説明

ラック

【課題】工事現場での水平バリアのラックへの取り付けを容易にし、作業負荷を軽減させる。
【解決手段】板状の水平バリア105を備えるラックであって、前後の支柱101の間に架け渡される一対のガイドレール106と、ラックの後方の支柱101を互いに連結する棒状の背面ブレスと、支柱101に固定して設けられ、背面ブレスの端部が結合されるガセットプレート107とを備え、一対のガイドレール106は、長尺状の上壁部と、上壁部と壁面が対向するように配置される長尺状の下壁部と、上壁部及び下壁部の長手方向の一辺を互いに繋ぐ側壁部とを有し、上壁部、下壁部、及び側壁部のそれぞれの壁面により形成される溝部の開口側が互いに向かい合うように左右方向に隣り合う支柱の略同一の高さに設置され、水平バリア105は、対向する辺のそれぞれが一対のガイドレール106の溝部に挿入されることによりラックに固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を収納する棚を縦横に複数有するラックに関し、特に火災が発生したときの上方への延焼を抑制する水平バリアを備えるラックに関する。
【背景技術】
【0002】
自動倉庫などに用いられるラックは、高さ方向に物品を複数段収納可能とすることにより、収納効率を高めている。このような自動倉庫において、内部で発生した火災の上方への拡大を抑制するため、ラックには、複数段に収納された物品を上下方向に区画する水平バリアの設置が義務付けられている。例えば、高さ4メートル以内ごとに水平バリアを設けることが義務付けられている。
【0003】
そこで、従来、水平バリアを現地で取り付けるための取り付け方法等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のラックでは、図7に示すように、左右の支柱1001を繋ぐ水平つなぎ材1002と平板1003との間に、水平バリア1004が設置される。そして、平板1003及び水平バリア1004は、水平つなぎ材1002とビス1005により固定される。
【特許文献1】特許第3997831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のラックでは、水平バリアと水平つなぎ材とをビス止めする必要がある。つまり、作業者は、ラックの設置工事をする現場において、平板、水平バリア及び水平つなぎ材のビス穴が一致するように、正確に位置合わせする必要がある。つまり、工事現場での水平バリアのラックへの取り付け作業は困難であり、時間を要する。その結果、工事現場の作業員の負荷が増大するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、工事現場での水平バリアのラックへの取り付けを容易にし、作業負荷を軽減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るラックは、左右方向に複数立設される前後一対の支柱と、前記支柱に囲まれた収納空間を所定の高さで区画する板状の水平バリアを備えるラックであって、長尺状の上壁部と、前記上壁部と壁面が対向するように配置される長尺状の下壁部と、前記上壁部及び前記下壁部の長手方向の一辺を互いに繋ぐ側壁部とを有し、前記上壁部、前記下壁部、及び前記側壁部のそれぞれの壁面により形成される溝部の開口側が互いに向かい合うように、左右方向に隣り合う前記支柱の略同一の高さに設置されるとともに、前記前後一対の支柱の間に架け渡される一対のガイドレールと、前記ラックの後方に立設された複数の前記支柱を互いに連結する棒状の背面ブレスと、前記支柱に固定して設けられ、前記背面ブレスの端部が結合されるガセットプレートとを備え、前記水平バリアは、対向する辺のそれぞれが前記一対のガイドレールの前記溝部に挿入されることにより前記ラックに固定され、前記ガセットプレートは、前記ガイドレールの後方端面を塞ぐ位置に設けられることを特徴とする。
【0007】
これにより、ガイドレールに沿って水平バリアを挿入することで、水平バリアをラックに固定することが可能となる。つまり、ビス等を用いて水平バリアを固定する必要がないので、工事現場での作業者による取り付け作業が容易となる。その結果、作業者が取り付けに要する時間を低減させ、作業負荷の軽減を図ることが可能となる。
【0008】
また、一般的なラックが備えるガセットプレートを用いて、ガイドレールの後方端面を塞ぐことができるので、ガイドレールに挿入された水平バリアの後ろ方向への移動を規制することが可能となる。つまり、新たな部材、特別な加工等を必要とすることなく、水平バリアの後ろ方向への移動を規制することが可能となる。
【0009】
また、前記一対のガイドレールは、前記左右方向に複数立設される前後一対の支柱の略同一高さに複数設けられ、前記ラックは、さらに、前記前後一対の支柱と、当該支柱の左右側面の略同一高さに設けられた2本の前記ガイドレールとに囲まれた水平面を塞ぐように設置される板材を備え、前記板材は、前記ガイドレールの上面に固定して設けられることが好ましい。
【0010】
