説明

ライン型のインクジェット記録装置、ライン型のインクジェット記録装置の調整方法、およびライン型のインクジェット記録装置によるインクジェット記録方法

【課題】記録ヘッドの端部に形成されたノズルの重複部分における記録品質を、その他の部分と同様のすぐれた記録品質とすることができる、新たな技術を提供することを目的とする。
【解決手段】複数のテストパターン情報に基づいたテスト画像を1回の記録動作によってロール紙に記録し(S102)、これをCCDカメラで読み取り(S104)、CCDカメラによって読み取られたテスト画像に含まれる各テストパターン画像を解析し、ノズル重複部毎に好適な特定テストパターン情報を選択し(S106,S108:No)、選択された特定テストパターン情報に一致するパターン構成情報を不揮発性メモリに記憶することとした(S110)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライン型のインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、記録媒体へ記録する装置として、インクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置は、記録ヘッドに形成されたノズルからインクを吐出して、記録を行うもので、高精度な画像を高速で記録することが容易に行えるという利点を有している。インクジェット記録装置には、ライン型のインクジェット記録装置と称されるタイプのものがある。ライン型のインクジェット記録装置に関し、各種技術が提案されている。例えば、ヘッド間に重複領域を有するように配置してなる記録ヘッドユニットと、この記録ヘッドユニットを用いて所定のテストチャートを印字し、印字されたテストチャートから複数の記録ヘッドそれぞれの重複領域の幅を検出する配置角度・重複領域検出部と、検出されたヘッド間の重複領域の幅に応じて、複数の記録ヘッドそれぞれに入力される画像データを分配する画像データ分配部とを有する画像形成装置が提案されている。この画像形成装置によれば、おおまかなヘッドの位置合わせのみでヘッドの重複領域での濃度むらをなくすことができる効果を奏するとされている(例えば、特許文献1)。
【0003】
なお、インクジェット記録装置には、上記ライン型の他、これとは異なる走査型のインクジェット記録装置もあり、これについても、各種技術が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再表2002/062581号公報
【特許文献2】特開2001−1510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ライン型の記録ヘッドユニットを複数の記録ヘッドを組み合わせて構成する場合、より詳細には、各記録ヘッドの端部に形成されたノズルが同一線上に重複するように複数の記録ヘッドを配置する場合、各記録ヘッドの位置は適切に調整されている必要がある。しかし、完全に各記録ヘッドの位置を調整することは困難である。また、仮に、高精度な位置合わせを実現することができたとしても、所定の加工方法で作製される記録ヘッドの、例えばノズル形成位置に関する寸法精度が悪ければ、重複するノズルが同一直線上に配置されることはない。なお、完全に同一の記録ヘッドを複数作製することは現実的に不可能である。したがって、いずれかの手法により記録ヘッドの位置ずれを補償する必要がある。
【0006】
本発明は、記録ヘッドの端部に形成されたノズルの重複部分における記録品質を、その他の部分と同様のすぐれた記録品質とすることができる、新たな技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑みなされた本発明は、画像データによって示される記録画像が記録される記録媒体の搬送方向に対して直交する方向に、複数のノズルを配列したノズル列が形成された各記録ヘッドを、記録ヘッドの一方側端部のノズルと、記録ヘッドの他方側端部のノズルと、が搬送方向に重複するように配置した記録ヘッドユニットを備えるライン型のインクジェット記録装置に関連して、複数のテストパターン画像を含むテスト画像を記録し、記録されたテスト画像に含まれる各テストパターン画像を解析し、所定の条件を満足するテストパターン画像のテストパターン情報を選択するとともに、外部装置から入力された画像データの記録に際し、選択されたテストパターン情報に対応したインク滴の吐出を制御することとしたものである。
【0008】
本発明を反映した第1の課題解決手段は、外部装置から入力される画像データによって示される記録画像が記録される記録媒体が搬送される搬送方向に対して直交する方向に、複数のノズルを配列したノズル列が形成された各記録ヘッドを、前記記録ヘッドの一方側端部のノズルと、前記記録ヘッドの他方側端部のノズルと、が前記搬送方向に重複するように配置した記録ヘッドユニットを備えるライン型のインクジェット記録装置であって、前記ノズル列からインク滴を吐出してテストパターン画像を記録する場合において、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出の有無と、前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出の有無と、に関する情報を含むテストパターン情報を複数記憶する記憶部と、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出と前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とについて、前記記憶部に記憶された複数のテストパターン情報各々にしたがって吐出し、前記一方側端部のノズルおよび前記他方側端部のノズル以外のノズルからのインク滴の吐出について、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出または前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とともに吐出して、前記テストパターン情報各々に対応したテストパターン画像各々を含む単一のテスト画像の記録を制御するテストパターン記録部と、前記テスト画像を読み取る読取部と、前記読取部によって読み取られたテスト画像に含まれる各テストパターン画像を解析する解析部と、前記解析部による各テストパターン画像の解析結果から、所定の条件を満足する特定のテストパターン画像のテストパターン情報を、特定テストパターン情報として選択する選択部と、前記記録画像を前記記録媒体に記録する場合において、前記選択部によって選択された特定テストパターン情報に対応した、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出と前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とを制御する画像データ記録部と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0009】
これによれば、記憶部に記憶された複数のテストパターン情報各々に対応したテストパターン画像各々を含む単一のテスト画像を記録し、このテスト画像を解析することで、記録媒体の搬送方向に重複するように配置された一方側端部のノズルと他方側端部のノズルとからのインク滴の吐出に関して、一つの特定テストパターン情報を選択することができる。その上で、画像データの記録に際し、選択された特定テストパターン情報に対応した、好適なインク滴の吐出を実現することができる。
【0010】
