説明

ラジカル重合性樹脂組成物、ゲルコート材及び繊維強化プラスチック成形品

【課題】 スチレンモノマーを用いることなく、酸素による硬化阻害の低下と硬化物の耐水性の向上との両立を図り、更には、硬化物からスチレンモノマーおよびホルムアルデヒドの放散を抑えたラジカル重合性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 環状不飽和多塩基酸および/又はアリルエーテル基を有するグリコールを構成成分とする不飽和ポリエステル樹脂(A)とビニルエステル樹脂(B)と反応性希釈剤として引火点が70℃以上のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c−1)又は前記エチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c−1)および分子中に尿素骨格を有する化合物(c−2)とを含んでなるラジカル重合性樹脂組成物、及びこれからなるゲルコート材及びこれを成形してなるFRP成形品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性希釈剤として従来用いられていたスチレンモノマーを一切用いず、成形作業時にほとんど臭気がなく、また空気乾燥性を有し硬化性を損なうことなく、優れた耐水性が保持でき、更には、硬化物より発生するスチレンおよびホルムアルデヒドを低減できるラジカル重合性樹脂組成物、ゲルコート材及び繊維強化プラスチック成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に用いられるラジカル重合性樹脂は、繊維強化プラスチック成形品(以下FRP成形品という。)、ゲルコート材、ライニング材、木工用塗料、シーリング材、接着剤等の様々な用途に幅広く用いられている。
しかしながら、通常用いられるラジカル重合性樹脂は、反応性希釈剤としてスチレンモノマーが用いられており、成形作業時に揮散したモノマー臭気により作業者の健康を害する恐れがある。また、通常のラジカル重合性樹脂は、重合硬化の際、及び重合硬化した硬化物そのものからホルムアルデヒドが発生する場合があることが知られている。更に、微量に残存するスチレンモノマーが硬化物中から揮散するという問題もある。
【0003】
ホルムアルデヒドは、シックハウス等環境問題の原因物質とされ、建築基準法により平成15年7月からその放散量が規制されたため、硬化の際に発生するホルムアルデヒドをいかに削減させるかが、大きな課題となっている。スチレンモノマーも厚生労働省が挙げている規制対象有機物質の一つであり、今後削減することが急がれている。
これらの法規制に対応するものとして、スチレンモノマーの代わりにアクリル系モノマーを使用したラジカル重合性樹脂が開発されているが、一般にアクリルモノマーは嫌気性であり、硬化の際、空気に触れると、空気中の酸素により硬化が阻害されるという問題がある。
そこで不飽和ポリエステルの樹脂骨格に空気乾燥性(空乾性)成分を導入し、空気中の酸素による硬化阻害を低下する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。しかし、この方法は、通常得られる硬化物の耐水性が低下してしまい、空乾性と耐水性との性能を両立させるのは困難であった。
ホルムアルデヒドについては、放散量がある値より減少するまで硬化後の放置時間を長くする方法、高温で後硬化を行い硬化物中に残存するホルムアルデヒドを強制的に揮散させる方法、また硬化後にホルムアルデヒド捕捉材を用いてホルムアルデヒドの放散を抑える方法等が考えられるが、実質的に有効な方法は、未だ見いだされていないのが実状であった。
【特許文献1】特開2003−82038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、通常用いられるスチレンモノマーを用いることなく、酸素による硬化阻害の低下と硬化物の耐水性の向上との両立を図り、更には、硬化物からスチレンモノマーおよびホルムアルデヒドの放散を抑えたラジカル重合性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの課題について鋭意研究を行った結果、樹脂骨格に空乾性成分を導入した不飽和ポリエステル樹脂、反応性希釈剤として特定の引火点を有する不飽和単量体、さらに必要により尿素骨格を有する化合物を併用することにより、酸素による硬化阻害を低減でき、かつ耐水性に優れた硬化物が得られ、さらにホルムアルデヒドの放散を抑えることもできることを見いだすに及んで、本発明を完成するに至ったものである。
【0006】
即ち、本発明は、環状不飽和多塩基酸および/又はアリルエーテル基を有するグリコールを構成成分とする不飽和ポリエステル樹脂(A)とビニルエステル樹脂(B)と反応性希釈剤として引火点が70℃以上のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c−1)又は前記エチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c−1)および分子中に尿素骨格を有する化合物(c−2)とを含んでなるラジカル重合性樹脂組成物、及びこれからなるゲルコート材及びこれを成形してなるFRP成形品を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、酸素による硬化阻害が生ぜず、耐水性に優れた硬化物が得られ、スチレンおよびホルムアルデヒドの放散を抑えたゲルコート材及びFRP成形品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明を詳細に説明する。
