説明

ラジカル結合PTFEポリマー粉末及びその製造法

本発明は化学の分野に関し、かつ、例えば摩擦材料として使用することができるラジカル結合PTFEポリマー粉末及び該粉末の製造法に関する。本発明の課題は、マトリックス中への導入の後に、PTFEポリマーコンパウンドとして改善された耐摩耗性を有するラジカル結合PTFEポリマー粉末を規定し、更に、容易でかつ効率的な製造法を規定することである。前記課題は、ラジカル結合PTFEポリマー粉末において、該粉末が放射線化学的及び/又はプラズマ化学的に変性されたPTFE粉末から成り、かつ該粉末の粒子表面に、ホモポリマー、コポリマー又はターポリマーが、分散液中か又は塊状での反応を介してラジカル結合していることを特徴とする、ラジカル結合PTFEポリマー粉末により解決される。前記課題は更に、反応性ペルフルオロアルキル−(ペルオキシ−)ラジカル中心を有するPTFE粉末を、放射線化学的及び/又はプラズマ化学的な変性の後に、分散液中か又は塊状で重合性オレフィン性不飽和モノマーの添加下に反応により変換させ、その際、反応の間にポリマー合成反応を実現することを特徴とする方法により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学の分野に関し、かつ、例えば摩擦材料として使用することができるラジカル結合PTFEポリマー粉末及び該粉末の製造法に関する。
【0002】
原子炉建築のための適当なポリマー材料を探索した際、PTFEが、 −その高い化学的及び熱的安定性とは対照的に− 極めて放射線に敏感であることが確認された。PTFEは、不活性条件下であっても酸素の存在下であっても、すでに低エネルギー線量で分解され、既に0.2〜0.3kGyで脆性を示し、<100kGyで砕け易くなる。
【0003】
約360℃からは、純粋な放射線化学的な分解に、顕著に熱分解が重なる。
【0004】
放射線化学的な分解の確率過程のために、幅広い多様な鎖長を有する反応生成物が生じる。酸素の存在下にPTFEに照射した場合、まず第一に生じるペルフルオロアルキルラジカルからペルオキシラジカル及びアルコキシラジカルが形成される。アルコキシラジカルの形成の中間体を介して、末端ペルフルオロアルキルラジカルは連鎖短縮及びカルボニルジフルオリドの形成下に徐々に分解される。
【0005】
それに対して、側鎖アルコキシラジカルからは、ペルフルオロアルカン酸フッ化物及び末端ペルフルオロアルキルラジカルが生じる。
【0006】
【化1】

【0007】
未焼結及び未圧縮のPTFE乳化重合体及びPTFE懸濁重合体は繊維状−フェルト状の特性を示す。例えばPTFEの付着防止特性及び滑り特性を、水性又は有機分散液、ポリマー、染料、塗料、樹脂又は滑剤への導入により他の媒体に移行させることは不可能であり、それというのも、このPTFEは均質化が不可能であり、凝固の傾向を示し、凝集し、浮上又は沈殿してしまうためである。
【0008】
約100kGyのエネルギー線量を有するエネルギーに富む放射線の作用により、繊維状−フェルト状のポリマーから、ポリマー鎖の部分的な分解のために流動性の微粉末が得られる。この粉末はなおも脆い凝集物を含有し、該凝集物は容易に粒径<5μmの一次粒子に分割されることができる。反応物の存在下で照射する場合、官能基がポリマー中に組込まれる。照射が空気中で行われる場合、式(9.22)(及び後続の大気湿度による−COF−基の加水分解)によりカルボキシル基が得られる。照射の前に(NHSOを混合した場合、S含有基を得ることができる。この官能基はPTFEの疎水性及び疎有機性を本質的に低下させるため、得られた微粉末を良好に他の媒体と均質化させることができる。このPTFEのプラスの特性、例えば優れた滑り特性、分離特性及び乾燥潤滑特性並びに高い化学的及び熱的安定性は維持される。過フッ素化された鎖が結合しているカルボキシル基及びスルホ基は同様に高い化学的不活性を有する。
【0009】
PTFE及びその分解生成物(極めて低分子である生成物を除く)の不溶性のために、慣用の分子量測定の方法を用いることができない。分子量測定を間接的な方法で行わなければならない[A. Heger et al., Technologie der Strahlenchemie an Polymeren, Akademie-Verlag Berlin 1990]。
【0010】
しばしば、他の材料との非相容性は不利な結果をもたらす。(1)液体アンモニア中のナトリウムアミド及び(2)非プロトン性不活性溶剤中のアルカリアルキル−及びアルカリ−芳香族−化合物を用いた公知の方法によるPTFEの化学的活性化によって変性を達成することができる。この変性を介して、反応によって、又は吸着力によってのみ、改善された界面相互作用を達成することができる。
【0011】
PTFEの分解生成物は多岐に亘る使用分野において利用され、例えば滑り特性又は付着防止特性の達成を目的としてプラスチックに対する添加剤としても利用される。微粉末物質は多少なりとも微細に分散されて充填剤成分としてマトリックス中に存在する[Ferse et al., Plaste u. Kautschuk, 29 (1982), 458; Ferse et al. DD-PS 146 716 (1979)]。マトリックス成分を溶解させた場合、PTFE微粉末は除去可能であるか又は回収される。
【0012】
PTFE微粉末の使用分野において、慣用のフルオロカーボン不含の添加剤と比較して特性の改善が達成されるが、非相容性、不溶性、緩い結合、更には不均一な分配は多くの使用分野に関して不利である。
【0013】
更に、表面に非単独重合エチレン性不飽和化合物がグラフトされているフッ素含有プラスチック粒子から成る、グラフトされたフッ素含有プラスチック(US5,576,106)は公知である。この場合、非単独重合エチレン性不飽和化合物は酸、エステル又は無水物であってよい。
【0014】
このグラフトされたフッ素含有プラスチックは、フッ素含有プラスチック粉末をエチレン性不飽和化合物の存在下にイオン化放射線の源にさらすことによって製造される。この場合、エチレン性不飽和化合物はフッ素含有プラスチック粒子の表面に結合する。
【0015】
本発明の課題は、マトリックス中への導入の後に、PTFEポリマーコンパウンドとして同等の滑り特性で改善された耐摩耗性を有し、それによりこのコンパウンドから成る構造部材の寿命が延長されるラジカル結合PTFEポリマー粉末を規定し、更に、このようなラジカル結合PTFEポリマー粉末を製造するための容易でかつ効率的な方法を規定することである。
【0016】
前記課題は請求項に記載された発明により解決される。他の態様は従属請求項の対象である。
【0017】
本発明によるラジカル結合PTFEポリマー粉末は、放射線化学的又はプラズマ化学的に変性されたPTFE粉末から成り、かつ該粉末の粒子表面に、ホモポリマー、コポリマー又はターポリマーが、分散液中か又は塊状での反応を介してラジカル結合している。
