説明

ヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカおよびそれを用いたヨウ素イオンコレクターおよびヨウ素回収方法

【課題】放射性ヨウ素(I)を効率よく安価に取り出すヨウ素イオンコレクターを提供する。
【解決手段】有機シリコン化合物および界面活性剤から作製した高秩序化メソポーラスシリカ(HOMS)に、目標元素であるIを選択的に吸着するTK等のIイオン吸着性化合物を担持させる。Iイオン吸着性化合物を担持したHOMSを目標元素であるIが溶解された溶液と接触させ、目標元素であるIイオンを選択的にHOMSに担持されたIイオン吸着性化合物に吸着させる。目標元素であるIイオンを吸着したIイオン吸着性化合物を担持したHOMSを化学的処理し、目標元素であるIイオンをHOMSに担持されたIイオン吸着性化合物から遊離させ、目標元素であるIを回収する。Iイオンが遊離されたIイオン吸着性化合物を担持したHOMSは、再使用できる。このIイオン吸着性化合物を担持したHOMSはIコレクター・濃度検出センサー・放射性ヨウ素除去剤としても使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標元素としてヨウ素イオンを選択的に吸着可能なヨウ素イオン吸着性化合物を担持した規則的な配列を有して多孔質化されているメソポーラスシリカに関するものであり、昨今問題となっている放射性ヨウ素を収集し回収できるヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカを用いたヨウ素イオンコレクター、およびメソポーラスシリカに担持されたヨウ素イオン吸着性化合物を用いて、ヨウ素イオン溶解溶液に含まれるヨウ素イオンを効率的かつ選択的に回収する方法に関する。さらに、ヨウ素イオン濃度を検出するメソポーラスシリカを用いたヨウ素イオンコレクターおよびセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
ヨウ素(元素記号I)は、ヨウ素デンプン反応によりデンプンを簡易的に検出できる試薬として多用され、消毒薬としても良く用いられている身近な元素である。また、体内で甲状腺ホルモンを合成するのに使われ人間にとって必須元素である。ヨウ素は海水中に約0.05ppm含まれているので推定資源量としては膨大であるが、濃度が低いため海水中からのヨウ素の回収は困難な状況である。現在工業的には、天然ガス、チリ硝石、石油の副産物として生産されている。全世界のヨウ素の生産量は約25500トン(2005年)であり、生産量1位がチリで、日本は2位となっており、海外へ輸出もしている。
【0003】
上述のように、ヨウ素は人体に有用な元素であり、しかも日本では数少ない貴重な輸出資源であるが、ヨウ素が人体に蓄積しやすい元素であるため、近年環境中の放射性元素である放射性ヨウ素が問題となっている。たとえば、チェルノブイリ原子力発電所の事故では、核分裂生成物の131I(放射性同位体)等が多量に放出されたが、これが甲状腺に蓄積したため、住民に甲状腺ガンが多発した。また、直近では東日本大震災で発生した津波により福島原子力発電所が損傷し大量の放射性物質が環境中に放出され、その中でも特に放射性ヨウ素が人体に及ぼす影響が懸念されている。さらに通常運転中の原子炉からの環境中への漏出も問題となりつつある。
【0004】
ヨウ素129およびヨウ素131は、核分裂過程において燃料棒内で形成されるガス状の核分裂生成物である。反応炉の化学反応が注意深く制御されない場合、化学反応は急速に進行し炉内圧力が上昇し、燃料棒の腐食が起こる。燃料棒が古くなると、クラック(亀裂)やホール(孔)により燃料棒が破壊される恐れがある。亀裂が入った燃料棒は、燃料棒を囲んで冷却している水に放射性ヨウ素を放出する。放射性ヨウ素は冷却水と一緒にシステム中に循環し、結局反応炉から空中等の環境中へ出て行き、あるいは液体廃棄物および固体廃棄物となる。時々、反応炉ガス捕捉システムは周囲へヨウ素を含むガスを放出する。
【0005】
放射性元素を含む大量の廃(排)水は自然環境にとって大きな問題となっていて、人類、植物、および動物へ悪影響を与える。(非特許文献1)ヨウ素露出から受けるリスクは、ヨウ素の甲状腺に蓄積する傾向によってさらに増大される。(非特許文献2)たとえば、ヨウ素は土壌から地下水へ移動する。摂取や吸引されると、ヨウ素は甲状腺粘膜で濃縮され、発がん性リスクを高める。(非特許文献3、4)すべての分離方法の中で、選択性吸着剤による吸着は放射性元素を除去するために頻繁に使用されてきたが、簡単で安価な方法はまだ見つかっておらず、吸着剤の検出限界も人体の許容限度よりもはるかに高い。(非特許文献5)
【0006】
これに対して、視覚的コレクター(収集剤)は、目標元素を精度よく迅速に検出するために重要である。視覚検査アプローチは、複雑な装置や充分制御された環境を必要としない単純な技術であるから、有効である。(非特許文献5)しかし、低濃度レベルヨウ素に関しては、低コストで選択性良好で迅速に検出できかつ放射性ヨウ素を除去できる視覚的コレクターはまだ全く開発されていない。
【0007】
放射性ヨウ素は、普通に使われる大抵の処理方法の抽出限界よりはるかに低い濃度で存在し、また放射性ヨウ素の人体への許容レベルは非常に低いので、ヨウ素をppb〜ppmレベルで精度良く検出し選択性良好で迅速に抽出する材料を発見していくことが世界的に要求されている。さらに、微量のヨウ素イオン濃度の測定および抽出に関して、迅速で、費用効率が高く、使いやすく、信頼性のある技術が求められている。
【0008】
一方、メソポーラスシリカを用いた金属イオン検出方法は種々研究されている。たとえば、特許文献1および2においては、メソポーラスシリカにアミノポルフィリン、ジチゾン、ポルフィリンスルホン等の色素分子を保持して複合センサーを作り、Cdイオン、水銀イオン、Crイオンなどを色素分子に吸着させて、そのスペクトル変化を利用してイオン濃度を検出することが記載されている。しかしながら、これまでのどの先行特許文献や非特許文献においても、メソポーラスシリカに吸着させたヨウ素の回収について簡便で迅速で精度の良い方法の開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−327886
【特許文献2】特開2007−327887
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】S.Reardon, Fukushimaradiation creates unique test of marine life’s hardiness, Science, 2011, 332, 292.
【非特許文献2】Human health effects-WANMEC and USEPA, 2011
【非特許文献3】E. Bascetin, G.Atun, Adsorptive removal of strontium by binary mineral mixtures ofmontmorillonite and zeolite, J. Chem.Eng. Data 2010, 55, 783-788.
【非特許文献4】K.Schwehr, P. Santschi, D. I. Kaplan, C. Yeager, R. Brinkmeyer, Organo-iodineformation in soils and aquifer sediments at ambient concentrations, Environ. Sci. Technol. 2009, 43,7258.
【非特許文献5】K. P.Grogan, T. A. DeVol, Online detection of radioactive iodine in aqueous systemsthrough the use of scintillating anion exchange resin, Anal. Chem. 2011, 83, 2582-2588.
【非特許文献6】S. A.El-Safty, T. Balaji, H. Matsunaga, T. Hanaoka, F. Mizukami, Optical sensorsbased on nanostructured cage materials for the detection of toxic metal ions, Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 7202-7208.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記説明した様にヨウ素は人体に有用な元素であるが、放射性同位体である129Iや131I等の放射性ヨウ素は、ppb〜ppmオーダーの極微量でも人体に蓄積して発がん性を誘発するので、飲料水や洗浄水等の生活用水および大気中だけでなく、廃水や土壌などすべての環境から排除する必要がある。
【0012】
従って微量でも生活用水や廃水等の溶液にどの程度の濃度のヨウ素が含まれているのか知る必要がある。しかし、ppb〜ppmオーダーの極微量なヨウ素濃度を迅速に正確に測定するヨウ素コレクターまたは濃度検出センサーは少なく、あっても繰り返し使用することができないという問題がある。またヨウ素を選択的に収集し検出するコレクターまたはセンサーは殆どないため、複数の元素やイオンが含まれる溶液ではヨウ素以外の元素やイオンに影響されて精度良くヨウ素濃度を測定することができない。さらに、生活用水や廃水等の溶液に微量なヨウ素が存在した場合にそのヨウ素を除去することが必要であるが、ppbオーダーレベルまでヨウ素を除去する方法は殆どない。イオン交換樹脂等の場合はppbオーダーレベルのイオンを除去できるものの、ヨウ素イオンだけを特定して除去できないという問題がある。すなわちヨウ素(イオン)だけを選択的に除去するという選択性が良い物は殆どない。
【0013】
また、回収剤でヨウ素を除去した後、そのヨウ素を分離する手段が困難なため、回収したヨウ素を有効に活用することが難しいという問題がある。生活用水や廃水等の溶液のヨウ素を回収しリサイクルするためのコストが高いという問題もある。環境中のヨウ素濃度検出や環境からのヨウ素除去、さらに有用なヨウ素を回収しリサイクルする方法等に関して、簡単でコストが低く選択性良く、かつ精度良好で高速に行なうことができる方法が世界的に緊急に要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、高度に秩序化した構造を有するメソポーラスシリカにヨウ素イオンを選択的に吸着することができる化合物(以下、ヨウ素イオン吸着性化合物(あるいは、ヨウ素(イオン)を集めるという意味(収集剤)で、ヨウ素イオンコレクターまたは単にコレクターともいう)を担持させて、担持されたヨウ素イオン吸着性化合物にヨウ素イオンを吸着させ、この吸着されたヨウ素を回収する効率的な方法およびそれに使用されるヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカを提供する。さらに、このヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカを用いてヨウ素イオン濃度検出を精度良くしかもppb〜ppmオーダーの微量な測定が可能なヨウ素イオンコレクターおよびセンサーを提供する。
【0015】
シリカ源と界面活性剤を混合した後、酸性水溶液を添加して、これを焼成すると、メソポーラスシリカ(HOM)が生成される。このメソポーラスシリカにヨウ素イオン吸着性化合物(ヨウ素イオンはまだ吸着されていない)を担持する。ヨウ素イオン吸着性化合物は、ヨウ素イオンを選択的に吸着することができる化合物である。たとえば、キレート化合物のような錯体である。(特定の元素イオンを選択的に吸着しやすい化合物を本出願では元素イオン吸着性化合物と呼ぶ。ここで、元素イオン吸着性化合物が選択的に吸着可能な特定イオンを回収するという意味で、この特定元素を目標元素と称する。本発明においては、目標元素はヨウ素である。)ヨウ素イオンを選択的にかつ優先的に吸着する化合物として、たとえば、N,N`-ビス(サリチリジン)2−メルカプトピリミニジン−4−ol−5,6−ジアミン{N,N` Bis(salicylidine)
2-mercaptopyriminidin-4-ol- 5,6
diamine (BSCPD)}、N,N`-ジサリチリデン−4−ニトロ−フェニレンデン{N,N-disalicylidene-4-nitro-phenylenedene
(DSNPD)}、3ナトリウム8−ヒドロキシピレン−1,3,6−3スルホン酸エステル(ピラニン){Trisodium
8-hydroxypyrene-1,3,6-trisulfonate (Pyranine)}、1,5−ジフェニルチオカルバゾン(ジチゾン){1,5-Diphenylthiocarbazone
(Dithizone)}、5−(4−ジメチルアミノベンジリデン)ロダニン{5-(4-Dimethylaminobenzylidene)rhodanine
(DMABR)}、アシッドレッド27(Acid Red27)、N,N,N',N'−テトラメチル−4,4'−ジアミノチオベンゾフェノン(N,N,N',N'-Tetramethyl-4,4'-diaminothiobenzophenone){Thiomichler’s Ketone (TK)}が挙げられる。これらのヨウ素イオン吸着性化合物をメソポーラスシリカに担持する。(たとえばこれらのヨウ素イオン吸着性化合物を総称してMCとして、MCを担持したメソポーラスシリカをHOM−MCと称する。)これらは単独でHOMSに担持しても良いし、複数組み合わせてHOMSに担持しても良い。
【0016】