第2の課題解決手段は、第1の課題解決手段のインクジェット記録装置であって、前記テストパターン画像は、前記ノズル列の各ノズルから吐出されたインク滴によるドットが、前記搬送方向に所定の数連続したドット列によって形成された画像であって、前記解析部は、前記テスト画像に含まれるテストパターン画像毎に、前記一方側端部のノズルを含むノズル列について前記一方側端部のノズル以外の各ノズルによるドット列各々と、前記他方側端部のノズルを含むノズル列について前記他方側端部のノズル以外の各ノズルによるドット列各々と、にそれぞれ対応する第1ドット列解析情報各々を取得するとともに、取得された第1ドット列解析情報各々を用いて第2ドット列解析情報を取得し、さらに、前記テスト画像に含まれるテストパターン画像毎に、前記一方側端部のノズルと前記他方側端部のノズルとによるドット列に対応する第3ドット列解析情報を取得し、前記選択部は、前記テスト画像に含まれるテストパターン画像毎に、前記第2ドット列解析情報と前記第3ドット列解析情報とを比較し、前記第2ドット列解析情報と前記第3ドット列解析情報とが最も近似するテストパターン画像のテストパターン情報を、前記特定テストパターン情報として選択することを特徴とする。
【0011】
これによれば、各テストパターン画像全体を考慮し、好適な特定テストパターン情報を選択することができる。
【0012】
第3の課題解決手段は、第2の課題解決手段のインクジェット記録装置であって、前記記憶部に記憶された複数のテストパターン情報各々には、優先順位が付与されており、前記選択部は、前記テスト画像に含まれるテストパターン画像毎に、前記第2ドット列解析情報と前記第3ドット列解析情報とを比較した結果、最も近似するテストパターン画像のテストパターン情報が複数抽出された場合、前記優先順位にしたがって、前記特定テストパターン情報を選択することを特徴とする。
【0013】
これによれば、好適な特定テストパターン情報を優先順位にしたがって、一つ選択することができる。
【0014】
第4の課題解決手段は、第1から第3の課題解決手段のいずれか1つのインクジェット記録装置であって、前記テスト画像を記録するためのメンテナンスステーションと、前記記録ヘッドユニットを、前記メンテナンスステーションに移動する移動部と、を備え、前記テストパターン記録部は、前記移動部による前記記録ヘッドの前記メンテナンスステーションへの移動を制御し、前記記録ヘッドユニットが前記メンテナンスステーションに移動した状態で、前記テスト画像の記録を制御するとともに、前記読取部は、前記メンテナンスステーションに設置され、前記記録ヘッドユニットが前記メンテナンスステーションに移動した状態で記録されたテスト画像を読み取ることを特徴とする。
【0015】
これによれば、メンテナンスステーションでテスト画像を記録することができる。
【0016】
第5の課題解決手段は、外部装置から入力される画像データによって示される記録画像が記録される記録媒体が搬送される搬送方向に対して直交する方向に、複数のノズルを配列したノズル列が形成された各記録ヘッドを、前記記録ヘッドの一方側端部のノズルと、前記記録ヘッドの他方側端部のノズルと、が前記搬送方向に重複するように配置した記録ヘッドユニットを備え、前記ノズル列からインク滴を吐出してテストパターン画像を記録する場合において、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出の有無と、前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出の有無と、に関する情報を含むテストパターン情報を複数記憶し、特定テストパターン情報に対応した、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出と前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とを制御し、前記記録画像を前記記録媒体に記録可能なライン型のインクジェット記録装置の調整方法であって、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出と前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とについて、前記記憶部に記憶された複数のテストパターン情報各々にしたがって吐出し、前記一方側端部のノズルおよび前記他方側端部のノズル以外のノズルからのインク滴の吐出について、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出または前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とともに吐出し、前記テストパターン情報各々に対応したテストパターン画像各々を含む単一のテスト画像の記録を制御するテストパターン記録工程と、前記テスト画像を読み取る読取工程と、前記読取工程によって読み取られたテスト画像に含まれる各テストパターン画像を解析する解析工程と、前記解析工程による各テストパターン画像の解析結果から、所定の条件を満足する前記テストパターン画像のテストパターン情報を、前記特定テストパターン情報として選択する選択工程と、を含むことを特徴とする調整方法である。
【0017】
これによれば、記憶部に記憶された複数のテストパターン情報各々に対応したテストパターン画像各々を含む単一のテスト画像を記録し、このテスト画像を解析することで、記録媒体の搬送方向に重複するように配置された一方側端部のノズルと他方側端部のノズルとからのインク滴の吐出に関して、好適な特定テストパターン情報を選択することができる。
【0018】
第6の課題解決手段は、外部装置から入力される画像データによって示される記録画像が記録される記録媒体が搬送される搬送方向に対して直交する方向に、複数のノズルを配列したノズル列が形成された各記録ヘッドを、前記記録ヘッドの一方側端部のノズルと、前記記録ヘッドの他方側端部のノズルと、が前記搬送方向に重複するように配置した記録ヘッドユニットと、前記ノズル列からインク滴を吐出してテストパターン画像を記録する場合において、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出の有無と、前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出の有無と、に関する情報を含むテストパターン情報を複数記憶する記憶部と、を備えるライン型のインクジェット記録装置によるインクジェット記録方法であって、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出と前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とについて、前記記憶部に記憶された複数のテストパターン情報各々にしたがって吐出し、前記一方側端部のノズルおよび前記他方側端部のノズル以外のノズルからのインク滴の吐出について、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出または前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とともに吐出し、前記テストパターン情報各々に対応したテストパターン画像各々を含む単一のテスト画像の記録を制御するテストパターン記録工程と、前記テスト画像を読み取る読取工程と、前記読取工程によって読み取られたテスト画像に含まれる各テストパターン画像を解析する解析工程と、前記解析工程による各テストパターン画像の解析結果から、所定の条件を満足する前記テストパターン画像のテストパターン情報を、特定テストパターン情報として選択する選択工程と、前記選択工程によって選択された特定テストパターン情報に対応した、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出と前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とを制御し、前記記録画像を前記記録媒体に記録する画像データ記録工程と、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法である。
