説明

ラックキャビネット及び冷却方法

【課題】 高性能、薄型化が進むサーバシステムへの構造的な変更を伴わず、ラックキャビネットへ搭載したラックキャビネットシステムとして、冷却効果を高める。
【解決手段】ラックマウントサーバシステムを搭載した冷却機構付きラックキャビネットであって、 ラック本体10内部の空間を前面と背面に分離する分離ウォール2と、ラック本体10に搭載されて前記分離ウォール2により分離された一方側から吸気し、前記分離ウォール2により分離された他方側に冷却して排気する冷却装置1と、ラック本体10内部に騒音収集材3とを設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバシステムの冷却技術に係り、特にラックキャビネットの空気冷却効率の向上に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバシステムで使用されるプロセッサは、高性能化に伴ってデュアルコアやクワッドコア、更に大容量のキャッシュを備える傾向にあり、発熱量が増大する一方である。より一層の冷却能力を高める必要がある。
そこで、ラック内に収納したサーバを効率良く、均一に冷却できるラックマウントサーバシステムの冷却装置及び冷却方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
このサ−バラックの冷却装置及び冷却方法は、サーバが装着されていないマウントアングルの前面に仕切り板を装着して冷気通路を形成することを特徴としている。このことにより、サーバから排出される暖気の冷気通路への逆流を防いでいる。
【0003】
【特許文献1】特開2006−140343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記発明では、未収納部分のラックにのみ仕切り板を設けるので、冷却効果が十分ではないという問題点があった。
【0005】
本発明は斯かる課題に鑑みてなされたもので、上記問題点を解決できるラックキャビネット及び冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における請求項1記載のラックキャビネットは、サーバシステムを搭載したラックキャビネットであって、 前記ラックキャビネット内周面と前記サーバシステム外周面との間に形成される、前記ラックキャビネット内部の空間を前面と背面とに分離する分離壁と、前記ラックキャビネットに搭載されて前記分離壁により分離された空間の一方側から吸気し、前記分離壁により分離された空間の他方側に冷却して排気する冷却装置とを備えることを特徴とする。
また、本発明における請求項2記載のラックキャビネットは、前記分離壁が、前記ラックキャビネット内部の、両側面、天面、底面にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
また、本発明における請求項3記載のラックキャビネットは、前記冷却装置が、前記ラックキャビネット最上段に設けられ、前記ラックキャビネット内背面から吸気し、前記ラックキャビネット内前面に冷却して排気することを特徴とする。
また、本発明における請求項4記載のラックキャビネットは、前記ラックキャビネット内部に防音層を設けたことを特徴とする。
また、本発明における請求項5記載のラックキャビネットは、前記防音層が、前記ラックキャビネット内部の、両側面、天面、底面、背面および前面に吸音機能を有する部材を貼り付けられて形成されることを特徴とする。
また、本発明における請求項6記載のラックキャビネットの冷却方法は、サーバシステムを搭載したラックキャビネットの冷却方法であって、前記ラックキャビネット内部に分離壁を設け、前記ラックキャビネット内周面と前記サーバシステム外周面との間に形成される、前記ラックキャビネット内部の空間を前面と背面に分離し、前記ラックキャビネット最上段に冷却装置を設け、前記分離壁により分離された空間の一方側から吸気し、前記分離壁により分離された空間の他方側に冷却して排気し、ラックキャビネット内部を冷却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上の如く構成されているので、サーバモジュールの発熱部を効率よく冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0009】
冷却機構付きラックキャビネットは、図1に示すように、ラック本体10と、ドア11と、サーバシステムとしてのサーバ装置12と、冷却装置1と、分離壁としての分離ウォール2と、防音層としての騒音吸収材3とを備えている。
【0010】
ラック本体10は、その前面および背面にドア11を取付けることにより、ラックキャビネットを構成し、このラックキャビネットは全体として四角柱状の筐体を構成する。
【0011】
サーバ装置12は、4本のマウントアングル4と複数のサーバモジュール5とを備えていて、ラック本体10内部に搭載されている。ラック本体10の内部の両側面には、互いに前後に位置する一対のマウントアングル4がそれぞれ設けられている。各マウントアングル4には、サーバモジュール5を取り付けるための取付部が所定間隔で複数設けられている。サーバモジュール5は、4本のマウントアングル4の取付部を介して各マウントアングル4に取り付けられる。
【0012】
4本のマウントアングル4及び各マウントアングル4に取り付けられたサーバモジュール5の配置される、マウントアングル4の延設方向に沿った空間により、モジュール搭載部が構成されている。4本のマウントアングル4の各取付部にサーバモジュール5が取り付けられることにより、モジュール搭載部には複数のサーバモジュール5を積層して搭載することができる。モジュール搭載部に搭載されるサーバモジュール5は、前端側から吸引して後端側に排気するための送風ファンを内蔵している。
