説明

ラビング処理方法、ラビング処理装置、光学補償フィルムの製造方法及びその装置

【課題】ラビング処理で発生する塵埃を効率良く除去し、かつ、ラビングローラの長寿命化を図ることで生産性を向上できるラビング処理方法、ラビング処理装置、光学補償フィルム及びその製造装置を提供する。
【解決手段】
ラビング布28を周面に貼り付けたラビングローラ16と、ラビング布28に付着した塵埃を除去するロール状のブラシ26と、ラビング布28より除塵した塵埃を排気する塵埃排気装置34と、を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にラビング処理方法及びラビング処理装置に係り、特に光学補償フィルムの製造工程において配向膜をラビング処理する際に発生する塵埃の除去方法およびラビング布の調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に広く使用されるTN−LCDの視野角を改善する方法として、透明フィルムの配向膜上に液晶性ディスコティック化合物層を形成した光学補償フィルムが知られている。その際の配向膜は、透明フィルム上に配向膜形成材料層を形成し、その配向膜形成材料層をラビング処理することによって得られる。
【0003】
ラビング処理は、ラビング布(ラビングシート)をラビングローラ円筒軸周面に貼り合わせたラビングローラを配向膜形成材料層の走行方向に対して逆方向に回転させ、ラビング布と配向膜形成材料層を物理的に擦ることにより行われる。したがって、ラビング処理では、ラビングローラと配向膜形成材料層とが擦れるために塵埃が発生しやすく、この塵埃が透明フィルムに付着することによって光学補償フィルムの輝点欠陥となり、液晶表示装置の表示品質を低下させるおそれがあった。
【0004】
また、ラビング布の毛足(パイル)の方向はまちまちであり、使用により毛足の方向が不揃いなままで固定されることがある。このように毛足の方向が不均一なラビングローラを使用すると、ラビング処理された配向膜の配向性の方向が不均一になり、液晶表示装置の性能の低下をもたらしていた。さらに、毛足の方向がまちまちであると、清掃によって微小片が除去されずに残りやすくなり、これが配向膜に付着して輝点欠陥となっていた。
【0005】
そこで、ラビングロールの毛足の方向をそろえる調整方法として、例えば下記の特許文献1には、ラビングロールのラビング布の毛足を、金属表面を有するロールの金属表面に接触させて毛足の方向をそろえることを特徴とするラビングロールの調整方法が記載されている。
【0006】
また、ラビング処理で発生した塵埃を除去する方法として、例えば、特許文献2には、ラビング処理後の透明フィルムの表面を除電装置で除電した後、表面除塵機又は粘着ローラを用いて塵埃を除去することが記載されている。また、特許文献3には、高い透過力を有する電離放射線(波長0.1〜0.5nmの軟X線)を非ラビング面側から照射することによって透明フィルム表面を除電し、ラビング処理で発生する塵埃を除去する方法が記載されている。さらに、特許文献4には、ラビング処理により形成した配向膜を湿式除塵装置により湿式除塵して配向膜表面の塵埃を除去する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−292430号公報
【特許文献2】特開平9−73081号公報
【特許文献3】特開平11−305233号公報
【特許文献4】特開2002−40245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されているラビングロールの調整方法は、ラビング前およびラビング布の清掃後に行っており、オフラインで行われていた。したがって、オフラインでの調整によるラビングローラの交換の時間を要し、光学補償フィルムの製造において効率的ではなかった。
【0009】
また、近年では、液晶表示装置の高輝度化、高精細化により液晶表示装置の表示品質の低下に影響を及ぼす輝点サイズが小さくなっている。このため、輝点の原因となる微小な塵埃の除去(除塵)が求められている。
【0010】
