説明

ラップフィルム用収納箱

【課題】食品包装用ラップフィルムを収納箱から引き出して切断する際の抵抗、特に、ラップフィルムを、収納箱に取り付けられた切断刃のいずれかの端部から切断を開始する場合、初期のカット抵抗を小さくさせることによって全体的なカット性を向上させたラップフィルム用収納箱を提供すること
【解決手段】 収納箱の切断刃が取り付けられた部位、即ち、掩蓋片又は前板の長手方向の両端辺の少なくとも片辺の先端領域を前板側又は収納室の内側に傾斜させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装用のラップフィルム、アルミホイル等(以下、食品包装用のフィルム、ホイル等を、ラップフィルム、と称す)を巻回したラップフィルム用の収納箱に関する。特に、巻筒体から引き出されたラップフィルムの一側端から他側端にラップフィルムを切断するのに好適なラップフィルム用収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
ラップフィルムは、通常、紙製の芯体に巻回された巻筒体が、紙製の直方体の箱に収納されている。収納箱に収納されたラップフィルムは、使用時に必要量を引き出して、収納箱に取り付けられている切断刃によって切断される。従来からこの種の収納箱に関しては、切断性、切れ味の向上などが追求されてきた。
従来の収納箱に取り付けられた切断刃を用いてラップフィルムを切断する場合、その動作は多種多様である。中でも、切断刃が掩蓋片の先端部に取り付けられた収納箱の場合は、概ね以下の3種類の動作に大別される。
【0003】
以下の(1)〜(3)の動作時、収納箱の蓋体は閉じられており、掩蓋片の中央部に収納箱の持ち手の親指が添えられ、他方の手はラップフィルム先端の中央部を持っているものとする。
(1)片手に収納箱を、他方の片手に引き出したラップフィルムを持ち、両手はほぼ水平関係を維持する。次に、収納箱を持つ片手はほぼ固定したままラップフィルムを上方に持ち上げ、切断刃とラップフィルムに角度を与えてラップフィルムの端部から順次切断する。
(2)片手に収納箱を、他方の片手に引き出したラップフィルムを持ち、両手はほぼ水平関係を維持する。次に、ラップフィルムを持つ片手はほぼ固定したまま収納箱を外側に開くように動作し、ラップフィルムの片端に張力を与えて端部から順次切断する。
(3)片手に収納箱を、他方の片手に引き出したラップフィルムを持ち、両手はほぼ水平関係を維持する。次に、ラップフィルムを持つ片手はほぼ固定したまま収納箱を持った手首を下方に回転させ(手首を捻る)、ラップフィルムを中央から両端部へ順次切断する。
【0004】
ラップフィルムの切断時のカット抵抗に関しては、上記の(1)と(2)の切断方法の場合、切断刃が直線状又はアーチ状(蓋板方向に凸形状)のものが有利であり、(3)の場合は切断刃がV字状(底板方向に凸形状)のものが有利である傾向がある。
ラップフィルムの切断能力を向上させる方法として、例えば、シート状物に対して切断刃の刃先の当接する角度を10〜80度とするために、刃先部分全体を折り曲げる方法が開示されている(特許文献1参照)。別の例では、鋸歯状の打抜部と連結部を介した前面板と折返し板とを一方の鋸歯状谷部と他方の鋸歯状山部とを重ねる方法が開示されている(特許文献2参照)。更に別の例では、掩蓋片用側板に配列させた補助側板と切断用側板とを貼り合わせて合板補強するような方法が開示されている(特許文献3参照)。
【0005】
しかし、特許文献1で開示されたシート状物収納体では、切断刃自体が収納体側に角度をつけた折れ曲がりの状態で設けられているため、輸送時や、製函工程の給紙時や、使用中の蓋体の開閉操作によって印刷面のこすれ傷が発生して紙紛が発生したり、傷によって収納箱の意匠性が阻害される問題がある。また、切断刃を母材から打ち抜く前に刃先となる部分を折り曲げる工程が必要であるため、金型等の磨耗が早く、耐久性が低い問題がある。
特許文献2で開示されたラップフィルム用カートンでは、鋸歯状歯山部が密に並ぶので、ラップフィルムの切断時に応力が分散し、カット抵抗が増加する問題がある。また、連結部には歯山が存在しないので、カット抵抗が不連続となり、使用者に違和感を与える問題がある。