【0018】
有利に、PTFE粉末は放射線化学的に変性されている。
【0019】
同様に有利に、PTFE粉末は50kGyより大きい線量で、有利に100kGyより大きい線量で放射線化学的に変性されている。
【0020】
PTFE粉末が反応物の存在下に、有利に酸素作用下に放射線化学的に変性されている場合も有利である。
【0021】
同様に、重合性オレフィン性不飽和モノマーとして、スチレン、アクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリル酸、(メタ)メチルアクリラート、ビニルアセタート、グリシジルメタクリラート、(メタ)アクリルアミド化合物又はその混合物を使用する場合が有利である。
【0022】
本発明によるラジカル結合PTFEポリマー粉末の製造法において、反応性ペルフルオロアルキル−(ペルオキシ−)ラジカル中心を有するPTFE粉末は、放射線化学的及び/又はプラズマ化学的な変性の後に、分散液中か又は塊状で、重合性オレフィン性不飽和モノマーの添加下に反応により変換される。この場合、反応の間に、PTFE上でのホモポリマー、コポリマー又はターポリマーへのポリマー合成反応が実現される。
【0023】
反応性ペルフルオロアルキル−(ペルオキシ−)ラジカル中心を有するPTFE粉末を、放射線化学的及び/又はプラズマ化学的な変性の後に、反応性ペルフルオロアルキル−(ペルオキシ−)ラジカル中心の保持下に低温で温度処理する場合も有利である。
【0024】
有利に、放射線化学的に変性されたPTFE粉末が使用される。
【0025】
同様に有利に、PTFE粉末は50kGyより大きい線量で、有利に100kGyより大きい線量で放射線化学的に変性される。
【0026】
PTFE粉末が反応物の存在下に、有利に酸素作用下に放射線化学的に変性される場合も有利である。
【0027】
更に、PTFE粉末をミクロ粉末として使用する場合が有利である。
【0028】
更に、反応をオートクレーブ又は撹拌型反応器又は押出機/混練機中で実現する場合も有利である。
【0029】
重合性オレフィン性不飽和モノマーとして、スチレン、アクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリル酸、(メタ)メチルアクリラート、ビニルアセタート、グリシジルメタクリラート及び(メタ)アクリルアミド化合物を添加する場合も有利である。
【0030】
同様に、モノマーから成る混合物を使用する場合が有利である。
【0031】
重合性オレフィン性不飽和モノマーとしてマクロマー及び/又はオリゴマーを使用する場合も有利である。
【0032】
更に、PTFEポリマー粉末に、例えば有利にプラスチック/ポリマー中への配合によって、又はエラストマー及び/又は熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂及び/又はそれらから成る混合物中への導入によって、後続の反応において他の低分子及び/又はオリゴマー及び/又はポリマー物質と反応する官能基を付与する場合が有利である。
【0033】
PTFE(ミクロ)粉末とモノマーとを、PTFE粒子表面上でのグラフトホモポリマー、グラフトコポリマー又はグラフトターポリマーの形成下に、分散液中か又は塊状で本発明によりラジカル結合させることにより、意図的にマトリックスへの相容化及び堅固な結合のために調節することができるPTFEポリマー粉末がもたらされ、このことは摩擦材料にとって有利である。熱可塑性樹脂、エラストマー及び/又は熱硬化性樹脂と前記の本発明により変性されたPTFEポリマー粉末との配合において極めて良好な相容性及び相互作用又は更にはグラフト分枝の官能基への化学結合を示す特別なグラフト分枝を、PTFE粒子表面に重合させることができる。それにより、純粋な出発物質及びPTFEを含有する物理的混合物と比較して、同等の動摩擦に加え、高められた耐摩耗性を有する特別な摩擦材料を製造することができる。
【0034】
分散液とは、本発明によれば、PTFE(ミクロ)粉末が液体中で溶解せずに存在し、モノマー(混合物)が液体を形成するか又は液体中に溶解して存在することであると解釈される。液体が過少である場合、分散液はペースト状の塊状物として存在することもできる。
【0035】
渦動化又は流動化されたPTFE(ミクロ)粉末としてのPTFE(ミクロ)粉末を有利に不活性ガス下でモノマー(混合物)の存在下でPTFEポリマー粉末に変換することは、塊状でのラジカル結合/反応であると解釈される。
【0036】
PTFEからPTFE(ミクロ)粉末への有利な放射線化学的な変性において、有利に持続的な(寿命の長い)反応性ペルフルオロアルキル−(ペルオキシ−)ラジカル中心が生じ、これは驚異的にも、反応において重合性オレフィン性不飽和モノマーと結合し得る。プラズマ処理の場合、表面的に類似の反応性ペルフルオロアルキル−(ペルオキシ−)ラジカル中心を生じさせ、前記の結合反応のために使用することができるが、この反応性ペルフルオロアルキル−(ペルオキシ−)ラジカル中心は放射線化学的に製造された反応性ペルフルオロアルキル−(ペルオキシ−)ラジカル中心と比較してその分布及び密度が最適でない。分散液中か又は塊状でのモノマーを用いたPTFE(ミクロ)粉末変性の後、このPTFE粉末を分離及び精製した後のIR分光法により、ホモポリマー、コポリマー又はターポリマーの化学結合を変性バッチの調節に応じて検出することができ、即ち、ポリマー鎖はPTFEの抽出によってはもはや分離不可能であった。未照射のPTFE(ミクロ)粉末と比較して、反応性ペルフルオロアルキル−(ペルオキシ−)ラジカル中心なしでは、又は未結合のラジカル開始剤の存在下でも、グラフトされた/表面変性されたPTFE(ミクロ)粉末は生じない。このPTFE(ミクロ)粉末を不変のまま定量的に分離することができた。PTFE(ミクロ)粉末へのモノマー(混合物)の本発明によるラジカル結合により、ポリマーがPTFEにグラフトしている形状でのPTFEの表面変性がもたらされる。重合されたグラフトポリマー構造体に相応して、当業者は、相容化及び/又は後続の化学反応/ポリマーを用いた変性によって、このPTFEポリマー粉末と異種ポリマーのマトリックスとの反応による結合/相容化が実現され、これによって未変性の出発材料及び未変性のPTFEを含有する物理的混合物と比較して材料特性の改善並びに耐摩耗性の向上がもたらされるか否かをその都度導き出すことができる。
【0037】
耐摩耗性の改善のために、ラジカル結合したPTFE粒子を同時に、マトリックスと非相容性であり、かつ、摩擦係数を低下させ、同時に耐摩耗性を向上させるのに役立つPFPE添加剤(PFPE=ペルフルオロポリエーテル)のための貯蔵媒体として利用することは更に有利である。
