクル長を最大化することができる。
【0082】
このモデルは、開口メソポーラス空隙、開口マクロポア、または熱吸着材料の無い固体吸着剤506の単一チャネル504Aをシミュレートする。対称性のために、単一チャネル504Aをモデリングすることで十分である。か焼ステップ308の後に続く吸着ステップ306の中で、接触器500Aの中を移動する油吸着先端にモデリングは従う。か焼ステップ308の後に、すべての油が吸着剤層506から除去される。この時点で、チャネル504Aのフガシティーは1baraに近く、チャネル504Aは空気で充填されている。空気は窒素でチャネル504Aからパージされ、次にチャネル504Aは、油蒸気を含む燃料ガス(たとえば燃料ガスストリ−ム106)で加圧される。シミュレーションのために、油の蒸気フガシティーは6×105バールと仮定され、加圧ステップの最後のチャネル504の入り口での燃料ガス106の合計フガシティーは300baraである。シミュレーショ中に5μm長のチャネル504を加圧するために使用される合計時間は1.04秒である。加圧が完了し、チャネル504Aに沿ったチャネルフガシティーの降下が3.2バール/mに達すると、373ケルビン(K)で0.091メータ毎秒(m/s)の速さの見掛け流速で、燃料ガスがチャネル504Aを通過することができる。この流速では、0.012センチポアズ(cP)の燃料ガス106が、加圧ステップの終了時点における3.2バール/mと同一のフガシティー降下をチャネル504に沿って有する。シミュレーションでは、吸着剤厚さを3μmと見なし、チャネル長を1mと見なした。モデルは実際の平行チャネル接触器に基づき、システム204全体で発生する輸送現象を把握するための適切な縮尺である。
【0083】
フローガスストリ−ムから吸着された油は、競合ラングミュア吸着等温線を採用する線形推進量モデル(LDF)で記述される。油に対するラングミュア吸着係数(boil)およびフガシティー(Poil)の積は4であると見なされ、吸着等温線の非線形領域の中の吸着に対応する。燃料ガスに対するラングミュア吸着係数(bgas)(3.89x10―7Pa-1)はM41Sファミリーの材料などのメソポーラス吸着剤の中のメタン吸着の代表値に基づいている。いくつかの異なるメソポーラス吸着剤の中の多くの油では、ラングミュア吸着係数(「b値」)はこのシミュレーションで使用される値よりもより大きいことが予期される。より大きいb値はこの実施例でモデル化されたものよりも、さらに急峻な吸着先端をもたらす。LDF定数0.1秒によって定義される吸着の特性時間スケールは、メソポーラス吸着剤層に期待される物理特性に合致するように選択される。このように、LDF時定数はフローチャネルの中のガス滞留時間に比べてかなり小さい。小さいチャネル寸法(5μm)のために、モデルではチャネル中のガスの軸分散を無視することが正当化される。高ガスフガシティーと低油濃度(油モル分率=2x10-7)のために、燃料ガスの熱容量は温度上昇を制限し、吸着プロセスを等温線でモデル化することができる。
【0084】
図8はラングミュア等温式のモデリングに基づいて、吸着剤チャネルを通って進む油先端の例示的なグラフを示す。グラフ800はバールで示す油圧力(Poil)802とメータで示す長さ804でプロットする。シミュレーションは50,000秒を超えて実行される。油先端806、油先端808、油先端810、油先端812および油先端814はそれぞれ0秒、12,500秒、25,000秒、37,500秒および50,000秒におけるフガシティープロファイルを示す。図に示されるように、油フガシティープロファイルは吸着床インレットの約0.08mの内側で急峻な吸着先端を形成する。吸着先端の直後のポイントでチャネルの中で測定された油フガシティーは、供給流から油が99.99999パーセントを超えて除去されることを示す。またこれは、チャネルアウトレットに延在する生成物は上記でシミュレートされた時間の後に延在する長い時間にわたって、原則的に純粋燃料ガスであることも示す。この動作は、低い油部分フガシティーの場合にも同じ状態のままである。厚い吸着床を使用して実行されたシミュレーションでは、油吸着先端の伝播はインレットに近い床のさらに小さな領域に制限されることが示される。油ミスト(すなわち液体および蒸気)が存在する場合には、急峻な先端はチャネルを通過してまだ進むが、増加した油濃度のために、グラフ800に示されるよりもチャネルに沿ってさらに前進する。上述した結果から、メタンに対する吸着剤の選択性は10より大きく、好ましくは100より大きく、さらに一層好ましくは1000より大きいはずである。