ヨウ素を含む種々のイオン(元素イオンだけでなく、その他のカチオンやアニオンも含む)が溶解されたイオン溶解溶液に前記ヨウ素(イオン)吸着性化合物を担持(または修飾)したメソポーラスシリカを接触させ、メソポーラスシリカに担持したヨウ素イオン吸着性化合物に目標元素イオンであるヨウ素イオン(I等)を吸着させる。このとき、イオン溶解溶液のpH値、溶液濃度や溶液温度等の環境要因を調節すれば、効率的に目標元素イオンを吸着させることができる。たとえば、前述のHOM−DSNPDの場合は、pH値を4〜7、好適には4.5〜6.0に調整したヨウ素イオンを含むイオン溶解溶液に接触させることにより、HOM−DSNPDは目標元素イオンであるヨウ素イオンを優先的にかつ選択的にかつ迅速に吸着する。(ヨウ素を吸着したHOM−DSNPDをHOM−DSNPD−Iと称する。)また、前述のHOM−TKの場合は、pH値を0.1〜3.5、好適には0.5〜2.5に調整したヨウ素イオンを含むイオン溶解溶液に接触させることにより、HOM−TKは目標元素であるヨウ素を優先的にかつ選択的にかつ迅速に吸着する。(ヨウ素を吸着したHOM−TKをHOM−TK−Iと称する。)
【0017】
次に、ヨウ素イオンが吸着されたヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカをヨウ素イオンが遊離可能な溶液(ヨウ素イオン遊離溶液)に接触させて、吸着されたヨウ素イオンをヨウ素イオン遊離溶液に溶解させる。この溶液をろ過して固形物と液体に分離する。分離された液体はヨウ素イオンだけを溶解しているので、目標元素であるヨウ素の回収が可能となる。溶液の濃度、pH、反応温度等をコントロールすることで、ヨウ素の回収効率を上げることができる。また、分離された固形物は、ヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカであり、メソポーラスシリカに担持されたヨウ素イオン吸着性化合物はヨウ素を吸着していない。すなわち、固形物はヨウ素イオン吸着性化合物(ヨウ素イオンを吸着していない)を担持したメソポーラスシリカに戻る。
【0018】
しかも本体(ヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカ)は変化していないので、再度目標元素イオンであるヨウ素イオンの吸着材(あるいはコレクター(収集剤)、あるいは抽出剤とも称する)として利用できる。たとえば、前述のHOM−DSNPD−Iの場合には、たとえばHCl溶液に浸漬することにより吸着されたヨウ素を遊離することができる。ヨウ素を分離されたHOM−DSNPDは再びヨウ素イオン吸着材として利用できる。また、前述のHOM−TK−Iの場合には、たとえばNaCl溶液に浸漬することにより吸着されたヨウ素を遊離することができる。ヨウ素を分離されたHOM−TKは再びヨウ素イオン吸着材として利用できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明において、ヨウ素イオン吸着性化合物が広い表面積や高秩序化した構造を持つメソポーラスシリカの表面およびポア(細孔)内壁に担持(修飾)されているので、ヨウ素イオン吸着性化合物の反応基にヨウ素イオンが容易にしかも速く吸着する。従って、吸着の応答速度が速いだけでなく、メソポーラスシリカに担持されたヨウ素イオン吸着性化合物へのヨウ素イオン吸着効率が、単独のヨウ素イオン吸着性化合物へのヨウ素イオン吸着効率よりも非常に大きくなるとともに、ヨウ素(イオン)吸着量も多くなる。
【0020】
また、ヨウ素(イオン)吸着性化合物に吸着されたヨウ素イオンも整然と配列し密に吸着されているので、吸着したヨウ素イオンを容易に速く遊離(分離)することができる。従ってヨウ素イオンの遊離効率も非常に大きい。また、ヨウ素イオン吸着性化合物はヨウ素イオン溶解溶液のpH値等を調整することによりヨウ素イオンを選択的に多量にしかも迅速に吸着することができる。従って、ヨウ素(イオン)だけを効率良く回収できる。またppb〜ppmオーダーの微量なヨウ素イオンも吸着除去することができるので、生活用水や廃水等の溶液や土壌その他のイオン溶解液に含まれるヨウ素イオンの濃度を極めて微量なレベルまで低減できる。近年問題となっている環境中の微量な放射性ヨウ素も効率良く迅速に除去できるので、人体の健康維持に有用な材料である。
【0021】
さらに、ヨウ素イオン吸着性化合物を担持しているメソポーラスシリカはその骨格が強固であり、ヨウ素イオン吸着性化合物の担持やヨウ素イオンの吸着によってもメソポーラスシリカの骨格には変化が殆どない。吸着したヨウ素イオンもほぼ完全に遊離できるので、もとの状態(ヨウ素イオンを吸着していないヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカ)に戻るので、ヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカを繰り返し使用することができる。すなわち、何回もリサイクルまたはリユースすることができる。
【0022】
従って、トータル(全体)のヨウ素の収集・回収費用を小さくすることができる。また、本発明のヨウ素イオンが吸着されたヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカは、比色法または紫外可視分光法(UV−VIS−NIR spectroscopy)を用いてppb〜ppmオーダーの非常に低濃度のヨウ素イオン濃度も検出することができるので、ヨウ素イオンコレクターおよび濃度センサーとしても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明のヨウ素回収システムを示す図である。
【図2】図2は、HOMシリカ・モノリスの合成方法を示す図である。
【図3】図3は、HOMシリカ・モノリスの特性を示す図である。
【図4】図4は、BSCPDの合成方法および水溶液中に溶解したBSCPDにヨウ素を吸着させた場合のヨウ素との反応式および、ヨウ素をBSCPDに吸着させた視覚化解析を示す図である。
【図5】図5は、DSNPDの合成方法およびDSNPDにヨウ素を吸着させた場合のヨウ素との反応式を示す図である。
【図6】図6は、ピラニンの化学式およびピラニンにヨウ素を吸着させたときの反応式および水溶液中におけるヨウ素吸着による色調変化を示す図である。
【図7】図7は、ジチゾンの化学式およびジチゾンにヨウ素を吸着させたときの反応式および水溶液中におけるヨウ素吸着による色調変化を示す図である。
【図8】図8は、レセプターDMABRの化学式およびレセプターDMABRにヨウ素を吸着させたときの反応式および水溶液中におけるヨウ素吸着による色調変化を示す図である。
【図9】図9は、レセプターAcid Red27の化学式およびレセプターAcid Red27にヨウ素を吸着させたときの反応式および水溶液中におけるヨウ素吸着による色調変化を示す図である。
【図10】図10は、レセプターTKの化学式およびレセプターTKにヨウ素を吸着させたときの反応式および水溶液中におけるTKへのヨウ素吸着による固形物の色調変化を示す図である。
【図11】図11は、HOM−TKコレクターの作製方法を示す図である。
【図12】図12は、HOM−TK−Iの紫外線可視分光スペクトル信号強度(室温測定)と溶液のpH値との関係を示すグラフである。
【図13】図13は、HOM−DSNPD−Iの紫外線可視分光スペクトル信号強度(室温測定)と溶液のpH値との関係を示すグラフである。
【図14】図14は、ヨウ素の除去剤としてHOMに担持したHOM1−TKプローブを用いたヨウ素イオン抽出方法を示す図である。
【図15】図15は、pH=2.0の溶液中のヨウ素イオン濃度をパラメータとしたHOM−TK−Iの室温における紫外線可視分光法による吸収スペクトルを示す図である。
【図16】図16は、pH=2.0の溶液中のヨウ素イオン濃度とHOM−TK−Iの紫外線可視分光スペクトルの吸光度(λ=639nm)との関係を示す図である。
【図17】図17は、ヨウ素イオン濃度をパラメータとしたHOM−DSNPD−Iの室温における紫外線可視分光法による吸収スペクトルおよび比色分析を示す図である。
【図18】図18は、pH=5.2の溶液中のヨウ素イオン濃度とHOM−DSNPD−Iの紫外線可視分光スペクトルの吸光度(λ=615nm)との関係を示す図である。
【図19】図19は、ヨウ素イオンを含む種々の金属イオンをそれぞれ個別に含む溶液にHOM−TKを浸漬した後に得られた固形物のUV-VIS-NIR分析データおよび色調データを示す図である。
【図20】図20は、ヨウ素イオン、種々のアニオンまたは界面活性剤をそれぞれ個別に含む溶液にHOM−TKを浸漬した後に得られた固形物のUV-VIS-NIR分析データおよび色調データを示す図である。
【図21】図21は、カチオンおよびアニオンの存在下におけるHOM−DSNPDコレクターによる紫外線可視分光スペクトルおよびHOM−DSNPDコレクターの色調を示す図である。
【図22】図22は、2.0MHCl溶液によるHOM−DSNPDコレクターに吸着されたヨウ素(HOM−DSNPD−I)の溶離/逆抽出の色調変化および紫外可視分光スペクトル変化を示す図である。
【図23】図23は、0.025MのNaCl溶液によるHOM−TKコレクターに吸着されたヨウ素(HOM−TK−I)の溶離/逆抽出の色調変化を示す図である。
【図24】図24は、複数イオンを含むヨウ素イオン溶解溶液においてHOM−TKを浸漬する前後における各イオンの濃度の測定データ、およびHOM−TK−IからNaOH溶液を用いてヨウ素を溶離した後の溶液中の各イオンの濃度の測定データを示す表である。
【図25】図25は、複数イオンを含むヨウ素イオン溶解溶液においてHOM−DSNPDを浸漬する前後における各イオンの濃度の測定データ、およびHOM−DSNPD−IからHCl溶液を用いてヨウ素を溶離した後の溶液中の各イオンの濃度の測定データを示す表である。
【図26】図26は、本発明のHOM−DSNPDコレクターおよびHOM−TKコレクターの適用範囲を示した表である。
【図27】図27は、本発明のDSNPDまたはTKを担持したメソポーラスシリカ(HOMS)を用いて放射性ヨウ素等を含むヨウ素イオン溶解溶液からヨウ素(I)を回収するシステム示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、高い選択性と光学的検出機能を有する種々のキレート等の化合物を用いたヨウ素イオン検出技術およびヨウ素回収技術を提供するものである。この技術の特徴は異種原子から構成されるメソポーラス材料の原子レベルで配列したナノサイズの表面状態を利用していることである。本発明は、各種の活性イオン(カチオンやアニオン)や界面活性剤等を含む廃棄物や生活用水や環境からヨウ素を抽出する方法として非常に優れている。特に近年問題となっている放射性ヨウ素を環境等から排除するための方法として極めて優れている。
【0025】
メソポーラスシリカのナノレベルで配列した内表面は、pHなどの環境条件を制御して固着・解離状態を可変することによってヨウ素イオンコレクターおよびセンサーを作る。隣接原子と電子軌道構造の異なる表面原子とキレート等の化合物との結合によって、ヨウ素イオンを確実に吸着できる。さらに、メゾポーラス材の内壁表面のナノレベルの高秩序化配列は電荷移動を増大させるので、ppbレベルの非常に微量のヨウ素吸着でも肉眼で観察可能な光学的変化が速やかに(高速の応答が)起こる。
【0026】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明のヨウ素回収システムを示す図である。まず、第1段階で高度に秩序化したメソポーラスシリカ(HOMシリカ(HOMS):High Ordered Mesoporous Silica、尚通常、HOMと言った場合、シリカ(Silica)は含まないが、本明細書等においてはHOMと記載した場合も、特に明記しない限りシリカ(Silica)も含むものとする。)を合成する。ここで、メソポーラスシリカとは、多孔質シリカの1種であり、メソポア領域と呼ばれる、2nmから50nmの領域の大きさのほぼ均一で規則的な直径の細孔(メソ孔)を有し、細孔の作るネットワークの様式(空間対称性)や製造方法等によって、様々な特性を有することが知られている多孔質物質群である。しかし、本特許出願においては、メソ孔よりも小さなマイクロ孔(2nm以下の細孔)やメソ孔よりも大きなマクロ孔(50nm以上の細孔)を有するポーラスシリカもメソポーラスシリカと呼ぶ。
【0027】
本発明に用いられるHOMの形態は、薄膜状形態やモノリス形態を含む。モノリス形態とは、通常薄膜以外の各種の形態、たとえば微粒子、粒子、ブロック状のもの等の形態を言う。高度に秩序化したとは、立方晶や六方晶系メソポーラス構造が3次元的に表面や内壁表面に規則正しく配列した状態を言い、たとえば立方晶Ia3d、Pm3n、Fm3mや六方晶P6m構造を言う。これらの構造が広範囲に存在すると、ヨウ素イオン吸着性化合物を大量に担持することができ、全体のヨウ素イオン吸着量を大きくすることができる。また、HOMのBET比表面積は大きいほど良いが、通常400m2/g以上であり、好適には500m2/g以上である。
【0028】
HOMシリカは種々の方法により合成できる。たとえば、界面活性剤を鋳型としたゾルゲル法においては、水溶液中に臨界ミセル濃度以上の濃度で界面活性剤を溶解させると、界面活性剤の種類に応じて一定の大きさと構造をもつミセル粒子が形成される。しばらく静置するとミセル粒子が充填構造をとり、コロイド結晶となる。ここで溶液中にシリカ源となる有機シリコン化合物などを加え、微量の酸あるいは塩基を触媒として加えると、コロイド粒子の隙間でゾルゲル反応が進行しシリカゲル骨格が形成される。最後に高温で焼成すると、鋳型とした界面活性剤が分解・除去されて純粋な高度に秩序化したメソポーラスシリカ(HOMシリカ)が得られる。また、たとえば、好適には、有機シリコン化合物と界面活性剤を混合してリオトロピック型液晶相を形成し、さらに、酸水溶液を加えることによって、短時間に有機シリコン化合物の加水分解反応を起こし、メソポーラスシリカと界面活性剤の複合生成物を得た後、界面活性剤を除去して、HOMシリカを得る方法が利用される。
【0029】
有機シリコン化合物として、たとえば、テトラメチルオルトケイ酸{C4H12O4Si、TMOS(テトラメトキシシラン)とも言う}やテトラエチルオルトケイ酸{C8H20O4Si、TEOS(テトラエトキシシラン)とも言う}などのシリコンアルコキシドを用いる。(生成物から加熱や真空引き等でエタノールよりメタノールを除去する方が容易であるから、生産性はTEOSよりTMOSの方が好適である。)尚、HOMの形成には、有機シリコン化合物の他に無機シリコン化合物を用いることもできる。たとえば、カネマイト(NaHSi2O5・3H2O)、ジ珪酸ナトリウム結晶(Na2Si2O5)、マカタイト(NaHSi4O9・5H2O)、アイラアイト(NaHSi8O17・XH2O)、マガディアイト(Na2HSi14O29・XH2O)、ケニヤアイト(Na2HSi20O41・XH2O)、水ガラス(珪酸ソーダ)、ガラス、無定形珪酸ナトリウムを用いることもできる。これらは、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
