説明

ラック間遮蔽構造及び電算機室用空調システム

【課題】機器収容用ラック間の間隙を確実に閉塞することができるとともに、地震時における機器収容用ラックや構造物の挙動による破損を防止することができ、さらに、地震終了時には再び間隙を閉塞するように自動復帰することが可能なラック間遮蔽構造及び電算機室用空調システムを提供する。
【解決手段】通路4を挟んで両側に複数並設される機器収容用ラック3を備えた電算機室用空調システムにおいて、通路4を挟んで両側に配された機器収容用ラック3同士の側面3c,3c間に形成された間隙を閉塞する遮蔽構造20を設ける。遮蔽構造20には、間隙Wの上下方向に延在して基端部21を一方の側面3cに対して回動可能に取り付けられた回動板21と、該回動板21が間隙Wを閉塞する方向に回動板21の回動を付勢する付勢部材22とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器収容用ラックと空気調和装置とを備えた電算機室用空調システムにおけるラック間遮蔽構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ある空間の空気の流れや温度を調整するための種々の空調システムが提案されている。これら空調システムの中の一つとして、高集約化・高発熱化の傾向にあるIT機器や通信装置等が設置される電算機室内において、機器周辺の空気の流れや温度を調整する電算機室用空調システムが知られている。この電算機室用空調システムとしては、通路を挟んだ両側にそれぞれ並設された複数の機器収容用ラックと、機器収容用ラックの側方であって、所定空間に対向配置された空気調和装置とを備えたものがある。
【0003】
このような構成の電算機室用空調システムにおいては、空気調和装置が、冷却用空気を下方に吹き出すと、その冷却用空気が通路に送られて、機器収容用ラックにその前面から吸い込まれる。そして、冷却用空気は、機器収容用ラックに収容された機器を冷却することにより暖められた後、機器収容用ラックの上面又は背面から排出される。このように暖められて排出された空気(温熱空気)は、電算機室の外部空間を流動して、空気調和装置に吸い込まれて、再び冷却され吹き出される。これにより、電算機室内の空気の流れや温度がコントロールされている。
【0004】
ところが、暖められて機器収容用ラックから排出された温熱空気の一部は、空気調和装置に送られることなく、外部空間からダイレクトに通路に還流されてしまう場合がある。その場合、通路に還流された温熱空気が、暖められた状態のまま再び機器収容用ラックに吸い込まれてしまうことになる。即ち、通路にて空気調和装置から供給された冷却用空気と機器収容用ラックから排出された温熱空気とが混合してしまい、機器の冷却効率を低下させてしまうという問題があった。これに対応すべく、例えば特許文献1においては、通路の両端や該通路を挟んで対向する機器収容用ラック同士の上面に、板やスクリーン等の遮蔽板を架け渡すことにより、上方又は通路空間から所定空間への空気の流動の防止を図っている。
【0005】
ところで、機器収容用ラックに収容された機器を効率的に冷却するためには、通路を密閉すべく、隣接する機器収容用ラック同士を密着させて、これらの間に間隙を形成しないことが好ましい。しかしながら、施工誤差や耐震性を考慮した場合、これら機器収容用ラック同士を例えば数mm〜数十mmの間隔をあけて配置する必要がある。また、設置条件によっては、柱等の構造物がある場合や機器収容用ラック等の未設置箇所があるような場合もあり、間隔が数十mm〜数十cm程度になることもある。そこで、これにより形成された間隙が、数mmの場合にはスポンジゴムを用いて、また、数十mm以上と比較的大きい場合には、鉄板加工物等の遮蔽板を用いることで当該間隙を閉塞し、冷却効率の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3835615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、機器収容用ラック内には必ずしも同様の機器が同一箇所に収容されるとは限らず、この機器の重量やラック内の設置箇所によっては機器収容用ラック同士の重量・重心が互いに異なるものとなる。また、全く異なる種別の機器収容用ラックが隣接することもある。この場合、地震発生時における隣り合う機器収容用ラックの振動又は揺動の挙動が異なるものとなるため、互いに干渉することを避けるべく、これら機器収容用ラック同士の間に例えば50〜100mm程の間隙を形成する必要がある。また、機器収容用ラックの間に柱等の構造物がある場合にも、当該構造物と機器収容用ラックとの地震発生時の挙動の違いから、やはり、上記同様間隙を形成しなければならない。
