説明

ラクタムフリーのアミノ酸

【発明の詳細な説明】
〔発明の詳細な記述〕
本発明は、ラクタム−フリーの環状アミノ酸、その製造方法、およびそれらアミノ酸を含有する薬剤学的組成物に関する。
西独明細書第24 60 891号より、下記一般式(I)の環状アミノ酸誘導体、並びに薬理学的に容認され得るこれらの塩が知られている。


但し、R1は水素原子または低級アルキル基、nは4、5、または6である。これら化合物は、様々な薬効病理学的特性を有する。一般式(I)の化合物は、非常に毒性が低い。動物実験では、チオセミカルバジドにより誘発される痙攣、およびカルディアゾル痙攣に対して顕著な予防効果のあることが見出されている。この化合物は、脳疾患の治療に使用され得る。こうして例えば、これら化合物はある形のてんかん、めまいの発作、運動低下症、および頭部外傷の治療に使用されることができ、大脳機能の改善をもたらす。それゆえ、これらは老人病の治療に特に効果的である。
一般式(I)の化合物は、以下に示すa)〜c)の方法のいずれかによって調製され得る。
a)下記一般式(II)の化合物を、反応性酸誘導体を経てアジドに転化させ、次いで、これに所謂クルチウス反応を行わせる。


ここで、R2は8までの炭素原子を含むアルキル基、およびnは上記同様(4〜6の整数);
b)下記一般式(III)の化合物を、いわゆるホフマン反応に従って反応させる。


ここで、nは上記同様(4〜6の整数);
c)下記一般式(IV)の化合物を、いわゆるロッセン転位に従って反応させる。


ここで、nは上記同様(4〜6の整数);その後、望ましいならば、得られた遊離アミノ酸をエステル化によって低級アルキルエステルに転化させるか、または酸ないし塩基を用いた反応によって薬理学的に容認され得る塩に転化させる。
下記一般式(V a)のアミノメチル−1−シクロヘキサン酢酸(ギャバペンチン:gabapentin)は、特に有効な活性物質であることが知られている。


ギャバペンチンは、γ−アミノ酪酸(GABA)と一定の構造的な関係を示す。しかしながら、γ−アミノ酪酸は脳血液関門を通過することができない。ギャバペンチンにはこうした短所がなく、従って毒性が極めて低い非常に効果的な鎮痙性を示す(ドラッグス・オブ・フューチャー、11/6,518−519/1986)。
他方、R1が水素原子である一般式(I)の化合物を、調製および貯蔵する場合に問題が生ずる。この問題は、現在まで部分的に解決されているのみであり、使用可能な投薬形態を開発する上で障害となっている。第一に、様々な実行可能な調製方法を使用した場合、明白な理由なしに、得られた化合物の純度がかなり変化することが確認された。この問題は、特に精製工程を追加することによって、最初は解決できたようであった。しかしながら、その後長期間の貯蔵安定性を調査した場合、かなり高純度の化合物(I)でさえ、貯蔵の進行によってかなり異なった安定性を示すことが明らかになった。この安定性が不充分である原因を正確に決定することは、幾度試みても不可能であった。なぜなら、この安定性の不充分さは、最近まで知られていなかった条件に起因していたからである。長期間の系統的研究によって初めて、この問題を解決し、安定な活性物質(I)およびその剤形の調製という問題の解決が導かれた。
一般に塩、なかでも塩酸塩は、特に良好な安定性および良好な溶解性が期待され得るので、ギャバペンチンの塩酸塩は前記活性物質に最適な形態であるという仮定のもとに、まずギャバペンチン塩酸塩を使用した。しかしながら、薬剤学的組成物において、この塩は幾つかの場合に、前記遊離アミノ酸に比べ更に不安定であることが確認された。
次の反応に従い、

ギャバペンチンは、下記一般式(VII)に示される他の化合物の場合に類似した手法でラクタム(VI)を形成する。


ここで、nは4、5、または6であり、好ましくは5である。
しかしながら、下記一般式(VIII)のラクタムは、前記の調製コースにおいてだけではなく、貯蔵した場合においても形成される。


