説明

ラテラルフロー型蛍光イムノクロマト法用の標的物質を定量的に検出する装置

【課題】蛍光イムノクロマト検査に関して、機械的な駆動手段、光検出素子アレイ、メモリ素子やCPUを持たない安価で簡素な結果の定量読み取り装置を提供する。
【解決手段】蛍光標識試薬を含有する試薬含有部材と、前記試薬を吸着する対照領域(a)、前記試薬が標的物質と結合している場合にのみ前記試薬を吸着する試験領域(b)及び該(a)及び(b)以外の背景領域(c)を平面上に有してなるメンブレンとを平面上に備えてなるラテラルフロー型蛍光イムノクロマト法用の平面試験片に光源から励起光を照射して、各領域からの蛍光強度を各々個別に測定する少なくとも3個の蛍光測定器を具備し、各蛍光測定器が、前記集光レンズの光軸上の前焦点よりも前又は後の位置に前記メンブレンの前記測定対象領域を光軸方向に対して直角に配置し、前記測定対象領域からの蛍光強度を測定する標的物質を定量的に検出する装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラテラルフロー型蛍光イムノクロマト法用の平面試験片について蛍光強度を測定することにより標的物質を定量的に検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体中の抗原物質などの微量物質を検出する手法としてイムノクロマト検査法がある(例えば、特許文献1参照。)。従来のイムノクロマト検査法では液体試料中の標的物質の有無、すなわち陰性/陽性の判定しか行なわなかったため、発色試薬(金ナノコロイドや色素含有ラテックスなど)による発色の有無を肉眼で確認していた。これに対して、蛍光性の物質を蛍光標識試薬として検出しようとする標的物質に結合させ、その量を蛍光強度によって検出ないし定量評価する蛍光イムノクロマト検査法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。前記蛍光標識試薬を用いる利点は、蛍光検出装置を用いることで蛍光を高感度かつ定量的に評価できることである。しかしながら試薬の検出原理が変わってもイムノクロマト検査の反応をさせる原理は変わらないため、従来用いられている試験片と同様の前記試験領域・対照領域に対応するテストライン・コントロールラインを描画したメンブレンシートを用いることになる。したがって蛍光検出装置は各ラインやバックグラウンドの蛍光強度を1次元的もしくは2次元的に読み取らなければならず、さらにそうして得られるデータ群を適切に処理して標的物質の含有量を一意的に導出する必要がある。
【0003】
前記データ群を取得する手法としては、励起光の照射部位や蛍光検出部を走査させる、PD(フォトダイオード)アレイやCCD素子といった複数の光検出素子を有する検出器を使用する手法などがある(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、走査のための機械的な駆動部が必要となり、そのような駆動部を設けると装置の内部機構が複雑になって装置のダウンサイジング(コンパクト化)の妨げとなる。また現状においてPDアレイの価格はPD単体のものと比べて格段に高価であり、装置の製造コスト増大をもたらしてしまう。さらに、これらの検出器から得られる空間分解のデータ群をメモリに記憶させ、適切なデータ処理を経て各ラインの蛍光強度を導出する必要がある。それを実現させるためにはメモリ素子やCPU(中央演算機構)が必要となり、装置の機構及びその製造が煩雑となり、さらにはこれらの部材費が装置の製造コストを押し上げる要因となってしまう。
これに対して単体の光検出素子で対応するラインの蛍光強度を読み取れるようにすれば上記のような問題を回避することができるが、その場合周囲のバックグラウンド光も合わせて検出してS/N比が低下する、検査キットの固定位置ずれに対して結果が敏感に変化してしまう、いわゆるトレランスの低下などの困難が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−010950号公報
【特許文献2】特開2006−300950公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の問題点に鑑みて、蛍光イムノクロマト検査などで微量の標的物質を検出するのに用いられる蛍光標識試薬に関して、機械的な駆動手段、光検出素子アレイ、メモリ素子やCPUを持たない安価で簡素な結果の定量読み取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記手段により達成された。
(1)蛍光標識試薬を含有する試薬含有部材と、前記試薬を吸着する対照領域(a)、前記試薬が標的物質と結合している場合にのみ前記試薬を吸着する試験領域(b)及び該(a)及び(b)以外の背景領域(c)を平面上に有してなるメンブレンとを平面上に備えてなるラテラルフロー型蛍光イムノクロマト法用の平面試験片に光源から励起光を照射して、
前記領域(a)、(b)、及び(c)の各領域からの蛍光強度を各々個別に測定する少なくとも3個の蛍光測定器を具備する、蛍光強度を測定することにより前記標的物質を定量的に検出する装置であって、