【0008】
このような間隙は、スポンジゴムでは該間隙の幅が大き過ぎるため適切に閉塞することができない。そこで、鉄板加工物等の遮蔽板を用いて当該間隙を閉塞することになるが、この場合、地震時の機器収容用ラックの挙動によっては該遮蔽板に過大な負荷がかかってしまう。その結果、遮蔽板や機器収容用ラック、構造物に変形や破損が生じてしまい、冷却効率が低下してしまうおそれがあった。
【0009】
また、地震が収まった際には、ずれてしまった遮蔽板を初期位置に戻したり、破損箇所を修理・交換等する作業を要するため、復旧に時間がかかり、その間の冷却効率が低下してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、機器収容用ラック間の間隙を確実に閉塞することができるとともに、地震時における機器収容用ラックや構造物の挙動による破損を防止することができ、さらに、地震終了時には再び間隙を閉塞するように自動復帰することが可能なラック間遮蔽構造、及び、該ラック間遮蔽構造を備えた電算機室用空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係るラック間遮蔽構造は、床下に内部空間を有する通路を挟んだ両側にそれぞれ複数並設され、前面から給気して上面又は背面から熱を帯びた空気(温熱空気)を排出する機器収容用ラックと、空気調和装置とを備え、前記空気調和装置から吹き出された冷却用空気が、前記内部空間を流動して、前記通路に設けられた孔からさらに前記通路の床上に流動し、この冷却用空気が前記機器収容用ラックに収容された機器を冷却した後、前記機器収容用ラックの上方の空間を流動して前記空気調和装置に再び吸引される電算機室用空調システムにおいて、隣り合う前記機器収容用ラックの互いに対向する側面間、あるいは前記機器収容用ラックと構造物との互いに対向する側面間に形成された間隙を閉塞するラック間遮蔽構造であって、前記間隙の上下方向に延在し、基端部が一方の前記側面に対して回動可能に取り付けられた回動板と、該回動板が前記間隙を閉塞する方向に、前記回動板の回動を付勢する付勢部材とを備えることを特徴とする。
【0012】
このような特徴のラック間遮蔽構造によれば、隣り合う機器収容用ラックの側面間あるいは機器収容用ラックと構造物との側面間に形成された間隙を、付勢部材によって付勢された回動板が閉塞する。これによって、機器収容用ラックから排出された温熱空気が通路に還流されて機器収容用ラックに吸い込まれてしまうことを回避できるとともに、この温熱空気を空気調和装置に確実に送ることができ、機器の冷却効率を向上させることができる。
【0013】
また、地震発生時における機器収容用ラックあるいは構造物の振動や揺動により間隙の幅が変化した場合、当該幅の大きさに応じて回動板が付勢部材の付勢に抗して回動することになる。即ち、回動板が機器収容用ラックや構造物の挙動に追従して変位することになるため、遮蔽構造と機器収容用ラックもしくは構造物とが互いに大きな負荷を及ぼすことはない。したがって、遮蔽構造、機器収容用ラック、構造物が変形・破損してしまうことを防止することができ、冷却効率を維持することが可能となる。さらに、地震が収まった際には、回動板が付勢部材の付勢によって再び間隙を閉塞することができるため、自動復帰を図ることが可能となる。
【0014】
また、本発明に係るラック間遮蔽構造においては、他方の前記側面から一方の前記側面に向かって突出するとともに上下方向に延在する固定板を備え、前記回動板の先端部が前記固定板に対して上下方向にわたって当接可能とされていることが好ましい。
【0015】
付勢部材の付勢に従って回動板が固定板に上下方向にわたって当接することで、一対の側面間に形成された間隙を確実に閉塞することができる。また、地震等により機器収容用ラックあるいは構造物が振動、揺動した場合には、回動板が付勢に抗して回動することで回動板と固定板とが互いに負荷を及ぼすことにより生じる損傷を防止できる。さらに、特に機器収容用ラックあるいは構造物が互いに対向する方向に傾倒した際であっても、この対向する方向への回動板と固定板との相対移動が許容されるため、上記損傷をより確実に防止することができる。
【0016】
このラック間遮蔽構造においては、前記回動板と前記固定板との互いに当接する箇所の少なくとも一方に配された弾性部材を備えていることが好ましい。
【0017】
これによって回動板と固定板とが弾性部材を介して密着するため、通路の密閉性をより確実なものとし、冷却効率を高く維持することができる。また、機器収容用ラックあるいは構造物が振動、揺動した場合、回動板と固定板とが互いに負荷を及ぼすことによる破損をより確実に防止することができる。
【0018】
