説明

ライナープレート変位防止装置、及び変位防止システム

【課題】掘削穴内壁に多段状に設置したライナープレートリングを地盤面側で吊り下げ保持するための変位防止装置であって、人手による運搬、設置が可能なものを提供する。
【解決手段】地盤50に掘削穴51を形成する過程で、掘削穴壁面の全周に亘って環状に組み付けられるライナープレートリング30の脱落を防止するライナープレート変位防止装置1であって、膨張することによって最上位に位置するライナープレートリング30の外周面を挟圧保持する挟圧面、及び地盤面に接触して沈み込み防止効果を発揮する地盤接触面を有した環状袋体2、袋体10を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄塔等の構造物の基礎工事等において、地盤面に掘削穴を形成する際に掘削壁の崩落防止等のために使用されるライナープレートの沈下、脱落、位置ずれを防止する変位防止装置、及び変位防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
送電線用鉄塔の基礎工事においては例えば逆T字型コンクリートブロックを地中に埋設形成するが、その際には、地盤に形成した掘削穴内に型枠を組んで型枠内にコンクリートを打設し、硬化させて完成させている。掘削穴を形成する際には、掘削壁の崩落防止や地盤からの湧水を止水するために、ライナープレートと称される湾曲した鉄板を環状に組み付けたライナープレートリングを掘削の進行に応じて地盤面側から地中に向けて順次掘削壁面に多段状に組み付けて行く作業が実施される。上下のライナープレートリングの端縁間はボルト等によって締結固定される。ライナープレートリングによる掘削壁の補強と、更なる掘削及びライナープレートリングの設置作業を繰り返すことによって掘削及びライナープレートリングの組付けを完了した後で、掘削穴内に型枠を組み上げ、型枠内に必要な鋼材、鉄筋を配置した状態でコンクリートを打設、硬化させる。コンクリートの硬化後にライナープレートリングを下側から外して順次埋め戻しを行う。送電線用の鉄塔の基礎工事においては、基礎の位置精度を極めて高く維持する必要があるため、掘削穴の寸法精度、及び掘削穴の内壁を補強するライナープレートリングの位置精度(ライナープレートリング径のずれ)の誤差が10cm程度しか許容されないのが実情である。このため、掘削穴形成に際しては、穴の中心部は重機を用いた掘削が許されるが、穴の周縁部は人力による掘削によって精度を確保している。
【0003】
ライナープレートを用いた掘削工法において問題となるのは、重量物としてのライナープレートリングの外周面と掘削壁との間に隙間が形成されることによるライナープレートの脱落、傾斜といった弛みの発生である。弛みが発生すると作業のやり直しや危険をもたらすばかりでなく、掘削穴内に組み付けられる型枠の設置精度の低下等、基礎工事上の種々の問題をもたらす。このような弛みを防止するため従来はライナープレートリングの外周にセメント系材料からなる裏込め材を充填、固化させていたが、この方法では裏込め材がライナープレートに固着してしまうため、ライナープレートの撤去作業が困難化するばかりでなく、ライナープレートの破損、汚損によって再使用が妨げられる虞が高くなる。特に、最近の土木工事業者は、コスト低減のためにライナープレートをレンタル業者から借用することが多いため、破損、汚損すると返却時に賠償問題が発生し、かえってコストがかかるという不具合をもたらしている。また、湧水量の多い軟弱地盤における掘削工事においては、裏込め材だけでは自重によるライナープレートの沈下、脱落、傾斜等の位置ずれを防止し切れないという問題がある。
【0004】
また、特許文献1には、複数のライナープレートを環状に組み付けたライナープレートリングの外周面と掘削穴の掘削壁との間に合成樹脂からなる容器を配置し、この容器内に充填材を注入して膨張、硬化させてライナープレートリングと掘削壁との間の空隙を充填することにより、局所的な崩落、湧水に対処するようにした技術が開示されている。
しかし、このような容器を裏込め材として利用したとしても、湧水量の多い軟弱地盤では掘削壁の崩落によるライナープレートリングの脱落、位置ずれを防止し切れない。
また、特許文献2においては、ライナープレートリングと掘削穴の内壁との間に注入袋を配置してから、注入袋内に裏込め材を充填して硬化させることによってライナープレートリングの脱落を防止しているが、この場合も湧水量の多い軟弱地盤では掘削壁の崩落によるライナープレートリングの脱落、位置ずれを防止し切れない。
【0005】
次に、上記不具合に対処するために従来、掘削穴の開口周縁の地盤面に設置した鉄板上に、掘削穴開口部が中心に位置するようにH型鋼材を井桁状に組み、このH型鋼材と最上部のライナープレートリングとをボルト、ワイヤ等によって固定することによって、ライナープレートリングの沈み込みを防止する工法が採られることもある。
しかし、この工法は高重量物である鉄板やH型鋼材を使用する必要があるため、運搬用の機材、設置作業用の重機が必要となり、高コスト化、作業性低下という問題をもたらしている。
