説明

ラジオHPLC制御システム

【課題】稼働状況をモニタ表示してその特定成分を所定のタイミングや順序で取り出すことができ、そのシステム運用性や信頼性に優れるとともに、抽出処理の精度に優れたラジオHPLC制御システムを提供する。
【解決手段】気泡センサ16からのセンサ信号及びシンチレーション検出装置13で検出されるシンチレーション値に基づいて上流側及び下流側多方向弁17,19を制御して存置管18a〜18fのそれぞれに各成分液を貯留させ、液体クロマトグラフ装置11から抽出される流出液をその順序によらず所定の存置管18a〜18fに貯留し、その稼働状況を制御部20のモニタ上に表示させるようにラジオHPLC制御システム10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性同位元素をトレーサとして高速液体クロマトグラフからの抽出液を、その成分毎に分離貯留ように制御するラジオHPLC制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧液体クロマトグラフ(HPLC:High Performance Liquid Chromatography )は、液体分析物を高圧をかけてカラムに通すことで、その成分ごとに溶出させる分離精製法であり、他の分析機器との組み合わせにおいて威力を発揮する分離手段として有望視されている技術である。
また、ラジオHPLCを用いた分析分離技術は、放射性同位元素によるシンチレーション現象を利用する分離精製法であり、液体シンチレータを使用する高速液体クロマトグラフ連動型のラジオ液体クロマトグラフの放射線分析装置が知られている。
そして、このようなラジオHPLCを適用して、インジェクションされる分析物を精製分離するラジオHPLC装置に関連して、例えば以下のような技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、液体クロマトグラフからの流出流の放射性成分を検知する電子線検知部、電子線検知部と連動して駆動する三方弁、放射性成分含有流出流のみを分岐し存置する存置部、存置部から放射性成分含有流出流を送出する送出機構、放射性成分含有流出流に液体シンチレータを合流させる合流機構などを備えたラジオ液体クロマトグラフが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、液体クロマトグラフ、存置管及び放射線測定装置とからなるラジオ液体クロマトグラフにおいて、液体クロマトグラフのカラムからの流出液を窒素やアルゴンなどの不活性ガスにより区画して存置管に滞留させるようにした放射線分析装置が記載されている。
【0005】
これらの放射線分析装置では、一般的には液体クロマトグラフのカラムからの流出液は、紫外線吸収検出器等の検出器を経て、シンチレータと混合され、放射線測定器で放射線が測定される。こうしてラジオ液体クロマトグラフにおいては、成分の検出と放射線の測定が直列的に行われるようになっている。
【特許文献1】特開2004−294366号公報
【特許文献2】特開2006−194729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来のラジオHPLC装置では、カラムからそれぞれ異なる速度で抽出される流出液を存置管などの存置部に順次滞留させるので、存置部に複数貯留された特定成分を所定のタイミングや順序で取り出して全体システムを効率的に管理することが難しいという問題があった。
【0007】
また、従来の液体クロマトグラフでは、各センサからデータ処理を的確に処理できない場合があり、カラムから流出してくる各成分液間を区画するための区画ガスを精度よくその液流出路に注入することができず、十分な信頼性が得られないという問題があった。
【0008】
さらに、シンチレーション測定器を用いた液体クロマトグラフ分取装置では、分取するサンプルの種類や量などに応じて移動相の流量等の分取条件を変更するときには、スプリッタによる注入タイミングなども最適となるように調整する必要がある。しかし、条件が悪い場合には、存置管における検液中成分濃度の乱れや、成分間の拡散などを生じて抽出処理の精度が悪くなるという問題もあった。
【0009】