一方、本発明に係るラック間遮蔽構造においては、前記回動板が平面視にて略L字形状をなしており、該回動板における先端部が他方の前記側面に対して上下方向にわたって当接可能とされていてもよい。
【0019】
付勢部材の付勢によって平面視略L字形状をなす回動板の先端部が他方の側面に当接することで、一対の側面間に形成された間隙を上下にわたって確実に閉塞することができる。
【0020】
また、このラック間遮蔽構造においては、前記基端部を通過する前記側面の対向方向に延びる軸線を基準として、前記先端部の他方の前記側面に当接する箇所が、平面視において前記軸線よりも前記通路側あるいは前記通路の反対側に位置していることが好ましい。
【0021】
これにより、地震により機器収容用ラックあるいは構造物がその側面の対向方向に振動、揺動した場合に、回動板に対してその回動方向のモーメントを与え易くなるため、該回動板をより円滑に回動させることができる。したがって、上記損傷をより確実に防止することができる。
【0022】
さらに、このラック間遮蔽構造においては、前記回動板の先端部と他方の前記側面との互いに当接する箇所の少なくとも一方に配された弾性部材を備えていることが好ましい。
【0023】
これによって回動板の先端部と他方の側面とが弾性部材を介して上下にわたって密着するため、通路の密閉性をより確実なものとすることができる。また、機器収容用ラックあるいは構造物が振動、揺動した場合における先端部と他方の側面とが互いに負荷を及ぼすことによる破損をより確実に防止することができる。
【0024】
本発明に係る電算機室用空調システムは、上記いずれかのラック間遮蔽構造を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明のラック間遮蔽構造及び電算機室用空調システムによれば、回動板の回動を付勢部材が付勢することにより機器収容用ラック間の間隙あるいは機器収容用ラックと構造物との間の間隙を確実に閉塞することができる。また、地震により機器収容用ラックが振動、揺動した際であっても、回動板が機器収容用ラックや構造物に追従して回動するため、遮蔽構造、機器収容用ラック及び構造物の破損を防止できる。さらに、地震終了時には、付勢力の付勢によって回動板が初期位置に戻り、自動復帰を図ることができるため、稼働率の低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第一実施形態の電算機室用空調システムの概略構成を示す斜視図である。
【図2】機器収容用ラックを通路側から見た図であって、該機器収容用ラックの挙動を説明する図である。
【図3】第一実施形態の電算機室用空調システムのラック群を通路側から見た図である。
【図4】第一実施形態の電算機室用空調システムの遮蔽構造の斜視図である。
【図5】第一実施形態の電算機室用空調システムの遮蔽構造の水平断面図である。
【図6】第二実施形態の電算機室用空調システムの遮蔽構造の斜視図である。
【図7】第二実施形態の電算機室用空調システムの遮蔽構造の水平断面図である。
【図8】第二実施形態の電算機室用空調システムの遮蔽構造の他の配置例を示す水平断面図である。
【図9】複数の機器収容用ラックの間に柱(構造物)が設置されている場合の遮蔽構造の設置例を説明する図である。
【図10】複数の機器収容用ラックの間にラック型空気調和装置を配置した場合の遮蔽構造の設置例を説明する図である。
【図11】複数の機器収容用ラックの間に該機器収容用ラックの未設置箇所がある場合の遮蔽構造の設置例を説明する図である。
【図12】機器収容用ラックの未設置箇所に、多機能パネルを備えた遮蔽構造を設置した場合を説明する図である。
【図13】複数の機器収容用ラックの一つの高さが異なる場合の遮蔽構造の設置例を説明する図である。
【図14】複数の機器収容用ラックの一つの高さが異なる場合に形成された間隙を、多機能パネルを備えた遮蔽構造で閉塞した状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態におけるラック間遮蔽構造及び電算機室用空調システムについて、図面を参照して説明する。
図1に示す電算機室用空調システム100は、箱状に形成された電算機室101において利用されるものである。まず、電算機室101について説明する。電算機室101には、床下に内部空間5を有する二重床2を備えている。この二重床2には、長手方向に延びる通路4が形成されている。
【0028】
また、二重床2には、その厚さ方向に貫通する矩形状の長孔8が形成されており、該長孔8の縁部全周には、長孔8を覆う矩形板状の孔空きパネル7が嵌め込まれている。この孔空きパネル7には、厚さ方向に貫通する複数の孔が形成されており、これによって、床下の内部空間5と通路4の空間とが、それら複数の孔を介して連通状態とされている。