(nは上記同様)
固相および乾燥した貯蔵条件下でのこの予想されない反応コースにおいては、ラクタムに閉環する際に水分が遊離するため、乾燥した薬品形態の安定性にとって、更なる問題がひきおこされる。例えば、タブレットおよびカプセルは、水分の存在下で粘着化、または軟化する傾向にある。
活性物質を調製する場合、並びにこれを純粋な形態だけでなく最終調剤の状態において貯蔵する場合、使用される活性物質のラクタム含有量を、最初からできるだけ低く維持する試みによって、更に解決できない問題がひきおこされる。なぜなら、上記の環化反応が、驚くべきことにアルカリ領域においてもひきおこされることが見出されたからである。
一般式(I)の純粋な活性物質とは反対に、ラクタムは一定の毒性を示すため、その形成をできるだけ避けなくてはならない。
例えば、ギャバペンチンの毒性(LD50、マウス)は8000mg/kgを超えるのに対して、これに対応するラクタム(VI)には、300mg/kgの毒性が測定された。従って、薬剤学的組成物を貯蔵する場合において、不純物およびこのような分解生成物の潜在的な生成を、安全性のため最小限に減少させる必要がある。
結局、最終的な薬剤的形態を研究したところ、更なる問題として、ラクタム形成の原因は明らかに補助材料による触媒効果であり、いかなる認識可能な論理にも従わないことが見出された。従って、どの補助材料がラクタム形成を促進するかを確証するために、労力を要する一連の研究が実施されなくてはならなかった。この研究により、例えば、ポロクサマー(Poloxamer)NFは完全に中立に挙動し、単独で存在する場合は、活性物質ギャバペンチンの安定性を損なわないことが示された。一方、ポリエチレングリコール(PEG)を使用する場合、ラクタムへの閉環がかなり生じた。高純度の活性物質を用いた他のテストシリーズにおいて、PEGは賦形剤として実際に使用可能であることが見出された。
以下の補助材料は、例えば前記化合物(I)の安定性を減衰させるため、薬剤学的組成物の調製においては使用を避けるべきである:修飾されたコーンスターチ、ナトリウムクロスカーメロース(croscarmelose)、グリセロールベヘン酸エステル、メタクリル酸共重合体(AおよびCのタイプ)、アニオン交換体、二酸化チタン、およびアエロシル(Aerosil)200のようなシリカゲル。
一方、以下の補助材料は、前記化合物(I)の安定性にあまり大きな影響を及ぼさない:水酸化プロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、クロスポビドン、ポロクサマー407、ポロクサマー188、ナトリウムデンプングリコレート、コポリビドン、コーンスターチ、シクロデキストリン、ラクトース、タルク、並びにジメチルアミノ−メタクリル酸および中性メタクリル酸エステルの共重合体。
ギャバペンチンラクタム(前記ギャバペンチンに関するもの)を許容上限である0.5重量%を超さないために、および前記活性物質の貯蔵安定性だけでなく対応する薬剤学的貯蔵形態の貯蔵安定性を確保するために、以下の方法が挙げられている。
1.一般式(I)の活性物質を、適切な方法によって、例えばイオン交換体によって対応する塩酸塩より、高純度の非誘導型遊離アミノ酸として調製する。こうして、残存する塩酸塩混合物の比率は、20ppm.を超えてはならない。他の鉱酸にも同様のことがあてはまる。
2.薬剤学的調剤を行う場合、補助材料を正確に選択することによって、前記ラクタムを形成する全ての触媒作用が抑えられなければならない。
3.上記条件は、制御によって確実に満たされなければならない。これは一般的に、医薬に適用可能な貯蔵条件下で、薬剤学的組成物または活性物質の生成後1年以内に、ラクタムの形成が純粋な活性物質に関して0.2重量%、好ましくは0.1重量%を超さないようにする場合である。
このようにして、本発明によると、下記一般式(VII)の環状アミノ酸、およびそれらを含有する薬剤学的組成物が提供される。


