説明

ライ麦粉含有麺類

【課題】ライ麦粉を主原料として用い、色艶、食感等に優れる新規なライ麦粉含有麺類を提供すること。
【解決手段】粒径10μm以下の累積頻度が10質量%以下でかつ粒径210μm以下の累積頻度が90質量%以上である粒度分布を有するライ麦粉を3質量%以上含有する原料穀粉を用いて製麺されたことを特徴とするライ麦粉含有麺類。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライ麦粉含有麺類、詳しくは、色艶、食感などに優れた、ライ麦粉を主原料として用いた新規な麺類に関する。
【背景技術】
【0002】
ライ麦は、リシン、トリプトファン等を小麦より多く含有し、穀類蛋白質として優れたものであるが、ライ麦の蛋白質は小麦の蛋白質と異なりグルテン形成能がなく、その生地は粘弾性に乏しいものである。またライ麦粉は小麦粉に比べ色調が悪いものである。
ライ麦は、生地を酸性にすると粘弾性を帯びるので、この性質を利用して特異なパン(黒パン)が製造されている。しかし、麺類にライ麦粉を用いた場合、小麦粉を用いた麺類に比して色艶や食感等が悪い麺類しか得られない。そのため、近年の健康志向から栄養価の高いライ麦粉を用いた麺類が要望されているものの、従来、ライ麦粉を麺類の主原料として用いることは殆ど行われていない。
【0003】
例えば、特許文献1および2には、ライ麦粉を配合した麺類が記載されているが、いずれにおいても、ライ麦粉は、小麦粉を主原料とする麺類の栄養強化または食感改質のために添加される副原料として用いられているにすぎない。
また、特許文献3には、小麦以外のグルテンに乏しい穀類を高圧蒸煮して完全α化した後、50%以下の低水分下で5〜10kg/cm2 の高圧下においてダイスからの押出しにより麺線を形成することを特徴とする麺類の製造方法が記載され、上記穀類の一つとしてライ麦が記載されている。しかし、この特許文献3に記載されている麺類の製造方法は、グルテンに乏しい穀類から容易に麺類を製造することを主目的とするものであって、得られる麺類の色艶や食感等については特に配慮されているものではない。また、特許文献3には、ライ麦を用いた実施例は記載されていない。
また、特許文献4には、高アミロペクチン系澱粉と穀粉とを使用した茹麺類の製造法が記載され、上記穀粉の一つとしてライ麦粉が記載されているが、特許文献4に記載されている実施例は全て、穀粉として小麦粉を用いており、ライ麦粉を用いた実施例は記載されていない。
【0004】
一方、従来より、小麦粉の製麺適性等を改善するために、特定範囲の粒径の小麦粉を用いることが提案されている。例えば、粒径16.0μm以下の積算体積と粒径80.6μm以上の積算体積の合計が20%未満である麺用小麦粉(特許文献5参照)や、粒径20μm以下の普通系小麦粉を50〜9O重量%および澱粉を10〜50重量%の割合で含有する麺用粉(特許文献6参照)等が提案されている。
しかし、ライ麦粉の粒径と、その製麺適性や得られる麺の色艶および食感等との関係について記載された文献は見当たらない。
【0005】
【特許文献1】特開平10−80254号公報
【特許文献2】特開平4−27357号公報
【特許文献3】特開昭57−29257号公報
【特許文献4】特開昭61−31054号公報
【特許文献5】特許第3181730号公報
【特許文献6】特許第3354717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ライ麦粉を主原料として用い、色艶、食感等に優れる新規なライ麦粉含有麺類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、種々検討した結果、特定の粒度分布を有するライ麦粉を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、粒径10μm以下の累積頻度が10質量%以下でかつ粒径210μm以下の累積頻度が90質量%以上である粒度分布を有するライ麦粉を3質量%以上含有する原料穀粉を用いて製麺されたことを特徴とするライ麦粉含有麺類を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ライ麦粉を主原料として用い、色艶、食感等に優れる新規なライ麦粉含有麺類を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いられるライ麦粉は、粒径10μm以下の累積頻度が10質量%以下、好ましくは5〜10質量%でかつ粒径210μm以下の累積頻度が90質量%以上、好ましくは90〜95質量%である粒度分布を有するものである。
粒径10μm以下の累積頻度が10質量%超であるか、または粒径210μm以下の累積頻度が90質量%未満であると、得られた麺類の食感がねちゃついたものとなる。
【0010】
上記ライ麦粉としては、上記粒度分布を有すると共に、粒径20μm以上50μm以下の大きさの粒を15〜40質量%、かつ粒径90μm以上210μm以下の大きさの粒を15〜40質量%含有するものが好ましい。これらの二区分の特定の大きさの粒のライ麦粉を上記割合で含有することにより、得られた麺類が滑らかでつやがあり、粘弾性のバランスが良い等の効果が奏される。