【0029】
次に、電算機室101において利用される電算機室用空調システム100について説明する。電算機室用空調システム100は、通路4を挟んで両側にそれぞれ複数が並設されたラック(機器収容用ラック)3と、空気調和装置6とを備えている。
【0030】
ラック3は、略直方体形の箱状に形成されており、通信装置等の各種機器を収容するものである。これらラック3は、通路4の長手方向に沿って、該通路4の短手方向の両側、即ち、通路幅方向の両側にそれぞれ複数ずつ配列されている。本実施形態においては、通路4のそれぞれ両側にラック3が5つずつ並設されており、これにより通路4両側に5つのラック3からなるラック群9が構成されている。また、ラック3は、通路4を向く前面3bに形成された給気口(不図示)から、通路4の空間の空気を給気し、給気した空気を上面3a又は背面の排出口(図示省略)から上方又は後方に向けて排出するようになっている。
【0031】
ここで、地震によりラック3に振動又は揺動が生じた場合のラック3の挙動について説明する。本実施形態において、ラック3は、その長手方向を鉛直方向に配して二重床2上に固定されており、例えばその外形寸法は、幅600mm〜700mm、奥行き900mm〜1200mm、高さ2000mm程度に形成されている。このようにラック3が鉛直方向に延在して形成され、比較的高さが高く、かつ、比較的重量のある通信装置等が収容されているため、地震等が生じた場合には、図2に示すように、上方に向かうにつれてラック3の水平方向の変位量が大きくなる挙動を示す。即ち、ラック3の底面は二重床2上に固定された底面が固定端とされる一方、上面3aが自由端とされていることにより、該上面3aでの変位量が大きくなるのである。
【0032】
また、本実施形態のラック群9においては、図3に示すように、通路4の長手方向の一端側(図1、図3における右側)の4つのラック3Aは、同様の機器が同一箇所に収納されていることにより、重量・重心が等しいものとされている。したがって、これらラック3Aは地震時に同様の挙動を示し、互いに干渉することがないため、側面3c同士を密着させた状態で配列され、その上面3a同士が固定部材3dによって連結されている。
【0033】
一方、通路4の長手方向の他端側(図1、図3における左側)の1つのラック3Bは、ラック3Aとは収容される機器の種類・配置箇所が異なることによりラック3Bの重量・重心がラック3Aとは異なるものとされている。この場合、隣り合うラック3A,3Bは地震時の挙動も互いに異なるものとなる。したがって、地震時におけるこれらラック3A,3B同士の干渉を回避するため、ラック3Bは隣り合うラック3Aに対して所定距離(例えば50〜100mm)間隔をあけた状態で配置されている。
【0034】
これによって当該ラック3Aの側面3cとラック3Bの側面3cとの間には上下方向わたって延びる間隙Wが形成されており、該間隙Wによって、通路4と電算機室101内における通路4の外部側とが連通状態とされている。
そして、この間隙Wに、該間隙Wを上下全域にわたって閉塞するための遮蔽構造(ラック間遮蔽構造)20が設けられている。この遮蔽構造20の構成については後述する。
【0035】
空気調和装置6は、図1に示すように、略箱状に形成されており、その配置箇所は、ラック3の側方であって通路4の長手方向の一端側とされている。そして、空気調和装置6は、下面6bの吹出口から冷却用空気を吹き出し、電算機室101の上方空間を流動する空気をその上面6aの吸引口から吸引し、当該空気を冷却した後、再び吹出口から吹き出すように構成されている。
【0036】
また、通路4の長手方向の一端、即ち、空気調和装置6側の端部には、該通路4の空間と外部空間とを区画する壁体13が設けられている。この壁体13と空気調和装置6とは、互いに間隔を開け配設されている。また、壁体13には、開閉自在の扉13aが設けられている。
【0037】
このような壁体13により、通路4側の空間と空気調和装置6側の空間とが遮断され、孔空きパネル7から吹き出された冷却用空気が直接的に空気調和装置6の吸込口に吸い込まれる現象であるいわゆるショートサーキット現象の防止が図られている。したがって、内部空間5に充分な量の冷却用空気を供給することができるとともに、空気調和装置6から離間したラック3にも充分に冷却用空気を送ることができ、冷却効率を向上させることができる。さらに、扉13aが設けられていることにより、作業員が扉13aを通って通路4内に出入りすることができる。
【0038】