しかしながら、特許文献2〜4に記載されている方法は、ラビング布の毛糸に非接触でラビング布の除塵を行っており、充分に塵埃の除去が行われていなかった。また、ラビング布に接触させて塵埃の除去を行った場合は、毛糸の方向性が不均一となり、配向層の配向膜の方向性が不均一となっていた。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ラビング処理で発生する塵埃を効率良く除去し、かつ、ラビングローラの長寿命化を図ることで生産性を向上できるラビング処理方法、ラビング処理装置、光学補償フィルムの製造方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するために、配向膜形成材料層を備えた長尺可撓性フィルムをその長手方向に移動させながら、該配向膜形成材料層の表面に、ラビングローラに貼り付けたラビング布を回転状態で接触させて配向膜を形成する配向膜形成工程と、前記ラビング布が前記長尺可撓性フィルムと接触した後、前記ラビング布の表面にロール状のブラシを接触させて、前記ラビング布に付着した塵埃を除去するラビング布除塵工程と、前記ラビング布除塵工程で除去した塵埃を排気除去する塵埃排気工程と、を有することを特徴とするラビング処理方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記目的を達成するために、ラビング布を周面に貼り付けたラビングローラと、前記ラビング布に付着した塵埃を除去するロール状のブラシと、前記ラビング布より除塵した塵埃を排気する塵埃排気装置と、を備える配向膜形成材料層を有する長尺可撓性フィルムに配向膜を形成するラビング処理装置を提供する。
【0014】
本発明によれば、ラビング布に接触させて配向膜を形成させた後、ラビング布の表面に左右に振動させたロール状のブラシを接触させて、ラビング布に付着した塵埃を除去しているため、より確実に付着した塵埃の除去をすることができる。さらに、ロール状のブラシを用いることで、ラビング布の毛足の内部までブラシの先端を入れることができるので、付着した塵埃の除去を確実に行うことができる。
【0015】
そして、塵埃排気工程を有することにより、ラビング布除塵工程で除去された塵埃を排気することができるので、除去された塵埃がラビングローラに付着することを防止することができる。したがって、ラビング処理を施した長尺可撓性帯状物を用いて液晶表示装置の高輝度化、高精細化により求められる高品質の光学補償フィルムを得ることができる。さらに、ラビングローラを確実に除塵することができるので、ラビングローラでの塵埃の蓄積がなく、ラビングローラの長寿命化を図ることができる。
【0016】
本発明において、前記ロール状のブラシは、左右に振動させながら前記ラビング布の表面に接触させることが好ましい。
【0017】
ロール状のブラシが左右(ロール幅方向)に振動していることで、ブラシに付着している塵埃により部分的にラビング布が経たってしまうのを抑制することができる。
【0018】
ここで、前記ロール状のブラシは、超音波振動されていることが好ましい。
【0019】
左右の振動とは別にブラシの毛足自体を超音波で振動させることで、ブラシの毛足の塵埃を付着しにくくすることができる。したがって、さらにラビングローラの付着除塵量を低減することができるので、ラビングローラでの塵埃の蓄積がなく、ラビングローラの長寿命化を図ることができる。
【0020】
また、本発明において、前記ロール状のブラシに付着した塵埃を除去するブラシ除塵工程を有することが好ましい。
【0021】
このブラシ除塵工程は、(1)前記ロール状のブラシにエアをブローしサクションすること、(2)前記ロール状のブラシにブラシ表面除塵部材を接触させること、(3)前記ロール状のブラシに除塵ロールを接触させ、且つ、排気することで前記除塵ロールに付着した塵埃を除去することが考えられる。(3)の場合には、前記除塵ロールに付着した塵埃を除去する第2の除塵ロールを接触させることがさらに好ましい。
【0022】
このブラシ除塵工程を有することで、ブラシに付着した塵埃を確実に除去することができる。したがって、ブラシによりさらにラビングローラを除塵することができるので、ラビングローラでの塵埃の蓄積がなく、ラビングローラの長寿命化を図ることができる。
【0023】
また、本発明において、前記ロール状のブラシが導電性を有することが好ましい。
【0024】
