説明

ラッププリテンショナ

【課題】ガス発生手段にて発生したガスに含まれる特定の成分を減少させて外部に放出できるラッププリテンショナを得る。
【解決手段】ラッププリテンショナ10のプリテンショナ本体12を構成するシリンダ14の一端にはフィルタ110が取り付けられている。フィルタ110を構成する筒状のケース112内には、ゼオライトや活性炭等、気体を構成する特定の分子や原子等を吸着する物質を、粉末状又は粒状にすることで形成された吸着剤120が収容されている。シリンダ14の他端側からガスがフィルタ110のケース112を通過する際には、ガスを構成する特定の成分が吸着剤120に吸着される。これにより、シリンダ14の一端から外部に放出されるガスに含まれる特定の成分を少なく、又は、このような特定の成分を除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートベルト装置を構成するラッププリテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されているラッププリテンショナはガスジェネレータと称されるガス発生手段内のガス発生剤を燃焼させることで生じたガスの圧力でシリンダ内のピストンを摺動させる。これにより、シートベルト装置のバックルやアンカを引張り、車両急減速時等においてウェビングの張力を増加させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−83835号の公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス発生手段にて発生したガスの一部は、シリンダの一端からシリンダの外部に抜け出る。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、ガス発生手段にて発生したガスに含まれる特定の成分を減少させて外部に放出できるラッププリテンショナを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係るラッププリテンショナは、車両のシートの下部近傍に設けられて、一端が開口したプリテンショナ本体と、前記プリテンショナ本体の内側に設けられて、前記プリテンショナ本体の一端側へ移動することでウェビングにおいて乗員の腰部を拘束するラップウェビングを間接的にシート下方へ引張るピストンと、前記プリテンショナ本体に設けられて、作動することで発生したガスの圧力で前記ピストンを前記プリテンショナ本体の一端側へ移動させるガス発生手段と、前記プリテンショナ本体に設けられて、前記ガス発生手段から前記プリテンショナ本体内に供給されて前記プリテンショナ本体の前記一端へ向かう前記ガスが通過すると共に、前記ガスを構成する特定の成分を吸着する吸着手段が設けられたフィルタと、を備えている。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係るラッププリテンショナでは、車両のシートの下部近傍にプリテンショナ本体が設けられる。このプリテンショナ本体にはガス発生手段が設けられており、このガス発生手段が作動すると、ガス発生手段にて発生したガスがプリテンショナ本体内に供給される。プリテンショナ本体にガスが供給されると、このガスの圧力よりピストンがプリテンショナ本体の一端側へ移動する。このようにピストンがプリテンショナ本体の一端側へ移動するとウェビングにおいて乗員の腰部を拘束する部分、所謂「ラップウェビング」が間接的にシート下方へ引張られ、これにより、ウェビングにより乗員の腰部が強く拘束される。
【0008】
一方、ガス発生手段にて発生してプリテンショナ本体に供給されたガスがプリテンショナ本体の一端へ向かうと、このガスはプリテンショナ本体に設けられたフィルタを通過する。このフィルタには吸着手段が設けられているため、フィルタを通過するガスの特定の成分が吸着手段に吸着される。これにより、プリテンショナ本体の一端からプリテンショナ本体の外部へ放出されるガスには特定の成分が含まれないか、又は、ガスに含まれる特定の成分が少なくなる。
【0009】
請求項2に記載の本発明に係るラッププリテンショナは、請求項1に記載の本発明において、前記ウェビングに設けられたタングが装着されるバックル及び前記ウェビングの先端側に設けられた支持部材の何れかの一方と前記ピストンとを繋ぐ連結部材と、前記プリテンショナ本体に形成されて前記連結部材が通過する連結部材通過孔に基端が取り付けられると共に、先端が前記何れかの一方に閉塞された状態で前記何れかの一方に取り付けられて、前記連結部材が内側を通ると共に、前記連結部材通過孔を通過した前記ガスを内側に溜めておくブーツと、を備えている。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係るラッププリテンショナでは、ガス発生手段にて発生したガスの圧力でピストンがプリテンショナ本体の一端側へ移動すると、このピストンが連結手段を介してバックル又はウェビングの先端側に設けられた支持部材を引張る。これにより、ウェビングが引張られて乗員の腰部が強く拘束される。