【0019】
これによれば、記憶部に記憶された複数のテストパターン情報各々に対応したテストパターン画像各々を含む単一のテスト画像を記録し、このテスト画像を解析することで、記録媒体の搬送方向に重複するように配置された一方側端部のノズルと他方側端部のノズルとからのインク滴の吐出に関して、一つの特定テストパターン情報を選択することができる。その上で、画像データの記録に際し、選択された特定テストパターン情報に対応した、好適なインク滴の吐出を実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、記録ヘッドの端部に形成されたノズルの重複部分における記録品質を、その他の部分と同様のすぐれた記録品質とすることができる、新たな技術を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】インクジェット記録装置を示す図
【図2】記録ヘッドユニットを示す図
【図3】テストパターン情報を示す図
【図4】パターンAによるテストパターン情報に基づくテストパターン画像を示す図
【図5】テスト画像を示す図
【図6】テストパターン情報選択処理のフローを示す図
【図7】ドット列の最大幅を説明する図
【図8】記録ヘッドの取付位置とテスト画像との関係を示す図
【図9】記録ヘッドの取付位置とテスト画像との関係を示す図
【図10】記録ヘッドの取付位置とテスト画像との関係を示す図
【図11】記録ヘッドの取付位置とテスト画像との関係を示す図
【図12】ドット列の最大幅の調整を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を反映した上記課題解決手段を実施するための実施形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。上記課題解決手段は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に説明する各構成において、所定の構成を省略することもできる。
【0023】
(インクジェット記録装置の概要)
インクジェット記録装置100について、図1を参照して説明する。インクジェット記録装置100は、ライン型のインクジェット記録装置である。インクジェット記録装置100は、電装ボックス200とベルトコンベア300とキャリッジ400とメンテナンスステーション500とを備える。なお、インクジェット記録装置100は、画像記録に利用されるインクを収容したメインタンクを備える(図1で図示を省略)。インクジェット記録装置100には、所定のインクが収容されたメインタンクが、インクジェット記録装置100で利用されるインク色分、備えられている。例えば、インクジェット記録装置100は、シアン(Cyan)、マゼンダ(Magenta)、イエロー(Yellow)、ブラック(blacK)の各色インクを収容したメインタンクを備える。インクジェット記録装置100は、これら各色インクを用いてカラー画像を、後述するベルトコンベア300によって搬送される布帛その他の記録媒体に記録することができる。
【0024】
電装ボックス200は、各種電気部品または電子部品が載置された回路基板等が収納された装置(ボックス)である。電装ボックス200は、例えば、制御部と不揮発性メモリ(EEPROM)と外部装置インターフェースとを備える。制御部は、インクジェット記録装置100の制御を司る。制御部は、例えば、CPUとROMとRAMを含む。CPUは、各種演算処理を実行する。ROMは、インクジェット記録装置100において実行される各処理のためのプログラムを記憶する。RAMは、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行する際の作業領域である。
【0025】
制御部は、後述するテストパターン情報選択処理(図5参照)を実行する。また、制御部は、外部装置インターフェースを介して接続された、パーソナルコンピュータのような外部装置から送信される画像データの受信を制御する。そして、制御部は、受信した画像データから生成したラスタイメージに対して間引処理(マスク処理)を実行する。この際、制御部は、後述するテストパターン選択処理のS110(図6参照)で不揮発性メモリに登録(記憶)したパターン構成情報にしたがい、間引処理を実行する。なお、不揮発性メモリには、後述する複数のテストパターン情報が記憶されている(図3参照)。
【0026】
また、電装ボックス200は、インクジェット記録装置100に備えられた機器、例えば、ベルトコンベア300、CCDカメラ540、各移動機構との接続インターフェースを備える。制御部は、この接続インターフェースを介して接続されたこれら各装置についても制御する。
【0027】
ベルトコンベア300は、外部装置から送信された画像データによって示される記録画像が記録される記録媒体320を搬送する装置である。具体的には、ベルトコンベア300上に積載された記録媒体320を、キャリッジ400の直下に搬送し、その後、記録画像が記録された記録媒体320を取り除く所定の位置へ記録媒体320を搬送する。
【0028】
キャリッジ400は、メインタンク(図1で図示を省略)から供給されるインクを吐出する記録ヘッドユニット420を備える。記録ヘッドユニット420は、メインタンクから供給されるインクを、キャリッジ400の直下に搬送された記録媒体320に対して吐出する。記録ヘッドユニット420について、図2を参照して説明する。記録ヘッドユニット420は、複数の記録ヘッド422−1〜422−4によって構成されている。なお、以下、記録ヘッド422−1〜422−4を総称して記録ヘッド422という。
【0029】
記録ヘッド422には、記録媒体320の搬送方向に対して直行する方向に、記録ヘッド422の一方側端部のノズル424Aが配列された第1ノズル列426Aと、記録ヘッド422の他方側端部のノズル424Bが配列された第2ノズル列426Bが形成されている。なお、以下、第1ノズル列426Aおよび第2ノズル列426Bを総称して、ノズル列426ともいう。
【0030】
図2から明らかなとおり、第1ノズル列426Aを形成するノズル424と、第2ノズル列426Bを形成するノズル424とは、相互に千鳥状に配置されている。また、記録ヘッド422−1,422−2が、記録ヘッド422−1の他方側端部のノズル424Bと、記録ヘッド422−2の一方側端部のノズル424Aとが搬送方向に重複するように配置されている。記録ヘッド422−2については、さらに、記録ヘッド422−2の他方側端部のノズル424Bと、記録ヘッド422−3の一方側端部のノズル424Aとが搬送方向に重複するように配置されている。同様に記録ヘッド422−3も記録ヘッド422−4との間で配置位置が調整されている。
【0031】
なお、図2に示す記録ヘッド422では、4個のノズル424による2列のノズル列426が形成されている。しかし、実際には、各ノズル列426は、これ以上の数(例えば48個)のノズル424により形成される。また、図2に示す記録ヘッドユニット420は、4個の記録ヘッド422によって構成されているが、実際は、さらに複数の記録ヘッド422が、図2の態様で配置されている。