また、テンプレート(鋳型)となる界面活性剤も、種々のものを使用できる。たとえば、カチオン性やアニオン性や両性や非イオン性の界面活性剤を使用できる。鋳型となる陽イオン性界面活性剤としては、たとえば、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩が挙げられる。また、鋳型となる陰イオン性界面活性剤としては、たとえば、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩などが挙げられ、セッケン、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩および高級アルコールリン酸エステル塩が挙げられる。
【0031】
鋳型となる両性界面活性剤としては、たとえば、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインが挙げられる。鋳型となる非イオン界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン酸誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのエーテル型のものや、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどの含窒素型が挙げられる。これらは、2種以上混合して用いても良い。
【0032】
界面活性剤の種類を変更することによりHOMの構造(細孔の大きさや形、結晶構造など)を制御することができるので、結晶構造の秩序性が高くBET比表面積が大きい細孔密度の大きなHOMを形成できる界面活性剤が好適である。たとえば、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(Brij56:C16H33(OCH2CH2)10OH、C16EO10)、トリブロック共重合体界面活性剤(たとえば、pluronic(登録商標)P123:EO20PO70EO20、Pluronic(登録商標)F108:EO141PO44O141)を用いることができる。Brij56:TMOS=0.5の重量比の混合により、立方晶構造Pm3nが得られ、P123:TMOS=0.7〜0.8の重量比の混合により、立方晶構造Ia3dが得られ、F108:TMOS=0.7の重量比の混合により、立方晶構造Im3mケージ状シリカ構造が得られる。
【0033】
図2は、HOM1(立方晶Im3m)シリカ・モノリスの合成方法を示す図である。HOMシリカ・モノリスはコポリマー界面活性剤F108(EO141PO44EO141)を用いて瞬間直接鋳型法を採用することにより合成された。通常、立方晶Im3m (HOM1)ケージ状メソ細孔を持つメソポーラスシリカモノリスは、F108/オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)混合相にドデカンをドデカン:F108:TMOS=1:2.8:4の比率で付加することによって形成されたマイクロエマルジョン相を使って作製された。このHOMSは白い粉末状の固体である。尚、本出願では図2によって作製されたHOMSをHOM1と1を付けて呼ぶ場合がある。
【0034】
次に、第2段階で、ヨウ素イオン吸着性化合物をHOMに担持させる。この段階では、ヨウ素イオン吸着性化合物にはヨウ素イオンは(他のイオンも)吸着されていない。(ヨウ素イオンを吸着していないことを示す用語として「ヨウ素イオン吸着性化合物」と称する。本発明に用いられるヨウ素イオン吸着性化合物として、イオン錯体、無機化合物や有機化合物がある。セルロース、タンパク質などのヨウ素イオン吸着性化合物も含まれる。金属錯体として、無機および有機の金属錯体や金属カルボニル化合物、金属クラスターや有機金属化合物が挙げられる。また、キレート化合物も含まれる。基本的には、ヨウ素(イオン)を吸着できる化合物であって、HOMに担持でき、化学処理により、目標元素であるヨウ素以外のイオンを遊離でき、その後に他の化学処理により目標元素であるヨウ素を遊離できる化合物である。ヨウ素イオン吸着性化合物は、化学的にはたとえばOH基を介してHOMシリカに強固に結合している。
【0035】
ヨウ素イオン吸着性化合物は、回収しようとする目標元素イオンであるヨウ素イオンを選択的にしかも多量に吸着する化合物が望ましい。たとえば、ヨウ素イオンに対して選択的に結合するキレート化合物やその他の化合物が挙げられる。ヨウ素を含む各種のイオン(カチオンやアニオン)や界面活性剤などが溶解したヨウ素イオン溶解溶液のpH値や温度や濃度などを調整すれば、ヨウ素イオン吸着性化合物に目標元素であるヨウ素(イオン)を選択的にしかも優先的に多量に吸着できる。また、キレート化合物等の化合物は、非常に微量の(たとえば、ppbオーダー)ヨウ素を選択的に吸着することができるので、ヨウ素イオン溶解溶液中に含まれるヨウ素イオンの量が少なくても、効率的に選択的にヨウ素イオンを吸着する。
【0036】
たとえば、我々は、N,N`-ジサリチリデン−4−ニトロ−フェニレンデン{N,N-disalicylidene-4-nitro-phenylenedene
(略称DSNPD)}以下レセプターDSNPDとも称する)の化合物がヨウ素イオンを選択的に優先的に吸着することを見出した。(レセプター(receptor)とは本来「受容体」という生物学的用語であるが、本出願では特定元素(ヨウ素)イオンを吸着する(ヨウ素)イオン吸着性化合物という意味でレセプターという用語を用いることもある。)
【0037】
このレセプターDSNPDは後述するように、溶液を特定のpH値に調節したヨウ素イオンを含有した溶液(ヨウ素イオン溶解溶液)にレセプターDSNPDを担持したHOMシリカを浸漬すると、レセプターDSNPDは他のpH値の溶液における場合よりも大量にしかも選択的にヨウ素イオンを吸着する。ヨウ素イオンの吸着量が増していくとレセプターDSNPDを担持したHOMシリカの色が薄い黄色から黄色(ヨウ素イオン濃度100ppb)へと変化し、さらに薄い緑黄色(ヨウ素イオン濃度4ppm)、黄緑色(ヨウ素イオン濃度12ppm)へと変化していく。色調と吸着されたヨウ素イオン濃度とは相関関係にあるので、色調からヨウ素イオン濃度を知ることができる。すなわち比色分析が可能である。特にppbレベルの微量なヨウ素でも吸着でき、その結果色調変化が生じるので正確な濃度を検出できる。選択的にという意味は、ヨウ素イオンおよびその他の種々のイオン(カチオンやアニオン)や界面活性剤等を含む溶液にこれらのレセプターDSNPDを担持したHOMシリカ(HOM1−DSNPD)を浸漬すると、ヨウ素イオンだけを吸着し、他の種々のイオンは殆ど吸着しないということを意味している。すなわち、レセプターDSNPDを担持したHOMシリカ(HOM1−DSNPD)は、ヨウ素イオン吸着の選択性が極めて優れている。
【0038】
また、ヨウ素イオン吸着後の光吸収スペクトルからもヨウ素イオン濃度を測定できる。すなわち、レセプターDSNPDを担持したHOMシリカはヨウ素イオン濃度検出センサーでもある。このレセプターDSNPDを担持したメソポーラスシリカ(HOM1−DSNPD)は、ヨウ素イオンを吸着すると紫外可視分光法において600nm〜650nmの波長を持つ可視光にヨウ素吸着に基づく吸収ピークを示し、この波長域の吸収率とヨウ素イオン濃度とは相関関係があるので、キャリブレーションカーブを事前に作っておくことにより、ヨウ素イオンを吸着したHOM1−DSNPDの紫外可視分光法における当該波長の吸収率データから、このHOMS−DSNPD−Iのヨウ素イオン濃度を知ることができる。しかもこのHOMS−DSNPD−Iは溶液中のヨウ素イオンを選択的に吸着するとともに、他の含有イオンはほとんど吸着しないので、非常に感度の良いヨウ素イオンコレクターおよび濃度センサーとなる。特にppbレベルの微量なヨウ素でも吸着でき、その結果スペクトル変化が生じるので正確な濃度を検出できる。
【0039】
他のヨウ素イオン吸着性化合物の例として、N,N`-ビス(サリチリジン)2−メルカプトピリミニジン−4−ol−5,6−ジアミン{N,N` Bis(salicylidine)
2-mercaptopyriminidin-4-ol- 5,6
diamine (BSCPD)}、3ナトリウム8−ヒドロキシピレン−1,3,6−3スルホン酸エステル(ピラニン){Trisodium 8-hydroxypyrene-1,3,6-trisulfonate (Pyranine)}、1,5−ジフェニルチオカルバゾン(ジチゾン){1,5-Diphenylthiocarbazone
(Dithizone)}、5-(4-ジメチルアミノベンジリデン)ロダニン{5-(4-Dimethylaminobenzylidene)rhodanine
(DMABR)}、アシッドレッド27(Acid Red27)、またはN,N,N',N'-テトラメチル-4,4'-ジアミノチオベンゾフェノン{Thiomichler’s Ketone (TK)}がある。これらのヨウ素イオン吸着性化合物のうちの1つまたは2以上の化合物をHOMSに担持して、所望の特性を有するHOMS−レセプターを作製することができる。これらの化合物はヨウ素(イオン)をその環状分子構造内および/または環状分子間の間に取り込んで、ヨウ素(イオン)を吸着(収集)する。ヨウ素イオンは金属イオンではない陰イオンであるが、これらの化合物はヨウ素(イオン)に対してキレートのように振る舞うので、広義のキレート化合物と考えることができる。これらのヨウ素イオン吸着性化合物は、ヨウ素と同じハロゲン族であるフッ素や塩素等を殆ど吸着しないし、他の陰イオンや陽イオン(アルカリ金属等の金属イオンを含む)も殆ど吸着しないので、極めて選択性が高い化合物である。ヨウ素(イオン)はこれらの化合物と共有接合して吸着(結合)されていると考えられる。
【0040】
このようなヨウ素イオン吸着性化合物をHOMに担持(修飾)させる方法(複合化法とも呼ぶ)として種々の方法が挙げられる。たとえば、HOMに保持されるべきヨウ素イオン吸着性化合物が中性である場合には、試薬含浸法(REACTIVE & FUNCTIONAL POLYMERS,49,189(2001)など)が用いられ、陰イオン性である場合には、陽イオン交換法が用いられ、陽イオン性である場合には陰イオン交換法が用いられる。これらの複合化法は、特別の条件や操作ではなく、既知の一般的な技術分野に属するものである。したがって、これらの一般的な技術分野の詳細については、当該固体吸着分野に関する総説、文献などを参照することができる。
【0041】
たとえば、メソポーラスシリカを陽イオン性有機試薬(たとえば、陽イオン性シリル化剤)を用いて表面処理し、そのメソポーラスシリカに陽イオン性官能基を付与し、次いで、この陽イオン性メソポーラスシリカと陰イオン性ヨウ素イオン吸着性化合物の水溶液やアルコール溶液とを接触させ、ヨウ素イオン吸着性化合物をメソポーラスシリカ内に吸着させる方法、メソポーラスシリカとヨウ素イオン吸着性化合物の有機溶媒溶液とを接触させ、有機溶媒だけをろ過あるいは蒸留などにより取り除くことで、ヨウ素イオン吸着性化合物をメソポーラスシリカ内に物理的に吸着させて担持する方法、メソポーラスシリカをチオール基を持つシリル化剤を用いて表面処理し、次いで、生成する表面のチオール基を酸化処理することで、そのメソポーラスシリカに陰イオン性官能基を付与し、この陰イオン性メソポーラスシリカと陽イオン性金属吸着性化合物の水溶液とを接触させ、ヨウ素イオン吸着性化合物をメソポーラスシリカ内に吸着させる方法、あらかじめヨウ素イオン吸着性化合物を細孔内および表面に充填した後に、これを陽イオン性有機試薬の有機溶媒溶液で処理して、ヨウ素イオン吸着性化合物を細孔内および表面に固定する方法、ヨウ素イオン吸着性化合物と陽イオン性有機試薬をあらかじめ混合し、得られた試薬複合体の有機溶媒溶液と該シリカとを接触させ、有機溶媒だけをろ過あるいは蒸留などにより取り除くことで、ヨウ素イオン吸着性化合物を該シリカ内に担持する方法が使用される。
【0042】
たとえば、レセプターDSNPDをHOMに担持させるには、レセプターDSNPDをN,N-ジメチルフォルムアミド{N,N-Dimethylformamide (DMF)}に溶解し、この溶液とHOMSを接触させて、HOMSへレセプターDSNPDを含浸させる。このようにしてレセプターDSNPDを高密度に整然と担持したHOMシリカ(HOMS−DSNPD)が完成する。尚DMFや水分等の液分を蒸発(加熱や真空引き等)させてさらに乾燥することによりレセプターDSNPDを担持したHOMシリカを高純度の固体状態(粉末)で効率良く作製できる。
また、結晶構造の秩序性が高くBET比表面積が大きいポーラス(細孔)密度の大きなHOMシリカほど、多くのレセプターが規則的にHOMシリカの表面および細孔内壁に担持される。たとえば、好適には、立方晶構造Im3m、Pm3n、Fm3m、Ia3d、六方晶構造P6mなどの構造が広範囲に形成されたHOMシリカにレセプターDSNPD{(ヨウ素イオン)吸着性化合物}を吸着させる。
【0043】
ヨウ素イオン吸着性化合物単独でも当然選択的に目標元素であるヨウ素イオンを吸着できるが、ヨウ素イオン吸着性化合物は凝集等するため、ヨウ素イオン吸着が可能な官能基を有効に利用することができない。すなわち、凝集された(たとえば、粒子状の)ヨウ素イオン吸着性化合物物質の表面に存在する官能基に目標元素であるヨウ素イオンが吸着しても、拡散または浸透によりヨウ素イオン吸着性化合物内部のヨウ素イオン濃度は距離(の2乗)に対して指数関数的に減少するから、その粒子状物質の内部にあるヨウ素イオン吸着性化合物の官能基全部にヨウ素イオンが吸着することは困難である。また、仮にその粒子状物質の内部にあるヨウ素イオン吸着性化合物の官能基にヨウ素イオンが吸着したとしても、その吸着したヨウ素イオンを取り出す(遊離するまたは逆抽出する)ことが難しいという問題がある。かなりの時間をかければ粒子状物質の内部にヨウ素イオンを拡散させ、さらに取り出すことも可能であるが、長時間をかけてヨウ素イオンを粒子状物質の内部を移動させることは生産性が悪く工業的には利用できない。