【0011】
ところで、ピストンにより引張られる連結部材はプリテンショナ本体に形成された連結部材通過孔を通過してプリテンショナ本体の外に延び、バックル又は支持部材に繋がっている。この連結部材通過孔にはブーツの基端が取り付けられており、このブーツの内側を連結部材が通っている。ガス発生手段にて発生したガスが連結部材通過孔を通過すると、ブーツの内側に流れ込む。ブーツの先端はバックルや支持体に繋がった状態でバックルや支持体に閉塞されている。このため、ブーツ内に流れ込んだガスは少なくとも一時的にブーツに溜めておかれる。これにより、ガスが外部に漏れ出ないか、又は、外部に漏れ出るガスの量を効果的に低減できる。
【0012】
請求項3に記載の本発明に係るラッププリテンショナは、請求項2に記載の本発明において、前記ブーツにおける先端と他端との間に弾性的に伸縮可能な蛇腹状の蛇腹部を前記ブーツに設けている。
【0013】
請求項3に記載の本発明に係るラッププリテンショナでは、ブーツの先端と基端との間に蛇腹状の蛇腹部が形成される。ピストンが連結部材を介してバックルや支持部材を引張ると、バックルや支持部材がプリテンショナ本体に接近する。これにより、ブーツの先端が基端に接近するが、ブーツが蛇腹状に形成されていることでブーツの先端が基端に接近した際のブーツの変形は蛇腹状の部分で主に生じる。このため、ブーツの基端や先端に不用意な変形が生じ難い。しかも、ブーツ内に流れ込んだガスの圧力で蛇腹状の部分が変形することでブーツの内圧が大きく上昇することがなく、ブーツからのガス漏れを防止又は抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の本発明に係るラッププリテンショナでは、ガス発生手段にて発生してプリテンショナ本体の外部へ抜け出るガスから特定の成分を除去でき、又は、このガスに含まれる特定の成分を少なくできる。
【0015】
請求項2に記載の本発明に係るラッププリテンショナでは、連結部材が通るプリテンショナ本体の出口を通過したガスが外部に放出されることを防止又は低減できる。
【0016】
請求項3に記載の本発明に係るラッププリテンショナでは、ブーツ内に流れ込んだガスが漏れ出ることを防止又は抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係るラッププリテンショナの側面断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るラッププリテンショナが作動した状態を示す図1に対応した側面断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るラッププリテンショナの要部であるフィルタを拡大した側面断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るラッププリテンショナを適用したシートベルト装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<本実施の形態の構成>
図1には本発明の一の実施の形態に係るラッププリテンショナ10の構成が断面図により示されている。
【0019】
この図に示されるようにラッププリテンショナ10はプリテンショナ本体12を備えている。このプリテンショナ本体12はシリンダ14を備えている。シリンダ14は軸方向両端が開口した円筒形状に形成されている。シリンダ14の内側にはピストン16が収容されている。ピストン16はピストン本体18を備えている。ピストン本体18はシリンダ14の一端側(図1の矢印A方向の側)へ向けて漸次外径寸法が大きくなり、少なくとも、シリンダ14の一端側におけるピストン本体18の端部の外周形状はシリンダ14の内周形状に略等しい錐台形状とされている。
【0020】