【0085】
(実施例3)
油が、か焼できる条件を確立するために、約1,900グラム/モルのポリグリコール圧縮器油をメソポーラスMCM−41ゼオライトの2グラムサンプルに充填した。MCM−41ゼオライトを初期湿潤度に近い量のポリグリコール油に接触させることによって、ゼオライトを充填した。このために要求される油は約0.24グラムである。ゼオライトに吸着されない油の量をさらに減らすために、サンプルを真空オーブンに入れ、125℃で12時間、1水銀柱ミリメートル(mmHg)未満である約0.00133バールの圧力に保持した。サンプルを真空オーブンから取り出すと、吸着された油の量はサンプル質量の10質量%よりも多いことが分かった。か焼によって除去されたこの油の速度を測定するために、熱重量分析(TGA)実験が実施された。MCM−41材料を含む一群の油が約2ミリグラムから約25ミリグラム(mg)のサンプルに分けられ、繰り返しTGAの中に置かれた。TGAは空気で動作させ、それぞれのサンプルは、TGAに搬入した後に重量が既知の白金皿上に125℃で1時間を超える時間そのままにさせた。それぞれのサンプルに対して、か焼が観察される温度まで徐々に上昇させ、重量減少速度を記録した。それぞれのサンプルは、か焼温度で30分を超えて保持され、次に+温度が550℃より高い最終的な温度まで上昇させた。300℃という低い温度で、すべての油が1分未満で燃焼した、すなわちか焼した。これはサンプルを加熱して、か焼温度にするために必要なおおよその時間である。これらの迅速な反応速度および完全な油の除去は、か焼温度が325℃、350℃、375℃、400℃および450℃の実験で観察された。225℃から275℃の間の温度ではゆっくりではあるが、安定した、か焼による油の減少が観察された。この重量減少が、か焼によることを証明するために、空気ではなく窒素を使用してTGAプロトコルが繰り返された。窒素では、数日にわたる範囲の時定数での、とてもゆっくりとした重量減少が記録された。予想されるように温度の上昇にともなって重量減少速度が上昇した。
【0086】
(実施例4)
この実施例では、330baraに圧縮された約5MMSCFD燃料ガスから約2グラム/分で圧縮器油を除去する接触器を示す。圧縮器からストリ−ムが排気されると、温度は85℃から115℃の範囲になる。燃料ガスは以下の表に示す組成を有する。燃料ガスを圧縮器から排気される温度に近い温度で乾燥密封部に供給すると、密封面の両端で膨張するので2相領域には入らない。ガスが密封面の両端間で膨張すると発生する唯一の液体は圧縮器油に由来する。この実施例では、圧縮器油は数平均分子量数が1,900グラム/モルのポリグリコールである。
【表2】

【0087】
図5Aおよび図5Bに示される種類のモノリシック平行チャネル接触器は、圧縮燃料ガスストリ−ムから油を除去するために使用される。1つの例示的なシステムでは、全部で6個の約40cm長のモノリシック平行チャネル接触器が、長さ2.5メートルの、直径3インチのチューブの中に積み重ねられる。この実施例では、それぞれの接触器の種類の中から3つがチューブの中に積み重ねられる。セラミックパッキング材料または熱分解グラファイトガスケットの何れかで接触器はチューブの中の適切な位置に保持される。モノリスはアルミナ結合MCM−41ゼオライトから形成され、6個のモノリスは、合計で10キログラムのMCM−41を含む。それぞれのMCM−41粒子の大きさは1マイクロメートルである。それぞれのチューブに必要なゼオライトの量は、MCM−41サンプルの飽和油蒸気の吸着能力を低圧力で測定することによって判断された。これらの測定では、MCM−41は約100℃の温度で、約1900分子量の油の飽和油蒸気および/または液滴を約15質量%吸収する能力があることを示している。高圧条件では、同様の吸着能力が期待され、四角形の油吸着等温線がさらに予期される(すなわちラングミュア等温線に対してとても大きいb値を有する)。
【0088】
