説明

ラトルバック・トイ

【課題】 任意の方向に回転を起こすことができるラトルバックトイを簡単な構造で提供すること。
【解決手段】 水平方向に互いに直交する長軸および短軸を有し、下面の形状はほぼ凸面をなし、該凸面は前記長軸に平行な断面において大きな曲率半径を有し前記短軸に平行な断面において小さな曲率半径を有する本体と、該本体の長軸から逸れた方向に少なくとも1つの質量を負荷することができる負荷体と、前記本体と前記負荷体を結合する取付手段とより成るラトルバックトイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラトルバック・トイに関する。更に詳しくは、指等で垂直方向に叩いた場合の回転方向を選択的に変えることができるラトルバック・トイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ラトルバック・トイ(Rattie−Back Toy)と称して、船底形の底面をなす長楕円型の棒であって、机などの硬い水平面に乗せて指でその端部を垂直方向に叩くと、回転力を加えなかったにもかかわらず、一方向に回転を始めるという、動作の不思議さをアピールする物理玩具があった。
【0003】
このようなラトルバック・トイを説明した資料として、下記のものを挙げる。
【非特許文献1】 山形大学 富川義朗他著「ジャイロモーメント・モータ(=その出会いと原理原則の可能性=)」 日本工業出版「超音波TECHNO」第20巻第1号日工NO.2008.2.08.10
【0004】
上記「非特許文献1」に記載された従来のラトルバック・トイを、図1を用いて説明する。図1は従来のラトルバック・トイを示す6面図である。本体1は長さほぼ20cmで滑らかな表面を持つアクリル樹脂製で、上面は平面で、全体は長軸(上面中心線4)と短軸を有し、長軸に関してはほぼ対称である。底面は一見したところ対称な回転楕円形をなすように見えるが実はそうでなく、底面中心線5(短軸に平行な多数の断面の最も盛り上がった頂点を連ねた線)は長軸に平行ではなく少しく傾けてあり、長軸に関して完全な対称形ではない。このために、端部を下方に叩いて指による印加力6を与えると、本体1には上下軸回りの回転力が生じる。しかし、その回転方向は底面中心線5の上面中心線4に対する傾斜方向によって決まり、自由に変えられるものではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、簡単な構造でありながら、回転方向やその強さを選択でき、物理的にもより強い興味を惹き起こすことができる、新規なラトルバック・トイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のラトルバック・トイは次の特徴を備える。
(1)水平方向に互いに直交する長軸および短軸を有し、下面の形状はほぼ凸面をなし、該凸面は前記長軸に平行な断面において大きな曲率半径を有し前記短軸に平行な断面において小さな曲率半径を有する本体と、該本体の長軸から逸れた方向に少なくとも1つの質量を負荷することができる負荷体と、前記本体と前記負荷体を結合する取付手段とより成ること。
【0007】
また、本発明のラトルバック・トイは、更に次の特徴のいずれかを備えることがある。
(2)前記負荷体は、細長い棒状または板状をなし、前記取付手段は前記本体の上面に設けた垂直軸を含み、前記負荷体は前記垂直軸の回りに回転可能であってかつ所定の範囲の方向のうち任意の方向に設定して取り付け可能であること。
(3)前記垂直軸またはその延長は、前記本体の重心と前記負荷体の重心とをほぼ通ること。
(4)前記負荷体は、上に凸のアームの両端に錘を設けたものであること。
【発明の効果】
【0008】
(1)従来にない任意方向の回転を可能にした、面白い動作をするラトルバック・トイ が実現でき玩具としての新領域を拓くことができる。
(2)知育的玩具として、その動作により、物理や力学の教育的関心を惹起することが できる。
(3)不思議な動作をするので、特に高年齢者の癒しグッズとして期待できる。手の動 きも加わり脳の活性化にもつながる。
(4)構造も簡素であり、容易に加工できる形状であるので、安価に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のラトルバックトイの基本的でかつ最良と考えられる形態は、長軸に関して対称な形状の底面を有する本体と、上面に設けた細長い形状の負荷体と、それらの重心を連結し、かつ負荷体を任意の方向に設定して固定できる取付手段(例えば中心棒)を有することである。
【実施例1】
【0010】
本発明の実施例1の構造を、図3を用いて説明する。図3の側面図(a)において、1は本実施例に用いる本体であり、重心位置に垂直な中心棒7を備えている。その底面の凸面形状は図1の従来例とは異なり、平面図(b)に示す如く長軸(図示X軸)に関して対称である。また細長い棒状または板状の負荷体8の中心穴が中心軸7に挿通され、本体1に対して任意の角度φ9に設定した後、ナット(図示せず)等で本体1に対して固定される。その結果として、本体1と負荷体8を一体とみなした合成された物体の、最も慣性能率が小さくなる軸の方向と、前記本体のみの有する最も慣性能率が小さくなる軸の方向とが異なる方向にずれることになる。
【0011】
図5は本発明の原理説明図である。図示の様な長手直方体13に、モーメントMx14My15を同時に印加すると、Z軸にはMz16というモーメントが働く。即ち、直方体13に制約が無ければ直方体はZ軸の回りに回転する事になる。