本発明の環状不飽和多塩基酸および/又はアリルエーテル基を有するグリコールを構成成分とする不飽和ポリエステル樹脂は、必須の空乾性付与成分である環状不飽和多塩基酸、またはアリルエーテル基を有するグリコールをそれぞれ単独で用いるか、又は前記不飽和多塩酸とグリコールとを併用して得られるものである。
またその他の空乾性付与成分も本発明の効果を損なわない範囲で単量体として併用することができる。その他の空乾性付与成分としては、例えば、ジシクロペンタジエン、乾性油としてアマニ油及び桐油などが挙げられる。
【0009】
アリルエーテル基を有するグリコールとしては、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トロプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル等がある。
【0010】
環状不飽和多塩基酸としては、分子骨格中に二重結合を有し、そのβ位にプロトンを有する所謂アリル水素を有する構造であれば、特に制限されない。例えばテトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、シス−3−メチル−4−シクロヘキセン−シス−1,2−ジカルボン酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
空乾性成分を含有する不飽和ポリエステルを調製するにあたっては、原料として前記の化合物のほか、α,β−不飽和二塩基酸、飽和二塩基酸、多価アルコール等を用いることができる。
α,β−不飽和二塩基酸としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等を挙げることができる。
飽和二塩基酸としては、例えばフタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン2酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、またこれらのジアルキルエステル等を挙げることができる。
【0011】
また多価アルコ−ルとしては、例えばエチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル、1,3−ブタンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、水素化ビスフェノ−ルA、1,4−ブタンジオ−ル、ビスフェノ−ルAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、1,3−プロパンジオ−ル、1,2−シクロヘキサングリコ−ル、1,3−シクロヘキサングリコ−ル、1,4−シクロヘキサングリコ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、パラキシレングリコ−ル、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオ−ル、2,6−デカリングリコ−ル、2,7−デカリングリコ−ル等を挙げることができる。
【0012】
前記不飽和ポリエステル樹脂(A)は、後記するビニルエステル樹脂(B)100重量部に対し、5〜100重量部の範囲で含有することが好ましい。
前記本発明に使用する空乾性を有する不飽和ポリエステル樹脂のほか、非空乾性の不飽和ポリエステル、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0013】
本発明に用いるビニルエステル樹脂は、エポキシ樹脂に不飽和一塩基酸を反応させて得られるものである。
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノールとエピクロルヒドリンとの重縮合体およびそれをハロゲン化したビスフェノール型エポキシ樹脂、多価アルコール、ダイマー酸、トリマー酸およびノボラック型フェノール樹脂等にエピクロルヒドリンを反応させてエポキシ基を導入したノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂より選ばれる一種以上のエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
不飽和一塩基酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、ソルビン酸、モノメチルマレエート、モノプロピルマレエート、モノブチルマレエート、モノ(2ーエチルヘキシル)マレエート等が挙げられる。
【0014】