特許文献3で開示された板紙の合板補強は掩蓋片部分を三重に重ねるため、カートン原紙を余分に必要とし、折り返し工程の導入もコスト増に繋がる問題がある。また、開封片部分の板紙が二重になるため、開封操作性が悪化する問題がある。
【特許文献1】特開2000−190957号公報
【特許文献2】実開平5−26821号公報
【特許文献3】特開平5−162744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、収納箱の製造工程の追加や変更、収納箱の材料である紙の使用量を増加させることなく、かつラップフィルムを切断する際の抵抗、特に上記した(1)と(2)の切断方法のように、ラップフィルムを、収納箱に取り付けられた切断刃のいずれかの端部から切断を開始する場合、初期のカット抵抗を小さくさせることによって全体的なカット性を向上させたラップフィルム用収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、切断刃が取り付けられた部位、即ち、掩蓋片の下方先端部において、その長手方向の両端辺の少なくとも片辺の先端領域を前板側に傾斜させることにより、又は他の型の収納箱の場合には、前板の上方先端部において、その長手方向の両端辺の少なくとも片辺の先端領域を収納室の内側に傾斜させることにより、ラップフィルムの切断開始時にラップフィルムの端部が切断刃に食い込み易くなり、全体的な切断性能が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
(i)前板1、底板2、後板3、脇板7、前板補助脇板6、及び後板補助脇板8の各面で形成される上部が開口した収納室11と、その収納室11の後板3の上端縁から開閉可能で収納室11を覆う方向に連接した蓋板4と、その蓋板4の前端縁から前板1を覆う方向に延出した掩蓋片5と、掩蓋片脇板9、掩蓋片補助脇板10の各面で形成される蓋体12からなる直方体の箱体と、前記収納室11に収納される巻筒体Zからなり、掩蓋片5の先端部に巻筒体Zから引き出されたラップフィルムを切断するための切断刃Cが備えられたラップフィルム用収納箱において、掩蓋片5の長手方向の両端辺の少なくとも片辺の先端領域20が前板1側に傾斜していることを特徴とするラップフィルム用収納箱。
【0008】
(ii)前板1、底板2、後板3、及び脇板7、前板補助脇板6、後板補助脇板8の各面で形成される上部が開口した収納室11と、その収納室11の後板3の上端縁から開閉可能で収納室11を覆う方向に連接した蓋板4と、その蓋板4の前端縁から前板1を覆う方向に延出した掩蓋片5と、掩蓋片脇板9、掩蓋片補助脇板10の各面で形成される蓋体12からなる直方体の箱体と、前記収納室11に収納される巻筒体Zからなり、掩蓋片5の先端部に巻筒体Zから引き出されたラップフィルムを切断するための切断刃Cが備えられたラップフィルム用収納箱において、掩蓋片5の長手方向の両端辺の少なくとも片辺の先端領域20が前板1側に傾斜を有しており、且つ前記切断刃Cの各刃先の先端を結ぶ仮想線が、切断刃Cの両端に向かうほど底板2方向に傾斜した、曲線及び/又は複数の直線の組み合わせからなり、且つその最両端の刃先の位置は、中央部分の刃先の位置より2mm〜15mm底板2方向に突出していることを特徴とするラップフィルム用収納箱。
【0009】
(iii)前板1、底板2、後板3、及び脇板7、前板補助脇板6、後板補助脇板8の各面で形成される上部が開口した収納室11と、その収納室11の後板3の上端縁から開閉可能で収納室11を覆う方向に連接した蓋板4と、その蓋板4の前端縁から前板1を覆う方向に延出した掩蓋片5と、掩蓋片脇板9、掩蓋片補助脇板10の各面で形成される蓋体12からなる直方体の箱体と、前記収納室11に収納される巻筒体Zからなり、前板1の先端部に巻筒体Zから引き出されたラップフィルムを切断するための切断刃Cが備えられたラップフィルム用収納箱において、前板1の長手方向の両端辺の少なくとも片辺の先端領域30が収納室11の内側に傾斜していることを特徴とするラップフィルム用収納箱。
【発明の効果】
【0010】