モノリスの中のフローチャネルは、直径が500マイクロメートルであり、モノリスの横断面積の10%〜30%を占める。5MMSCFD燃料ガスの流れは4個の長さ2.5メートルのチューブの間で分割され、吸着ステップが12時間実施されえる。12時間の吸着ステップの最後では、油吸着先端はチューブの端部を突き破らなかった。吸着ステップが完了すると、油の除去を継続するために、再生ステップ308が終了した4個の他のチューブがバルブで直結される(すなわち4個の他のチューブは吸着ステップ306を開始する)。吸着ステップが実施された4個のチューブは再生される(308)。チューブは4気圧(約4バール)に圧抜きして再生され、チューブを通じて325℃に加熱された圧縮空気を流し始める。再生プロセスのこの段階でのそれぞれのチューブの空気流速は、1SCFMから50SCFMの間であり、熱風を5分から40分間流して、第1のモノリスの先端を、か焼反応が開始したポイントまで加熱した。か焼反応で放出された熱量は1キロワット〜20キロワットの範囲である。か焼反応の進行に伴う温度上昇を制限するために、長い持続時間の窒素パルスを導入した。窒素パルスの持続時間は空気パルスよりも2〜50倍長くできる。か焼プロセスは6時間未満で終了し、別の吸着ステップが開始される前に、チューブを圧縮空気または加圧窒素を流して4時間冷却する。
【0089】
本発明はさまざまな変更および代替的な形態が可能であり、上記で論じた例示的な実施形態は単なる一例として示したものである。しかしながら、もう一度述べるが、本発明は明細書に開示された特定の実施形態に限定されることを意図していないことが理解されるべきでる。実際に、本発明は、添付の特許請求の範囲の真の精神および範囲に含まれる、すべての代替的形態、変更形態、および均等物を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給ストリ−ムを処理するシステムであって、
表面積が大きい固体を含有する少なくとも一つの構造化吸着床を含むスイング吸着ユニットにガス供給ストリ−ムを通過させるように構成されるガス供給ストリ−ムインレットを含む選択的成分除去システムを含み、
前記ガス供給ストリ−ムは、多量の油滴および多量の油蒸気を含有し、圧力が少なくとも約1,000重量ポンド毎平方インチであり、前記少なくとも一つの構造化吸着床は少なくとも前記多量の油滴の一部および少なくとも前記多量の油蒸気の一部を除去し、実質的に油を含有しないガスアウトレットストリ−ムを供給するように構成され、前記少なくとも一つの構造化吸着床は動的スイング吸着プロセスによって再生されるシステム。
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、
前記動的スイング吸着プロセスは、か焼プロセス、温度スイングプロセス、圧力スイングプロセス、不活性物質によるパージプロセス、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるシステム。
【請求項3】
請求項2のシステムにおいて、
前記システムはラングミュアの等温式によってモデル化される急峻な吸着先端の中の前記多量の油滴および前記多量の油蒸気を除去するように構成されるシステム。
【請求項4】
請求項3のシステムにおいて、
前記少なくとも一つの構造化吸着床は前記構造化吸着床の温度を少なくとも約250℃に上昇させて再生させるシステム。
【請求項5】
請求項2のシステムにおいて、
前記構造化吸着床は熱波プロセスによって再生されるシステム。
【請求項6】
請求項2のシステムにおいて、
前記構造化吸着床は、前記ガス供給ストリ−ムの流れ方向に並流させて、向流させて、または直交させて(たとえば交差させて)流したガスまたは流体によって再生されるシステム。
【請求項7】
請求項1のシステムにおいて、
さらに前記スイング吸着ユニットの周囲を実質的に覆う流体不透過性収容部を含むシステム。
【請求項8】
請求項7のシステムにおいて、
前記流体不透過性収容部は約10,000重量ポンド毎平方インチにいたるまで動作可能であるシステム。
【請求項9】
請求項2のシステムにおいて、
前記構造化吸着床は、平行チャネル接触器、構造化フロースルー吸着接触器、フロースルー吸着剤、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるシステム。
【請求項10】
請求項9のシステムにおいて、
さらに、少なくとも2つの構造化吸着床を収容するように構成されるセグメント化された接触器を含み、一対の構造化吸着床のそれぞれが密封部によって分離されるシステム。
【請求項11】
請求項1のシステムにおいて、
前記油は実質的に無灰油であるシステム。
【請求項12】
請求項1のシステムにおいて、
前記油はエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのランダムコポリマーを含む合成物であるシステム。
【請求項13】
請求項12のシステムにおいて、