ビニルエステル樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸とから得られるものが好ましい。具体的には、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド付加型エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加型エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート、フェノールノボラックまたはクレゾールノボラックとエピクロルヒドリンまたはメチルエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂の(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのうち、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレートは、得られるラジカル重合性樹脂組成物の粘度を低くするため、特に好ましい。
かかるビニルエステル樹脂の数平均分子量としては、好ましくは、450〜2,500、特に好ましくは500〜2,200なる範囲内である。
なお、上記したエポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応は、好ましくは、60〜140℃、特に好ましくは、80〜120℃なる範囲内の温度において、エステル化触媒を用いて行われる。
【0015】
かかるエステル化触媒としては、公知慣用の化合物が、そのまま使用できる。例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリンもしくはジアザビシクロオクタンの如き、各種の3級アミン類;またはジエチルアミン塩酸塩などが挙げられる。
【0016】
また、本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートを含むことができる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオールとポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリル化合物とを反応させることにより得ることができる。
ポリオールとしては、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物等のポリエーテルポリオール、ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0017】
ポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート及びその異性体又は異性体の混合物(以下TDIと略す)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。市販品としては、バーノックDー750、クリスボンNX(大日本インキ化学工業(株)製品)、デスモジュールL(住友バイエル(株)社製品)、コロネートL(日本ポリウレタン社製品)、タケネートD102(武田薬品工業(株)社製品)、イソネート143L(三菱化学(株)社製)等を挙げることができる。これらを単独又は2種以上で使用することができる。上記ポリイソシアネートのうちジイソシアネートが好ましく、TDIが特に好ましい。
【0018】
水酸基含有(メタ)アクリル化合物としては、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の様な水酸基を2個有するアルコールのモノ(メタ)アクリレート類;α−オレフィンエポキサイドと(メタ)アクリル酸の付加物、カルボン酸グリシジルエステルと(メタ)アクリル酸の付加物;トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の様な3個以上の水酸基を有するアルコールの部分(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0019】
前記ウレタン(メタ)アクリレートは、具体的には、先ずポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとを、好ましくは数平均分子量500〜30000、特に好ましくは700〜5000になるようにNCO/OH=2〜1.5で反応させ、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを生成し、次いでそれに水酸基含有アクリル化合物を該プレポリマーのイソシアネート基に対して水酸基がほぼ当量となるように反応させることにより得ることができる。
【0020】
また別の方法としては、まず水酸基含有アクリル化合物とポリイソシアネートとを反応させ、次いで得られたイソシアネート基含有化合物とポリエーテルポリオールとを反応させる方法が挙げられる。得られるウレタン(メタ)アクリレートは、数平均分子量が500〜30000であることが好ましく、700〜5000であることが特に好ましい。
【0021】
また、ウレタン(メタ)アクリレートの製造において、水酸基含有(メタ)アクリル化合物の一部を、本発明の効果を損なわない程度の範囲で水酸基含有アリールエーテルや、高級アルコール等で置換しても良い。