ここで、nは4、5、または6で、好ましくは5である。また、前記アミノ酸(VII)に関して、下記一般式(VIII)のラクタムを0.5重量%未満含有する。


ここで、nは上記同様(4〜6の整数)。
更に、本発明は、25℃および大気湿度50%において、一般式(VIII)のラクタム含有量が調製後1年間0.2重量%を超えないという上記基準を満足する一般式(VII)の環状アミノ酸、および一般式(VII)の化合物を少なくとも一つ含む薬剤学的組成物を提供する。
〔実施例〕
以下の実施例は、本発明を説明する目的で提供されるものである。
実施例1〈1−(アミノメチル)−シクロヘキサン酢酸塩酸塩〉 水22.3■および濃塩酸22.3■をT100反応器中で混合し、これにギャバペンチンラクタム6.41kgを攪拌しながら添加した。続けて、生成された透明な茶色の溶液を、還流下で、108℃において6時間煮沸した。次に、この反応混合物を28℃に冷却するまで放置した。こうして得られた白色沈殿物を、水40■を加えて再度溶解した。更に未溶解のラクタムを除去するため、1回当りジクロロメタン30■で3回抽出した。この薄黄色水相を、真空蒸発器(QVF100)において蒸発乾燥させた。最終的に、133Paにおいて、温度は80℃に達した。ほとんど乾燥した結晶体を、アセトン12.8■と攪拌し、吸引した。その後、アセトン2■で洗浄し、60℃において、2時間乾燥させた。理論収率は、約60%であった。
実施例2〈1−(アミノメチル)−シクロヘキサン酢酸〉 長さ3m、幅200mmのクロマトグラフィーカラムに、イオン交換樹脂(IRA68)50■を充填した。この樹脂を、脱イオン水300ml中に濃アンモニア水14■を溶解した溶液で再生し、続いて脱イオン水150mlで洗浄した。溶出液がpH6.8に達し、塩化物がもはや検出されなくなったら直ちに、純イオン水43■中の1−(アミノメチル)−シクロヘキサン酢酸塩酸塩8.67kg(40.8mol)を、前記カラム中に適用した。遊離アミノ酸を、脱イオン水を用い速度1.5■/min.で溶出し、各15■の15の留分に収集した。この留分を合わせて、6.65KPa、最高45℃で蒸発させた。白色固体の残渣をメタノール20■中に導入し、これを加熱還流し、濾過し、−10℃まで冷却した。こうして析出した生成物を遠心分離し、冷メタノール10■で洗浄し、30〜40℃において17時間乾燥した。純粋な1−(アミノメチル)−シクロヘキサン酢酸4.9kg(理論収率71%)融点165℃、が得られた。この母液を処理することによって、更に前記化合物0.8kgを得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、クロスポビドン、ポロクサマー407、ポロクサマー188、グリコール酸ナトリウムデンプン、ラクトース、コポリビドン、コーンスターチ、シクロデキストリン、タルク、およびジメチルアミノメタクリル酸/中性メタクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる補助剤を添加することにより、0.5重量%未満の次式VIIIで表されるラクタム
【化1】


(ここで、nは4〜6の数である)
および20ppm未満の鉱酸を伴う、次式VIIで表される誘導体化されていない環状アミノ酸
【化2】


(ここで、nは4〜6の数である)
を固形の薬学的製剤に変換することを特徴とする、前記式VIIの環状アミノ酸を含有する薬学的製剤の製造方法。
【請求項2】前記鉱酸が塩酸であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】前記式VIIおよびVIIIにおけるnが5であることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】前記補助剤がコポリビドンであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】前記式VIIおよびVIIIにおけるnが5であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】請求項1〜5の何れか1項に記載の方法により製造された、0.5重量%未満の次式VIIIで示されるラクタムを伴う、
【化3】


(ここで、nは4〜6の数である)
次式VIIで表される環状アミン酸
【化4】


(ここで、nは4〜6の数である)
を含有する、脳疾患の治療または大脳機能改善のための薬学的製剤。
【請求項7】前記式VIIおよびVIIIにおけるnが5であることを特徴とする、請求項6に記載の薬学的製剤。
【請求項8】請求項6または7に記載の、脳疾患の治療のための薬学的製剤。
【請求項9】請求項6または7に記載の、てんかんの治療のための薬学的製剤。
【請求項10】請求項6または7に記載の、めまい発作の治療のための薬学的製剤。
【請求項11】請求項6または7に記載の、運動低下症のための薬学的製剤。
【請求項12】請求項6または7に記載の、頭部外傷の治療のための薬学的製剤。
【請求項13】請求項6または7に記載の、大脳機能改善のための薬学的製剤。

【特許番号】特許第3148223号(P3148223)
【登録日】平成13年1月12日(2001.1.12)
【発行日】平成13年3月19日(2001.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−221422
【出願日】平成2年8月24日(1990.8.24)
【公開番号】特開平3−90053
【公開日】平成3年4月16日(1991.4.16)
【審査請求日】平成9年8月22日(1997.8.22)
【前置審査】 前置審査
【出願人】(999999999)ゲデッケ・アクチエンゲゼルシャフト
【参考文献】
【文献】特開 昭52−87142(JP,A)
【文献】特開 昭52−113977(JP,A)