また、通路4の長手方向の他端、即ち、空気調和装置6から離間した側の端部にも、開閉自在の扉14aを有する壁体14が設けられている。これにより、ラック3から排出された温熱空気が通路4の他端側で回り込んで通路4内に入り込むことの防止が図られている。したがって、他端側のラック3の上部に収容された機器であっても充分に冷却を行うことができる。また、扉14aが設けられていることにより、作業員が扉14aを通って通路4内に出入りできる。このようにして、通路4の長手方向の両端には、該両端を遮蔽する一対の両端遮蔽部として、壁体13,14が配設されている。
【0039】
また、通路4を挟んで両側に配されたラック3の上面3a同士の間には、通路4の上側全域を覆うようにして上部遮蔽体11が架け渡されている。これにより、通路4とラック3の上方の空間とが区画され、ラック3の上面3a又は背面から排出された温熱空気が通路4の空間に流動することが規制されることで、通路4の空間が二重床2の床上から上部遮蔽体11にわたって冷却用空気で常に満たされることになる。
【0040】
次に、本実施形態における上記遮蔽構造20の構成について説明する。この遮蔽構造20は、ラック3A,3B間に形成された間隙Wを閉塞する役割を有しており、図4及び図5に示すように、回動板21と、バネ丁番(付勢部材)22と、スポンジゴム(弾性部材)23と、固定板24とから構成されている。
【0041】
回動板21は、間隙Wの上下方向全域にわたって延びる矩形板状の部材であって、水平方向一端側の基端部21aがバネ丁番22を介してラック3Bの側面3c(一方の側面3c)に取り付けられている。これによって、回動板21はその基端部21aに沿った鉛直軸線O回りに回動可能とされている。また、この回動板21における上記基端部21aからその水平方向他端側の先端部21bまでの寸法は、例えば間隙Wの幅の2分の1よりも大きい程度寸法に設定されている。
【0042】
バネ丁番22は、上記回動板21を鉛直軸線O回りに回動可能に一方の側面3cに固定するための部材である。このバネ丁番22は、一方の側面に固定される固定側プレート22aと、該固定側プレート22aに対して鉛直軸線O回りに回動可能に連結されて回動板21に固定される回動側プレート22bとを備えている。そして、このバネ丁番22の固定側プレート22aと回動側プレート22bの間には、これら固定側プレート22aに回動側プレート22bを近接させる方向に向かって付勢するバネ等の付勢部材(図示省略)が設けられている。これによって、回動板21は間隙Wにおける通路4側からその反対側に向かって回動付勢されている。
【0043】
スポンジゴム23は、クッション性を備えた部材であって、回動板21の先端部21bにおける通路4の反対側を向く面の上下方向全域にわたって固定されている。回動板21はこのスポンジゴム23を介して固定板24に当接する。
【0044】
固定板24は、間隙Wの上下方向全域にわたって延びるとともに水平断面視L字状をなす板状の部材である。この固定板24は、ラック3Aの側面3c(他方の側面3c)に対して例えば両面テープやビス等を介して取り付けられる取付部24aと、該取付部24aからラック3Bの側面3cに向かって突出する矩形板状をなす突出部24bとから構成されている。この固定板24は、間隙Wを介して回動板21に対向して配置されており、その突出部24bのラック3Aの側面3cからラック3Bに向かっての突出量は、例えば間隙Wの幅の2分の1よりも大きい程度の寸法に設定されている。
【0045】
このような構成の遮蔽構造20においては、回動板21がバネ丁番22によって回動付勢されることにより、該回動板21の先端部21bがその間隙Wの上下方向全域にわたって固定板24の突出部24bに対してスポンジゴム23を介して当接する。これによって、間隙Wが回動板21と固定板24によって閉塞される。したがって、ラック3から排出された温熱空気が通路に還流されて再びラック3に吸い込まれてしまうことを回避できるとともに、この温熱空気を空気調和装置6に確実に送ることができ、機器の冷却効率を高く維持することができる。
【0046】
また、地震発生時にラック3A,3Bが振動、揺動して間隙Wの幅が変化した場合には、回動板21がバネ丁番22の付勢に抗して回動することになる。これにより、回動板21がラック3A,3Bの挙動に追従して変位することになるため、回動板21と固定板24とが互いに負荷を及ぼすことはなく、遮蔽構造20とラック3A,3Bとが互いに負荷を及ぼすことも回避することができる。したがって、遮蔽構造20やラック3A,3Bが変形、破損してしまうことを防止でき、冷却効率を維持することが可能となる。
【0047】
さらに、特にラック3A,3Bが互いに対向する方向に傾倒した際には、この対向する方向に回動板21と固定板24とが相対移動することになる。即ち、当該方向への回動板21と固定板24との相対移動が許容された構造のため、上記変形、破損をより確実に防止することができる。
【0048】