本発明のラップフィルム用収納箱は、掩蓋片、又は前板の長手方向の両端辺の少なくとも片辺の先端領域に傾斜を付与するという簡単な手段で、収納箱の材料である紙の使用量を増加させることなく、かつ収納箱の製造工程の追加、変更等を実施しなくても、特にラップフィルムを切断する際の初期の抵抗を小さくし、全体的な切断性能を向上させる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の好ましい実施態様を説明する。
図7は、本発明のラップフィルムの収納箱の一例を示す斜視図である。図5は、図7の収納箱を脇板7側から見た側面図である(掩蓋片脇板9は非表示)。収納箱の内部には、紙製の芯体14にラップフィルム15が巻回された巻筒体Zが収納されている。
本発明の収納箱は、図1に示す収納箱の展開図のように、収納室11と蓋体12とからなる直方体の箱体である。収納室11は、前板1、底板2、後板3、脇板7、前板補助脇板6、後板補助脇板8から形成され、上部が開口している部分である。蓋体12は、その収納室11の後板3の上端縁から開閉可能で収納室11の開口部を覆う方向に連接した蓋板4と、その蓋板4の前端縁から前板1を覆う方向に延出した掩蓋片5と、掩蓋片脇板9、掩蓋片補助脇板10から形成される。
【0012】
前板1の上端から延びる縁折り片13は、収納室11の内側へ鋭角に折り曲げるだけでも、折り返して前板1の裏面に接着させてもよい。縁折り片13は、存在しなくてもよい。
掩蓋片5の先端部には切断刃Cが取り付けられている。図7では、切断刃Cが取り付けられた領域を含む掩蓋片5の長手方向の両端辺の先端領域20は前板1側に傾斜するように構成されており、そのため切断刃Cの端部は図5に示した側面図のように、前板1に対して鋭角をなしている。以下、上記の場合を説明するが、掩蓋片5の長手方向の片辺の先端領域20のみが前板1側に傾斜しているものも本発明に含まれる。
【0013】
図7では、切断刃Cの各刃先の先端を結ぶ仮想線の形状は、蓋板4側に凸のアーチ状をなしている。この切断刃Cの全体形状は左右対称が好ましく、最両端部分の刃先は中央部分の刃先の位置より2mm〜15mm、底板2方向に突出していることが好ましい。2mm以上底板2方向に突出していることによって、ラップフィルムをいずれかの一側端からカットする場合に、最初にラップフィルムに当接する刃先数が少なくなり、その部分に応力集中をさせやすいので、初期のカット抵抗を更に低減できる。長さが15mmを超えると、カット後の前板1の中央部に残るラップフィルムの幅が短くなるため、次の使用時にラップフィルムの先端を巻筒体から引き出すのが困難になる場合がある。
【0014】
切断刃Cの各刃先の先端を結ぶ仮想線の形状は、図7に示すような凸のアーチ状に限定されず、例えば、複数の直線の組み合わせによって蓋板4側に凸形状としてもよいし、直線と曲線の組み合わせでもよい。また、直線形状であってもよい。切断刃Cの先端にある刃先の形状は限定されない。好ましくは連続した三角形状で、その先端部の角度は45°〜65°、先端半径は30μm〜80μm、高さは0.50mm〜1.00mm、ピッチは1.00mm〜2.00mmである。更に、各刃先間の底辺部(谷部)に0.50mm程度の直線平坦部を設けてもよい。これによってラップフィルムをカットした時に発生するカット端部の微小な亀裂を大幅に抑制することができ、意図しないラップフィルムの縦裂けトラブルを防止できる。
【0015】
図2(a)及び(b)は、図1に示した掩蓋片5と掩蓋片補助脇板10の部分の例の拡大図である。掩蓋片5と掩蓋片補助脇板10とを区分する折り曲げ線G(図2(a))及びL(図2(b))の蓋板4側の起点F及びKは、蓋板4と掩蓋片脇板9とを区分する折り曲げ線Dに対して僅かに蓋板4側に位置している。図2(a)において折り曲げ線Gは、掩蓋片補助脇板10の一つの辺を形成し、起点Fから終点Jに延びている。図2(b)において折り曲げ線Lは、掩蓋片補助脇板10の一つの辺を形成し、起点Kから終点Nに延びている。
本発明の収納箱における図2(a)の折り曲げ線Gは、折り曲げ線Gの起点Fから蓋板4と掩蓋片5との折り曲げ線Eに垂直に延びる仮想直線Iに対して、終点Jに至る途中の変曲点Hにおいて掩蓋片補助脇板10側に傾斜している。この折り曲げ線Gの傾斜部分は直線や円弧など任意の形状を採用してもよい。
【0016】