【0012】
この原理を図3(b)の本発明のラトルバック・トイに適用してその動作を考える。図6はそのための考察である。図3(b)の構成を長手方向端面17から見たΦ=+Φ0のラトルバック負荷体・トイ図である。図3(b)に示すようにラトルバック・トイの動作・印加力Fz6を与えると、図6においても当然モーメントMz16が生ずる。
一方、X軸の回りにも中心棒負荷体8による構造図全体の非対称性によりモーメントMMx15が同時に作用する。従って、Mx,Myが図3(b)に作用する事になるので、図5の動作より回転モーメントMz16が働き、ラトルバック・トイ1は回転する。
【0013】
従って、Φ=+Φ0からΦ=−Φ0となる様に図3(b)の負荷体8を配置しなおして図6の動作を考えるとモーメントMx14の方向が前の段落の場合と反対となるので、この場合、ラトルバック・トイは逆回転する事になる。これら前の段落と本段落とに述べたところが本発明のラトルバック・トイの動作である。
【0014】
図7(a)、(b) は負荷体8をΦ=0°、Φ=90°と設定した場合である。しかし、この場合は上面の負荷体8を考慮しても対称構造であるので、ラトルバック・トイとしての動作印加力(Fz)6 を与えても回転動作は生じない。即ち、本発明の新ラトルバック・トイはこの様に回転動作が生じない面白さも有している。
【実施例2】
【0015】
図4は負荷体8の形状を変更した、本発明の実施例2を示す。本例においては、図4平面図(a),側面図(b)のように両端に負荷錘11を配してヤジロウベイの様に構成し、錘による質量の偏倚効果を増している。また同図(c)は更にそれを変形した構造で、山形の湾曲形状をしたアームの端部に錘11を設けて、負荷体8全体の重心を下げ、動作の安定化を図っている。
【0016】
その他、図示しないが、考えられる他の実施例や変形例について述べておく。
(1)中心棒に負荷体を挿入してナットで止めるのではなく、板バネなどで負荷体を押さえ、適度な摩擦力を与えて、設定した角度から容易にずれないようにする。
(2)本体と負荷体とは必ずしも重心を重ねて取り付けるのではなく、一方あるいは両方の重心から離れた位置に中心軸を設けてもよい。
(3)負荷体を回転可能とはしない構成も考えられる。例えば、本体1の上面の少し下の部分に水平方向の穴をいくつか設けておく。穴の方向は長軸とある角度をなすようにしてあり、この穴に棒状の負荷体を差し込んで固定する。
(4)負荷体を2個以上としてもよい。
(5)負荷体の形状にも必須の制約はない。
(6)その他、長軸からやや逸れた方向に質量を取り付け、しかもその位置を変更することができる取付手段は、他に例えば本体上面に、長軸から離れかつ平行なスライドレールを例えば2本設けて移動できる質量体を配置するなど種々の構成が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
玩具として面白く、かつ知育的な効用が期待できるので、産業上の利用可能性は大きいものがある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 従来のラトルバック・トイを示す6面図である。
【図2】 本発明の実施例1に用いる本体の4面図である。
【図3】 本発明の実施例1の動作を説明する側面図および平面図である。
【図4】 本発明の実施例2およびその変形例に用いる負荷体を示し、(a),(b)は負荷体の平面図および側面図、(c)は更にその変形例の負荷体の側面図である。
【図5】 本発明の動作原理の説明図である。
【図6】 本発明の動作原理の説明図である。
【図7】 本発明が回転動作をしない場合の説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1 本体
2 本体上面
3 本体底面
4 上面中心線
5 底面中心線
6 指による印加力
7 中心棒
8 負荷体
9 本体と負荷体の角度
10 回転方向
11 付加錘
12 中心棒への取り付け孔
13 柱状体
14 X軸モーメント
15 Y軸モーメント
16 Z軸モーメント
18 中心棒負荷体断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に互いに直交する長軸および短軸を有し、下面の形状はほぼ凸面をなし、該凸面は前記長軸に平行な断面において大きな曲率半径を有し前記短軸に平行な断面において小さな曲率半径を有する本体と、該本体の長軸から逸れた方向に少なくとも1つの質量を負荷することができる負荷体と、前記本体と前記負荷体を結合する取付手段とより成ることを特徴とするラトルバック・トイ。
【請求項2】
前記負荷体は、細長い棒状または板状をなし、前記取付手段は前記本体の上面に設けた垂直軸を含み、前記負荷体は前記垂直軸の回りに回転可能であってかつ所定の範囲の方向のうち任意の方向に設定して取り付け可能であることを特徴とする請求項1に記載のラトルバック・トイ。
【請求項3】
前記垂直軸またはその延長は、前記本体の重心と前記負荷体の重心とをほぼ通ることを特徴とする請求項2に記載のラトルバックトイ。
【請求項4】
前記負荷体は、上に凸のアームの両端に錘を設けたものであることを特徴とする請求項2または3に記載のラトルバック・トイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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