シリンダ14の他端側(図1の矢印B方向の側)におけるピストン本体18の端部には外周形状がシリンダ14の内周形状に略等しいフランジ部20がピストン本体18に対して略同軸的に形成されている。このフランジ部20とシリンダ14の一端側におけるピストン本体18の端部とがシリンダ14の内周部に摺接しており、ピストン16はシリンダ14の一端と他端との間を摺動できる。また、フランジ部20の軸方向中間部にはフランジ部20の外周面にて開口したリング状の溝部22が形成されている。この溝部22にはゴム材やゴム材程度の弾性を有する合成樹脂材によりリング状に形成されたOリング(オーリング)24が嵌め込まれている。Oリング24はシリンダ14の内周部に接しており、Oリング24を境とするシリンダ14の先端側と他端側との間がOリング24により封止されている。
【0021】
一方、シリンダ14の一端側におけるフランジ部20の側方には複数のクラッチ球26がピストン本体18の外周方向に適宜な間隔をおいて配置されている。各クラッチ球26の直径寸法は、シリンダ14の内径寸法とピストン本体18のフランジ部20側の端部近傍におけるピストン本体18の外径寸法との差の1/2以下に設定されており、シリンダ14の一端側から他端側へピストン16が移動した際(すなわち、シリンダ14内を図1の矢印B方向にピストン16が摺動した際)に、各クラッチ球26が慣性でピストン本体18の外周面(斜面)を移動すると、ピストン本体18の外周部とシリンダ14の内周部とにクラッチ球26が挟まれる。
【0022】
この状態で更にピストン16がシリンダ14の他端側へ移動すると、ピストン16に伴われてシリンダ14の他端側へ移動するクラッチ球26がシリンダ14の内周側から変形させ、又は、シリンダ14の内周部を削る。このクラッチ球26によるシリンダ14の変形又は切削の際の摩擦がシリンダ14の他端側へのピストン16の摺動を規制する。
【0023】
ピストン16にはピストン16の軸方向両端にて開口した貫通孔28がピストン16に対して略同軸的に形成されており、この貫通孔28を連結部材としてのワイヤ30が通過している。また、ピストン16の一端側にはピース32が設けられている。ピース32には貫通孔34が形成されており、この貫通孔34をワイヤ30が通過している。ピース32のピストン16とは反対側まで貫通孔34を通過したワイヤ30に対しては抜け止めが施されており、ワイヤ30は貫通孔34を通過してピース32のピストン16側へ抜け出ることができない。したがって、ワイヤ30が貫通孔28を通過してピストン16のピース32とは反対側へ抜け出ることが規制されている。
【0024】
このワイヤ30のピース32が設けられた側とは反対側の端部は、例えば、図4に示される車両のシートベルト装置の一態様である三点式のシートベルト装置36を構成するアンカ部材であり、また、特許請求の範囲で言う支持部材としてのアンカプレート38や、シートベルト装置36を構成するバックル40の各々に形成された筒状の基部42に係止されている。
【0025】
図4に示されるように、アンカプレート38は車両室内に設置されたシート44を構成するシートクッション46の幅方向一方の側に設けられている。このアンカプレート38にはシートベルト装置36を構成する長尺帯状のウェビング48の先端部が係止されている。ウェビング48の基端側はシート44の幅方向一方の側で車両の天井部近傍に設けられたスルーアンカ50を通過した状態で下方へ折り返されており、シート44の幅方向一方の側で車両の床部近傍に設けられたシートベルトリトラクタ52のスプールに基端側が係止されている。
【0026】
上記のスルーアンカ50とアンカプレート38との間でウェビング48はタング54を通過している。シート44に着座した乗員56がタング54と共にウェビング48を引っ張ってシートベルトリトラクタ52のスプールからウェビング48を引き出しつつ身体の前方にウェビング48を掛け回し、この状態でシート44の幅方向他方の側に設けられたバックル40にタング54を装着することで乗員56の身体に対するウェビング48の装着状態になる。
【0027】
この装着状態で、ウェビング48のタング54とスルーアンカ50との間の部分はショルダウェビング48Aとされて乗員56の肩部や胸部を拘束する。これに対して、ウェビング48のタング54よりも先端側(スルーアンカ50とは反対側)はラップウェビング48Bとされて乗員56の腰部を拘束する。
【0028】
また、図1に示されるように、ラッププリテンショナ10はシリンダ14と共にプリテンショナ本体12を構成するベースカートリッジ60を備えている。ベースカートリッジ60はカートリッジ本体62を備えている。カートリッジ本体62にはシリンダ装着部64が形成されている。シリンダ装着部64には有底のシリンダ装着孔66が形成されている。シリンダ装着孔66はシリンダ装着部64の外面にて開口しており、このシリンダ装着孔66の開口端からシリンダ14がその一端から嵌挿されてベースカートリッジ60にシリンダ14が装着される。