これにより、水平バリアにより塞ぐことのできない水平断面を塞ぐことが可能となるので、火災が発生したときの上方への延焼を抑制する効果を増大させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、火災が発生したときの上方への延焼を抑制する水平バリアを備えるラックにおいて、水平バリアの取り付け作業を容易にし、工事現場での作業負荷を軽減させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るラックについて、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係るラック100を右後方から見たときの斜視図である。ここで、ラックの左右方向をX軸、前後方向をY軸、上下方向をZ軸とする。なお、以降の図も同様とする。
【0014】
図1に示すように、ラック100は、複数の物品200を縦横に複数格納する。ラック100に格納された物品200は、例えば、スタッカークレーン300等を用いて、ラック100の前面から出し入れされる。
【0015】
また、ラック100は、支柱101、水平つなぎ材102、背面ブレス103、棚受け104、及び水平バリア105を備える。
【0016】
支柱101は、前後一対で、左右方向(X軸方向)に複数立設される断面矩形のパイプ部材である。これらの複数の支柱101は、水平つなぎ材102、背面ブレス103等により互いに連結される。
【0017】
水平つなぎ材102は、所定の高さにおいて、隣り合う支柱101を連結する断面丸形状の棒状部材である。この水平つなぎ材102は、前方の支柱101同士、又は後方の支柱101同士を連結し、ラック100の強度を増大させる。
【0018】
背面ブレス103は、ラック100の後方の支柱101に対して、互いに異なる高さで異なる支柱101を結合する棒状の部材である。図に示すように、対応する2本の背面ブレス103は、X字状に交差するように設置される。この背面ブレス103により、ラック100の強度が増大する。
【0019】
棚受け104は、所定の高さごとに、前後一対の柱に架け渡されて設置される左右一対の部材である。この一対の棚受け104のそれぞれに、下面の一部が当接するように物品200が載置される。このような棚受け104を、高さ方向(Z軸方向)に複数設置することにより、ラック100に物品200を複数段収納することが可能となる。
【0020】
また、棚受け104は、物品200が載置された状態であっても、物品200の下部にスタッカークレーン300のフォーク等が挿入可能なように設置される。これにより、上下に載置された物品200を移動させることなく、中間位置に載置された物品200を出し入れすることが可能となる。
【0021】
水平バリア105は、水平つなぎ材102の近傍上方に設置される板状部材である。また、水平バリア105は、火災時の熱に耐えることができる不燃性又は難燃性の材料からなる。具体的には、水平バリア105は、安価な亜鉛メッキの波板状の鋼板である。
【0022】
そして、水平バリア105は、4本の支柱101に囲まれた収納空間を上下に区画する。つまり、水平バリア105は、ラック100の下方で発生した火が上方へ広がるのを遮断し、上方に収納された物品200等への延焼を抑制する。
【0023】
また、水平バリア105の下方には、所定の温度を超えると水を放出するスプリンクラー(図示せず)が設置される。このスプリンクラーと水平バリア105との相乗効果により、ラック100は、火災の上方への拡大を抑制する。
【0024】
次に、図2及び図3を用いて水平バリア105の周辺の構造について、さらに詳しく説明する。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態に係るラック100の拡大正面図である。また、図3は、本発明の実施の形態に係るラック100の横断面図(図2に示すA−A断面図)である。
【0026】
図2及び図3に示すように、ガイドレール106は、断面が「コ」の字の形状をした部材である。また、ガイドレール106は、「コ」の字の開口側が互いに向かい合うように、左右方向に隣り合う支柱101の略同一の高さに設置される。
【0027】
さらに、ガイドレール106は、前後の支柱101に架け渡して設置される。そして、ガイドレール106と前後の支柱101とは、例えば、工場で溶接等により接合される。
【0028】
水平バリア105は、このように設置されたガイドレール106へ、左右の辺を挿入して保持される。
【0029】
図2に示すガセットプレート107は、後方に立設された支柱101と背面ブレス103とを固定する板状の部材である。このガセットプレートは、ガイドレール106の後方端面を塞ぐ位置に設けられる。
【0030】
図3に示す平板108は、前記前後一対の支柱101と、当該支柱101の左右の側面に略同一の高さで設置された2本のガイドレール106とに囲まれた水平面を塞ぐように設置される板材である。平板108と2本のガイドレール106とは、例えば、工場で溶接等により接合される。