本発明は、これらの課題を解決するため、液体クロマトグラフ装置から抽出される流出液をその順序によらず所定の存置管に貯留するとともに、その稼働状況をモニタ表示して、その特定成分を所定のタイミングや順序で取り出すことができ、システム運用性や信頼性、抽出処理精度等に優れたラジオHPLC制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明のラジオHPLC制御システムは、供給される放射性同位元素を含む試料液を各成分液に分離して液流出路に送液する液体クロマトグラフ装置と、液流出路に順次送液される各成分液のシンチレーション値を測定するシンチレーション検出装置と、シンチレーション値の測定データに応じて各成分液間を区画する区画ガスを液流出路に注入する気泡注入部と、液流出路を移動する液体中の区画ガスを検知する気泡センサと、液流出路を複数の分岐流路に分岐させる上流側多方弁と、分岐流路のそれぞれに設けられ各成分液を貯留する存置管と、存置管の下流側に連結する分岐流路のそれぞれに連結される下流側多方弁と、気泡センサからのセンサ信号及びシンチレーション値のデータに基づいて上流側及び下流側多方弁を制御して存置管のそれぞれに各成分液を貯留させる制御部と、を備えるように構成されている。
【0011】
(2)本発明のラジオHPLC制御システムは、前記(1)において、制御部には液体クロマトグラフ装置を起点とした液流出路における多方弁の位置情報と液流出路を移動する試料液の液送速度のデータとが入力され、
試料液の多方弁への到達時間などの経過情報をモニタ上にグラフィカル表示させるようにしたことを特徴とする。
【0012】
(3)本発明のラジオHPLC制御システムは、前記(1)又は(2)において、制御部が、シンチレーション検出装置及び液体クロマトグラフ装置から取得される測定データに、スパイクノイズ除去、スムージング、スタート検出、ピーク検出、エンド検出を含むデータ処理を行って、この処理データをグラフィカル表示させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のラジオHPLC制御システムによれば、気泡センサからのセンサ信号及びシンチレーション値のデータに基づいて、上流側及び下流側多方弁を制御して存置管のそれぞれに各成分液を貯留させるので、液体クロマトグラフ装置から抽出される流出液をその順序によらず所定の存置部に貯留することができ、その稼働状況をモニタ表示して、特定成分を所定のタイミングや順序で取り出すことができる。こうして、そのシステム運用性や信頼性に優れるとともに、抽出処理の精度に優れたラジオHPLC制御システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本実施形態のラジオHPLC制御システムは、供給される放射性同位元素を含む試料液を各成分液に分離して液流出路に送液する液体クロマトグラフ装置と、液流出路に順次送液される各成分液のシンチレーション値を測定するシンチレーション検出装置と、シンチレーション値の測定データに応じて各成分液間を区画する区画ガスを液流出路に注入する気泡注入部と、液流出路を移動する液体中の区画ガスを検知する気泡センサと、液流出路を複数の分岐流路に分岐させる上流側多方弁と、分岐流路のそれぞれに設けられ各成分液を貯留する存置管と、存置管の下流側に連結する分岐流路のそれぞれに連結される下流側多方弁と、気泡センサからのセンサ信号及び前記シンチレーション値のデータに基づいて上流側及び下流側多方弁を制御して存置管のそれぞれに各成分液を貯留させる制御部と、を備えている。
これによって、液体クロマトグラフ装置から抽出される流出液をその順序によらず複数ある内の特定の存置部に貯留して、その存置管への成分液への滞留状況などを制御部のモニタにグラフィカル表示させながら適宜取り出すことができる。
【0015】
前記液体クロマトグラフ装置としては、供給される放射性同位元素を含む試料液をその各成分によって異なるカラムへの吸着能に応じて抽出して、分離された成分液をその液流出路に送液するカラムクロマトグラフが挙げられる。なお、分析液をカラムに高圧下で通し、これにより液中の各物質が固定相に留まる時間を短縮するとともに各物質の検出ピークを鋭くして、従来の液体クロマトグラよりその分離検出能力を高めた高速液体クロマトグラフなどを適用することが好ましい。
このような液体クロマトグラフの移動相としては、分析や分離対象となる成分液と混じり合うことがなく、カラムや装置に悪影響を与えない範囲で各種のものが使用され(例えば、塩水溶液やアルコール、ジクロロメタンなどの有機溶媒など)、溶媒の組成を連続的に変えて溶出を行うこともできる。例えば、逆相クロマトグラフにおいて濃度勾配を有した水/メタノールの溶媒を用い、メタノールの少ない条件で極性の高い物質を溶出させ、メタノールの割合を増加させることでより極性の低い物質を順次溶出させることができる。