【0032】
説明を図1に戻し、メンテナンスステーション500は、例えば、キャリッジ400に記録ヘッドユニット420を搭載し、または既に搭載された記録ヘッドユニット420を別の記録ヘッドユニット420(記録ヘッド422)に交換するための装置であるとともに、後述する複数(パターンX,A〜H/図3参照)のテストパターン画像を含むテスト画像を記録する領域である。メンテナンスステーション500は、ロール紙520とCCDカメラ540とを備える。ロール紙520にはテスト画像が記録される。CCDカメラ540は、ライン型のCCDカメラである。
【0033】
テスト画像の記録に際し、各部は概略次のように動作(移動)する。先ず、キャリッジ400が、所定の移動機構によりメンテナンスステーション500に移動する(図1の矢印「1」参照)。次に、ロール紙520が供給(搬送)される(図1の矢印「2」参照)。ロール紙520が、キャリッジ400の直下に供給されたとき、複数のテストパターン画像が含まれるテスト画像が記録される。その後、ロール紙520が、さらにCCDカメラ540側に搬送される。そして、搬送されたロール紙520に記録されたテスト画像が、CCDカメラ540によって読み取られる。テスト画像を読み取るに際し、CCDカメラ540は、ロール紙520の幅方向に走査する(図1の矢印「3」参照)。テスト画像がCCDカメラ540によって読み取られた後、ロール紙520は、図1には図示されていない巻取機構により巻き取られる。また、キャリッジ400は、テスト画像を記録後、画像記録位置(キャリッジ400が示される図1上の位置)に移動する(図1の矢印「1」参照)。
【0034】
なお、テスト画像の記録は、キャリッジ400において記録ヘッドユニット420(記録ヘッド422)が交換された場合等に、記録ヘッド422間の調整(例えば記録ヘッド422−1,422−2間の調整)のために実施される。これについての詳細は、後述するテストパターン情報選択処理(図6参照)にて説明する。
【0035】
(テストパターン情報)
テスト画像の記録に際し、利用される複数のテストパターン情報について、図3を参照して説明する。なお、図3において記載の「記録ヘッド1」は、記録ヘッド422−1に対応し、以下、「記録ヘッド2」は記録ヘッド422−2、「記録ヘッド3」は記録ヘッド422−3、「記録ヘッド4」は記録ヘッド422−4に対応する。テストパターン情報は、テスト画像に含まれる各テストパターン画像を記録する場合における、記録ヘッド422の一方側端部のノズル424Aからのインク滴の吐出の有無と、他方側端部のノズル424Bからのインク滴の吐出の有無とを含む情報である。
【0036】
テストパターン情報について、記録ヘッド422−1,422−2に基づいたパターンAを例に説明する。先ず、搬送方向の第1行目の画素に対し、記録ヘッド422−1(記録ヘッド422−1の他方側端部のノズル424B。以下、同じ)は、インクを吐出する(図3のパターンAについて、記録ヘッド1の左側フィールドに「○」が登録)。これに対し、記録ヘッド422−2(記録ヘッド422−2の一方側端部のノズル424A。以下、同じ)は、インクを吐出しない(図3のパターンAについて、記録ヘッド2の左側フィールドに「×」が登録)。
【0037】
第2行目の画素に対し、記録ヘッド422−1は、インクを吐出しない(図3のパターンAについて、記録ヘッド1の左側2番目のフィールドに「×」が登録)。これに対し、記録ヘッド422−2は、インクを吐出する(図3のパターンAについて、記録ヘッド2の左側2番目フィールドに「○」が登録)。
【0038】
第3行目の画素に対し、記録ヘッド422−1は、インクを吐出し(図3のパターンAについて、記録ヘッド1の左側3番目のフィールドに「○」が登録)、記録ヘッド422−2は、インクを吐出しない(図3のパターンAについて、記録ヘッド2の左側2番目フィールドに「×」が登録)。
【0039】
第4行目の画素に対し、記録ヘッド422−1は、インクを吐出しない(図3のパターンAについて、記録ヘッド1の右側のフィールドに「×」が登録)一方、記録ヘッド422−2は、インクを吐出する(図3のパターンAについて、記録ヘッド2の右側フィールドに「○」が登録)。なお、このようなインク吐出は、テストパターン画像を含むテスト画像を示すラスタイメージに対し、制御部がテストパターン情報に基づいた間引処理を実行することで、実現される。
【0040】
重複していないノズル424については、テストパターン情報が登録されていない。したがって、RAM上に展開されたラスタデータ(テスト画像を示すデータ)にしたがい、対応する画素全てにインクが吐出される。
【0041】
このようにして形成されたパターンAによるテストパターン画像を図4に示す。なお、図4は、記録ヘッド422−1,422−2によって形成されたテストパターン画像の内、記録ヘッド422−1の他方側端部のノズル424Bから上側(図2を正面視したときの上側)2個のノズル424と、記録ヘッド422−2の一方側端部のノズル424Aの下側(図2を正面したときの下側)2個のノズル424とにより記録された範囲のテストパターン画像を示す。また、図4に示す「1行目」〜「4行目」は、図3に示す「1行目」〜「4行目」に対応する。
【0042】
テストパターン画像は、4個のドットを搬送方向に配列したドット列によって形成されている。記録ヘッド422−1の他方側端部のノズル424Bおよび記録ヘッド422−2の一方側端部のノズル424A(以下、一方側端部のノズル424Aおよび他方側端部のノズル424Bの組合せを「ノズル重複部」ともいう。)の両ノズルによるドット列(図4において「重複部ドット列」と記載)は、図3のパターンAのテストパターン情報に対応したドットの配列となっている。なお、以下において、ノズル重複部によるドット列を、「重複部ドット列」といい、これ以外のドット列を、「単独部ドット列」ともいう。
【0043】
説明を図3に戻し、各テストパターン情報には、優先順位が付与されている。優先順位は、所定のルールにしたがって決定される。すなわち、同一のノズル424、具体的には一方側端部のノズル424Aによるドットが連続するパターン、または、他方側端部のノズル424Bによるドットが連続するパターンほど優先順位が低くなるように設定されている。換言すれば、一方側端部のノズル424Aによるドットおよび他方側端部のノズル424Bによるドットが混在するパターンは、優先順位が高く設定されている。これは、同一ノズルから吐出されたインク滴によるドットが連続した場合、ドットの品位(くせ)が顕在化されることに基づく。なお、パターンXによれば、1画素に対し、一方側端部のノズル424Aと他方側端部のノズル424Bとの両方からインク滴が吐出される。したがって、パターンXの優先順位は、最も低く設定されている。
【0044】
図3に示す構成比は、一方側端部のノズル424Aと他方側端部のノズル424Bとからの吐出割合を示すものである。上述のパターンAでは、4個のドットにより形成されるドット列の内、記録ヘッド422−1側の他方側端部のノズル424Bから吐出されたインク滴によるドットが2個で、記録ヘッド422−2側の一方側端部のノズル424Aから吐出されたインク滴によるドットも2個であるため、構成比は「50%(2個/4個)」と{50%(2個/4個)」となる。なお、構成比は、特に、テストパターン情報を構成するものではない。
【0045】
(テストパターン情報選択処理)