【0038】
本発明の他の利点は、グラフト分枝がPTFE粒子上に反応性中心を有し、該反応性中心が、公知の合成工程による後続の変性によって、先行技術では製造することのできなかったPTFEポリマー生成物をもたらすことである。
【0039】
本発明によれば、例えばPTFE乳化重合体(Dyneon TF 2025)に200kGyで照射し、PTFE懸濁重合体(Dyneon TF1750)に空気中で500kGyで照射することによって、ラジカル結合PTFEポリマー粉末が製造される。50kGyでの照射工程の間に、PTFEミクロ粉末への分解下に反応性ペルフルオロアルキル−(ペルオキシ−)ラジカル中心が生じ、これは空気の存在下に部分的に比較的安定な/寿命の長いペルオキシラジカルに変換される。
【0040】
先行技術によれば、このPTFE(ミクロ)粉末を温度処理することができることは公知である。それにより、反応性ペルフルオロアルキル−(ペルオキシ−)ラジカル中心は特に温度の上昇と共に分解される[K. Schierholz u. a., J. Polym. Sci. Part B, Polymer Physics, Vol. 37, 2404-2411 (1999)]。本発明による方法の場合、生じる反応性ペルフルオロアルキル−(ペルオキシ−)ラジカル中心を有するPTFE(ミクロ)粉末が使用される。
【0041】
変性反応において、このPTFE(ミクロ)粉末とモノマー(混合物)とを、分散液中か又は塊状でラジカル結合を介して、化学的結合したPTFEグラフトコポリマー材料、即ちPTFEポリマー粉末に変換することにより、反応性ペルフルオロアルキル−(ペルオキシ−)ラジカル中心は、意図的に、グラフトホモポリマー、グラフトコポリマー又はグラフトターポリマーへの重合性オレフィン性不飽和モノマーとの結合のために用いられる。このPTFEポリマー粉末は、後続の操作(粉末の圧縮、他のポリマーの配合/混合及び/又はグラフト分枝が相応する官能基を有する場合には他の物質及び/又はポリマーとの反応による結合)のための出発材料として使用される。グラフトにより、前記生成物は改善された機械的及び摩擦学的特性を有する。前記生成物は特に動摩擦プロセスにおいて重要な役割を果たす。化学的変性/PTFE粒子とポリマーマトリックス材料との相容化により、良好な結合及び耐摩耗性の改善が達成され、それというのも、PTFE粒子は機械的応力の際にマトリックス材料から摩耗により脱離することができないためである。
【0042】
グラフトされたポリマー分子を有する表面変性されたPTFE粒子はマトリックスと直接相互作用するため、物理的混合物と比較して、結合度に応じて改善された材料特性も認められる。
【0043】
PTFEミクロ粉末の化学的な表面変性及び別のポリマーへの加工/導入により、同等の動摩擦係数の場合に改善された耐摩耗性、即ち適用における高められた寿命を有する新規の材料が得られる。更に、PFPEの添加により、動摩擦係数の低下及び耐摩耗性の顕著な改善が達成され、その際、反応的に相容化されたPTFEは付加的に貯蔵媒体として機能する。
【0044】
更に、本発明を複数の実施例で詳説する。
【0045】
実施例
比較例1:スチレンを用いた未照射のPTFEミクロ粉末の変性
1リットルフラスコ中で、熱分解されたPTFE重合体(Dyneon TF 9205、未照射)100gをDMAc500ml中に室温で分散/撹拌し、脱気し、窒素でパージする。PTFE−DMAc−分散液を100℃に加熱し、スチレン(新たに蒸留したもの)100mlを添加し、100℃で2時間撹拌する。固体を分離し、DMAc各500mlで3回、その後塩化メチレン各500mlで3回洗浄し、乾燥させる。分離された溶液の沈殿により、(ほぼ)未結合のスチレン−ホモポリマーは形成されず、即ち、スチレン重合はPTFE上でも溶剤中でも生じなかったことが判明した。分離及び精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験により、純粋な/未変性のPTFEが生じたこと、即ち、PTFEとスチレンとの間にはグラフト反応は生じなかったことが判明した。IRスペクトル中にはポリスチレン吸収は検出されない。
【0046】
実施例1:スチレンを用いた(500kGyで照射した)PTFE乳化重合体の変性
試験の実施及び後処理を比較例1と同様に行ったが、但し500kGyで照射したPTFE乳化重合体(Dyneon TF 2025)100gを使用した。
【0047】
精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験によって、化学結合したPTFE−ポリスチレン−材料の検出として、PTFEに加えて、極めて強度のポリスチレン吸収が検出された。比較例1では、純粋なPTFEのみがIRスペクトル中で検出可能であった。
【0048】
実験室用混練機中でのSBS中への変性されたPTFEミクロ粉末15質量%の導入及び試験体の製造の後、摩擦学的試験によって、グラフトされたPTFE−ポリスチレン−材料は物理的混合物と同等の動摩擦係数を有するが、本質的により高い耐摩耗性を認めることができることが判明した。相容化された材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、比較例1からの材料と比較して60%への低下を示す。
【0049】
実施例2:スチレンを用いた(500kGyで照射した)PTFE懸濁重合体の変性
試験の実施及び後処理を比較例1と同様に行ったが、但し500kGyで照射したPTFE懸濁重合体(Dyneon TF 1750)100gを使用した。
【0050】
精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験によって、化学結合したPTFE−ポリスチレン−材料の検出として、PTFEに加えて、強度のポリスチレン吸収が検出された。比較例1では、純粋なPTFEのみがIRスペクトル中で検出可能であった。
【0051】
実験室用混練機中でのSBS中への変性されたPTFEミクロ粉末15質量%の導入及び試験体の製造の後、摩擦学的試験によって、グラフトされたPTFE−ポリスチレン−材料は物理的混合物と同等の動摩擦係数を有するが、本質的により高い耐摩耗性を認めることができることが判明した。相容化された材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、比較例1からの材料と比較して65%への低下を示す。
【0052】
比較例2:スチレンとアクリロニトリルとから成る混合物を用いた未照射のPTFEミクロ粉末の変性