【特許文献1】特開平8−338196号公報
【特許文献2】特開平11―81854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
各種基礎工事において地中に構造物を構築するために掘削穴を形成する際には、掘削穴の崩落を防止するために、ライナープレートを用いて段階的に掘削壁を補強しつつ掘り進める作業を行う必要があるが、ライナープレート自体が重量物であるため掘削壁との間に裏込め材を充填、配置したとしても沈下、脱落、傾倒等の位置ずれを防止することが容易でなかった。特に、裏込め材は落下、位置ずれを起こしやすいため、ライナープレートの変位防止効果には限界があった。
また、掘削穴の開口を中心として井桁状に組み付けたH型鋼材を地盤上に設置し、このH型鋼材によって最上部のライナープレートリングを保持することによって多段状に設置されたライナープレートリング全体の脱落を防止する工法も実施されてはいるが、重量物である鋼材の運搬、組付けに多大な手数、コストがかかるという問題があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、掘削穴内壁に多段状に設置したライナープレートリングを地盤面側で吊り下げ保持するための変位防止装置であって、人手による運搬、設置が可能なものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明に係るライナープレート変位防止装置は、地盤に掘削穴を形成する過程で、掘削穴壁面の全周に亘って環状に組み付けられるライナープレートリングの脱落を防止するライナープレート変位防止装置であって、膨張することによって最上位に位置するライナープレートリングの外周面を挟圧保持する挟圧面、及び地盤面に接触して沈み込み防止効果を発揮する地盤接触面を有した環状袋体を備えたことを特徴とする。
上下方向に多段状に連設されることによって掘削穴内壁を補強するライナープレートリングが沈下、脱落、位置ずれを起こすことを防止するために、最上部のライナープレートリングを保持する手段として、流体を充填することによって膨張、硬化する環状袋体を用いた。膨張した環状袋体によって最上部のライナープレートリングを挟圧保持するようにしたので、ライナープレート変位防止装置は地盤面との間でライナープレートリング群の荷重を支承することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記環状袋体は、環状に連結された複数の袋体から構成されていることを特徴とする。
環状袋体としては、単一の大型の袋体とするよりも、小型の袋体を複数個連結した構造とする方が軽量化が可能となるので、取扱性を高めることができる。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記環状袋体、及び前記袋体は、内部に流体を充填することによって膨張し、流体を排出することによって収縮することを特徴とする。
流体としては、空気の如き気体や、水の如き液体を使用する。
請求項4の発明は、請求項1、2又は3において、前記環状袋体、及び前記袋体は、流体充填時に少なくとも内径方向に膨張するように構成されていることを特徴とする。
ライナープレートリングと接触してこれを挟圧する部分である環状袋体、袋体の内周面だけを膨張させるように構成することによって効果的に圧接させることが可能となる。
【0009】
請求項5の発明は、請求項2又は3において、複数の前記袋体間を連通させることにより前記流体の充填を一括して行うように構成したことを特徴とする。
個々の袋体に対して充填作業を行うよりも、構成がシンプル化し、作業性が高まるからである。
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか一項において、前記環状袋体、及び前記袋体の内側面を除いた外面適所に剛性板を配置したことを特徴とする。
例えば、環状袋体や袋体の上面や外周面に剛性板を配置することにより重機や機材による袋体の損傷を防止できる。また、底面に剛性板を配置することにより地盤面に対する設置安定性を確保できる。
【0010】
請求項7の発明は、請求項2乃至6の何れか一項において、前記各袋体と前記ライナープレートリングとの間を機械的に固定したことを特徴とする。
環状に配置される袋体を連結力を高めることができる。
請求項8の発明は、請求項6又は7において、前記各袋体が備えた前記剛性板間を連結部材により連結したことを特徴とする。
剛性板を連結部材の支持手段として利用することが有効である。
請求項9の発明に係るライナープレート変位防止システムは、請求項1乃至8の何れか一項に記載のライナープレート変位防止装置と、前記環状袋体内の圧力管理を行う圧力タンクと、を備えたことを特徴とする。