前記(a)、(b)、(c)の各領域についての前記蛍光測定器が、前記メンブレンの測定対象領域からの蛍光を集光する集光レンズを有し、かつ前記集光レンズの光軸上の前焦点よりも前又は後の位置に前記メンブレンの前記測定対象領域を光軸方向に対して直角に配置し、前記測定対象領域からの蛍光強度を測定することを特徴とする標的物質を定量的に検出する装置、
(2)前記集光レンズが2個以上のレンズからなる多レンズ系であり、該レンズ間に形成された平行光路部内に励起光カットフィルタを備えたことを特徴とする(1)に記載の標的物質を定量的に検出する装置、
(3)前記集光レンズの口径が2〜6mmであることを特徴とする(1)または(2)に記載の標的物質を定量的に検出する装置、
【0007】
(4)前記集光レンズによって集光される前記測定対象領域が直径1〜4mmの円の内部であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の標的物質を定量的に検出する装置、
(5)前記集光レンズがシリンドリカルレンズであり、それによって集光される前記測定対象領域がラテラルフロー方向に平行な方向の辺を短辺とする短辺1〜4mmの長方形の内部であることを特徴とする(1)または(2)に記載の標的物質を定量的に検出する装置、
(6)前記標的物質を有する前記試薬からの蛍光強度から導出される標的物質含有量を表す指数を表示する表示部を備え、かつ下記式で表される測定結果の妥当性指数Rvalidityを表示する表示部を備えたことを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の標的物質を定量的に検出する装置、
validity
{[対照領域(a)の蛍光強度]−[背景領域(c)の蛍光強度]}/[背景領域(c)の蛍光強度]
【0008】
(7)前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の標的物質を定量的に検出する装置で用いる平面試験片であって、前記対照領域(a)と前記試験領域(b)とが前記試薬含有部材から等距離の位置に並べて配置してあることを特徴とする試験片、
(8)前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の標的物質を定量的に検出する装置を用いて測定される前記(a)、(b)、(c)の各領域の蛍光強度から下記式で表される指数Rtargetを算出する工程を含むことを特徴とする、標的物質の定量評価法、
target={[試験領域(b)の蛍光強度]−[背景領域(c)の蛍光強度]}
/{[対照領域(a)の蛍光強度]−[背景領域(c)の蛍光強度]}
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
標的物質を定量的に検出する本発明の装置は、従来の装置のようなPDアレイ、CCD等、検出位置の走査(スイープ)等が必要ないので、それらにより得られる膨大なデータ群を処理するための記憶素子、複雑な演算素子等の高価な素子を要しない。それにより、装置のダウンサイジング(コンパクト化)、製造コスト削減を実現するだけでなく、故障リスク削減にもつながる。
また、標的物質を定量的に検出する本発明の装置は、上述のように煩雑な素子を要しないにもかかわらず、S/N比が高いため高精度の標的物質の定量的検出が実現され、さらに検査キットとしてのラテラルフロー型平面試験片の前記装置内における固定位置ずれに対するトレランスに優れるので検査結果の誤認を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、標的物質を定量的に検出する本発明の好ましい装置の回路構成を示す概略図である。
【図2】図2は、標的物質を定量的に検出する本発明の装置における蛍光測定器の縦断面図を表す図である。
【図3】図3aは、標的物質を定量的に検出する本発明の装置における蛍光測定器の縦断面図を表す図である。図3bは、図3aの縦断面図におけるA−B線断面図を表す。
【図4】図4aは本発明におけるイムノクロマト法用平面試験片の平面図を示し、図4bは、aで示されたイムノクロマト法用平面試験片の平面図の縦断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の、標的物質を定量的に検出する装置について図1を用いて説明する。
図1は、標的物質を定量的に検出する本発明の好ましい装置の回路構成を示す概略図である。
図1に示す標的物質を定量的に検出する装置は、蛍光標識試薬を含有する試薬含有部材と、前記試薬を吸着する対照領域(a)3、前記試薬が標的物質と結合している場合にのみ前記試薬を吸着する試験領域(b)4、及び該(a)及び(b)以外の背景領域(c)5(捕捉物質が固定化されていない領域)を平面上に有してなるメンブレンとを平面上に備えてなるラテラルフロー型蛍光イムノクロマト法用の平面試験片1に光源から励起光2を照射して、
前記領域(a)3、(b)4、及び(c)5の各領域からの蛍光強度を各々個別に測定する3個の蛍光測定器6、8、10を具備する、蛍光強度を測定することにより前記標的物質を定量的に検出する装置であって、
前記(a)3、(b)4、(c)5の各領域についての蛍光測定器6、8、10が、前記メンブレンの測定対象領域30、31、32からの蛍光を集光する集光レンズ7、9、11を、それぞれ有し、かつ集光レンズ7、9、11の光軸上の焦点よりも前又は後の位置に前記メンブレンの測定対象領域30、31、32を光軸方向に対して直角に配置することを特徴とし、測定対象領域全体からの蛍光強度の平均値が測定される。