1リットルフラスコ中で、熱分解されたPTFE重合体(Dyneon TF 9205、未照射)100gをDMAc500ml中に室温で分散/撹拌し、脱気し、窒素でパージする。PTFE−DMAc−分散液を100℃に加熱し、スチレン50ml及びアクリロニトリル40ml(双方とも新たに蒸留したもの)を添加し、還流下に100℃で2時間撹拌する。固体を分離し、DMAc各500mlで3回、その後塩化メチレン各500mlで3回洗浄し、乾燥させる。
【0053】
分離された溶液の沈殿により、(ほぼ)未結合のスチレン/SAN−ホモポリマーは形成されず、即ち、スチレン/SAN重合はPTFE上でも溶剤中でも生じなかったことが判明した。分離及び精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験により、純粋な/未変性のPTFEが生じること、即ち、PTFEとモノマーとの間にはグラフト反応は生じなかったことが判明した。IRスペクトル中にはSAN吸収は検出されない。
【0054】
実施例3:スチレン/アクリロニトリルを用いた(500kGyで照射された)PTFE乳化重合体の変性
試験の実施及び後処理を比較例2と同様に行ったが、但し500kGyで照射したPTFE乳化重合体(Dyneon TF 2025)100gを使用した。分離された溶液の沈殿により、(ほぼ)未結合のスチレン/SAN−ホモポリマは形成されなかったことが判明した。精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験によって、化学結合したPTFE−SAN−材料の検出として、PTFEに加えて、極めて強度のSAN吸収が検出された。比較例2では、純粋なPTFEのみがIRスペクトル中で検出可能であった。
【0055】
実験室用混練機中でのABS中への変性されたPTFEミクロ粉末15質量%の導入及び試験体の製造の後、摩擦学的試験によって、グラフトされたPTFE−SAN−材料は物理的混合物と同等の動摩擦係数を有するが、本質的により高い耐摩耗性を認めることができることが判明した。化学結合した材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、比較例2からの材料と比較して50%への低下を示す。
【0056】
ABSマトリックス中への導入の間に更にPFPE(ペルフルオロポリエーテル、DuPont)0.5質量%が添加された試料に関する更なる摩擦学的試験により、この試験体が単に化学結合した材料と比較して約45%だけ低い値の動摩擦係数を有し、かつ耐摩耗性の増加が認められることが判明した。化学結合した材料及びPFPEで変性された材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、PFPEを添加しない材料と比較して20%への低下を示していた。
【0057】
実施例4:スチレン/アクリロニトリルを用いた(500kGyで照射された)PTFE懸濁重合体の変性
試験の実施及び後処理を比較例2と同様に行ったが、但し500kGyで照射したPTFE懸濁重合体(Dyneon TF 1750)100gを使用した。分離された溶液の沈殿により、(ほぼ)未結合のスチレン/SAN−ホモポリマは形成されなかったことが判明した。精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験によって、化学結合したPTFE−SAN−材料の検出として、PTFEに加えて、強度のSAN吸収が検出された。比較例2では、純粋なPTFEのみがIRスペクトル中で検出可能であった。
【0058】
実験室用混練機中でのABS中への変性されたPTFEミクロ粉末15質量%の導入及び試験体の製造の後、摩擦学的試験によって、グラフトされたPTFE−SAN−材料は物理的混合物と同等の動摩擦係数を有するが、本質的により高い耐摩耗性を認めることができることが判明した。化学結合した材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、比較例2からの材料と比較して63%への低下を示す。
【0059】
ABSマトリックス中への導入の間に更にPFPE(ペルフルオロポリエーテル、DuPont)0.5質量%が添加された試料に関する更なる摩擦学的試験により、この試験体が単に化学結合した材料と比較して約45%だけ低い値の動摩擦係数を有し、かつ耐摩耗性の増加が認められることが判明した。化学結合した材料及びPFPEで変性された材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、PFPEを添加しない材料と比較して18%への低下を示していた。
【0060】
比較例3:スチレンと無水マレイン酸とから成る混合物を用いた未照射のPTFEミクロ粉末の変性
1リットルフラスコ中で、熱分解されたPTFE重合体(Dyneon TF 9205、未照射)100gをDMAc500ml中に室温で分散/撹拌し、脱気し、窒素でパージする。PTFE−DMAc−分散液を100℃に加熱し、スチレン(新たに蒸留したもの)50ml及び無水マレイン酸50gを添加し、100℃で2時間撹拌する。固体を分離し、DMAc各500mlで3回、その後塩化メチレン各500mlで3回洗浄し、乾燥させる。
【0061】
分離された溶液の沈殿により、(ほぼ)未結合のスチレン−無水マレイン酸−コポリマー(SMAn)は形成されず、即ち、SMAn重合はPTFE上でも溶剤中でも生じなかったことが判明した。分離及び精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験により、純粋な/未変性のPTFEが生じること、即ち、PTFEとSMAnとの間にはグラフト反応は生じなかったことが判明した。IRスペクトル中でSMAn吸収は検出されない。
【0062】
実施例5:スチレン/無水マレイン酸を用いた(500kGyで照射された)PTFE乳化重合体の変性
試験の実施及び後処理を比較例3と同様に行ったが、但し500kGyで照射したPTFE乳化重合体(Dyneon TF 2025)100gを使用した。分離された溶液の沈殿により、(ほぼ)未結合のSMAnホモポリマーは形成されなかったことが判明した。
【0063】
精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験によって、化学結合したPTFE−SMAn−材料の検出として、PTFEに加えて、極めて強度のSMAn吸収が検出された。比較例3では、純粋なPTFEのみがIRスペクトル中で検出可能であった。
【0064】
実験室用混練機中でのPA−6中への変性されたPTFEミクロ粉末15質量%の導入及び試験体の製造の後、摩擦学的試験によって、グラフトされたPTFE−SMAn−材料はPA−6中で物理的混合物と同等の動摩擦係数を有するが、本質的により高い耐摩耗性を認めることができることが判明した。化学結合した材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、比較例3からの材料と比較して55%への低下を示す。