環状袋体、袋体内の圧力が低下した場合であっても、圧力低下分を補うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るライナープレート変位防止装置は、膨張することによって最上位に位置するライナープレートリングの外周面を挟圧保持する挟圧面、及び地盤面に接触して沈み込み防止効果を発揮する地盤接触面を有した環状袋体、袋体を利用したので、人手による運搬、設置が可能でありながら、掘削穴内壁に多段状に設置したライナープレートリングを地盤面側で吊り下げ保持する装置を提供することができる。
これによれば、裏込め材を使用しなくても、ライナープレートリングと掘削壁との間に隙間が発生した場合におけるライナープレートリングの脱落、掘削壁の崩落を防止することができる。
【0012】
複数のライナープレートリングの全重量を変位防止装置によって保持することができ、袋体の膨張による締め付け力と、地盤面に対する設置安定性さえ十分に確保すれば、ライナープレートリングに対する挟圧保持力と、地盤面に対する完全な引っかかりを確保できるので、裏込め材を充填して摩擦力のみによってライナープレートリングを保持させるよりは効果的な支持強度を確保できる。特に、裏込め材は抜けたり、落ちる虞が高いが、本発明の変位防止装置はそのような致命的な欠点を有しない。
また、変位防止装置とライナープレートリングとの間を、ボルトなどで機械的に係合させておくことにより、袋体による締め付け力を補強することが可能となり、流体が万が一漏出したときでも、ボルトによって支持力を維持することが可能となり、ライナープレートリングの脱落を防止できる。
【0013】
この変位防止装置はコンクリート系の裏込め材の使用を不要とするため、撤去時に破損したり汚損することがなく、繰り返しの再使用が可能となる。従って、工事コスト低減を図ることができる。
また、樹脂等から成る袋体から構成されているためH型鋼材などに比べて大幅に軽量であり、人力による運搬、設置が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)及び(b)は掘削穴に多段状に設置されたライナープレートリング群の最上部に対して本発明のライナープレート変位防止装置を組み付けた状態を示す外観斜視図、及び縦断面図であり、図2(a)及び(b)は袋体の外観斜視図、及び袋体間の連結状態を示す要部斜視図である。図3は変形例の構成を示す断面図である。図4(a)及び(b)は袋体内に流体(注入材)を注入する前の状態を示す正面図、及び平面図であり、図5(a)及び(b)は袋体内に流体を注入した後の状態を示す正面図、及び平面図である。
このライナープレート変位防止装置(以下、変位防止装置、と称する)1は、地盤50に掘削穴51を掘削形成する過程で、掘削穴の壁面51aの全周面に亘って環状に組み付けられるライナープレートリング30の脱落を防止する手段である。
【0015】
ライナープレートリング30は、鉄板を所要の湾曲形状に成型したライナープレート31を複数枚環状に連結することによって形成されており、地盤50を所要深さ(ライナープレート一枚の上下幅分)に掘削した時点で掘削壁面を覆うように組み付けられる。周方向に連設される各ライナープレート間はボルト等の連結具により連結される。なお、本実施形態では、最上部のライナープレートリングの一部を地盤面よりも上側に突出させて、変位防止装置1を組み付けるための取付け部として利用する。
最上段のライナープレートリング30を掘削穴内壁に組み付け完了した後に、掘削穴底面を次段のライナープレートリングの上下幅分だけ更に深く掘削し、掘削した内壁に次段のライナープレートリングを組み付ける作業を繰り返すことにより順次多段状にライナープレートリング30を設置してゆく。上下位置関係にある各ライナープレートリングの接続端縁同士はボルト、ワイヤ等の固定具により適宜固定される。
変位防止装置1は、例えば最上段のライナープレートリング30の設置が完了した時点で、地盤から突出した外周面に対して組み付け固定されることにより、順次設置される二段目以降のライナープレートリング30の全重量を地盤面との接触面で支承し、各ライナープレートリングの変位(沈下、脱落、位置ずれ等)を防止することができる。
変位防止装置1は、膨張することによって最上位に位置するライナープレートリング30の外周面を挟圧保持する挟圧面3、及び地盤面に接触して沈み込み防止効果を発揮する地盤接触面4を有した環状袋体2によって構成されている。
【0016】
環状袋体2は、例えば環状に連結された複数の袋体10から構成する。各袋体10は、内部に空気や水等の流体(注入材)を充填することによって膨張し、流体を排出することによって収縮するように構成されている。具体的には例えばポリ塩化ビニール、ポリエチレン等の十分な強度と、且つ十分な肉厚を有した樹脂シートを袋状に構成すると共に、流体の注入口(排出口を兼ねてもよい)11に栓を取り付けた構成を有している。注入口11を栓によって閉止したときに袋体10は密閉空間を構成する。また各袋体の注入口11間、或いは注入口とは別に設けた連通口12間を連結管体13によって連結することにより、隣接し合う袋体10間を流体が流動し得るように構成する。袋体の外面を補強するために、図示しないワイヤーネットによって被覆するようにしてもよい。