折り曲げ線Gが変曲点Hから終点Jに向けて掩蓋片補助脇板10側に傾斜しているので、図1の展開図を組み立てて収納箱を形成した場合、掩蓋片5の長手方向の両端辺の少なくとも片辺の先端領域20が前板1側に傾斜を有する。
本発明の収納箱における図2(b)の折り曲げ線Lは、折り曲げ線Lの起点Kから蓋板4と掩蓋片5との折り曲げ線Eに垂直に延びる仮想直線Iに対して円弧を形成し、円弧の頂点Mから終点Nに向けて掩蓋片補助脇板10側に傾斜している。この折り曲げ線Lの傾斜部分は楕円弧など円弧以外の類似した曲線を採用してもよい。
折り曲げ線Lが頂点Mから終点Nに向けて掩蓋片補助脇板10側に傾斜しているので、図1の展開図から組み立てて収納箱を形成した場合、掩蓋片5の長手方向の両端辺の少なくとも片辺の先端領域20が前板1側に傾斜を有する。
【0017】
折り曲げ線Gの終点Jから仮想直線Iへ延びる垂線、及び折り曲げ線Lの頂点Mから仮想直線Iへ延びる垂線の距離はdである。この距離dの長さに応じて、図1の展開図から組み立てられた収納箱の、掩蓋片5の長手方向の両端辺の先端領域20が前板1側に傾斜する角度が変わる。
折り曲げ線Gにおける終点Jに至る途中の変曲点Hの位置、又は折り曲げ線Lにおける円弧の頂点Mの位置は、掩蓋片5の長手方向の両端辺の先端領域20が前板1側に傾斜するように設けられていればよく、図2(a)及び図2(b)の形状に限定されない。
図1の掩蓋片5の下端には開封用のミシン目等の破断線を介して開封片が設けられているが、ここでは図示していない。
【0018】
図3は、本発明の別の型のラップフィルム用収納箱の展開図である。図6は、図3の展開図から組み立てた収納箱の側面図である(脇板7、掩蓋片脇板9、掩蓋片補助脇板10は非表示)。図3で示した収納箱を構成する要素の大部分は図1で示した収納箱と同じであるが、大きく異なるのは切断刃Cを取り付ける位置が、前板1の先端部であることと、傾斜が付与される折り曲げ線が、前板1と前板補助脇板6とを区分する折り曲げ線R又はWの部分であることである。そのため、図3で示した収納箱においては、切断刃Cの端部は図6に示した側面図のように、収納室11の内側に傾斜している。以下、上記の場合を説明するが、前板1の長手方向の片辺の先端領域30のみが収納室11の内側に傾斜しているものも本発明に含まれる。
【0019】
図4(a)及び(b)は、図3に示した前板1と前板補助脇板6の部分の例の拡大図である。前板1と前板補助脇板6とを区分する折り曲げ線R(図4(a))及びW(図4(b))の底板2側の起点Q及びVは、底板2と脇板7とを区分する折り曲げ線Oに対して僅かに底板2側に位置している。図4(a)において、折り曲げ線Rは、前板補助脇板6の一つの辺を形成し、起点Qから終点Uに延びている。図4(b)において、折り曲げ線Wは、前板補助脇板6の一つの辺を形成し、起点Vから終点Yに延びている。
本発明の収納箱における図4(a)の折り曲げ線Rは、折り曲げ線Rの起点Qから前板1と底板2との折り曲げ線Pに垂直に延びる仮想直線Tに対して、終点Uに至る途中の変曲点Sにおいて前板補助脇板6側に傾斜している。この折り曲げ線Rの傾斜部分は直線や円弧など任意の形状を採用してよい。折り曲げ線Rが変曲点Sから終点Uに向けて前板補助脇板6側に傾斜しているので、図3の展開図から組み立てて収納箱を形成した場合、前板1の長手方向の両端辺の少なくとも片辺の先端領域30が収納室11の内側に傾斜を有する。
【0020】
本発明の収納箱における図4(b)の折り曲げ線Wは、折り曲げ線Wの起点Vから前板1と底板2との折り曲げ線Pに垂直に延びる仮想直線Tに対して円弧を形成し、円弧の頂点Xから終点Yに向けて前板補助脇板6側に傾斜している。この折り曲げ線Wの傾斜部分は楕円弧など円弧以外の曲線を採用してもよい。折り曲げ線Wが頂点Xから終点Yに向けて前板補助脇板6側に傾斜しているので、図3の展開図から組み立てて収納箱を形成した場合、前板1の長手方向の両端辺の少なくとも片辺の先端領域30が収納室11の内側に傾斜を有する。
折り曲げ線Rの終点Uから仮想直線Tへ延びる垂線、及び折り曲げ線Wの頂点Xから仮想直線Tへ延びる垂線の距離はeである。この距離eの長さに応じて、図3の展開図から組み立てられた収納箱の、前板の長手方向の両端辺の先端領域30が収納室11の内側に傾斜する角度が変わる。
【0021】