【0065】
ギ酸中への溶解及び遠心分離によるPTFE固体からの未結合のPA−6マトリックスの分離により、IR−スペクトル中で、付加的に強度のPA吸収が認められることが判明した。5回の分離操作後にPA−6を固体から分離することはできず、即ち、反応によって、PTFEポリマー粉末[PTFE−SMAn]とPA−6との配合の間に、化学結合及び相容化が生じた。
【0066】
PA−6−マトリックス中への導入の間に更にPFPE(ペルフルオロポリエーテル、DuPont)0.5質量%が添加された前記試料に関する更なる摩擦学的試験により、この試験体が単に化学結合した材料と比較して約50%だけ低い値の動摩擦係数を有し、かつ耐摩耗性の増加が認められることが判明した。化学結合した材料及びPFPEで変性された材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、化学結合した材料と比較して70%への摩耗の低下を示す。
【0067】
実施例6:スチレン/無水マレイン酸を用いた(500kGyで照射された)PTFE懸濁重合体の変性
試験の実施及び後処理を比較例3と同様に行ったが、但し500kGyで照射したPTFE懸濁重合体(Dyneon TF 1750)100gを使用した。分離された溶液の沈殿により、(ほぼ)未結合のスチレン/SMAn−ホモポリマは形成されなかったことが判明した。精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験によって、化学結合したPTFE−SMAn−材料の検出として、PTFEに加えて、強度のSMAn吸収が検出された。比較例3では、純粋なPTFEのみがIRスペクトル中で検出可能であった。
【0068】
実験室用混練機中でのPA−6中への変性されたPTFEミクロ粉末15質量%の導入及び試験体の製造の後、摩擦学的試験によって、グラフトされたPTFE−SMAn−材料はPA−6中で物理的混合物と同等の動摩擦係数を有するが、本質的により高い耐摩耗性を認めることができることが判明した。化学結合した材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、比較例3からの材料と比較して58%への低下を示す。
【0069】
ギ酸中への溶解及び遠心分離によるPTFE固体からの未結合のPA−6マトリックスの分離により、IR−スペクトル中で、付加的に強度のPA吸収が認められることが判明した。5回の分離操作後にPA−6を固体から分離することはできず、即ち、反応によって、PTFEポリマー粉末[PTFE−SMAn]とPA−6との配合の間に、化学結合及び相容化が生じた。
【0070】
PA−6−マトリックス中への導入の間に更にPFPE(ペルフルオロポリエーテル、DuPont)0.5質量%が添加された前記試料に関する更なる摩擦学的試験により、この試験体が単に化学結合した材料と比較して約50%だけ低い値の動摩擦係数を有し、かつ耐摩耗性の増加が認められることが判明した。化学結合した材料及びPFPEで変性された材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、化学結合した材料と比較して63%への摩耗の低下を示す。
【0071】
比較例4:グリシジルメタクリラート(GMA)を用いた未照射のPTFEミクロ粉末の変性
1リットルフラスコ中で、熱分解されたPTFE重合体(Dyneon TF 9205、未照射)100gをDMAc500ml中に室温で分散/撹拌し、脱気し、窒素でパージする。PTFE−DMAc−分散液を100℃に加熱し、GMA(新たに蒸留したもの)60mlを添加し、100℃で2時間撹拌する。固体を分離し、DMAc各500mlで3回、その後メタノール各500mlで3回洗浄し、乾燥させる。
【0072】
分離された溶液の沈殿により、若干未結合のGMAホモポリマーが形成され、即ち、GMA重合はPTFE上でも溶剤中でも生じなかったことが判明した。分離及び精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験により、純粋な/未変性のPTFEが生じること、即ち、PTFEとGMAとの間にはグラフト反応は生じなかったことが判明した。IRスペクトル中でポリ−GMA−吸収は検出されない。
【0073】
実施例7:グリシジルメタクリラート(GMA)を用いた(500kGyで照射された)PTFE乳化重合体の変性
試験の実施及び後処理を比較例4と同様に行ったが、但し500kGyで照射したPTFE乳化重合体(Dyneon TF 2025)100gを使用した。
【0074】
精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験によって、化学結合したPTFE−ポリ−GMA−材料の検出として、PTFEに加えて、極めて強度のポリ−GMA−吸収が検出された。比較例4では、純粋なPTFEのみがIRスペクトル中で検出可能であった。
【0075】
エポキシ樹脂中への変性されたPTFEミクロ粉末15質量%の導入の後で、及び板状の架橋及び試験体の製造の後で、摩擦学的試験によって、グラフトされたPTFE−ポリ−GMA−材料は物理的混合物と同等の動摩擦係数を有するが、より高い耐摩耗性を認めることができることが判明した。化学結合した材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、比較例4からの材料と比較して65%への低下を示していた。
【0076】
エポキシ樹脂マトリックス中への導入の間に更にPFPE(ペルフルオロポリエーテル、DuPont)0.5質量%が添加された前記試料に関する更なる摩擦学的試験により、この試験体が単に化学結合した材料と比較して約35%だけ低い値の動摩擦係数を有し、かつ耐摩耗性の増加が認められることが判明した。化学結合した材料及びPFPEで変性された材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、化学結合した材料と比較して55%への摩耗の低下を示していた。
【0077】
ポリ尿素樹脂混合物中への変性されたPTFEミクロ粉末15質量%の導入の後で、及び板状の架橋及び試験体の製造の後で、摩擦学的試験によって、グラフトされたPTFE−ポリ−GMA−材料はポリ尿素中で物理的混合物と同等の動摩擦係数を有するが、より高い耐摩耗性を認めることができることが判明した。化学結合した材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、比較例4からの材料と比較して42%への低下を示す。
【0078】
