説明

ラダーマクラギ

【課題】主として継材の引抜き強度を必要に応じて高めることのできるラダーマクラギを提供する。
【解決手段】縦梁1のコンクリート内に継材2の端部2aを定着することにより縦梁1と継材2を梯子状に一体に形成する。継材2の端部2aに定着金物5を突設する。定着金物5は棒状に形成し、継材2端部2aの貫通孔2bに貫通させ、縦梁1のコンクリート内に埋設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車などの鉄道軌道に用いられるラダーマクラギに関し、主として縦梁と継材との結合部における継材の引抜き抵抗力を容易に高められるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
一般にラダーマクラギは、例えば図4(a)に図示するように、プレストレストコンクリート製の縦梁1,1と複数の鋼管製の継材2とを縦梁1のコンクリートの打ち込みにより梯子状に一体的に構成された混合剛結構造を採用しており、従来の横マクラギ構造に比べて剛性が高く、特に鉄道荷重と鉄道横座屈荷重に対してきわめて高い安全性を有するとされ、電車などの軌道構造として近年広く用いられている。
【0003】
ところで、従来、縦梁1と継材2との結合は、例えば図4(b),(c)に図示するように、継材2の端部2aを縦梁1の主補強鋼材として配置されたPC鋼線3の間に挿入し、継材端部2aの周囲に補強筋4などを配筋した上で、縦梁1のコンクリートを打設することにより一体化されていた。
【0004】
また特に、継材2端部2aの引抜き抵抗力を高めるべく、端部2aをプレスする等して扁平に形成し、継材2に作用する引抜き力はコンクリートの端部2aに対する付着力を介して縦梁2に伝えられるものとして設計されていた。
【0005】
【特許文献1】特許第3025642号
【特許文献2】特開平11−247102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年、ラダーマクラギに脱線時の逸脱防止装置の付加機能を高めることが望まれ、逸脱防止装置付きのラダーマクラギの開発において、特に継材の引抜き強度を高める必要があった。
【0007】
その手段として、継材の端部を扁平に形成することは有効な方法であるが、引抜き強度を向上させることは困難であった。
【0008】
本発明はこの要望に応えてなされたもので、継材の端部を扁平に形成することなく、継材に必要とされる引抜き強度を容易に向上させることを可能にしたラダーマクラギを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のラダーマクラギは、縦梁のコンクリート内に継材の端部を定着することにより前記縦梁と継材を梯子状に一体に形成してなるラダーマクラギにおいて、前記継材の端部に定着金物が突設され、当該定着金物は前記継材を貫通し、前記縦梁のコンクリート内に埋設されてなることを特徴とするものである。
【0010】
本発明は、継材の端部に貫通孔を空ける以外は特に加工を行う必要がなく、鉄筋などからなる棒状の定着金物を貫通孔に貫通させ、そのまま継材の端部と共に縦梁のコンクリート内に埋め込むだけで継材の端部を縦梁と一体的に結合できるようにしたものである。
【0011】
この場合の継材には鋼管からなる丸形継材、角形鋼管からなる角形継材、さらにはH形鋼などの形鋼からなる継材を用いることができる。また、定着金物には丸鋼や異形鉄筋などの鋼製の棒状部材を用いることができ、また鉄筋の径や本数を適宜変更することにより継材の引抜き強度を自由に設定することができる。なお、縦梁はプレストレストコンクリート構造またはRC構造のいずれでもよい。
【0012】
請求項2記載のラダーマクラギは、縦梁のコンクリート内に継材の端部を定着することにより前記縦梁と継材を梯子状に一体に形成してなるラダーマクラギにおいて、前記継材の端部に定着金物が突設され、当該定着金物の一端側は前記継材に当該継材内に充填された固化材によって定着され、他端側に設けられた定着部が前記縦梁のコンクリート内に埋設されてなることを特徴とする。
【0013】
本発明は継材の加工を一切なくし、また、定着金物も一本の鉄筋を曲げ加工する等して現地で容易に調達できるようにしたものである。さらに、定着金物は継材の端部に挿入した後からコンクリートやモルタル等の固化材を充填することにより容易に定着できるようにしたものである。
【0014】
なお、この場合の継材には鋼管または角形鋼管からなる継材を用いるのがよい。また、定着部は定着金物として曲げ加工された鉄筋の一端側をさらにU字状またはL字状(フック)に曲げたり、あるいは一端側に定着プレートを取り付ける等の方法により容易に形成することができる。
【0015】
請求項3記載のラダーマクラギは、請求項1または2記載のラダーマクラギにおいて、定着金物は複数突設してあることを特徴とするものである。定着金物を複数取り付ける場合、継材の軸方向に間隔をおいて継材の軸直角方向に貫通させて取り付けてもよく、あるいは複数段に取り付けてもよい。さらに、継材の端部に対角線状に貫通させて取り付けてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、縦梁のコンクリート内に継材の端部を定着することにより前記縦梁と継材を梯子状に一体に形成してなるラダーマクラギにおいて、特に継材の端部は当該継材の端部に突設された定着金物を介して縦梁のコンクリート内に定着されているので、継材端部の引抜き抵抗力はきわめて大きい。
【0017】
また、定着金物の径や数量を増やすことにより、引抜き抵抗力を必要な強度に容易に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1〜図3は、本発明のラダーマクラギの一例を示し、図1,2において、符号1,1は2本平行に配置された縦梁であり、縦梁1はプレストレストコンクリート構造によって形成されている。
【0019】
符号2は縦梁1,1間に当該縦梁1,1の軸方向に所定間隔おいて配置された継材であり、継材2は剛性の高い角形鋼管から形成され、その両端部2a,2aは縦梁1のコンクリート内に所定長さ定着されている。
【0020】
継材2の端部2aには主として継材2の引抜き抵抗部材として定着金物5が突設されている。定着金物5は継材2の端部2aに形成された貫通孔2bを縦梁1の軸方向に水平に貫通し、その両端5a,5aは縦梁1のコンクリート内に所定長さ定着されている。
【0021】
なお、定着金物5は鉄筋などの棒状部材から形成され、また継材2内にはその全長にわたってコンクリートまたはモルタル等の固化材6が充填されている。
【0022】
図3(a)〜(c)は定着金物の変形例を示し、定着金物7は一端側にU字状に形成されたアンカー部7a、他端側にU字状に形成された一組の定着部(以下「フック」という)7b,7bをそれぞれ有し、アンカー部7aは継材2内に挿入され、後から継材2内に充填されたモルタルまたはコンクリート等の固化材6によって継材2の端部に突設されている。また、一組のフック7b,7bは継材2の端部と共に縦梁1のコンクリート内に定着されている。
【0023】
なお、図3(a)はアンカー部7aを継材2のほぼ中央の深い位置まで挿入した例を示し、一方図3(b)はアンカー部7aを継材2端部のごく浅い位置に挿入した例を示し、いずれを選択してもよい。
【0024】
このような構成において、各継材2の両端2a,2aは縦梁1,1のコンクリート内に定着金物5または7を介して一体的に結合されている。この場合、継材2に作用する引抜き力は、定着金物5および7のせん断力によって両側の縦梁1,1に伝えられる。そして、定着金物5および7の径や数量を増やすことにより引抜き強度を高めることができる。
【0025】
表1(a)は、本発明のラダーマクラギにおける継材と従来のラダーマクラギにおける継材の引抜き強度試験の結果を示したものである。継材には角形継材を用い、定着金物にはD16,D19の異形鉄筋から形成されたものを用いた。
【0026】
【表1】