電装ボックス200内の制御部によって実行されるテストパターン情報選択処理について、図5を参照して説明する。この処理は、キャリッジ400が備える記録ヘッドユニット420を交換等する場合に実行される。この処理の実行に際し、ユーザは、インクジェット記録装置100の操作部を操作し、この処理の開始指示を入力する。開始指示を取得した制御部、自身を構成するROMからこの処理のためのプログラムを読み出し、RAM上でこのプログラムを実行する。
【0046】
この処理を開始した制御部は、先ず、所定の移動機構(移動部)を制御し、キャリッジ400をメンテナンスステーション500に移動する(S100/図1の矢印「1」参照)。メンテナンスステーション500に設置されたセンサ(図1で図示を省略)から、キャリッジ400がメンテナンスステーション500に移動したことを示す信号を取得した制御部は、ロール紙520をキャリッジ400側に供給を開始する(図1の矢印「2」参照)。そして、制御部は、キャリッジ400の直下に供給されたロール紙520にテスト画像を記録する(S102)。
【0047】
S102で制御部は、例えば不揮発性メモリに記憶された所定のデータに基づき、複数のテストパターン画像を含むテスト画像を示すラスタデータを生成し、これをRAM上に展開する。続けて、制御部は、RAM上に展開されたラスタデータに対して、各パターンのテストパターン情報(図3参照)に基づいた間引処理を実行し、テスト画像をロール紙520に記録する。記録ヘッド422の各ノズル424からは、間引処理に基づいたタイミングでインクが吐出される。すなわち、記録ヘッド422の一方側端部のノズル424Aまたは他方側端部のノズル424Bでは、各テストパターン情報にしたがってインク滴の吐出および不吐出が制御される。また、一方側端部のノズル424Aまたは他方側端部のノズル424B以外のノズル424では、連続したインク滴の吐出が制御される。
【0048】
S102でロール紙520に記録されたテスト画像は、記録ヘッド422−1〜422−4によって記録された、パターンXおよびパターンA〜H毎のテストパターン画像を全て含む。すなわち、制御部は、1度のテスト画像の記録により、不揮発性メモリに記憶されているテストパターン情報に基づくテストパターン画像を全て含むテスト画像をロール紙520に記録する。なお、図6において、各テストパターン画像を形成するドットについての図示は省略する。
【0049】
S102を実行した制御部は、ロール紙520に記録されたテスト画像を、CCDカメラ540で読み取る(S104)。テスト画像の読み取りに際し、制御部は、所定の移動機構を制御し、CCDカメラ540を移動する(図1の矢印「3」参照)。そして、制御部は、S102でCCDカメラ540によって読み取られたテスト画像に含まれる各テストパターン画像を解析し、好適な特定テストパターン情報を選択する(S106)。
【0050】
S106で制御部は、先ず、単独ノズルによる各ドット列および重複部による各ドット列について、占有面積を算出する。詳細には、CCDカメラ540によって読み取られた画像において、各ドット列が占める画素数をカウントし、カウントされた値を面積とする。次に、制御部は、各ドット列の最大幅を算出する。ここで、最大幅は、図7に示すとおりである。すなわち、一直線上にドットが形成されたドット列では、最大幅はドットの直径に略等しい(図7(a)参照)。これに対し、重複部ドット列で、一方側端部のノズル424Aによるドットと他方側端部のノズル424Bによるドットとが異なる直線上に形成されている場合、最大幅は、ドットの直径にずれ量を加算した幅に略等しい(図7(b)参照)。
【0051】
制御部は、隣接する2個の記録ヘッド422を1つの単位として、テスト画像に含まれるテストパターン画像毎に、単独部ドット列の占有面積の平均値を算出する。例えば、制御部は、テストパターン画像毎に、記録ヘッド422−1,422−2の単独部ドット列の占有面積の合計を求め、記録ヘッド422−1,422−2の単独部ドット列の総数(例えば図2に示す記録ヘッド422に基づけば「7(列)」。以下、同じ)で除する。
【0052】
なお、S106の対象が記録ヘッド422−2,422−3である場合(後述するS108:No参照)、制御部は、テストパターン画像毎に、記録ヘッド422−2,422−3の単独部ドット列の占有面積の合計を求め、記録ヘッド422−2,422−3の単独部ドット列の総数で除する。さらに、S106の対象が記録ヘッド422−3,422−4である場合、制御部は、テストパターン画像毎に、記録ヘッド422−3,422−4の単独部ドット列の占有面積の合計を求め、記録ヘッド422−3,422−4の単独部ドット列の総数で除する。
【0053】
また、制御部は、隣接する記録ヘッド422毎に、単独部ドット列の最大幅の平均値を算出する。最大幅の平均値算出は、上述した占有面積の平均値算出と同様の手法により行われる。詳細については省略する。
【0054】
そして、制御部は、隣接する2個の記録ヘッド422を1つの単位として、テスト画像に含まれるテストパターン画像毎に、占有面積の平均値と重複部ドット列の占有面積とを比較するとともに、最大幅の平均値と重複部ドット列の最大幅とを比較する。例えば各占有面積の差の絶対値および各最大幅の差の絶対値を算出する。そして、制御部は、比較の結果、占有面積および最大幅の平均値に、最も近似する重複部ドット列を形成したテストパターン画像を特定し、特定されたテストパターン画像のテストパターン情報を抽出する。ここで、最も近似する重複部ドット列を形成したテストパターン画像が複数特定され、これにともないテストパターン情報が複数抽出された場合、制御部は、より優先順位の高いテストパターン情報を抽出する(優先順位について、図3参照)。そして、制御部は、抽出されたテストパターン情報を、解析対象のノズル重複部、例えば、記録ヘッド422−1,422−2のノズル重複部に関し、好適な特定テストパターン情報として選択する。
【0055】
S106を実行した制御部は、続けて、全てのノズル重複部について、S106の処理が終了したか否かを判断する(S108)。例えば、記録ヘッド422−1,422−2のノズル重複部について、S106の処理が実行された段階である場合、記録ヘッド422−2,422−3の組合せ、記録ヘッド422−3,422−4の組合せについて、順次S106が実行される。
【0056】
S108の判断が否定される場合(S108:No)、制御部は、処理をS106に戻し、上記同様の処理を実行する。一方、S108の判断が肯定される場合(S108:Yes)、制御部は処理をS110に移行する。S110で制御部は、S106で選択された特定テストパターン情報に一致するパターン構成情報を、対応するノズル重複部に関連付けて登録(記憶)する。なお、S110で登録したパターン構成情報は、外部装置から送信される画像データが受信され、受信した画像データから生成したラスタイメージに対して間引処理(マスク処理)を実行する際、利用される。
【0057】
例えば、制御部は、記録ヘッド422−1,422−2との組合せについて、不揮発性メモリに、パターンAに基づく特定テストパターン情報に一致するパターン構成情報を登録する。また、制御部は、記録ヘッド422−2,422−3の組合せについて、パターンBに基づく特定テストパターン情報に一致するパターン構成情報を登録する。さらに、制御部は、記録ヘッド422−3,422−4の組合せについて、パターンCに基づく特定テストパターン情報に一致するパターン構成情報を登録する。
【0058】
(記録ヘッドの取付位置とテスト画像との関係)
記録ヘッド422の取付位置とテスト画像との関係について、図8〜図11を参照して説明する。なお、以下の説明では、上記同様、記録ヘッド422−1,422−2を例に説明する。図8〜図11に図示された2点鎖線は、仮想直線であって、2本の2点鎖線間の幅は、上記最大幅に相当する。