【0016】
前記シンチレーション検出装置(放射線検出器)は、液体クロマトグラフ装置の送液部に接続された液流出路に設けられ、順次送液される各成分液に標識されて含まれる放射性同位元素によるシンチレーション値を測定する分析装置であり、電離放射線を受けたシンチレータから出た蛍光を光電子増倍管や半導体デバイスなどのセンサによって測定することができる。
光電子増倍管などのセンサは電子アンプ等の電子機器に接続されていて、センサが発生した信号の数と振幅を測定して制御部に入力されるようになっている。シンチレータと呼ばれるセンサ物質は、電離放射線に照射されたとき蛍光を放つアントラセンなどの蛍光物質が採用される。
微量物質の標識には、炭素14のような弱エネルギーβ線を放射する放射性同位元素を使用することができる。また、シンチレーション検出装置により測定された検体液中の微量物質分析データ及び検体液の通過順番と通過時間は、制御部のメモリに記憶され、これらのデータに従って液体クロマトグラフのカラムからの流出液中の微量物質情報をモニタ上に表示できるようになっている。
【0017】
前記気泡注入部は、前記シンチレーション値の測定データに応じて前記各成分液間を区画するため、アルゴン、ネオン、ヘリウム、キセノン、ラドン等の希ガスや窒素などの区画ガスを、前記液流出路に注入するためのインジェクションポンプなどを備えた装置であり、全体システムを管理する制御部を介して、その所定量が所定のタイミングで液流出路に注入されるようになっている。
区画ガスを各成分液間に介在させることによって、液流出路における相互の拡散、混合を防止するとともに、液流出路を移動する各成分液を標識して、その管理が容易にできるようにしている。
【0018】
前記気泡センサは、前記液流出路を移動する液体中の区画ガスを検知するためガスセンサ装置である。このセンサデバイスとしては、光透過式センサ、半導体式ガスセンサ、化学反応によって発生するエネルギーを電気エネルギーとして取り出す電気化学式ガスセンサなどが挙げられ、
液体クロマトグラフ装置の輸送媒体の種類に応じて選択して適用することができる。
この気泡センサからのセンサ信号は制御部に入力され、制御部を介して、存置管内の気体及び検体液がセンサーを通過する順番と経過に要した時間とを計測することができるようになっている。
【0019】
前記上流側多方弁及び下流側多方弁は、前記液流出路を複数の分岐流路に分岐させる弁体位置が複数ある切換弁であって、各成分液を貯留させるための存置管の供給側と排出側とにそれぞれ設けられ、制御部を介して弁位置が選択された存置管に合致するように制御されるようになっている。
【0020】
前記存置管は、前記分岐流路のそれぞれに設けられ前記各成分液を、一時的に貯留するための管状やタンク状などに形成された複数の貯留部であり、例えば、その内径が0.3〜3mmのフッ素樹脂製やガラス製などの細管を使用することができる。存置管に区画存置された検体液は、センサと同期しながら気体注入器から気体を注入して存置管内の気体とともに移送される。そして、気体注入器における気体注入と放射線測定装置における放射線測定とを同期しながら、それぞれの存置管に区画存置された検体液中に存在する微量物質を分析することが可能になっている。
【0021】
前記制御部は、前記気泡センサからのセンサ信号及び前記シンチレーション検出装置からのシンチレーション値のデータに基づいて、上流側多方弁や下流側多方弁を制御して、複数ある存置管のいずれかに所定の各成分液を貯留させる装置である。制御部のモニタ上には、液流出路を移動する各成分液のフローやその係属情報が表示され、全体システムの動作状態をビジュアルに把握できるようにしている。
【0022】
また、本実施形態のラジオHPLC制御システムは、前記制御部には前記液体クロマトグラフ装置を起点とした前記液流出路における前記多方弁の位置情報と前記液流出路を移動する試料液の液送速度のデータが入力され、試料液の前記多方弁のへの到達時間などの経過情報をモニタ上にグラフィカル表示することもできる。これによって、オペレータはシステム状況をモニタリングしながら試料液の分離分析処理に伴う、各成分液の存置管への取り込みと取り出しの操作を的確に行うことができる。
【0023】