【0044】
これに対して、メソポーラスシリカは、細孔表面積が非常に大きく高度に秩序化した配向構造を持つので、メソポーラスシリカの表面および細孔内壁にヨウ素イオン吸着性化合物を担持したものは、ヨウ素イオン吸着性化合物が整然と配列して結合しているので、ヨウ素イオン吸着性化合物のヨウ素イオン吸着率が非常に高くなる。すなわち、ヨウ素イオン吸着性化合物の1分子ずつがヨウ素イオン吸着に利用できる。ヨウ素イオン溶解溶液や遊離(逆抽出)溶液は、メソポーラスシリカの表面や細孔へ容易に速やかに侵入していくので、HOMSに担持されたヨウ素イオン吸着性化合物(の反応基)と容易に、しかも速やかに接触する。このことは、HOMSに担持されたヨウ素イオン吸着性化合物がヨウ素イオン溶解溶液と接触するとヨウ素イオンを速やかに吸着するということを意味する。また、吸着されたヨウ素イオンを遊離するときも遊離溶液と接触すれば吸着されたヨウ素イオンが速やかに遊離されるということも意味するので、ヨウ素イオンの吸着(収集)および遊離(分離)が非常に効率的に進行し、その結果として生産性が飛躍的に向上する。
【0045】
たとえば、キレート樹脂単独の場合には、キレート樹脂の表面において、表面原子がすべて有効にキレート(官能基)を持った状態にはならず、原子的には離散的にキレートの反応端がある状態となっている。キレート樹脂単独でヨウ素イオンを吸着する時も、キレート樹脂のどの部分につくか制御できない。また、ヨウ素イオン溶解溶液と接触した部分のキレート官能基にはヨウ素イオンが吸着(抽出とも言う)されると予想されるが、ヨウ素イオン溶解溶液が浸透しにくいキレート樹脂内部ではヨウ素イオンは殆ど吸着されないと考えられる。すなわち、ヨウ素イオン吸着効率が非常に悪い。さらにキレート樹脂に吸着したヨウ素イオンを遊離するとき(逆抽出とも言う)も、キレート樹脂内部に吸着したヨウ素イオンを取り出すことも困難となる。
【0046】
このキレート樹脂を繰り返し利用するときも、キレート樹脂中の残存物等の影響により、ヨウ素イオンの抽出・逆抽出の効率がどんどん悪くなり、繰り返し使用でキレート樹脂の性能が大幅に劣化してしまう。これに対して、キレート樹脂をHOMに担持したものは、HOMの大きな比表面積と整列した原子配列を使って、キレート官能基をHOMの表面上に広範囲に形成することができる。言い換えれば、HOMではキレートの反応端はほぼ同一の性状になる。しかも、従来のキレート樹脂単独では実現できないほどに、HOM表面および細孔内壁に多量にキレートの反応端を有する。そのキレート官能基がヨウ素イオンもしくはヨウ素イオンを含む錯体イオンを選択的に捕獲するので、ヨウ素イオンの吸着効率が非常に高くなる。また、その捕獲されたヨウ素イオンもしくはヨウ素イオンを含む錯体イオンを逆抽出で取り出すことも容易に可能となる。さらに、キレート樹脂単独で使用した場合には樹脂そのものの物理的および/または化学的強度が不十分であるため、キレート樹脂の繰り返し使用による劣化が大きいが、キレート樹脂をHOMに担持したものは、その骨格たるHOMの物理的および/または化学的強度が十分であるため、繰り返し使用による劣化が小さく、繰り返して使用すること、すなわち何回でもリユースすることができる。
【0047】
第3段階では、ヨウ素イオンを含む各種のイオン(カチオンやアニオン)や界面活性剤等が溶解した水溶液(これをヨウ素イオン溶解溶液という)を準備する。このヨウ素イオン溶解溶液は、たとえば放射性ヨウ素を含む原子力施設の冷却液や廃液は排液、あるいは原子力施設等から飛散した放射性ヨウ素が生活用水や生活排水に溶解した溶液である。このような溶液には、ヨウ素の外に各種の金属イオン等のカチオンや種々のアニオンや界面活性剤等様々なイオンが溶け込んでいる。もし、この溶液に固形分が含まれていれば、事前に取り除くことが望ましい。何故なら、この溶液に浸漬するHOM−MCプローブは固体なので、これと固形分が混合してしまうからである。
【0048】
従って、この溶液から固形分を除いた溶液がヨウ素イオン溶解溶液である。ヨウ素イオン溶解溶液中にヨウ素イオン吸着性化合物(これをMCとする)を高密度に担持したHOM(以下、HOM−MCとも言う)を浸漬等してヨウ素イオン溶解溶液とHOM−MCと接触させる。この接触により、HOM−MCにヨウ素イオンが吸着される。(これをHOM−MC−I−M(I:目標元素であるヨウ素(I)、M:ヨウ素以外の吸着されたイオンとする。)ヨウ素イオン吸着性化合物は、一定の条件(pH値、温度、濃度等)下で目標元素であるヨウ素イオンを選択的にかつ優先的に吸着するので、その条件下のヨウ素イオン溶解溶液中にヨウ素イオン吸着性化合物を浸漬すれば、目標元素であるヨウ素だけを吸着したHOM(すなわち、HOM−MC−I)を得ることができる。
【0049】
たとえば、ヨウ素イオンを最も良く吸着するpH値に調整されたヨウ素イオン溶解溶液にHOM−MCを接触(浸漬を含む)させ、HOM-MCにヨウ素イオンを選択的に大量に吸着することができる。しかし、条件などの多少の変動によりわずかの他のイオンMが吸着される可能性もあるので、ヨウ素イオン溶解溶液中の目標元素であるヨウ素以外のイオンをあらかじめ少なくしておくことにより、ヨウ素以外のイオンMの吸着量が非常に少ないHOM−MC−I−Mが得られる。たとえば、ヨウ素イオン溶解溶液中のpH調整や化学処理等を行いヨウ素イオン以外のイオンを析出沈殿させ除去しておくなどの方法がある。あるいは、ヨウ素イオンは少なくとも吸着しない化合物(これも適当なHOM−MCを作製すれば良い。)を用いてヨウ素イオン以外のイオンを析出沈殿させ除去しておくという方法もある。
【0050】
上述のレセプターDSNPD の場合、ヨウ素イオン溶解溶液をpH=4.0〜7.0、好適にはpH=4.5〜6.0に調節することにより、ヨウ素イオンをHOM-MC(HOM−DSNPD)に効率的に吸着させることができる。また、上述のレセプターTKの場合、ヨウ素イオン溶解溶液をpH=0.1〜3.5、好適にはpH=0.5〜2.5に調節することにより、ヨウ素イオンをHOM-MC(HOM−TK)に効率的に吸着させることができる。尚、エタノールや水分等の液分を蒸発(加熱や真空引き等)させてさらに乾燥することによりヨウ素イオンを吸着したHOMシリカを高純度の固体状態(粉末)で効率良く収集できる。
【0051】
第4段階では、目標元素であるヨウ素イオンを含むイオンを吸着したHOM−MC−I−Mを、目標元素であるヨウ素イオン以外のイオンを遊離できる溶液中に浸漬して、目標元素であるヨウ素イオン以外のイオンを除去してほぼ目標元素であるヨウ素だけを吸着したHOM−MC−Iとする。或いは、pH値や温度や溶液濃度などの条件調整により目標元素であるヨウ素以外のイオンを除去してHOM−MC−Iにできる場合もある。尚、目標元素であるヨウ素以外のイオンの吸着が非常に少ない場合(このときは、最初からHOM−MC−Iである)や、目標元素であるヨウ素だけを遊離できる方法があれば、第4段階は省略することもできる。たとえば、上述したレセプターDSNPDを担持したHOM−DSNPDまたはレセプターTKを担持したHOM−TKの場合には、Mを殆ど吸着しないので、すなわち、HOM−DSNPD、TK−Iの状態になっているので、第4段階は省略することが可能となる。
【0052】
第5段階では、ほぼ目標元素であるヨウ素だけを吸着したHOM−MC−Iを、目標元素であるヨウ素を溶解可能な溶液に浸漬して、目標元素であるヨウ素イオンを溶解する。(溶離処理)或いは、pH値や温度や溶液濃度などの条件調整により目標元素であるヨウ素イオンだけを遊離できる場合もある。或いは、目標元素であるヨウ素イオンだけを遊離できる溶液に浸漬することにより、目標元素であるヨウ素イオンを溶解できる。このような場合には、必ずしも目標元素であるヨウ素イオンだけを吸着したHOM−MC−Iにする必要がない。この溶解液から目標元素であるヨウ素イオンが遊離されたHOM−MCは固形物であるから、ろ過して取り除く。固形物として取り除かれたHOM−MCは再度使用可能である。たとえば、HOM−DSNPD−Iの場合にはHCl溶液に浸漬することにより、Iがほぼ完全に溶離する。HOM−TK−Iの場合にはNaCl溶液に浸漬することにより、Iがほぼ完全に溶離する
【0053】
また、溶離処理によりヨウ素を溶解した溶離液から種々の方法(たとえば、イオン交換樹脂法やブローアウト法)により、目標元素であるヨウ素を分離すると目標元素であるヨウ素を回収できる。すなわち、ヨウ素が溶け込んだ環境水から目標元素であるヨウ素を回収できた。たとえば、HOM−DSNPD−IをHCl溶液に浸漬することにより、ヨウ素イオンを遊離できる。この結果、固形物HOM−DSNPDはろ過して再利用でき、第3段階において再び使用できる。ヨウ素イオンは溶離(溶出)液に溶けているので、たとえば、ヨウ素を気化させてブローアウト法によりヨウ素単体(I)として回収できる。尚、HOM−MCに目標金属であるヨウ素を吸着してHOM−MC−Iにすることを目標元素であるヨウ素の抽出と考えた場合に、この工程はHOM−MC−IからIを遊離してHOM−MCにするので逆抽出(工程)と言うこともできる。
【0054】
以上述べた第1段階〜第5段階の工程を経ることにより、原子力施設等からの廃液や生活用水や環境水から得られた目標元素である放射性ヨウ素を含むヨウ素を溶解したヨウ素イオン溶解溶液から、ヨウ素イオン吸着性化合物を担持した高度に秩序化したHOMシリカ(HOMS)を用いて、目標元素であるヨウ素を回収することができる。
【実施例1】
【0055】
<HOM5(立方晶Ia3d)シリカ・モノリスの合成>
図2は、HOM1(立方晶Im3m)シリカ・モノリスの合成方法を示す図である。HOMシリカ・モノリスはコポリマー界面活性剤F108(EO141PO44EO141)を用いて瞬間直接鋳型法を採用することにより合成された。立方晶Im3m (HOM-1)ケージ状メソ細孔を持つメソポーラスシリカモノリスは、F108/オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)混合相にドデカンをドデカン:F108:TMOS=1:2.8:4の比率で付加することによって形成されたマイクロエマルジョン相を使って作製された。
【0056】
すなわち、フラスコ容器中に8.0gのTMOSおよび4.0gの界面活性剤F108を入れ、その中に2.0gのドデカンを加え、界面活性剤を完全に溶解させ、均質な透明溶液になるまでフラスコ容器は約60℃の温水で保持された。この均質溶液の組成物相をロータリーエバポレーター中で、pH1.3の酸性水溶液(H2O-HCl)を4g添加し蒸発させると、TMOSの発熱加水分解および濃縮が急速に起こる。
【0057】
この発熱加水分解/濃縮反応はロータリーエバポレーターで排気中も継続するので、液体材料の粘性が増大し、生成した有色のゲル状物質が反応容器中に形成される。ロータリーエバポレーターで10分排気後に半透明のガラス状モノリスが収集され、オーブン中において40℃で16時間乾燥された。その後450℃(1時間窒素中および6時間酸素中)で焼成することにより界面活性剤および水分が取り除かれ、白い粉末状のHOM1(立方晶Im3m)シリカ・モノリスが作製された。
【実施例2】
【0058】
<立方晶Im3mHOM1の特性および結晶構造>
図3は、F108/TMOS比が50wt%でF108テンプレート(鋳型)のリオトロピックメソ相を使って合成された焼成シリカケージ状立方晶Im3mモノリス(HOM1)のX線回折(XRD)パターン(A)、窒素吸着/脱着等温線(B)、および透過電子顕微鏡(TEM)回折パターン(C、D、E)を示す。TEMパターンは{図3(C)}[100]、{図3(D)}[110]、および{図3(E)}[111]方向に沿って記録された。窒素吸着/脱着等温線{図図3(B)}において、DがHOM1の細孔サイズ(nm)、VpがHOM1の細孔体積(cm/g)、SBETがHOM1のBET比表面積(m/g)である。
【0059】
図3に示す優先体心立方晶(bcc)Im3mケージ状モノリス(HOM1)は、F108/TMOS比が50wt%でコポリマーF108 (EO141PO44EO141)を使って合成された。このHOM1の図3(A)に示すX線回折(XRD)パターンは、0.5<2θ<2.4°の範囲において明確な回折ピークを示し、15.7nmまでの大きな格子定数を有しており、秩序化した立方晶Im3mの比率が高いことを現している。図3(C)〜(E)に示す透過電子顕微鏡(TEM)回折パターンは、大形状相を持つ白点配列を明確に示す。これは規則的なケージ状細孔配列と同定される配列である。さらに、形状およびサイズがコントロールされたケージ状メソ構造モノリスである証拠は、図3(B)に示す窒素吸着/脱着等温線からも得られた。すなわち、H2型(IUPAC分類)の大きなヒシテリシスループと明確に定義される急峻さから、HOM1は大きくて均一なケージ状構造の結晶構造を有することを示している。さらに、HOM1の細孔サイズは7nmと非常に小さく、BET比表面積も760m/gと非常に大きいことが分かる。このように上述の方法で作製したHOM1は、細孔サイズが非常に小さく比表面積が非常に大きいな高度に秩序化したメソポーラスシリカである。
【実施例3】
【0060】
<放射性ヨウ素の回収に使用されるレセプターの合成(1)>
<N,N`-ビス(サリチリジン)2−メルカプトピリミニジン−4−ol−5,6−ジアミン{N,N` Bis(salicylidine)
2-mercaptopyriminidin-4-ol- 5,6
diamine (BSCPD)}の作製>