【0022】
水酸基含有アリールエーテル化合物としては、公知慣用のものが使用できるが、うちでも代表的なものには、エチレングリコールモノアリールエーテル、ジエチレングリコールモノアリールエーテル、トリエチレングリコールモノアリールエーテル、ポリエチレングリコールモノアリールエーテル、プロピレングリコールモノアリールエーテル、ジプロピレングリコールモノアリールエーテル、トリプロピレングリコールモノアリールエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリールエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリールエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリールエーテル、ヘキシレングリコールモノアリールエーテル、オクチレングリコールモノアリールエーテル、トリメチロールプロパンジアリールエーテル、グリセリンジアリールエーテル、ペンタエリスリトールトリアリールエーテル等の多価アルコール類のアリールエーテル化合物等が挙げられる。これらのうち、水酸基を1個有するアリールエーテル化合物が好ましい。
【0023】
また高級アルコールとしては、公知慣用のものが使用できるが、中でも代表的なものは、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。
【0024】
本発明は、反応性希釈剤として引火点70℃以上のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c−1)を用いる。かかる単量体(c−1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、空乾性を有する不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂に使用される、所謂反応性希釈モノマーである。引火点が70℃に満たないと、臭気が強いため好ましくない。
具体的に一例を挙げれば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの単量体は、単独でも2種類以上組み合わせて使用しても良い。
【0025】
これらのうち、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート及びジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートのいずれかの化合物が好ましい。
かかる単量体の使用量は特に制限されないが、ラジカル重合性樹脂組成物中、30〜60重量%であることが好ましい。
【0026】
本発明に使用する分子中に尿素結合を有する化合物(c−2)は、分子骨格中にプロトン性尿素結合を有する化合物であれば、特に制限されない。例えば尿素、モノメチル尿素、モノメチロール尿素、ジメチロール尿素、ジメチル尿素、ジフェニル尿素、ポリメチロール尿素、メチレン尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、アルコシキメチル尿素、チオ尿素等が挙げられる。これらのうち、ホルムアルデヒド捕捉能力に優れ、硬化性を阻害せず、樹脂への溶解性が優れる点で特にエチレン尿素が好ましい。
尿素結合を有する化合物(c−2)の使用量は、ラジカル重合性樹脂組成物の硬化性を損なわない範囲であれば特に制限されない。ラジカル重合性樹脂組成物100重量部に対し、0.01〜10重量部の範囲で用いることが好ましい。かかる範囲で用いれば、ホルムアルデヒド捕捉能力が十分であり、得られる硬化物の性能がよく、硬化性に悪影響を及ぼすこともない。
【0027】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物には、通常硬化剤、すなわちラジカル重合開始剤、及び硬化促進剤、すなわちラジカル重合促進剤が添加される。
かかる硬化剤としては、熱硬化剤や光硬化剤が挙げられる。熱硬化剤としては、有機過酸化物が挙げられ、例えばジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等、公知公用のものが挙げられる。熱硬化剤の添加量は、本発明の目的を達成することのできる範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは本発明に用いられる樹脂の合計量100重量部に対して0.5〜5重量部であり、かかる範囲で使用することで可使時間、物性等の優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0028】
かかる光硬化剤としては、例としてベンゾインアルキルエーテルのようなベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン、ベンジル、メチルオルソベンゾイルベンゾエートなどのベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン系、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系等が挙げられる。光硬化剤の使用量は、好ましくは本発明に用いられる樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜3重量部である。