【0031】
以上のように、前後に立設された支柱101は、ガイドレール106を介して連結される。つまり、ガイドレール106は、水平バリア105をラック100に固定することに加えて、ラック100の強度を増大させる。その結果、例えば、ラック100は、強度を増大させるための他の部材を削減することが可能となる。
【0032】
さらに、ガイドレール106は、工場で支柱101に接合させることができるので、工事現場での作業負荷を軽減させることが可能となる。
【0033】
また、ラック100には、ガセットプレート107が、ガイドレール106の後方端面を塞ぐように設置されているので、ガイドレール106に挿入された水平バリア105は、後ろ方向への移動が規制される。すなわち、ラック100は、新たな部材、特別な加工等を必要とすることなく、一般的なラックに設置されるガセットプレート107を用いて、水平バリア105の後ろ方向への移動を規制することができる。
【0034】
また、平板108は、支柱101とガイドレール106とに囲まれた領域を塞ぐ位置に設置される。つまり、水平バリアにより塞ぐことのできない水平断面を塞ぐことが可能となるので、火災が発生したときの上方への延焼を抑制する能力を増大させることができる。
【0035】
次に、図4を用いて、ガイドレール106の詳細について、説明する。
【0036】
図4は、本発明の実施の形態に係るラック100が備えるガイドレール106の斜視図である。
【0037】
図4に示すように、ガイドレール106は、上壁部106a、下壁部106b、側壁部106c、及び溝部106dを有する。
【0038】
上壁部106a及び下壁部106bは、長尺状の板状部材である。そして、上壁部106aの壁面と下壁部106bの壁面とが対向するように配置される。
【0039】
側壁部106cは、上壁部106a及び下壁部106bの長手方向の一辺を互いに繋ぐ部材である。つまり、ガイドレール106は、上壁部106a、下壁部106b及び側壁部106cが、「コ」の字状一体に成型された部材である。
【0040】
溝部106dは、上壁部106a、下壁部106b、及び側壁部106cのそれぞれの壁面に囲まれた凹部である。
【0041】
この溝部106dに挿入された水平バリア105は、上下方向への移動を上壁部106a及び下壁部106bにより規制され、左右方向への移動を側壁部106cにより規制される。つまり、ガイドレール106により、水平バリア105はラック100に固定される。
【0042】
次に、図5を用いて、水平バリア105の詳細について説明する。
【0043】
図5は、本発明の実施の形態に係るラック100が備える水平バリア105の斜視図である。
【0044】
図5に示すように、水平バリア105は、矩形の波板部材である。具体的には、例えば、安価な亜鉛メッキの鋼板である。また、水平バリア105は、波板に形成された山谷が伸びる方向とガイドレール106の長手方向とが直交するように設置される。
【0045】
このように水平バリア105を波板とし、前述の方向に設置することにより、水平バリア105は、強度が増大する。つまり、火災時の上昇気流による水平バリア105の変形を抑制し、下方から上方への火災の拡大を抑制することが可能となる。
【0046】
最後に、図6を用いて、水平バリア105を取り付けるときの作業について説明する。
【0047】
図6は、本発明の実施の形態に係るラック100への水平バリア105の取り付け作業を説明するための図である。
【0048】
図6に示すように、作業者は、水平バリア105の左右の辺を、ガイドレール106の前端面から、左右の溝部106dへ挿入する。そして、ガイドレール106の後端面を塞ぐガセットプレート107に当接するまで、ガイドレール106に沿って、後方(図に示す矢印の方向)へ、水平バリア105を送り出す。
【0049】
このようにして、水平バリア105のガイドレール106への挿入が終了すると、作業者は、水平バリア105が前方へ移動するのを規制するために、ガイドレール106の前端面を塞ぐ。例えば、作業者は、ペンチなどでガイドレール106の上壁部106aと下壁部106bとを挟むことにより、前端面の開口部を閉塞させる。また、作業者は、ビス、ボルトなどにより、前端面の開口部を塞いだり、波板を固定したりしてもよい。
【0050】
以上のように、ラック100の設置現場において、作業者は、ガイドレール106に沿って、水平バリア105を挿入するだけで、水平バリア105をラック100に固定することができる。つまり、作業者は、ビス止めのための位置合わせなどの困難な作業を行うことなく、容易に水平バリア105をラック100に取り付けることができる。
【0051】
以上、本発明のラックについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態に施したものも、本発明の範囲内に含まれる。
【0052】