【0029】
さらに、カートリッジ本体62にはガスジェネレータ装着部68が形成されている。ガスジェネレータ装着部68には有底のガスジェネレータ装着孔70が形成されている。ガスジェネレータ装着孔70はガスジェネレータ装着部68の外面にて開口しており、底部から開口端への向きはシリンダ装着部64におけるシリンダ装着孔66の底部から開口端への向きに対して交差(特に本実施の形態では略直交)している。
【0030】
このガスジェネレータ装着孔70にはガス発生手段としてのガスジェネレータ72が嵌挿されている。ガスジェネレータ72の内部には着火されることで燃焼して瞬時にガスを発生させるガス発生剤が収容されている。また、カートリッジ本体62にはガス通過部74が形成されている。ガス通過部74は上述したシリンダ装着孔66の底部にて開口していると共にガスジェネレータ装着孔70の底部にて開口している。したがって、シリンダ装着部64のシリンダ装着孔66はガス通過部74を介してガスジェネレータ装着部68のガスジェネレータ装着孔70に繋がっている。
【0031】
また、上記のガス通過部74の内側には保護筒82が設けられており、ガス通過部74内においてワイヤ30は保護筒82内を通過している。これにより、ガスジェネレータ72にて発生したガスの熱からワイヤ30が保護されている。この保護筒82にはフランジ部84が形成されている。フランジ部84は保護筒82の本体部分よりも外周形状が大きな板状(例えば円板状)とされており、ガス通過部74内に保護筒82の本体部分が設けられた状態でシリンダ装着孔66の底部と対向している。このフランジ部84にはその厚さ方向に貫通したガス通過孔が形成されており、例えば、フランジ部84がシリンダ装着孔66とガス通過部74とを仕切った状態であっても、フランジ部84に形成されているガス通過孔を介してシリンダ装着孔66とガス通過部74とが繋がっている。
【0032】
一方、カートリッジ本体62のシリンダ装着部64においてガス通過部74を介してシリンダ装着孔66とは反対側には連結部材通過孔としてのワイヤ通過孔92が形成されている。ワイヤ通過孔92は一端がガス通過部74に繋がっており、他端がカートリッジ本体62の外面にて開口している。このワイヤ通過孔92の他端の側方にはワイヤガイド部94が設けられている。ワイヤ30はワイヤガイド部94に倣って湾曲してワイヤ通過孔92の他端からワイヤ通過孔92を通過して、ガス通過部74内の保護筒82に入り込んでいる。
【0033】
また、本ラッププリテンショナ10はフィルタ110を備えている。図1及び図3に示されるように、フィルタ110はケース112を備えている。ケース112は外径寸法がシリンダ14の内径寸法に略等しい(厳密には僅かに小さな)円筒形状とされている。ケース112はシリンダ14の一端側でシリンダ14に嵌挿されている。シリンダ14の他端側にはかしめ部114が形成されており、かしめ部114と共にケース112が変形されることでシリンダ14の軸方向へのかしめ部114の変位が規制されている。
【0034】
かしめ部114よりもプリテンショナ本体12の他端側(矢印B方向側)ではケース112にリング状の溝部116が形成されている。この溝部116はケース112の外周面にて開口している。この溝部116にはOリング(オーリング)118が嵌め込まれている。ケース112をシリンダ14に嵌挿した状態でOリング118は溝部116の底部に密着していると共にプリテンショナ本体12の内周面に密着し、このピストン本体18を介してプリテンショナ本体12の一端側と他端側との間を封止している。
【0035】
一方、ケース112の内側には吸着剤120が収容されている。この吸着剤120はゼオライトや活性炭等、気体を構成する特定の分子や原子等を吸着する物質を、粉末状又は粒状にすることで形成されており、このため、ケース112内に吸着剤120を収容していてもケース112の両端間でガスが通過できるようになっている。
【0036】
ケース112の一端側にはメッシュシート132が設けられている。メッシュシート132は吸着剤120を構成する粉や粒よりも目が細かな網状に形成されており、プリテンショナ本体12の一端及びプリテンショナ本体12の一端側におけるケース112の端部に貼り付けられている。これに対して、ケース112においてメッシュシート132が貼り付けられた側とは反対側の端部にはメッシュシート134が貼り付けられている。メッシュシート134はメッシュシート132と同様に吸着剤120を構成する粉や粒よりも目が細かな網状に形成されている。このため、ケース112内からケース112の両端側へ吸着剤120が漏れ出ることを防止又は抑制しつつも、ガスがケース112を通過できるようになっている。