【0013】
サーバ装置12は、ラック本体10の内部に搭載されることから、ラック本体10の内部において、ラックキャビネットの内周面とサーバ装置12の外周面との間には、空間が形成される。
【0014】
冷却装置1は、ラック本体10の最上段に設けられる。具体的には、サーバモジュール5と同様に、4本のマウントアングル4の取付部を介して各マウントアングル4の最上段に取り付けられる。
【0015】
冷却装置1は、図2に示すようにラック本体10背面側の暖かい空気を吸気し、その空気を冷却装置1内部に設けられた熱交換器100に通過させることにより冷却させ、この冷却された空気を冷却装置1の前面に排気する。また冷却装置1の下段に設けられた複数のサーバモジュール5がこの冷却された空気を前端側から吸引して後端側に排気する。
【0016】
冷却装置1は、図4に示すように、熱交換器100の前後を一対の送風ファン101、102で挟んで構成されている。熱交換器100は、図示しない冷媒管により供給される冷媒と、熱交換器100の後方に位置する送風ファン101で送り込まれる空気との間での熱交換を行うためのものである。
【0017】
分離ウォール2は、ラック本体10の内周面とラック本体10に搭載されたサーバ装置12の外周面との空間をラック本体10内部の前面と背面の間の適宜な位置で塞ぐものであって、ラック本体10内部の空間を前面と背面に分離することを目的とする。
【0018】
分離ウォール2は、図1及び図3に示すように、ラック本体10内部の両側面、天面、底面にそれぞれ設けられていて、いずれも、縦長の角柱材によって構成されている。側面の分離ウォール2sは、ラック本体10内部の前面と背面の間であって、前面よりの位置で側面の分離ウォール2sの一端面がラック本体10の内周面に接し、この一端面に対向する一端面がサーバ装置12の側部外周面に当接するように設けられている。ラック本体10内部の天面の分離ウォール2t及び底面の分離ウォール2bは、ラック本体10内部の前面と背面の間であって、前面よりの位置で各分離ウォール2の一端面がラック本体10の内周面に接し、この一端面に対向する一端面が天面は冷却装置1上部外周面、底面はサーバ装置12の底部外周面に当接するように設けられている。
【0019】
分離ウォール2の固定方法としては、例えばラック本体10の内周面と分離ウォール2の一端面をネジ/ボルト留め、または接着(接着剤、両面テープ等)する方法を採用することができる。一方、サーバ装置12の外周面と分離ウォール2の他端面は、両者が当接するように設けられれば、サーバ装置の保守性を維持するために固定しなくても構わない。
【0020】
ラック本体10における、両側面、天面、底面を構成する各板体の内面には、防音層が形成されている。また、扉体11の内面にも防音層が形成されている。防音層は、遮音及び吸音の少なくとも一方の機能を有する層、遮音の層、吸音の層、遮音の層と吸音の層である。防音層は、遮音性及び吸音性の少なくとも一方の機能を有する板状体を貼り付け、又は、両側板、天板、底板、背板側と、及び扉体11の内面に処理を施して形成されている。本実施の形態においては、騒音吸収材3をキャビネットの両側面、天面、底面、及び背面を構成する各板体の内面に貼り付けて構成している。騒音吸収材としては、例えば、グラスウール、ガラス繊維、アルミ繊維、多孔性コンクリート部材等が考えられる。
【0021】
次に、本発明の実施の形態における冷却機構の動作を説明する。
【0022】
図2及び図4に示すように、冷却装置1は背面側の暖かい空気を冷却装置1内にファン101で吸い込む。冷却装置1では、背面から吸気した空気を内部の熱交換器100で冷却し、冷却した空気をファン102で冷却装置1の前面側に排気する。AF1はエアフローを示す。ここで熱交換器100としては、例えば、家庭用または車などのエアコンに使用される室内機における蒸発器等が使用される。この場合、冷媒が蒸発器で蒸発する際にまわりから気化熱を奪うことにより、この蒸発器を通過する空気を冷却する。
【0023】
冷却装置1により冷却された冷気はラック本体10の前面を上から下へ流れる。
ラック本体10に搭載されたサーバ装置12を構成する複数のサーバモジュール5は、前面から冷気を吸い込み複数のサーバモジュール5内部を効率よく冷却する。冷気は複数のサーバモジュール5内部で熱源となるデバイスから熱交換され、暖められた空気が複数のサーバモジュール5の背面に排気される。
【0024】
複数のサーバモジュール5は、前記したように送風ファンを設けていて冷気を吸引して暖気を排出する。複数のサーバモジュール5から排出された暖気は、ラック本体10内部の背面を下から上へ流れる。冷気と暖気はラック本体10内で、分離ウォール2により前面側と背面側とで内部空間が分離されているため、背面側から前面側への空気の流れは冷却装置1によって、また、前面側から背面側への空気の流れは、複数のサーバモジュール5によって循環する。ここで、分離ウォール2はラック本体10の内周面とラック本体10に搭載されたサーバ装置12の外周面との空間をラック本体10内部の前面と背面の間の適宜な位置で塞ぐものであり、前記したラック本体10の内部前面の冷気がサーバ装置12の両側面、底面、天面から背面側に流れこむことを防止する。この結果冷却効果の向上が図れる。
【0025】
また、ラック本体10内部の壁面(両側面、天面、底面、前面、背面)に騒音吸収材3を貼り付けることで、ラック本体10に搭載されているサーバ装置12に搭載されている多数のサーバモジュール5が発する騒音を一括吸収し、ラック本体10の騒音を外部に出さない。