ブラシが導電性を有しているため、ブラシに塵埃が付着しやすくなり、ラビング布からの塵埃の除去を容易に行うことができる。
【0025】
また、本発明において、前記ロール状のブラシと前記ラビング布の地布組織の距離が0.05〜5mmであることを特徴とする。
【0026】
ロール状のブラシの先端とラビング布の地布組織の距離を上記範囲とすることにより、ラビング布の地布組織を傷めることなく、かつ、後のラビング布処理工程においてラビング布の毛足を均一化できる程度にラビング処理工程を行うことができる。
本発明において、前記ラビング布の毛足をそろえるラビング布矯正工程を有することが好ましい。
【0027】
ラビング布除塵工程において、ロール状のブラシを接触させて塵埃の除去を行っているため、ラビング布の毛足が不均一になってしまうが、ラビング布矯正工程を設けることにより、ラビング布の毛足が不均一になっても均一化することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ラビングローラを用いて配向膜を形成した後、ロール状のブラシをラビングローラのラビング布に接触させて塵埃を除去しているため、確実に塵埃の除去を行うことができる。また、ロール状のブラシが左右(ロール幅方向)に振動することで、ブラシに付着している塵埃により部分的にラビング布が経たってしまうのを抑制することができる。
【0029】
したがって、ラビング処理で発生する塵埃を効率良く除去し、かつ、ラビングローラの長寿命化を図ることで生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のラビング処理装置を摸式的に示す構成図
【図2】本発明のラビング処理装置の一部を正面から見た摸式的に示す構成図
【図3】本発明のラビング処理装置の別の態様を摸式的に示す構成図
【図4】本発明のラビング処理装置の別の態様を摸式的に示す構成図
【図5】本発明のラビング処理装置の別の態様を模式的に示す構成図
【図6】本発明のラビング処理装置の別の態様を模式的に示す構成図
【図7】実施例の結果を示す表図
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付図面により本発明のラビング処理方法およびラビング処理装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0032】
図1は、本発明の実施形態におけるラビング処理装置10の構成を示す模式図であり、図2は、本発明の実施形態におけるラビング処理装置10の一部を正面から見た模式図である。
【0033】
図1に示すように、ラビング処理装置10は、透明フィルム(長尺可撓性フィルムに相当)12にラビングローラ16を接触させてラビング処理を行う装置であり、透明フィルム12は、その上面が一対のローラ14、14によって押さえられた状態で走行するようになっている。透明フィルム12は、その下面に配向膜形成材料が形成されている。
【0034】
まず、本発明のラビング処理方法は、透明フィルム12の配向膜形成材料層に、ラビングローラ16に貼り付けたラビング布28を接触させて配向膜を形成する配向膜形成工程を有する。
【0035】
配向膜形成材料層は、透明で、且つ、配向処理により配向され得るものであれば良い。配向膜形成材料層の形成材料の例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート等のポリマーおよびシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリイミド、ポリスチレン、スチレン誘導体のポリマー、ゼラチン、ポリビニルアルコールあるいはポリビニルアルコール誘導体を挙げることができる。配向膜形成材料層の形成材料は、重合性基を有するものが液晶層との接合強度を増すために有効である。
【0036】
ラビングローラ16は、透明フィルム12の配向膜形成材料層に接触するように配置される。すなわち、ラビングローラ16は、透明フィルム12の下側に、且つ、透明フィルム12の下面に所定のラップ角度(たとえば4〜20°)で係合するように配置される。このラビングローラ16は、円筒軸にラビング布28を貼り合わせて形成したものであり、その外径は100〜500mm、好ましくは150〜300mmで製造されている。ラビング布28としては、ゴム、ナイロン、ポリエステル等から得られるシート、ナイロン繊維、レイヨン繊維、ポリエステル繊維から得られるシート(ベルベット等)、紙、ガーゼ、フェルトなどを挙げることができる。