ポリ尿素樹脂マトリックス中への導入の間に更にPFPE(ペルフルオロポリエーテル、DuPont)0.5質量%が添加された前記試料に関する更なる摩擦学的試験により、この試験体が単に化学結合した材料と比較して約45%だけ低い値の動摩擦係数を有し、かつ耐摩耗性の増加が認められることが判明した。化学結合した材料及びPFPEで変性された材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、化学結合した材料と比較して35%への低下を示していた。
【0079】
実施例8:グリシジルメタクリラート(GMA)を用いた(500kGyで照射された)PTFE懸濁重合体の変性
試験の実施及び後処理を比較例4と同様に行ったが、但し500kGyで照射したPTFE懸濁重合体(Dyneon TF 1750)100gを使用した。
【0080】
精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験によって、化学結合したPTFE−ポリ−GMA−材料の検出として、PTFEに加えて、強度のポリ−GMA−吸収が検出された。比較例4では、純粋なPTFEのみがIRスペクトル中で検出可能であった。
【0081】
エポキシ樹脂中への変性されたPTFEミクロ粉末15質量%の導入の後で、及び板状の架橋及び試験体の製造の後で、摩擦学的試験によって、グラフトされたPTFE−ポリ−GMA−材料は物理的混合物と同等の動摩擦係数を有するが、より高い耐摩耗性を認めることができることが判明した。化学結合した材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、比較例4からの材料と比較して68%への低下を示していた。
【0082】
エポキシ樹脂マトリックス中への導入の間に更にPFPE(ペルフルオロポリエーテル、DuPont)0.5質量%が添加された前記試料に関する更なる摩擦学的試験により、この試験体が単に化学結合した材料と比較して約35%だけ低い値の動摩擦係数を有し、かつ耐摩耗性の増加が認められることが判明した。化学結合した材料及びPFPEで変性された材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、化学結合した材料と比較して58%への低下を示していた。
【0083】
ポリ尿素樹脂混合物中への変性されたPTFEミクロ粉末15質量%の導入の後で、及び板状の架橋及び試験体の製造の後で、摩擦学的試験によって、グラフトされたPTFE−ポリ−GMA−材料はポリ尿素中で物理的混合物と同等の動摩擦係数を有するが、より高い耐摩耗性を認めることができることが判明した。化学結合した材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、比較例4からの材料と比較して45%への低下を示す。
【0084】
ポリ尿素樹脂マトリックス中への導入の間に更にPFPE(ペルフルオロポリエーテル、DuPont)0.5質量%が添加された前記試料に関する更なる摩擦学的試験により、この試験体が単に化学結合した材料と比較して約45%だけ低い値の動摩擦係数を有し、かつ耐摩耗性の増加が認められることが判明した。化学結合した材料及びPFPEで変性された材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、化学結合した材料と比較して38%への低下を示していた。
【0085】
比較例5:アクリル酸(AAc)を用いた未照射のPTFEミクロ粉末の変性
1リットルフラスコ中で、熱分解されたPTFE重合体(Dyneon TF 9205、未照射)100gをDMAc500ml中に室温で分散/撹拌し、脱気し、窒素でパージする。PTFE−DMAc−分散液を100℃に加熱し、AAc(新たに蒸留したもの)50mlを添加し、100℃で2時間撹拌する。固体を分離し、メタノール/水(1:1)各500mlで3回、その後メタノール各500mlで3回洗浄し、乾燥させる。分離及び精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験により、純粋な/未変性のPTFEが生じること、即ち、PTFEとアクリル酸との間にはグラフト反応は生じなかったことが判明した。IRスペクトル中にはポリアクリル酸吸収は検出されない。
【0086】
実施例9:アクリル酸(AAc)を用いた(500kGyで照射された)PTFE乳化重合体の変性
試験の実施及び後処理を比較例5と同様に行ったが、但し500kGyで照射したPTFE乳化重合体(Dyneon TF 2025)100gを使用した。
【0087】
精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験によって、化学結合したPTFE−ポリアクリル酸材料の検出として、PTFEに加えて、極めて強度のポリアクリル酸吸収が検出された。比較例5では、純粋なPTFEのみがIRスペクトル中で検出可能であった。
【0088】
実験室用混練機中でのPA−6中への変性されたPTFEミクロ粉末15質量%の導入及び試験体の製造の後、摩擦学的試験によって、グラフトされたPTFE−ポリ−AAc−材料はPA−6中で物理的混合物と同等の動摩擦係数を有するが、より高い耐摩耗性を認めることができることが判明した。化学結合した材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、比較例5からの材料と比較して65%への低下を示していた。
【0089】
ギ酸中への溶解によるPTFE固体からの未結合のPA−6−マトリックスの分離、及びPTFE粉末の分離により、IR−スペクトル中で、強度のPA吸収帯域が認められることが判明した。5回の分離操作後にPAを固体から分離することはできず、即ち、反応によって、PTFEポリマー粉末[PTFE−ポリ−AAc]とPA−6との配合の間に、化学結合及び相容化が生じた。
【0090】
PA−6−マトリックス中への導入の間に更にPFPE(ペルフルオロポリエーテル、DuPont)0.5質量%が添加された前記試料に関する更なる摩擦学的試験により、この試験体が単に化学結合した材料と比較して約55%だけ低い値の動摩擦係数を有し、かつ耐摩耗性の増加が認められることが判明した。化学結合した材料及びPFPEで変性された材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、化学結合した材料と比較して65%への摩耗の低下を示していた。
【0091】
実施例10:アクリル酸(AAc)を用いた(500kGyで照射された)PTFE懸濁重合体の変性
試験の実施及び後処理を比較例5と同様に行ったが、但し500kGyで照射したPTFE懸濁重合体(Dyneon TF 1750)100gを使用した。
【0092】