【0029】
また、硬化促進剤としては、例えばナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等金属石鹸類、バナジウムアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート類、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4-(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン、N,N−置換−p−トルイジン、4-(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類が挙げられる。これらの硬化促進剤のうち、アミン類、金属石鹸系類が好ましい。これらの硬化促進剤は、単独又は2種以上の組み合わせで使用しても良い。またこれらの硬化促進剤は、予め樹脂に添加しておいても良いし、使用時に添加しても良い。硬化促進剤の添加量は、本発明の目的を達成することのできる範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは本発明に用いられる樹脂の合計量100重量部に対して0.1〜5重量部である。
【0030】
さらに本発明のラジカル重合性樹脂組成物の硬化速度を調整するため、重合禁止剤などを使用することができる。
重合禁止剤としては、例えばトリハイドロベンゼン、トルハイドロキノン、14−ナフトキノン、パラベンゾキノン、ハイドロキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等を挙げることができる。重合禁止剤の使用量は、本発明に用いられる樹脂に対して10〜1000ppm添加するのが好ましく、50〜200ppm添加するのがさらに好ましい。かかる範囲で使用することで貯蔵安定性、作業性、強度発現性の優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0031】
さらに、本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、各種添加剤、例えば充填剤、紫外線吸収剤、顔料、増粘剤、低収縮化剤、老化防止剤、可塑剤、骨材、難燃剤、安定剤、繊維強化材等を含むことができる。
【0032】
充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、硫酸カルシウム等が挙げられる。これらの市販品としては、NSシリーズ(炭酸カルシウム、日東粉化(株)社製)、ハイジライトHシリーズ(水酸化アルミニウム、昭和電工(株)社製)、アルミナ(住友化学工業(株)社製)、フランフリンファイバー(硫酸カルシウム、UNITED STATES GYPSUM COMPANY社製)等が挙げられる。
【0033】
前記繊維強化材としては、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、カーボン繊維、金属繊維等が挙げられる。また、繊維の形態としては、繊維による補強効果が得られるものであれば特に限定するものではないが、例えばクロス、ロービングクロス、ロービングをカットしたストランド、チョップドストランドマット、ロービングクロスとチョップドストランドを縫い合わせたペアマット等が挙げられる。
本発明のゲルコート材は、本発明のラジカル重合性樹脂組成物を用いて得られるものである。着色剤を添加して用いることにより、着色ゲルコートとして、成形品の加色性、意匠性を付与することができる。
着色剤としては、従来公知の有機、及び無機の染顔料がいずれも使用できるが、なかでも耐熱性に優れ、かつ該樹脂組成物の硬化を著しく妨害することのないものが好ましい。
色は、単一色、透明、半透明、部分的に透明、部分的に半透明であってもよいし、又、着色、デザイン、柄等の加飾手段の有無については特に限定するものではない。
【0034】
本発明のゲルコート材には、タレ止めとしてのチキソ付与材を含む。
チキソ付与材は、ラジカル重合性樹脂組成物100重量部に対し、1〜6重量部用いるものであり、好ましくは、2〜4重量部である。チキソ付与材の量が6重量部を越えると、増粘によりスプレーによる吹きつけが困難となり、1重量部未満であると、スプレーにて縦面に吹き付けた時、たれの発生や、レベリング不良が発生し、均一厚みの中間層が得られず、ゲルコート面の表面平滑性を損なう可能性がある。
チキソ付与材としては、樹脂にチキソ性を付与するものであれば特に制限されるものではない。例えばヒュームドシリカで代表されるシラノール基を有する酸化珪素(SiO)粉末、スメクタイト、硫酸カルシウムウィスカー、無機ベントナイト化合物等を挙げることができる。チキソ付与材の形状は、チキソ性を与える形状のものであれば良く、特に制限されるものではない。
【0035】