また、地震が収まった際には、回動板21がバネ丁番22の付勢によって自動的に初期の状態、即ち、スポンジゴム23を介して固定板24に当接した状態に戻る。これにより、回動板21が回動して間隙Wの閉塞状態が解除されてしまった場合であっても、再び自動的に間隙Wを閉塞することができるため、閉塞状態の自動復帰を図ることが可能となる。したがって、例えば、地震によって変位した回動板21を初期位置に戻す等の作業を行う必要がないため、機器の運転を停止する必要はなく、稼働率の低下を回避することができる。
また、ラック3A,3Bが互いに離間する方向に傾倒した場合であっても、図2に示すようにラック3A,3Bの下部ではほとんど変位が無いため、回動板21が固定板24を越えて通路4の反対側方向へ回動しきってしまい、以後間隙Wを閉塞できなくなるといった事態が生じることはない。
【0049】
さらに、回動板21と固定板24とはスポンジゴム23を介して上下にわたって密着する構成のため、通路4の密閉性をより確実なものとし、冷却効率をより高く維持することができる。さらに、ラック3A,3Bが振動、揺動した場合における回動板21と固定板24とが互いに負荷を及ぼすことによる破損をより確実に防止することができる。
【0050】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
この第二実施形態においては、第一実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。第二実施形態は、間隙Wを閉塞する遮蔽構造20の構成について、第一実施形態とは相違する。
【0051】
第二実施形態の遮蔽構造20は、図6及び図7に示すように、L字型回動板(回動板)31と、バネ蝶番(付勢部材)32と、保護キャップ(弾性部材)33とから構成されている。
【0052】
L字型回動板31は、間隙Wの上下方向全域にわたって延びる板状の部材であって、その平面視において略L字形状をなすように屈曲した構造をなしている。このL字回動板31は、ラック3Bの側面3c(一方の側面3c)に回動固定される基端部31a側の部分が第一板部31cとされており、該第一板部31cに所定角度(本実施形態においては約90°)をなして連続する先端部31b側の部分が該第二板部31dとされている。即ち、これら第一板部31cと第二板部31dとは平面視において略垂直をなすように接続されており、第一板部31cと第二板部31dとの境界となる角部31eは通路4側に向かって突出するように配置されている。なお、このL字方回動板31の上端には、略三角形状をなす塞ぎ板34が設けられている。
【0053】
バネ丁番32は、L字型回動板31の基端部31aを一方の側面3cに対して鉛直軸線O回りに回動可能に固定するための部材である。このバネ丁番32は、一方の側面に固定される固定側プレート32aと、該固定側プレート32aに対して鉛直軸線O回りに回動可能に連結されてL字型回動板31の第一板部31cに固定される回動側プレート32bとを備えている。そして、このバネ丁番32の固定側プレート32aと回動側プレート32bの間には、これら固定側プレート32aに回動側プレート32bを近接させる方向に向かって付勢するバネ等の付勢部材(図示省略)が設けられている。これによって、L字型回動板31は間隙Wにおける通路4の反対側から通路4側に向かって回動付勢されている。
【0054】
保護キャップ33は、弾性を備えた部材であって、L字型回動板31の先端部31bをその上下方向全域にわたって保護するように設けられている。これによって、L字型回動板31は、この保護キャップ33を介してラック3Aの側面3c(他方の側面3c)に当接することになる。
【0055】
ここで、本実施形態においては、L字型回動板31の基端部31aと先端部31bとの距離dが間隙Wの幅よりも大きく設定されている。これにより、距離dに沿った方向が側面3cの対向方向に対して傾斜するように配置される。さらに、L字型回動板31の基端部31aを通過して側面3cの対向方向に延びる基準軸線Pを基準とした際に、L字型回動板31の先端部31bの他方の側面3cに当接する箇所が、平面視において基準軸線Pよりも通路4の反対側に位置している。なお、これに代えて、例えば図8に示すように、L字型回動板31の先端部31bの他方の側面3cに当接する箇所が、平面視において基準軸線Pよりも通路4側に位置していてもよい。即ち、L字型回動板31の先端部31bが、基準軸線Pからオフセットされた位置において側面3cに当接しているのである。
【0056】