更に、袋体10の上面に予め、或いは後付けにより、金属板、或いは樹脂板からなる天板(防護板=剛性板)15を固定することにより、重機や機材等が触れることによって袋体が破損することを防止したり、各袋体の上面に作業者が乗ることができるように構成する。或いは、袋体10の外周面に剛性板を配置することによっても同様な保護効果を期待できる。また、袋体の底面に剛性板を配置することにより地盤面に対する設置安定性を確保できる。
【0017】
また、この天板15間を金属製の連結部材16によって連結することにより袋体10間を固定する。つまり、連結部材16を用いて袋体間を機械的に環状に連結することにより、各袋体と最上部のライナープレートリングとの密着度、連結力を高めることができる。このように各袋体を環状に連結してライナープレートリング外周面を挟圧保持することにより、ライナープレートリングに加わる各種応力を各袋体に対して均一に分散することが可能となり、支持強度、支持安定性を高めることができる。
或いは、袋体の外周面、その他の部位に剛性板を配置した場合にはこれらの剛性板間を連結部材によって連結してもよい。
なお、地盤面に対するライナープレートリングの設置安定性を確保するために、予め袋体10の下面に剛性材料からなる板材を固定しておいてもよい。
【0018】
また、袋体10を構成する樹脂シートは、内部に流体を充填した際にその内側面(ライナープレート外面と対面する面3)側が主として膨張してライナープレート外面と圧着するようにその形状、構造を予め設定することにより、より少ない流体量、流体圧によって効果的に圧着力を得ることが可能となる。例えば、袋体の内側面3を除いた周面を構成する樹脂シート材料を内側面よりも厚肉にして伸張しにくくすることにより、内側の樹脂シートだけが膨張し易いように構成する。
環状袋体2を構成する個々の袋体10が膨張することによって内側へ向けて発生する強い挟圧力によって、最上部のライナープレートリング30の外周面に対して環状袋体2が固着する力を発揮することができるが、環状袋体2とライナープレートリング30との結合力を高めるために、図3のように最上部のライナープレートリング30を構成する個々のライナープレート31の上部から外側へ張出し部材32を突設することが好ましい。この張出し部材32を各天板上面に係合、着座させてライナープレートリングの沈み込みを防止する効果を高めることができる。
各袋体10の内部に流体を供給して膨張させる作業は袋体毎に個別に行ってもよいが、複数、或いは全ての袋体10間を連結管体13によって連通、連結させた状態で、一つの袋体に対して流体を供給することによって複数、又は全ての袋体を一括して膨張させて、ライナープレートリングの外面に圧着させることが可能となる。流体として空気等の気体を使用する場合にはエアコンプレッサを使用し、流体として水等の液体を使用する場合にはポンプを使用して充填作業を行う。流体圧のコントロールのし易さという点では液体の方が優れている。
【0019】
以上の如き変位防止装置1を最上部のライナープレートリング30に対して組付けるに際して、地盤面50よりも上方に一部が突出したライナープレートリングの側面に対して図1、図4のように上面に天板15を有した各袋体10を環状に配置してから、図2に示すように各袋体の天板間を連結部材16によって連結する。或いは、図3に示すように最上部のライナープレートリング30の上部に張出し部材32を突設して、天板15と係合させる。
この状態で流体供給手段から流体を各袋体内に注入することによって環状袋体2を膨張させる。すると、図5に示すように各袋体10が内径方向へ膨張し、ライナープレートリングの外周面に圧着した状態となる。これにより、最上部のライナープレートリング、及びこれに対して順次連結された次段以降のライナープレートリングを一括して吊り下げることが可能となり、各ライナープレートリングと掘削壁との間に空隙が形成されたとしても、各ライナープレートリングが沈下したり、脱落、位置ずれを起こすことがなくなる。
本発明の変位防止装置1と従来の裏込め材とを併用することによって、変位防止効果をより高めることが可能となることは言うまでもない。
なお、掘削穴51の開口部周縁を所定幅に亘って段掘りして環状の溝を形成し、この環状溝内に変位防止装置1を収容することにより変位防止装置1が地盤面から突出する高さを減少させることが可能となり、変位防止装置が掘削穴周辺での各作業に対する障害となることを防止することができる。
【0020】
次に、図4、図5は変位防止装置1に対して、環状袋体2(各袋体10)内の圧力管理を行う圧力タンク40を接続したライナープレート変位防止システムを示している。
この変位防止システムは、圧力タンク40を袋体10の注入口11に接続することによって常時圧力を付与して圧力管理を行うように構成している。
図4は流体を各袋体内に充填する前の状態を示しており、この状態では、各袋体は膨張していないが、流体を充填した後は図5に示すように各袋体が最上部のライナープレートリングの外周面に圧着した状態となる。圧力タンクが接続されていることによって何れかの袋体内の流体圧力が低下した場合に圧力の不足分を補うことができる。また、各袋体の内部圧力低下による異常も検知することができる。