さらに、本実施形態のラジオHPLC制御システムは、前記制御部が前記シンチレーション検出装置及び前記液体クロマトグラフ装置から取得される測定データにスパイクノイズ除去、スムージング、スタート検出、ピーク検出、エンド検出を含むデータ処理を行って、この処理データをグラフィカル表示させることも可能である。これによって、モニタ上でのデータの判定を高精度で行うことができ、ラジオHPLC制御システムにおける分析処理や分離処理の信頼性を高めることができる。
【0024】
(実施例1)
図1は実施例1に係るラジオHPLC制御システムの説明図である。以下図面を参照しながら実施例1のラジオHPLC制御システムについて具体的に説明する。図1において、実施例1のラジオHPLC制御システム10を示し、液体クロマトグラフ装置11は、外部から供給される分離対象となる試料液などを各成分液に分離して液流出路12に送液する。
シンチレーション検出装置(放射線検出器)13は、液体クロマトグラフ装置11に対してその直下流位置となる液流出路12に設けられている。気泡注入部14は、区画ガスを液流出路12に注入するための切り替えバルブ14aを備えている。廃液選択部15は、不要液を液流出路12から系外の廃液タンクなどに排出させるための切替弁15aを有している。気泡センサ16は、液流出路12を移動する液体中の区画ガスを検知する。上流側多方向弁17は、液流出路12を複数の分岐流路12a〜12fに分岐させる。存置管18は、分岐流路12a〜12fのそれぞれに接続された5組の存置管18a〜18fが備えている。下流側多方向弁19は、存置管18a〜18fの下流側にそれぞれ連結されている。制御部20は、上流側多方向弁17や下流側多方向弁19などを制御するとともにシステム情報などをモニタ画面上などに表示させる。
なお、下流側多方向弁19の下流側には、存置管18a〜18fから取り出される成分液のスタート状態を検知するための気泡センサ21と、この気泡センサ21に続く液流出路12にマーカーとなる蛍光液を注入するための蛍光液注入部22が設けられている。
そして、必要に応じて、蛍光液を注入するための切り替えバルブ22aが設けられている。
また、切り替えバルブ14aは、液流出路を存置又は廃液に分岐させる分岐部としての役割もする。この切り替えバルブ14aを制御することで、シンチレーション検出装置13の計測データによって液送先を切り替えることができる。
【0025】
コンピュータなどからなる制御部20は、RS232C規格のシリアルインターフェースやEthernet(登録商標)などのLAN通信又はアナログ信号を介して、液体クロマトグラフ装置112及びシンチレーション検出装置13に接続されている。これによって液体クロマトグラフ装置11及びシンチレーション検出装置13の計測値や稼働状態を取得する事ができる。
各気泡センサ16、21及び多方向弁17、19、開閉弁23〜25などは、リレー又はその他のインターフェース回路を有したインターフェースボックス20a及びリモートI/O20bを介して、制御部20のUSBポートに接続されている。これによって、各センサ部からセンサ信号を取得したりポンプを含む各装置類の制御処理を行ったりすることができる。
【0026】
このようなラジオHPLC制御システム10における制御方法は、以下の概略手順(a)〜(e)により示される。
(a)計測:シンチレーション検出装置13により計測されたシンチレーション値である放射線量のデータをデータ処理して、そのピーク値を検出する。
(b)気泡注入:シンチレーション検出装置13によるシンチレーションの計測時におけるピーク値発生のタイミングで気泡注入部14を作動させることによって、気泡となる窒素ガスを液流出路12に注入する。
(c)分岐処理:(a)により取得されるピーク値のデータに基づいて6方向位置に切換できる上流側多方向弁17及び下流側多方向弁19を制御して、対応する所望の存置管18a〜18fに液流出路12を流下してくる成分液を振り分ける。
(d)排出:計測終了後に存置管18a〜18fに保存された成分液を所定の順序で排出する。
(e)蛍光液注入:蛍光液注入部22を作動させることによって、存置管18a〜18fから排出された成分液にマーカーとなる蛍光液を注入する。
【0027】
以上の概略手順(a)〜(e)によって、液体クロマトグラフ装置11から順次液流出路12に抽出される各成分液が処理されるとともに、制御部20のモニタ上には、HPLC計測制御ソフトを介してラジオHPLC制御システム10の稼働情況を示すフローチャートや計測値のデータが、全体表示されるようになっている。これによって、オペレータは、稼働状況の状況をリアルタイムでモニタしたり、各成分液を存置管18a〜18fのいずれかに保持させるように操作したりすることが可能となり、ラジオHPLC制御システム10を効率的かつ正常に稼働させることができる。