【0012】
図1の装置においては、対照領域(a)の測定対象領域30全体からの蛍光強度が受光器12によってアナログ電流強度に変換され、さらにその値をデジタル化処理部15でデジタル信号へと変換される。試験領域(b)および背景領域(c)についても同様で、測定対象領域31、32の各々の全体からの蛍光強度が、それぞれ、受光器13および14によってアナログ電流強度に変換され、さらにそれぞれの値をデジタル化処理部16および17でデジタル信号へと変換される。
デジタル化された対照領域(a)、試験領域(b)、背景領域(c)からの蛍光強度信号はRtarget演算処理部18に送られ、前記Rtarget計算式に基づいて前記指数Rtargetが導出される。さらに対照領域(a)、背景領域(c)からの蛍光強度信号はRvalidity演算処理部19にも送られ、そこで前記Rvalidity計算式に基づいて前記指数Rvalidityが導出される。なおこれらの計算はデジタル値の四則計算のみからなるため、演算処理部18および19は電卓に用いられる程度の煩雑ではないもので実施することができる。
導出された前記指数RtargetおよびRvalidityはそれぞれの表示部20および21へと送られ、そこで値がリアルタイムに表示される。なお、本発明はこの形態のみに限定されるものではない。
【0013】
本発明において、ラテラルフロー型蛍光イムノクロマト法とは、標的物質が毛細管現象により多孔質支持体(メンブレン)内を移動し、蛍光標識試薬に捕捉され、更に多孔質支持体に局所的(例えば、ライン状)に固定化された捕捉物質(例えば、標的物質と特異的に結合する抗原もしくは抗体)と効率的に接触することによって前記標的物質が濃縮され、捕捉物質が固定化された領域の蛍光強度を測定することによって標的物質を定量的に検出する免疫測定法をいう。
ここで、蛍光標識試薬とは励起光を照射されたときに蛍光を発する蛍光部と、標的物質に特異的に結合する結合部とからなる任意の物質をいう。
前記平面試験片の前記メンブレン上に前記結合部と直接的に結合する物質を塗布した領域が前記対照領域(a)であり、前記蛍光標識試薬は標的物質の有無に関わらず前記対照領域(a)に捕捉される。すなわち、前記対照領域(a)に捕捉される蛍光標識試薬の量はその試験で使用された蛍光標識試薬の総量を表す指標となる。一方、前記蛍光標識試薬の前記結合部が前記標的物質と結合しているときにのみ、前記標的物質を介して結合部と結合する物質(好ましくは、特異的に結合する物質)を塗布した領域が前記試験領域(b)であり、ここには標的物質を捕捉した蛍光標識試薬のみが捕捉されることになる。そのため、前記対照領域(a)の蛍光強度で規格化した前記試験領域(b)の蛍光強度が液体試料に含まれていた標的物質の量を表す指標となる。ただしこのとき液体試料とともに流れず(a)、(b)以外の領域(c)に取り残されてしまった(非特異的結合)蛍光標識試薬も一定量存在しており、これらが放出する蛍光が背景(バックグラウンド)信号となる。
以上を考慮すると、液体試料中の標的物質の含有量を定量的に検出するために必要最小限の情報は、対照領域(a)及び試験領域(b)の両領域の蛍光強度、および前記メンブレン上のそれら(a)、(b)以外の背景領域(c)の蛍光強度の3つであり、走査(スイープ)のための機械的な駆動手段等煩雑な機構を要しない最も簡潔な定量的に検出する装置はこれら3つの蛍光強度を3つの蛍光測定器で検出する装置である。
【0014】
本発明の、標的物質を定量的に検出する装置において、前述のように前記平面試験片に励起光を照射して前記蛍光標識試薬が発する蛍光の強度を測定する観点から、励起光源を備えており、前記励起光源から特定の波長の光のみを透過するためのフィルタ(単色化フィルタ、グレーティング等)を備えていることがより好ましい。前記励起光源としては、水銀ランプ、ハロゲンランプ又はキセノンランプといった白色ランプのほか、用いる蛍光標識試薬の波長に合わせた波長のLED(発光ダイオード)、LD(レーザーダイオード)等が挙げられる。
【0015】
本発明の、標的物質を定量的に検出する装置における少なくとも3個の前記蛍光測定器は、それぞれ、
<i>前記集光レンズ、及び
<ii>前記集光レンズにより集光された光束を受光する受光器
を具備してなる。前記集光レンズ及び前記受光器の間の距離は用いるレンズの大きさと開口数(NA)によって一意的に決まるものであるが、集光された光の受光効率や装置のダウンサイジングの観点から、4〜18mmであることが好ましく、7〜15mmであることがより好ましい。あるいは、前記集光レンズにより集光された光束を光ファイバで受光して、装置内部の別の部位に取り付けられた受光器まで光を導く構造であってもよい。
【0016】
本発明において、上述のように、蛍光検出に関して機械的な駆動手段を用いないのであるから、励起光の照射も固定して行なわなければならず、対照領域(a)及び試験領域(b)の両領域の蛍光強度、および前記メンブレン上のそれら(a)、(b)以外の背景領域(c)(捕捉物質が固定化されていない領域)を前記励起光源による拡散光で一気に励起することになる。この場合励起光が照射された全領域から広い立体角度で蛍光が放出されるため、各々の蛍光測定器が対応する領域からの蛍光のみを検出するために、集光レンズを用いる。