このような構成の遮蔽構造20においては、L字型回動板31がバネ丁番32によって回動付勢されることにより、該L字型回動板31の先端部31bがその間隙Wの上下方向全域にわたって他方の側面3cに当接する。これによって、間隙WがL字型回動板31によって閉塞され、ラック3から排出された温熱空気が通路に還流されて再びラック3に吸い込まれてしまうことを回避できるとともに、この温熱空気を空気調和装置6に確実に送ることができ、機器の冷却効率を充分に確保することができる。
【0057】
また、地震発生時にラック3A,3Bが振動・揺動して間隙Wの幅が変化した場合には、L字型回動板31がバネ丁番32の付勢に抗して回動することになる。これにより、L字型回動板21がラック3A,3Bの挙動に追従して変位するため、第一実施形態と同様、遮蔽構造20、ラック3A,3Bの変形、破損を防止でき、冷却効率を維持することが可能となる。
さらに、特にラック3A,3Bが互いに対向する方向に傾倒した際には、L字型回動板31がバネ丁番32の付勢に抗して回動することにより、L字型回動板31の先端部31bがオフセットした方向にスライドし、L字型回動板21の破損を防ぐことができる。この際、ラック3A,3B同士は、L字型回動板21の基端部31aと角部31eとの距離までの近接が許容される。
【0058】
また、ラック3A,3Bが互いに離れる方向に傾倒した際でも、図2に示すようにラック3A,3B下部ではほとんど変位が無いため、L字型回動板31が付勢方向へ回動しきってしまい、以後間隙Wを閉塞できなくなるということはない。
さらに、地震が収まった際には、L字型回動板31がバネ丁番32の付勢によって自動的に初期の状態に戻るため、自動復帰を図ることが可能となる。
【0059】
また、L字型回動板31の先端部31bが、上記基準軸線Pからオフセットされた位置において側面3cに当接しているため、地震によりラック3がその側面3cの対向方向に振動、揺動した場合には、L字型回動板31の回動方向にモーメントを与え易くなり、より円滑に回動させることができる。これにより、上記変形や破損をより確実に防止することができる。なお、L字型回動板31の先端部31bの他方の側面3cに当接する箇所が、平面視において基準軸線Pよりも通路4の反対側に位置している場合には、L字型回動板31が通路4の反対側に向かって回動し易くなる。一方、L字型回動板31の先端部31bの他方の側面3cに当接する箇所が、平面視において基準軸線Pよりも通路4側に位置している場合には、L字方回動板31が通路4側に向かって回動し易くなる。
【0060】
さらに、L字型回動板31の先端部31bと他方の側面3cとが保護キャップ33を介して上下にわたって密着するため、通路4の密閉性をより確実なものとすることができる。また、ラック3が振動、揺動した場合における先端部31bと他方の側面3cとが互いに負荷を及ぼすことによる破損をより確実に防止することができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば実施形態においては、重心・重量の異なるラック3A、3B間に間隙Wを形成し、この間隙Wを閉塞するために遮蔽構造20を設けた構成について説明したが、これに限定されることはなく、例えば図9に示すように、ラック群9のラック3、3の間に柱等の構造物15がある場合に、互いに対向するラック3の側面3cと構造物15の側面15aとの間に間隙Wを形成し、この間隙を閉塞するために遮蔽構造20を設けた構成であってもよい。
【0062】
即ち、柱等の構造物15は地震時における挙動がラック3と異なるものとなる。したがって、当該挙動によるラック3と構造物15との干渉を回避すべく、ラック3と構造物15との間にも例えば50〜100mmの間隙Wを形成することが好ましい。この間隙Wに遮蔽構造20を適用することで、当該間隙Wを確実に閉塞して冷却効率の向上を図りつつ、地震時におけるラック3や構造物15の変形や破損を防止することができる。
【0063】
また、例えば図10に示すように、ラック群9のラック3,3の間にラック型空気調和装置16を設け、互いに対向するラック型空気調和装置16の側面16aとラック3の側面3cとの間に間隙Wを形成し、この間隙を閉塞するために遮蔽構造20を設けた構成であってもよい。
【0064】
上記ラック型空気調和装置16は、ラック3と重心・重量が異なるため地震時の挙動がラック3と異なるものとなり、さらに、空気を冷却するためのコンプレッサー等により常時振動が発生する。よって、地震時におけるラック3とラック型空気調和装置16との干渉を回避し、さらに、ラック型空気調和装置16の振動がラック3に伝達して機器に悪影響を与えることを防止するために、ラック3とラック型空気調和装置16との間にも所定の間隙Wを形成することが好ましい。当該間隙Wを閉塞するために実施形態の遮蔽構造20を適用することにより、当該間隙Wを確実に閉塞しつつ、地震時における破損や振動の伝達による故障を防止することができる。
【0065】