精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験によって、化学結合したPTFE−ポリアクリル酸−材料の検出として、PTFEに加えて、強度のポリアクリル酸吸収が検出された。比較例5では、純粋なPTFEのみがIRスペクトル中で検出可能であった。
【0093】
実験室用混練機中でのPA−6中への変性されたPTFEミクロ粉末15質量%の導入及び試験体の製造の後、摩擦学的試験によって、グラフトされたPTFE−ポリ−AAc−材料はPA−6中で物理的混合物と同等の動摩擦係数を有するが、より高い耐摩耗性を認めることができることが判明した。化学結合した材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、比較例5からの材料と比較して72%への低下を示していた。
【0094】
ギ酸中への溶解によるPTFE固体からの未結合のPA−6−マトリックスの分離、及びPTFE粉末の分離により、IR−スペクトル中で強度のPA吸収帯域が認められることが判明した。5回の分離操作後に固体からPA−6を分離することはできず、即ち、反応によって、PTFEポリマー粉末[PTFE−ポリ−AAc]とPA−6との配合の間に、化学結合及び相容化が生じた。
【0095】
PA−6−マトリックス中への導入の間に更にPFPE(ペルフルオロポリエーテル、DuPont)0.5質量%が添加された前記試料に関する更なる摩擦学的試験により、この試験体が単に化学結合した材料と比較して約55%だけ低い値の動摩擦係数を有し、かつ耐摩耗性の増加が認められることが判明した。化学結合した材料及びPFPEで変性された材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、化学結合した材料と比較して61%への摩耗の低下を示していた。
【0096】
比較例6:酢酸ビニル(VAc)を用いた未照射のPTFEミクロ粉末の変性
1リットルフラスコ中で、熱分解されたPTFE重合体(Dyneon TF 9205、未照射)100gをDMAc500ml中に室温で分散/撹拌し、脱気し、窒素でパージする。PTFE−DMAc−分散液を100℃に加熱し、VAc(新たに蒸留したもの)100mlを添加し、100℃で2時間撹拌する。固体を分離し、DMAc各500mlで3回、その後塩化メチレン各500mlで3回洗浄し、乾燥させる。分離及び精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験により、純粋な/未変性のPTFEが生じること、即ち、PTFEとVAcとの間にはグラフト反応は生じなかったことが判明した。IRスペクトル中でポリ酢酸ビニル吸収は検出されない。
【0097】
実施例11:酢酸ビニル(VAc)を用いた(500kGyで照射された)PTFE乳化重合体の変性
試験の実施及び後処理を比較例6と同様に行ったが、但し500kGyで照射したPTFE乳化重合体(Dyneon TF 2025)100gを使用した。
【0098】
精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験によって、化学結合したPTFE−ポリ酢酸ビニル−材料の検出として、PTFEに加えて、極めて強度のポリ酢酸ビニル吸収が検出された。比較例6では、純粋なPTFEのみがIRスペクトル中で検出可能であった。
【0099】
VAcでグラフトされたPTFEミクロ粉末を水酸化カリウム濃縮溶液(メタノール/水1:1)中でPTFE−ポリビニルアルコール(PTFE−ポリ−VAl)に変性し、この形状で使用する。
【0100】
実験室用混練機中でのTPU(熱可塑性ポリウレタン)中へのPTFEミクロ粉末15質量%の導入及び試験体の製造の後、摩擦学的試験によって、グラフトされかつ変性されたPTFE−ポリ−VAl−材料はTPU中で物理的混合物と同等の動摩擦係数を有するが、本質的により高い耐摩耗性を認めることができることが判明した。化学結合した材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、比較例6からの材料と比較して35%への摩耗の低下を示していた。
【0101】
ポリ尿素樹脂混合物中へのPTFEミクロ粉末15質量%の導入の後で、及び板状の架橋及び試験体の製造の後で、摩擦学的試験によって、化学的にグラフトされたPTFE−ポリ−VAl−材料はポリ尿素中で物理的混合物と同等の動摩擦係数を有するが、より高い耐摩耗性を認めることができることが判明した。化学結合した材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、比較例6からの材料と比較して42%への摩耗の低下を示していた。
【0102】
実施例12:酢酸ビニル(VAc)を用いた(500kGyで照射された)PTFE懸濁重合体の変性
試験の実施及び後処理を比較例6と同様に行ったが、但し500kGyで照射したPTFE懸濁重合体(Dyneon TF 1750)100gを使用した。
【0103】
精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験によって、化学結合したPTFE−ポリ酢酸ビニル−材料の検出として、PTFEに加えて、強度のポリ酢酸ビニル吸収が検出された。比較例6では、純粋なPTFEのみがIRスペクトル中で検出可能であった。
【0104】
VAcでグラフトされたPTFEミクロ粉末を水酸化カリウム濃縮溶液(メタノール/水1:1)中でPTFE−ポリビニルアルコール(PTFE−ポリ−VAl)に変性し、この形状で使用する。
【0105】
実験室用混練機中でのTPU(熱可塑性ポリウレタン)中へのPTFEミクロ粉末15質量%の導入及び試験体の製造の後、摩擦学的試験によって、グラフトされかつ変性されたPTFE−ポリ−VAl−材料はTPU中で物理的混合物と同等の動摩擦係数を有するが、本質的により高い耐摩耗性を認めることができることが判明した。化学結合した材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、比較例6からの材料と比較して40%への摩耗の低下を示していた。
【0106】
ポリ尿素樹脂混合物中へのPTFEミクロ粉末15質量%の導入の後で、及び板状の架橋及び試験体の製造の後で、摩擦学的試験によって、化学的にグラフトされたPTFE−ポリ−VAl−材料はポリ尿素中で物理的混合物と同等の動摩擦係数を有するが、より高い耐摩耗性を認めることができることが判明した。化学結合した材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、比較例6からの材料と比較して47%への摩耗の低下を示していた。
【0107】
実施例13:アクリル酸(AAc)を用いたプラズマ変性PTFEミクロ粉末の変性