前記集光レンズの形態は、レンズ系が簡潔でありコストも低い回転対称型の両凸レンズであってもよいが、光軸方向に対して平行な平行光路部内に前記励起光カットフィルタを備えうる観点から、前記平行光路部を形成するように複数のレンズからなる多レンズ系とすることが好ましい。多レンズ系の具体例としては、前記測定対象領域側を凸面とした回転対称型の平凸レンズと、前記検出側を凸面とした回転対称型の平凸レンズとからなる2レンズ系が挙げられる。その場合前記平行光路部は、前記測定対象領域側のレンズで集光した光を平行光とし、検出側のレンズでその平行光が焦点に収束する構造となる。前記平行光路部に備えられる前記励起光カットフィルタとしては誘電多層膜フィルタ、色フィルタなどが挙げられ、特性的観点から誘電多層膜フィルタであることが好ましい。
受光器としてCAN実装型のPD、中でも現在広く普及している規格であるステム径4.3mmのCAN実装型のPDを用いることを想定すると、前記両凸レンズの1レンズ系、前記平凸レンズの2レンズ系いずれの回転対称型レンズの場合であっても、前記集光レンズの口径としては、2〜6mmであることが好ましく、3〜4mmであることがより好ましい。前記測定対象領域側の開口数(NA)は、前記励起光を遮らないだけの距離を確保する限り特に制限はないが、0.02〜0.1であることが好ましく、0.04〜0.08であることがより好ましい。前記検出側のNAは受光器の受光面のNAに合わせて定められる。
以上のように回転対称型レンズを用いる場合、前記平面試験片の前記メンブレン上の蛍光強度が測定される領域の形状は円形となる。
ただし、前記対照領域(a)、試験領域(b)がライン状である場合、ラインが測定対象となる円形領域のどの位置を横切るかによって前記測定対象領域に含まれるライン長さが変動し、これが定量測定の精度を低下させる要因となってしまう。この問題を解消するために、前記平行光路部に正方形もしくは長方形のアパーチャ(光透過穴)を設け、前記測定対象領域を正方形もしくは長方形に整形してもよい。
【0017】
一方、蛍光が測定される前記対照領域(a)及び試験領域(b)が直線形状(ライン状)である場合、これら領域からの蛍光強度をより効率的に測定できる形状が長方形であることから、平凸シリンドリカルレンズと平凹シリンドリカルレンズとを用いた多レンズ系を用いることでより高い検出感度を実現できる。
具体的には、下記(i)〜(iv)からなる4レンズ系が挙げられる。
(i)前記測定対象領域に最も近くに配設された、前記測定対象領域からの蛍光をラテラルフロー方向にのみ集光する、前記測定対象領域側を凸面とした平凸シリンドリカルレンズ、
(ii)前記(i)の平凸シリンドリカルレンズを透過してきた光束を試験片面上のラテラルフロー方向に対して垂直な方向にのみ集光する、検出側を凸面とした平凸シリンドリカルレンズ、
(iii)前記(ii)の平凸シリンドリカルレンズにより集光された光束を平行光とする、前記測定対象領域側を凹面とした平凹シリンドリカルレンズ、及び
(iv)前記(iii)の平凹シリンドリカルレンズにより平行にされた光束を焦点に収束させる、前記検出側を凸面とした回転対称型平凸レンズ。
ここで、前記(iii)の平凹シリンドリカルレンズと前記(iv)の回転対称型平凸レンズとの間に形成された平行光路部内に前記励起光カットフィルタを備えることが好ましい。前記(i)の平凸シリンドリカルレンズと前記(ii)の平凸シリンドリカルレンズは、それらを一体化させた両凸シリンドリカルレンズであってもよい。
なお、本発明において、ラテラルフロー方向とは、前記平面試験片において、毛細管現象により液体試料が流れていく方向、すなわち前記平面試験片の長手方向をいう。
【0018】
前記(i)の平凸シリンドリカルレンズの前記測定対象面側のNAは前記励起光を遮らないだけの距離を確保する限り特に制限はないが、0.02〜0.1であることが好ましい。前記(i)の平凸シリンドリカルレンズのサイズとしては特に制限はないが、縦(ラテラルフロー方向)が2〜6mm、横(ラテラルフロー方向に対して垂直な方向)が5〜15mmであることが好ましい。
前記(ii)の平凸シリンドリカルレンズの前記検出側のNAは特に制限はないが、0.1〜0.4であることが好ましい。前記(ii)の平凸シリンドリカルレンズのサイズは前記(i)の平凸シリンドリカルレンズと同一にすることが好ましい。
前記(iii)の平凹シリンドリカルレンズの前記測定対象領域側のNAは前記(ii)の平凸シリンドリカルレンズの前記検出側のNAに合わせて定められる。前記(iii)の平凹シリンドリカルレンズのサイズとしては特に制限はないが、縦(ラテラルフロー方向)、横(ラテラルフロー方向に対して垂直な方向)ともに2〜6mmであることが好ましい。
前記(iv)の回転対称型平凸レンズの前記検出側のNAは受光器の受光面のNAに合わせて定められる。口径としては、2〜6mmであることが好ましい。
【0019】