折り曲げ線Rにおける終点Uに至る途中の変曲点Sの位置、又は折り曲げ線Wにおける円弧の頂点Xの位置は、前板の長手方向の両端辺の先端領域30が収納室11の内側に傾斜するように設けられていればよく、図4(a)及び図4(b)の形状に限定されない。
図3の掩蓋片5の下端には、通常、開封用のミシン目等の破断線を介して開封片が設けられているが、ここでは図示していない。なお、図3で示した収納箱においては、掩蓋片脇板9及び掩蓋片補助脇板10が存在しなくてもよい。
d及びeの値が大きいほど、ラップフィルムの切断を一側端から開始する時の初期のラップフィルムへの刃先の食い込み性はよくなる。しかし、あまりに大きすぎると、箱を組み立てる工程において、収納箱を直方体に成形することが困難になる。したがって、d及びeの値は収納箱の大きさにもよるが、収納箱の側面が約41mm〜51mmのほぼ正方形状である場合、0mmより大きく、2mm以下が好ましい。
【0022】
ラップフィルムを切断する際の初期の抵抗を小さくし、全体的な切断性能を向上させる上で、図1及び図3のように、掩蓋片5又は前板1の長手方向の両端辺の先端領域20又は30が傾斜していることが好ましい。
図8は、ラップフィルムを端部からカットする際のカット抵抗の一例を示したグラフである。このグラフの全面積(A+B)がラップフィルムのカットエネルギーを示し、カット開始から最大抵抗に至るまでの面積(A)がカット開始エネルギーを示す。ラップフィルムのカット性を向上させるためには、特に面積(A)で示されるカット開始エネルギーを低下させることが有効である。
【0023】
本発明のラップフィルム用収納箱においては、切断刃Cが取り付けられた掩蓋片5の長手方向の両端辺の少なくとも片辺の先端領域20、又は前板1の長手方向の両端辺の少なくとも片辺の先端領域30の部分が、前板1側、又は収納室11の内側に傾斜するような構成となっているので、ラップフィルムを一側端からカットする場合の食い込み性(切れ始め)が向上し、カット開始エネルギー(面積(A))を低下させる効果がある。
本発明のラップフィルム用収納箱において、切断刃を構成する素材はブリキ等の金属、プラスチック、紙等、公知の材料を用いればよい。切断刃の形状は、直線状、V字状、アーチ状等特に限定はされないが、ラップフィルムを一側端から切断する場合は、切断開始時のラップフィルムへの食い込み性を考慮すると、図7に示したようなアーチ状が好ましい。
【0024】
本発明のラップフィルム用収納箱に使用される素材は特に制限しないが、坪量400〜700g/m程度の一般的なコートボール紙が好ましい。収納箱の強度が上がると切断能力も向上するので、強度的に優れるF−フルート、G−フルート等の薄物段ボールを用いてもよい。
本発明の収納箱に収納される巻筒体は、各種樹脂製のラップフィルム、アルミホイル、クッキングペーパー等特に制限はないが、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン等のラップフィルムが特に好ましい。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
図2(a)において、FとHとの距離が15mm、dが1.5mmの折り曲げ線Gで構成された、高さ約44mm、奥行き約44mm、長さ約317mmの収納箱を準備した。
この収納箱に、約307mm(長さ)×37mm(外径)の紙製芯体に約20m(長さ)巻回された約300mm(幅)のポリ塩化ビニリデン製フィルム(厚み約10.8μm)を収納した。掩蓋片5裏面の先端には、ポリ乳酸(三井化学(株)製LACEA(登録商標)シートOF−190からなる厚み0.19mmで、先端部が連続した三角形状の切断刃を付設した。
この試料を用いて、以下に示す評価方法でカットエネルギー(C.E.)及びカット開始エネルギー(C.S.E.)を測定した。
【0026】
[実施例2〜4]
切断刃の素材及び形状以外は、実施例1と同様な操作を実施した。実施例2の素材には、ブリキを、実施例3の素材にはバルカナイズドファイバー(東洋ファイバー(株)製PK−92LW)を、実施例4では切断刃の形状として、切断刃の最両端部の刃先が中央部の刃先よりも6.5mm底板2側へ突出したアーチ状をそれぞれ採用した。この試料を用いて、C.E.及びC.S.E.を測定した。