チキソ付与材の市販品としては、レオロシールQSシリーズ(ヒュームドシリカ、(株)トクヤマ製)、アエロジルシリーズ(ヒュームドシリカ、日本アエロジル(株)社製)、BENATHIXシリーズ(ヒュームドシリカ、ウィルバーエリス社製、CABOSILシリーズ(ヒュームドシリカ、CABOT社製)、HDKシリーズ(ヒュームドシリカ、WACKER社製)等が使用できる。
【0036】
また、本発明のゲルコート材は、成形品の上塗り塗料として用いることもできる。
本発明のゲルコート材には、その他充填剤、抗菌剤等を混合することができる。
充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、ガラス、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硅石等の粉末、及び有機系(ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、又はこれら2種以上の共重合物等)、無機系(ガラス、シリカ、セラミック等)の中空充填材等が挙げられ、特に制限されるものではない。
抗菌剤としては、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀が挙げられ、銅、亜鉛、錫等をゼオライト、シリカゲル等に坦持させて用いることもできる。また有機系抗菌剤も用いることもできる。
【0037】
また本発明のゲルコート材の粘度は、好ましくは5〜100ポイズ、より好ましくは粘度10〜40ポイズ(JIS−K−6901 4、5)である。またそのチキソ性は、好ましくは2.0〜9.0、より好ましくは4.0〜7.0(JIS−K−6901 4、5)である。粘度及びチキソ性がこの範囲にあれば、スプレーによる吹きつけが容易になる。
【0038】
本発明のFRP成形品は、前記のゲルコート材を用いることにより、加色性、高級外観を付与したゲルコート付きFRP成形品を得ることができる。
FRP成形品のゲルコート層は、型内に、通常硬化促進剤および硬化剤を配合したゲルコート材をスプレーで吹き付けることにより形成される。この型内には、必要により予め離型剤を塗布する。形成された硬化皮膜の厚さは、好ましくは0.1〜1.0mm、より好ましくは0.3〜0.5mmである。該ゲルコートには、場合によって硬化遅延剤を併用することができる。
【0039】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物を用いてFRP成形品を得るための方法は、特に制限されないが、例えばハンドレイアップ、スプレーアップ成形、レジントランスファーモールディング(RTM)成形、連続成形、引き抜き成形、注型成形等の方法が挙げられる。これらの方法は、所望の設計強度、弾性率が得られるまで、繊維強化材等で補強し用いることができる。
【0040】
具体的には、ハンドレイアップ法は、繊維長が約2インチのチョップドストランドマット及び又はロービングクロス等に、スプレーアップ成形法は、約1インチのチョップドストランド等の繊維強化材に硬化促進剤、硬化剤を配合したラジカル硬化性不飽和樹脂の含浸脱泡作業を繰り返し、常温あるいは加熱により硬化させるものである。また、RTM成形は、プリフォームガラスマット、ロービングクロス等をあらかじめ型にチャージし、硬化促進剤、硬化剤を配合したラジカル重合性樹脂組成物を注入し成形するものである。連続成形法とは、キャリアフィルム上にラジカル硬化剤を配合したラジカル重合性樹脂組成物を塗布しチョップドストランドを供給した後、キャリアフィルムで樹脂を覆い、含浸、脱泡し硬化炉へ連続的に送り硬化させ成形させる方法である。引き抜き成形法とは、ラジカル硬化剤を配合したラジカル重合性樹脂組成物を含浸したガラス等の繊維基材を所望の形状の金型に通過させ、硬化、成形しながら連続的に所謂、引き抜く成形方法である。
これら成形法は特に制限されないが、本発明のチキソ付与材を含むラジカル重合性樹脂組成物を用い、ハンドレイアップ、スプレーアップ成形による積層成形の方法が好ましい。
【0041】
ハンドレーアップ、スプレーアップ成形に用いられる所謂、積層樹脂について以下に具体的な応用例を示す。本発明のラジカル硬化性不飽和単量体含有ラジカル重合性樹脂100重量部に対し、たれ止めにチキソ付与材0.1〜5重量部混合してチキソ性を付与させ、積層用樹脂組成物として用いることができる。チキソ付与材として、該樹脂にチキソ性を与える形状のものであれば良く、特に制限されるものではない。チキソ付与材の量は、ラジカル硬化性樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜5重量部であり、チキソ材の量が5重量部を越えると、増粘により成形性が劣り、0.1重量部未満であると、たれの発生等が発生する可能性がある。チキソ材の具体例としては、前記のものが挙げられる。
積層樹脂は、更に必要により顔料を添加し着色して用いることもでき、単一色、透明、半透明、部分的に透明、部分的に半透明であってもよいし、又、着色、デザイン、柄等の加飾手段の有無については特に限定するものではない。
【0042】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物を用いて得られるFRP成形品は、例えば室内成形品、トップコート、接着剤、ボート、自動車部品、自動2輪車部品、屋内部材、バスタブ、防水パン、キッチンカウンター、洗面カウンター、洗面化粧台、各種人造大理石成形品、セパレート板、波板、平板等が挙げられ、特に製品、用途、を限定するものではない。