さらに、例えば図11に示すように、ラック群9におけるラック3とラック3の間にラック等の未設置箇所がある場合に、当該未設置箇所により生じた間隙Wを遮蔽構造20を用いて閉塞してもよい。これによっても、上記同様、冷却効率の向上を図ることができる。
【0066】
さらに、図12に示すように、遮蔽構造20に種々の機能を付加してもよい。即ち、図12に示す遮蔽構造には、その前面に、通路4内の温度を検出するための温度センサー42や、上下に延びて各高さ位置における温度・湿度・圧力を検出可能な多点センサー46等を設けてもよい
【0067】
また、例えば図13に示すように、ラック群9のラック3,3間に該ラック3よりも高さの低い低架ラック17がある場合に、当該低架ラック17の側面17aとラック3の側面3cとの間の間隙W、及び、低架ラック17の上方に形成されるラック3,3間の間隙Wを遮蔽構造20を用いて閉塞してもよい。この場合、遮蔽構造20は、各間隙Wのサイズに合わせて複数のパーツに分離して設置される。これによっても、上記同様、冷却効率の向上を図ることができる。さらにこの場合にも、図14に示すように、遮蔽構造20に温度・湿度・圧力を検出可能な多点センサー46等の各種機器を設けてもよい。
【符号の説明】
【0068】
2 二重床
3 ラック
3A ラック
3B ラック
3c 側面
4 通路
5 内部空間
6 空気調和装置
9 ラック群
15 構造物
15a 側面
16 ラック型空気調和装置
16a 側面
17 低架ラック
17a 側面
20 遮蔽構造(ラック間遮蔽構造)
21 回動板
21a 基端部
21b 先端部
22 バネ丁番(付勢部材)
22a 固定側プレート
22b 回動側プレート
23 スポンジゴム(弾性部材)
24 固定板
24a 取付部
24b 突出部
31 L字型回動板(回動板)
31a 基端部
31b 先端部
31c 第一板部
31d 第二板部
31e 角部
32 バネ丁番(付勢部材)
32a 固定側プレート
32b 回動側プレート
33 保護キャップ(弾性部材)
34 塞ぎ板
100 電算機室用空調システム
101 電算機室
W 間隙
O 鉛直軸線
P 基準軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下に内部空間を有する通路を挟んだ両側にそれぞれ複数並設され、前面から給気して上面又は背面から熱を帯びた空気を排出する機器収容用ラックと、空気調和装置とを備え、前記空気調和装置から吹き出された冷却用空気が、前記内部空間を流動して、前記通路に設けられた孔からさらに前記通路の床上に流動し、この冷却用空気が前記機器収容用ラックに収容された機器を冷却した後、前記機器収容用ラックの上方の空間を流動して前記空気調和装置に再び吸引される電算機室用空調システムにおいて、隣り合う前記機器収容用ラックの互いに対向する側面間、あるいは前記機器収容用ラックと構造物との互いに対向する側面間に形成された間隙を閉塞するラック間遮蔽構造であって、
前記間隙の上下方向に延在し、基端部が一方の前記側面に対して回動可能に取り付けられた回動板と、
該回動板が前記間隙を閉塞する方向に、前記回動板の回動を付勢する付勢部材とを備えることを特徴とするラック間遮蔽構造。
【請求項2】
他方の前記側面から一方の前記側面に向かって突出するとともに上下方向に延在する固定板を備え、
前記回動板の先端部が前記固定板に対して上下方向にわたって当接可能とされていることを特徴とする請求項1に記載のラック間遮蔽構造。
【請求項3】
前記回動板と前記固定板との互いに当接する箇所の少なくとも一方に配された弾性部材を備えていることを特徴とする請求項2に記載のラック間遮蔽構造。
【請求項4】
前記回動板が平面視にて略L字形状をなしており、
該回動板における先端部が他方の前記側面に対して上下方向にわたって当接可能とされていることを特徴とする請求項1に記載のラック間遮蔽構造。
【請求項5】
前記基端部を通過する前記側面の対向方向に延びる軸線を基準として、
前記先端部の他方の前記側面に当接する箇所が、平面視において前記軸線よりも前記通路側あるいは前記通路の反対側に位置していることを特徴とする請求項4に記載のラック間遮蔽構造。
【請求項6】
前記回動板の先端部と他方の前記側面との互いに当接する箇所の少なくとも一方に配された弾性部材を備えていることを特徴とする請求項5に記載のラック間遮蔽構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のラック間遮蔽構造を備えた電算機室用空調システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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