【0026】
本発明は、ラックキャビネットに冷却装置1と、分離ウォール2と、騒音吸収材3を設けたこと等を特徴とするため、本発明を既存のラックキャビネットに適用する場合、既存のラックキャビネット構造に大きな変更を必要とせず、ラックマウントサーバシステムにおいては、全く構造変更を必要としない。したがって、ラックマウントサーバシステムの保守に関しても既存の保守手順で足りる。
【0027】
以上から、本発明は、既存の構造をそのまま流用可能であり、保守性も損なわないまま、ラックキャビネット内に搭載されたラックマウントサーバシステムの信頼性確保に十分な冷却を可能にするという効果を有する。また同時に、ラックキャビネット内部に搭載されたラックマウントサーバシステムが発する騒音をラックキャビネットの外部へ漏らさず静音化を実現するという効果も有する。
【0028】
本発明の実施の形態においては、ラック本体10の最上段に冷却装置1を1台設けているが、冷却装置1の設置数は1台に限定されるものではない。ラック本体10に搭載されたサーバ装置12の構成に応じて、ラック本体10内部の冷却能力を更に増やしたい場合は、図5に示すように冷却装置1を更に1台追加することができる。このことにより、ラック本体10内部の冷却能力を簡単に補強することができるという効果が得られる。
【0029】
また、本発明の実施の形態における冷却風のエアフローと、逆向きのエアフローにして構成することも可能である。つまり、冷却装置1の前面から吸気し冷却装置1の背面から冷却風を排気するように構成することも出来る。この場合ラック本体10内部の複数のサーバモジュール5は、ラック本体10背面側から吸気して、前面側から排気するように配設する必要がある。また、分離ウォール2は、適宜な位置に設けることが必要である。このことにより、ラック本体10の設置の向きに関係なくラックマウントサーバシステムを十分に冷却することができる。
【0030】
なお、本実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能であること、また、そのような変更した構造も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係るラックキャビネットの斜視図である。
【図2】図1に示すラックキャビネットにおける空気の流れを示す概略側面図である。
【図3】図1に示すラックキャビネットの構成を示す側面図である。
【図4】図2に示す冷却装置の構成を示す概略側面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係るラックキャビネットにおける空気の流れを示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0032】
AF1 エアフロー
1 冷却装置
2 分離ウォール(分離壁)
2t 天面の分離ウォール
2s 側面の分離ウォール
2b 底面の分離ウォール
3 騒音吸収材 (防音層)
10 ラック本体
11 ドア
12 サーバ装置 (サーバシステム)
100 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバシステムを搭載したラックキャビネットであって、
前記ラックキャビネット内周面と前記サーバシステム外周面との間に形成される、
前記ラックキャビネット内部の空間を前面と背面とに分離する分離壁と、
前記ラックキャビネットに搭載されて前記分離壁により分離された空間の一方側から吸気し、前記分離壁により分離された空間の他方側に冷却して排気する冷却装置とを備える
ことを特徴とするラックキャビネット。
【請求項2】
前記分離壁は、前記ラックキャビネット内部の、両側面、天面、底面にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1記載のラックキャビネット。
【請求項3】
前記冷却装置は、前記ラックキャビネット最上段に設けられ、
前記ラックキャビネット内背面から吸気し、前記ラックキャビネット内前面に冷却して排気することを特徴とする請求項1又は2記載のラックキャビネット。
【請求項4】
前記ラックキャビネット内部に防音層を設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のラックキャビネット。
【請求項5】
前記防音層は、前記ラックキャビネット内部の、両側面、天面、底面、背面および前面に吸音機能を有する部材が貼り付けられて形成されることを特徴とする請求項4に記載のラックキャビネット。
【請求項6】
サーバシステムを搭載したラックキャビネットの冷却方法であって、
前記ラックキャビネット内部に分離壁を設け、前記ラックキャビネット内周面と前記サーバシステム外周面との間に形成される、前記ラックキャビネット内部の空間を前面と背面に分離し、
前記ラックキャビネット最上段に冷却装置を設け、前記分離壁により分離された空間の一方側から吸気し、前記分離壁により分離された空間の他方側に冷却して排気し、
ラックキャビネット内部を冷却することを特徴とするラックキャビネットの冷却方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−171078(P2008−171078A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1574(P2007−1574)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)