【実施例】
【0043】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、本文に「部」とあるのは、重量部を示す。
【0044】
(参考例1) ビニルエステル樹脂の調製
温度計、攪拌機、ガス導入口、および還流冷却器を備えた5リットル四ツ口フラスコにエピクロン830(大日本インキ化学工業(株)製エポキシ樹脂:エピクロルヒドリンとビスフェノールFの反応物:エポキシ当量180、数平均分子量344)2970部、メタクリル酸1456部、重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール1.55部、エポキシ化触媒としてトリエチルアミン13.3部を仕込み、窒素/空気(体積流量比1/1)混合気流下90℃まで昇温し、2時間反応させた。次いで、反応温度を105℃まで昇温させ、反応を続け、酸価3.3、数平均分子量1340のビニルエステル樹脂(1)を得た。
(参考例2) 空気乾燥性不飽和ポリエステルの調製
窒素ガス導入管、還流コンデンサ、攪拌機を備えた2Lのガラス製フラスコにトリエチレングリコール231部、ジエチレングリコール81部、無水マレイン酸332部、無水フタル酸119部、メチルテトラヒドロフタル酸(キュラシッド)191部、重合禁止剤としてトルハイドロキノンを仕込み、窒素気流下に、加熱を開始した。内温180℃にて、常法にて脱水縮合反応を行い、ガードナー粘度がK〜L、酸価が15〜35KOHmg/g(ソリッド/スチレン=70/30重量比率で希釈しソリッドの縮合度を確認)になったところで、P−ターシャリブチルカテコールを添加した。さらに150℃まで冷却し、空乾性不飽和ポリエステル樹脂(2)を得た。
【0045】
(参考例3) 不飽和ポリエステルの調製
窒素ガス導入管、還流コンデンサ、攪拌機を備えた2Lのガラス製フラスコに、プロピレングリコール2.0モル、無水マレイン酸1.0モル、無水フタル酸1.0モルを仕込み、窒素気流下に、加熱を開始した。内温200℃にて、常法にて脱水縮合反応を行い、ガードナー粘度がQ〜R(ソリッド/スチレン=70/30重量比率で希釈しソリッドの縮合度を確認)、酸価が24KOHmg/gになったところで、180℃まで冷却し、トルハイドロキノン250ppm、ターシャリブチルカテコール50ppmを添加した。さらに150℃まで冷却し、不飽和ポリエステル樹脂(3)を得た。
【0046】
(実施例1)
参考例1で得られたビニルエステル樹脂(1)40部と参考例2で得られた空乾性不飽和ポリエステル樹脂(2)10部を、メタクリルモノマーBG(1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、新中村化学社製、引火点(クリーブランド)100℃以上)を30部とメタクリルモノマーFA512MT(ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、日立化成社製、引火点(クリーブランド)100℃以上)30部添加し、予め加熱し溶解し易くした上記樹脂(1)および(2)に、上記メタクリルモノマーにて希釈溶解させラジカル重合性樹脂組成物(1)を得た。このラジカル重合性樹脂組成物(1)100部に、硬化促進剤として6%ナフテン酸コバルト(大日本インキ化学製)0.5部、ジメチルアニリン0.2部、チキソ付与材としてアエロジル#200(日本アエロジル製)1部、消泡剤、禁止剤を添加調合し、チキソ性を付与された樹脂組成物(A)を得た。ラジカル硬化剤として、パーメックN(日本油脂(株)製)1.0部を配合し、450g/m2チョップドストランドマット(日東紡(株)製)を用い、ガラス板の上に、上記ガラスマットを置き、その上からチキソ付与された樹脂組成物をかけ、含浸ローラーを用い、チョップドストランドマットに付着している気泡を取り除き、所謂ハンドレイアップ積層を行った。その上に、同様にチョップドストランドガラスマットを置き、この作業を繰り返し、ガラスマットが3層となる様、ハンドレイアップ積層成形を行い、硬化せしめて、厚みが3mmからなるFRP成形品を得た。
(実施例2)
実施例1で得られた樹脂組成物(A)100部にエチレン尿素を0.3部加えた後、加熱溶解させ、樹脂組成物(B)を得た。この樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行い、FRP成形品を得た。
(比較例1)
参考例3で得られた不飽和ポリエステル樹脂(3)65部を、スチレン35部にて希釈した以外は、実施例1と同様に操作を行い、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物は、スチレン(セタ密閉式引火点31℃)に由来する刺激臭が認められた。
この樹脂組成物を硬化せしめて、積層板および注型板を作成した。積層板からのホルムアルデヒド揮散量が、0.35mg/L以上確認された。また、スチレン放散速度は、スチレンに由来するピークが大きすぎ、検出オーバーであった。
(比較例2)
実施例1の空乾性ポリエステル樹脂を用いない以外は、実施例1と同様操作を行い、続いて積層板、注型板を作成した。