【0027】
[実施例5]
図4(a)において、QとSとの距離が22mm、eが1.5mmの折り曲げ線Rで構成された、高さ約44mm、奥行き約44mm、長さ約317mmの収納箱を準備した。
この収納箱に、約307mm(長さ)×37mm(外径)の紙製芯体に約20m(長さ)巻回された約300mm(幅)のポリ塩化ビニリデン製フィルム(厚み約10.8μm)を収納した。また前板の上先端裏側には、ポリ乳酸(三井化学(株)製LACEA(登録商標)シートOF−190からなる厚み0.19mmで、先端部が連続した三角形状の切断刃を付設した。この試料を用いて、C.E.及びC.S.E.を測定した。
【0028】
[実施例6、7]
図2(a)において、折り曲げ線Gの形状以外は、実施例1と同様の操作を実施した。折り曲げ線GにおけるFとHとの距離を15mmとし、dを、実施例6では1.0mm、実施例7では2.0mmとした。この試料を用いて、C.E.及びC.S.E.を測定した。
【0029】
[比較例1]
図2において、折り曲げ線Gが、蓋板4と掩蓋片5を区分する折り曲げ線Eに対して垂直な直線とした以外は、実施例1と同様な操作を実施した。この試料を用いて、C.E.及びC.S.E.を測定した。
【0030】
[比較例2〜4]
切断刃の素材や形状以外は、比較例1と同様な操作を実施した。比較例2の素材には、ブリキを、比較例3の素材にはバルカナイズドファイバー(東洋ファイバー(株)製PK−92LW)を、比較例4では切断刃の形状として、切断刃の最両端部の刃先が中央部の刃先よりも6.5mm底板2側へ突出したアーチ状をそれぞれ採用した。この試料を用いて、C.E.及びC.S.E.を測定した。
【0031】
[比較例5]
図4(a)において、折り曲げ線Rが、前板1と底板2を区分する折り曲げ線Pに対して垂直な直線とした以外は、実施例5と同様な操作を実施した。この試料を用いて、C.E.及びC.S.E.を測定した。
実施例1〜7のC.E.及びC.S.E.を表1に、比較例1〜5のC.E.及びC.S.E.を表2に示す。
【0032】
[評価方法]
各実施例で示した収納箱からラップフィルムを約30cm引き出した状態で、(株)島津製作所製のオートグラフ(型番:AG−IS)に取り付けた。この時、ラップフィルムの引き出し方向に対して収納箱の長手方向が25°傾斜するように収納箱を固定し、実施例1〜4、6〜7と比較例1〜4ではラップフィルムと収納箱の前板がなす角度は90°に(蓋体は閉じた状態で、掩蓋片中央部分(2cm×2cm)をL字アングルで固定)、実施例5と比較例5ではラップフィルムと収納箱の前板1がなす角度は45°に(蓋体は開いた状態)設定した。引き出したラップフィルムの先端部は全幅を5mm幅の両面テープを介して樹脂製のプレートに貼り付けてロードセルに取り付けた。サンプルの設置後、装置を500mm/minの速度でラップフィルムの切断が終了するまで動作させ、図8に示すようなカット抵抗のグラフを得た。
【0033】
図8において、カット抵抗の全面積(A+B)をC.E.、カット開始から抵抗値が最大になるまでの面積(A)をC.S.E.とした(同じサンプルで5回操作した時の平均値)。
表1と表2より、各実施例と比較例の同じ番号どうし(切断刃の素材や形状が同じで折り曲げ線G、又はRの形状が異なるもの)を比較すると、本発明の範囲内である実施例の方がC.E.(全体的な切断のし易さの指標)やC.S.E.(切断初期における刃先のラップフィルムへの食い込み易さの指標)が小さくなり、ラップフィルムの切断性が向上している。特にC.S.E.の値については実施例の方がほぼ半減しており、掩蓋片、又は前板の長手方向の両端辺の先端領域へ傾斜を付与した効果によって、ラップフィルムの初期のカット抵抗が減少する。
切断刃の素材と形状が同じである比較例1、実施例1、6、7より、距離dが大きくなるほどC.S.E.が低下するため、ラップフィルムの初期のカット抵抗が減少する。
距離dと切断刃の素材は同じで、切断刃の形状が異なる実施例1と4より、切断刃をアーチ状に変更することでC.S.E.が更に低下するため、ラップフィルムの初期のカット抵抗が更に減少する。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、巻筒体から引き出されたラップフィルムを切断して使用するためのラップフィルム用収納箱の分野で好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のラップフィルム用収納箱の一例の展開図である。