【0037】
一方、図1に示されるように、本ラッププリテンショナ10はブーツとしての蛇腹ブーツ190を備えている。蛇腹ブーツ190は基端側装着部192を備えている。基端側装着部192は円筒形状に形成されている。基端側装着部192はワイヤガイド部94に倣って湾曲し、ワイヤ通過孔92の開口端からワイヤ通過孔92に嵌挿されている。更に基端側装着部192の基端側はワイヤ通過孔92を通過して、保護筒82のフランジ部84とは反対側の端部から保護筒82に嵌挿されている。
【0038】
また、ガス通過部74とワイヤ通過孔92との間にはパッキン収容部194が介在している。このパッキン収容部194にはパッキン196が設けられている。パッキン196は外周形状がパッキン収容部194の内周形状に略等しく、内周形状が蛇腹ブーツ190における基端側装着部192の外周形状に略等しい筒形状に形成されている。パッキン196の外周部はパッキン収容部194の内周部に接しており、また、パッキン196の内周部は蛇腹ブーツ190の基端側装着部192の外周部に接している。これにより、ガス通過部74とワイヤ通過孔92との間が封止されている。
【0039】
また、蛇腹ブーツ190は先端側装着部198を備えている。先端側装着部198は円筒形状に形成されており、アンカプレート38の基部42(ワイヤ30がバックル40の基部42に係止されているのであれば、バックル40の基部42)に嵌挿されている。
【0040】
これらの基端側装着部192と先端側装着部198との間には筒状の蛇腹部200が形成されている。蛇腹部200は内径寸法及び外径寸法が長い部位と短い部位とが交互に形成された蛇腹の筒形状に形成されており、その一端から基端側装着部192が連続し、他端から先端側装着部198が連続している。図2に示されるように、基端側装着部192が先端側装着部198に接近すると、蛇腹部200はその一端と他端との間が畳まれるように変形する。
【0041】
<本実施の形態の作用、効果>
次に、本ラッププリテンショナ10の作用並びに効果について説明する。
【0042】
本ラッププリテンショナ10では、例えば、車両が急減速状態になったことを車両に設けられた加速度センサ等の検知手段が検出すると、ECUが着火信号を出力する。この着火信号がガスジェネレータ72に入力されると、ガスジェネレータ72内のガス発生剤が着火される。着火されたガス発生剤は短時間で燃焼して、急激にガスを発生させる。
【0043】
このように発生したガスはガス通過部74に送り込まれ、更に、ガス通過部74を通過してシリンダ14に供給される。このように短時間にガスが供給されることでピストン16よりもシリンダ14の他端側でシリンダ14の内圧が急上昇する。これにより、ピストン16がピース32をシリンダ14の一端側へ押圧しながらシリンダ14の一端側へ摺動する。
【0044】
ピストン16に伴われてシリンダ14の一端側へピース32が移動すると、ワイヤ30がシリンダ14の一端側へ引っ張られる。ワイヤ30の端部に係止されたアンカプレート38又はバックル40の基部42が引っ張られて移動すると、アンカプレート38やバックル40がシート44の下方へ移動する。アンカプレート38がシート44の下方へ移動すると、ウェビング48の先端が下方へ移動し、これにより、ウェビング48の張力が増加する。これに対して、バックル40が下方へ移動すると、バックル40に装着されたタング54が下方へ移動し、タング54におけるウェビング48の折り返し部分がシート44の下方へ移動する。これによって、ウェビング48の張力が増加する。
【0045】
このようにしてウェビング48の張力が増加すると、ウェビング48の僅かな弛み、所謂「スラック」が解消されると共に、乗員56の身体に対するウェビング48の拘束力が増し、車両前方への乗員56の移動を防止又は抑制できる。
【0046】
一方、ガスジェネレータ72にて発生したガスの一部は貫通孔28を通過してピストン16よりもシリンダ14の一端側へ流れる。このようにピストン16よりもシリンダ14の一端側へ流れたガスは、メッシュシート134を通過してケース112の内側に流れ込む。
【0047】
ケース112内に流れ込んだガスは、吸着剤120の粒子間を通過してメッシュシート132側へ向かうが、吸着剤120の粒子間をガスが通過する際に、ガスを構成する特定の成分(特定の分子や原子)が吸着剤120に吸着(又は捕獲)される。このため、ガスはケース112を通過してメッシュシート132に到達すると、特定の成分がなくなるか、又は、特定の成分が減少する。これにより、特定の成分がないか、又は、特定の成分が少なくなったガスをシリンダ14の一端からシリンダ14の外部に放出できる。