得られた積層板は、8時間後も表面がべとべとしていた。
[測定方法及び評価基準]
このラジカル重合性樹脂組成物及びこれを用いて得られる成形品について、空気乾燥性、ホルムアルデヒド放散量、スチレン揮散量及び耐水性について測定し評価した。測定方法及び評価基準は以下のとおりである。実施例1〜2および比較例1〜2の結果は、表−1に示す。
【0047】
<空気乾燥性>
空気乾燥性の測定は、上記積層板を作成する際、脱泡処理後、放置し、ゲル化し、硬化した後、積層板表面を指触し、8時間後の乾燥状態を確認して行った。
容量100mlのデスカップに各実施例で得られたラジカル重合性樹脂組成物を50g計量し、6%ナフテン酸コバルトを添加して25℃温度に調整した後、パーメックN[メチルエチルケトンパーオキサイド(日本油脂社製)]を混合添加し、これを25℃の恒温槽に浸漬し、ゲルが発生して攪拌棒から樹脂が糸切れ状態になるまでの時間を測定し、この時間をゲルタイムとした。
通常の樹脂である比較例1でのゲルタイムに比較し、著しいゲルタイムの延長あるいは硬化後の硬化物の状態変化がないかを確認した。
【0048】
<ホルムアルデヒド放散量評価>
前記実施例で得られたFRP成形品について、室温(23℃)、湿度50%の環境試験室内で全ての測定を行った。
前記実施例で得られたFRP成形品(大きさは150mm×150mm×3mmに切断したもの)において、ガラス板の上に積層した後、室温で24時間放置し、7日後のホルムアルデヒドの揮散量を測定した。測定法は、JIS K 5601−4−1デシケーター法に準じて行い、積層板の表面積により、測定値を除し、mg/リッターの単位として算出し比較を行った。
【0049】
<スチレン揮散量評価>
前記実施例で得られたFRP成形品(大きさは165mm×165mm×3mmに切断したもの)において、ガラス板の上に積層した後、室温で24時間放置し、7日後のスチレンの放散速度を測定した。成形品からのスチレンの放散速度はJISA1901の小型チャンバー法を用い測定した。放散速度は、μg/(m・h)により評価した。
【0050】
<耐水性評価>
前記実施例で得られたラジカル重合性樹脂組成物を用い、ラジカル硬化剤としてパーメックN1%添加混合した。
厚み3mmの樹脂注型板の作成は、2枚のガラス板(30cm×30cm)を用いて、樹脂がこぼれない様に厚さ3mmのスペーサー枠を挟み込み用いて、ガラス板の間に、上記樹脂組成物を流し込み、常温にて硬化させた。この際硬化した後、120℃2時間後硬化を行った。
耐煮沸性は、前記注型板を98℃の熱水中に浸漬し、クラックが発生するまでの時間を目視にて評価測定した。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状不飽和多塩基酸および/又はアリルエーテル基を有するグリコールを構成成分とする不飽和ポリエステル樹脂(A)とビニルエステル樹脂(B)と引火点が70℃以上のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c−1)又は前記エチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c−1)および分子中に尿素結合を有する化合物(c−2)とを含んでなるラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項2】
前記分子中に尿素結合を有する化合物(c−2)が、エチレン尿素である請求項1記載のラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項3】
前記引火点が70℃以上のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(c−1)が、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート及びジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートからなる群から選ばれる1種以上の化合物である請求項1又は2記載のラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項4】
前記環状不飽和多塩基酸および/又はアリルエーテル基を有するグリコールを構成成分とする不飽和ポリエステル樹脂(A)が、前記ビニルエステル樹脂(B)100重量部に対し、5〜50重量部の範囲で含有してなる請求項1〜3のいずれか1項に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のラジカル重合性樹脂組成物からなるゲルコート材。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のラジカル重合性樹脂組成物と繊維強化材とを成形してなる繊維強化プラスチック成形品。

【公開番号】特開2006−152104(P2006−152104A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343876(P2004−343876)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】