前記エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのランダムコポリマーの平均分子量は約1,200グラム/モルより大きく、約2,500グラム/モル以下であるシステム。
【請求項14】
請求項1のシステムにおいて、
さらに前記少なくとも一つの構造化吸着床と動作可能に係合する冷却ジャケットを含むシステム。
【請求項15】
請求項2のシステムにおいて、
さらに、間接吸着床電気加熱器、直接吸着床電気加熱器、直接ガス加熱流体、または、これらの任意の組み合わせからなる群から選択される加熱器を含むシステム。
【請求項16】
請求項1のシステムにおいて、
さらに、前記実質的に油を含まないガスアウトレットストリ−ムを冷却する冷却流体を使用するように構成される熱交換器を含むシステム。
【請求項17】
請求項1のシステムにおいて、
さらに、前記実質的に油を含まないガスアウトレットストリ−ムを保持するように構成される蓄圧器を含むシステム。
【請求項18】
請求項1のシステムにおいて、
前記表面積が大きい固体はアルミナ、メソポーラス固体、およびマイクロポーラス固体からなる群から選択されるシステム。
【請求項19】
請求項18のシステムにおいて、
前記表面積が大きい固体は、アルミナ、炭素、活性炭、炭、カチオン性のゼオライト、高シリカ質のゼオライト、高シリカ質の規則性メソポーラス材料、ゾルゲル材料、ALPO材料(主にアルミニウム、リンおよび酸素を含むマイクロポーラスおよびメソポーラス材料)、SAPO材料(主にシリコン、アルミニウム、リンおよび酸素を含むマイクロポーラスおよびメソポーラス材料)、MOF材料(金属有機骨格を含むマイクロポーラスおよびメソポーラス材料)およびZIF材料(ゼオライト型イミダゾレート骨格を含むマイクロポーラスおよびメソポーラス材料)からなる群から選択されるシステム。
【請求項20】
請求項18のシステムにおいて、
前記表面積が大きい固体の表面積は1グラム当たり約10平方メートル(m2/gm)よりも広いシステム。
【請求項21】
請求項3のシステムにおいて、
前記油が99.99999パーセントを超えて前記ガス供給ストリ−ムから除去されるシステム。
【請求項22】
請求項18のシステムにおいて、
前記表面積が大きい固体はSi対Alの比が約50:1を超える12〜14員環ゼオライトであるシステム。
【請求項23】
請求項18のシステムにおいて、
前記表面積が大きい固体はM41Sファミリーの規則性メソポーラス材料であるシステム。
【請求項24】
請求項1のシステムにおいて、
さらに調節ユニットを含むシステム。
【請求項25】
ガス供給ストリ−ムを処理する方法であって、
多量の油を含むガス供給ストリ−ムを供給するステップと、
ユーティリティ要素で使用するためのユーティリティストリ−ムを形成するために、少なくとも一つのスイング吸着プロセスユニットを含む選択的成分除去システムを使用して、前記ガス供給ストリ−ムの一部を処理するステップであって、前記少なくとも一つのスイング吸着プロセスユニットが、表面積が大きい固体を含み、かつ、少なくとも前記多量の油の一部を除去するように構成される構造化吸着床を含むステップと、
か焼プロセスで前記スイング吸着プロセスユニットを再生するステップと、
前記ユーティリティストリ−ムを前記ユーティリティ要素に供給するステップであって、前記ユーティリティストリ−ムは前記ユーティリティ要素に適合するステップと、
前記ユーティリティ要素の中で前記ユーティリティストリ−ムを利用するステップとを含む方法。
【請求項26】
請求項25の方法において、
前記ガス供給ストリ−ムは、少なくとも一つの炭化水素成分を含む方法。
【請求項27】
請求項25の方法において、
前記ガス供給ストリ−ムは圧縮器の排気ストリ−ムである方法。
【請求項28】
請求項25の方法において、
前記ガス供給ストリ−ムは高圧プロセスストリ−ムである方法。
【請求項29】
請求項25から28の何れか一項に記載の方法において、
前記ガス供給ストリ−ムは前記ガス供給ストリ−ムの臨界点を超える圧力である方法。
【請求項30】
請求項28の方法において、
前記ガス供給ストリ−ムは少なくとも約100バールから少なくとも約500バールの間の圧力である方法。
【請求項31】
請求項28の方法において、
前記ガス供給ストリ−ムは少なくとも約200バールから少なくとも約320バールの間の圧力である方法。
【請求項32】
請求項25から31の何れか一項に記載の方法において、