図4は、BSCPDの合成方法および水溶液中に溶解したBSCPDにヨウ素を吸着させた場合のヨウ素との反応および、ヨウ素をBSCPDに吸着させた視覚化解析(色調変化)を示す図である。サリチルアルデヒド(salicylaldehyde)2モル、5,6-ジアミノ-2-メルカプトピリミジン-4-ol-(5,6-diamino-2-mercaptopyrimidin-4-ol)1モルおよび濃硫酸を2−3滴(または、p−トルエンスルホン酸少量)の反応によって、BSCPDが生成された。生じた混合液は還流下で6時間加熱された後、放置され室温で冷却された。冷却中に形成された固体は吸引ろ過により収集された。分離された黄色の生成物はジクロロメタン/メタノール(1/1)系から再結晶された。この固形物がBSCPDで、これを用いて液体中のヨウ素除去を調査した。図4に示すように、水溶液中のBSCPD水溶液にヨウ素を吸着させると、透明な黄色の水溶液が透明な褐色水溶液に変化する。ヨウ素は、金属イオン(陽イオン)ではなく、陰イオンであるが、BSCPDがキレート錯体であるように、ヨウ素(イオン)はBSCPDの環状分子構造(広義の錯体)の中に取り込まれる。
【実施例4】
【0061】
<放射性ヨウ素の回収に使用されるレセプターの合成(2)>
<N,N`-ジサリチリデン−4−ニトロ−フェニレンデン{N,N-disalicylidene-4-nitro-phenylenedene
(DSNPD)}の作製>
図5は、DSNPDの合成方法およびDSNPDを用いたヨウ素との反応を示す図である。ベンゼン溶媒中で2−ヒドロオキシベンザルデハイド(2-hydroxybenzaldehyde)および4−ニトロ−O−フェニルレンジアミン(4-nitro-O-phenylenediamine)に濃硫酸2−3滴を加えて反応させることにより、DSNPDが生成された。生じた混合液は還流下で6時間加熱された後、放置され室温で冷却された。冷却中に形成された固体は吸引ろ過により収集された。この固形物がDSNPDである。この後、この物質はジクロロメタン/メタノール(1/1)を用いて再結晶化された。DSNPDの作製後、水溶液中のDSNPDにヨウ素を吸着すると、図5の化学式に示すように、DSNPDの環状分子構造内にヨウ素(I)が取り込まれる。
【実施例5】
【0062】
<放射性ヨウ素の回収に使用されるレセプターの合成(3)>
<3ナトリウム8−ヒドロキシピレン−1,3,6−3スルホン酸塩(ピラニン){Trisodium
8-hydroxypyrene-1,3,6-trisulfonate
(Pyranine)}の作製>
図6は、ピラニンの化学式およびピラニンにヨウ素を吸着させたときの反応式および水溶液中におけるヨウ素吸着による視覚化解析(色調変化)を示す図である。透明な無色のピラニン水溶液がヨウ素の吸着(2000ppb)により透明な薄い黄色の溶液に変化した。図6の化学式に示すように、ピラニンの環状分子構造間にヨウ素(I)が取り込まれる。
【実施例6】
【0063】
<放射性ヨウ素の回収に使用されるレセプターの合成(4)>
<1,5−ジフェニルチオカルバゾン(ジチゾン){1,5-Diphenylthiocarbazone (Dithizone)}の作製>
図7は、ジチゾンの化学式およびジチゾンにヨウ素を吸着させたときの反応式および水溶液中におけるヨウ素吸着による視覚化解析(色調変化)を示す図である。透明な紺色のジチゾン水溶液は、2000ppb(2ppm)のヨウ素を吸着した後、透明な無色の液体に変化した。図7の化学式に示すように、ジチゾンの環状分子構造間にヨウ素(I)が取り込まれる。
【実施例7】
【0064】
<放射性ヨウ素の回収に使用されるレセプターの合成(5)>
<5-(4-ジメチルアミノベンジリデン)ロダニン{5-(4-Dimethylaminobenzylidene)rhodanine (DMABR)}の作製>
図8は、レセプターDMABRの化学式およびレセプターDMABRにヨウ素を吸着させたときの反応式および水溶液中におけるヨウ素吸着による視覚化解析(色調変化)を示す図である。黄色の透明のDMABR水溶液は、2000ppb(2ppm)のヨウ素を吸着した後、褐色の透明の液体に変化した。図8の化学式に示すように、DMABRの環状分子構造間にヨウ素(I)が取り込まれる。
【実施例8】
【0065】
<放射性ヨウ素の回収に使用されるプローブの合成(6)>
<アシッドレッド27(Acid Red27)の作製>
図9は、レセプターAcid Red27の化学式およびレセプターAcid Red27にヨウ素を吸着させたときの反応式および水溶液中におけるヨウ素吸着による視覚化解析(色調変化)を示す図である。透明な赤褐色のAcid Red27の水溶液は、2000ppb(2ppm)のヨウ素を吸着した後、ピンク色の透明の液体に変化した。図9の化学式に示すように、Acid Red27の環状分子構造間にヨウ素(I)が取り込まれる。
【実施例9】
【0066】
<放射性ヨウ素の回収に使用されるプローブの合成(7)>
<N,N,N',N'-テトラメチル-4,4'-ジアミノチオベンゾフェノン[チオミヒラーズケトン]{N,N,N',N'-Tetramethyl-4,4'-diaminothiobenzophenone
[Thiomichler’s Ketone (TK)]}の作製>
図10は、レセプターTKの化学式およびレセプターTKにヨウ素を吸着させたときの反応式および水溶液中におけるTKへのヨウ素吸着による固形物の視覚化解析(色調変化)を示す図である。TKをHOMに担持したHOM−TKコレクター(固形物)の色調は、2000ppb(2ppm)のヨウ素を吸着した後、緑色から紺色へ変化した。図10の化学式に示すように、TKの環状分子構造間にヨウ素(I)が取り込まれる。
【実施例10】
【0067】
<HOM−プローブ材料の合成>
図11は、HOM−TKコレクターの作製方法を示す図である。図11において、TKプローブを使ってHOM−プローブ材料を製造する方法が示されている。1.0gのHOM1が、丸形フラスコにおいて30mlのエタノール溶液に溶解された20mgのTK染料を含む溶液に添加され、これらの混合液は60℃で2時間回転しながら保持された。ロータリーエバポレーターに連結され、エタノールは60℃でゆっくりと真空引きされて取り除かれた。2時間以内に、粘性液体は有色のゲル状物質(固体生成物)へ変化し、丸形フラスコの形状と大きさになった。この物質を60〜65℃で5時間乾燥した。その後、この物質は温水洗浄され、乾燥した状態になるまで再び乾燥された。この物質がHOM−プローブ材料(HOM−TKコレクター)であり、種々の実験条件でヨウ素(I)抽出に使われた。(尚、特定元素イオンを吸着(収集)するという意味で、プローブという用語も使用している。)尚、HOM−DSNPDコレクターの作製もHOM−TKコレクターと同様であるが、HOM−DSNPDコレクターの場合は、エタノール溶液ではなく、ジメチルホルムアミド{N,N-Dimethylformamide (DMF)}を用いた。
【実施例11】
【0068】
<ヨウ素イオン抽出の最適pH値の調査>
ヨウ素吸着(収集剤)剤(ヨウ素コレクター)を担持したHOM(HOM−ヨウ素プローブ)がどのような環境条件のときに最も効率的にヨウ素を吸着・収集するかを調査することは極めて重要なステップである。我々は、HOM−TKおよびDSNPDコレクターについてヨウ素吸着に関し最適環境条件の調査を行なった。
【0069】
ナノ細孔を持つ放射性ヨウ素イオンコレクターの効率はpH値によって影響を受ける。プローブの電荷移動錯体の反射スペクトルは、広範囲のpH値の水溶液に渡って注意深くモニターされた。我々は、8種類のpH水溶液(1.0、2.0、3.5、5.2、7.0、9.5、11.0および12.5)を用いて調査した。pH2.0およびpH 3.5に関して0.01M硫酸か0.2MKCl−HClのどちらかのpH溶液を使い、pH5.2を調整するためにCH3COOH−CH3COONaを使った。3−モルホリノプロパン・スルホン酸{3-morpholinopropane sulfonic acid(MOPS)}、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパン・スルホン酸{N-cyclohexyl-3-aminopropane
sulfonic acid (CAPS)}および2−(シクロヘキシルアミノ)エタン・スルホン酸{2-(cyclohexylamino) ethane sulfonic acid (CHES)}の混合液をpH7.0、9.5および11.0に関してそれぞれ使い、0.2MNaOHを用いてpH値を調整した。
【0070】
各pH溶液を4ml取って2ppmのヨウ素を加えて、その後で適量の水を付加して20mlの水溶液にした。その後、ヨウ素抽出剤HOM−プローブコレクターを添加して1時間攪拌し、ろ過した。ろ過後の固形材料はヨウ素イオンを吸着したHOM−プローブ−IすなわちHOM−TK−IおよびHOM−DSNPD−Iである。このろ過後の固形材料について、紫外線可視分光スペクトル測定(UV-VIS-NIR
Spectroscopy)によって調査し、吸光度スペクトルを取った。ヨウ素吸着を特に良く表す特定波長における吸光度を各固系材料についてプロットした。
【0071】
図12は、HOM−TK−Iの紫外線可視分光スペクトル信号強度(室温測定)と溶液のpH値との関係を示すグラフであり、2ppmのヨウ素イオンを溶解した種々のpH値溶液からHOM−TKがヨウ素イオンを吸着したHOM−TK−Iの吸光度のpH値依存性を示す。図12において、HOM−TK−Iの特定波長における紫外線可視分光スペクトル信号強度(比)を縦軸に、2ppmのヨウ素イオンを溶解した溶液のpH値を横軸にプロットした。参照pH値として最高の信号強度を持つpH値溶液を使った。すなわち、図12の縦軸はpH値が2.0の水溶液の信号強度に対する比を取っている。HOM−TK中のヨウ素量が増えると紫外線可視分光スペクトルの吸光度が増大することが分かっているので、図12から分かるように、信号強度のデータは、ヨウ素イオンのコレクター(吸着剤)としてHOM−TKを使用する場合、最も良くヨウ素イオンを吸着する最良のpH値は2.0であることを示している。測定誤差やばらつきも考えると良好なpH値は0.5〜3.5、好適には0.5〜2.5、最適には1〜2である。
【0072】
また、図12の上部にpH2におけるHOM−TKの色調を示す。ヨウ素を2ppm含有する場合(Optical HOM-TK-I2 with 2ppm at pH2)とヨウ素を含まない場合(HOM-TK at pH2)を示す。ヨウ素を含まない場合はHOM-TKの色調は緑色の固形物であったが、ヨウ素を2ppm含有する場合は紺色の固形物になり、色調が変化した。
【0073】
図13は、HOM−DSNPD−Iの紫外線可視分光スペクトル信号強度(室温測定)と溶液のpH値との関係を示すグラフであり、2ppmのヨウ素イオンを溶解した種々のpH値溶液からHOM−DSNPDがヨウ素イオンを吸着したHOM−DSNPD−Iの吸光度のpH値依存性を示す。図13において、HOM−DSNPD−Iの特定波長における紫外線可視分光スペクトル信号強度(比)を縦軸に、2ppmのヨウ素イオンを溶解した溶液のpH値を横軸にプロットした。参照pH値として最高の信号強度を持つpH値溶液を使った。すなわち、図13の縦軸はpH値が5.2の水溶液の信号強度に対する比を取っている。HOM−DSNPD中のヨウ素量が増えると紫外線可視分光スペクトルの吸光度が増大することが分かっているので、図13から分かるように、信号強度のデータは、ヨウ素イオンのコレクター(吸着剤)としてHOM−DSNPDを使用する場合、最も良くヨウ素イオンを吸着する最良のpH値は5.2であることを示している。測定誤差やばらつきも考えると良好なpH値は4〜7、好適には4.5〜6、最適には5.0〜5.5である。
【0074】
また、図13の上部にpH5.2におけるHOM−DSNPDの色調変化を示す。ヨウ素を2ppm含有する場合(Optical HOM-DSNPD-I2 with 2ppm at pH5.2)とヨウ素を含まない場合(HOM-DSNPD at pH5.2)を示す。ヨウ素を含まない場合はHOM-DSNPDの色調は黄色の固形物であったが、ヨウ素を2ppm含有する場合は濁った緑色の固形物になり、色調が変化した。
【実施例12】
【0075】
<HOM1−TKおよびHOM1−DSNPDを用いた様々な濃度のヨウ素溶液からヨウ素抽出を行なうときの感度の調査>
図14は、ヨウ素の除去剤としてHOM1に担持したHOM1−TKプローブ(HOM−TK collector)を用いた場合のヨウ素イオン抽出方法の手順を示す図である。この手順に従って、ヨウ素イオンを最も良く吸着するpH2.0溶液中に様々な濃度(1ppb〜2ppm)のヨウ素イオンを添加し、適量の脱イオン水を加えて容積を20mlにした。その後、HOM1−TKを20mg加えて1時間攪拌し、固形材料が含まれた溶液をろ過した。この固形材料はヨウ素を吸着したHOM1TK−Iである。固形材料は紫外線可視分光スペクトル測定(UV-VIS-NIR Spectroscopy)によって調査され、吸光度スペクトルを取った。
【0076】
また、ヨウ素の除去剤としてHOM1に担持したHOM1−DSNPDプローブを用いた場合についても上記と同様に、様々な濃度(0ppb〜12ppm)のヨウ素イオンをHOM1−DSNPDコレクターに吸着させて、ろ過後の固系材料(HOM1−DSNPD―I)について紫外線可視分光スペクトル測定(UV-VIS-NIR Spectroscopy)を行ない、吸光度スペクトルを取った。ただし、溶液のpH値は、HOM1−DSNPDプローブが最も良くヨウ素を吸着するpH値5.2としている。
【0077】
図15は、ヨウ素イオン濃度をパラメータとしたHOM1−TK−Iの室温における吸収スペクトルを示す図である。図15において横軸は測定波長、縦軸は吸光度である。図15から分かるように、ヨウ素イオン濃度が増えるに従い、吸収スペクトル強度は測定波長域(250nm〜900nm)のほぼすべてで増大する。従って、HOM1−TK−Iの紫外線可視分光スペクトル測定を行えば、その吸光度から溶液中のヨウ素イオン濃度を知ることができる。
【0078】