【0037】
ラビングローラ16は、不図示の回転駆動源に接続され、透明フィルム12の走行方向の反対方向に、所定の速度(たとえば200〜600rpm)で回転するように制御される。これにより、搬送状態の透明フィルム12の配向膜形成材料層とラビングローラ16の表面とが接触点Pにおいて擦れ合って、配向膜形成材料層がラビング処理され、配向膜が形成される。なお、ラビングローラ16は、その回転速度を所定の範囲、たとえば1000rpm程度までの範囲で制御できるように構成することが好ましい。また、ラビングローラ16は、その回転軸が所定の範囲、たとえば0〜50°の角度で調節できるように構成することが好ましい。さらに、ラビングローラ16又はローラ14は、透明フィルム12の幅方向の張力差を測定できる張力測定器を取り付けて、その張力差が所定の範囲内(たとえば0.1N/cm以下)となるように制御することが好ましい。
【0038】
本発明においては、配向膜を形成した後、ラビング布28の塵埃を除去するラビング布除塵工程を有する。このラビング布除塵工程でラビング布28の塵埃を除去することにより、次に配向膜を形成する際に、透明フィルム12に塵埃が付着することを防止することができるので、良好な外観のフィルムを製造することができる。
【0039】
ラビング布除塵工程は、図1に示すようにロール状のブラシ26を用いて行うことができる。ロール状のブラシ26は、ラビングローラ16の回転方向に対して、接触点Pの下流側に設けられる。ロール状のブラシ26は、ラビング布28に接触させることにより、ラビング布28に付着した塵埃を除去できるように構成される。ロール状のブラシ26はラビングローラ16の回転とは反対方向に回転させる。
【0040】
そして、図2に示すように、ブラシ26はラビング布28との距離を維持しながら左右に振動(オシレート)させることが好ましい。オシレートさせることにより、ブラシ26とパイル糸との接触箇所が一定でなくなるため、ブラシに付着している塵埃により部分的にラビング布が経たってしまうのを抑制することができる。
【0041】
また、ラビング布除塵工程において、ロール状のブラシをオシレートしながら接触させて塵埃の除去を行っているため、ラビング布の毛足が不均一になってしまうが、ラビング布矯正工程を設けることにより、ラビング布の毛足が不均一になっても均一化することができる。したがって、ラビング性能が低下することなく、ラビング処理を行うことができる。
【0042】
なお、ラビング布28は、地布組織とパイル糸により形成されており、ロール状のブラシ26により、配向膜形成工程により発生した塵埃がパイル糸同士の間に入っても、容易に除去することができる。
【0043】
さらに、本発明においては、図1におけるラビング処理装置10は、排気装置34を備えている。排気装置34は、ラビング布除塵工程により除去した塵埃がラビング布に再付着することを防止することができるので、より品質の良い光学補償フィルムを製造することができる。
【0044】
本発明において、ブラシ26とラビング布28の距離は、ブラシ26の先端とラビング布の地布組織の距離が0.05〜5mmであることが好ましい。ブラシ26と地布組織30の距離をこの範囲とすることにより、パイル糸間に付着した塵埃の除去を容易に行うことができる。
【0045】
また、ブラシ26は導電性を有していることが好ましい。ブラシ26に導電性を付与することにより、ブラシ26に塵埃が付着しやすくなるので、ラビング布に付着した塵埃の除去を行うことができる。
【0046】
さらに、本発明のラビング処理装置は、図1に示したように、ラビングローラ16の回転方向に対して、ブラシ26の下流側に矯正部材24を備えることが好ましい。配向膜形成工程において、ブラシ26とラビング布28のパイル糸とを接触させることにより乱れたパイル糸の方向性を、矯正部材24により一定にすることができるので、品質の良好な光学補償フィルムを製造することができる。
【0047】