【0028】
(実施例2)
以上説明したラジオHPLC制御システム10に適用されるHPLCコントロールプログラムの概要について、次に説明する。このHPLCコントロールプログラムにおいては、次工程の装置と信号接続することにより、ラジオHPLC計測システム全体の制御を行い、計測状況の視覚的な表示を行うことができる。なお、このラジオHPLC制御システムを構成する各装置の一例として、液体クロマトグラフ装置に日立製HPLC装置、シンチレーション検出装置にアロカ製RMT装置、6連となる存置管、多方弁、気液感知センサなどからなる気泡センサを含むユニットとして制作したものを適用した。
【0029】
図2は、実施例2のラジオHPLC制御システムにおける主たるハードウェアの構成図である。実施例2のラジオHPLC制御システム30は、液体クロマトグラフ装置(図示しない)から分離された抽出液が順次供給されるシンチレーション検出装置(RMT装置)31と、不要となる抽出液を判別して廃液ボトル32に振り分けるためのバルブ33と、シンチレーション検出装置31の計測値をもとにバルブ33を制御して複数の存置管(図示しない)に振り分けるための存置管バルブ34と、シンチレーション検出装置31からの計測値に基づいて、バルブ33、存置管バルブ34を制御する制御部(図示しない)のラジオHPLC制御ソフト35と、から構成される。
ここで各構成部の機能は以下のようになっている。RMT装置31は、液体クロマトグラフ装置からの抽出液について、その放射性同位体のシンチレーション値(ri)の計測を行って、制御部に計測値のデータを出力する。ラジオHPLC制御ソフト35は、一定時間間隔でri計測値を読込み、状態判断プログムに従って、バルブ33や存置管バルブ34のバルブ替え操作を行う。
【0030】
図3は、ラジオHPLC制御システムにおけるri計測値のデータを示す説明図であり、ラジオHPLC制御ソフト34におけるデータ処理は、例えば以下のように行われる。
まず、計測値や演算結果、制御情報等のデータを複数のレコードに分けて保存し、これらのデータに基づいてシステムの制御が行なわれる。なお、一定時間間隔で取得した計測値は計測値のレコードに格納される。そして、ピーク検出の演算処理が行われ、この結果がピークマークのレコードに格納される。
このようにして、現在のデータNoは現在位置のレコードに上書きされるとともに、現在計測位置から所要時間を引いた位置情報によりバルブ位置のレコードが上書きされる。
なお、所要時間は、RMT装置31とバルブ32や存置管バルブ33との距離及び液送管内径、液送速度によって算出することができる。
【0031】
図4は、実施例2のラジオHPLC制御システムにおける計測動作のフローチャートの一例である。
図示するように、このフローチャートにおける最初のステップS1では、RMT装置31を用いて液流出路を流れる抽出液のri値を測定する。
次のステップS2において、この測定されたri値のデータに基づいてその変化量やデータ処理の演算がなされる。
そしてステップS3では、その計測時点において、その計測値がピーク立ち上がりとなっているか否かの判定処理がなされる。ここでピーク立ち上がりと判定された場合には、ピーク開始マークをセットする次のステップS4へ、ピーク立ち上がりでない判定された場合には、ピーク立下がりを判定するためのステップS5に移行する。
ステップS5では、ピーク立下がりが判定され、ピーク立下がり状態と判定された場合には、ステップS6でピーク終了マークをセットし、ピーク立下がりでない場合には、ステップS6をスキップしてステップS7に移行する。
【0032】
前記ステップS6及びS4に続くステップS7においては、バルブ位置のピーク状態を取得して、そのri値がピーク開始状態か否かを判定する(ステップS8)。ここでピーク開始状態と判定された場合は、存置管に向かうバルブ切り替えを行うステップS9に、ピーク開始状態でない場合は、ピーク終了判定を行うためのステップS10に移行する。
ステップS10ではデータのピーク終了状態を判定して、その終了状態の場合に廃液ボトルへバルブを切り換えるステップS11に移行し、未終了状態の場合には、ステップS11をスキップしてステップS12に移行する。
ステップS9とステップS11に続くステップS12では、バルブ状態が取得され、続くステップS13で複数の存置管のうちうちいずれかを選択しているか否かが判定される。