【0048】
一方、ガス通過部74とワイヤ通過孔92とはパッキン収容部194を介して連通している。しかしながら、パッキン収容部194に設けられたパッキン196の外周部がパッキン収容部194の内周部に接して、パッキン196の内周部が蛇腹ブーツ190の基端側装着部192の外周部に接している。これにより、蛇腹ブーツ190の基端側装着部192の外周部とパッキン収容部194の内周部との間がパッキン196に封止される。このため、ガス通過部74に送り込まれたガスが蛇腹ブーツ190の基端側装着部192の外周部とパッキン収容部194の内周部との間を通過してワイヤ通過孔92に流れ込むことができない。
【0049】
これに対して、ガス通過部74から保護筒82のフランジ部84に形成されたガス通過孔を通過してシリンダ14内に流れ込んだガスの一部は、フランジ部84におけるガス通過部74の開口端から保護筒82の内側へ流れ込む。保護筒82内に流れ込んだガスは、保護筒82に嵌挿された蛇腹ブーツ190における基端側装着部192の開口端から基端側装着部192内に流れ込む。
【0050】
ここで、基端側装着部192は蛇腹部200に繋がっており、蛇腹部200の基端側装着部192とは反対側の端部は先端側装着部198に繋がっている。この先端側装着部198はアンカプレート38やバックル40の基部42に挿し込まれ、アンカプレート38やバックル40に閉止される。このため、基端側装着部192の開口端からガスが蛇腹ブーツ190に流れ込んでも、このガスは蛇腹ブーツ190に少なくとも一時的に溜めておかれる。これにより、蛇腹ブーツ190から外部に漏れ出ることはないか、又は、蛇腹ブーツ190から外部に漏れ出ることが少ない。
【0051】
なお、本実施の形態ではブーツが蛇腹部200を有する構成であった。しかしながら、ブーツは基端側装着部192と先端側装着部198との間で弾性的に伸縮できる構成であれば、その形状は蛇腹状でなくてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 ラッププリテンショナ
12 プリテンショナ本体
16 ピストン
30 ワイヤ(連結部材)
38 アンカプレート(支持部材)
40 バックル
44 シート
48 ウェビング
54 タング
72 ガスジェネレータ(ガス発生手段)
92 ワイヤ通過孔(連結部材通過孔)
120 吸着剤(吸着手段)
190 蛇腹ブーツ(ブーツ)
192 基端側装着部(ブーツの基端)
198 先端側装着部(ブーツの先端)
200 蛇腹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートの下部近傍に設けられて、一端が開口したプリテンショナ本体と、
前記プリテンショナ本体の内側に設けられて、前記プリテンショナ本体の一端側へ移動することでウェビングにおいて乗員の腰部を拘束するラップウェビングを間接的にシート下方へ引張るピストンと、
前記プリテンショナ本体に設けられて、作動することで発生したガスの圧力で前記ピストンを前記プリテンショナ本体の一端側へ移動させるガス発生手段と、
前記プリテンショナ本体に設けられて、前記ガス発生手段から前記プリテンショナ本体内に供給されて前記プリテンショナ本体の前記一端へ向かう前記ガスが通過すると共に、前記ガスを構成する特定の成分を吸着する吸着手段が設けられたフィルタと、
を備えるラッププリテンショナ。
【請求項2】
前記ウェビングに設けられたタングが装着されるバックル及び前記ウェビングの先端側に設けられた支持部材の何れかの一方と前記ピストンとを繋ぐ連結部材と、
前記プリテンショナ本体に形成されて前記連結部材が通過する連結部材通過孔に基端が取り付けられると共に、先端が前記何れかの一方に閉塞された状態で前記何れかの一方に取り付けられて、前記連結部材が内側を通ると共に、前記連結部材通過孔を通過した前記ガスを内側に溜めておくブーツと、
を備える請求項1に記載のラッププリテンショナ。
【請求項3】
前記ブーツにおける先端と他端との間に弾性的に伸縮可能な蛇腹状の蛇腹部を前記ブーツに設けた請求項2に記載のラッププリテンショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−75638(P2013−75638A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217993(P2011−217993)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】