矯正部材24としては、金属表面ロールを用いることができる。金属表面の材質はステンレス鋼、ハードクロムメッキ、ニッケルメッキ、チタン、ガラスなどを好ましく用いることができる。
【0048】
以上のように、本発明において、ラビング処理で発生する塵埃を効率良く除去し、かつ、ラビングローラの長寿命化を図ることで生産性を向上することができる。したがって、より高品質の光学補償フィルムを効率良く製造することができる。
【0049】
さらに、本発明のラビング処理装置は、ロール状のブラシ26が超音波振動されていることが好ましい。上述した左右の振動(オシレート)とは別にブラシ26の毛足自体を超音波で振動させることで、ブラシの毛足の塵埃を付着しにくくすることができる。したがって、さらにラビングローラの付着除塵量を低減することができるので、ラビングローラでの塵埃の蓄積がなく、ラビングローラの長寿命化を図ることができる。
【0050】
図3〜6は、別の実施態様を示すラビング処理装置の一部の構成を示す図である。図1に示したラビング処理装置10と異なっているのは、ブラシ26に付着した除塵を除去するためのブラシ除塵手段が備えられていることである。
【0051】
図3のラビング処理装置10は、ロール状のブラシ26にエアをブローしサクションするエアブローサクション装置40が備えられている。この装置40により、ブラシ26に付着した塵埃を確実に除去することができるので、ブラシ26に付着した塵埃がラビングローラ16に再度付着するのを防止することができ、ラビングローラでの塵埃の蓄積がなく、ラビングローラの長寿命化を図ることができる。
【0052】
図4のラビング処理装置10は、ロール状のブラシ26に接触するブラシ表面除塵部材42が備えられている。この部材42により、ブラシ26に付着した塵埃をブラシ26から剥がし、排気装置34で除去することができるので、ブラシ26に付着した塵埃がラビングローラ16に再度付着するのを防止することができ、ラビングローラでの塵埃の蓄積がなく、ラビングローラの長寿命化を図ることができる。なお、ブラシ表面除塵部材42の位置は、図4に示したように排気装置34の排気口付近であることが好ましいが、排気装置34内であればどこの位置であっても効果がある。
【0053】
図5のラビング処理装置10は、ロール状のブラシ26に接触する除塵ロール44と、排気装置46と、を備えている。排気装置34は、除塵ロール44によりブラシ26から除去した塵埃を排気する。これにより、ブラシ26に付着した塵埃をブラシ26から剥がし除去することができるので、ブラシ26に付着した塵埃がラビングローラ16に再度付着するのを防止することができるので、より品質の良い光学補償フィルムを製造することができる。
【0054】
図5のラビング処理装置10では、図6に示すように、除塵ロール44に付着した塵埃を除去する第2の除塵ロール48を更に備えることも好ましい。除塵ロール44に付着した塵埃を第2の除塵ロール48で剥がし除去することができるので、ブラシ26に付着した塵埃がラビングローラ16に再度付着するのを更に防止することができ、より品質の良い光学補償フィルムを製造することができる。
【0055】
次にラビング処理装置10の作用について説明する。
【0056】
ラビング処理装置10では、透明フィルム12とラビングローラ16に貼り付けたラビング布28を接触させるために塵埃が発生する。この塵埃が透明フィルム12に付着して後段の装置(たとえば配向膜上に液晶性ディスコティック化合物を含む塗布液を塗布する塗布工程など)に搬送されると、光学補償フィルムの輝点欠陥の原因となる。また、透明フィルム12の表面だけでなく、ラビング布28の表面に塵埃が付着した場合も同様に、ラビング処理の性能を低下させて光学補償フィルムの輝点欠陥の原因となったり、塵埃がラビング布28から透明フィルム12に移って輝点欠陥の原因となるおそれがある。
【0057】
このため、ラビング処理装置10では、左右に振動するロール状のブラシ26を設けラビング布28と接触させることにより、ラビング布28に付着した塵埃の除去を行っている。
【0058】
さらに、本実施形態のラビング処理装置10では、矯正部材24を設け、ブラシ26に接触させ除塵することにより乱れたラビング布28の毛足をそろえることができる。これにより、毛足がそろった状態でラビング処理を行うことができるので、形成される配向層のラビング性能を落とすことなくラビング処理を行うことができる。