【図2】図1の収納箱における掩蓋片と掩蓋片補助脇板を区分する部分を示す拡大図である。(a)は、折り曲げ線Gが直線と曲線の組み合わせの例、(b)は、折り曲げ線Lが曲線の例を示す図である。
【図3】本発明のラップフィルム用収納箱の他の例の展開図である。
【図4】図3の収納箱における前板と前板補助脇板とを区分する部分を示す拡大図である。(a)は、折り曲げ線Rが直線と曲線の組み合わせの例、(b)は、折り曲げ線Wが曲線の例を示す図である。
【図5】図1から組み立てられた収納箱の側面図である。
【図6】図3から組み立てられた収納箱の側面図である。
【図7】アーチ状の切断刃を持つ収納箱の斜視図である。
【図8】オートグラフでカット抵抗を測定した時の一例を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前板1、底板2、後板3、脇板7、前板補助脇板6、及び後板補助脇板8の各面で形成される上部が開口した収納室11と、その収納室11の後板3の上端縁から開閉可能で収納室11を覆う方向に連接した蓋板4と、その蓋板4の前端縁から前板1を覆う方向に延出した掩蓋片5と、掩蓋片脇板9、掩蓋片補助脇板10の各面で形成される蓋体12からなる直方体の箱体と、前記収納室11に収納される巻筒体Zからなり、掩蓋片5の先端部に巻筒体Zから引き出されたラップフィルムを切断するための切断刃Cが備えられたラップフィルム用収納箱において、掩蓋片5の長手方向の両端辺の少なくとも片辺の先端領域20が前板1側に傾斜していることを特徴とするラップフィルム用収納箱。
【請求項2】
前板1、底板2、後板3、及び脇板7、前板補助脇板6、後板補助脇板8の各面で形成される上部が開口した収納室11と、その収納室11の後板3の上端縁から開閉可能で収納室11を覆う方向に連接した蓋板4と、その蓋板4の前端縁から前板1を覆う方向に延出した掩蓋片5と、掩蓋片脇板9、掩蓋片補助脇板10の各面で形成される蓋体12からなる直方体の箱体と、前記収納室11に収納される巻筒体Zからなり、掩蓋片5の先端部に巻筒体Zから引き出されたラップフィルムを切断するための切断刃Cが備えられたラップフィルム用収納箱において、掩蓋片5の長手方向の両端辺の少なくとも片辺の先端領域20が前板1側に傾斜を有しており、且つ前記切断刃Cの各刃先の先端を結ぶ仮想線が、切断刃Cの両端に向かうほど底板2方向に傾斜した、曲線及び/又は複数の直線の組み合わせからなり、且つその最両端の刃先の位置は、中央部分の刃先の位置より2mm〜15mm底板2方向に突出していることを特徴とするラップフィルム用収納箱。
【請求項3】
前板1、底板2、後板3、及び脇板7、前板補助脇板6、後板補助脇板8の各面で形成される上部が開口した収納室11と、その収納室11の後板3の上端縁から開閉可能で収納室11を覆う方向に連接した蓋板4と、その蓋板4の前端縁から前板1を覆う方向に延出した掩蓋片5と、掩蓋片脇板9、掩蓋片補助脇板10の各面で形成される蓋体12からなる直方体の箱体と、前記収納室11に収納される巻筒体Zからなり、前板1の先端部に巻筒体Zから引き出されたラップフィルムを切断するための切断刃Cが備えられたラップフィルム用収納箱において、前板1の長手方向の両端辺の少なくとも片辺の先端領域30が収納室11の内側に傾斜していることを特徴とするラップフィルム用収納箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−269378(P2007−269378A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98268(P2006−98268)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(390017949)旭化成ホームプロダクツ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】