試験の実施及び後処理を比較例5と同様に行ったが、但しプラズマ処理したPTFE(TF 9205、熱分解されたもの、Dyneon、酸素プラズマで変性されたもの)100gを使用する。
【0108】
精製されたPTFEミクロ粉末のIR分光試験によって、化学結合したPTFE−ポリアクリル酸−材料の検出として、PTFEに加えて、ポリアクリル酸吸収が検出された。比較例5では、純粋なPTFEのみがIRスペクトル中で検出可能であった。
【0109】
実験室用混練機中でのPA−6中への変性されたPTFEミクロ粉末15質量%の導入及び試験体の製造の後、摩擦学的試験によって、グラフトされたPTFE−ポリ−AAc−材料はPA−6中で物理的混合物と同等の動摩擦係数を有するが、より高い耐摩耗性を認めることができることが判明した。化学結合した材料を用いたブロック/リング試験の際の摩耗は、比較例5からの材料と比較して82%への低下を示していた。
【0110】
ギ酸中への溶解によるPTFE固体からの未結合のPA−6−マトリックスの分離、及びPTFE粉末の分離により、IR−スペクトル中で強度のPA吸収帯域が認められることが判明した。5回の分離操作後にPA−6を固体から分離することはできず、即ち、反応によって、PTFEポリマー粉末[PTFE−ポリ−AAc]とPA−6との配合の間に、化学結合及び相容化が生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル結合PTFEポリマー粉末において、該粉末が放射線化学的及び/又はプラズマ化学的に変性されたPTFE粉末から成り、かつ該粉末の粒子表面に、ホモポリマー、コポリマー又はターポリマーが、分散液中か又は塊状での反応を介してラジカル結合していることを特徴とする、ラジカル結合PTFEポリマー粉末。
【請求項2】
PTFE粉末が放射線化学的に変性されている、請求項1記載のラジカル結合PTFEポリマー粉末。
【請求項3】
PTFE粉末が50kGyより大きい線量で放射線化学的に変性されている、請求項1記載のラジカル結合PTFEポリマー粉末。
【請求項4】
PTFE粉末が100kGyより大きい線量で放射線化学的に変性されている、請求項3記載のラジカル結合PTFEポリマー粉末。
【請求項5】
PTFE粉末が反応物の存在下に放射線化学的に変性されている、請求項1記載のラジカル結合PTFEポリマー粉末。
【請求項6】
PTFE粉末が酸素作用下に放射線化学的に変性されている、請求項5記載のラジカル結合PTFEポリマー粉末。
【請求項7】
重合性オレフィン性不飽和モノマーとして、スチレン、アクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリル酸、(メタ)メチルアクリラート、ビニルアセタート、グリシジルメタクリラート、(メタ)アクリルアミド化合物又はその混合物を添加する、請求項1記載のラジカル結合PTFEポリマー粉末。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載のPTFEポリマー粉末の製造法において、反応性ペルフルオロアルキル−(ペルオキシ−)ラジカル中心を有するPTFE粉末を、放射線化学的及び/又はプラズマ化学的な変性の後に、分散液中か又は塊状で重合性オレフィン性不飽和モノマーの添加下に反応により変換させ、その際、反応の間に、PTFE上でのホモポリマー、コポリマー又はターポリマーへのポリマー合成反応を実現することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のPTFEポリマー粉末の製造法。
【請求項9】
反応性ペルフルオロアルキル−(ペルオキシ−)ラジカル中心を有するPTFE粉末を、放射線化学的及び/又はプラズマ化学的な変性の後に、反応性ペルフルオロアルキル−(ペルオキシ−)ラジカル中心の保持下に低温で温度処理する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
放射線化学的に変性されたPTFE粉末を使用する、請求項8記載の方法。
【請求項11】
PTFE粉末を50kGyより大きい線量で放射線化学的に変性させる、請求項8記載の方法。
【請求項12】
PTFE粉末を100kGyより大きい線量で放射線化学的に変性させる、請求項12記載の方法。
【請求項13】
PTFE粉末を反応物の存在下に放射線化学的に変性させる、請求項8記載の方法。
【請求項14】
PTFE粉末を酸素作用下に放射線化学的に変性させる、請求項14記載の方法。
【請求項15】
PTFE粉末をミクロ粉末として使用する、請求項8記載の方法。
【請求項16】
反応をオートクレーブ又は撹拌型反応器又は押出機/混練機中で実現する、請求項8記載の方法。
【請求項17】
重合性オレフィン性不飽和モノマーとして、スチレン、アクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリル酸、(メタ)メチルアクリラート、ビニルアセタート、グリシジルメタクリラート及び(メタ)アクリルアミド化合物を添加する、請求項8記載の方法。
【請求項18】
モノマーから成る混合物を使用する、請求項8記載の方法。
【請求項19】
重合性オレフィン性不飽和モノマーとしてマクロマー及び/又はオリゴマーを使用する、請求項8記載の方法。
【請求項20】
PTFEポリマー粉末に、後続の反応において他の低分子、オリゴマー及び/又はポリマー物質と反応する官能基を付与する、請求項8記載の方法。
【請求項21】
PTFEポリマー粉末を配合によりプラスチック/ポリマー中へ導入する、請求項19記載の方法。
【請求項22】
PTFEポリマー粉末をエラストマー及び/又は熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂(及び/又はそれらから成る混合物)中に導入する、請求項20記載の方法。

【公表番号】特表2007−510028(P2007−510028A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537284(P2006−537284)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052620
【国際公開番号】WO2005/042596
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(500525405)ライプニッツ−インスティチュート フュア ポリマーフォルシュング ドレスデン エーファウ (8)
【氏名又は名称原語表記】Leibniz−Institut fuer Polymerforschung Dresden e.V.
【住所又は居所原語表記】Hohe Strasse 6,D−01069 Dresden,Germany
【Fターム(参考)】