【0021】
なお、上記実施形態では流体を内部に充填することによって膨張、硬化する袋体を利用してライナープレートリング外周面を加圧しつつ保持する例をしたが、これとは逆に十分な強度、気密性を有した材質から成る袋体内に予め比較的硬質の樹脂粒子等を所要量充填しておき、真空ポンプを用いてこの袋体内を抜気して収縮させることによって樹脂粒子同士を強固に密着させた状態で硬質化する袋体を利用することもできる。袋体の形状を予め任意に設定しておくことによって、抜気することによって硬質化した袋体を任意の形状とすることができる。このため、従来のH型鋼材を用いてライナープレートリングの沈下を防止していた工法におけるH型鋼材に代えて、樹脂粒子を充填した袋体を利用することが可能となる。樹脂粒子を合わせた袋体の重量はH型鋼材に比して大幅に軽量であるため、運搬、設置作業が容易であり、現場で袋体内から抜気するだけで硬化させることができるため、抜気した袋体をライナープレートリングに対して井桁状、その他任意の状態で組み付けることによってライナープレートリングの沈下を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)及び(b)は掘削穴に多段状に設置されたライナープレートリング群の最上部に対して本発明のライナープレート変位防止装置を組み付けた状態を示す外観斜視図、及び縦断面図である。
【図2】(a)及び(b)は袋体の外観斜視図、及び袋体間の連結状態を示す要部斜視図である。
【図3】本発明の変形例の構成を示す断面図である。
【図4】(a)及び(b)は袋体内に流体(注入材)を注入する前の状態を示す正面図、及び平面図である。
【図5】(a)及び(b)は袋体内に流体を注入した後の状態を示す正面図、及び平面図である。
【符号の説明】
【0023】
1…変位防止装置、2…環状袋体、3…挟圧面(内側面)、4…地盤接触面、10…袋体、11…注入口、12…連通口、13…連結管体、15…天板、16…連結部材、30…ライナープレートリング、31…ライナープレート、32…張出し部材、40…圧力タンク、50…地盤、51…掘削穴、51a…壁面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に掘削穴を形成する過程で、掘削穴壁面の全周に亘って環状に組み付けられるライナープレートリングの脱落を防止するライナープレート変位防止装置であって、
膨張することによって最上位に位置するライナープレートリングの外周面を挟圧保持する挟圧面、及び地盤面に接触して沈み込み防止効果を発揮する地盤接触面を有した環状袋体を備えたことを特徴とするライナープレート変位防止装置。
【請求項2】
前記環状袋体は、環状に連結された複数の袋体から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のライナープレート変位防止装置。
【請求項3】
前記環状袋体、及び前記袋体は、内部に流体を充填することによって膨張し、流体を排出することによって収縮することを特徴とする請求項1又は2に記載のライナープレート変位防止装置。
【請求項4】
前記環状袋体、及び前記袋体は、流体充填時に少なくとも内径方向に膨張するように構成されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のライナープレート変位防止装置。
【請求項5】
複数の前記袋体間を連通させることにより前記流体の充填を一括して行うように構成したことを特徴とする請求項2又は3に記載のライナープレート変位防止装置。
【請求項6】
前記環状袋体、及び前記袋体の内側面を除いた外面適所に剛性板を配置したことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のライナープレート変位防止装置。
【請求項7】
前記各袋体と前記ライナープレートリングとの間を機械的に固定したことを特徴とする請求項2乃至6の何れか一項に記載のライナープレート変位防止装置。
【請求項8】
前記各袋体が備えた前記剛性板間を連結部材により連結したことを特徴とする請求項6又は7に記載のライナープレート変位防止装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載のライナープレート変位防止装置と、前記環状袋体内の圧力管理を行う圧力タンクと、を備えたことを特徴とするライナープレート変位防止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−208658(P2008−208658A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47988(P2007−47988)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)