前記少なくとも一つのユーティリティ要素の少なくとも一つは、圧縮器、圧縮器群、ターボエキスパンダ圧縮器、ターボエキスパンダ発電機、ポンプ、燃焼式蒸気ボイラー、燃焼式プロセス加熱器、ガス機関、密封された直接駆動電動機、磁気軸受を備えるターボ機械、およびガスタービンからなる群から選択される方法。
【請求項33】
請求項32の方法において、
第1のユーティリティストリ−ムは、前記少なくとも一つのユーティリティ要素の中の乾燥ガス密封部、迷路状密封部、または機械的密封部の少なくとも一つのために乾燥密封ガスとして利用される方法。
【請求項34】
請求項33の方法において、
前記少なくとも一つのスイング吸着プロセスユニットは、圧力スイング吸着(PSA)ユニット、温度スイング吸着(TSA)ユニット、分圧スイングまたは置換パージ吸着(PPSA)ユニット、高速サイクル温度スイング吸着(RCTSA)ユニット、高速サイクル圧力スイング吸着(RCPSA)ユニット、高速サイクル分圧スイングまたは置換パージ吸着(RCPPSA)ユニット、小型PSA、小型TSA、小型PPSA、および、これらの任意の組み合わせからなる一群のユニットから選択される方法。
【請求項35】
請求項34の方法において、
選択的成分除去システム(SCRS)はさらに、吸収ユニット、膜分離ユニット、モレキュラーシーブ、蒸留塔、およびグリコール接触器の少なくとも一つを含む方法。
【請求項36】
構造化吸着接触器であって、
インレット端部と、
アウトレット端部と、
前記インレット端部から前記アウトレット端部まで延在する複数の開口フローチャネルとを含み、
前記複数の開口フローチャネルの一部は前記インレット端部で密封され、残りの前記複数のフローチャネルは前記アウトレット端部で密封され、前記開口フローチャネルの表面は、混合物の第1の成分に対する選択性が前記混合物の第2の成分に対する選択性より大きい構造化吸着材料を含む接触器。
【請求項37】
請求項36の接触器において、
前記接触器は、直径が約20オングストロームより大きく約1マイクロメートル未満の細孔の開口細孔体積の約20体積パーセント未満である接触器。
【請求項38】
請求項36の構造化吸着接触器において、
前記吸着材料はCH4に対する選択性よりも油に対する選択性の方が約10よりも大きい接触器。
【請求項39】
請求項36の吸着接触器において、
前記吸着材料は、アルミナ、メソポーラス固体、およびマイクロポーラス固体からなる群から選択される表面積が大きい固体材料を含む接触器。
【請求項40】
請求項39の吸着接触器において、
前記吸着材料は、ゼオライト、チタノシリケート、フェロシリケート、スタンノシリケート、アルミノホスフェート(ALPO)、シリカアルミノホスフェート(SAPO)、マイクロポーラスおよびメソポーラス活性炭、メソポーラス材料、構造化メソポーラス材料、および炭素モレキュラーシーブからなる群から選択される構造化マイクロポーラス吸着剤である接触器。
【請求項41】
請求項40の吸着接触器において、
前記構造化マイクロポーラス吸着剤はMFI、フォージャサイト、およびベータからなる群から選択されるゼオライトである接触器。
【請求項42】
請求項41の吸着接触器において、
前記構造化メソポーラス吸着剤はM41Sファミリーから選択される接触器。
【請求項43】
請求項42の吸着接触器において、
前記構造化マイクロポーラス吸着剤は、炭素、活性炭、炭、カチオン性のゼオライト、高シリカ質のゼオライト、高シリカ質の規則性メソポーラス材料、ゾルゲル材料、アルミノホスフェート(ALPO)、シリコアルミノホスフェート(SAPO)、金属有機骨格(MOF)材料、およびゼオライト型イミダゾレート骨格(ZIF)材料からなる群から選択されるモレキュラーシーブを含む接触器。
【請求項44】
請求項43の吸着接触器において、
前記構造化マイクロポーラス吸着剤はSi対Alの比が約50:1を超える12〜14員環ゼオライトである接触器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2011−521773(P2011−521773A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507503(P2011−507503)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/037550
【国際公開番号】WO2009/134543
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(500450727)エクソンモービル アップストリーム リサーチ カンパニー (46)
【Fターム(参考)】