こうして、貯留対象となる存置管が設定されている場合には、次のステップS14に移行して、存置管行きとなる成分液の液送総量が加算される。
一方、ステップS13で存置管行きのものが未設定の場合には、この液送総量加算のステップS14をスキップして、ステップS15に移行する。
【0033】
こうして、ステップS13及びステップS14に続くステップS15では、存置管切り替え位置を取得して、存置管切替制御(ステップS16)がなされた後、計測カウントアップの処理が実行される(ステップS17)。
最後のステップS18においては、計測測定時間(T1)と現在時間(T0)とを比較して、T1<T0の場合は計測を終了し、T1<T0でない場合は、最初のステップS1にリターンされるようになっている。
【0034】
(実施例3)
図5〜図9は、実施例3におけるラジオHPLC制御システムの計測データ処理(スパイクノイズ除去、スムージング、スタート検出、ピーク検出、エンド検出)を、それぞれ示す説明図である。すなわち、RMT装置における計測データは、次のような処理を経て制御に反映されることとなる。
実施例3では、その試料液の分離条件によって、これらのデータ処理方法を単数又は複数組み合わせることで、取得されるデータによる判定結果の信頼性などを高めることができる。以下データ処理方法について説明する。
(1)スパイクノイズ除去(図5参照)
メディアン法によって直近n回の計測値の中間値を取り、光学計測などで発生するスパイクノイズを除去するデータ処理方法である。
(2)スムージング(図6参照)
直近n回の値の平均値を取り、波形の凸凹を緩和してピーク検出を行い易くするデータ処理方法である。
(3)スタート検出(図7参照)
ri値のΔn(直近n回の変化量)が既定値以上の値となった場合、ピークのスタートとして検出するようにしたデータ処理方法である。
(4)ピーク検出(図8参照)
Δn(直近n回の変化量)の立ち下がりを感知した近傍の最高値をピークとして判定するデータ処理方法である。
(5)エンド検出(図9参照)
ri値のΔn(直近n回の変化量)が既定値以上の値となった場合、ピークのエンドとして検出するデータ処理方法である。
【0035】
(実施例4)
図10は、実施例1の制御部20のモニタ画面上にグラフィカル表示されたラジオHPLC制御システムの稼働状況の説明図である。このラジオHPLC制御システムにおけるモニタ画面には、システム装置全体の状態表示と手動操作に関するメインディスプレイと、計測状態表示に関連したグラフディスプレイと、各装置の操作状態を表示する操作部とが表示されるようになっている。
メインディスプレイでは、計測状態の表示と停止状態において、窒素ガス供給部や吸引ポンプ等のハード的に接続されていない機器を除く装置の手動操作を行うことができるようになっている。
【0036】
グラフディスプレイには、紫外線とriの計測値及びピークの状態を表示する。すなわち、計測時にHPLC装置から入力したUV値、RMT装置から入力したri値、経過時間、位置設定で入力された情報に基づき時間計算された値を表示する。
なお、計測時の表示においては、UV計測値、ri計測値共に、ピークの開始、ピークトップ、ピークエンドを検出すると、識別を容易にするために色分けした線で該当個所を表示するようにしている。
【0037】
操作部は、計測の開始・停止、計測データの保存処理などの操作や計測設定を行う部分であり、その運転設定には、カラムオーブンのインジェクタスイッチに連動して計測を自動的に開始するインジェクタスイッチや、計測開始時に演算機に計測開始信号(パルス信号)を出力演算機スタート連動ボタン、計測開始時にRMT装置に計測開始信号(パルス信号)を出力するRMTスタート連動ボタン、内部設定された模擬データによる計測やデモンストレーション等を行う場合に使用する模擬データ使用ボタンなどの、チェックボックスやラジオボタンを表示するように設定している。
【0038】
これらの他にも、到達時間の割り出し計算に使用する液送速度や管内径などの入力を行うハード設定、矢印ボタンでグラフの横幅などを変更することのできるグラフ設定、自動計測を開始する操作ボタン、放出開始ボタン、一時停止ボタン、停止ボタン、計測データの保存ボタンなどが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のラジオHPLC制御システムは、シンチレーションを利用したラジオ液体クロマトグラフ放射線分析装置を用いて、放射性物質を微量含有する高速液体クロマトグラフカラムからの流出液を複数の存置管に選択保持して、高精度の成分分離や微量分析を行うことができ、医学、薬学、医療分野、理工学、工業分野、農学、農業分野等に広く適用でき、産業上の利用可能性がきわめて高い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1のラジオHPLC制御システムの説明図である。