前記蛍光測定器における前記受光器としては、フォトダイオード(PD)、アバランシェフォトダイオード(APD)、光電子倍増管(PMT)又はCCDが挙げられ、製造コストの観点からPDであることが好ましく、煩雑な製造工程を要しないCAN実装型PDであることがより好ましい。前記CAN実装型PDの受光面のレンズとしては、前記集光レンズからの光がPDに集光される限り特に制限はない。例えば、口径1.5mm、前記集光レンズ側開口数(NA)が0.2、PD側NAが0.4の回転対称型両凸レンズのCAN実装型PDが市販されている。
前記受光器による嵩張りを防止する等の観点から、前記集光レンズ及び受光器の間に光ファイバを設け、前記集光レンズからの光を前記光ファイバの端で受け、前記受光器に導くこともできる。前記光ファイバとしては、プラスチック光ファイバ、ガラス光ファイバ等が挙げられるが、400μm程度の十分な内径を有しうる観点から、プラスチック光ファイバであることが好ましい。
【0020】
上記説明した前記集光レンズと前記平面試験片との距離を前記集光レンズの焦点距離に合わせてしまうと、前記平面試験片の「点」からのみ(前記シリンドリカルレンズの場合は「線」からのみ)の蛍光強度を測定することになり、前記平面試験片の位置ずれに対して測定値が敏感に変動してしまう。すなわち、位置ずれに対するトレランスが悪く、測定結果の誤認を誘発する恐れがある。
そこで、本発明においては、前記集光レンズの光軸上の焦点よりも前又は後の位置に前記平面試験片を配置することにより、所定の面積を有する「面」としての前記測定対象領域からの蛍光強度を測定することとしている。得られる測定値は前記測定対象領域全体の平均値であるため、「点」(もしくは「線」)を測定するよりも感度は低下するものの、前記平面試験片の位置ずれに対して測定値が敏感に変動することはなくなる。すなわち、位置ずれに対するトレランスに優れる。
前記集光レンズとして回転対称型レンズを用いる場合、対照領域(a)、試験領域(b)それぞれについて、前記測定対象領域が直径1〜4mmの円の内部となるように、前記集光レンズの光軸上の焦点よりも前又は後の位置に前記平面試験片を配置することが好ましい。
前記集光レンズとして前述のようにシリンドリカルレンズを用いる場合、対照領域(a)、試験領域(b)それぞれについて、前記測定対象領域が短辺(ラテラルフロー方向に平行な辺)1〜4mmの長方形の内部となるように、前記集光レンズの光軸上の焦点よりも前又は後の位置に前記平面試験片を配置することが好ましい。この場合、前記長方形の測定対象領域の長辺(ラテラルフロー方向に対して垂直な方向の辺)の長さについては特に制限はないが、4〜12mmであることが好ましい。
ただし、前記測定対象領域を大きくしすぎると、得られる全体からの平均的な蛍光強度の平均値は、前記対照領域(a)又は前記試験領域(b)からの蛍光にそれら以外の背景領域(c)からの蛍光の混入が大きくなりすぎることで、S/N比が低下してしまう。
また、前記平面試験片を配置させる、前記集光レンズの光軸上の焦点よりも前又は後の位置としての前記集光レンズからの距離は、前記集光レンズのNA、口径(シリンドリカルレンズの場合はサイズ)等によって変動し適宜選択し得、斜め方向から入射されてくる前記励起光を遮らない限り特に制限はないが、5〜15mmであることが好ましい。
【0021】
本発明の、標的物質を定量的に検出する装置は、励起光照射及び前記蛍光測定器による蛍光測定を遮光下で行うため、前記平面試験片又はそのケーシングされた平面試験片をハウジングする筐体を有することが好ましい。
また、本発明の、標的物質を定量的に検出する装置は、前記蛍光イムノクロマト法用平面試験片又はそのケーシングされた平面試験片を固定し位置決めするための保持台を有することが好ましい。
【0022】
次に、本発明に適用される蛍光イムノクロマト法用平面試験片について説明する。
図4は好ましい平面試験片の平面図(4a)及び縦断面図(4b)である。
前記平面試験片301は、メンブレン304が、前記試薬を吸着する対照領域(a)342、前記試薬が標的物質を有する場合にのみ前記試薬を吸着する試験領域(b)341、及び前記(a)342及び(b)以外の背景領域(c)を有する。また、前記試験片301は図4に示されるように、
<1>試料添加用部材(サンプルパッド)302と前記蛍光標識試薬を含有させてなる前記試薬含有部材(コンジュゲートパッド)303とが、
<2>前記コンジュゲートパッド303と前記メンブレン304とが、並びに
<3>前記メンブレン304と吸収パッド305とが
相互に毛細管現象が生じるように直列連結していることがより好ましい。
次に、上記各部材について説明する。
1)試料添加用部材(サンプルパッド)302
サンプルパッドは標的物質を含む液体試料を滴下する構成部材である。
2)試薬含有部材(コンジュゲートパッド)303
コンジュゲートパッド3は蛍光標識試薬を含有する構成部材であり、サンプルパッド302から毛細管現象により移動してきた試料液体に含まれる標的物質が抗原抗体反応等の分子認識反応で、前記蛍光標識試薬によって捕捉されて標識される部分である。
3)メンブレン304
メンブレン304は前記蛍光標識試薬により標識された標的物質が毛細管現象によって移動する構成部材であり、例えば、捕捉用抗体―標的物質―蛍光標識試薬からなるサンドイッチ型免疫複合体形成反応が行われる試験領域(b)341を有する。
前記メンブレン304における対照領域(a)342及び試験領域(b)341の各々の形状としては局所的に捕捉用抗体等が固定化されている限り特に制限はなく、ライン状、円状、帯状等が挙げられるが、幅0.5〜1.5mmのライン状であることが好ましい。