【0059】
先ず、記録ヘッド422−1の他方側端部のノズル424Bと記録ヘッド422−2の一方側端部のノズル424Aとの位置関係が適正に設定された場合(図8参照)、一方側端部のノズル424Aおよび他方側端部のノズル424Bの位置に一致してドットが形成されている。この場合、パターンAおよびパターンBを含む全てのパターンで、外観視で同一の重複部ドット列が形成される。なお、図6に示すテストパターン選択処理のS106で制御部は、テストパターン情報の優先順位にしたがい、パターンAのテストパターン情報を特定テストパターン情報として選択する。
【0060】
これに対し、記録ヘッド422−1を基準として、記録ヘッド422−2が記録ヘッド422−1側(記録ヘッド422−1の一方側端部のノズル424A側)に取り付けられていた場合(図9参照)、記録ヘッド422−2の一方側端部のノズル424Aから吐出されたインク滴によるドットが、記録ヘッド422−1側にずれて形成される。この場合、パターンAによる重複部ドット列は、不連続な状態、換言すれば、千鳥状に記録される。また、パターンBによる重複部ドット列は、3行目で記録ヘッド422−1側にずれて形成される。
【0061】
同様に、記録ヘッド422−1を基準として、記録ヘッド422−2が記録ヘッド422−3側(記録ヘッド422−3について図2参照)に取り付けられていた場合(図10参照)、記録ヘッド422−2の一方側端部のノズル424Aから吐出されたインク滴によるドットが、記録ヘッド422−3側にずれて形成される。この場合も、パターンAによる重複部ドット列は、不連続な千鳥状に記録される。ただし、図9の場合と比較し、重複部ドット列の配列方向を基準として反対側にずれた形状となる。また、パターンBによる重複部ドット列は、3行目で記録ヘッド422−3側にずれて形成される。
【0062】
図11に示す例は、記録ヘッド422−1を基準として、記録ヘッド422−2が記録ヘッド422−3側(記録ヘッド422−3について図2参照)に相当量ずれて取り付けられている状態に基づくものである。このような状態でロール紙520に記録されたドットは、後続するドット側に伸びた流線形をなす。
【0063】
ところで、ノズル424から吐出されたインク滴がロール紙520に記録される(着弾する)に際し、キャリッジ400直下に供給されるロール紙520は、移動状態にある。このような状態にあるロール紙520の記録面に着弾したインク滴は、着弾位置に記録される一方、インク滴を形成する一部のインクが移動方向と反対側に記録される。例えば図8に示す重複部ドット列の各ドット、または、単独部ドット列の各ドット等いずれのドットも、ドット単独では、図11に示すような流線形をなしている。後続した位置にインク滴が着弾する場合、新たなインク滴は、直前に着弾したドットの流線形部分に着弾する。したがって、流線形部分が、次のインク滴によるドットに重なり、流線形部分が打ち消された状態となる。
【0064】
しかし、図11に示すように、記録ヘッド422−1,422−2の位置が相当量ずれている場合、順次、着弾するインク滴の着弾位置が、直前に着弾したインク滴の流線形部分からずれ、流線形状のドットが不連続にロール紙520に記録される。図6に示すテストパターン情報選択処理のS106に関し、図11の場合、最大幅はパターンA,Bを含め全てのパターンで略同一である。しかし、占有面積は、同一のノズルで吐出する割合が高いパターン、換言すれば、構成比がいずれか一方のノズルに偏りがあるパターンの方が、小さくなる。パターンAとパターンBとを比較すると、パターンBによる重複部ドット列の占有面積が小さい。
【0065】
ここで、上記に基づき、重複部ドット列の占有面積と最大幅の関係について付言すると、両者は一定の関係があり、最大幅が広いほど占有面積も広くなる(最大幅が狭いほど占有面積も狭くなる)。換言すれば、占有面積が広い場合、最大幅も広くなる(占有面積が狭い場合、最大幅も狭くなる。)。これは、上記流線形部分が打ち消されるか否かに基づく。
【0066】
なお、本来、図9および図10に記載の重複部ドット列のドットについても、位置ずれが生じているドットの直前のドットについては、流線形部分がロール紙520の記録面に記録されているが、図9および図10については、これについての図示を省略している。
【0067】
(本実施形態の構成に基づく有利な効果)
本実施形態のインクジェット記録装置100によれば、次に記載の有利な効果を得ることができる。
【0068】
(1)インクジェット記録装置100では、キャリッジ400に記録ヘッドユニット420を搭載し、または既に搭載された記録ヘッドユニット420を別の記録ヘッドユニット420(記録ヘッド422)に交換するためのメンテナンスステーション500において、テスト画像を記録することとした。これによれば、記録ヘッドユニット420の取付作業中に、記録ヘッドユニット420が新たに取り付けられたキャリッジ400をベルトコンベア300上に移動させて、テスト画像を記録させる必要がなく、記録ヘッドユニット420の取付作業およびその後の調整(テストパターン情報選択処理)を効率的に行うことができる。
【0069】
(2)インクジェット記録装置100では、複数のテストパターン情報に基づいたテスト画像を1回の記録動作によってロール紙520に記録し(図6のS102参照)、これをCCDカメラ540で読み取り(図6のS104)、解析し、ノズル重複部毎に好適な特定テストパターン情報を選択することとした(図6のS106,S108:No)。これによれば、ノズル重複部毎に好適な特定テストパターン情報を選択するに際し、各テストパターン情報に基づくテストパターン画像を順次繰り返し記録する必要がなく、処理効率を向上させることができる。
【0070】
(3)インクジェット記録装置100では、ノズル重複部毎の好適な特定テストパターン情報を選択するに際し(図6のS106参照)、単独部ドット列の占有面積の平均値および最大幅の平均値と、重複部ドット列の占有面積および最大幅との比較において、特定テストパターン情報を選択することとした。これによれば、単独部ドット列の状態に近似した重複部ドット列が記録されるように、インクジェット記録装置100を設定することができる。
【0071】
なお、重複部ドット列のドットを一直線上に形成する場合、重複ドット列のみに着目し、例えば最大幅等が最小値となるテストパターン情報を選択する構成を採用することもできる。しかし、何らかの原因で単独部ドット列にずれ量(図7(b)参照)が発生している場合、記録画像全体の中で、一直線上に形成された重複部ドット列部にずれが生じているように視認される。この点において、本実施形態のS106(図6参照)の構成は、この点において、好適である。
【0072】
(変形例)
(1)上記では、記録媒体320の搬送にベルトコンベア300を採用した構成を例に説明した。しかし、これ以外の構成とすることもできる。例えば、ローラコンベアによる構成とすることもできる。
【0073】
(2)上記では、テスト画像がロール紙520に記録される構成を例に説明した。ロール紙520の他、ガラス、プラスチック等の素材にテスト画像を記録する構成とすることもできる。この場合、CCDカメラ540によりテスト画像が読み取られた後、ガラス等に記録されたテスト画像を拭き取ることができるワイピング機構を、新たにメンテナンスステーション500に採用した構成とすることもできる。
【0074】
(3)上記では、テスト画像に含まれるテストパターン画像のドット列を4ドットとした構成を例に説明した。しかし、これ以外の構成とすることも可能で、ドットの数は、各種の点を考慮し決定することができる。