【図2】実施例2のラジオHPLC制御システムにおけるハードウェアの構成図である。
【図3】実施例2のラジオHPLC制御システムにおけるri計測値データの説明図である。
【図4】実施例2のラジオHPLC制御システムにおける計測動作のフローチャートである。
【図5】実施例3のラジオHPLC制御システムにおける計測データ処理(スパイクノイズ除去)の説明図である。
【図6】実施例3のラジオHPLC制御システムにおける計測データ処理(スムージング)の説明図である。
【図7】実施例3のラジオHPLC制御システムにおける計測データ処理(スタート検出)の説明図である。
【図8】実施例3のラジオHPLC制御システムにおける計測データ処理(ピーク検出)の説明図である。
【図9】実施例3のラジオHPLC制御システムにおける計測データ処理(エンド検出)の説明図である。
【図10】実施例4におけるモニタ画面上に表示されたラジオHPLC制御システムの稼働状況の説明図である
【符号の説明】
【0041】
10 実施例1のラジオHPLC制御システム
11 液体クロマトグラフ装置
12 液流出路
12a〜12f 分岐流路
13 シンチレーション検出装置(放射線検出器)
14 気泡注入部
14a 切り替えバルブ
15 廃液選択部
15a 切替弁
16 気泡センサ
17 上流側多方向弁
18a〜18f 存置管
19 下流側多方向弁
20 制御部
21 気泡センサ
22 蛍光液注入部
22a 切り替えバルブ
30 実施例2のラジオHPLC制御システム
31 RMT装置(シンチレーション検出装置)
32 廃液ボトル
33 バルブ
34 存置管バルブ
35 ラジオHPLC制御ソフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される放射性同位元素を含む試料液を各成分液に分離して液流出路に送液する液体クロマトグラフ装置と、
前記液流出路に順次送液される前記各成分液のシンチレーション値を測定するシンチレーション検出装置と、
前記シンチレーション値の測定データに応じて前記各成分液間を区画する区画ガスを前記液流出路に注入する気泡注入部と、
前記液流出路を移動する液体中の区画ガスを検知する気泡センサと、
前記液流出路を複数の分岐流路に分岐させる上流側多方弁と、
前記分岐流路のそれぞれに設けられ前記各成分液を貯留する存置管と、
前記存置管の下流側に連結する分岐流路のそれぞれに連結される下流側多方弁と、
前記気泡センサからのセンサ信号及び前記シンチレーション値のデータに基づいて前記上流側及び下流側多方弁を制御して前記存置管のそれぞれに各成分液を貯留させる制御部と、
を備えたことを特徴とするラジオHPLC制御システム。
【請求項2】
前記制御部には、前記液体クロマトグラフ装置を起点とした前記液流出路における前記多方弁の位置情報と前記液流出路を移動する試料液の液送速度のデータが入力され、
試料液の前記多方弁への到達時間などの経過情報がモニタ上にグラフィカル表示させるようにしたことを特徴とする請求項1記載のラジオHPLC制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記シンチレーション検出装置及び前記液体クロマトグラフ装置から取得される測定データに、スパイクノイズ除去、スムージング、スタート検出、ピーク検出、エンド検出を含むデータ処理を行って、
この処理データをグラフィカル表示させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のラジオHPLC制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−267885(P2008−267885A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108685(P2007−108685)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(503087186)有限会社アップデート (2)