捕捉用抗体―標的物質―蛍光標識試薬からなるサンドイッチ型免疫複合体形成反応により試験領域(b)341に、前記シリカ粒子により標識された標的物質が捕捉され、形成された前記複合体中の前記蛍光標識試薬に由来する蛍光の程度により標的物質を定量的に検出することができる。
対照領域(a)342及び試験領域(b)341の各々における抗体固定化量は特に制限ないが、形状がライン状の場合、単位長さ(cm)当たりの0.5μg〜5μgが好ましい。
4)吸収パッド305
吸収パッド305は、毛細管現象でメンブレン304を移動してきた液体試料および蛍光標識試薬を吸収し、常に一定の流れを生じさせるための構成部材である。
本発明に適用される蛍光イムノクロマト法用平面試験片の好ましい態様として、例えば、特開2008−304401公報に記載された、標識物質として蛍光物質を含有させた標識シリカナノ粒子を用いてなるイムノクロマト法用テストストリップ、特開2005−031029公報に記載されたイムノクロマトグラフィーテストキット、特開2000−019175公報に記載された免疫学的検査用キット等が挙げられる。
【0023】
本発明の、標的物質を定量的に検出する装置は、前記標的物質を有する前記試薬からの蛍光強度から導出される標的物質含有量を表す指数を表示する表示部を備え、かつ下記式で表される測定結果の妥当性指数Rvalidityを表示する表示部を備えることが好ましい。
validity
{[対照領域(a)の蛍光強度]−[背景領域(c)の蛍光強度]}/[背景領域(c)の蛍光強度]
この妥当性指数Rvalidityをデジタル化してランプの点灯数などで表示することにより、液体試料への蛍光標識試薬の添加量の多少、検査キットとしての前記平面試験片の前記保持台によるセッティング(位置決め固定)等が適切であるか否かを検査作業者に知らせることができる。
装置の大きさによる制約上、前記励起光は拡散光を斜め方向からメンブレンに一様に照射されることになるが、この励起光の照射具合に強度ムラがあると前記妥当性指数Rvalidityによるセッティング判定に誤差が生じてしまう。そこで対照領域(a)及び試験領域(b)の両領域で同じ蛍光強度を示す校正サンプルを用意し、それに基づいて前記Rvalidity(測定結果の妥当性指数)の表示を微調整できる機能を設けておくことが好ましい。
【0024】
従来のイムノクロマト検査キットでは、試験領域(b)と対照領域(a)が液体試料の流れる方向(ラテラルフロー方向)に対して直列的に配置されていて、試験領域(b)が上流側、対照領域(a)が下流側という位置関係である。この場合、液体試料中に過剰量の標的物質が含有されているとそれらと結合した蛍光標識試薬の大部分が試験領域に特異的に吸着してしまい、それらは対照領域(a)まで到達することができない。そのため、対照領域(a)が液体試料に混入された蛍光標識試薬の総量をよく表さないことになってしまう。
そこで、標的物質を定量的に検出する本発明の装置で用いる前記平面試験片において、前記対照領域(a)と前記試験領域(b)とが前記試薬含有部材から等距離の位置に並べて配置してあること、言い換えれば、試験領域(b)と対照領域(a)を液体試料の流れ(ラテラルフロー)に対して並列に並べて配置してあることが好ましい。並列に並んだ2本のラインという配列は、肉眼でそれらを視認するにはあまり適していないが、本発明の装置は肉眼ではなく蛍光強度を測定するのであるから問題とはならない。
【0025】
標的物質を定量的に検出する本発明の装置を用いて測定される前記(a)、(b)、(c)の各領域の蛍光強度から下記式で表される指数Rtargetを算出する工程を含むことを特徴とする、標的物質の定量評価法を提供することができる。
target={[試験領域(b)の蛍光強度]−[背景領域(c)の蛍光強度]}
/{[対照領域(a)の蛍光強度]−[背景領域(c)の蛍光強度]}
これにより前記液体試料中の標的物質の含有量を定量的に検出できる。この計算は記憶(メモリ)素子を必要とせず、簡単なデジタル演算処理のみで実行できる。
本発明において、「定量的に検出する」とは、前記標的物質の存在を検出するだけでなく、前記標的物質を量的にも測定することをいう。前記指数Rtargetは標的物質の含有量を直接的に表す値ではなく、標的物質の含有量を得るためにはこれに変換係数を乗じる必要がある。しかしこの変換係数は標的物質と用いた蛍光標識試薬の組み合わせによって定まる値であるため、一つの変換係数を装置に内蔵させると標的物質に関する汎用性が失われてしまうことになる。複数の変換係数を記憶させると変換の際に所望の標的物質の変換係数を選択する必要性が生じ、新たなインターフェースや処理機構が必要となって装置が煩雑になり、コンパクト性に劣り、価格も大きく上昇し実用性に乏しくなる。そのため、標的物質や蛍光標識試薬の組み合わせに対応する変換係数を記した一覧表を装置に添付し、検査作業者はこの一覧表の値と測定される前記指数Rtargetを参照し計算機などを用いて標的物質の含有量を計算する態様とすることが好ましい。
【0026】
本明細書及び特許請求の範囲において、前記標的物質を含有する液体試料としては特に制限ないが、尿、血液などが挙げられる。