【0075】
(4)図6に示すテストパターン選択処理のS106の構成において、重複部ドット列の最大幅が、単独部ドット列の平均値に対し、相当量大きい場合、例えば2倍以上であるとき、さらに、図12に示すような構成を採用することもできる。すなわち、インクジェット記録装置100の制御部は、一方側端部のノズル424Aおよび他方側端部のノズル424Bから吐出されるインク滴の量を調整、具体的には、減少させる。これにより、ドット径を小さくすることができる。そして、ドット径の縮小にともない最大幅も縮小させることができる。
【0076】
(5)図6に示すテストパターン選択処理のS106の構成において、各ドット列の占有面積および最大幅に基づき好適な特定テストパターン情報を選択した。しかし、上述したとおり、両者は一定の関係があることから、少なくともいずれか一方に基づき、特定パターンを選択する構成とすることもできる。また、占有面積および最大幅の平均値に基づいた構成の他、例えば、占有面積および最大幅のばらつきを考慮して、中間値に基づいた構成等、好適な特定テストパターン情報を選択する構成とすることもできる。
【0077】
(6)上記では、S108の判断が肯定された場合(図6のS108:Yes参照)、不揮発性メモリに、図6に示すテストパターン選択処理のS106で選択された好適な特定テストパターン情報に一致するパターン構成情報を、対応するノズル重複部に関連付けて登録(記憶)し、インクジェット記録装置100の制御部が、パーソナルコンピュータのような外部装置から受信した画像データから生成したラスタイメージに対して、間引処理(マスク処理)を実行する際、このパターン構成情報を利用する構成を例に説明した。
【0078】
これ以外の構成として、次のような構成を採用することもできる。すなわち、図6のS110に対応する処理として、インクジェット記録装置100の制御部は、自装置に画像データを送信する外部装置に、パターン構成情報を送信する。これを受信した外部装置(外部装置の制御部)は、自装置内の記憶領域にパターン構成情報を登録(記憶)する。そして、外部装置が、インクジェット記録装置100に画像データを送信するに際し、パターン構成情報を利用した間引き処理を予め実行し、ラスタイメージを作成する。インクジェット記録装置100の制御部は、間引き処理を実行することなく、受信したラスタイメージにしたがい、印刷処理を実行する。手段を用いることも可能である。
【0079】
(7)上記では、第1ノズル列426Aおよび第2ノズル列426Bが相互に千鳥状に配置された記録ヘッド422−1,422−2,422−3,422−4を例に説明した(図2参照)。しかし、これとは異なる数のノズル列、すなわち、単列または3列以上のノズル列が形成された記録ヘッド各々を、ノズル重複部が形成されるように配置した記録ヘッドユニットとすることもできる。この場合も、図6に示すテストパターン情報選択処理を上記同様に実行することで、各ノズル重複部について好適な特定テストパターン情報が選択可能で(図6のS106)、各ノズル重複部の特定テストパターン情報に一致したパターン構成情報を登録することができる(図6のS110)。
【0080】
また、ノズル重複部が、一方側端部のノズル424Aおよび他方側端部のノズル424Bが各1個(合計2個)組み合わされた構成を例に説明した。しかし、2個より多い一方側端部のノズル424Aおよび他方側端部のノズル424Bの組合せによる構成とすることもできる。この場合も、各ノズルからのインク滴の吐出の有無を規定した各テストパターン情報を図3のように規定することで、図6に示すテストパターン情報選択処理を上記同様に実行することができる。
【0081】
さらに、ノズル重複部によるドット列がテストパターン画像において1列となる構成、すなわち、各ノズル列の端部のノズルを各1個重複して配置した構成を例に説明したが、これ複数個重複して配置した構成とすることもできる。この場合、図6に示すテストパターン選択処理のS106において、制御部は、ノズル重複部による重複部ドット列の占有面積および最大幅について、各平均値を算出する(単独部ドット列による算出方法参照)。そして、制御部は、この重複部ドット列の占有面積および最大幅の平均値と、単独部ドット列の占有面積および最大幅の平均値を比較し、上記同様の手法によって、好適な特定テストパターン情報を選択する。
【符号の説明】
【0082】
100 インクジェット記録装置
200 電装ボックス
300 ベルトコンベア
320 記録媒体
400 キャリッジ
420 記録ヘッドユニット
422 記録ヘッド
424 ノズル
424A 一方側端部のノズル
424B 他方側端部のノズル
426 ノズル列
426A 第1ノズル列
426B 第2ノズル列
500 メンテナンスステーション
520 ロール紙
540 CCDカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置から入力される画像データによって示される記録画像が記録される記録媒体が搬送される搬送方向に対して直交する方向に、複数のノズルを配列したノズル列が形成された各記録ヘッドを、前記記録ヘッドの一方側端部のノズルと、前記記録ヘッドの他方側端部のノズルと、が前記搬送方向に重複するように配置した記録ヘッドユニットを備えるライン型のインクジェット記録装置であって、
前記ノズル列からインク滴を吐出してテストパターン画像を記録する場合において、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出の有無と、前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出の有無と、に関する情報を含むテストパターン情報を複数記憶する記憶部と、
前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出と前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とについて、前記記憶部に記憶された複数のテストパターン情報各々にしたがって吐出し、前記一方側端部のノズルおよび前記他方側端部のノズル以外のノズルからのインク滴の吐出について、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出または前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とともに吐出して、前記テストパターン情報各々に対応したテストパターン画像各々を含む単一のテスト画像の記録を制御するテストパターン記録部と、
前記テスト画像を読み取る読取部と、
前記読取部によって読み取られたテスト画像に含まれる各テストパターン画像を解析する解析部と、
前記解析部による各テストパターン画像の解析結果から、所定の条件を満足する特定のテストパターン画像のテストパターン情報を、特定テストパターン情報として選択する選択部と、
前記記録画像を前記記録媒体に記録する場合において、前記選択部によって選択された特定テストパターン情報に対応した、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出と前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とを制御する画像データ記録部と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記テストパターン画像は、前記ノズル列の各ノズルから吐出されたインク滴によるドットが、前記搬送方向に所定の数連続したドット列によって形成された画像であって、