【0027】
表1(a)において、〔A〕は、図4(b)に図示する従来のラダーマクラギにおける継材の供試体を示し、〔B〕は、本発明の図3(b)に図示するラダーマクラギにおける継材の供試体を示し、そして〔C〕は、本発明の図2(b)に図示するラダーマクラギにおける継材の供試体を示したものである。
【0028】
引抜き試験は各供試体についてそれぞれ2回行い、それぞれの平均値を比較した。その結果は、表1(b)に示した計算式による推定引抜き耐力値とほぼ一致し、本発明のラダーマクラギにおける継材の引抜き強度が、従来の継材の引抜き強度と同等以上であることが確認された。また、本発明のラダーマクラギにおける継材の引抜き強度は、定着金物の径を変更することで容易に向上させることが可能であることも確認された。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ラダーマクラギの一例を示し、(a)は一部斜視図、(b)は平面図である。
【図2】縦梁と継材との結合部を示し、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【図3】縦梁と継材との結合部を示し、(a) 、(b)は平面図、(c)は縦断面図である。
【図4】従来のラダーマクラギの一例を示し、(a)はその一部平面図、(b)は縦梁と継材との結合部を示す平面図、(c)は縦梁と継材との結合部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 縦梁
2 継材
3 PC鋼線
4 補強筋
5 定着金物
6 固化材
7 定着金物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦梁のコンクリート内に継材の端部を定着することにより前記縦梁と継材を梯子状に一体に形成してなるラダーマクラギにおいて、前記継材の端部に定着金物が突設され、当該定着金物は前記継材を貫通し、前記縦梁のコンクリート内に埋設されてなることを特徴とするラダーマクラギ。
【請求項2】
縦梁のコンクリート内に継材の端部を定着することにより前記縦梁と継材を梯子状に一体に形成してなるラダーマクラギにおいて、前記継材の端部に定着金物が突設され、当該定着金物の一端側は前記継材に当該継材内に充填された固化材によって定着され、他端側に突設された定着部が前記縦梁のコンクリート内に埋設されてなることを特徴とするラダーマクラギ。
【請求項3】
定着金物は複数突設してあることを特徴とする請求項1または2記載のラダーマクラギ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−184863(P2008−184863A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21151(P2007−21151)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(591121111)株式会社安部日鋼工業 (38)