本明細書及び特許請求の範囲において、検出、定量、検査、診断、判定の対象としての標的物質は、抗原、抗体、DNA、RNA、糖、糖鎖、リガンド、受容体、ペプチド、化学物質等が挙げられる。より具体的には、妊娠の重要なマーカーとして、抗原である、尿中のヒトゴナドトロピン(hCG)・ペプチドホルモンを標的物質として妊娠の有無を判定もしくは診断することが挙げられる。
前記蛍光標識試薬としては、国際公開2007/074722A1公報に記載された蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を、標的物質を認識する物質(例えば、抗体、抗原、DNA、RNAなどの生体分子)で吸着等により表面修飾させてなるシリカ粒子等が挙げられる。
前記蛍光標識試薬の蛍光波長としては受光器が検出可能な範囲にある限り特に制限はないが、400〜750nmの可視光帯域であることが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。

参考例1
図4a及びbを参照して、下記実施例1及び2で用いられる平面試験片101及び201(参考例1において平面試験片301という。)について説明する。
平面試験片301は、
試料添加用部材(サンプルパッド)302:商品名Glass Fiber Conjugate Pad(GFCP)、MILLIPORE社製、
試薬含有部材(コンジュゲートパッド)303:商品名GFCP、MILLIPORE社製、
メンブレン304:商品名Hi−Flow Plus120 メンブレン、MILLIPORE社製、及び
吸収パッド305:商品名Cellulose Fiber Sample Pad、MILLIPORE社製
からなる構成とする(5mm幅、長さ60mm)。
【0028】
上記各構成部材は粘着剤付きバッキングシート306(商品名AR9020,Adhesives Research社製)により裏打ちする。
前記メンブレン304は、標的物質を介して前記蛍光標識試薬の結合部と特異的に結合する捕捉用抗体を幅約1mmで塗布したテストラインとしての試験領域(b)341、および前記蛍光標識試薬の結合部と直接的に結合する抗体を幅約1mmで塗布したコントロールラインとしての対照領域(a)342を有する構成とする。
なお、前記テストラインとしての試験領域(b)341に塗布された捕捉用抗体は前記標的物質を捕捉する抗体である。前記コントロールラインとしての対照領域(a)342に塗布された前記蛍光標識試薬の結合部と直接的に結合する抗体は、前記蛍光標識試薬により標識された全ての標的物質を捕捉する抗体である。
【0029】
実施例1
実施例1の装置は、図1における蛍光測定器6、8及び10として、図2に示す蛍光測定器を、それぞれ、用いてなる態様のものである。
図2は、実施例1の標的物質を定量的に検出する装置における蛍光測定器の縦断面図を表す。
実施例1の装置では、装置内の保持台(図示せず)に固定された平面試験片101を、集光レンズの焦点102よりも手前の位置、具体的には前記集光レンズから10.0mmの距離の位置に、光軸方向に対して直角に配置する。これにより蛍光検出の測定対象領域110は、直径2.0mmの円の内部となる。前記集光レンズは、測定対象領域側を凸面とした平凸回転対称型レンズ103(口径3.0mm、NA0.05)、前記検出側を凸面とした平凸回転対称型レンズ104(口径3.0mm、NA0.2)とからなり、その間の平行光路部に励起光カットフィルタ105を配置する。
平凸回転対称型レンズ104で集光された光束はCAN実装型PD106で受光する。
CAN実装型PD106は、口径1.5mm、前記集光レンズ側開口数(NA)が0.2、PD側NAが0.4の回転対称型両凸レンズ107で受光、集光し台座108上のPD109で受光する構成となっている。平凸回転対称型レンズ104と回転対称型両凸レンズ107との距離は11.0mmとし、回転対称型両凸レンズ107とPD109との距離は1.7mmとする。
【0030】
実施例2
実施例2の装置は、図1における蛍光測定器6、8及び10として、図3に示す蛍光測定器を、それぞれ、用いてなる態様のものである。
図3aは、実施例2の標的物質を定量的に検出する装置における蛍光測定器の縦断面図を表す。図3bは、図3aの縦断面図におけるA−B線断面図を表す。
実施例2の装置では、標的物質を定量的に検出する装置内の保持台(図示せず)に固定された平面試験片201を、測定対象領域側を凸面とした平凸シリンドリカルレンズ202の焦点よりも手前の位置、具体的には平凸シリンドリカルレンズ202から10.0mmの距離の位置に、光軸方向に対して直角に配置する。平凸シリンドリカルレンズ202は、平行光をラテラルフロー方向に対して垂直な線上に集光させるレンズ(NA0.05)であり、測定対象領域210はラテラルフロー方向を縦方向として縦2mm、横10mmの長方形の内部となる。
平凸シリンドリカルレンズ203は検出側が凸面となっており、そのNAは0.2である。測定対象領域側からの平行光をラテラルフロー方向に対して垂直な方向にのみ集光させる。
平凹シリンドリカルレンズ204は、平凸シリンドリカルレンズ203によりラテラルフロー方向に対して垂直な方向に集光された光束を平行光とする。測定対象領域側を凹面とし(NAは平凸シリンドリカルレンズ203の検出側に合わせて0.2とした)、平凸シリンドリカルレンズ203から16mmの距離に配置する。