実際に、ヨウ素イオン吸着と関係する最も吸光度が大きくなる波長(λ=639nm)において、吸光度とヨウ素イオン濃度の関係を調べると、図16のようになる。すなわち、図16はpH=2.0の溶液中のヨウ素イオン濃度とHOM1−TK−Iの紫外線可視分光スペクトルの吸光度(λ=639nm)との関係を示す図であり、ヨウ素イオン濃度と吸光度(λ=639nm)のキャリブレーション曲線である。このように、溶液中のヨウ素イオン濃度が増えるに従い、HOM1−TK−Iの紫外線可視分光スペクトルの吸光度は増大することを明瞭に把握することができる。逆に言えば、HOM1−TK−Iの紫外線可視分光スペクトルの吸光度から溶液中のヨウ素イオン濃度を知ることができる。特にヨウ素イオン濃度が低い所(1μM以下)では、図16の内図に示されるように直線性が良い。すなわち、図16に示すカーブ曲線は吸収率と濃度との検量線と言っても良い。従って、HOMプローブ(HOM1−TK)は、ヨウ素イオンの優れたコレクターおよび濃度検出センサーである。これらのスペクトル変化は、TKが電荷移動錯体を形成するために、ヨウ素(I)−レセプター結合事象のインジケータ(指示計)である。尚、紫外線可視分光スペクトルの測定は10回の繰り返し測定を行なったがバラツキは殆どなく再現性が非常に良い。また、ヨウ素イオン濃度は既知のサンプルを基にして較正されている。
【0079】
図17は、ヨウ素イオン濃度をパラメータとしたHOM1−DSNPD−Iの室温における吸収スペクトルおよび比色分析を示す図である。図17において横軸は測定波長、縦軸は吸光度である。図17から分かるように、ヨウ素イオン濃度(0−12ppm)が増えるに従い、吸収スペクトル強度は測定波長域(250nm〜900nm)のほぼすべてで増大する。従って、HOM1−DSNPD−Iの紫外線可視分光スペクトル測定を行えば、その吸光度から溶液中のヨウ素イオン濃度を知ることができる。
【0080】
実際に、ヨウ素イオン吸着と関係する波長(λ=615nm)において、吸光度とヨウ素イオン濃度の関係を調べると、図18のようになる。すなわち、図18はpH=5.2の溶液中のヨウ素イオン濃度とHOM1−DSNPD−Iの紫外線可視分光スペクトルの吸光度(λ=615nm)との関係を示す図であり、ヨウ素イオン濃度と吸光度(λ=615nm)のキャリブレーション曲線である。このように、溶液中のヨウ素イオン濃度が増えるに従い、HOM1−DSNPD−Iの紫外線可視分光スペクトルの吸光度は増大することが明瞭に把握することができる。逆に言えば、HOM1−DSNPD−Iの紫外線可視分光スペクトルの吸光度から溶液中のヨウ素イオン濃度を知ることができる。特にヨウ素イオン濃度が低い所(1μM以下)では、図18の内図に示されるように直線性が良い。すなわち、図18に示すカーブ曲線は吸収率と濃度との検量線と言っても良い。従って、HOMプローブ(HOM1−DSNPD)は、ヨウ素イオンの優れたコレクターおよび濃度検出センサーである。これらのスペクトル変化は、DSNPDが電荷移動錯体を形成するために、ヨウ素(I)−レセプター結合事象のインジケータ(指示計)である。尚、紫外線可視分光スペクトルの測定は10回の繰り返し測定を行なったがバラツキは殆どなく再現性が非常に良い。また、ヨウ素イオン濃度は既知のサンプルを基にして較正されている。さらに、HOM1−DSNPDは、図17に示すように大量のヨウ素を吸着できるためヨウ素を効率よく収集することができる。
【0081】
図17には、ヨウ素イオン濃度とHOM−DSNPD−I2の色調との関係、すなわち比色分析のデータが示されている。図17に示すように、ろ過後の固形材料の色調は、ヨウ素イオン濃度が増大するに従い、薄い黄色(ヨウ素イオン濃度0ppb、すなわちHOM−DSNPDコレクターの色調)から段々黄色が濃くなり、黄色(ヨウ素イオン濃度100ppb)となり、さらに黄色が濃くなる(ヨウ素イオン濃度1ppm)とともに、緑色がついてきて、薄い緑黄色(ヨウ素イオン濃度4ppm)に変化し、さらに黄緑色(ヨウ素イオン濃度8ppm)、さらに緑色(ヨウ素イオン濃度12ppm)に変化する。この色調の変化は連続的なので、逆にろ過後の固形材料{HOM5−DSNPD−ヨウ素}の色調からヨウ素イオン濃度を知ることが可能である。このように比色分析の結果からも、HOMプローブ(HOM1−DSNPD)は、ヨウ素イオンの優れたコレクターおよび濃度検出センサーである。
【実施例13】
【0082】
<ヨウ素イオンに関するHOM1−TKコレクターの選択性(カチオンについて)>
HOMコレクターの大きな利点は、ヨウ素イオン抽出系でヨウ素イオンに対する選択性を持っていることである。従って、HOM1−TKコレクターは、図19に示すカチオンやアニオンのような活性な干渉成分からヨウ素イオン抽出の妨害を阻止することができる。実環境の廃水や環境においてヨウ素と共存する可能性がある多数の干渉成分が存在するので、多数のカチオンの存在の下で、HOM−TKコレクターのヨウ素イオン吸着に関する選択性を調査した。特定のpH条件2.0で、上述の抽出システムにおいて、高濃度の様々なカチオンの付加の効果を調査した。実験は室温(25℃)で行なわれ、2ppmヨウ素および各種の活性種をそれぞれ個別に添加し、全容積を20mlにした水溶液を用いた。この後、20mgのHOM−TKコレクターを添加し1時間攪拌した。攪拌後、溶液をろ過した後得られた固系材料は、紫外可視分光スペクトル法(UV-VIS-NIR Spectroscopy)を用いて定量解析された。
【0083】
ヨウ素イオンを最も良く抽出するpH2.0の溶液に様々な異種活性カチオン(K+、Li+、Ca2+、Mg2+、Na+、Al3+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Co2+、Cd2+、Pd2+、Sr2+、Bi3+、およびMo6+)を個別に付加した。この溶液にHOM―TKコレクターを添加し、ろ過後固形材料を得た。また、比較として、ヨウ素イオンのみの添加溶液および何も添加しない溶液も用意した。すべての操作は25℃で行なわれた。図19は、ヨウ素イオンを含む種々の金属イオンをそれぞれ個別に含む溶液にHOM1−TKを浸漬した後に得られた固形物のUV-VIS-NIR分析データおよび色調データを示す図である。溶液に含まれるカチオンは図中の番号に対応する以下の物質である。すなわち、図中の番号は、(1) 4.0ppm K+、 (2) 4ppm Li+、(3) 5.0ppm Ca2+、(4) 4.0ppm Mg2+、(5) 4.0ppm Na、(6) 4.0ppm Al3+、(7) 4.0ppm Cu2+、(8) 3.5ppm Ni2+、(9) 4.5ppm Mn2+、(10) 4.0 ppm Zn2+、(11) 4.0ppm Co2+、(12) 4.0ppm Cd2+、(13) 4.0ppm Pb2+、(14) 3.5ppm Sr2、(15) 4.0ppm Bi3+、(16) 4.0ppm Mo6+ 、(17) 2ppm ヨウ素イオン、および(18) HOM-TK probeである。
【0084】
図19から分かるように、ヨウ素イオン以外の上記の(1)〜(16)の金属イオンを含んでも、紫外線可視分光(UV-VIS-NIR)スペクトルのデータには殆ど変化はなく、また色調データについても色調の変化も殆どない(薄い緑色のままである)。従って、HOM1−TKはヨウ素イオン以外の金属イオンを吸着しない。このことは、ヨウ素イオンだけを含む溶液に浸漬した紫外線可視分光(UV-VIS-NIR)スペクトルのデータは大きな吸収スペクトルが得られることと対照的である。また、色調も紺色へ変化することともも対照的である。また、ICP-OES(ICP発光分光分析)のデータから、それぞれのろ過液には、ヨウ素イオン以外の上記の金属イオンだけが含まれていた。このことからもHOM1−TKはヨウ素イオン以外の金属イオンを殆ど吸着しないことが分かる。
【0085】
さらに上記の(1)〜(17)のすべてのカチオンを含む溶液に浸漬したHOM1−TKは、吸収スペクトルはサンプル(17)と同じであった。また、ICP-OES(ICP発光分光分析)のデータから、ろ過液には、ヨウ素イオン以外の上記の金属イオンだけが含まれ、しかもそれらの濃度はHOM1−TKを浸漬する前の溶液に含まれていた金属イオン濃度とほぼ同じであった。以上からHOM1−TKは、カチオンについてはヨウ素イオンに対する選択性が非常に高く、またヨウ素イオン以外のカチオンによってヨウ素イオンの吸着性が影響されることは殆どないことが確かめられた。さらに、ヨウ素イオン(2ppm)と上記の金属イオンすべてを含む溶液にHOM−TKコレクターを浸漬した場合の色調は、ヨウ素イオン(2ppm)だけを含む場合と同様に薄い緑色から紺色へ変化した。この色調変化からもHOM−TKコレクターのヨウ素イオン吸着は、共存する金属イオンには影響されないことが分かる。
【実施例14】
【0086】
<ヨウ素イオンに関するHOM1−TKコレクターの選択性(アニオンについて)>
HOMコレクターの大きな利点は、ヨウ素イオン抽出系でヨウ素イオンに対する選択性を持っていることである。従って、HOM1−TKコレクターは、図20に示すアニオンのような活性な干渉成分からヨウ素イオン抽出の妨害を阻止することができる。廃水や環境においてヨウ素と共存する可能性がある多数の干渉成分の存在の下で、HOM−TKコレクターの選択性を調査した。特定のpH条件2.0で、上述の抽出システムにおいて、高濃度の様々なアニオン{ドデシル硫酸ナトリウム{sodium dodocylsulfate (SDS)}、臭化セチルトリメチルアンモニウム{Cetyl trimethylammonium bromide (CTAB)}、tartrate(酒石酸エステル)、citrate(クエン酸エステル)、 oxalate(シュウ酸エステル)、chloride(塩化物)、acetate(酢酸エステル)、nitrate(硝酸エステル)、sulfate(硫酸エステル)、および carbonate(炭酸エステル)}の付加の効果を調査した。また、比較として、ヨウ素イオン添加溶液および何も添加しない溶液も用意した。実験は室温(25℃)で行なわれ、2ppmヨウ素および各種の活性種をそれぞれ個別に添加し、全容積を20mlにした水溶液を用いた。この後、20mgのHOMコレクターを添加し1時間攪拌した。攪拌後、溶液をろ過した後得られた固形材料は、紫外可視分光スペクトル法(UV-VIS-NIR Spectroscopy)を用いて定量解析された。
【0087】
図20は、ヨウ素イオン、種々のアニオンまたは界面活性剤を含む溶液にHOM1−TKを浸漬した後に得られた固形物のUV-VIS-NIR分析データおよび色調データを示す図である。溶液に含まれるアニオンまたは界面活性剤は図中の番号に対応する以下の物質である。すなわち、図中の番号は(1)SDS、(2) CTAB、(3) tartrate、(4) citrate、(5) oxalate、(6) chloride、(7) acetate、(8) sulfate、(9) nitrate、(10) carbonate、(11)ヨウ素および (12)何もなしである。図20から分かるように、ヨウ素イオン以外の上記の(1)〜(10)のアニオンまたは界面活性剤を含んでも、紫外線可視分光スペクトルのデータは殆ど変化がない。すなわち、HOM1−TKだけ(これは何も吸着していない)のスペクトル(吸光度)データと各アニオンや界面活性剤に浸漬したHOM1−TKのスペクトル(吸光度)データは同じであり、これらのスペクトル(吸光度)データに比べるとヨウ素イオン溶液に浸漬してヨウ素を吸着させたHOM1−TK−Iのスペクトル(吸光度)データは極めて大きい。また色調データについても(ヨウ素イオンだけの場合を除いて他の試料は)色調の変化も殆どない。従って、HOM1−DSNPDは、アニオンや界面活性剤を殆ど吸着しないし、それらから殆ど影響や干渉を与えないことが分かった。
【0088】
さらに上記の(1)〜(12)のすべてのアニオンおよび界面活性剤を含む溶液に浸漬したHOM1−TKは、吸収スペクトルはサンプル(11)と同じであった。また、ICP-OES(ICP発光分光分析)のデータから、ろ過液には、ヨウ素イオンが殆ど含まれていなかった。以上からHOM1−TKは、アニオン等についてはヨウ素イオンに対する選択性が非常に高く、またヨウ素イオン以外の多数のアニオン等によってヨウ素イオンの吸着性が影響されることは殆どないことが確かめられた。さらに、ヨウ素イオン(2ppm)と上記のアニオン等のすべてを含む溶液にHOM−TKコレクターを浸漬した場合の色調は、ヨウ素イオン(2ppm)だけを含む場合と同様に色調が薄い緑色から紺色へ変化した。この色調変化からもHOM−TKコレクターのヨウ素イオン吸着は、共存するアニオン等には影響されないことが分かる。
【実施例15】
【0089】
<複数イオンを含むヨウ素溶解溶液からHOM−DSNPDコレクターを用いたヨウ素(I)の選択的除去>
pH5.2溶液を2ml取って、カチオン(Na+、 K+、Ca2+、Ce3+)、アニオン(Cl、NO3、SO42−)およびヨウ素を付加して、その後必要量の水を加えてガラステストチューブで10mlにした。この多数イオン混合水溶液に関して、ヨウ素イオン濃度は4ppmであり、他のイオン濃度はi)各{NaCl、KCl、CaCl2 および Ce(NO3)3}において、4 ppmの Na+、K+、Ca2+、Ce3+、ii)各{NaCl、NaNO3、Na2SO4}において、4 ppmのCl、NO3、SO42−である。その後、10mgのHOM−DSNPDコレクターを室温で1時間振りながら添加した。その後、水溶液をろ過し、UV−VIS−NIR分析用に固体材料を用いた。ろ過溶液のICP-OES分析(ICP発光分光分析)から、ろ過溶液中にはヨウ素は殆ど含まれておらず、ヨウ素以外の他のイオンであった。
【0090】
固体材料中に存在するヨウ素は、紫外線可視分光(UV−VIS−NIR)スペクトルによって調査された。図21は、カチオンおよびアニオンの存在下におけるHOM−DSNPDコレクターによる紫外線可視分光スペクトルおよびHOM−DSNPDコレクターの色調変化を示す図である。何も吸着していないHOM−DSNPDコレクターのスペクトルに対して、ヨウ素イオンを吸着すると250nm〜850nmの紫外線可視光の広い波長範囲内で吸光度が増大する。また、色調に関しては、何も吸着していないHOM−DSNPDコレクターの黄色の色調から、ヨウ素を吸着すると黄緑色の色調へ変化する。HOM−DSNPDコレクターの場合、カチオンおよびアニオンの両方が存在すると吸光度が300−400nmのピーク値周辺で少し増大する傾向がみられるが、ヨウ素吸着に関与する波長615nmでは吸光度の相違は殆どない。また色調には余り大きな変化はない。しかし、吸光度が300−400nmのピーク値周辺における相違も、許容限度内の大きさであり、ヨウ素以外のもの(カチオンやアニオン)が含まれていても問題にならないレベルである。