【0059】
また、ラビング布28に付着する塵埃も従来のラビング処理装置より少なくすることができるので、ラビング布28に付着した塵埃によってラビング性能が低下したり、ラビングローラ16の塵埃が透明フィルム12に移転したりすることを防止することができる。
【0060】
したがって、本実施の形態によれば、塵埃の付着がなく、高品質のラビング処理が施された配向膜を形成することができるので、この透明フィルム12を用いて光学補償フィルムを製造することによって、輝点欠陥の少ない高品質の光学補償を提供することができる。
【実施例1】
【0061】
(配向膜形成材料層を備えた長尺可撓性帯状物の作成)
セルローストリアセテート(フジタック、富士フイルム(株)製、厚さ:100μm、幅:500mm)の長尺状フィルムの一方の側に、長鎖アルキル変性ポリビニルアルコール(MP−203、クラレ(株)製)5重量%水溶液を塗布し、90℃、4分間乾燥させた。こうして、厚さ2.0μmの配向膜形成材料層を形成した。
【0062】
(配向膜形成材料層のラビング処理)
配向膜形成材料層を備えた長尺可撓性フィルムを図1の装置を用いて配向膜形成材料層表面にラビング処理を施した。配向膜形成材料層を備えた透明フィルムは、矢印の方向に連続して20m/分で搬送した。透明フィルムはローラ(ローラ外径:90mm、長さ:1650mm)により上部から抑えながら搬送し、下側より押圧されたラビングローラ(外径:300mm)を走行方向と反対向きに400rpmで回転させながら、円筒軸に貼り付けたラビング布(ベルベット)を配向膜形成材料層に接触させることによりラビング処理を施した。
【0063】
ラビングローラは、図7の表の実験2〜13においては、ラビング処理を施している間、ラビングローラの表面にブラシ26を接触させてラビング布に付着した塵埃を除去している。ブラシ26には、アースにより除電性を付与した。また、ブラシ26の先端と地布組織との距離は、実験2及び4以外は0.5mmで行った。なお、ブラシ26の先端と地布組織の距離は、設置時にシックネスゲイジ(厚み計)で測定した。さらに、ブラシ26を接触させて除去した塵埃は図1に示した塵埃排気装置34により排気される。さらに、ラビングローラの走行方向の上流側から除塵装置の次にラビング布目(毛足)矯正部材を設け、ラビング布の配向性をそろえている。
【0064】
ここで、実験5〜11、13においては、ブラシ26にオシレート(左右の振動)を行った。そして、実験10、11、13においては、ブラシ26に超音波振動を与えた。また、実験11〜13においては、図3のブラシ除塵装置を備え実験を行った。更に、実験6においては、図4のブラシ表面除塵部材(ブレード)42を除塵装置の排気口近く、実験7においては、図4のブラシ表面除塵部材(ブレード)42を除塵装置の排気口から離れた位置に設置した。そして、実験8においては、図5の除塵ロール44と排気装置46、実験9においては、図6の除塵ロール44、排気装置46、及び第2の除塵ロール48を設置した。
【0065】
[試験結果]
実施1〜13のラビング処理後の透明フィルムの輝点欠陥数を、CCDカメラを用いた面状検査装置の輝点発生頻度により評価を行った。結果を図7の表に示す。なお、表中の記号は、以下の通りである。
◎・・・品質高い(0.5個/m未満)
○・・・品質許容内(0.5個/m以上、0.8個/m未満)
△・・・品質許容限度(0.8個/m以上、1.1個/m未満)
×・・・品質許容外(1.1個/m以上)
更に、実験1〜13のラビング持続性についても評価を行った。結果を図7の表に示す。なお、表中の記号は、以下の通りである。
◎・・・20000m以上
○・・・15000m以上、20000m未満
△・・・10000m以上、15000m未満
×・・・10000m未満
実験1〜13の評価結果から分かるように、ブラシと塵埃排気装置を設けた実験2〜13においては、高い品質のフィルムを得ることができ、ブラシをオシレートした実験5〜11、13ではラビング持続性も長い結果となった。
【0066】
なお、実験2〜4より、ロール状のブラシと地布組織との距離については、0.05〜5mmの範囲であれば、輝点欠陥数の少ない(輝点欠陥数の評価が△以上の)品質の高いフィルムを得ることができることが分かった。