例えば、本発明の実施の形態に係るラック100において、ガイドレール106は、断面「コ」の字状であったが、「U」の字状であってもよい。また、側壁部106cは、長手方向の全面に渡って、上壁部106aと下壁部106bとを繋いでいたが、一部を繋ぐようにしてもよい。つまり、ガイドレール106は、取り付け時に水平バリア105を前方から後方に導くとともに、設置後に水平バリア105を固定可能であれば何でもよい。
【0053】
また、本発明の実施の形態に係るラック100において、ガセットプレート107がガイドレール106の後端面を塞いでいたが、例えば、収納物品と落下を防止する金網がガイドレール106の後端面を塞いでもよい。
【0054】
また、前後左右の支柱101に囲まれた空間の水平断面が、1枚の水平バリア105の面積よりも大きくなる場合は、2枚以上の水平バリア105を、ガイドレール106に挿入してもよい。この場合、作業者は、2枚の水平バリア105の一部を互いに重ね合わせて、水平バリア105をガイドレール106に挿入する。
【0055】
このような複数枚の水平バリア105で一断面を塞ぐ必要がある場合であっても、作業者は、ガイドレール106に沿って水平バリア105を挿入するだけで、比較的容易に水平バリア105をラック100に取り付けることができる。
【0056】
また、水平バリア105は、波板でなくてもよい。つまり、水平バリア105は、火災時の熱及び上昇気流により、上下を区画する機能が失われなければ何でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係るラックは、火災が発生したときの上方への延焼を抑制する水平バリアを備えるラックとして、例えば、自動倉庫で用いる高層式のラックなどとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態に係るラックを右後方から見たときの斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るラックの拡大正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るラックの横断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るラックが備えるガイドレールの斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るラックが備える水平バリアの斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るラックへの水平バリアの取り付け作業を説明するための図である。
【図7】従来のラックの拡大正面図である。
【符号の説明】
【0059】
100 ラック
101 支柱
102 水平つなぎ材
103 背面ブレス
104 棚受け
105 水平バリア
106 ガイドレール
106a 上壁部
106b 下壁部
106c 側壁部
106d 溝部
107 ガセットプレート
108 平板
200 物品
300 スタッカークレーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に複数立設される前後一対の支柱と、前記支柱に囲まれた収納空間を所定の高さで区画する板状の水平バリアを備えるラックであって、
長尺状の上壁部と、前記上壁部と壁面が対向するように配置される長尺状の下壁部と、前記上壁部及び前記下壁部の長手方向の一辺を互いに繋ぐ側壁部とを有し、前記上壁部、前記下壁部、及び前記側壁部のそれぞれの壁面により形成される溝部の開口側が互いに向かい合うように、左右方向に隣り合う前記支柱の略同一の高さに設置されるとともに、前記前後一対の支柱の間に架け渡される一対のガイドレールと、
前記ラックの後方に立設された複数の前記支柱を互いに連結する棒状の背面ブレスと、
前記支柱に固定して設けられ、前記背面ブレスの端部が結合されるガセットプレートとを備え、
前記水平バリアは、対向する辺のそれぞれが前記一対のガイドレールの前記溝部に挿入されることにより前記ラックに固定され、
前記ガセットプレートは、前記ガイドレールの後方端面を塞ぐ位置に設けられる
ことを特徴とするラック。
【請求項2】
前記一対のガイドレールは、前記左右方向に複数立設される前後一対の支柱の略同一高さに複数設けられ、
前記ラックは、さらに、前記前後一対の支柱と、当該支柱の左右側面の略同一高さに設けられた2本の前記ガイドレールとに囲まれた水平面を塞ぐように設置される板材を備え、
前記板材は、前記ガイドレールの上面に固定して設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載のラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−42895(P2010−42895A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207349(P2008−207349)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】