【0091】
すなわち、HOM−DSNPDコレクターのヨウ素吸着はアニオンおよびカチオンの両方、さらには界面活性剤と共存してもこれらによって殆ど影響を受けないことが分かる。従って、HOM−DSNPDコレクターもヨウ素イオン吸着の選択性は極めて優れていると判断できる。特に微量なヨウ素の吸着(収集)に関しては感度も良いし、選択性も良好である。HOM−DSNPDコレクター(収集剤)は溶液中のヨウ素をすべて収集でき、完全にヨウ素を除去できるので、完全なヨウ素収集剤または完全なヨウ素除去剤と言える。
【実施例16】
【0092】
<HOM−DSNPD−Iからヨウ素の溶離/逆抽出>
ヨウ素を8ppm含む溶液にHOM−DSNPDコレクターを浸漬して8ppmのヨウ素を除去(抽出)しろ過した後、固体材料は、50mlビーカー中の20ml溶離水溶液(2.0MのHCl水溶液)に入れて、2時間攪拌された。この液をろ過して、固体材料とろ過液に分離した。図22は、2.0MHCl溶液によるHOM−DSNPDコレクターに吸着されたヨウ素(HOM−DSNPD−I)の溶離/逆抽出の色調変化および紫外可視分光スペクトル変化を示す図である。図22に示すように、HOM−DSNPDコレクターにヨウ素を吸着すると紫外可視分光スペクトルの吸光度は、250nm〜850nmの波長のすべてで増大する。特にヨウ素吸着を示す615nmのピークの増大が特徴的である。すなわち、HOM−DSNPDコレクターはHOM−DSNPD−Iに変化した。これをHClに接触(浸漬)することにより、紫外可視分光スペクトルの吸光度は250nm〜850nmの波長のすべてで低下し、特にヨウ素吸着を示す615nmのピークは消失してもとの(要素を吸着する前の)状態へ戻っている。すなわち、HOM−DSNPD−Iはヨウ素が分離してHOM−DSNPDに変化した。
【0093】
HOM−DSNPDの色調に関しても、ヨウ素を吸着していないHOM−DSNPDの薄い黄色から、ヨウ素吸着(HOM−DSNPD−I)によって緑色(8ppmI)へと色調が変化する。さらにこれをHClに浸漬すると元の色調(薄い黄色)へ戻る。ろ過溶液のICP-OES分析(ICP発光分光分析)から、ろ過溶液中にヨウ素が当初溶液に含まれていた量分が含まれていた。以上から、HCl水溶液によりHOM−DSNPD−I中の殆どのヨウ素は分離(溶離)し、HCl水溶液中に溶解し、固形物はHOM−DSNPDに戻ったと言える。この元に戻ったHOM−DSNPDは再びヨウ素抽出に使用することができる。尚、このヨウ素の分離(溶離)は、HOM−DSNPDがヨウ素を含む液からヨウ素を抽出しHOM−DSNPD−Iに変化するプロセスの逆なので、逆抽出と言っても良い。
【0094】
HOM−DSNPDを使えば、繰り返しヨウ素の抽出(吸着または収集)と溶離(分離または逆抽出)とを行なうことができるので、ヨウ素の回収を効率よくかつ安価にしかも迅速に行なうことができる。さらに、ppb〜ppmレベルの低濃度レベルのヨウ素にも適用できるので微量な放射性ヨウ素でも廃水や環境から除去することができる。
【実施例17】
【0095】
<HOM−TKコレクターからヨウ素の溶離/逆抽出>
ヨウ素を5ppm含む溶液にHOM−TKコレクターを浸漬して5ppmのヨウ素を除去(抽出)しろ過した後、固体材料は、50mlビーカー中の20ml溶離水溶液(0.025MのNaOH水溶液)に入れて、2時間攪拌された。この液をろ過して、固体材料とろ過液に分離した。図23は、0.025MのNaOH溶液によるHOM−TKコレクターに吸着されたヨウ素(HOM−TK−I)の溶離/逆抽出の色調変化を示す図である。図23に示すように、ヨウ素を吸着していないHOM-TKの色調は、緑色であるが、ヨウ素吸着(HOM−TK−I)によって紺色(5ppmI)へと色調が変化する。さらにこれをNaOH溶液に浸漬すると元の色調(薄い緑色)へ戻る。紫外可視分光スペクトル測定データからも元の(ヨウ素を吸着していないHOM-TKの)スペクトルへ戻る。
【0096】
また、ろ過溶液のICP-OES分析(ICP発光分光分析)から、ろ過溶液中にヨウ素が当初溶液に含まれていた量分が含まれていた。以上から、NaOH水溶液によりHOM−TK−I中の殆どのヨウ素は分離(溶離)し、NaOH水溶液中に溶解し、固形物はHOM−TKに戻ったと言える。この元に戻ったHOM−TKは再びヨウ素抽出に使用することができる。尚、このヨウ素の分離(溶離)は、HOM−TKがヨウ素を含む液からヨウ素を抽出しHOM−TK−Iに変化するプロセスの逆なので、逆抽出と言っても良い。HOM−TKを使えば、繰り返しヨウ素の抽出(吸着または収集)と溶離(分離または逆抽出)とを行なうことができるので、ヨウ素の回収を効率よくかつ安価にしかも迅速に行なうことができる。さらに、ppb〜ppmレベルの低濃度レベルのヨウ素にも適用できるので微量な放射性ヨウ素でも廃水や環境水から除去することができる。
【実施例18】
【0097】
<複数金属イオンを含むヨウ素溶解溶液からのヨウ素回収率>
ヨウ素イオン(濃度2ppm)および複数金属イオン((K+、Li+、Ca2+、Mg2+、Na+、Al3+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Co2+、Cd2+、Pd2+、Sr2+、Bi3+、およびMo6+)(濃度各2ppm)を含む水溶液にHOM−TKを浸漬して、そのろ過液に含まれる各イオンの濃度をICP-OES分析(ICP発光分光分析)を用いて測定し、さらに、ろ過後の固形材料(HOM−K−I)をNaOH溶液に浸漬してヨウ素を溶解し、その溶解液の各イオン濃度をICP-OES分析(ICP発光分光分析)を用いて測定した。図24は、複数イオンを含む溶液においてHOM−TKを浸漬する前後における各イオンの濃度の測定結果、およびHOM−TK−IからNaOH溶液によってヨウ素を溶離した後の溶液中の各イオンの濃度の測定結果を示す表である。
【0098】
図24において、(1)は複数イオン溶解溶液におけるヨウ素除去前の各イオンの濃度である。各イオン(I、K+、Li+、Ca2+、Mg2+、Na+、Al3+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Co2+、Cd2+、Pd2+、Sr2+、Bi3+、およびMo6+)とも2ppmの濃度であった。(2)は、HOM−TKコレクターによるヨウ素除去後のろ過液の各イオンの濃度であるが、すべての金属イオンの濃度は、ヨウ素除去前の濃度と変化がなかった。しかし、ヨウ素イオンは検出されず、ヨウ素イオン溶解溶液のヨウ素はすべてHOM−TKコレクターに吸着(収集、抽出)された。しかし、他の金属イオンは全く吸着されなかった。(3)はHOM−TK−Iからヨウ素を溶離した後のNaOH溶液の各イオンの濃度である。溶離後ヨウ素の濃度は1.89ppmであり、他の金属イオンは全く検出されなかった。以上から、ヨウ素の回収効率は約95%である。測定誤差や環境条件も加味すれば、非常に高い回収率であると言える。さらに、条件等の最適化を行なえば100%回収率も可能である。しかもヨウ素以外の金属イオンは全く吸着しないので非常に選択性が良い。従って、本発明のHOM−TKコレクターを用いたヨウ素の収集および回収システムは極めて優れた方法である。
【実施例19】
【0099】
<複数イオンを含むヨウ素溶解溶液からのヨウ素回収率>
ヨウ素イオン(濃度4ppm)および複数イオン(Na+、K+、Ca2+、Ce2+、Cl、NO3、SO42−)(濃度各4ppm)を含む水溶液にHOM−DSNPDを浸漬して、そのろ過液に含まれる各イオンの濃度をICP-OES分析(ICP発光分光分析)を用いて測定し、さらに、ろ過後の固形材料(HOM−DSNPD−I)をHCl溶液に浸漬してヨウ素を溶解し、その溶解液の各イオン濃度をICP-OES分析(ICP発光分光分析)を用いて測定した。図25は、複数イオンを含む溶液においてHOM−DSNPDを浸漬する前後における各イオンの濃度の測定結果、およびHOM−DSNPD−IからHCl溶液によってヨウ素を溶離した後の溶液中の各イオンの濃度の測定結果を示す表である。
【0100】
図25において、(1)は複数イオン溶解溶液におけるヨウ素除去前の各イオンの濃度である。各イオン(I、Na+、K+、Ca2+、Ce2+、Cl、NO3、SO42−)とも4ppmの濃度であった。(2)は、HOM−DSNPDコレクターによるヨウ素除去後のろ過液の各イオンの濃度であるが、ヨウ素以外のすべてのイオンの濃度は、ヨウ素除去前の濃度と変化がなかった。しかし、ヨウ素は検出されず、ヨウ素イオン溶解溶液のヨウ素はすべてHOM−DSNPDコレクターに吸着(収集、抽出)され、ヨウ素以外のイオンは吸着されなかった。(3)はHOM−DSNPD−Iからヨウ素を溶離した後のHCl溶液の各イオンの濃度である。溶離後ヨウ素の濃度は3.4ppmであり、他のイオンは全く検出されなかった。以上から、ヨウ素の回収効率は約85%である。測定誤差や環境条件も加味すれば、非常に高い回収率であると言える。さらに、条件等の最適化を行なえば100%回収率も可能である。しかもヨウ素以外のカチオンやアニオン全く吸着しないので非常に選択性が良い。従って、本発明のHOM−DSNPDコレクターを用いたヨウ素の収集および回収システムは極めて優れた方法である。
【0101】
図26は、上記の実施例から得られた本発明のHOM1−DSNPDコレクターおよびHOM1−TKコレクターの適用範囲を示した表である。HOM1−DSNPDコレクターまたはHOM1−TKコレクターをヨウ素イオン溶解溶液に浸漬したときのHOM1−DSNPDコレクターまたはHOM1−TKコレクターのヨウ素イオンを吸着する応答時間は約2分、視覚的抽出限界はそれぞれ5.1x10−8(mol.dm-3)または7.5x10−8 (mol.dm-3)で、視覚上の抽出範囲はそれぞれ0.001〜12.0ppmまたは0.0002〜2.0ppmである。ヨウ素1gを吸着するHOM1−DSNPDコレクターおよびHOM1−TKコレクターの必要量は20gである。またヨウ素を吸着したHOM1−DSNPD−IまたはHOM1−TK−Iは、溶離溶液としてそれぞれHCl溶液またはNaOHを使い元のHOM1−DSNPDまたはHOM1−TKに戻る。しかも、HOM1−DSNPDコレクターおよびHOM1−TKコレクターはHOMS骨格の安定な構造を有しており繰り返し使用できるので、少ない材料で多くのヨウ素を回収することができる。
【0102】
図27は、本発明のDSNPDまたはTKを担持したメソポーラスシリカ(HOMS)を用いて放射性ヨウ素等を含むヨウ素イオン溶解溶液からヨウ素(I)を回収するシステム示した図である。第1段階でメソポーラスシリカ(HOMS)を作製し、第2段階でヨウ素吸着性化合物であるDSNPDまたはTKをHOMSへ担持させ、HOMS−DSNPDコレクターまたはHOMS−TKコレクターを作製する。次に第3段階でヨウ素(このヨウ素には当然放射性ヨウ素も含む)を含むヨウ素(イオン)溶解溶液にHOMS−DSNPDまたはHOMS−TKを浸漬し、抽出すべき(あるいは収集すべき)目標元素であるヨウ素をHOMS−DSNPDまたはHOMS−TKに吸着(抽出、収集)し、HOMS−DSNPD−IまたはHOMS−TK−Iを作る。次の第4段階(図1では第5段階)では、このHOMS−DSNPD−IまたはHOMS−TK−Iを酸性溶液またはアルカリ溶液などのヨウ素溶離溶液に浸漬等して目標元素であるヨウ素を分離する。この一連の操作によってヨウ素が回収または収集された。HOMS−DSNPDまたはHOMS−TK−Iは第3段階で再び使用することができ、HOMS−DSNPDまたはHOMS−TKをリユースして何回でも使用できる。
【0103】
比色法の観点から言えば、第3段階でヨウ素イオン溶解溶液において、HOMS−DSNPDコレクターまたはHOMS−TKコレクターの色調が変化する。この色調の変化はヨウ素イオン溶解溶液のヨウ素イオン濃度により異なる。あるいはHOMS−DSNPDコレクターまたはHOMS−TKコレクターの色調は、これらに吸着されたヨウ素イオン濃度により異なる。HOMS−DSNPDコレクターまたはHOMS−TKコレクターへのヨウ素イオン吸着スピードは数分程度と速やかに行なわれるので、色調変化が終了した段階でろ過等によりHOMS−DSNPDコレクター(HOMS−DSNPD−Iとなる)またはHOMS−TKコレクター(HOMS−TK−Iとなる)を分離する。これはヨウ素イオン溶解溶液中のヨウ素イオンがHOMS−DSNPDコレクターまたはHOMS−TKコレクターに収集されたということを示す。これらのHOMS−DSNPD−IまたはHOMS−TK−Iを、これらからヨウ素を分離できる溶離(遊離、分離)溶液と接触させると、HOMS−DSNPDコレクターまたはHOMS−TKコレクターの色調が再び変化し、元の色調に戻る。すなわち、ヨウ素を吸着していないHOMS−DSNPDまたはHOMS−TKに戻った。HOMS−DSNPDコレクターおよびHOMS−TKコレクターは、ヨウ素イオンの抽出の選択性が極めて高く、多数のイオンが含まれていてもその効果に対して影響は殆どなく固形物の色調変化にも殆ど影響を与えない。従って、HOMS−DSNPDコレクターおよびHOMS−TKコレクターは、溶液中のヨウ素をすべて収集でき、完全にヨウ素を除去できるので、完全なヨウ素収集剤または完全なヨウ素除去剤と言える。このようにして、比色法を用いて、ヨウ素イオンの回収のために何度もHOM5−DSNPDコレクターを使うことができる。
【0104】
比色法による色調の変化を用いてHOM−DSNPDコレクターまたはHOMS−TKコレクターがどの程度の量のヨウ素イオンを吸着したか知ることができる。たとえば、HOM−DSNPDはヨウ素を吸着すると変色してHOM−DSNPD−Iになり、薄い黄色(ヨウ素イオン濃度0ppb、すなわちHOM−DSNPDコレクターの色調)から段々黄色が濃くなり、黄色(ヨウ素イオン濃度100ppb)となり、さらに黄色が濃くなる(ヨウ素イオン濃度1ppm)とともに、緑色がついてきて、薄い緑黄色(ヨウ素イオン濃度4ppm)に変化し、さらに緑黄色(ヨウ素イオン濃度12ppm)に変化する。この色調の変化程度によりヨウ素の吸着濃度を判定できる。