205は平凹シリンドリカルレンズ204により形成された平行光を集光する、検出側を凸面とした回転対称型平凸レンズである(口径3.0mm、NA0.2)。形成される平行光路部に励起光カットフィルタ206を配置する。
回転対称型平凸レンズ205により集光された光束は図2に示す実施例1のCAN搭載型PDと同一のCAN搭載型PDで受光される。回転対称型平凸レンズ205とCAN搭載型PDの間の距離も図2に示す実施例1と同じである。
【符号の説明】
【0031】
1 平面試験片
2 励起光
3 対照領域(a)
4 試験領域(b)
5 背景領域(c)
6、8、10 蛍光測定器
7、9、11 集光レンズ
12、13、14 受光器
30、31、32 測定対象領域
101 平面試験片
102 焦点
103 平凸回転対称型レンズ
104 平凸回転対称型レンズ
105 励起光カットフィルタ
106 CAN搭載型PD
107 回転対称型両凸レンズ
110 測定対象領域
201 平面試験片
202 平凸シリンドリカルレンズ
203 平凸シリンドリカルレンズ
204 平凹シリンドリカルレンズ
205 回転対称型平凸レンズ
206 励起光カットフィルタ
210 測定対象領域
301 平面試験片
302 サンプルパッド
303 コンジュゲートパッド
304 メンブレン
305 吸収パッド
306 バッキングシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光標識試薬を含有する試薬含有部材と、前記試薬を吸着する対照領域(a)、前記試薬が標的物質と結合している場合にのみ前記試薬を吸着する試験領域(b)及び該(a)及び(b)以外の背景領域(c)を平面上に有してなるメンブレンとを平面上に備えてなるラテラルフロー型蛍光イムノクロマト法用の平面試験片に光源から励起光を照射して、
前記領域(a)、(b)、及び(c)の各領域からの蛍光強度を各々個別に測定する少なくとも3個の蛍光測定器を具備する、蛍光強度を測定することにより前記標的物質を定量的に検出する装置であって、
前記(a)、(b)、(c)の各領域についての前記蛍光測定器が、前記メンブレンの測定対象領域からの蛍光を集光する集光レンズを有し、かつ前記集光レンズの光軸上の焦点よりも前又は後の位置に前記メンブレンの前記測定対象領域を光軸方向に対して直角に配置し、前記測定対象領域からの蛍光強度を測定することを特徴とする、標的物質を定量的に検出する装置。
【請求項2】
前記集光レンズが2個以上のレンズからなる多レンズ系であり、該レンズ間に形成された平行光路部内に励起光カットフィルタを備えたことを特徴とする請求項1に記載の標的物質を定量的に検出する装置。
【請求項3】
前記集光レンズの口径が2〜6mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の標的物質を定量的に検出する装置。
【請求項4】
前記集光レンズによって集光される前記測定対象領域が直径1〜4mmの円の内部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の標的物質を定量的に検出する装置。
【請求項5】
前記集光レンズがシリンドリカルレンズであり、それによって集光される前記測定対象領域がラテラルフロー方向に平行な方向の辺を短辺とする短辺1〜4mmの長方形の内部であることを特徴とする請求項1または2に記載の標的物質を定量的に検出する装置。
【請求項6】
前記標的物質を有する前記試薬からの蛍光強度から導出される標的物質含有量を表す指数を表示する表示部を備え、かつ下記式で表される測定結果の妥当性指数Rvalidityを表示する表示部を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の標的物質を定量的に検出する装置。
validity
{[対照領域(a)の蛍光強度]−[背景領域(c)の蛍光強度]}/[背景領域(c)の蛍光強度]
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の標的物質を定量的に検出する装置で用いる平面試験片であって、前記対照領域(a)と前記試験領域(b)とが前記試薬含有部材から等距離の位置に並べて配置してあることを特徴とする試験片。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の標的物質を定量的に検出する装置を用いて測定される前記(a)、(b)、(c)の各領域の蛍光強度から下記式で表される指数Rtargetを算出する工程を含むことを特徴とする、標的物質の定量評価法。
target={[試験領域(b)の蛍光強度]−[背景領域(c)の蛍光強度]}
/{[対照領域(a)の蛍光強度]−[背景領域(c)の蛍光強度]}

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−197248(P2010−197248A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43121(P2009−43121)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】