【0011】
上記ライ麦粉を得るためのライ麦としては、その品種や産地等が制限されるものではない。また、ライ麦の製粉方法も制限されるものではなく、アリューロン層が取り除かれたライ麦粉も、アリューロン層が取り除かれていないライ麦粉も使用することができる。
【0012】
上記粒度分布を有するライ麦粉を調製する方法としては、コーヒーミル等の細かく粉状にする粉砕機を用いて、ライ麦粉を粗粉砕した後、各メッシュを有する篩を縦方向に重ね合わせて、これら篩によりライ麦粉を分級することにより所定の粒度分布を有するライ麦粉を調製する方法等が挙げられる。
【0013】
尚、ライ麦粉の粒度分布は、下記の方法により測定したものである。
〔ライ麦粉の粒度分布の測定方法〕
マイクロトラックFRA9220(乾式)(日機装株式会社製)を用いて、公知のレーザー回折散乱法を利用した粒度分布測定を行った。
【0014】
本発明のライ麦粉含有麺類は、上記ライ麦粉を3質量%以上、好ましくは3〜95質量%、より好ましくは5〜80質量%、最も好ましくは10〜80質量%含有する原料穀粉を用いて製麺されたものである。
本発明のライ麦粉含有麺類には、上記ライ麦粉以外に、小麦粉、そば粉、米粉、大麦粉、緑豆粉等の穀粉や、でんぷん、グルテン、卵白、卵黄、大豆粉、コーンフラワー等の製麺に通常用いられる副原料が、麺類の種類に応じて適宜配合される。
製麺は常法により行うことができる。
【0015】
本発明が適用される麺類の種類としては、制限されるものではなく、例えば、スパゲッティ、そば、うどん、中華麺等が挙げられ、特にスパゲティが好適である。
また、本発明のライ麦粉含有麺類は、茹で麺、冷凍麺、生麺、半生麺、乾麺等、種々の製品形態とすることができる。
【実施例】
【0016】
次に、本発明をさらに具体的に説明するために、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0017】
〔調製例〕
常法により製粉して得られたライ麦粉を、縦方向に重ねて配置した各目開きを有する篩を通過させることにより分級した。各目開きを有する篩は、上側から順に、10メッシュ、20メッシュ、50メッシュ、100メッシュをそれぞれ有する篩とした。これら各目開きを有する篩の画分を組み合わせて、下記の粒度分布を有する本発明に係るライ麦粉を調製した。
調製例のライ麦粉の粒度分布
粒径10μm以下の累積頻度:5質量%
粒径210μm以下の累積頻度:90質量%
粒径20μm以上50μm以下の大きさの粒:32質量%
粒径90μm以上210μm以下の大きさの粒:25質量%
【0018】
〔比較調製例〕
調製例と同様にしてライ麦粉を分級し、各目開きを有する篩の画分を組み合わせて、下記の粒度分布を有するライ麦粉を調製した。
比較調製例のライ麦粉の粒度分布
粒径10μm以下の累積頻度:15質量%
粒径210μm以下の累積頻度:85質量%
粒径20μm以上50μm以下の大きさの粒:10質量%
粒径90μm以上210μm以下の大きさの粒:12質量%
【0019】
〔実施例1〜7〕
調製例で得られたライ麦粉を用い、表1に示す配合により、常法の押し出し成形、麺線切りを行い、生スパゲッティをそれぞれ製造した。
【0020】
〔比較例1〕
ライ麦粉として、比較調製例で得られたライ麦粉を表1に示す割合で用いた以外は、実施例1〜7と同様にして、生スパゲッティを製造した。
【0021】
〔評価試験〕
これらの実施例および比較例で製造された各生スパゲッティについて、官能試験を次のようにして行った。各生スパゲッティをそれぞれ歩留215%になるように茹でた後、冷凍処理し、冷凍処理されたスパゲッティを1分間解凍処理して、その色艶および食感を表2に示す評価基準に従って、10名のパネラーに官能評価させた。
その官能評価結果(10名のパネラーの平均点)を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径10μm以下の累積頻度が10質量%以下でかつ粒径210μm以下の累積頻度が90質量%以上である粒度分布を有するライ麦粉を3質量%以上含有する原料穀粉を用いて製麺されたことを特徴とするライ麦粉含有麺類。
【請求項2】
ライ麦粉が、粒径20μm以上50μm以下の大きさの粒を15〜40質量%含有し、かつ粒径90μm以上210μm以下の大きさの粒を15〜40質量%含有するものである請求項1記載のライ麦粉含有麺類。
【請求項3】
麺類がスパゲティである請求項1または2記載のライ麦粉含有麺類。

【公開番号】特開2007−174905(P2007−174905A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373691(P2005−373691)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(398012306)日清フーズ株式会社 (139)
【Fターム(参考)】