【0105】
また、ヨウ素イオン溶解溶液にHOM−DSNPDコレクターを浸漬してHOM−DSNPDコレクターが薄い黄緑色で終点すれば4ppm以上のヨウ素イオンを吸着しているので、HOM−DSNPDコレクターのヨウ素イオンを含む水溶液への浸漬をやめて、水溶液からHOM−DSNPDコレクターを取り出し、HOM−DSNPD−Iからヨウ素イオンの溶離を行なうことができる。HOM−DSNPD−Iはヨウ素イオン溶離溶液に入れるとヨウ素を溶離して変色してHOM−DSNPDになり、薄い黄緑色から薄い黄色へと変化し、ヨウ素イオンを吸着していないHOM−DSNPDコレクターへ戻る。ヨウ素イオンが完全に除去されたことは、ICP−OES測定からも確認することができる。このように比色法を用いてヨウ素イオンの吸着の量を判定でき、終点検知も可能となる。HOM−DSNPDコレクターはヨウ素イオンの抽出/分離に対して可逆的である。このように色調だけでヨウ素イオンの吸着量を把握し、あるいはヨウ素イオンを吸着していないと把握できるので、ヨウ素イオンの迅速な検出だけでなく、迅速な回収を行なうことができる。この結果生産性を大幅に向上させることもできる。HOM−TKコレクターも同様である。以上のように、HOM−TKコレクターやHOM−DSNPDコレクター等は、色調の変化(比色法)を活用してヨウ素の抽出(収集)を行なうことができるので、視覚コレクターと呼ぶこともできる。また、この色調変化(比色法)や前記の分光法を自動化して、自動回収システムを構築して連続処理することもできる。
【0106】
HOMS−DSNPDやHOMS−TK、あるいは上記した他のヨウ素イオン吸着性化合物を担持したHOMSは選択性が非常に優れているため、ヨウ素イオン以外の金属がヨウ素イオン溶解液に含まれていても、あるいはアニオンイオンや界面活性剤などがヨウ素イオン溶解溶液に含まれていても、すなわち、これらの競合イオンが存在しても、非常に選択性が良く、ヨウ素イオンだけを抽出あるいは収集する。ヨウ素イオンの量がppb〜ppmレベルの微量でもあるいはもっと多量に含まれていても、また他の金属イオンやアニオンや界面活性剤の含有量が微量あるいはもっと多量に含まれていても、本発明のHOMS−DSNPDやHOMS−TK等はヨウ素イオンだけを選択的に抽出あるいは収集することができる。
【0107】
本発明の特徴の一つは、メソポーラス材料の内壁を任意の複合酸化物で構成させることにより、異種の原子が整列した状態を作り上げ、そこに適切なキレートまたは化合物を固着させることを通じてセンシングやコレクティングを行うことである。本発明の技術を用いて作製したHOM5−DSNPDやHOMS−TK等のヨウ素イオンコレクターは、放射性ヨウ素等を含む廃(排)液や生活用(排)水等からヨウ素を吸着すると視覚的に変化することからヨウ素の回収を容易に行なうことができる。しかもHOM5−DSNPDやHOMS−TK等コレクターは種々のイオンの中でもヨウ素イオンに対して高選択性を有し、光学的応答機能を備えている。本発明のHOM5−DSNPDやHOMS−TK等コレクターは、特に人体に危険な放射性ヨウ素の抽出・除去・収集・回収および検出に極めて有用である。
【0108】
上述したように、本発明は、有機シリコン化合物および界面活性剤から作製した高秩序化メソポーラスシリカに目標元素であるヨウ素イオンを選択的に吸着するキレート化合物のようなヨウ素イオン吸着性化合物を担持させ、そのヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカを目標元素であるヨウ素イオンが溶解された溶液と接触させ、目標元素であるヨウ素イオンを選択的にメソポーラスシリカに担持されたヨウ素イオン吸着性化合物に吸着させる。その後で、目標元素であるヨウ素イオンを吸着したヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカを化学的処理し、目標元素であるヨウ素イオンをメソポーラスシリカに担持されたヨウ素イオン吸着性化合物から遊離させ、目標元素であるヨウ素を回収する。目標元素であるヨウ素イオンが遊離されたヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカは、再使用できる。また、このヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカはヨウ素(イオン)コレクターおよび濃度検出センサーとして使用することもできる。さらに、生活用水や廃液等に(有害な放射性)ヨウ素が溶け込んでいるかどうかを検査することができるし、その濃度がppb〜ppmオーダーという微量な濃度でも検出することができる。さらに生活用水や廃液等に溶け込んだ(放射性)ヨウ素を吸着して非常に微量な濃度まで(放射性)ヨウ素濃度を低減することができる。放射能レベルから言えば許容限度以下に低減できる。従って(放射性)ヨウ素除去フィルターとしても使用することができる。
【0109】
尚、明細書のある部分に記載し説明した内容を記載しなかった他の部分においても矛盾なく適用できることに関しては、当該他の部分に当該内容を適用できることも言うまでもない。また、上記実施形態や実施例は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施でき、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことも言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、ヨウ素コレクターおよびセンサーに関する産業分野、種々のカチオンやアニオンや界面活性剤等を含む物質や材料からヨウ素を除去する産業分野、およびヨウ素を回収する産業分野において利用することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標元素であるヨウ素を含む各種イオンが溶解された溶液(ヨウ素イオン溶解溶液)からヨウ素イオンを吸着するとともに吸着されたヨウ素イオンを遊離することが可能な、ヨウ素イオンを吸着するヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカ。
【請求項2】
ヨウ素イオン吸着性化合物は目標元素であるヨウ素イオンを選択的に吸着可能な化合物であることを特徴とする、特許請求の範囲第1項に記載のメソポーラスシリカ。
【請求項3】
ヨウ素イオン吸着性化合物はキレート化合物であることを特徴とする、特許請求の範囲第2項に記載のメソポーラスシリカ。
【請求項4】
ヨウ素イオン吸着性化合物は、N,N`-ビス(サリチリジン)2−メルカプトピリミニジン−4−ol−5,6−ジアミン{N,N` Bis(salicylidine)
2-mercaptopyriminidin-4-ol- 5,6
diamine (BSCPD)}、N,N`-ジサリチリデン−4−ニトロ−フェニレンデン{N,N-disalicylidene-4-nitro-phenylenedene
(DSNPD)}、3ナトリウム8−ヒドロキシピレン−1,3,6−3スルホン酸エステル(ピラニン){Trisodium
8-hydroxypyrene-1,3,6-trisulfonate
(Pyranine)}、1,5−ジフェニルチオカルバゾン(ジチゾン){1,5-Diphenylthiocarbazone (Dithizone)}、5-(4-ジメチルアミノベンジリデン)ロダニン{5-(4-Dimethylaminobenzylidene)rhodanine (DMABR)}、アシッドレッド27(Acid Red27)、またはN,N,N',N'-テトラメチル-4,4'-ジアミノチオベンゾフェノン{Thiomichler’s Ketone (TK)}から選択された1または2以上の化合物であることを特徴とする、特許請求の範囲第3項に記載のメソポーラスシリカ。
【請求項5】
ヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカを、目標元素であるヨウ素が最大に吸着されるpH値に調整されたヨウ素イオン溶解溶液と接触させ、メソポーラスシリカに吸着したヨウ素イオン吸着性化合物に目標元素であるヨウ素イオンを吸着させることを特徴とする、特許請求の範囲第1項〜第4項のいずれかの項に記載のメソポーラスシリカ。
【請求項6】
前記DSNPDの場合には前記pH値は4.0〜7.0、好適には4.5〜6.0であり、前記TKの場合には前記pH値は0.1〜3.5、好適には0.5〜2.5であることを特徴とする、特許請求の範囲第5項に記載のメソポーラスシリカ。
【請求項7】
ヨウ素を吸着する前のヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカの色調はヨウ素を吸着することにより変色し、さらにヨウ素を分離するともとの色調に戻ることを特徴とする、特許請求の範囲第1項〜第6項に記載のメソポーラスシリカ。
【請求項8】
特許請求の範囲第1項〜第7項に記載のメソポーラスシリカを用いてヨウ素イオン溶解溶液からヨウ素を収集することを特徴とするヨウ素コレクター。
【請求項9】
ヨウ素イオン溶解溶液は放射性ヨウ素を含むことを特徴とする、特許請求の範囲第8項に記載のヨウ素コレクター。
【請求項10】
目標元素であるヨウ素イオンを良く吸着するpH値に調整された、目標元素であるヨウ素イオンを含むヨウ素イオン溶解溶液に、ヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカを接触させ、前記ヨウ素イオン吸着性化合物に目標元素であるヨウ素イオンを選択的に吸着する工程、
目標元素であるヨウ素イオンを吸着した前記ヨウ素イオン吸着性化合物から目標元素であるヨウ素イオンを遊離する工程
を含むことを特徴とするメソポーラスシリカを用いたヨウ素回収方法。
【請求項11】
ヨウ素イオン吸着性化合物をメソポーラスシリカに担持する工程をさらに含むことを特徴とする、特許請求の範囲第10項に記載のヨウ素回収方法。
【請求項12】
比色法を用いてヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカに吸着されたヨウ素イオンの濃度を判定する工程をさらに含むことを特徴とする、特許請求の範囲第10項または第11項に記載のヨウ素回収方法。
【請求項13】
ヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカはリユースすることを特徴とする、特許請求の範囲第10項〜第12項のいずれかの項に記載のヨウ素回収方法。
【請求項14】
ヨウ素イオン吸着性化合物はキレート化合物であることを特徴とする、特許請求の範囲第10項〜第13項のいずれかの項に記載のヨウ素回収方法。
【請求項15】
ヨウ素イオン吸着性化合物は、N,N`-ビス(サリチリジン)2−メルカプトピリミニジン−4−ol−5,6−ジアミン{N,N` Bis(salicylidine)
2-mercaptopyriminidin-4-ol- 5,6
diamine (BSCPD)}、N,N`-ジサリチリデン−4−ニトロ−フェニレンデン{N,N-disalicylidene-4-nitro-phenylenedene
(DSNPD)}、3ナトリウム8−ヒドロキシピレン−1,3,6−3スルホン酸エステル(ピラニン){Trisodium
8-hydroxypyrene-1,3,6-trisulfonate
(Pyranine)}、1,5−ジフェニルチオカルバゾン(ジチゾン){1,5-Diphenylthiocarbazone (Dithizone)}、5-(4-ジメチルアミノベンジリデン)ロダニン{5-(4-Dimethylaminobenzylidene)rhodanine (DMABR)}、アシッドレッド27(Acid Red27)、またはN,N,N',N'-テトラメチル-4,4'-ジアミノチオベンゾフェノン{Thiomichler’s Ketone (TK)}から選択された1または2以上の化合物であることを特徴とする、特許請求の範囲第14項に記載のヨウ素回収方法。
【請求項16】
前記DSNPDの場合には前記pH値は4.0〜7.0、好適には4.5〜6.0であり、前記TKの場合には前記pH値は0.1〜3.5、好適には0.5〜2.5であることを特徴とする、特許請求の範囲第15項に記載のヨウ素回収方法。
【請求項17】
前記ヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカがヨウ素イオンを吸着すると変色することを用いてヨウ素イオンを抽出すること、および/またはヨウ素イオンを吸着した前記メソポーラスシリカがヨウ素イオンを溶離すると変色し前記ヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカに戻ることを用いてヨウ素イオンを分離することを特徴とする、特許請求の範囲第10項〜第16項のいずれかの項に記載のヨウ素回収方法。
【請求項18】
高濃度の競合イオンの存在下でも低濃度のヨウ素イオンを収集し検出することができる、ヨウ素イオン吸着性化合物を担持したメソポーラスシリカをベースとした視覚コレクター。
【請求項19】
比色法または紫外可視分光分析(UV-VIS-NIR
spectroscopy)を用いてヨウ素イオン濃度を決定するために使用することが可能な特許請求の範囲第18項に記載の視覚コレクター。
【請求項20】
250nm〜900nmの波長を変えながらUV−VIS−NIR分光分析を適用することによってヨウ素イオンの濃度を決定するために、視覚的にまたは定性的に使用することが可能な特許請求の範囲第19項に記載の視覚コレクター。
【請求項21】
請求項1〜7のいずれかの項に記載のメソポーラスシリカを用いたヨウ素除去フィルター。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2013−10082(P2013−10082A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145037(P2011−145037)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】