【符号の説明】
【0067】
10…ラビング処理装置、12…透明フィルム、14…ローラ、16…ラビングローラ、24…矯正部材、26…(ロール状の)ブラシ、28…ラビング布、34…塵埃排気装置、40…エアブローサクション装置、42…ブラシ表面除塵部材(ブレード)、44…除塵ロール、46…排気装置、48…除塵ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配向膜形成材料層を備えた長尺可撓性フィルムをその長手方向に移動させながら、該配向膜形成材料層の表面に、ラビングローラに貼り付けたラビング布を回転状態で接触させて配向膜を形成する配向膜形成工程と、
前記ラビング布が前記長尺可撓性フィルムと接触した後、前記ラビング布の表面にロール状のブラシを接触させて、前記ラビング布に付着した塵埃を除去するラビング布除塵工程と、
前記ラビング布除塵工程で除去した塵埃を排気除去する塵埃排気工程と、を有することを特徴とするラビング処理方法。
【請求項2】
前記ロール状のブラシは、左右に振動させながら前記ラビング布の表面に接触させることを特徴とする請求項1に記載のラビング処理方法。
【請求項3】
前記ロール状のブラシは、超音波振動されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のラビング処理方法。
【請求項4】
前記ロール状のブラシに付着した塵埃を除去するブラシ除塵工程を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載のラビング処理方法。
【請求項5】
前記ブラシ除塵工程では、前記ロール状のブラシにエアをブローしサクションすることを特徴とする請求項4に記載のラビング処理方法。
【請求項6】
前記ブラシ除塵工程では、前記ロール状のブラシにブラシ表面除塵部材を接触させることを特徴とする請求項4に記載のラビング処理方法。
【請求項7】
前記ブラシ除塵工程では、前記ロール状のブラシに除塵ロールを接触させ、且つ、排気することで前記除塵ロールに付着した塵埃を除去することを特徴とする請求項4に記載のラビング処理方法。
【請求項8】
前記ブラシ除塵工程では、前記除塵ロールに付着した塵埃を除去する第2の除塵ロールを接触させることを特徴とする請求項7に記載のラビング処理方法。
【請求項9】
前記ロール状のブラシが導電性を有することを特徴とする特徴とする請求項1〜8の何れか1に記載のラビング処理方法。
【請求項10】
前記ロール状のブラシと前記ラビング布の地布組織の距離が0.05〜5mmであることを特徴とする請求項1〜9の何れか1に記載のラビング処理方法。
【請求項11】
前記ラビング布の毛足をそろえるラビング布矯正工程を有することを特徴とする請求項1〜10の何れか1に記載のラビング処理方法。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1に記載のラビング処理方法によりラビング処理された長尺可撓性フィルムを用いて製造されたことを特徴とする光学補償フィルムの製造方法。
【請求項13】
ラビング布を周面に貼り付けたラビングローラと、
前記ラビング布に付着した塵埃を除去するロール状のブラシと、
前記ラビング布より除塵した塵埃を排気する塵埃排気装置と、を備える配向膜形成材料層を有する長尺可撓性フィルムに配向膜を形成するラビング処理装置。
【請求項14】
前記ロール状のブラシには、左右に振動するブラシ振動手段を備えることを特徴とする請求項13に記載のラビング処理装置。
【請求項15】
前記ラビング布の毛足をそろえる矯正部材を備えることを特徴とする請求項13又は14に記載のラビング処理装置。
【請求項16】
請求項13〜15の何れか1に記載のラビング処理装置を有することを特徴とする光学補償フィルムの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−123120(P2011−123120A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278721(P2009−278721)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】