前記解析部は、前記テスト画像に含まれるテストパターン画像毎に、前記一方側端部のノズルを含むノズル列について前記一方側端部のノズル以外の各ノズルによるドット列各々と、前記他方側端部のノズルを含むノズル列について前記他方側端部のノズル以外の各ノズルによるドット列各々と、にそれぞれ対応する第1ドット列解析情報各々を取得するとともに、取得された第1ドット列解析情報各々を用いて第2ドット列解析情報を取得し、さらに、前記テスト画像に含まれるテストパターン画像毎に、前記一方側端部のノズルと前記他方側端部のノズルとによるドット列に対応する第3ドット列解析情報を取得し、
前記選択部は、前記テスト画像に含まれるテストパターン画像毎に、前記第2ドット列解析情報と前記第3ドット列解析情報とを比較し、前記第2ドット列解析情報と前記第3ドット列解析情報とが最も近似するテストパターン画像のテストパターン情報を、前記特定テストパターン情報として選択することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記記憶部に記憶された複数のテストパターン情報各々には、優先順位が付与されており、
前記選択部は、前記テスト画像に含まれるテストパターン画像毎に、前記第2ドット列解析情報と前記第3ドット列解析情報とを比較した結果、最も近似するテストパターン画像のテストパターン情報が複数抽出された場合、前記優先順位にしたがって、前記特定テストパターン情報を選択することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記インクジェット記録装置は、
前記テスト画像を記録するためのメンテナンスステーションと、
前記記録ヘッドユニットを、前記メンテナンスステーションに移動する移動部と、を備え、
前記テストパターン記録部は、前記移動部による前記記録ヘッドの前記メンテナンスステーションへの移動を制御し、前記記録ヘッドユニットが前記メンテナンスステーションに移動した状態で、前記テスト画像の記録を制御するとともに、
前記読取部は、前記メンテナンスステーションに設置され、前記記録ヘッドユニットが前記メンテナンスステーションに移動した状態で記録されたテスト画像を読み取ることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
外部装置から入力される画像データによって示される記録画像が記録される記録媒体が搬送される搬送方向に対して直交する方向に、複数のノズルを配列したノズル列が形成された各記録ヘッドを、前記記録ヘッドの一方側端部のノズルと、前記記録ヘッドの他方側端部のノズルと、が前記搬送方向に重複するように配置した記録ヘッドユニットを備え、前記ノズル列からインク滴を吐出してテストパターン画像を記録する場合において、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出の有無と、前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出の有無と、に関する情報を含むテストパターン情報を複数記憶し、特定テストパターン情報に対応した、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出と前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とを制御し、前記記録画像を前記記録媒体に記録可能なライン型のインクジェット記録装置の調整方法であって、
前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出と前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とについて、前記記憶部に記憶された複数のテストパターン情報各々にしたがって吐出し、前記一方側端部のノズルおよび前記他方側端部のノズル以外のノズルからのインク滴の吐出について、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出または前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とともに吐出し、前記テストパターン情報各々に対応したテストパターン画像各々を含む単一のテスト画像の記録を制御するテストパターン記録工程と、
前記テスト画像を読み取る読取工程と、
前記読取工程によって読み取られたテスト画像に含まれる各テストパターン画像を解析する解析工程と、
前記解析工程による各テストパターン画像の解析結果から、所定の条件を満足する前記テストパターン画像のテストパターン情報を、前記特定テストパターン情報として選択する選択工程と、を含むことを特徴とする調整方法。
【請求項6】
外部装置から入力される画像データによって示される記録画像が記録される記録媒体が搬送される搬送方向に対して直交する方向に、複数のノズルを配列したノズル列が形成された各記録ヘッドを、前記記録ヘッドの一方側端部のノズルと、前記記録ヘッドの他方側端部のノズルと、が前記搬送方向に重複するように配置した記録ヘッドユニットと、前記ノズル列からインク滴を吐出してテストパターン画像を記録する場合において、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出の有無と、前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出の有無と、に関する情報を含むテストパターン情報を複数記憶する記憶部と、を備えるライン型のインクジェット記録装置によるインクジェット記録方法であって、
前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出と前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とについて、前記記憶部に記憶された複数のテストパターン情報各々にしたがって吐出し、前記一方側端部のノズルおよび前記他方側端部のノズル以外のノズルからのインク滴の吐出について、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出または前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とともに吐出し、前記テストパターン情報各々に対応したテストパターン画像各々を含む単一のテスト画像の記録を制御するテストパターン記録工程と、
前記テスト画像を読み取る読取工程と、
前記読取工程によって読み取られたテスト画像に含まれる各テストパターン画像を解析する解析工程と、
前記解析工程による各テストパターン画像の解析結果から、所定の条件を満足する前記テストパターン画像のテストパターン情報を、特定テストパターン情報として選択する選択工程と、
前記選択工程によって選択された特定テストパターン情報に対応した、前記一方側端部のノズルからのインク滴の吐出と前記他方側端部のノズルからのインク滴の吐出とを制御し、前記記録画像を前記記録媒体に記録する画像データ記録工程と、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−234773(P2010−234773A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88230(P2009−88230)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】